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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153990
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】定着装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20221005BHJP
【FI】
G03G15/20 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056792
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100069615
【弁理士】
【氏名又は名称】金倉 喬二
(72)【発明者】
【氏名】木村 拓
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033AA25
2H033BA11
2H033BA12
2H033BA25
2H033BA26
2H033BB03
2H033BB05
2H033BB06
2H033BB13
2H033BB14
2H033BB15
2H033BB18
2H033BB21
2H033BB33
2H033BB37
2H033BE00
(57)【要約】
【課題】定着部材の破損を抑制する手段を提供する。
【解決手段】回転可能なベルト状の定着部材と、張架された前記定着部材の回転方向における側端部を規制する規制部材(6)と、を有し、前記規制部材(6)は、前記回転方向において前記定着部材の内周面の一部と接触する案内部(68)と、前記案内部(68)で接触する前記定着部材の側端部の移動を規制する規制部(61)と、前記回転方向において前記規制部(61)の上流側に伸びるように設けられ、前記定着部材から離間する方向に傾斜する傾斜面が形成された上流傾斜部(62)と、を有し、前記回転方向において、前記上流傾斜部(62)の傾斜面の終点(64)は、前記案内部(68)の始点より上流側に設けられている。
【選択図】 図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能なベルト状の定着部材と、
張架された前記定着部材の回転方向における側端部を規制する規制部材と、
を有し、
前記規制部材は、
前記回転方向において前記定着部材の内周面の一部と接触する案内部と、
前記案内部で接触する前記定着部材の側端部の移動を規制する規制部と、
前記回転方向において前記規制部の上流側に伸びるように設けられ、前記定着部材から離間する方向に傾斜する傾斜面が形成された上流傾斜部と、
を有し、
前記回転方向において、前記上流傾斜部の傾斜面の終点は、前記案内部の始点より上流側に設けられていることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
請求項1に記載の定着装置において、
前記案内部は、前記定着部材の内周面と接触する接触面を有し、
前記規制部は、前記接触面と直交し、前記定着部材の側端部と当接して前記定着部材の移動を規制する壁面を有することを特徴とする定着装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の定着装置において、
前記上流傾斜部の傾斜面は、前記規制部と連続し、前記回転方向における下流側から上流側に向けて前記定着部材から離間する方向に傾斜するように形成されていることを特徴とする定着装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の定着装置において、
前記規制部材は、
前記回転方向における前記規制部の下流側に伸びるように設けられ、前記定着部材から離間する方向に傾斜する傾斜面が形成された下流傾斜部を有し、
前記回転方向において、前記下流傾斜部の傾斜面の始点は、前記案内部の終点より下流側に設けられていることを特徴とする定着装置。
【請求項5】
請求項4に記載の定着装置において、
前記下流傾斜部の傾斜面は、前記規制部と連続し、前記回転方向における上流側から下流側に向けて前記定着部材から離間する方向に傾斜するように形成されていることを特徴とする定着装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の定着装置において、
前記規制部材は、前記定着部材を挟んで対向配置されていることを特徴とする定着装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の定着装置を有することを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転可能なベルトを有する定着装置およびその定着装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の定着装置は、定着部材としてのベルトの端部の印刷外領域をキャップ状のフランジに挿入する構成とし、そのフランジの内周部の形状をベルト規制面に到達するまで徐々に内径が小さくなるように形成している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-323821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術においては、回転する定着部材としてのベルトの寄りを規制する部材として、ベルトの内面と側面を支持するフランジは、取り付け公差によってベルト側面とフランジ規制面が完全に平行でない場合、ベルトの寄り力によってベルトが破損する場合があるという問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題を解決することを課題とし、定着部材の破損を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのため、本発明は、回転可能なベルト状の定着部材と、張架された前記定着部材の回転方向における側端部を規制する規制部材と、を有し、前記規制部材は、前記回転方向において前記定着部材の内周面の一部と接触する案内部と、前記案内部で接触する前記定着部材の側端部の移動を規制する規制部と、前記回転方向において前記規制部の上流側に伸びるように設けられ、前記定着部材から離間する方向に傾斜する傾斜面が形成された上流傾斜部と、を有し、前記回転方向において、前記上流傾斜部の傾斜面の終点は、前記案内部の始点より上流側に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
このようにした本発明は、定着部材の破損を抑制することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施例における画像形成装置の構成を示す概略側断面図
図2】第1の実施例における定着装置の構成を示す概略側断面図
図3】第1の実施例における定着ローラおよび加圧ローラの構成を示す説明図
図4】第1の実施例における定着ベルトの構成を示す断面図
図5】第1の実施例におけるニップ形成部材の構成を示す説明図
図6】第1の実施例における面状発熱体の分解斜視図
図7】第1の実施例における面状発熱体の上面図
図8】第1の実施例におけるベルト規制部材の斜視図
図9】第1の実施例における定着ベルトとベルト規制部材の説明図
図10】第1の実施例におけるテーパー部頂点の説明図
図11】第1の実施例における定着ベルトの印刷耐久性の説明図
図12】第1の実施例におけるベルト規制部材の作用の説明図
図13】第1の実施例における定着ベルトの動作の説明図
図14】第2の実施例におけるベルト規制部材の斜視図
図15】第2の実施例におけるテーパー部頂点の説明図
図16】第2の実施例における定着ベルトの印刷耐久性の説明図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明による定着装置および画像形成装置の実施例を説明する。
【実施例0010】
図1は第1の実施例における画像形成装置の構成を示す概略側断面図である。図1(a)は画像形成装置全体の概略側断面図、図1(b)は画像形成装置に備えられた現像装置の概略側断面図である。
【0011】
図1において、画像形成装置10は、上位装置から受信した印刷ジョブ(印刷データ)に応じて媒体に現像剤画像としてのトナー像を形成して印刷を行うものであり、例えば電子写真方式のプリンタである。なお、画像形成装置10は、複数色の現像剤としてのトナーの画像を形成するカラープリンタであっても良く、また単色のトナーの画像を形成するモノクロプリンタであっても良い。
【0012】
画像形成装置10は、図中矢印Aが示す媒体搬送方向に搬送される印刷媒体Pにトナー像を形成する現像装置13と、現像装置13において印刷媒体Pに転写されたトナーの定着を行う定着装置11とを有している。
【0013】
現像装置13は、感光体ドラムや、感光体ベルトなどの像担持体14上を帯電部材15によって帯電させ、潜像形成手段16により静電潜像を形成してこの潜像を現像手段17によりトナーを現像することでトナー像とし、このトナー像を被定着材としての普通紙や特殊紙からなる記録媒体Pに、転写部材18により像担持体14上から転写するものである。
【0014】
定着装置11は、現像装置13から搬送された印刷媒体Pを加熱および加圧してトナーを融着し、印刷媒体Pに転写されたトナーの定着を行うものである。
【0015】
また、カラー複写機やカラープリンタ、カラーファクシミリ等のカラー画像形成装置においては、2色以上のトナーを記録媒体Pに転写するため、図1(a)に示すように例えば4対の現像装置13および転写部材18を備えている。
【0016】
図2は第1の実施例における定着装置の構成を示す概略側断面図である。
【0017】
図2において、定着装置11は、図中矢印Aが示す媒体搬送方向に搬送される印刷媒体Pを加熱および加圧してトナー9を融着し、印刷媒体Pに転写されたトナー9の定着を行うものであり、定着ローラ1と、定着ベルト2と、支持体3a、3bと、面状発熱体4と、加圧部材5a、5bと、ベルト規制部材6と、ニップ形成部材7と、加圧ローラ8とを有している。
【0018】
定着部材としての定着ベルト2は、印刷媒体Pおよびトナー9を加熱し、トナー9を印刷媒体Pに定着させるものである。この定着ベルト2は、図中矢印Bが示すベルト回転方向に回転可能な無端状のベルトであり、定着ローラ1、ベルト規制部材6、ニップ形成部材7、および面状発熱体4を支持する支持体3aによって回転可能に張架されたものである。
【0019】
トナー9に用いる結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン/プロピレン共重合体、スチレン/ビニルナフタレン共重合体、スチレン/アクリル酸メチル共重合体、ポリエステル系重合体、ポリウレタン系重合体、エポキシ系重合体、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂等を用いることができ、これらを単独あるいは混合して用いることができる。またトナー9に対し、定着時のオフセットを防止する目的でワックスを含有させる場合があるが、この場合のワックスとしては、ポリエチレンワックス、プロピレンワックス、カルナウバワックス、各種エステル系等のワックス類を用いることができる。
【0020】
加熱部材としての面状発熱体4は、定着ベルト2を加熱するものであり、支持体3aと支持体3bに挟まれている。
【0021】
なお、支持体3aの回転中心を支点として、定着ベルト2に対する総押圧荷重、即ち支持体3bに対するスプリングなどの加圧部材5aによる総押圧荷重は、支持体3aと定着ベルト2との摺動性を悪化させないため、最大でも2kg・f程度である。
【0022】
また、ニップ形成部材7は、スプリングなどの加圧部材5bによって加圧されている。
【0023】
定着ローラ1は、定着ベルト2を挟んで、最大で20kg・f程度の荷重で加圧ローラ8に押圧されている。
【0024】
ニップ形成部材7は、定着ベルト2を介して加圧ローラ8に対向する位置に配置され、定着ベルト2と加圧ローラ8との間に接触部(ニップ部)を形成している。媒体搬送方向に搬送される印刷媒体Pは、定着ベルト2と加圧ローラ8との間に形成されたニップ部を通過する。
【0025】
さらに、温度検知手段としての温度センサが定着ベルト2の外面または内面に当接、または微小なギャップを設けて、非接触で配置されている。
【0026】
支持体3a、3bは、アルミニウム、銅など熱伝導性、加工性の高い金属、またはこれらを主成分とする合金、あるいは耐熱性、剛性の高い鉄、鉄系の合金類、ステンレスなどで構成されている。
【0027】
支持体3a、3bと面状発熱体4は、定着ベルト2に対して押圧されることで一体化し、固定部材として、回転駆動により回転する定着ベルト2を摺動させる。
【0028】
面状発熱体4は、支持体3a、3bに接触する面は平面であり、セラミックヒータ、ステンレスヒータなどが用いられる。また、面状発熱体4は、支持体3aと定着ベルト2との熱伝達効率を高くするため、ベルト回転方向における支持体3aの下流側に配置される。
【0029】
規制部材としてのベルト規制部材6は、定着ベルト2の回転方向における側端部の寄り(移動)を規制するものであり、定着ローラ1の軸方向(ベルト回転方向と直交する方向)における定着ベルト2の両端部に、定着ベルト2を挟んでそれぞれ対向配置されたものである。なお、ベルト規制部材6の詳細は後述する。
【0030】
図3は第1の実施例における定着ローラおよび加圧ローラの構成を示す説明図である。
【0031】
図2に示す定着ローラ1および加圧ローラ8は、図3(a)に示すように、弾性層20と芯金19にて構成される。また加圧ローラ8は、図3(b)に示すような離型層21を弾性層20の上に形成したものでも良い。
【0032】
弾性層20は通常シリコンゴム、またはスポンジ状シリコンゴム、フッ素ゴムなど耐熱性の高いゴム材料が用いられる。芯金19は一定の剛性を保つためにアルミニウム、鉄、ステンレスなどの金属製パイプまたはシャフトが用いられる。
【0033】
なお、定着ローラ1は図2における矢印Bが示す方向に回転駆動され、加圧ローラ5は図2における矢印Cが示す矢印の方向に回転駆動される。
【0034】
図4は第1の実施例における定着ベルトの構成を示す断面図である。
【0035】
図4に示すように、定着ベルト2は、例えば、薄い基体22a(ニッケル、ポリイミド、ステンレスなどからなる基体の場合は強度、可撓性を両立するため厚さが好ましくは30から150μm位が適当)上に、弾性層22bとしてシリコンゴム(低硬度と高熱伝導性を両立するため厚さが好ましくは50から300μm)又はフッソ樹脂(磨耗による減肉と高熱伝導性を両立するため厚さが好ましくは10から50μm)を薄く形成し、離型層22cを弾性層22bの上に設けている。
【0036】
離型層22cは、耐熱性が高く、また成型後の表面自由エネルギーが低い樹脂、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)、FEP(パーフルオロエチレン-プロペンコポリマー)などの代表的なフッ素系樹脂(厚さが好ましくは10から50μm)を用いることができる。
【0037】
図5は第1の実施例におけるニップ形成部材の構成を示す説明図である。
【0038】
図5において、ニップ形成部材7は、芯金23と、弾性層24とを有している。
【0039】
芯金23は、一定の剛性を保つためにアルミニウム、鉄、ステンレスなどの金属製シャフトが用いられる。
【0040】
弾性層24は、通常シリコンゴム、またはスポンジ状シリコンゴム、フッ素ゴムなど耐熱性の高いゴム材料が用いられ、表面にシリコン系、フッ素系のコート、フィルムを被覆してもよい。
【0041】
このときの図2に示す加圧部材5bによる総押圧荷重は、ニップ形成部材7と定着ベルト2との摺動性を悪化させないため、最大でも10kg・f程度である。
【0042】
図6は第1の実施例における面状発熱体の分解斜視図であり、図7は第1の実施例における面状発熱体の上面図である。
【0043】
図6および図7において、面状発熱体4は、例えば、SUS430などの基板26上に電気絶縁層29bとして薄くガラス膜を形成し、その上にニッケル-クロム合金あるいは銀-パラジウム合金の粉末をスクリーン印刷によってペースト状に抵抗発熱体27を形成し、また端部に銀など化学的に安定で電気抵抗の低い金属や、タングステンなどの高融点金属によって電極28を形成し、その上にガラス、あるいはPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)、FEP(パーフルオロエチレン-プロペンコポリマー)などの代表的なフッ素系樹脂による保護層29aで保護したものが用いられる。
【0044】
図8(a)は第1の実施例におけるベルト規制部材の斜視図、図9は第1の実施例における定着ベルトとベルト規制部材の説明図、図10(a)は第1の実施例におけるテーパー部頂点の説明図である。なお、図9は規制部材6が定着ベルト2の寄りを規制している場合の説明図であり、定着ベルト2を透視した図である。
【0045】
図8(a)、図9、および図10(a)に示すように、ベルト規制部材6は、ベルト規制面61と、延長部62、66と、エッジ部63、65と、テーパー部頂点64、67と、ベルト走行面68と、ベルト走行面入り口68aと、ベルト走行面出口68bとを有している。
【0046】
案内部としてのベルト走行面68は、矢印Bが示すベルト回転方向において定着ベルト2の内周面の一部と接触し、定着ベルト2を案内するものである。
【0047】
このベルト走行面68は、図9に示すように、回転する定着ベルト2の内周面と接触する接触面であり、湾曲した形状に形成されている。したがって、定着ベルト2は、その内周面がベルト走行面68と接触して摺動し、回転する。
【0048】
ベルト走行面入り口68aは、矢印Bが示すベルト回転(走行)方向におけるベルト走行面68の始点となる。
【0049】
また、ベルト走行面出口68bは、矢印Bが示すベルト回転(走行)方向におけるベルト走行面68の終点となる。
【0050】
規制部としてのベルト規制面61は、ベルト走行面68で接触する定着ベルト2の矢印Bが示すベルト回転方向における側端部の移動を規制するものである。
【0051】
このベルト規制面61は、湾曲したベルト走行面68に対して垂直(直交するよう)に形成され、回転する定着ベルト2の回転方向における側端部と当接することにより定着ベルト2の移動を規制する壁面である。
【0052】
上流傾斜部としての延長部62は、矢印Bが示すベルト回転(走行)方向におけるベルト規制面61の上流側に伸びるように設けられ、定着ベルト2から離間する方向に傾斜する傾斜面がテーパー状に形成されたものである。
【0053】
延長部62の傾斜面は、ベルト規制面61と連続し、ベルト回転方向における下流側から上流側に向けて定着ベルト2から離間する方向に傾斜するように形成されている。
【0054】
下流傾斜部としての延長部66は、矢印Bが示すベルト回転(走行)方向におけるベルト規制面61の下流側に伸びるように設けられ、定着ベルト2から離間する方向に傾斜する傾斜面がテーパー状に形成されたものである。
【0055】
延長部66の傾斜面は、ベルト規制面61と連続し、ベルト回転方向における上流側から下流側に向けて定着ベルト2から離間する方向に傾斜するように形成されている。
【0056】
テーパー部頂点64は、ベルト規制面61と延長部62との境界であり、矢印Bが示すベルト回転(走行)方向における延長部62の終点となる。また、エッジ部63は、矢印Bが示すベルト回転(走行)方向における延長部62の始点となる。
【0057】
テーパー部頂点67は、ベルト規制面61と延長部66との境界であり、矢印Bが示すベルト回転(走行)方向における延長部66の始点となる。また、エッジ部65は、矢印Bが示すベルト回転(走行)方向における延長部66の終点となる。
【0058】
このようにベルト回転方向におけるベルト規制部材6の端部にテーパー状の延長部62および延長部66が形成されていることにより、ベルト規制部材6の取り付け角度が定着ベルト2の面に対して垂直でない場合でも、定着ベルト2の端部がベルト回転方向における上流側のエッジ部63および下流側のエッジ部65に当たらずに定着ベルト2の走行を円滑にすることができる。
【0059】
本実施例では、ベルト回転方向における上流側のテーパー状の延長部62はベルト規制面61の境目でテーパー部頂点64を形成しており、テーパー部頂点64はベルト走行面68の最上流部のベルト走行面入り口68aよりもさらに上流側に位置している。
【0060】
即ち、ベルト回転方向において、延長部62の傾斜面の終点であるテーパー部頂点64は、ベルト走行面68の始点であるベルト走行面入り口68aより上流側に設けられている。
【0061】
また、ベルト回転方向における下流側のテーパー状の延長部66はベルト規制面61の境目でテーパー部頂点67を形成しており、テーパー部頂点67はベルト走行面68の最下流部のベルト走行面出口68bと同一の位置となっている。
【0062】
上述した構成の作用について説明する。
【0063】
まず、画像形成装置が行う印刷処理の概略を、図1を参照しながら説明する。なお、印刷処理は、画像形成装置10の制御部によりメモリ等に記憶された印刷処理プログラムに基づいて行われる。
【0064】
画像形成装置10の制御部は、通信回線を介して外部装置から印刷命令としての印刷データ(印刷ジョブ)を受信する。印刷データを受信した制御部は、給紙モータを制御し、印刷媒体Pを1枚ずつ分離して給紙し、さらに画像形成タイミングに合わせて搬送ローラにより現像装置13へ搬送する。
【0065】
このとき、制御部は、現像装置13を制御してトナー像を形成する。
【0066】
まず、制御部は、現像装置13の像担持体14を回転させ、帯電部材15で像担持体14の表面を一様に帯電させる。制御部は、潜像形成手段16により、帯電された像担持体14の表面を印刷データに応じて選択的に露光し、静電潜像を形成した後、現像手段17により、像担持体14の表面に形成された静電潜像にトナーを供給して現像する。
【0067】
制御部は、転写部材18の転写電圧等を制御して像担持体14の表面に現像されたトナー像を図1中の矢印Aが示す媒体搬送方向に搬送される印刷媒体Pに転写する。
【0068】
現像装置13でトナー像が転写された印刷媒体Pは、媒体搬送方向に搬送され、同様の現像工程を行う現像装置により、各色のトナー像が転写され、画像形成に必要なすべてのトナー像が転写された後、定着装置11へ搬送される。
【0069】
制御部は、定着装置11を制御し、図2に示す定着ベルト2を回転させ、熱と圧力で印刷媒体Pに転写されたトナーを定着させる。
【0070】
その後、制御部は、印刷媒体Pを媒体搬送方向へ搬送し、装置外へ排出して本印刷処理を終了する。
【0071】
次に、図2図8(a)、図9、および図10に示す定着装置11のベルト規制部材6の作用を図12の第1の実施例におけるベルト規制部材の作用の説明図に基づいて説明する。
【0072】
図12において、ベルト規制部材6Lおよびベルト規制部材6Rが定着ベルト2の左右の両端部にそれぞれ配置されている。
【0073】
定着ベルト2は、回転駆動されて寄り力が発生し、確率的に左右どちらかに寄ることでベルト規制部材6L、6Rのどちらかのベルト規制面に突き当たり、定着ベルト2の寄りは停止する。このように、定着ベルト2の寄りはベルト規制部材6L、6Rによって規制される。
【0074】
ベルト規制部材6L、6Rは、定着ベルト2の面と平行する図中の水平軸に対して垂直(図中の垂直軸に平行)に取り付けることが理想であるが、取り付け公差によって、図12中の+側、-側のどちらかの角度で設置される。
【0075】
この時の取り付け角度は、ベルト規制部材6Lおよびベルト規制部材6Rの上流側が接近する方向を+側、離間する方向を-側としている。
【0076】
定着ベルト2の破損強度は、ベルト規制部材6L、6Rの取り付け角度が垂直(±0)の場合に最も高く、この強度をSとする。
【0077】
しかし、ベルト規制部材6L、6Rの取り付け角度が+側、-側に大きくなるにつれ、定着ベルト2の破損強度は低下する。
【0078】
次に、図8図10、および図11を用いてベルト規制部材6の作用を説明する。
【0079】
図8(a)に示すベルト規制部材6は、本実施例のベルト規制部材6であり、図10(a)に示すように、上流側のテーパー部頂点64がベルト走行面入り口68aよりもさらに上流側に位置し、下流側のテーパー部頂点67はベルト走行面出口68bと同一の位置にある。
【0080】
一方、図8(b)に示すベルト規制部材6は、比較例のベルト規制部材6であり、図10(b)に示すように、上流側のテーパー部頂点64がベルト走行面入り口68aと同一の位置にあり、下流側のテーパー部頂点67もベルト走行面出口68bと同一の位置にある。
【0081】
図11は第1の実施例における定着ベルトの印刷耐久性の説明図である。
【0082】
図11(a)は、図8(a)に示す本実施例のベルト規制部材6を-2度から+2度までの範囲で角度を変えて取り付けた場合の、取り付け角度とベルト耐久枚数(定着ベルト2の印刷耐久枚数)の関係を表したものである。
【0083】
また、図11(b)は、図8(b)に示す比較例のベルト規制部材6を-2度から+2度までの範囲で角度を変えて取り付けた場合の、取り付け角度とベルト耐久枚数(定着ベルト2の印刷耐久枚数)の関係を表したものである。
【0084】
図11(a)と図11(b)を比較すると、図8(a)に示す本実施例のベルト規制部材6は取り付け角度を+側、即ち定着ベルト2をベルト規制部材6の上流側テーパー部頂点に積極的に突き当たるようにすると、定着ベルト2が寿命までの印刷耐久性を確保できる取り付け角度の範囲が比較例よりも広くなる。
【0085】
以下にこの理由を図13の第1の実施例における定着ベルトの動作の説明図を用いて図8および図9を参照しながら説明する。
【0086】
図13(a)は、図8(b)に示す比較例のベルト規制部材6の上流側のテーパー部頂点64に定着ベルト2が突き当たった場合の挙動を示したものである。
【0087】
回転する定着ベルト2の端面は、延長部62の傾斜面に接触し、延長部62の傾斜面との接触圧が増加する。
【0088】
上流側のテーパー部頂点64はベルト走行面入り口68a(図10(a)参照)と同一の位置にあるため、図13(a)の上図に示すように、延長部62の傾斜面と接触しながら回転する定着ベルト2の端面はテーパー部頂点64に突き当たると座屈変形(めくれ)が発生する。
【0089】
座屈変形を起こした定着ベルト2の端面は、ベルト走行面68により内側(内周面側)に逃げることができず、ベルト走行面68側には変形できないため、外側(外周面側)に広がってめくれてしまう。
【0090】
外側(外周面側)に広がってめくれた定着ベルト2は、図13(a)の下図に示すように、テーパー部頂点64によって端部に局所的な力が掛かるのと同時に広げる力(D1、D2)が働くことになり、寄り力が強度Sより小さい場合でも亀裂が入って破損することがある。
【0091】
このように、定着ベルト2は、回転中に端部がめくれることを繰り返すことにより、端部がラッパ上に広げられ、疲労破壊(破断)が発生してしまう。
【0092】
なお、ベルト規制部材6の下流側のテーパー部頂点67に定着ベルト2が突き当たった場合も、同様に定着ベルト2は回転中に端部がめくれることを繰り返し、端部がラッパ上に広げられ、疲労破壊(破断)が発生してしまう。
【0093】
一方、図13(b)は、図8(a)に示す本実施例のベルト規制部材6の上流側のテーパー部頂点64に定着ベルト2が突き当たった場合の挙動を示したものである。
【0094】
回転する定着ベルト2の端面は、延長部62の傾斜面に接触し、延長部62の傾斜面との接触圧が増加する。このとき、定着ベルト2の端面は、テーパー部頂点64付近で座屈変形(めくれ)が最大となる。
【0095】
上流側のテーパー部頂点64はベルト走行面入り口68a(図10(a)参照)よりさらに上流側に位置しているため、図13(b)の上図に示すように、定着ベルト2はテーパー部頂点に突き当たると座屈変形を起こし、内側(内周面側)に撓む。
【0096】
詳細に説明すると、テーパー部頂点64の上流側では定着ベルト2の端部にめくれが発生し、テーパー部頂点64付近でめくれが最大になるが、テーパー部頂点64の内側にベルト走行面68が存在しないため、めくれが元に戻ろうとして定着ベルト2の端部が内側(内周面側)に向き、撓む。
【0097】
定着ベルト2の端部が内側(内周面側)に撓むのは、テーパー部頂点64の内側にベルト走行面68が無く、座屈変形は外側に広げるよりも内側に撓ませる方が弱い力で済むため、外側に広げることは変形の制限となるからである。
【0098】
その後、ベルト走行面68が存在する領域では、定着ベルト2の内周面がベルト走行面68により支持され、定着ベルト2の端部の内側(内周面側)のめくれが解消された状態となる。
【0099】
このように、本実施例では、定着ベルト2の回転方向において、ベルト規制部材6の延長部62の傾斜面の終点であるテーパー部頂点64がベルト走行面68の始点であるベルト走行面入り口68aより上流側に設けられているため、定着ベルト2がベルト走行面入り口68aより先にテーパー部頂点64に接触することにより、定着ベルト2は内側に座屈変形して、破れずに走行面で変形が回復し、定着ベルト2の破損を抑制することができる。
【0100】
以上説明したように、第1の実施例では、定着ベルトの破損を抑制することができるという効果が得られる。
【実施例0101】
第2の実施例の構成は、ベルト規制部材の構成が第1の実施例と異なっている。
【0102】
その第2の実施例の構成を図14の第2の実施例におけるベルト規制部材の斜視図および図15の第2の実施例におけるテーパー部頂点の説明図に基づいて説明する。
【0103】
なお、上述した第1の実施例と同様の部分は、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0104】
図14および図15に示すように、ベルト回転方向における上流側のテーパー状の延長部62はベルト規制面61の境目でテーパー部頂点64を形成しており、ベルト走行面入り口68aよりもさらに上流側に位置している。これは、第1の実施例と同様である。
【0105】
本実施例では、下流側のテーパー部頂点67は、ベルト走行面出口68bよりもさらに下流側に位置している。
【0106】
即ち、ベルト回転方向において、延長部66の傾斜面の始点であるテーパー部頂点67は、ベルト走行面68の終点であるベルト走行面出口68bより下流側に設けられている。
【0107】
上述した構成の作用について説明する。
【0108】
なお、画像形成装置の動作は第1の実施例と同様なので説明を省略する。
【0109】
図16は第2の実施例における定着ベルトの印刷耐久性の説明図である。
【0110】
図16は、図14に示す本実施例のベルト規制部材6を-2度から+2度までの範囲で角度を変えて取り付けた場合の、取り付け角度とベルト耐久枚数(定着ベルト2の印刷耐久枚数)の関係を表したものである。
【0111】
図16に示すように、図14に示す本実施例のベルト規制部材6は、取り付け角度を+側だけでなく-側においても、定着ベルト2がベルト規制部材6のテーパー部頂点67に突き当たった場合、定着ベルト2が寿命までの印刷耐久性を確保できる範囲が第1の実施例よりも広くなる。つまりベルト規制部材6の取り付け角度公差に余裕ができることになる。
【0112】
以上説明したように、第2の実施例では、第1の実施例の効果に加え、ベルト規制部材の取り付け角度公差に余裕を持たせることができるという効果が得られる。
【0113】
なお、第1の実施例および第2の実施例では、画像形成装置をプリンタとして説明したが、それに限られるものでなく、白黒(モノクロ)画像または少なくとも2色以上のカラー画像を形成する複写機、ファクシミリ装置、複合機(MFP)等としても良い。
【符号の説明】
【0114】
1 定着ローラ
2 定着ベルト
3a、3b 支持体
4 面状発熱体
5a、5b 加圧部材
6 ベルト規制部材
7 ニップ形成部材
8 加圧ローラ
10 画像形成装置
11 定着装置
13 現像装置
14 像担持体
15 帯電部材
16 潜像形成手段
17 現像手段
18 転写部材
61 ベルト規制面
62、66 延長部
63、65 エッジ部
64、67 テーパー部頂点
68 ベルト走行面
68a ベルト走行面入り口
68b ベルト走行面出口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16