(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154029
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】積荷の搬送装置
(51)【国際特許分類】
B60P 1/00 20060101AFI20221005BHJP
B65G 25/00 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
B60P1/00 H
B65G25/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056854
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149870
【弁理士】
【氏名又は名称】芦北 智晴
(72)【発明者】
【氏名】相羽 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】早川 重幸
(57)【要約】
【課題】積荷の搬送装置を搭載した貨物自動車の走行時の安定性を従来よりも向上させること。荷箱の高さが予め決まっている場合に、荷箱容量を従来よりも確保し易くすること。
【解決手段】荷台3上に、長手方向を前後に向けてスライド可能に敷き詰められた複数の床材5と、互いに異なる床材5に取り付けられた複数の横材6と、互いに異なる横材6を前後方向に移動させる複数のアクチュエータ7と、シャシフレーム13の上面に沿って設置され、前後方向に移動する横材6を支持する横材支持フレーム8と、を備える。横材支持フレーム8は、中間部にその前側および後側より下方に落ち込んだ段差部14を有し、当該段差部14上で横材6を支持する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷台上に、長手方向を前後に向けてスライド可能に敷き詰められた複数の床材と、
互いに異なる前記床材に取り付けられた複数の横材と、
互いに異なる前記横材を前後方向に移動させる複数のアクチュエータと、
前後方向に延びるシャシフレームの上面に沿って設置され、前後方向に移動する前記横材を支持する横材支持フレームと、
を備える積荷の搬送装置であって、
前記横材支持フレームは、中間部にその前側および後側より下方に落ち込んだ段差部を有し、当該段差部上で前記横材を支持することを特徴とする積荷の搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の積荷の搬送装置において、
全ての前記横材の前後方向の寸法を足し合わせた寸法と、前記横材の前後方向へのスライド寸法との和が、前記段差部の前後方向の寸法と略一致することを特徴とする積荷の搬送装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の積荷の搬送装置において、
前記横材支持フレームの前側および後側に前記床材を支持する床材支持部材が設けられ、
前記段差部の前端から前側の前記床材支持部材までの距離、および前記段差部の後端から後側の前記床材支持部材までの距離の少なくとも一方が、前記段差部の前後方向の寸法よりも短いことを特徴とする積荷の搬送装置。
【請求項4】
請求項3に記載の積荷の搬送装置において、
前記アクチュエータは、シリンダロッドの先端側に延長ロッドが連結された流体圧シリンダであり、
前記延長ロッドは、前記床材支持部材に取り付けられたガイドに支持されていることを特徴とする積荷の搬送装置。
【請求項5】
請求項4に記載の積荷の搬送装置において、
前記延長ロッドと前記シリンダロッドとの連結部は、前記延長ロッドと前記シリンダロッドとを互いに回転自在に連結していることを特徴とする積荷の搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貨物自動車の荷台に搭載される積荷の搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の積荷の搬送装置は、例えば特許文献1,2に開示されている。同文献に開示されている積荷の搬送装置は、荷台に載せた積荷を前方に移動させて積み込む積み込み動作と、荷台に積み込まれた積荷を後方に移動させて荷台から排出する排出動作とを行うことができる。
【0003】
上記積荷の搬送装置は、荷台上に、長手方向を前後に向けてスライド可能に敷き詰められた複数の床材と、複数の床材を前後方向にスライドさせる複数のアクチュエータを備えている。複数の床材は、スライド動作に関して複数の組に分かれており、組ごとに独立して前後方向にスライドされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-195467号公報
【特許文献2】特開2009-234420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、積荷の搬送装置を搭載した貨物自動車においては、荷箱の重心位置が高くなる傾向にあり、走行時の安定性が低下するという課題がある。
【0006】
また、一般の貨物自動車と同様に、積荷の搬送装置を搭載した貨物自動車においても、積荷の運搬効率の観点より、荷箱容量をなるべく大きくすることが望ましい。例えば荷箱の高さを法令で定められた全高上限値まで高くし、荷箱容量を最大限に拡張することが望ましい。しかし、そうした場合、荷箱の重心位置が更に高くなり、走行時の安定性が更に低下するという課題がある。
【0007】
そこで、本発明は、積荷の搬送装置を搭載した貨物自動車の走行時の安定性を従来よりも向上させることを目的とする。また、本発明は、荷箱の高さが予め決まっている場合に、荷箱容量を従来よりも確保し易くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様に係る積荷の搬送装置は、荷台上に、長手方向を前後に向けてスライド可能に敷き詰められた複数の床材と、互いに異なる前記床材に取り付けられた複数の横材と、互いに異なる前記横材を前後方向に移動させる複数のアクチュエータと、前後方向に延びるシャシフレームの上面に沿って設置され、前後方向に移動する前記横材を支持する横材支持フレームと、を備える。前記横材支持フレームは、中間部にその前側および後側より下方に落ち込んだ段差部を有し、当該段差部上で前記横材を支持する。
【0009】
かかる構成を備える積荷の搬送装置によれば、横材支持フレームの中間部に段差部が形成され、その段差部上に横材が支持されているので、段差部が形成されていない場合と比較して、横材および床材の高さ位置を低くすることができる。その結果、荷台(荷箱)の重心位置が低くなり、貨物自動車の走行時の安定性が向上する。また、床材および横材の高さ位置を低くできるので、予め荷箱の高さが決められている場合は、荷箱の容量を確保し易くなる。
【0010】
本発明の第2の態様に係る積荷の搬送装置は、第1の態様に係る積荷の搬送装置において、全ての前記横材の前後方向の寸法を足し合わせた寸法と、前記横材の前後方向へのスライド寸法との和が、前記段差部の前後方向の寸法と略一致する。なお、上記略一致には、段差部の前後方向の寸法が上記和よりも大きい場合も含まれる。例えばアクチュエータの動作限界によって横材の前後移動範囲が決まる場合で、アクチュエータの動作に誤差があったとしても横材が段差部に接触しない程度の隙間を有する場合も含まれる。
【0011】
本発明の第3の態様に係る積荷の搬送装置は、第1又は第2の態様に係る積荷の搬送装置において、前記横材支持フレームの前側および後側に前記床材を支持する床材支持部材が設けられている。前記段差部の前端から前側の前記床材支持部材までの距離、および前記段差部の後端から後側の前記床材支持部材までの距離の少なくとも一方が、前記段差部の前後方向の寸法よりも短い。
【0012】
本発明の第4の態様に係る積荷の搬送装置は、第1~第3の何れか1の態様に係る積荷の搬送装置において、前記アクチュエータは、シリンダロッドの先端側に延長ロッドが連結された流体圧シリンダであり、前記延長ロッドは、前記床材支持部材に取り付けられたガイドに支持されている。
【0013】
本発明の第5の態様に係る積荷の搬送装置は、第1~第4の何れか1の態様に係る積荷の搬送装置において、前記延長ロッドと前記シリンダロッドとの連結部は、前記延長ロッドと前記シリンダロッドとを互いに回転自在に連結している。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、積荷の搬送装置を搭載した貨物自動車の走行時の安定性が従来よりも向上する。また、本発明によれば、予め荷箱の高さが決められている場合は、荷箱の容量を従来よりも確保し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態に係る積荷の搬送装置を搭載した貨物自動車を示す斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る積荷の搬送装置の底面図である。但し、床材、横材支持フレーム等の図示は省略している。
【
図8】本実施形態における床材5A~5C、横材6A~6C、油圧シリンダ7A~7Cの位置関係を示す模式平面図である。
【
図9】
図8に示した状態から床材5Aが最後位置への移動を完了した状態を示す模式平面図である。
【
図10】
図9に示した状態から床材5Bが最後位置への移動を完了した状態を示す模式平面図である。
【
図11】
図10に示した状態から床材5Cが最後位置への移動を完了した状態を示す模式平面図である。
【
図12】
図11に示した状態から床材5A~5Cが最前位置への移動を完了した状態を示す模式平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態に係る積荷の搬送装置について、図面を参照しつつ説明する。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係る積荷の搬送装置1は、貨物自動車2の荷台3に搭載されるものである。
図2および
図3に示すように、積荷の搬送装置1は、床材5、横材6、油圧シリンダ7、横材支持フレーム8、床材支持部材9(9A,9B)、シリンダロッド延長機構10等を備えている。
【0018】
床材5は、
図1に示すように、荷台3上に、長手方向を前後に向けてスライド可能に多数敷き詰められている。床材5は、後述する床材支持部材9(9A,9B)上に取り付けられた樹脂製の案内支持部材11(
図3参照)によって、前後方向にスライド可能に支持されている。
【0019】
横材6は、荷台3の左右方向に延びた部材で構成され、互いに前後の位置に複数設けられている。複数の横材6は、互いに異なる床材5に取り付けられている。本実施形態では、3つの横材6A,6B,6Cが設けられている。各横材6の上面には、床材5に取り付けられる床材取付部6aが設けられている。床材取付部6aは、横材6から前方および後方に延出している。
【0020】
油圧シリンダ7は、基端部がシャシフレーム13に搭載されたサブフレームと上下方向に回転自在に連結され、先端部が延長ロッド18と上下方向に回転自在に連結されている。油圧シリンダ7は、横材6と同数設けられている。複数の油圧シリンダ7は、互いに異なる横材6を前後方向に移動させることにより、床材5をスライドさせる。本実施形態では、多数の床材5は、3つの組に分かれてスライド動作し、組ごとに独立して前後方向にスライドされる。なお、油圧シリンダ7は、アクチュエータおよび流体圧シリンダの一例である。
【0021】
横材支持フレーム8は、貨物自動車2のシャシフレーム13上(
図4参照)で横材6を支持している。横材支持フレーム8は、前後方向に延びた部材であって、シャシフレーム13の上面に沿って設置されている。横材支持フレーム8には、例えば断面矩形の中空部材が用いられる。
図3に示すように、横材支持フレーム8は、中間部にその前側および後側より下方に落ち込んだ段差部14を有する。この段差部14上で横材6がスライド可能に支持されている。具体的には、
図4に示すように、横材6(6B)の下部に樹脂製のパッド17がパッドホルダ22を介して取り付けられている。このパッド17が横材支持フレーム8の段差部14に沿ってスライドするように構成されている。また、横材6を前後方向に案内するために、パッド17の底部には、溝17aが前後方向に形成され、この溝17aに、段差部14に凸設された板状のレール8aが挿入されている。レール8aは段差部14内に収まるように設けられているので、レール8aは変形等しないように保護される。
【0022】
図3に示すように、段差部14の前後方向の寸法L1は、全て(3つ)の横材6A,6B,6Cの前後方向の寸法を足し合わせた寸法L2と、横材6の前後方向へのスライド寸法L3との和と一致する。これにより、段差部14の前後方向の寸法L1を必要最小限に抑えることができ、横材支持フレーム8の剛性をある程度確保できる。また、段差部14の前端を横材6Cのスライドのストッパとして機能させ、段差部14の後端を横材6Aのスライドのストッパとして機能させることができる。
【0023】
上記寸法L1は、上記寸法L2と上記寸法L3の和と略一致するものであってもよい。例えば、油圧シリンダ7のシリンダロッド7aが最大伸長位置(ストロークエンド)まで伸長した状態で横材6Cが段差部14の前端に接触しない程度の僅かな隙間が生じることにより、寸法L1=寸法L2+寸法L3に限りなく近い、寸法L1>(寸法L2+寸法L3)となるものであってもよい。或いは、油圧シリンダ7のシリンダロッド7aが最大収縮位置(ストロークエンド)まで収縮した状態で横材6Aが段差部14の後端に接触しない程度の僅かな隙間が生じることにより、寸法L1=寸法L2+寸法L3に限りなく近い、寸法L1>(寸法L2+寸法L3)となるものであってもよい。これら2つの実施形態では、段差部14の前端が横材6Cのスライドのストッパとして機能せず、あるいは、段差部14の後端が横材6Aのスライドのストッパとして機能しないものの、寸法L1=寸法L2+寸法L3となる実施形態と同程度に、段差部14の前後方向の寸法L1を必要最小限に抑えることができ、横材支持フレーム8の剛性を確保できる。
【0024】
また、上記寸法L1=寸法L2+寸法L3となるものであって、油圧シリンダ7のシリンダロッド7aが最大伸長位置まで伸長すると同時に、横材6Cが段差部14の前端に接触し、油圧シリンダ7のシリンダロッド7aが最大収縮位置まで収縮すると同時に、横材6Aが段差部14の後端に接触するものであってもよい。この場合も、段差部14の前後方向の寸法L1を必要最小限に抑えることができ、横材支持フレーム8の剛性をある程度確保できる。
【0025】
段差部14の前端から前側の床材支持部材9Aまでの距離D1、および段差部14の後端から後側の床材支持部材9Bまでの距離D2の少なくとも一方が、段差部14の前後方向の寸法L1よりも短くなっている(
図3に示す例では、距離D1も距離D2も寸法L1より短くなっている)。これにより、床材支持部材9A,9Bの少なくとも一方によって、床材5の横材6付近が支持されることとなるので、横材6を介して段差部14に作用する床材5の荷重を低減できる。詳細には、横材6の下部に取り付けたパッド17を介して段差部14の底面14aに掛かる床材5の荷重を低減できる。
【0026】
床材支持部材9A,9Bは、床材5を支持する部材である。本実施形態では、床材支持部材9A,9Bは、荷台3の左右方向に延び、左右一対のシャシフレーム13上に固定されている。床材支持部材9は、横材支持フレーム8の前側および後側に接続されている。この横材支持フレーム8の前側および後側は、段差部14よりも大きな断面となっているので、床材支持部材9に強固に接続することができる。床材支持部材9と横材支持フレーム8との接続手段として、溶接による接続、ボルトを用いた接続などを例示できる。床材支持部材9には、例えば断面矩形の中空部材が用いられる。
【0027】
シリンダロッド延長機構10は、
図5および
図6に示すように、油圧シリンダ7のシリンダロッド7aを延長するためのものである。シリンダロッド延長機構10は、シリンダロッド7aの先端側に連結される延長ロッド18と、延長ロッド18をスライド可能に支持するガイド19とで構成される。
【0028】
延長ロッド18は、
図5に示すように、基端部18aがシリンダロッド7aの先端部7aaに対して上下方向に回転自在に連結され、先端部18bが横材6の底部に上下方向に回転自在に連結されている。本実施形態では、
図2に示すように、3つの油圧シリンダ7A,7B,7Cのシリンダロッド7Aa,7Ba,7Caの長さは互いに同じであり、延長ロッド18A,18B,18Cの長さは、横材6A,6B,6Cの位置に応じて互いに異なっている。
【0029】
ガイド19は、
図6に示すように、床材支持部材9Bに取り付けられている。具体的には、床材支持部材9Bの左右方向の中間部の下側に上方に凹んだ凹部9aが形成されており、その凹部9aに対してガイド19が固定されている。ガイド19は、延長ロッド支持金具20と、樹脂部材21とを備えている。延長ロッド支持金具20は、床材支持部材9Bの凹部9aに固定され、3本の延長ロッド18を挿通する貫通穴20aを有する。樹脂部材21は、
図6の拡大図に示すように、前後方向から視てコの字状に形成された部材であって、延長ロッド18の上側を支持するものと、延長ロッド18の下側を支持するものに分かれている。なお、
図6の拡大図は、延長ロッド18の形状および配置を理解し易くするために、樹脂部材21および延長ロッド18以外の部材の図示を省略している。
【0030】
延長ロッド支持金具20について更に詳細に説明する。延長ロッド支持金具20は、その左右両端部を成す一対の側板20b(
図6参照)と、樹脂部材21を前後から挟むように配置された前壁板20cおよび後壁板20d(
図7参照)と、樹脂部材21を下から支持する底板20eとを備えている。より詳細には、側板20bには、
図7に示すように、上から下に向かって拡幅する拡幅部を有する板材が用いられている。前壁板20cおよび後壁板20dには、断面L字状の部材(例えば山型鋼)が用いられ、互いに左右対称に配置されている。底板20eには、断面コ字状の部材(例えば溝型鋼)が用いられ、開口を下方に向けて配置されている。前壁板20cおよび後壁板20dの水平部と、底板20eのウェブ部とはボルト締結されている。また、底板20eの一対のフランジ部20eaの間において、各貫通穴20aの下方に、前後方向に延びた断面コ字状の補強材20fが固設されている。延長ロッド支持金具20は、上記構造を有することにより、延長ロッド18を安定的に支持するために必要な高い剛性を確保している。
【0031】
次に、積荷の搬送装置1の積荷搬送動作の概要について説明する。ここでは、積荷の搬送装置1が
図8に示す状態にあるときを初期状態とし、積荷の搬入が開始される場合を説明する。なお、以下において、前方とは荷を進める方向をいい、後方とはその反対をいう。従って、搬入時には、運転席側(
図8において左側)が前方となり、運転席の反対側(
図8において右側)が後方となる。またこれとは逆に、搬出時には、運転席側が後方となり、その反対側が前方となる。
図8に示す積荷の搬送装置1では、床材5A,5B,5Cは全て可動範囲における最前位置にあり、油圧シリンダ7A,7B,7Cのシリンダロッド7Aa,7Ba,7Caは最伸長状態にある。
【0032】
まず、
図8に示す状態からシリンダロッド7Aaを収縮して、床材5Aを可動範囲における最後位置へ後退させて
図9に示す状態を形成する。このとき、積荷と後退中の床材5Aとの間に生じる摩擦力が、積荷と停止中の床材5B,5Cとの間に生じる摩擦力よりも小さいため、積荷は停止した状態を維持する。
【0033】
つぎに、
図9に示す状態からシリンダロッド7Baを収縮して、床材5Bを可動範囲における最後位置へ後退させて
図10に示す状態を形成する。このときも、積荷と後退中の床材5Bとの間に生じる摩擦力が、積荷と停止中の床材5A,5Cとの間に生じる摩擦力よりも小さいため、積荷は停止した状態を維持する。
【0034】
そして、
図10に示す状態からシリンダロッド7Caを収縮して、床材5Cを可動範囲の最後位置へ後退させて
図11に示す状態を形成する。このときも、積荷と後退中の床材5Cとの間に生じる摩擦力が、積荷と停止中の床材5A,5Bとの間に生じる摩擦力よりも小さいため、積荷は停止した状態を維持する。
【0035】
床材5A,5B,5Cのそれぞれが後退を完了した後、床材5A,5B,5Cを一斉に前進すべく、全てのシリンダロッド7Aa,7Ba,7Caを一斉に伸長する。そうすることで、
図12に示すように、全ての床材5A,5B,5Cとともに積荷を前進させる。
【0036】
その後は、上述した床材5A,5B,5Cの後退と前進とのサイクルを所定回数繰り返すことにより、積荷を前方へ搬送する。
【0037】
以上に説明した積荷の搬送装置1によれば、以下に挙げる作用効果が奏される。
【0038】
(1)貨物自動車2のシャシフレーム13上に設置された横材支持フレーム8の中間部に段差部14が形成され、その段差部14上に横材6が支持されている。このため、横材支持フレーム8の上下位置はそのままでロードクリアランスを確保しつつ、横材6および横材6に取り付けられた床材5の高さ位置を低くすることができる。床材5は荷台3(荷箱)の床全面に亘って敷き詰められるもので重量も重い。その床材5の高さ位置を低くすることで、荷箱全体の重心位置を効果的に低くすることができる。その結果、所望の荷箱容量を確保しながら貨物自動車2の走行時の安定性が向上する。
【0039】
なお、段差部14を設ける代わりに、横材支持フレーム8の上面を全体として上下方向に低くすること(横材支持フレームの上下寸法を全体的に小さくすること)でも、横材6および床材5の位置を下げることはできる。しかし、横材支持フレーム8と床材支持部材9との接合面積が小さくなり、これらの接合強度が確保し難くなるという問題が生じる。本実施形態によれば、横材支持フレーム8と床材支持部材9との接合強度を確保しつつ、横材6および床材5の高さ位置を低くできる。
【0040】
(2)段差部14の前後方向の寸法L1は、全て(3つ)の横材6A,6B,6Cの前後方向の寸法を足し合わせた寸法L2と、横材6が前後方向へスライド可能な寸法L3との和と一致する。このため、段差部14の前端および後端を、最前位置に配置された横材6Aと最後位置に配置された横材6Cのスライドストッパとして機能させることができる。また、段差部14の前後方向の寸法L1を必要最小限に抑えて、横材支持フレーム8の剛性を確保できる。
【0041】
(3)段差部14の前端から前側の床材支持部材9Aまでの距離D1、および段差部14の後端から後側の床材支持部材9Bまでの距離D2の少なくとも一方が、段差部14の前後方向の寸法L1よりも短くなっている。このため、床材支持部材9A,9Bの少なくとも一方によって、床材5の横材6付近が支持されることとなるので、横材6を介して段差部14に作用する床材5の荷重を低減できる。
【0042】
(4)延長ロッド18が床材支持部材9に取り付けられたガイド19に支持されている。床材支持部材9は、シャシフレーム13上に設置され、横材支持フレーム8に接合された安定性の高い部材であるため、延長ロッド18はガイド19によってしっかりと支持される。
【0043】
(5)延長ロッド18とシリンダロッド7aとの連結部が、延長ロッド18とシリンダロッド7aとを互いに回転自在に連結するものである。このため、シリンダチューブにおけるシリンダロッド7aの入口7cに集中的に荷重が作用することを防止できる。シリンダロッド7aの入口7cに集中的に荷重が作用した状態でシリンダロッド7aを伸縮させることで、入口7cに設けられたパッキン(不図示)が劣化して油漏れが発生し易くなるが、本実施形態によれば、シリンダロッド7aの入口7cに集中的に荷重が作用することを防止できるので、シリンダロッド7aの入口7cからの油漏れを防止できる。なお、延長ロッド18はガイド19により支持されているが、ガイド19の樹脂部材21が変形することと、積荷荷重によって床材5および横材6が沈むことにより、延長ロッド18の前後への傾斜がある程度許容されるため、延長ロッド18とシリンダロッド7aとの連結部が回転自在でなければ、シリンダロッド7aの入口7cに集中的に荷重が作用する。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、例えば、貨物自動車の荷台に搭載される積荷の搬送装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 積荷の搬送装置
2 貨物自動車
3 荷台
5 床材
6 横材
7 油圧シリンダ(アクチュエータ)
7a,7Aa,7Ba,7Ca シリンダロッド
7aa シリンダロッドの先端部
8 横材支持フレーム
9,9A,9B 床材支持部材
13 シャシフレーム
14 段差部
18 延長ロッド
19 ガイド
D1 段差部の前端から前側の床材支持部材までの距離
D2 段差部の後端から後側の床材支持部材までの距離
L1 段差部の前後方向の寸法
L2 横材の前後方向の寸法を足し合わせた寸法
L3 横材が前後方向へスライド可能な寸法