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特開2022-153989液体吐出装置、その制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153989
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】液体吐出装置、その制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20221005BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
B41J2/14 611
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B41J2/01 305
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056791
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 祥爾
(72)【発明者】
【氏名】市川 翔平
(72)【発明者】
【氏名】中野 靖大
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EB11
2C056EB29
2C056EB35
2C056FA04
2C056HA05
2C056HA29
2C057AF21
2C057AK07
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】転送回路による1の吐出周期に係る選択信号の転送中に次の吐出周期に係る転送タイミングが発生した場合でも、ドット抜けを抑制する。
【解決手段】プリンタのCPUは、第1吐出周期に係る選択信号SINの転送中に第2吐出周期に係る転送タイミングが発生した場合、第1吐出周期に係る選択信号SINの転送終了時点で選択信号SINがラッチされた直後に、転送回路により第2吐出周期に係る信号の転送を開始させる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルと、
前記ノズルから液体を吐出させるための圧力を付与するアクチュエータと、
前記アクチュエータの複数の駆動態様を示す波形信号、前記複数の駆動態様の中から1つを選択するための選択信号、及び、前記波形信号及び前記選択信号の転送タイミングを示す転送タイミング信号を、前記ノズルから液体を吐出させる周期である吐出周期毎に出力する出力回路と、
前記出力回路が出力した前記波形信号及び前記選択信号に基づいて、前記複数の駆動態様の中から選択された駆動態様を示す駆動信号を、前記吐出周期毎に前記アクチュエータに供給する駆動回路と、
前記出力回路から前記波形信号、前記選択信号及び前記転送タイミング信号を受信し、前記吐出周期毎に前記転送タイミングで前記波形信号及び前記選択信号を前記駆動回路に転送する転送回路と、
制御部と、を備え、
前記吐出周期は、第1吐出周期と、前記第1吐出周期の次の吐出周期である第2吐出周期と、を含み、
1の前記吐出周期において、前記選択信号の転送は前記波形信号の転送終了時点以降に終了し、前記選択信号の転送終了時点で前記選択信号がラッチされるように構成されており、
前記制御部は、
前記転送回路による前記第1吐出周期に係る前記選択信号の転送中に、前記第2吐出周期に係る前記転送タイミングが発生したか否かを判断する、判断処理と、
前記判断処理において前記転送回路による前記第1吐出周期に係る前記選択信号の転送中に前記第2吐出周期に係る前記転送タイミングが発生したと判断された場合、前記第1吐出周期に係る前記選択信号の転送終了時点で前記選択信号がラッチされた直後に、前記転送回路により、前記第2吐出周期に係る前記波形信号の転送を開始させ、かつ、前記第2吐出周期に係る前記波形信号の転送開始時点以降に、前記第2吐出周期に係る前記選択信号の転送を開始させる、転送処理と、
を実行することを特徴とする、液体吐出装置。
【請求項2】
前記転送処理において転送される前記第2吐出周期に係る前記波形信号は、前記判断処理において前記転送回路による前記第1吐出周期に係る前記選択信号の転送中に前記第2吐出周期に係る前記転送タイミングが発生していないと判断された場合に転送される前記第2吐出周期に係る前記波形信号と同じであることを特徴とする、請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記ノズルが形成されたヘッドと、
前記ヘッドと記録媒体とを相対的に移動させる移動機構と、
前記移動機構による前記ヘッドと記録媒体との相対的な移動速度を検知する速度センサと、
をさらに備え、
前記制御部は、前記移動機構により前記ヘッドと記録媒体とを相対的に移動させながら、前記駆動回路により前記駆動信号を前記アクチュエータに供給することで、前記ノズルから記録媒体に向けて液体を吐出させ、
前記転送タイミング信号は、前記速度センサが検知した前記移動速度に基づくものであり、
前記転送タイミングは、前記転送タイミング信号が示す第1タイミングと、前記速度センサが検知した前記移動速度に基づかない第2タイミングと、を含み、
前記吐出周期は、前記第2吐出周期の次の吐出周期である第3吐出周期をさらに含み、
前記制御部は、
前記判断処理において前記転送回路による前記第1吐出周期に係る前記選択信号の転送中に前記第2吐出周期に係る前記転送タイミングが発生したと判断された場合、前記第3吐出周期に係る前記転送タイミングを前記第2タイミングとすることを特徴とする、請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記吐出周期は、前記第3吐出周期の次の吐出周期である第4吐出周期をさらに含み、
前記制御部は、
前記第3吐出周期に係る前記転送タイミングを前記第2タイミングとした後、前記転送回路による前記第3吐出周期に係る前記選択信号の転送中に前記第4吐出周期に係る前記第1タイミングが発生していないと判断された場合、前記第4吐出周期に係る前記転送タイミングを前記第1タイミングとすることを特徴とする、請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記第2タイミングは、所定の前記移動速度に基づくものであることを特徴とする、請求項3又は4に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
記録媒体を搬送方向に搬送する搬送機構であって、記録媒体に前記搬送方向と直交する方向に沿った波形状を付与する波形状付与部を含む搬送機構をさらに備え、
前記第2タイミングは、さらに、前記波形状に基づくものであることを特徴とする、請求項5に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
1の前記吐出周期に係る前記第1タイミングから次の前記吐出周期に係る前記第1タイミングまでの時間間隔を記憶する、記憶部をさらに備え、
前記第2タイミングは、前記記憶部に記憶された前記時間間隔に基づくものであることを特徴とする、請求項3又は4に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
ノズルと、前記ノズルから液体を吐出させるための圧力を付与するアクチュエータと、前記アクチュエータの複数の駆動態様を示す波形信号、前記複数の駆動態様の中から1つを選択するための選択信号、及び、前記波形信号及び前記選択信号の転送タイミングを示す転送タイミング信号を、前記ノズルから液体を吐出させる周期である吐出周期毎に出力する出力回路と、前記出力回路が出力した前記波形信号及び前記選択信号に基づいて、前記複数の駆動態様の中から選択された駆動態様を示す駆動信号を、前記吐出周期毎に前記アクチュエータに供給する駆動回路と、前記出力回路から前記波形信号、前記選択信号及び前記転送タイミング信号を受信し、前記吐出周期毎に前記転送タイミングで前記波形信号及び前記選択信号を前記駆動回路に転送する転送回路と、を備えた液体吐出装置を制御する制御方法であって、
前記吐出周期は、第1吐出周期と、前記第1吐出周期の次の吐出周期である第2吐出周期と、を含み、
1の前記吐出周期において、前記選択信号の転送は前記波形信号の転送終了時点以降に終了し、前記選択信号の転送終了時点で前記選択信号がラッチされるように構成されており、
前記転送回路による前記第1吐出周期に係る前記選択信号の転送中に、前記第2吐出周期に係る前記転送タイミングが発生したか否かを判断する、判断処理と、
前記判断処理において前記転送回路による前記第1吐出周期に係る前記選択信号の転送中に前記第2吐出周期に係る前記転送タイミングが発生したと判断された場合、前記第1吐出周期に係る前記選択信号の転送終了時点で前記選択信号がラッチされた直後に、前記転送回路により、前記第2吐出周期に係る前記波形信号の転送を開始させ、かつ、前記第2吐出周期に係る前記波形信号の転送開始時点以降に、前記第2吐出周期に係る前記選択信号の転送を開始させる、転送処理と、
を実行することを特徴とする、制御方法。
【請求項9】
ノズルと、前記ノズルから液体を吐出させるための圧力を付与するアクチュエータと、前記アクチュエータの複数の駆動態様を示す波形信号、前記複数の駆動態様の中から1つを選択するための選択信号、及び、前記波形信号及び前記選択信号の転送タイミングを示す転送タイミング信号を、前記ノズルから液体を吐出させる周期である吐出周期毎に出力する出力回路と、前記出力回路が出力した前記波形信号及び前記選択信号に基づいて、前記複数の駆動態様の中から選択された駆動態様を示す駆動信号を、前記吐出周期毎に前記アクチュエータに供給する駆動回路と、前記出力回路から前記波形信号、前記選択信号及び前記転送タイミング信号を受信し、前記吐出周期毎に前記転送タイミングで前記波形信号及び前記選択信号を前記駆動回路に転送する転送回路と、を備えた液体吐出装置であって、前記吐出周期は、第1吐出周期と、前記第1吐出周期の次の吐出周期である第2吐出周期と、を含み、1の前記吐出周期において、前記選択信号の転送は前記波形信号の転送終了時点以降に終了し、前記選択信号の転送終了時点で前記選択信号がラッチされるように構成された液体吐出装置を、
前記転送回路による前記第1吐出周期に係る前記選択信号の転送中に、前記第2吐出周期に係る前記転送タイミングが発生したか否かを判断する、判断手段、及び、
前記判断手段により前記転送回路による前記第1吐出周期に係る前記選択信号の転送中に前記第2吐出周期に係る前記転送タイミングが発生したと判断された場合、前記第1吐出周期に係る前記選択信号の転送終了時点で前記選択信号がラッチされた直後に、前記転送回路により、前記第2吐出周期に係る前記波形信号の転送を開始させ、かつ、前記第2吐出周期に係る前記波形信号の転送開始時点以降に、前記第2吐出周期に係る前記選択信号の転送を開始させる、転送手段、
として機能させることを特徴とする、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク等の液体を吐出する液体吐出装置、その制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のインクジェットプリンタ(液体吐出装置)は、ノズルと、アクチュエータと、信号生成回路(出力回路)と、ドライバIC(駆動回路)と、信号送受信回路(転送回路)とを備えている。信号生成回路は、吐出周期毎に波形信号FIRE、波形選択信号SIN、クロック信号(転送タイミング信号)等を生成し、これらを信号送受信回路に出力する。信号送受信回路は、信号生成回路から受信した波形信号FIRE、波形選択信号SIN、クロック信号等を受信し、吐出周期毎にクロック信号が示す転送タイミングで波形信号FIRE及び波形選択信号SINをドライバICに転送する。ドライバICは、転送回路から転送された波形信号及び選択信号に基づいて、複数の駆動態様の中から選択された駆動態様を示す駆動信号を吐出周期毎にアクチュエータに供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-167466号公報(図3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
1の吐出周期において、選択信号の転送は波形信号の転送終了時点以降に終了し、選択信号の転送終了時点で選択信号がラッチされる。また通常は、転送回路による1の吐出周期に係る波形信号及び選択信号の転送終了後に、次の吐出周期に係る転送タイミングが発生し、波形信号及び選択信号の駆動回路への転送が開始される。
【0005】
しかしながら、例えばヘッドと記録媒体との相対位置の変化量が大きくなると(特許文献1においてキャリッジの移動が高速化すると)、上記通常時とは異なり、転送回路による1の吐出周期に係る波形信号及び選択信号の転送中に、次の吐出周期に係る転送タイミングが発生する場合がある。この場合、転送回路は、次の吐出周期に係る波形信号及び選択信号を正常に取り込むことができず、その結果、次の吐出周期に係る波形信号及び選択信号を駆動回路に転送することができない。そのため、次の吐出周期において不吐出となり、ドット抜けが生じ得る。
【0006】
本発明の目的は、転送回路による1の吐出周期に係る選択信号の転送中に次の吐出周期に係る転送タイミングが発生した場合でも、ドット抜けを抑制できる液体吐出装置、その制御方法及びプログラムを提供することにある。
【0007】
本発明に係る液体吐出装置は、ノズルと、前記ノズルから液体を吐出させるための圧力を付与するアクチュエータと、前記アクチュエータの複数の駆動態様を示す波形信号、前記複数の駆動態様の中から1つを選択するための選択信号、及び、前記波形信号及び前記選択信号の転送タイミングを示す転送タイミング信号を、前記ノズルから液体を吐出させる周期である吐出周期毎に出力する出力回路と、前記出力回路が出力した前記波形信号及び前記選択信号に基づいて、前記複数の駆動態様の中から選択された駆動態様を示す駆動信号を、前記吐出周期毎に前記アクチュエータに供給する駆動回路と、前記出力回路から前記波形信号、前記選択信号及び前記転送タイミング信号を受信し、前記吐出周期毎に前記転送タイミングで前記波形信号及び前記選択信号を前記駆動回路に転送する転送回路と、制御部と、を備え、前記吐出周期は、第1吐出周期と、前記第1吐出周期の次の吐出周期である第2吐出周期と、を含み、1の前記吐出周期において、前記選択信号の転送は前記波形信号の転送終了時点以降に終了し、前記選択信号の転送終了時点で前記選択信号がラッチされるように構成されており、前記制御部は、前記転送回路による前記第1吐出周期に係る前記選択信号の転送中に、前記第2吐出周期に係る前記転送タイミングが発生したか否かを判断する、判断処理と、前記判断処理において前記転送回路による前記第1吐出周期に係る前記選択信号の転送中に前記第2吐出周期に係る前記転送タイミングが発生したと判断された場合、前記第1吐出周期に係る前記選択信号の転送終了時点で前記選択信号がラッチされた直後に、前記転送回路により、前記第2吐出周期に係る前記波形信号の転送を開始させ、かつ、前記第2吐出周期に係る前記波形信号の転送開始時点以降に、前記第2吐出周期に係る前記選択信号の転送を開始させる、転送処理と、を実行することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る制御方法は、ノズルと、前記ノズルから液体を吐出させるための圧力を付与するアクチュエータと、前記アクチュエータの複数の駆動態様を示す波形信号、前記複数の駆動態様の中から1つを選択するための選択信号、及び、前記波形信号及び前記選択信号の転送タイミングを示す転送タイミング信号を、前記ノズルから液体を吐出させる周期である吐出周期毎に出力する出力回路と、前記出力回路が出力した前記波形信号及び前記選択信号に基づいて、前記複数の駆動態様の中から選択された駆動態様を示す駆動信号を、前記吐出周期毎に前記アクチュエータに供給する駆動回路と、前記出力回路から前記波形信号、前記選択信号及び前記転送タイミング信号を受信し、前記吐出周期毎に前記転送タイミングで前記波形信号及び前記選択信号を前記駆動回路に転送する転送回路と、を備えた液体吐出装置を制御する制御方法であって、前記吐出周期は、第1吐出周期と、前記第1吐出周期の次の吐出周期である第2吐出周期と、を含み、1の前記吐出周期において、前記選択信号の転送は前記波形信号の転送終了時点以降に終了し、前記選択信号の転送終了時点で前記選択信号がラッチされるように構成されており、前記転送回路による前記第1吐出周期に係る前記選択信号の転送中に、前記第2吐出周期に係る前記転送タイミングが発生したか否かを判断する、判断処理と、前記判断処理において前記転送回路による前記第1吐出周期に係る前記選択信号の転送中に前記第2吐出周期に係る前記転送タイミングが発生したと判断された場合、前記第1吐出周期に係る前記選択信号の転送終了時点で前記選択信号がラッチされた直後に、前記転送回路により、前記第2吐出周期に係る前記波形信号の転送を開始させ、かつ、前記第2吐出周期に係る前記波形信号の転送開始時点以降に、前記第2吐出周期に係る前記選択信号の転送を開始させる、転送処理と、を実行することを特徴とする。
【0009】
本発明に係るプログラムは、ノズルと、前記ノズルから液体を吐出させるための圧力を付与するアクチュエータと、前記アクチュエータの複数の駆動態様を示す波形信号、前記複数の駆動態様の中から1つを選択するための選択信号、及び、前記波形信号及び前記選択信号の転送タイミングを示す転送タイミング信号を、前記ノズルから液体を吐出させる周期である吐出周期毎に出力する出力回路と、前記出力回路が出力した前記波形信号及び前記選択信号に基づいて、前記複数の駆動態様の中から選択された駆動態様を示す駆動信号を、前記吐出周期毎に前記アクチュエータに供給する駆動回路と、前記出力回路から前記波形信号、前記選択信号及び前記転送タイミング信号を受信し、前記吐出周期毎に前記転送タイミングで前記波形信号及び前記選択信号を前記駆動回路に転送する転送回路と、を備えた液体吐出装置であって、前記吐出周期は、第1吐出周期と、前記第1吐出周期の次の吐出周期である第2吐出周期と、を含み、1の前記吐出周期において、前記選択信号の転送は前記波形信号の転送終了時点以降に終了し、前記選択信号の転送終了時点で前記選択信号がラッチされるように構成された液体吐出装置を、前記転送回路による前記第1吐出周期に係る前記選択信号の転送中に、前記第2吐出周期に係る前記転送タイミングが発生したか否かを判断する、判断手段、及び、前記判断手段により前記転送回路による前記第1吐出周期に係る前記選択信号の転送中に前記第2吐出周期に係る前記転送タイミングが発生したと判断された場合、前記第1吐出周期に係る前記選択信号の転送終了時点で前記選択信号がラッチされた直後に、前記転送回路により、前記第2吐出周期に係る前記波形信号の転送を開始させ、かつ、前記第2吐出周期に係る前記波形信号の転送開始時点以降に、前記第2吐出周期に係る前記選択信号の転送を開始させる、転送手段、として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、判断処理及び転送処理を実行することで、転送回路による1の吐出周期に係る選択信号の転送中に次の吐出周期に係る転送タイミングが発生した場合でも、次の吐出周期に係る波形信号及び選択信号を駆動回路に転送し、ドット抜けを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態に係るプリンタを示す平面図である。
図2】プリンタに含まれるヘッドの断面図である。
図3】プリンタの電気的構成を示すブロック図である。
図4】波形信号FIREに含まれる4種類の波形データを示す波形図である。
図5】波形信号FIRE及び選択信号SINが転送回路からドライバICに転送される過程を示す説明図である。
図6】プリンタのCPUが実行するプログラムを示すフロー図である。
図7】本発明の第2実施形態に係るプリンタを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第1実施形態に係るプリンタ100は、図1に示すように、下面に複数のノズルNが形成されたヘッド10と、ヘッド10を保持するキャリッジ20と、キャリッジ20を走査方向(鉛直方向と直交する方向)に移動させる移動機構30と、用紙Pを下方から支持するプラテン40と、用紙Pを搬送方向(走査方向及び鉛直方向と直交する方向)に搬送する搬送機構50と、制御装置90とを備えている。
【0013】
移動機構30は、キャリッジ20を支持する一対のガイド31,32と、キャリッジ20に連結されたベルト33とを含む。ガイド31,32及びベルト33は、走査方向に延びている。制御装置90の制御によりキャリッジモータ30m(図3参照)が駆動されると、ベルト33が走行し、ガイド31,32に沿ってキャリッジ20が走査方向に移動する。
【0014】
プラテン40は、キャリッジ20及びヘッド10の下方に配置されている。プラテン40の上面に、用紙Pが載置される。
【0015】
搬送機構50は、2つのローラ対51,52を有する。搬送方向においてローラ対51とローラ対52との間に、ヘッド10、キャリッジ20及びプラテン40が配置されている。制御装置90の制御により搬送モータ50m(図3参照)が駆動されると、ローラ対51,52が用紙Pを挟持した状態で回転し、用紙Pが搬送方向に搬送される。
【0016】
ヘッド10は、図2に示すように、流路ユニット12と、アクチュエータユニット13とを含む。
【0017】
流路ユニット12の下面に、複数のノズルN(図1参照)が形成されている。流路ユニット12の上面に、複数の圧力室12pが形成されている。流路ユニット12の内部に、インクタンク(図示略)に連通する共通流路12aと、ノズルN毎に個別の個別流路12bとが形成されている。個別流路12bは、共通流路12aの出口から圧力室12pを経てノズルNに至る流路である。
【0018】
アクチュエータユニット13は、流路ユニット12の上面に複数の圧力室12pを覆うように配置された金属製の振動板13aと、振動板13aの上面に配置された圧電層13bと、圧電層13bの上面に複数の圧力室12pのそれぞれと対向するように配置された複数の個別電極13cとを含む。
【0019】
振動板13a及び複数の個別電極13cは、ドライバIC14と電気的に接続されている。ドライバIC14は、本発明の「駆動回路」に該当し、振動板13aの電位をグランド電位に維持する一方、個別電極13cの電位を変化させる。具体的には、ドライバIC14は、制御装置90からの制御信号(後述する波形信号FIRE、選択信号SIN、クロック信号CLK等)に基づいて駆動信号を生成し、信号線14sを介して当該駆動信号を吐出周期(ノズルNからインクを吐出させる周期)毎に個別電極13cに供給する。これにより、個別電極13cの電位が所定の駆動電位とグランド電位との間で変化する。このとき、振動板13a及び圧電層13bにおいて各個別電極13cと各圧力室12pとで挟まれた部分(アクチュエータ13x)が変形することにより、圧力室12pの容積が変化し、圧力室12p内のインクに圧力が付与され、ノズルNからインクが吐出される。アクチュエータ13xは、個別電極13c毎(即ち、ノズルN毎)に設けられており、当該個別電極13cに供給される電位に応じて独立して変形可能である。
【0020】
制御装置90は、図3に示すように、CPU(Central Processing Unit)91と、ROM(Read Only Memory)92と、RAM(Random Access Memory)93と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)94とを含む。ここで、CPU91が本発明の「制御部」に該当し、ROM92が本発明の「記憶部」に該当する。ROM92には、CPU91やASIC94が各種制御を行うためのプログラムやデータが格納されている。RAM93は、CPU91やASIC94がプログラムを実行する際に用いるデータを一時的に記憶する。制御装置90は、外部装置(パーソナルコンピュータ等)と通信可能に接続されており、当該外部装置や入力部(プリンタ100の筐体の外面に設けられたスイッチやボタン)から入力されたデータに基づいて、CPU91やASIC94により記録処理等を実行する。
【0021】
記録処理において、制御装置90は、外部装置から受信した記録指令に基づいて、ドライバIC14、キャリッジモータ30m及び搬送モータ50mを制御し、搬送機構50によって用紙Pを搬送方向に所定量搬送する搬送動作と、キャリッジ20を走査方向に移動させながらノズルNからインクを吐出させる走査動作とを、交互に行わせる。走査動作において、制御装置90は、移動機構30によりヘッド10と用紙Pとを相対的に移動させながら、ドライバIC14により駆動信号を個別電極13cに供給することで、ノズルNから用紙Pに向けてインクを吐出させる。これにより、用紙P上に、インクのドットが形成され、画像が記録される。
【0022】
次いで、ASIC94の構成について説明する。
【0023】
ASIC94は、図3に示すように、出力回路941及び転送回路942を含む。
【0024】
出力回路941は、波形信号FIRE、選択信号SIN、クロック信号CLK等を生成し、これら信号を吐出周期毎に転送回路942に出力する。
【0025】
波形信号FIREは、アクチュエータ13xの4つの駆動態様をそれぞれ示す4つの波形データF0~F3(図4参照)を直列化したシリアル信号である。波形データF0(図4(a)参照)は、1吐出周期内におけるノズルNからのインクの吐出量が「ゼロ(吐出なし)」に対応するものであり、個別電極13cの電位をグランド電位(0V)に維持する。波形データF1(図4(b)参照)は、1吐出周期内におけるノズルNからのインクの吐出量が「小」に対応するものであり、個別電極13cの電位をグランド電位(0V)と駆動電位(VDD)との間で変化させる1つのパルスを含み、1滴のインクを吐出させる。波形データF2(図4(c)参照)は、1吐出周期内におけるノズルNからのインクの吐出量が「中」に対応するものであり、個別電極13cの電位をグランド電位(0V)と駆動電位(VDD)との間で変化させる2つのパルスを含み、2滴のインクを吐出させる。波形データF3(図4(d)参照)は、1吐出周期内におけるノズルNからのインクの吐出量が「大」に対応するものであり、個別電極13cの電位をグランド電位(0V)と駆動電位(VDD)との間で変化させる4つのパルスを含み、4滴のインクを吐出させる。
【0026】
波形信号FIREは、上記4つの波形データF0~F3(図4参照)を含むことで、全体としてアクチュエータ13xの4つの駆動態様を示すものである。
【0027】
アクチュエータ13xの駆動態様とは、個別電極13cの電位の変化に応じた上述のようなアクチュエータ13xの変形の態様のことである。アクチュエータ13xの駆動態様は、個別電極13cの電位の変化に応じて(即ち、波形データF0~F3毎に)異なる。駆動態様によって、圧力室12pの容積の変化、ノズルNに形成されるメニスカスの状態、及び、ノズルNから吐出されるインクの量(ゼロを含む。)が異なる。
【0028】
選択信号SINは、上記4つの駆動態様の中から1つを選択するための選択データを含むシリアル信号であり、記録指令に含まれる画像データに基づいて、アクチュエータ13x毎、かつ、吐出周期毎に生成される。吐出周期は、単位時間当たりのヘッド10と用紙Pとの相対位置の変化量に応じて規定され、当該変化量が大きくなるほど(例えば、キャリッジ20の走査や用紙Pの搬送が高速化するほど)、短くなる。
【0029】
クロック信号CLKは、ASIC94からドライバIC14への各種信号の転送タイミングを示す信号であり、本発明の「転送タイミング信号」に該当する。クロック信号CLKは、記録指令に含まれる画像データと、キャリッジモータ30mに設けられたロータリエンコーダ61からの信号と、用紙Pの搬送経路に設けられた用紙センサ62からの信号とに基づいて、生成及び出力される。ロータリエンコーダ61は、移動機構30によるキャリッジ20の移動速度(ヘッド10と用紙Pとの相対的な移動速度)を検知するものであり、本発明の「速度センサ」に該当する。クロック信号CLKが示す転送タイミング(第1タイミング)は、ロータリエンコーダ61が検知した移動速度に基づくものである。
【0030】
転送回路942は、出力回路941から受信した波形信号FIRE、選択信号SIN、クロック信号CLK等を、吐出周期毎に、クロック信号CLKと同期して(クロック信号CLKが示す第1タイミングで)ドライバIC14に転送する。転送回路942は、上記各信号に対応するLVDS(Low Voltage Differential Signaling)ドライバを内蔵しており、各信号をパルス状の差動信号としてドライバIC14に転送する。LVDS方式は、2本の信号線にそれぞれ逆位相の信号(H信号及びL信号)を入力する方式であり、1本の信号線だけで信号を入力するシングルエンド方式に比べ、ノイズに強く、信号の振幅を小さくして低電圧で伝送可能という特徴がある。LVDS方式は、信号の振幅を小さくすることができるため、H信号とL信号との間の切り換えに要する時間を短くすることができ、その結果として、信号の周波数を高くして、データを高速に伝送することができる。特に、選択信号SINは、アクチュエータ13xの数(ノズルNの数)の選択データを含むため、データ量が膨大になり得る。当該信号をLVDS方式で転送することで、高速伝送が可能となっている。
【0031】
次いで、転送回路942からドライバIC14への波形信号FIRE及び選択信号SINの転送について説明する。
【0032】
図5(a)~(c)において、時点t1~t4は、波形信号FIRE及び選択信号SINの転送が開始されるべき時点である。時系列的に隣接する時点t1~t4間の時間が吐出周期に該当し、時点t1と時点Rtとの間の時間を第1吐出周期、時点t2と時点t3との間の時間を第2吐出周期、時点t3と時点t4との間の時間を第3吐出周期、時点t4とその次の時点(図示略)との間の時間を第4吐出周期とする。
【0033】
各吐出周期において、選択信号SINの転送は波形信号FIREの転送終了時点以降に終了し、選択信号SINの転送終了時点で選択信号SINがラッチされるように構成されている。
【0034】
通常は、図5(a)に示すように、1の吐出周期に係る波形信号FIRE及び選択信号SINの転送終了後に、次の吐出周期に係る第1タイミング(クロック信号CLKが示す転送タイミング)が発生し、波形信号FIRE及び選択信号SINの転送が開始される。
【0035】
しかしながら、例えばヘッド10と用紙Pとの相対位置の変化量が大きくなると(具体的には、キャリッジ20の移動が高速化すると)、上記通常時とは異なり、図5(b)に示すように、第1吐出周期に係る波形信号FIRE及び選択信号SINの転送中に、第2吐出周期に係る第1タイミング(時点t2)が発生する。この場合、転送回路942は、第2吐出周期に係る波形信号FIRE及び選択信号SINを正常に取り込むことができず、その結果、第2吐出周期に係る波形信号FIRE及び選択信号SINをドライバIC14に転送することができない。そのため、第2吐出周期において不吐出となり、ドット抜けが生じ得る。
【0036】
そこで本実施形態では、上記のような不吐出(ドット抜け)を抑制するため、CPU91により図6に示すプログラムが実行される。
【0037】
CPU91は、先ず、n=1とする(S1)。
【0038】
S1の後、CPU91は、第n吐出周期に係る第1タイミング(クロック信号CLKが示す転送タイミング)が発生したか否かを判断する(S2)。第n吐出周期に係る第1タイミングが発生していない場合(S2:NO)、CPU91は、S2の処理を繰り返す。
【0039】
第n吐出周期に係る第1タイミングが発生した場合(S2:YES)、CPU91は、転送回路942からドライバIC14への、第n吐出周期に係る信号(波形信号FIRE、選択信号SIN、クロック信号CLK等)の転送を開始させる(S3)。
【0040】
S3の後、CPU91は、n=N(N:記録指令に基づく最後の吐出に係る吐出周期)であるか否かを判断する(S4)。
【0041】
n=Nの場合(S4:YES)、CPU91は、プログラムを終了する。
【0042】
n≠Nの場合(S4:NO)、CPU91は、n=n+1とする(S5)。
【0043】
S5の後、CPU91は、第n吐出周期に係る転送タイミングが発生したか否かを判断する(S6)。第n吐出周期に係る転送タイミングが発生していない場合(S2:NO)、CPU91は、S6の処理を繰り返す。
【0044】
転送タイミングは、クロック信号CLKが示す「第1タイミング」と、第1タイミングとは異なる「第2タイミング」とを含む。第2タイミングは、ロータリエンコーダ61が検知した移動速度(キャリッジ20の実際の移動速度)に基づかないタイミングである。本実施形態において、第2タイミングは、制御装置90に内蔵されたタイマーにより生成される、所定の移動速度(キャリッジ20の理想の移動速度)に基づくタイミングである。後述のS10において第n吐出周期に係る転送タイミングとして第2タイミングが設定された場合はS6で第2タイミングが発生したか否かが判断され、それ以外の場合はS6で第1タイミングが発生したか否かが判断される。つまり、「転送タイミング」は、S10が実行された場合は「第2タイミング」、それ以外の場合は「第1タイミング」である。
【0045】
第n吐出周期に係る転送タイミングが発生した場合(S6:YES)、CPU91は、第n-1吐出周期に係る選択信号SINの転送中に、第n吐出周期に係る転送タイミングが発生したか否かを判断する(S7:判断処理)。
【0046】
第n-1吐出周期に係る選択信号SINの転送中に第n吐出周期に係る転送タイミングが発生した場合(S7:YES)、CPU91は、第n-1吐出周期に係る選択信号SINの転送終了時点で選択信号SINがラッチされた直後に、転送回路942により第n吐出周期に係る信号の転送を開始させる(S8:転送処理)。例えば、n=2として、図5(c)に示すように、第1吐出周期に係る選択信号SINの転送中に第2吐出周期に係る転送タイミングが発生した場合(S7:YES)、CPU91は、第1吐出周期に係る選択信号SINの転送終了時点で選択信号SINがラッチされた直後に、転送回路942により第2吐出周期に係る信号の転送を開始させる。
【0047】
なお、S8で転送される第n吐出周期に係る波形信号FIREは、第n-1吐出周期に係る選択信号SINの転送中に第n吐出周期に係る転送タイミングが発生していない場合(S7:NO)にS3で転送される第n吐出周期に係る波形信号FIREと同じである。
【0048】
S8の後、CPU91は、n=Nか否かを判断する(S9)。
【0049】
n=Nの場合(S9:YES)、CPU91は、プログラムを終了する。
【0050】
n≠Nの場合(S9:NO)、CPU91は、第n+1吐出周期に係る転送タイミングを「第2タイミング」とする(S10)。例えば、n=2として、図5(c)に示すように、第3吐出周期に係る転送タイミングを「第2タイミング」とする。
【0051】
S10の後、CPU91は、処理をS5に戻し、n=n+1とした後、第n-1吐出周期に係る選択信号SINの転送中に第n吐出周期に係る転送タイミングが発生したか否かを判断する(S7)。第n-1吐出周期に係る選択信号SINの転送中に第n吐出周期に係る転送タイミングが発生していない場合(S7:NO)、CPU91は、第n+1吐出周期に係る転送タイミングを「第1タイミング」とし(S11)、処理をS3に戻す。例えば、図5(c)に示すように、第3吐出周期に係る転送タイミングを「第2タイミング」とし(S10)、第2吐出周期に係る選択信号SINの転送中に第3吐出周期に係る転送タイミングが発生していないため(S7:NO)、第4吐出周期に係る転送タイミングを「第1タイミング」とする。
【0052】
以上に述べたように、本実施形態によれば、図5(c)に示すように、第1吐出周期に係る選択信号SINの転送中に第2吐出周期に係る転送タイミングが発生した場合(S7:YES)、CPU91は、第1吐出周期に係る選択信号SINの転送終了時点で選択信号SINがラッチされた直後に、転送回路942により第2吐出周期に係る信号の転送を開始させる(S8:転送処理)。これにより、転送回路942による1の吐出周期に係る選択信号SINの転送中に次の吐出周期に係る転送タイミングが発生した場合でも、次の吐出周期に係る波形信号FIRE及び選択信号SINをドライバIC14に転送し、ドット抜けを抑制できる。
【0053】
転送処理(S8)において転送される第n吐出周期に係る波形信号FIREは、第n-1吐出周期に係る選択信号SINの転送中に第n吐出周期に係る転送タイミングが発生していない場合(S7:NO)にS3で転送される第n吐出周期に係る波形信号FIREと同じである。この場合、波形信号FIREを変更することなく転送処理(S8)を実行することで、波形信号FIREを変更する場合(例えば、転送時間が短い別の波形信号に置換する場合)に比べ、処理を簡素化できる。
【0054】
図5(c)に示すように、第1吐出周期に係る選択信号SINの転送中に第2吐出周期に係る転送タイミングが発生した場合(S7:YES)、CPU91は、第3吐出周期に係る転送タイミングを「第2タイミング」(キャリッジ20の実際の移動速度に基づかないタイミング)とする(S10)。これにより、キャリッジ20の移動速度が変動した場合にも、波形信号FIRE及び選択信号SINを確実に転送できる。
【0055】
図5(c)に示すように、CPU91は、第3吐出周期に係る転送タイミングを「第2タイミング」とした後(S10)、第2吐出周期に係る選択信号SINの転送中に第3吐出周期に係る転送タイミングが発生していない場合(S7:NO)、第4吐出周期に係る転送タイミングを「第1タイミング」とする。つまり、転送を確実にするために「第2タイミング」で転送を行った後、キャリッジ20の移動速度の変動が収まれば、キャリッジ20の移動速度に基づく「第1タイミング」で転送を行う。これにより、記録品質を維持することができる。
【0056】
第2タイミングは、所定の移動速度(キャリッジ20の理想の移動速度)に基づくものである。この場合、波形信号FIRE及び選択信号SINの転送と、記録品質の維持とを、共に実現できる。
【0057】
続いて、図7を参照し、本発明の第2実施形態について説明する。
【0058】
第2実施形態は、搬送機構50が波形状付与部510を含む点、及び、波形状付与部510による波形状を考慮して第2タイミングを設定する点において、第1実施形態と異なる。
【0059】
波形状付与部510は、用紙Pに走査方向に沿った波形状を付与するものであり、5つのコルゲートプレート511と、4つのリブ512と、拍車ローラ513,514とを含む。
【0060】
5つのコルゲートプレート511は、走査方向に等間隔に配置されている。各コルゲートプレート511は、ヘッドに10に対して搬送方向上流側のローラ対51の上側ローラを覆う基部と、基部から搬送方向下流側に延びた押圧部とを含む。押圧部とプラテン40の表面との間には、若干の隙間が設けられている。
【0061】
4つのリブ512は、走査方向に隣接する2つのコルゲートプレート511の間において、それぞれ搬送方向に延びている。各リブ512の上端は、各コルゲートプレート511の押圧部よりも上方にある。このような位置関係において、各リブ512の上端が用紙Pを下方から支持すると共に、各コルゲートプレート511の押圧部が用紙Pを上方から押圧することにより、用紙Pに走査方向に沿った波形状が付与される。
【0062】
拍車ローラ513,514は、ヘッドに10に対して搬送方向下流側のローラ対52の上側ローラを構成する。拍車ローラ513は、4つのリブ512のそれぞれと搬送方向に重なる位置にある。拍車ローラ514は、5つのコルゲートプレート511のそれぞれと搬送方向に重なる位置にある。拍車ローラ513と、ローラ対52の下側ローラ(図示略)との接触点は、拍車ローラ514の下端よりも上方にある。このような位置関係において、ローラ対52の下側ローラが用紙Pを下方から支持すると共に、拍車ローラ514が用紙Pを上方から押圧することにより、用紙Pに走査方向に沿った波形状が付与される。
【0063】
波形状付与部510により用紙Pに走査方向に沿った波形状が付与されることで、用紙Pに腰が与えられ、良好な搬送が実現される。
【0064】
ただし、用紙Pに波形状を付与する場合に、記録品質を維持するには、ノズルNからのインクの吐出タイミング(吐出周期)を、用紙Pに波形状を付与しない場合の吐出タイミングから変更する必要がある。そこで本実施形態では、第2タイミングを、所定の移動速度(キャリッジ20の理想の移動速度)だけでなく、波形状付与部510により付与される波形状を考慮して設定する。
【0065】
本実施形態によれば、第1実施形態による効果に加え、用紙Pに波形状が付与された場合において、第2タイミングを適切に設定することで、波形信号FIRE及び選択信号SINの転送と、記録品質の維持とを、より確実に実現できる。
【0066】
続いて、本発明の第3実施形態について説明する。
【0067】
第3実施形態は、第2タイミングをROM92(記憶部)に記憶された時間間隔に基づいて設定する点において、第1実施形態と異なる。
【0068】
本実施形態では、例えばプリンタ100の製造時や、プリンタ100使用中における定期的なタイミング、ユーザが指定したタイミング等に、ROM92に、1の吐出周期に係る第1タイミングから次の吐出周期に係る第1タイミングまでの時間間隔が記憶される。CPU91は、ROM92に記憶された当該時間間隔に基づいて、第2タイミングを設定する。
【0069】
本実施形態によれば、ROM92に記憶された時間間隔に基づいて第2タイミングを設定することで、第1実施形態のように制御装置90に内蔵されたタイマーにより第2タイミングを設定するに比べ、タイマーの故障等で第2タイミングが不正確になることがなく、波形信号FIRE及び選択信号SINの転送をより確実に実現できる。
【0070】
<変形例>
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0071】
上述の実施形態(図5参照)では、各吐出周期において波形信号FIRE及び選択信号SINが互いに同じタイミング(転送回路が出力回路から信号を受信した時点)で転送開始されるが、これに限定されない。例えば、各吐出周期において波形信号FIREが先に転送開始され、波形信号FIREの転送開始から遅延時間の経過後に選択信号SINが転送開始されてもよい。
【0072】
出力回路及び/又は転送回路が、アクチュエータの群毎に設けられてもよい。
【0073】
波形信号を出力する回路と、選択信号を出力する回路とが、別々に設けられてもよい。この場合、上記2つの回路が出力回路を構成する。
【0074】
同様に、波形信号を転送する回路と、選択信号を転送する回路とが、別個に設けられてもよい。この場合、上記2つの回路が転送回路を構成する。
【0075】
転送回路は、上述の実施形態では波形信号及び選択信号を差動信号として駆動回路に転送するが、これに限定されない。
【0076】
波形信号や選択信号は、シリアルに限定されず、パラレルであってもよい。
【0077】
上述の実施形態では、アクチュエータの駆動方式として「押し打ち方式(予めアクチュエータ13xを平坦に保持しておき、所定のタイミングでアクチュエータ13xを圧力室12pに向かって凸に変形させ、圧力室12pの容積を減少させることでノズルNからインクを吐出させる方式)」を採用しているが、これに限定されず、「引き打ち方式(圧力室12pの容積を一旦増加させてから所定時間経過後に圧力室12pの容積を元に戻すことでノズルNからインクを吐出させる方式)」を採用してもよい。「引き打ち方式」では、圧力室12pの容積が増加する際に、圧力室12p内に負の圧力波が生じ、その後負の圧力波が反転して正の圧力波として圧力室12pに戻ってきたタイミングで、圧力室12pの容積を元に戻し、圧力室12p内に正の圧力波を生じさせ、これら圧力波を重畳させる。このような圧力波の重畳により、圧力室12p内のインクに大きな圧力を付与することができる。「引き打ち方式」の場合、波形データF0(図4(a)参照)は、個別電極13cの電位を駆動電位(VDD)に維持する。波形データF1~F3(図4(b)~(d)参照)は、個別電極13cの電位を、吐出周期の最初の時点で駆動電位(VDD)とし、その後駆動電位(VDD)とグランド電位(0V)との間で変化させる。
【0078】
アクチュエータは、圧電方式に限定されず、その他の方式(例えば、発熱素子を用いたサーマル方式、静電力を用いた静電方式等)であってもよい。
【0079】
ヘッドは、上述の実施形態ではシリアル式であるが、ライン式であってもよい。ヘッドがライン式の場合、搬送機構がヘッドと記録媒体とを相対的に移動させる移動機構に該当し、搬送モータに取り付けられた速度センサが検知した移動速度(搬送速度)に基づいて第1タイミングが設定される。
【0080】
ノズルから吐出される液体は、インクに限定されず、インク以外の液体(例えば、インク中の成分を凝集又は析出させる処理液等)であってもよい。
【0081】
本発明は、プリンタに限定されず、ファクシミリ、コピー機、複合機等にも適用可能である。また、本発明は、画像の記録以外の用途で使用される液体吐出装置(例えば、基板に導電性の液体を吐出して導電パターンを形成する液体吐出装置)にも適用可能である。
【0082】
本発明に係るプログラムは、フレキシブルディスク等のリムーバブル型記録媒体やハードディスク等の固定型記録媒体に記録して配布可能である他、通信回線を介して配布可能である。
【符号の説明】
【0083】
100 プリンタ(液体吐出装置)
10 ヘッド
13x アクチュエータ
14 ドライバIC(駆動回路)
30 移動機構
50 搬送機構
510 波形状付与部
61 ロータリエンコーダ(速度センサ)
91 CPU(制御部)
92 ROM(記憶部)
941 出力回路
942 転送回路
N ノズル
FIRE 波形信号
SIN 選択信号
CLK クロック信号(転送タイミング信号)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7