(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154035
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】数値制御装置と工作機械
(51)【国際特許分類】
G05B 19/18 20060101AFI20221005BHJP
G05B 19/414 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
G05B19/18 X
G05B19/414 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056869
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100174344
【弁理士】
【氏名又は名称】安井 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】金子 智博
(72)【発明者】
【氏名】村上 育彦
【テーマコード(参考)】
3C269
【Fターム(参考)】
3C269AB01
3C269BB12
3C269PP02
3C269QC01
3C269QD01
3C269QD02
3C269QE37
(57)【要約】
【課題】表示装置に画像が映らない異常が起きた場合に、その異常の原因を特定できる数値制御装置と工作機械を提供する。
【解決手段】数値制御装置11は、操作盤12、制御部30、伝送線52を備える。制御部30は操作盤12に画像信号を出力する。伝送線52は操作盤12と制御部30の間に接続し、制御部30から出力する画像信号を操作盤12に送信する。制御部30は伝送線52を介して操作盤12に試験信号を送信する。操作盤12は制御部30からの試験信号を受信したか否か判定する。操作盤12は所定のタイマ時間内に制御部30から画像信号を受信したか否か判定する。制御部30は試験信号の受信有無の判定結果と、画像信号の受信有無の判定結果に基づき、表示部20に画像信号に対応する画像が表示されない異常の原因を特定する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示装置と、前記表示装置に画像信号を出力する制御部と、前記制御部と前記表示装置の間に接続し、前記制御部が出力する前記画像信号を前記表示装置に送信する伝送線とを備えた数値制御装置において、
前記制御部は、前記伝送線を介して前記表示装置に試験信号を送信する信号送信部を備え、
前記信号送信部が前記伝送線を介して前記表示装置に送信した前記試験信号を前記表示装置が受信したか否か判定する第一判定部と、
前記表示装置が所定時間内に前記制御部から前記画像信号を受信したか否か判定する第二判定部と、
前記第一判定部と前記第二判定部の夫々の判定結果に基づき、前記表示装置に前記画像信号に対応する画像が表示されない異常の原因を特定する特定部と
を備えたことを特徴とする数値制御装置。
【請求項2】
前記特定部は、
前記第一判定部が前記表示装置は前記試験信号を受信していないと判定した場合、前記原因は前記伝送線の異常と特定し、
前記第一判定部が前記表示装置は前記試験信号を受信したと判定し、且つ前記第二判定部が前記表示装置は前記所定時間内に前記画像信号を受信していないと判定した場合、前記原因は前記制御部の異常と特定すること
を特徴とする請求項1に記載の数値制御装置。
【請求項3】
前記表示装置が異常であることを受け付ける受付部を備え、
前記特定部は、
前記第一判定部が前記表示装置は前記試験信号を受信していないと判定し、前記第二判定部が前記表示装置は前記所定時間内に前記画像信号を受信したと判定し、且つ前記受付部が前記異常を受け付けた場合、前記原因は前記表示装置の異常と特定すること
を特徴とする請求項2に記載の数値制御装置。
【請求項4】
前記特定部の特定結果を報知する報知部を備えたこと
を特徴とする請求項1から3の何れか一に記載の数値制御装置。
【請求項5】
前記表示装置は、前記伝送線との間にトランジスタスイッチを備え、
前記トランジスタスイッチは、前記伝送線を介して前記試験信号が入力する場合にオン、前記試験信号が入力しない場合にオフするものであって、
前記第一判定部は、前記トランジスタスイッチのオンオフに基づき、前記試験信号を前記表示装置が受信したか否か判定すること
を特徴とする請求項1から4の何れか一に記載の数値制御装置。
【請求項6】
前記制御部と前記表示装置の間に接続し、前記制御部と前記表示装置の間で通信を行う通信線を備え、
前記表示装置は前記第一判定部と前記第二判定部を有し、
前記制御部は前記特定部を有し、
前記第一判定部は、前記試験信号の受信の有無の判定結果を、前記通信線を介して前記制御部に送信し、
前記第二判定部は、前記画像信号の受信の有無の判定結果を、前記通信線を介して前記制御部に送信し、
前記特定部は、前記通信線を介して前記第一判定部と前記第二判定部から受信した夫々の前記判定結果に基づき、前記異常の原因を特定すること
を特徴とする請求項1から5の何れか一に記載の数値制御装置。
【請求項7】
被削材を加工する機械部と、
前記機械部の動作を制御する請求項1から6の何れか一に記載の数値制御装置と
を備え、
前記機械部の一方側に前記表示装置を備え、
前記機械部の他方側に前記制御部を備えたこと
を特徴とする工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、数値制御装置と工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1が開示する工作機械は、内部で機械加工を行う機械本体の外側に制御盤と操作盤を固定する。伝送線は制御盤と操作盤を接続する。制御盤の信号出力部は伝送線を介して画像信号を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
工作機械は、操作盤と制御盤が互いに遠くに離れる場合がある。ロック機構の無い伝送線は機械加工中に生じる振動等で抜け易い。表示部が画像を表示しなくなった場合、ユーザは表示部、制御盤、伝送線の何れが故障したか判断できない。
【0005】
本発明の目的は、表示装置に画像が映らない異常が起きた場合に、その異常の原因を特定できる数値制御装置と工作機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の数値制御装置は、表示装置と、前記表示装置に画像信号を出力する制御部と、前記制御部と前記表示装置の間に接続し、前記制御部が出力する前記画像信号を前記表示装置に送信する伝送線とを備えた数値制御装置において、前記制御部は、前記伝送線を介して前記表示装置に試験信号を送信する信号送信部を備え、前記信号送信部が前記伝送線を介して前記表示装置に送信した前記試験信号を前記表示装置が受信したか否か判定する第一判定部と、前記表示装置が所定時間内に前記制御部から前記画像信号を受信したか否か判定する第二判定部と、前記第一判定部と前記第二判定部の夫々の判定結果に基づき、前記表示装置に前記画像信号に対応する画像が表示されない異常の原因を特定する特定部とを備えたことを特徴とする。表示装置に画像が映らない異常が起きた場合、数値制御装置はその異常の原因を特定できるので、異常に対して速やかに対応できる。
【0007】
請求項2の数値制御装置の前記特定部は、前記第一判定部が前記表示装置は前記試験信号を受信していないと判定した場合、前記原因は前記伝送線の異常と特定し、前記第一判定部が前記表示装置は前記試験信号を受信したと判定し、且つ前記第二判定部が前記表示装置は前記所定時間内に前記画像信号を受信していないと判定した場合、前記原因は前記制御部の異常と特定してもよい。表示装置に画像が映らない異常が起きた場合、数値制御装置は伝送線の異常若しくは制御部の異常を特定できるので、異常の原因に応じて速やかに対応できる。伝送線の異常とは、例えば表示装置からの伝送線の抜け、又は断線等である。
【0008】
請求項3の数値制御装置は、前記表示装置が異常であることを受け付ける受付部を備え、前記特定部は、前記第一判定部が前記表示装置は前記試験信号を受信していないと判定し、前記第二判定部が前記表示装置は前記所定時間内に前記画像信号を受信したと判定し、且つ前記受付部が前記異常を受け付けた場合、前記原因は前記表示装置の異常と特定してもよい。表示装置に画像が映らない異常が起きた場合、数値制御装置は伝送線の異常、及び制御部の異常の何れでもないと判定し、且つ受付部で表示装置が異常であることを受け付けた場合、異常の原因は表示装置の異常と特定する。故に数値制御装置は、表示装置に画像が映らない異常が起きた場合、伝送線の異常、制御部の異常、表示装置の異常のうち何れが原因かを特定できる。
【0009】
請求項4の数値制御装置は、前記特定部の特定結果を報知する報知部を備えてもよい。表示装置に画像が映らない異常が起きた場合、ユーザはその異常の原因を知ることができるので、特定した原因に応じて速やかに復旧操作ができる。
【0010】
請求項5の数値制御装置において、前記表示装置は、前記伝送線との間にトランジスタスイッチを備え、前記トランジスタスイッチは、前記伝送線を介して前記試験信号が入力する場合にオン、前記試験信号が入力しない場合にオフするものであって、前記第一判定部は、前記トランジスタスイッチのオンオフに基づき、前記試験信号を前記表示装置が受信したか否か判定してもよい。数値制御装置は表示装置のトランジスタスイッチを用いることにより試験信号の受信の有無を速やかに検知できる。
【0011】
請求項6の数値制御装置は、前記制御部と前記表示装置の間に接続し、前記制御部と前記表示装置の間で通信を行う通信線を備え、前記表示装置は前記第一判定部と前記第二判定部を有し、前記制御部は前記特定部を有し、前記第一判定部は、前記試験信号の受信の有無の判定結果を、前記通信線を介して前記制御部に送信し、前記第二判定部は、前記画像信号の受信の有無の判定結果を、前記通信線を介して前記制御部に送信し、前記特定部は、前記通信線を介して前記第一判定部と前記第二判定部から受信した夫々の前記判定結果に基づき、前記異常の原因を特定してもよい。試験信号の受信の有無と、画像信号の受信の有無は表示装置側で判定する。表示装置は夫々の判定結果を通信線で制御部に送信する。制御部は受信した判定結果に基づき異常の原因を特定する。故に表示装置と制御部が離れた場所にあっても、表示装置に画像が映らない異常が起きた場合、制御部はその異常の原因を正確且つ速やかに特定できる。表示装置における試験信号と画像信号の受信の有無を表示装置側で判定することで、判定精度を向上でき且つ速やかな判定ができる。試験信号と画像信号の受信の有無の判定と異常の原因の特定を表示装置と制御部で分担して協働することで、数値制御装置は異常の原因を正確且つ速やかに特定できる。
【0012】
請求項7の工作機械は、被削材を加工する機械部と、前記機械部の動作を制御する請求項1から6の何れか一に記載の数値制御装置とを備え、前記機械部の一方側に前記表示装置を備え、前記機械部の他方側に前記制御部を備えたことを特徴とする。表示装置と制御部が機械部を挟んで離れた場所にあり、その間を伝送線で接続する工作機械の場合、伝送線にロック機構が付いていないと、表示装置から伝送線が抜ける可能性がある。機械部が大きければ大きいほど、加工中の振動が大きくなることから、伝送線の抜けが発生し易くなる。そのような大型の工作機械であっても、表示装置に画像が映らない異常が起きた場合にその異常の原因を特定できるので、速やかな対応が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図4】伝送線52のコネクタ52Aが操作基板26から抜けた状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態を説明する。以下、図中に示す矢印の向きで工作機械1の左右、前後、上下を説明する。
【0015】
図1,
図2を参照し、工作機械1の構成を説明する。工作機械1は機械部10、数値制御装置11、操作盤12を備える。機械部10は略直方体状であり、内部に図示しない空間を有する。作業者は加工対象の被削材を機械部10内の空間に配置する。機械部10は空間内に主軸を備える。機械部10は内部で主軸に装着した工具で被削材に機械加工を施す。機械加工は例えばフライス削り、穴あけ、タップ、切削等である。
【0016】
数値制御装置11は機械部10の背面に設け、且つ機械部10と操作盤12の各動作を制御する。数値制御装置11は操作盤12に種々の画像の画像信号を出力する。画像信号はHDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface)、DVI(Digital Visual Interface)等の規格に準拠したパルス状の電気信号である。画像は、作業者に操作を促す画像、例えば機械加工を行う為に必要な設定値を示す画像である。
【0017】
工作機械1は操作盤12を機械部10の前面に設ける。操作盤12は表示部20、操作部21、リセットキー23、LED24を備える。表示部20は液晶ディスプレイであり、数値制御装置11が出力した画像信号に基づく画像を表示する。操作部21はボタン、スイッチ、タッチパネル等を備える。操作盤12はタッチパネルを表示部20に設ける。リセットキー23は後述のように、表示部20の画面が消失した状態でLED24が消灯する場合に、表示部20の異常を入力する為、作業者が押下する。作業者は、表示部20が表示する画像を見ながら操作部21を操作する。操作盤12は操作信号を数値制御装置11に出力する。操作信号は作業者が操作部21で行った操作の内容を示す信号である。数値制御装置11は操作信号が示す操作の内容に基づき、機械加工の内容を示す制御信号を生成し機械部10に出力する。
【0018】
図2に示すように、操作盤12と数値制御装置11は機械部10を挟んで前後方向に互いに対向する。工作機械1は通信線51と伝送線52を備える。通信線51は例えばLAN(Local Area Network)ケーブルであり、機械部10内を通過する。通信線51は長さ方向両端にコネクタ51A,51Bを備える。コネクタ51Aは、操作盤12の後述の通信部25(
図3参照)に接続し、コネクタ51Bは数値制御装置11の後述の通信部36(
図3参照)に接続する。通信線51は操作信号を伝送する。伝送線52は例えばケーブルであり、機械部10内を通過する。伝送線52は長さ方向両端にコネクタ52A,52Bを備える。コネクタ52Aは操作盤12の後述の操作基板26の接続部261(
図3参照)と接続し、コネクタ52Bは数値制御装置11の後述の接続部301(
図3参照)と接続する。伝送線52は画像信号を伝送する。操作盤12と数値制御装置11は通信線51と伝送線52で接続する。なお、通信線51と伝送線52は機械部10内を通過しなくてもよい。
【0019】
図3を参照し、工作機械1の電気的構成を説明する。上記の通り、工作機械1は機械部10、数値制御装置11、操作盤12を備える。機械部10は動作部15を備える。動作部15はモータとエンコーダ(図示略)等を備える。モータは例えば主軸と移動機構の駆動源である。主軸は工具を装着し高速回転する。移動機構は主軸と工作台(図示略)を相対的に3軸(X軸、Y軸、Z軸)方向に移動する。工作台は被削材を支持する。エンコーダは対応する各モータの回転角を検出する。
【0020】
数値制御装置11は制御部30を備える。制御部30はCPU31、ROM32、RAM33、フラッシュメモリ34、入出力部35、通信部36、接続部301等を備える。CPU31はバス37を介して、ROM32、RAM33、フラッシュメモリ34、入出力部35、通信部36、接続部301と接続する。CPU31は工作機械1の動作を制御する。ROM32は装置側監視プログラム等を記憶する。装置側監視プログラムは、後述の装置側監視処理(
図6参照)を実行する。CPU31は電源投入後、一定の時間(例えば十秒~数十秒)経過後に画像信号を出力する。
【0021】
入出力部35は機械部10の動作部15と電気的に接続する。入出力部35はCPU31からの制御信号を動作部15に出力する。制御信号は機械加工の内容を示す。動作部15は制御信号に基づき動作する。故に機械部10は制御信号が示す内容に従って被削材に機械加工を施す。動作部15はエンコーダの検出信号を入出力部35に出力する。CPU31は入出力部35で受信した検出信号に基づき主軸と被削材の位置を推定する。通信部36は通信線51を介して操作盤12の通信部25と接続する。
【0022】
操作盤12は表示部20、操作部21、リセットキー23、LED24、通信部25、操作基板26等を備える。操作基板26は表示部20と接続し、バス29を介して操作部21、リセットキー23、LED24、通信部25と接続する。LED24は、後述の装置側監視処理(
図6参照)で特定する異常の原因に応じて種々のパターンで発光する。通信部25は、通信線51を介して数値制御装置11の通信部36と接続する。
【0023】
操作基板26はFPGA27、トランジスタスイッチ28、接続部261等を備える。FPGA27は操作盤12の動作を制御する。FPGA27は数値制御装置11が出力した画像信号を通信部25で受信し、表示部20に出力する。FPGA27は操作部21で受け付けた操作信号を通信部25から数値制御装置11に出力する。FPGA27に付随する不揮発性メモリ(図示略)は操作盤側監視プログラム等を記憶する。操作盤側監視プログラムは、後述の操作盤側監視処理(
図5参照)を実行する。トランジスタスイッチ28はスイッチ機能を有する周知のものである。トランジスタスイッチ28のベースは接続部261と接続する。トランジスタスイッチ28のエミッタはグランドに接続する。トランジスタスイッチ28のコレクタはFPGA27と接続する。コレクタとFPGA27が接続する部分には3.3Vの電源が接続する。
【0024】
通信線51のコネクタ51Aは、操作盤12の通信部25と接続し、コネクタ51Bは、数値制御装置11の通信部36と接続する。伝送線52のコネクタ52Aは、操作基板26の接続部261と接続し、コネクタ52Bは、制御部30に設けた接続部301と接続する。
【0025】
図3,
図4を参照し、表示部20の画面消失異常の原因を説明する。画面消失異常の主な原因は3つであり、伝送線52の異常、制御部30の異常、表示部20の異常の何れかである。上記の通り、操作盤12と数値制御装置11は機械部10の対面に設けるので互いに前後方向に離れる(
図1,
図2参照)。故に伝送線52は操作盤12と数値制御装置11の間を長距離(例えば5m以上)で渡す必要がある。コネクタ52A,52Bにロック機構の無い一般的な伝送線52は、接続部261,301から抜け易い場合がある。伝送線52の抜けは、例えばコネクタ52A,52Bと接続部261,301の接続部分の長期使用による劣化、損傷、機械部10における被削材加工中に生じる振動等で発生し得る。
図4に示すように、仮に伝送線52のコネクタ52Aが操作基板26の接続部261から抜けてしまうと(
図4中に二点鎖線で示す円P内を参照)、FPGA27は数値制御装置11の制御部30から画像信号を受信できなくなるので、表示部20の画面は消失する。
【0026】
制御部30に異常が起きた場合、FPGA27に向けて画像信号を送信できないので、表示部20の画面は消失する。表示部20に異常が起きた場合、FPGA27から正常に画像信号を受信しても表示部20の画面は消失する。作業者は画面が消失した表示部20を見ただけでは、画面消失異常の原因が分からない。本実施形態では、FPGA27が後述の操作盤側監視処理(
図5参照)を実行し、CPU31が後述の装置側監視処理(
図6参照)を実行する。これにより数値制御装置11は表示部20の画面が消失した場合にその異常の原因を特定し、特定した異常の原因に応じて操作盤12に設けたLED24を発光することで報知する。
【0027】
図5を参照し、操作盤側監視処理を説明する。工作機械1の電源がオンすると、操作盤12のFPGA27は不揮発性メモリから操作盤側監視プログラムを読込み、本処理を実行する。FPGA27はタイマを設定する(S11)。タイマの設定時間(以下、タイマ時間と呼ぶ)は、CPU31がFPGA27に向けて画像信号を出力開始するまでの時間に合わせるのがよく、例えば10秒~数十秒である。CPU31は試験信号を伝送線52でFPGA27に向けて送信する。試験信号は例えば5Vの電気信号である(
図3参照)。FPGA27はトランジスタスイッチ28から入力する信号がLOWか否か判断する(S12)。
【0028】
図3に示すように、伝送線52が抜けておらず正常の場合、伝送線52からの試験信号は、操作基板26に設けたトランジスタスイッチ28のゲートに入力する。故にトランジスタスイッチ28はオンするので、トランジスタスイッチ28のコレクタからFPGA27にLOWの信号が入力する。FPGA27に入力する信号はLOWなので(S12:YES)、FPGA27は処理を後述のS14に進める。
【0029】
図4に示すように、伝送線52のコネクタ52Aが操作基板26の接続部261から抜けている場合、伝送線52からの試験信号は、操作基板26に設けたトランジスタスイッチ28のゲートに入力しない。故にトランジスタスイッチ28はオフするので、トランジスタスイッチ28のコレクタからFPGA27にHighの信号(3.3V)が入力する。FPGA27に入力する信号はHighなので(S12:NO)、FPGA27は通信線51を介して第一信号をCPU31に向けて送信する(S13)。第一信号はFPGA27が試験信号を受信していないことを示す信号である。FPGA27は本処理を終了する。
【0030】
FPGA27に入力する信号がLOWの場合(S12:YES)、FPGA27はCPU31から伝送線52を介して送信される画像信号を受信したか判断する(S14)。画像信号を受信した場合(S14:YES)、FPGA27はS14に戻り、CPU31から画像信号を受信しなくなるまで待機する。画像信号を受信していない場合(S14:NO)、FPGA27はタイマをスタートする(S15)。FPGA27はタイマ終了までにCPU31から画像信号を受信したか判断する(S16)。
【0031】
画像信号を受信していない場合(S16:NO)、表示部20の画面は消失した状態である。CPU31から所定周期で送信されるはずの画像信号を受信していないので、FPGA27は通信線51を介して第二信号をCPU31に向けて送信する(S17)。第二信号はFPGA27が画像信号を受信していないことを示す信号である。FPGA27は本処理を終了する。
【0032】
画像信号を受信した場合(S16:YES)、FPGA27はリセットキー23が押下したか判断する(S18)。例えば表示部20に画面が正常に表示されている場合、作業者はリセットキー23を押さないので(S18:NO)、CPU31はS14に戻って上記処理を繰り返す。表示部20の画面が消失した場合、表示部20が故障している可能性があるので、表示部20の異常を入力する為、作業者はリセットキー23を押下する。リセットキー23が押下したので(S18:YES)、FPGA27は通信線51を介してリセット信号をCPU31に向けて送信する(S19)。リセット信号は、リセットキー23が押下を受け付けたことを示す信号である。FPGA27は本処理を終了する。
【0033】
図6を参照し、装置側監視処理を説明する。工作機械1の電源がオンすると、数値制御装置11のCPU31はROM32から装置側監視プログラムを読込み、本処理を実行する。CPU31は伝送線52を介して試験信号をFPGA27に送信する(S21)。CPU31はFPGA27から通信線51を介して第一信号を受信したか判断する(S22)。第一信号を受信した場合(S22:YES)、FPGA27は試験信号を受信していないので、CPU31は画面消失の異常の原因を伝送線52の異常と特定し(S23)、操作盤12に設けたLED24を高速点滅する(S24)。高速点滅は伝送線52の異常時の発光パターンである。故に作業者は表示部20の画面が消失した状態で、LED24が高速点滅しているのを確認することで、伝送線52の異常が原因で表示部20の画面が消失したことが分かる。CPU31は本処理を終了する。
【0034】
第一信号を受信しない場合(S22:NO)、CPU31はFPGA27から通信線51を介して第二信号を受信したか判断する(S25)。第二信号を受信した場合(S25:YES)、FPGA27は所定のタイマ時間内に画像信号を受信しておらず、伝送線52も正常であることから、CPU31は画面消失の異常の原因を制御部30の異常と特定し(S26)、操作盤12に設けたLED24を低速点滅する(S27)。低速点滅は制御部30の異常時の発光パターンである。故に作業者は、表示部20の画面が消失した状態で、LED24が低速点滅しているのを確認することで、制御部30の異常が原因で表示部20の画面が消失したことが分かる。CPU31は本処理を終了する。
【0035】
第二信号も受信しない場合(S25:NO)、CPU31はFPGA27から通信線51を介してリセット信号を受信したか判断する(S28)。リセット信号も受信しない場合(S28:NO)、CPU31はS25に戻り上記処理を繰り返す。リセット信号を受信した場合(S28:YES)、CPU31は画面消失の異常の原因を表示部20の異常と特定し(S29)、操作盤12に設けたLED24を正常点灯する(S30)。正常点灯は表示部20の異常時の発光パターンである。故に作業者は、表示部20の画面が消失した状態で、LED24が正常点灯しているのを確認することで、表示部20の異常が原因で表示部20の画面が消失したことが分かる。CPU31は本処理を終了する。
【0036】
上記説明にて、操作盤12は本発明の表示装置の一例である。
図6のS21の処理を実行するCPU31は本発明の信号送信部の一例である。
図5のS12,S13の処理を実行するFPGA27は本発明の第一判定部の一例である。S16,S17の処理を実行するFPGA27は本発明の第二判定部の一例である。
図6のS22,S23,S25,S26,S28,S29の処理を実行するCPU31は本発明の特定部の一例である。リセットキー23は本発明の受付部の一例である。
図6のS24,S27,S30の処理を実行するCPU31は本発明の報知部の一例である。
【0037】
以上説明したように、本実施形態の数値制御装置11は、操作盤12、制御部30、伝送線52を備える。操作盤12は表示部20を備える。制御部30は操作盤12に画像信号を出力する。伝送線52は操作盤12と制御部30の間に接続し、制御部30から出力する画像信号を操作盤12に送信する。制御部30は伝送線52を介して操作盤12に試験信号を送信する。操作盤12は制御部30からの試験信号を受信したか否か判定する。操作盤12は所定のタイマ時間内に制御部30から画像信号を受信したか否か判定する。制御部30は試験信号の受信有無の判定結果と、画像信号の受信有無の判定結果に基づき、表示部20に画像信号に対応する画像が表示されない異常の原因を特定する。表示部20に画像が映らない異常が起きた場合、数値制御装置11はその異常の原因を特定できるので、異常に対して速やかに対応できる。
【0038】
制御部30は操作盤12が試験信号を受信していないと判定した場合、異常の原因は伝送線52の異常と特定する。制御部30は操作盤12が試験信号を受信したと判定し且つ操作盤12が所定のタイマ時間内に画像信号を受信していないと判定した場合、異常の原因は制御部30の異常と特定する。表示部20に画像が映らない異常が起きた場合、数値制御装置11は伝送線52の異常、若しくは制御部30の異常を特定できるので、異常の原因に応じて速やかに対応できる。
【0039】
操作盤12はリセットキー23を備える。作業者がリセットキー23を押下することで、操作盤12は表示部20が異常であることを受け付ける。CPU31は、操作盤12が試験信号を受信していないと判定し、操作盤12が所定のタイマ時間内に画像信号を受信したと判定し、且つリセットキー23の押下で表示部20の異常を受け付けた場合、異常の原因は表示部20の異常と特定する。故に数値制御装置11は表示部20に画像が映らない異常が起きた場合、伝送線52の異常、制御部30の異常、表示部20の異常のうち何れが原因であるかを正確に特定できる。
【0040】
CPU31は異常の原因の特定結果をLED24の発光パターンで報知する。表示部20に画像が映らない異常が起きた場合、作業者はその異常の原因をLED24の発光パターンで把握できるので、特定した異常の原因に応じて速やかに復旧操作ができる。
【0041】
操作盤12は伝送線52との間にトランジスタスイッチ28を備える。トランジスタスイッチ28は、伝送線52を介して試験信号が入力する場合にオン、試験信号が入力しない場合にオフする。操作盤12はトランジスタスイッチ28のオンオフに基づき、試験信号を受信したか否か判定する。故に数値制御装置11はトランジスタスイッチ28を用いることにより、伝送線52の抜け、断線等の異常を速やかに検知できる。
【0042】
数値制御装置11は通信線51を備える。通信線51は制御部30と操作盤12の間に接続し、制御部30と操作盤12の間で通信を行う。操作盤12における試験信号の受信の有無の判定、画像信号の受信の有無の判定は、操作盤12のFPGA27が行う。異常の原因の特定は、制御部30が行う。FPGA27は試験信号を受信していないと判定した場合、通信線51を介して第一信号を制御部30に送信する。FPGA27は操作盤12が所定のタイマ時間内に画像信号を受信していないと判定した場合、通信線51を介して第二信号を制御部30に送信する。CPU31は通信線51を介して受信した第一信号又は第二信号に基づき、異常の原因を特定する。故に操作盤12と制御部30が離れた場所にあっても、表示部20に画像が映らない異常が起きた場合、制御部30はその異常の原因を正確且つ速やかに特定できる。
【0043】
工作機械1は、小型の工作機械に比べて機械部10が大きいことから、伝送線52が長くなる上、加工中の振動が大きい。故に伝送線52の抜けが発生し易くなる。そのような大型の工作機械1であっても、表示部20に画像が映らない異常が起きた場合にその異常の原因を特定できるので、異常の原因に応じて復旧操作が速くなる。
【0044】
制御部30における試験信号と画像信号の受信の有無を制御部30側で判定することで、判定精度を向上でき且つ速やかな判定ができる。試験信号と画像信号の受信の有無の判定と異常の原因の特定を操作盤12と制御部30で分担して協働することで、数値制御装置11は異常の原因を正確且つ速やかに特定できる。
【0045】
本発明は上記実施形態に限らず各種変形が可能である。工作機械1は、数値制御装置11と操作盤12を機械部10の前面と背面に夫々固定するが、固定する面は対面でなくてもよく、例えば操作盤12を機械部10の右面に固定し、数値制御装置11を機械部10の背面に固定してもよい。通信線51と伝送線52の長さは限定せず、夫々の長さは違っていてもよい。
【0046】
上記実施形態の
図4は、伝送線52のコネクタ52Aが操作基板26の接続部261から外れた例を示すが、コネクタ52Bが制御部30の接続部301から外れた場合、伝送線52に断線が生じた場合でも、数値制御装置11は表示部20の画面消失の異常の原因を伝送線52の異常と特定できる。
【0047】
LED24の発光パターンで報知したが、報知方法はこれ以外の方法でもよい。例えば、異常の原因の数に対応する複数のLEDを設け、特定した異常の原因に対応するLEDを点灯させてもよい。LED以外の発光部、例えばパトライト(登録商標)で報知してもよい。光の他に、ブザー、アラーム、音声メッセージ等で報知してもよい。
【0048】
上記実施形態は、操作盤12側で試験信号と画像信号の受信の有無の判定を行い、それらの判定結果に基づき、制御部30側で異常の原因を特定するが、制御部30側で判定と特定の両方を行うようにしてもよい。
【0049】
FPGA27は試験信号の受信の有無の判定結果として、試験信号を受信していない場合にのみ第一信号を送信するが、試験信号の受信の有りか無しかを示す信号を送信してもよい。FPGA27は画像信号の受信の有無の判定結果として、所定のタイマ時間内に画像信号を受信していない場合にのみ第二信号を送信するが、画像信号の受信の有りか無しかを示す信号を送信してもよい。
【0050】
上記実施形態は、数値制御装置11のCPU31の代わりに、マイクロコンピュータ、ASIC (Application Specific Integrated Circuits)、FPGA (Field Programmable Gate Array)などが、プロセッサとして用いられてもよい。装置側監視処理は、複数のプロセッサによって分散処理されてもよい。装置側監視プログラムは、例えば、図示外のネット被削材に接続されたサーバからダウンロードされて(即ち、伝送信号として送信され)、フラッシュメモリ34に記憶されてもよい。この場合、装置側監視プログラムは、サーバに備えられたHDDなどの非一時的な記憶媒体に保存されていればよい。
【0051】
上記実施形態は、操作盤12のFPGA27の代わりに、CPU、マイクロコンピュータ、ASIC (Application Specific Integrated Circuits)などが、プロセッサとして用いられてもよい。操作盤側監視処理は、複数のプロセッサによって分散処理されてもよい。操作盤側監視プログラムは、例えば、図示外のネット被削材に接続されたサーバからダウンロードされて(即ち、伝送信号として送信され)、FPGA27に付随する不揮発性メモリに記憶されてもよい。この場合、操作盤側監視プログラムは、サーバに備えられたHDDなどの非一時的な記憶媒体に保存されていればよい。
【符号の説明】
【0052】
1 工作機械
10 機械部
11 数値制御装置
12 操作盤
20 表示部
23 リセットキー
24 LED
28 トランジスタスイッチ
30 制御部
51 通信線
52 伝送線