(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022015400
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】ブラシレスモータ
(51)【国際特許分類】
H02K 1/28 20060101AFI20220114BHJP
【FI】
H02K1/28 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020118215
(22)【出願日】2020-07-09
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田村 敏
(72)【発明者】
【氏名】塩田 直樹
【テーマコード(参考)】
5H601
【Fターム(参考)】
5H601AA02
5H601BB16
5H601CC01
5H601CC15
5H601DD01
5H601DD09
5H601DD11
5H601DD18
5H601EE03
5H601EE20
5H601EE27
5H601GA02
5H601GC04
5H601GC12
5H601JJ05
(57)【要約】
【課題】ブラシレスモータの振動の低減を図る。
【解決手段】ステータコアを有するステータと、ロータコア22およびリング状のマグネットを有するロータと、を備えたブラシレスモータであり、上記ステータコアは、複数のティースを有し、かつ、上記ロータは、上記複数のティースの内側に回転自在に配置されている。上記マグネットは、外周部に磁極が形成されるように着磁されている。ロータコア22は、複数のロータコアシート22aが積層されてなる部材である。積層された複数のロータコアシート22aにおいて、積層方向35に隣り合うロータコアシート22a間に隙間22p,22qが設けられ、ロータコア22の回転軸方向における重心G2の位置は、ロータコア22の回転軸方向の中心部22uから回転軸方向にずれている。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコアおよび該ステータコアに巻装された巻線を有するステータと、ロータコアおよび該ロータコアの外周に設けられたリング状のマグネットを有するロータと、を備えたブラシレスモータであって、
前記ステータコアは、該ステータコアの径方向内側に向かって延びる複数のティースを有し、
前記ロータは、前記複数のティースの内側に回転自在に配置され、
前記マグネットは、前記複数のティースのそれぞれと対向する前記マグネットの外周部に磁極が形成されるように着磁されており、
前記ロータコアは、複数の板状部材が積層されてなる部材であり、
積層された前記複数の板状部材において、積層方向に隣り合う前記板状部材間に隙間が設けられ、
前記ロータコアの回転軸方向における重心の位置は、前記ロータコアの回転軸方向の中心部から回転軸方向にずれていることを特徴とするブラシレスモータ。
【請求項2】
前記ステータコアは、前記巻線を収容するスロットを備え、
前記磁極の数と前記スロットの数の最小公倍数は、6の倍数であることを特徴とする請求項1に記載のブラシレスモータ。
【請求項3】
前記複数の板状部材として、第1高さの第1凸部が設けられた第1板状部材と、前記第1高さよりも高い第2高さの第2凸部が設けられた第2板状部材と、を有し、
前記ロータコアは、それぞれの層間に前記第1凸部を介在させて積層された複数の前記第1板状部材と、前記複数の第1板状部材上に配置され、かつ、それぞれの層間に前記第2凸部を介在させて積層された複数の前記第2板状部材と、からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のブラシレスモータ。
【請求項4】
積層状態の前記複数の第1板状部材において、複数の前記第1凸部のそれぞれは、前記第1板状部材の周方向に対して層ごとに同じ位置に配置され、
積層状態の前記複数の第2板状部材において、複数の前記第2凸部のそれぞれは、前記第2板状部材の周方向に対して層ごとに同じ位置に配置されていることを特徴とする請求項3に記載のブラシレスモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシレスモータに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両に搭載されるサンルーフ装置などの駆動源としてブラシレスモータが知られている。ブラシレスモータには、一般的にSPM(Surface Permanent Magnet)とIPM(Interior Permanent Magnet)の2種類のタイプがある。SPMタイプのブラシレスモータにおいては、マグネットとしてセグメントマグネットやリングマグネットが使用されている。そして、リングマグネットの磁束を高める着磁方法として、リングマグネットの外周面に磁極が形成されるように着磁される極異方着磁が知られている。
【0003】
なお、極異方着磁によって着磁されたリングマグネットを備えるブラシレスモータが、例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記極異方着磁によって着磁されたリングマグネットを備えるブラシレスモータにおいては、リングマグネットのハルバッハ配列の磁気回路構造により、リングマグネットの内側への磁束漏れが発生することはない。これにより、上記のようなブラシレスモータでは、ラジアル異方性リングマグネットを用いたモータにおいては必須となるリングマグネットの内側のロータコアが不要となる。
【0006】
上記特許文献1に記載されたブラシレスモータは、極異方着磁によって着磁されたリングマグネットを備えるモータであるため、リングマグネットの内側にはロータコアが配置されず、リングマグネットが回転軸であるシャフトに直接固定された構造となっている。このような構造の場合、シャフトの回転が直接リングマグネットに伝わり、ブラシレスモータの振動が大きくなることが懸念される。上記特許文献1では、ブラシレスモータの構造の観点から振動の低減を図ることについては特に考慮されていない。
【0007】
本発明の目的は、振動の低減が図られたブラシレスモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、ステータコアおよび該ステータコアに巻装された巻線を有するステータと、ロータコアおよび該ロータコアの外周に設けられたリング状のマグネットを有するロータと、を備えたブラシレスモータであって、前記ステータコアは、該ステータコアの径方向内側に向かって延びる複数のティースを有し、前記ロータは、前記複数のティースの内側に回転自在に配置され、前記マグネットは、前記複数のティースのそれぞれと対向する前記マグネットの外周部に磁極が形成されるように着磁されており、前記ロータコアは、複数の板状部材が積層されてなる部材であり、積層された前記複数の板状部材において、積層方向に隣り合う前記板状部材間に隙間が設けられ、前記ロータコアの回転軸方向における重心の位置は、前記ロータコアの回転軸方向の中心部から回転軸方向にずれている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ブラシレスモータの振動の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】車両のルーフに搭載されたサンルーフ装置を示す概略図である。
【
図2】本発明の実施の形態のモータ装置の斜視図である。
【
図3】
図2に示すモータ装置に組み込まれたブラシレスモータのシャフトに形成されたウォームとウォームホイールとの噛み合い状態を示す斜視図である。
【
図5】(a),(b)は
図4に示すブラシレスモータのロータコアを構成するロータコアシートの斜視図である。
【
図6】(a),(b),(c)は
図5に示すロータコアシートの部分断面図である。
【
図7】
図5に示すロータコアシートを積層してなるロータコア構造を示す図であり、(a)は側面図、(b)は斜視図である。
【
図8】
図7に示すロータコア構造にマグネットを装着した構造を示す図であり、(a)は断面図、(b)は斜視図である。
【
図9】
図7に示すロータコア構造の重心の位置のずれを比較例と並べて示す外観図である。
【
図10】本実施の形態のロータコア構造における重心の位置のずれとモータの周波数の関係を示すグラフである。
【
図11】(a),(b),(c)は本実施の形態の第1変形例のロータコアシートの斜視図である。
【
図12】本実施の形態の第2変形例のブラシレスモータの構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0012】
まず、本実施の形態のブラシレスモータが搭載されるモータ装置について説明する。
図1に示すように、サンルーフ装置10は、ルーフパネル11を備えている。ルーフパネル11は、車両12のルーフ13に形成された開口部14を開閉する。ルーフパネル11の車幅方向(図中上下方向)に沿う両側には、一対のシュー15a,15bがそれぞれ固定されている。また、ルーフ13の開口部14の車幅方向に沿う両側には、車両12の前後方向(図中左右方向)に延びるガイドレール16がそれぞれ固定されている。そして、一対のシュー15a,15bが、対応する一対のガイドレール16にそれぞれ案内されることで、ルーフパネル11が、車両12の前後方向に移動自在つまり開閉自在となっている。
【0013】
車両12の後方側(図中右側)に配置されたシュー15bのそれぞれには、ギヤ付きの駆動ケーブル17a,17bの一端が連結されている。これらの駆動ケーブル17a,17bの他端は、開口部14よりも車両12の前方側(図中左側)に取り回されている。
【0014】
車両12の前方側で、開口部14とフロントガラス18との間に配置されたルーフ13の内部には、モータ装置20が搭載されている。そして、一対の駆動ケーブル17a,17bの他端が、モータ装置20に設けられた出力ギヤ42bに噛み合わされている。ここで、モータ装置20が駆動されると、出力ギヤ42bの回転に伴い、一対のシュー15a,15bが互いに逆向きに移動される。これにより、ルーフパネル11は、一対のシュー15bを介して一対の駆動ケーブル17a,17bによって押し引きされ、これにより、自動的に開閉される。
【0015】
次に、本実施の形態のモータ装置20について説明する。なお、以下の説明において、単に軸方向(回転軸方向)という場合は、モータのシャフトの回転軸線方向をいい、単に周方向という場合は、上記シャフトの周方向をいい、単に径方向という場合は、上記シャフトの径方向をいうものとする。
【0016】
図2に示すように、モータ装置20は、ブラシレスモータ21とギヤ部40とを有している。ブラシレスモータ21は、
図4に示す環状のステータコア25と、ステータコア25に巻装されたコイル(巻線)28と、を備えたステータ29を有している。そして、ステータコア25は、径方向内側に向かって延びる複数のティース30を有している。また、ブラシレスモータ21は、ティース30の内側に回転自在に配置されたロータ24を有している。そして、ロータ24は、ロータコア22と、ロータコア22の外周に設けられたリング状のマグネット23と、を有している。さらに、ブラシレスモータ21は、ステータコア25の径方向の内側に設けられ、かつ、
図3に示す回転軸線31の回りに回転するシャフト(回転軸)27を有している。なお、ロータコア22は、シャフト27に固定されるとともに、回転軸線31を径方向中心としている。シャフト27は、
図3に示すように、ボールベアリング44によって回転自在に支持されている。
【0017】
また、
図4に示すように、ステータコア25は、ステータコア25の内周面からステータコア25の径方向内側に向かって突出する複数のティース30を備えており、隣り合うティース30間のそれぞれには、コイル28を収容するスロット34が形成されている。すなわち、コイル28は、複数のティース30のそれぞれに絶縁膜33を介して巻回され、かつ、スロット34に収容されている。
【0018】
次に、
図2に示すように、ギヤ部40には、ギヤケース41が設けられている。ギヤケース41の開口部分は、図示しないギヤカバーによって閉塞されている。このギヤカバーは、プラスチック等の樹脂材料により略平板状に形成され、ギヤケース41に対して所謂スナップフィットの係合構造により容易に装着可能となっている。
【0019】
また、ギヤケース41には、ウォームホイール収容部41aが設けられている。ウォームホイール収容部41aは、ギヤケース41の厚み方向であって、かつ上記ギヤカバー側とは反対側に窪んで設けられている。そして、ウォームホイール収容部41aには、減速機構を形成するウォームホイール42が回転自在に収容されている。
【0020】
ウォームホイール42は、プラスチック等の樹脂材料により略円板形状に形成され、その径方向外側には、
図3に示すように、シャフト27と連なって形成されたウォームシャフト43に設けられたウォーム43aが噛み合わされる歯部42aが形成されている。また、ウォームホイール42の回転中心には、出力ギヤ42bの軸方向基端側が固定されている。ここで、出力ギヤ42bは、鋼製であって、その軸方向中間部が
図2に示すギヤケース41のボス部に回転自在に支持されている。そして、出力ギヤ42bの軸方向先端側は、ギヤケース41の外部に延出されており、これにより出力ギヤ42bの先端側には、一対の駆動ケーブル17a,17bの他端が噛み合わされる(
図1参照)。
【0021】
ここで、モータ装置20の動作について説明する。
【0022】
モータ装置20では、外部から
図2に示すターミナル32を介して図示しないコントローラ基板に供給された電力が、
図4に示すブラシレスモータ21の各コイル28に選択的に供給される。すると、ステータ29(ティース30)に所定の鎖交磁束が形成され、この鎖交磁束と、ロータコア22に設けられたマグネット23により形成される有効磁束との間で磁気的な吸引力や反発力が生じる。これにより、ロータコア22が継続的に回転する。
【0023】
そして、ロータコア22が回転すると、
図3に示すシャフト27と一体化されているウォームシャフト43が回転し、さらに、ウォームシャフト43に噛み合っているウォームホイール42が回転する。そして、ウォームホイール42に連結されている出力ギヤ42bが回転し、所望の電装品等を駆動させることができる。
【0024】
次に、本実施の形態のブラシレスモータ21に装着されたリング状のマグネット23について説明する。マグネット23は、
図4に示すように、複数のティース30のそれぞれと対向するマグネット23の外周部における外周面23aにN極やS極などの磁極が形成されるように着磁されている。このように着磁されたマグネット23は、極配向のマグネット23とも呼ばれる。具体的には、リング状のマグネット23において、磁束23bを高める手段として、マグネット23の外周部の外周面23aに磁極が形成されるように着磁される極異方着磁が適用されている。その結果、複数のティース30のそれぞれと対向する外周面23aにN極やS極などの磁極が形成されている。そして、上記極異方着磁によって着磁されたマグネット23を備えるブラシレスモータ21においては、リング状のマグネット23の内側への磁束漏れが発生することはないため、リング状のマグネット23の内側に磁性体を配置することは必須ではない。
【0025】
そこで、本実施の形態のブラシレスモータ21におけるロータコア22は、
図5に示すようなリング状の板状部材であるロータコアシート(板状部材、ロータコアプレートとも言う)22aが、
図7に示すように、複数積層されてなる部材である。そして、複数のロータコアシート22aが積層されてなるロータコア22が、
図8に示すように、リング状のマグネット23の内側に配置されている。なお、ロータコアシート22aは、例えば、鉄系金属によって形成されている。ただし、ロータコアシート22aは、鉄系以外の金属によって形成されていてもよいし、金属以外の樹脂等によって形成されていてもよい。
【0026】
本実施の形態のロータコア22では、複数のロータコアシート22aが、その積層方向35において、
図7(a)のロータコアユニット26に示すように、隣り合うロータコアシート22a間に隙間22p,22qが形成されるように積層されている。詳細には、積層されるロータコアシート22aが、その1枚ごとに隙間22pまたは隙間22qを介して配置されている。
【0027】
そして、
図9に示す本実施の形態のロータコアユニット26のロータコア22では、ロータコア22の回転軸方向(またはロータコアシート22aの積層方向35)における重心G2の位置が、ロータコア22の回転軸方向の中心部22uから回転軸方向に沿ってずれている。例えば、ロータコアシート間に隙間が形成されないように構成された比較例のロータコア37を有するロータコアユニット36の場合には、ロータコア37の回転軸方向の重心G1は、ロータコア37の回転軸方向の中心部37aに位置している。しかしながら本実施の形態のロータコア22では、その重心G2が、回転軸方向の中心部22uから回転軸方向に沿ってずれている。具体的には、重心G2の位置は、中心部22uに対してずれ量Qずれている。つまり、本実施の形態のブラシレスモータ21では、ロータコア22における回転軸方向の重心G2の位置を回転軸方向の中心部22uからずらすことで、重心が中心部22uに位置している場合と比べてブラシレスモータ21の共振周波数が大きくなるようにして、ブラシレスモータ21で発生する共振を回避することができる。
【0028】
次に、ロータコア22において、回転軸方向の重心G2の位置を回転軸方向の中心部22uからずらす手段について説明する。
【0029】
本実施の形態のロータコア22では、ロータコアシート22aとして、
図5に示すような2種類のロータコアシート(第1板状部材)22b及びロータコアシート(第2板状部材)22gを用いている。
図5(a)に示すロータコアシート22bは、本体部22cの中央に貫通孔22dが設けられてリング状に形成されているとともに、表面には、
図6(a)に示すそれぞれ第1高さT1の2つの第1凸部22eが設けられている。2つの第1凸部22eは、リング状の本体部22cの径方向に沿って貫通孔22dの両側にそれぞれ設けられている。
図6(a)に示すように、第1凸部22eの裏面側には、第1凹部22fが設けられている。
【0030】
一方、
図5(b)に示すロータコアシート22gは、本体部22hの中央に貫通孔22iが設けられてリング状に形成されているとともに、表面には、第1高さT1よりも高さが高い
図6(b)に示す第2高さT2の第2凸部22jが設けられている。すなわち、第1高さT1<第2高さT2である。なお、
図6(b)に示すように、第2凸部22jの裏面側には、第2凹部22kが設けられている。
【0031】
そして、本実施の形態のロータコア22は、
図7(a),(b)に示すように、複数のロータコアシート22bと複数のロータコアシート22gとがそれぞれ積層されてなる部材である。具体的には、ロータコア22は、それぞれの層間に第1凸部22eを介在させて積層された複数のロータコアシート22bと、複数のロータコアシート22b上に配置され、かつ、それぞれの層間に第2凸部22jを介在させて積層された複数のロータコアシート22gと、から構成されている。すなわち、複数のロータコアシート22bのそれぞれの層間には第1凸部22eを介在させたことによる隙間22pが形成され、さらに、複数のロータコアシート22gのそれぞれの層間には第2凸部22jを介在させたことによる隙間22qが形成されている。ここで、第1凸部22eの第1高さT1<第2凸部22jの第2高さT2であるため、隙間22p<隙間22qとなっている。したがって、積層された複数のロータコアシート22bおよび複数のロータコアシート22gにおいては、隙間22pが小さなロータコアシート22b側より隙間22qが大きなロータコアシート22g側の方が層間の間隔が広くなっている。
【0032】
また、それぞれ積層された複数のロータコアシート22bおよび複数のロータコアシート22gにおいて、複数の第1凸部22eおよび複数の第2凸部22jが、それぞれに
図5に示すロータコアシート22aの周方向Rに対して同じ位置となるように積層されている。詳細には、複数のロータコアシート22bの積層において、各層における2つの第1凸部22eの位置が、ロータコアシート22bの周方向Rに対して同じ位置となるように積層されている。つまり、2つの第1凸部22eの裏面側のそれぞれの第1凹部22fの直下に下層側の第1凸部22eが配置され、各層における2つの第1凸部22eが全てのロータコアシート22bの層に亘って同じ位置に配置されている。
【0033】
同様に、複数のロータコアシート22gの積層において、各層における第2凸部22jの位置が、ロータコアシート22gの周方向Rに対して同じ位置となるように積層されている。つまり、第2凸部22jの裏面側の第2凹部22kの直下に下層側の第2凸部22jが配置され、各層における第2凸部22jが全てのロータコアシート22gの層に亘って同じ位置に配置されている。
【0034】
ロータコア22は、上記のように積層された複数のロータコアシート22bおよび複数のロータコアシート22gから構成されるため、
図7に示すように、積層された複数のロータコアシート22bのうち、隣り合うロータコアシート22a間に隙間22p,22qが形成されている。このようなロータコア22をシャフト27に固定した構造体が、ロータコアユニット26であり、
図8に示すように、リング状のマグネット23の内側に、シャフト27に固定されたロータコア22からなる構造体を配置する。
【0035】
以上のような構造のロータコア22とすることで、
図9に示すロータコアユニット26において、複数のロータコアシート22bからなる構造部分の方が、複数のロータコアシート22gからなる構造部分に比べて、積層間の隙間22pが小さく、積層されるロータコアシート22aの枚数も多い。すなわち、シート密度が高い。さらに、複数のロータコアシート22bからなる構造部分の方が、複数のロータコアシート22gからなる構造部分に比べて凸部の数も多い。したがって、ロータコアシート22b側の構造部分の方が、ロータコアシート22g側の構造部分に比べて重量が大きくなる。これにより、ロータコア22の回転軸方向の重心G2の位置が、中心部22uからロータコアシート22b側にずれ量Qずれる。
図9に示すロータコアユニット26においては、ロータコア22の回転軸方向の重心G2の位置が、中心部22uより下方にずれる。
【0036】
このようにロータコア22の重心G2の位置を中心部22uからずらすことで、重心が中心部22uに位置する場合と比べてブラシレスモータ21の共振周波数が大きくなるように変化させることができ、ブラシレスモータ21で発生する共振を回避することができる。その結果、ブラシレスモータ21の振動の低減を図ることができるとともに騒音の低減を図ることができる。言い換えると、本実施の形態のブラシレスモータ21では、ロータコア22の重心G2の位置をずらすことで、ブラシレスモータ21の共振周波数を高く設定することが可能になる。
【0037】
なお、積層されるロータコアシート22aについては、
図6(c)に示すように、本体部22rの表面に凸部22mが形成され、その裏面側に2段構造の凹部である段付き凹部22nが形成されたロータコアシート22aを使用してもよい。このロータコアシート22aでは、段付き凹部22nの大口径凹部に下層側に配置される凸部22mの先端部を収容することで、積層されるロータコアシート22aの層間の隙間の大きさを種々設定することができる。
【0038】
また、ブラシレスモータ21の共振周波数の設定に関しては、ブラシレスモータ21の次数を考慮する必要がある。次数は、回転数を周波数に変換したものである。
図10は、各次数ごとの重心の位置に対する共振周波数を示すグラフであり、ロータコア22の重心G2の位置をG1(中心部22u)からずらすことで、6次の共振周波数が高くなることが分かる。そこで、ブラシレスモータ21の共振周波数を決める複数の要因のうち、例えば、磁極の数とコイル28を収容するスロット34の数に注目する。そして、磁極の数とスロット34の数の最小公倍数が6の倍数となるように、磁極およびスロット34を形成する。具体的には、2極3スロットや4極6スロットなどのように磁極およびスロット34を形成することで、磁極の数およびスロット34の数の最小公倍数が6の倍数に起因するブラシレスモータ21の共振周波数を高くすることができる。本実施の形態のブラシレスモータ21は、
図4に示すように、4極6スロットを採用している。これにより、ロータコア22の重心G2の位置を中心部22uから下方にずれ量Q下げることで、磁極の数およびスロット34の数の最小公倍数が6の倍数に起因するブラシレスモータ21の共振周波数を高くすることができ、ブラシレスモータ21の共振を回避することができる。その結果、ブラシレスモータ21の振動の低減を図ることができ、さらに、ブラシレスモータ21の騒音の低減を図ることができる。
【0039】
また、ロータコア22の構成において、2種類のロータコアシート22bおよびロータコアシート22gを使用することで、それぞれのロータコアシート22b,22gの積層する枚数に差をつけることで、ロータコア22の重心G2の位置を容易に調整することができるとともに、ブラシレスモータ21の共振周波数の最適設計を行うことが可能になる。
【0040】
また、複数のロータコアシート22aのそれぞれが鉄系金属によって形成されていることにより、ロータコア22の強度を高めることができる。さらに、複数のロータコアシート22aを積層した際に凸部によって層間に隙間22p,22qが形成されるため、隙間分の重量を軽くすることができ、ロータコア22を軽量化することができる。その結果、ブラシレスモータ21の軽量化を図ることができる。なお、隙間22p,22qは、凸部の高さによって種々設定可能である。
【0041】
次に、本実施の形態の変形例について説明する。
【0042】
図11は、リング状のロータコアシート22aの種々の第1変形例を示すものであり、
図11(a)のロータコアシート22aは、その本体部22rの表面に3つの凸部22mが周方向R(
図5参照)において均等の間隔で設けられているものである。また、
図11(b)のロータコアシート22aは、その本体部22rの表面に1つの凸部22mと1つの凹部22sが設けられているものである。さらに、
図11(c)のロータコアシート22aは、そのリング状の本体部22rの内周部の縁に3つの半円状凸部22tが設けられているものである。以上のような
図11に示す第1変形例のロータコアシート22aを採用した場合においても、
図5に示すロータコアシート22aを採用した場合と同様の効果を得ることができる。
【0043】
また、
図12に示す第2変形例は、磁極が8つ、スロット34が6つ形成されたブラシレスモータ38を示している。すなわち、8極6スロットであるため、磁極の数およびスロット34の数の最小公倍数が6の倍数に起因するブラシレスモータ38の共振周波数を高くすることができる。これにより、ブラシレスモータ38においても共振を回避することができ、ブラシレスモータ38の振動の低減を図ることができる。さらに、ブラシレスモータ38の騒音の低減を図ることができる。
【0044】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記実施の形態においては、モータ装置20に組み込まれるブラシレスモータ21のステータ29の断面形状が、略六角形の場合を取り上げたが、ステータ29の断面形状は、円形であってもよい。
【0045】
また、上記実施の形態においては、2種類のロータコアシート22aを用いてそれぞれを複数積層してなるロータコア22の場合を説明したが、例えば、1種類のロータコアシート22bを複数用いてそれら複数のロータコアシート22bを、それぞれの周方向Rに対する向きをランダムに配置して積層してもよい。これにより、ロータコア22の重心の位置を積層方向の中心部からずらすことができ、その結果、共振周波数を高くしてブラシレスモータ21の振動の低減を図ることができる。
【0046】
また、互いに板厚や材質などを変えた2種類のロータコアシート22aをそれぞれ複数積層してロータコア22を形成してもよい。
【0047】
なお、ブラシレスモータ21の共振周波数を変化させるのに、重心G2が回転軸方向の中心部22uに位置する場合に比べてブラシレスモータ21の共振周波数が小さくなるように設定して、ロータコア22の回転軸方向の重心G2の位置を該回転軸方向にずらしてもよい。
【0048】
また、上記実施の形態では、ブラシレスモータ21がサンルーフ装置10のモータ装置20に搭載される場合について説明したが、ブラシレスモータ21は、パワーウィンドウ駆動用のモータなどであってもよい。
【符号の説明】
【0049】
10:サンルーフ装置,11:ルーフパネル,12:車両,13:ルーフ,14:開口部,15a,15b:シュー,16:ガイドレール,17a,17b:駆動ケーブル,18:フロントガラス,20:モータ装置,21:ブラシレスモータ,22:ロータコア,22a:ロータコアシート(板状部材),22b:ロータコアシート(第1板状部材),22c:本体部,22d:貫通孔,22e:第1凸部,22f:第1凹部,22g:ロータコアシート(第2板状部材),22h:本体部,22i:貫通孔,22j:第2凸部,22k:第2凹部,22m:凸部,22n:段付き凹部,22p,22q:隙間,22r:本体部,22s:凹部,22t:半円状凸部,22u:中心部,23:マグネット,23a:外周面,23b:磁束,24:ロータ,25:ステータコア,26:ロータコアユニット,27:シャフト(回転軸),28:コイル(巻線),29:ステータ,30:ティース,31:回転軸線,32:ターミナル,33:絶縁膜,34:スロット,35:積層方向,36:ロータコアユニット,37:ロータコア,37a:中心部,38:ブラシレスモータ,40:ギヤ部,41:ギヤケース,41a:ウォームホイール収容部,42:ウォームホイール,42a:歯部,42b:出力ギヤ,43:ウォームシャフト,43a:ウォーム,44:ボールベアリング