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特開2022-154039有機修飾窒化ホウ素粒子、及びその連続製造方法
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  • 特開-有機修飾窒化ホウ素粒子、及びその連続製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154039
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】有機修飾窒化ホウ素粒子、及びその連続製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 21/064 20060101AFI20221005BHJP
【FI】
C01B21/064 M
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056878
(22)【出願日】2021-03-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(71)【出願人】
【識別番号】518268798
【氏名又は名称】株式会社スーパーナノデザイン
(74)【代理人】
【識別番号】100173679
【弁理士】
【氏名又は名称】備後 元晴
(72)【発明者】
【氏名】阿尻 雅文
(72)【発明者】
【氏名】野口 多紀郎
(57)【要約】
【課題】高い有機修飾率を有する窒化ホウ素粒子を安定して効率よく提供する。
【解決手段】本発明に係る連続製造方法は、前処理がなされた窒化ホウ素と有機修飾剤とを連続的に供給し、亜臨界状態にある水系材料と酸又は塩基の共存下で連続的に接触させる接触工程を含む。前処理は、窒化ホウ素に酸を加えること、窒化ホウ素に塩基を加えること、窒化ホウ素に酸化剤を加えること、窒化ホウ素に還元剤を加えること、及び窒化ホウ素に水熱処理又はソルボサーマル処理を行うことから選択されるいずれか1種以上を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前処理がなされた窒化ホウ素と有機修飾剤とを連続的に供給し、亜臨界状態にある水系材料と酸又は塩基の共存下で連続的に接触させる接触工程を含み、
前記前処理は、窒化ホウ素に酸を加えること、窒化ホウ素に塩基を加えること、窒化ホウ素に酸化剤を加えること、窒化ホウ素に還元剤を加えること、及び窒化ホウ素に水熱処理又はソルボサーマル処理を行うことから選択されるいずれか1種以上を含む、有機修飾された窒化ホウ素粒子の連続製造方法。
【請求項2】
前記有機修飾剤が両親媒性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記有機修飾剤は、フォスフォン酸類、カテコール類、アルコール類、チオール類、アミン類及びカルボン酸類から選択されるいずれか1種以上を含有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記有機修飾剤の濃度が前記原料液100質量部に対して50質量%以下である、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記水系材料の温度は150℃以上370℃以下であり、圧力は前記水系材料の温度での前記水系材料の飽和蒸気圧以上40MPa以下である、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機修飾窒化ホウ素粒子、及びその連続製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CPU(中央処理装置)等の発熱性電子部品の小型化、高出力化に伴い、それらの電子部品から発生する単位面積当たりの熱量は非常に大きくなってきている。この発熱性の電子部品を長期にわたり故障しないようにするためには、発熱する電子部品の冷却が必要とされる。冷却には金属製のヒートシンクや筐体が使用される。
【0003】
ところで、発熱性電子部品とヒートシンク等をそのまま接触させた場合、その界面には微視的にみると、空気が存在し熱伝導の障害となる。そこで、発熱性電子部品からヒートシンクや筐体などの冷却部へ効率よく熱を伝えるために熱伝導性材料が使用される。界面に存在する空気の代わりに熱伝導性材料が発熱性電子部品とヒートシンク等の冷却部品との間に存在することによって、発熱性電子部品から冷却部品に効率よく熱を伝えることができる。
【0004】
熱伝導性材料の高熱伝導化を図るため、熱伝導性材料として窒化ホウ素粉末が充填された樹脂成形体が提案されている。しかしながら、窒化ホウ素粉末は鱗片状であり、樹脂との親和性が低く、そのため樹脂に高充填しにくく、その結果高熱伝導がえられない。高充填をしようとするとボイド形成が生じ、それが熱伝導率を低下させる。また、粘性が急激に増大し成型加工性、密着性を阻害する要因となる。すなわちため、窒化ホウ素粉末脂との親和性を高めることが課題となる。
【0005】
この課題を解決するため、超臨界水又は亜臨界水に窒化ホウ素粉末を分散させつつ粉末表面を有機修飾することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-121744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、窒化ホウ素粉末の表面性状が疎水的な粉末の場合、水そのものに分散しない、あるいは水に浮いてしまう場合もあり、有機分子と反応させようにも困難な場合がある。そのような場合、小型回分式装置では反応させ得ても、連続生産を行う場合には安定な窒化ホウ素スラリーを高圧ポンプで反応装置に供給する必要がある。また、高い熱伝導率を達成しつつ、成型加工性、密着性を維持するための有機修飾は、修飾剤の性状、修飾密度の最適制御が求められる。
【0008】
加えて、窒化ホウ素粉末の技術分野においては、有機修飾の修飾率をよりいっそう高め、発熱性電子部品のさらなる小型化、高出力化に対応可能にすることが求められる。
【0009】
また、特許文献1に記載の手法は、いずれも回分式反応器(バッチ式反応器)を用いた水熱合成法によるものである。そこで、生産性を高める、連続式反応器での生産システムを提供することが求められる。
【0010】
ところで、原料となる窒化ホウ素粉末の製造法として、(1)融解無水ホウ酸(B)と窒素又はアンモニア(NH)をリン酸カルシウム(CaPO)触媒で反応させる手法、(2)ホウ酸やホウ化アルカリと、尿素、グアニジン、メラミン(C)等の有機窒素化合物とを高温の窒素-アンモニア雰囲気中で反応させる手法、(3)融解ホウ酸ナトリウム(NaBO)と塩化アンモニウムをアンモニア雰囲気中で反応させる手法、及び(4)三塩化ホウ素(BCl)とアンモニアを高温で反応させる手法等が知られている。そして、製造法の種類により、得られる窒化ホウ素粉末の性状、反応性が大きく異なる。例えば、水に分散可能な窒化ホウ素粉末もあれば、水に浮く窒化ホウ素粉末もある。
【0011】
連続式反応器での生産システムを実現する際、窒化ホウ素粉末が水系材料に対して均一相を形成し、スラリーフィードを形成する必要がある。窒化ホウ素粉末が水系材料に浮いてしまったり、窒化ホウ素粉末を水系材料に加えたときにゲル化してしまっては、窒化ホウ素粒子を連続的に提供することはできない。加えて、原料となる窒化ホウ素粉末の表面性状を制御し、窒化ホウ素粉末に含まれる不純物を除去しなければ、高効率の、再現性の良い有機修飾をすることができない。
【0012】
また、水熱合成の条件によっては、窒化ホウ素粉末表面におけるヒドロキシ基及びアミノ基の量が変化するため、有機修飾を最適に行うことができない。
【0013】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、高い有機修飾率を有する窒化ホウ素粒子を安定して効率よく提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記の課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、所定の前処理がなされた窒化ホウ素と有機修飾剤とを連続的に供給し、亜臨界状態にある水系材料と酸又は塩基の共存下で連続的に接触させることで、上述の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的に、本発明では、以下のようなものを提供する。
【0015】
第1の特徴に係る発明は、前処理がなされた窒化ホウ素と有機修飾剤とを連続的に供給し、亜臨界状態にある水系材料と酸又は塩基の共存下で連続的に接触させる接触工程を含み、前記前処理は、窒化ホウ素に酸を加えること、窒化ホウ素に塩基を加えること、窒化ホウ素に酸化剤を加えること、窒化ホウ素に還元剤を加えること、及び窒化ホウ素に水熱処理又はソルボサーマル処理を行うことから選択されるいずれか1種以上を含む、有機修飾された窒化ホウ素粒子の連続製造方法を提供する。
【0016】
第1の特徴に係る発明によると、前処理が行われることによって、原料となる窒化ホウ素に含まれる不純物を除去することができる。
【0017】
また、原料となる窒化ホウ素粉末に含まれるB-Nの結合を、例えば、-BOHとHN-、-B(OH)とHN-等の形にすることができ、これにより水系溶媒への溶解性を高めることができる。よって、原料液をスラリーフィードにすることができ、原料液の安定供給が可能となる。
【0018】
加えて、接触工程では、前処理がなされた窒化ホウ素と有機修飾剤とを連続的に供給し、亜臨界状態にある水系材料と酸又は塩基の共存下で連続的に接触させるため、連続式反応器での生産システムを実現でき、結果として、有機修飾された窒化ホウ素粒子の生産性が高まる。
【0019】
よって、第1の特徴に係る発明によると、高い有機修飾率を有する窒化ホウ素粒子を安定して効率よく提供することができる。
【0020】
第2の特徴に係る発明は、第1の特徴に係る発明において、前記有機修飾剤が両親媒性を有する、方法を提供する。
【0021】
第2の特徴に係る発明によると、原料液を均一なスラリーフィードにすることができ、接触工程を進める際に、原料液を安定して連続供給することができる。
【0022】
第3の特徴に係る発明は、第1の特徴に係る発明において、前記有機修飾剤がフォスフォン酸類、カテコール類、アルコール類、チオール類、アミン類及びカルボン酸類から選択されるいずれか1種以上を含有する、方法を提供する。
【0023】
第3の特徴に係る発明によると、窒化ホウ素含有液に含まれる窒素含有イオンの表面状態について、HN-あるいはHN-と有機修飾剤との結合により、例えば、NHPO-(フォスフォン酸)、NHCO-(カルボン酸)等の形態をとることができる。また、窒化ホウ素含有液に含まれるホウ素含有イオンの表面状態について、-BOHあるいは-B(OH)と有機修飾剤との結合により、例えば、BNH-(アミン)等の形態をとることができる。よって、よりいっそう高い有機修飾率を有する窒化ホウ素粒子を安定して効率よく提供することができる。
【0024】
第4の特徴に係る発明は、第1から第3のいずれかの特徴に係る発明において、前記有機修飾剤の濃度が前記原料液100質量部に対して50質量%以下である、方法を提供する。
【0025】
第4の特徴に係る発明によると、接触工程における、原料液に含まれる窒素含有イオン又はホウ素含有イオンと有機修飾剤との脱水結合反応を適切に進めることができ、結果として、高い有機修飾率を有する窒化ホウ素粒子をよりいっそう安定して効率よく提供することができる。
【0026】
第5の特徴に係る発明は、第1から第4のいずれかの特徴に係る発明において、前記水系材料の温度は150℃以上370℃以下であり、圧力は前記水系材料の温度での前記水系材料の飽和蒸気圧以上40MPa以下である、方法を提供する。
【0027】
第5の特徴に係る発明によると、窒化ホウ素粉末表面におけるヒドロキシ基及びアミノ基の量を好適にすることができ、その結果、より多くの有機修飾を行うことができる。よって、第5の特徴に係る発明によると、高い有機修飾率を有する窒化ホウ素粒子をよりいっそう安定して効率よく提供することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によると、高い有機修飾率を有する窒化ホウ素粒子を安定して効率よく提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、本実施形態の連続製造装置1の概略模式図である。
図2図2は、本実施形態の混合部41の概略模式図である。
図3図3は、図1とは別態様である連続製造装置1の概略模式図である。
図4図4は、変形例に係る連続製造装置1の概略模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0031】
<<窒化ホウ素粒子の連続製造装置>>
図1は、窒化ホウ素粒子を連続的に製造する連続製造装置1の概略模式図である。
【0032】
連続製造装置1は、原料液供給手段10と、高温・高圧手段20と、水系材料供給手段30と、接触手段40と、粒子回収手段50と、を備える。
【0033】
<原料液供給手段10>
原料液供給手段10は、溶媒を貯蔵する溶媒貯蔵部11と、溶媒貯蔵部11から供給される溶媒を用いて原料を溶解し、原料液にする原料調整部12と、原料液を脱気する原料脱気部13と、脱気された原料液を加圧する原料加圧部14と、を有する。
【0034】
〔溶媒貯蔵部11〕
溶媒貯蔵部11は、溶媒を貯蔵するものであれば、特に限定されない。溶媒貯蔵部11として、例えば、貯蔵槽、貯蔵タンク、瓶等が挙げられる。溶媒貯蔵部11は、後に説明する原料調整部12、水系材料脱気部21及び低温高圧流体調製部511に、溶媒を供給可能に構成されている。
【0035】
溶媒は、水系材料であれば、特に限定されない。水系材料とは、水、極性有機溶媒、又は水と極性有機溶媒との混合溶媒をいう。水系材料として、例えば、水、アルコール類、カルボン酸類、ケトン類、エーテル類、エステル類、アミド類、アミン類、硫黄化合物類等及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0036】
アルコール類としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、t-ブチルアルコール、プロピレングリコール及びフェノール等が挙げられる。
【0037】
カルボン酸類としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸等の低級カルボン酸が挙げられる。
【0038】
ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等が挙げられる。
【0039】
エーテル類としては、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン及びメチルセロソルブ等が挙げられる。
【0040】
エステル類としては、酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。
【0041】
アミド類としては、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトアミド、ジメチルアセトアミド、ニトロメタン及びアセトニトリル等が挙げられる。
【0042】
アミン類としては、メチルアミン、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
【0043】
硫黄化合物類としては、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0044】
中でも、取扱いが容易であることから、水系材料は、水、アルコール類及びカルボン酸類から選択される1種以上を含むことが好ましく、水であることがより好ましい。
【0045】
〔原料調整部12〕
原料調整部12は、溶媒貯蔵部11から供給される溶媒を用いて原料を溶解又は分散し、原料液にするものであれば、特に限定されない。原料調整部12として、例えば、溶解槽、撹拌器等が挙げられる。原料調整部12は、原料脱気部13に原料液を供給可能に構成されている。原料調整部12が原料を原料液にするため、原料液を所定の加熱装置で加熱させるか、あるいは亜臨界状態の水系材料とを接触させ、窒化ホウ素粒子を連続して有機修飾することができる。
【0046】
[原料液]
本実施形態における原料液は、前処理がなされた窒化ホウ素と有機修飾剤とを含有する。原料液の態様は、流動性があれば特に限定されず、原料成分を含有する水溶液やスラリー、ペーストあるいは懸濁液等が挙げられる。
【0047】
なお、水スラリーを調製するのが難しい場合、原料をエタノール等の水系材料に分散してスラリーにすればよい。
【0048】
(窒化ホウ素)
窒化ホウ素の前処理は、窒化ホウ素に酸を加えること、窒化ホウ素に塩基を加えること、窒化ホウ素に酸化剤を加えること、窒化ホウ素に還元剤を加えること、及び窒化ホウ素に水熱処理又はソルボサーマル処理を行うことから選択されるいずれか1種以上を含む。
【0049】
前処理が行われることによって、原料となる窒化ホウ素に含まれる不純物を除去することができる。
【0050】
また、原料となる窒化ホウ素粉末に含まれるB-Nの結合を、例えば、-BOHとHN-、-B(OH)とHN-等の形にすることができ、これにより水系溶媒への溶解性を高めることができる。よって、原料液をスラリーフィードにすることができ、原料液を安定して連続供給することができる。
【0051】
前処理の条件は特に限定されるものではないが、前処理が水熱処理又はソルボサーマル処理である場合、処理温度が400℃を超えると、-BOHとHN-、-B(OH)とHN-等の生成量がかえって少なくなり、その後の有機修飾に影響する。そのため、処理温度は、400℃以下であることが好ましい。
【0052】
(有機修飾剤)
必須ではないが、原料液は、有機修飾剤を含んでいてもよい。有機修飾剤は、両親媒性を有することが好ましい。両親媒性とは、極性部分及び非極性部分の両方を含む分子をいう。
【0053】
両親媒性を有する有機修飾剤として、フォスフォン酸類、カテコール類、アルコール類、チオール類、アミン類及びカルボン酸類から選択されるいずれか1種以上が挙げられる。
【0054】
窒化ホウ素含有液に含まれる窒素含有イオンの表面状態について、HN-あるいはHN-と有機修飾剤との結合により、例えば、NHPO-(フォスフォン酸)、NHCO-(カルボン酸)等の形態をとることができる。また、窒化ホウ素含有液に含まれるホウ素含有イオンの表面状態について、-BOHあるいは-B(OH)と有機修飾剤との結合により、例えば、BNH-(アミン)等の形態をとることができる。これにより、高い有機修飾率を有する窒化ホウ素粒子を安定して効率よく提供することができる。
【0055】
フォスフォン酸類とは、リンのオキソ酸、あるいは、それを母化合物として一般式がR-P(=O)(OH)(Rは有機基)で表される有機リン化合物をいう。有機基から1箇所の炭素-リン結合を形成しているものは、モノフォスフォン酸と称され、有機基から2箇所の炭素-リン結合を形成しているジフォスフォン酸と称される。
【0056】
モノフォスフォン酸の有機基には、例えば、アルキル基、ビニル基、フェニル基、アルキルアミノ基、アルキルメルカプト基等が挙げられる。ジフォスフォン酸の有機基には、例えば、アルキレン基、ビニレン基、アセチレン基、フェニレン基やそれらの誘導体等が挙げられる。
【0057】
カテコール類とは、ベンゼン環を有する化合物であり、ベンゼン環の6つ炭素原子のうち一つの炭素原子が水酸基で置換され、該水酸基からみてオルト位の炭素原子も水酸基で置換されたものをいう。また、カテコール類は、水酸基を有するこれら2つの炭素原子以外の炭素原子が水酸基やその他の官能基で置換されていてもよい。
【0058】
カテコール類として、例えば、ドーパミン、ベンセラジド、アドレナリン、イソプレナリン、ドブタミン、ノルアドレナリン、レボドパ、トリメトキノール、エンタカポン、ドロキシドパ、メチルドパ、カルビドパ、ルチン、タンニン酸等が挙げられる。
【0059】
アルコール類としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、t-ブチルアルコール、プロピレングリコール及びフェノール等が挙げられる。
【0060】
チオール類とは、水素化された硫黄を末端に持つ有機化合物をいい、一般式R-SH(Rは有機基)で表される。チオール類として、例えば、ペンタンチオール、ヘキサンチオール、ヘプタンチオール、オクタンチオール、ノナンチオール、デカンチオール、ウンデカンチオール、ドデカンチオール、トリデカンチオール、テトラデカンチオール、ペンタデカンチオール、ヘキサデカンチオール、ヘプタデカンチオール、オクタデカンチオール、ノナデカンチオール、エイコサンチオール、ペンタンジチオール、ヘキサンジチオール、ヘプタンジチオール、オクタンジチオール、ノナンジチオール、デカンジチオール、ウンデカンジチオール、ドデカンジチオール、トリデカンジチオール、テトラデカンジチオール、ペンタデカンジチオール、ヘキサデカンジチオール、ヘプタデカンジチオール、オクタデカンジチオール、ノナデカンジチオール、エイコサンジチオール等が挙げられる。
【0061】
アミン類としては、メチルアミン、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
【0062】
カルボン酸類としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸等の低級カルボン酸が挙げられる。
【0063】
有機修飾剤の濃度の下限は、特に限定されるものではないが、原料液に含まれる窒素含有イオン又はホウ素含有イオンと有機修飾剤との脱水結合反応を高い修飾率で進められる程度であることが好ましい。
【0064】
有機修飾剤の濃度の上限も、特に限定されるものではないが、原料液の粘度上昇に起因する原料液の流動性悪化を抑え、結果として原料液に含まれる窒素含有イオン又はホウ素含有イオンと有機修飾剤との脱水結合反応を効率よく進められる程度であることが好ましい。
【0065】
(酸又は塩基の共存下であること)
後に説明する接触手段40では、原料液を連続的に供給し、亜臨界状態にある水系材料と酸又は塩基の共存下で連続的に接触させる。
【0066】
酸又は塩基の共存下にするタイミングは特に限定されるものでなく、接触手段40で原料液と水系材料とが接触する位置よりも上流で酸又は塩基の供給配管が設けられていれば足りる。しかしながら、連続製造装置1の構成を簡略化するため、原料調整部12において酸又は塩基を供給し、原料液を酸性又は塩基性の状態にすることが好ましい。
【0067】
酸又は塩基は、窒化ホウ素が有機修飾反応を行うための触媒として機能する。酸にするか、塩基にするかは、有機修飾剤の種類によって異なる。有機修飾剤がフォスフォン酸類、カテコール類、アルコール類、チオール類、及びカルボン酸類から選択されるいずれか1種以上であれば、酸との共存下であることが好ましい。酸の種類は特に限定されるものでなく、塩酸、硝酸、硫酸、及びホウ酸から選択されるいずれか1種以上が挙げられる。
【0068】
他方、有機修飾剤がアミン類であれば、塩基との共存下であることが好ましい。塩基の種類は特に限定されるものでなく、アンモニア、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウムから選択されるいずれか1種以上が挙げられる。
【0069】
窒化ホウ素の有機修飾反応をより好適に進めるため、接触手段40において原料液と水系材料とを接触させたときの接触液のpHが、窒化ホウ素の等電点pHと、酸の酸解離定数pKa又は塩基の塩基解離定数pKbとの間にあることが好ましい。
【0070】
本実施形態では、酸又は塩基を接触工程での有機修飾反応を起こさせるための触媒と位置付けることができる。例えば、酸の共存下であれば、窒化ホウ素含有液に含まれる窒素含有イオンの表面状態について、HN-あるいはHN-と有機修飾剤との結合を進めることができる。また、塩基の共存下であれば、窒化ホウ素含有液に含まれるホウ素含有イオンの表面状態について、-BOHあるいは-B(OH)と有機修飾剤との結合を進めることができる。よって、本実施形態第によると、より高い有機修飾率を有する窒化ホウ素粒子を安定して効率よく提供することができる。
【0071】
[原料脱気部13]
原料脱気部13は、原料液を脱気するものであれば、特に限定されない。原料脱気部13として、例えば、超音波を用いる脱気装置、減圧を行う脱気装置、原料液中に希ガスを送り込む脱気装置、透過膜を用いる脱気装置等の既存技術の脱気装置、及び、これら既存技術の脱気装置を組み合わせた脱気装置等が挙げられる。原料液を脱気することにより、溶存ガスにより生じた気泡等が引き起こす原料液の供給量の変動が抑えられる。また、溶存酸素による原料加圧部14、接触手段40、粒子回収手段50の腐食も避けられる。
【0072】
[原料加圧部14]
原料加圧部14は、原料液を加圧するものであれば、特に限定されない。原料加圧部14として、例えば、加圧ポンプが挙げられる。原料液を加圧することにより、高圧状態の接触手段40へ原料液を連続的に供給できる。
【0073】
〔高温・高圧手段20〕
続いて、高温・高圧手段20について説明する。高温・高圧手段20は、上述の溶媒貯蔵部11と、溶媒貯蔵部11から供給される水系材料を脱気する水系材料脱気部21と、脱気された水系材料を加圧する加圧部22と、加圧された水系材料を加熱する加熱部23と、を有する。
【0074】
[水系材料脱気部21]
水系材料脱気部21は、水系材料を脱気するものであれば、特に限定されない。水系材料脱気部21として、例えば、超音波を用いる脱気装置、減圧を行う脱気装置、原料液中に希ガスを送り込む脱気装置、透過膜を用いる脱気装置等の既存技術の脱気装置、及び、これら既存技術の脱気装置を組み合わせた脱気装置等が挙げられる。水系材料を脱気することにより、溶存ガスにより生じた気泡等が引き起こす水系材料の供給量の変動が抑えられる。また、溶存酸素による加圧部22、加熱部23、接触手段40、粒子回収手段50の腐食も避けられる。
【0075】
[加圧部22]
加圧部22は、水系材料を加圧するものであれば、特に限定されない。加圧部22として、例えば、加圧ポンプが挙げられる。水系材料を加圧し、後述する加熱部23で加熱することにより、水系材料を亜臨界状態にし、接触手段40へ連続的に供給できる。
【0076】
加圧後の水系材料は、亜臨界状態であることが好ましい。水系材料が超臨界状態であると、亜臨界状態である場合に比べて窒化ホウ素粉末表面におけるヒドロキシ基及びアミノ基の生成量が少なく、その後の有機修飾に影響し得るためである。
【0077】
加圧後の水系材料の圧力は、飽和蒸気圧以上である。飽和蒸気圧未満であると、原料液と接触させても、有機修飾された窒化ホウ素粒子をつくることができないため、好ましくない。
【0078】
窒化ホウ素粉末表面におけるヒドロキシ基及びアミノ基の量を好適にし、その後の有機修飾をより好適に進められることから、加圧後の水系材料の圧力は、0.5MPa以上であることが好ましく、10MPa以上であることがより好ましく、20MPa以上であることがさらに好ましい。
【0079】
また、加圧後の水系材料の圧力は、40MPa以下である。40MPaを超えると、連続製造装置1の耐圧性を高めるためのコストが著しく増大し、接触手段40の劣化も生じやすくなるため、好ましくない。
【0080】
連続製造装置1の耐圧性に関するコストを抑える観点から、加圧後の水系材料の圧力は、37MPa以下であることが好ましい。また、接触手段40の劣化を抑える観点から、加圧後の水系材料の圧力は、35MPa以下であることがより好ましい。これにより、連続製造装置1の耐圧性に関するコストを下げ、接触手段40の劣化も抑えられる。
【0081】
[加熱部23]
加熱部23は、水系材料を加熱するものであれば、特に限定されない。加熱部23として、例えば、水系材料にマイクロ波を照射する加熱装置、ヒーター等の発熱体からの熱伝導によって水系材料を加熱する加熱装置等が挙げられる。加熱部23により、水系材料が加熱され、水系材料を亜臨界状態にできる。
【0082】
加熱後の水系材料の温度は、150℃以上である。150℃未満であると、水系材料と有機修飾剤とが均一相を形成できないため、好ましくない。また、脱水反応による結合形成も期待できないため、好ましくない。
【0083】
窒化ホウ素粉末表面におけるヒドロキシ基及びアミノ基の量を好適にし、その後の有機修飾をより好適に進められることから、加熱後の水系材料の温度は、200℃以上であることが好ましく、250℃以上であることがより好ましく、300℃以上であることがさらに好ましい。
【0084】
また、加熱後の水系材料の温度は、370℃以下であり、350℃以下であることが好ましい。水系材料の温度が高すぎると、窒化ホウ素粉末表面におけるヒドロキシ基及びアミノ基の量がかえって少なくなるため、好ましくない。
【0085】
加熱部23は、例えば、前下がりの傾斜状にされる。水系材料の流速が小さい場合は、加熱されて低密度となった水系材料が上昇しようとするので、高温高圧水が加熱部23を逆流し、温度制御ができなくなる場合がある。こうした逆流を防止できるために、上述した複数の加熱手段の間に絞り部を設けることが好ましい。絞り部は、逆流を防止するものであれば、特に限定されない。絞り部として、例えば、細い管やスパイラル管等を用いた構成が挙げられる。
【0086】
〔水系材料供給手段30〕
水系材料供給手段30は、配管によって構成される。水系材料供給手段30は、高温・高圧手段20によって得られた高温高圧の水系材料を接触手段40に向けて連続供給可能な機能を有する。
【0087】
水系材料供給手段30の接触手段40との接続部分周辺は、略垂直方向に形成され、その下端において接触手段40と接続されることが好ましい。このように構成することで、高温高圧の水系材料が上方から下方へ略垂直方向に案内される。
【0088】
〔接触手段40〕
接触手段40は、原料液供給手段10から連続供給される原料液と水系材料供給手段30から供給される水系材料とを混合する混合部41と、原料液と水系材料との反応生成物である窒化ホウ素の表面にヒドロキシ基(水酸基)を付与する反応処理部42と、を有する。
【0089】
[混合部41]
混合部41は、原料液と水系材料とを混合するものであれば、特に限定されない。
【0090】
図2は、混合部41の一例を示す概略模式図である。図2(A)に示すように、混合部41は、原料液供給手段10の端部に形成されたノズル15の先端を、水系材料供給手段30から供給された高温高圧の水系材料に臨ませ、このノズル15の先端から原料液を噴出させる構造を含むことが好ましい。原料液をノズル15の先端から噴出させることにより、原料液と水系材料とが高速に混合して反応効率が促進される。また、相分離する原料液においては、原料液をノズル15の先端から噴出させることにより、原料液が微粒化されて水系材料中に分散し、原料液中の原料が高温・高圧の水系材料中で微細なエマルジョンに形成され、反応効率がさらに促進される。
【0091】
混合部41は、水系材料と原料液とを混合するものであれば、特に限定されず、他の構成であってもよい。例えば、図2(B)に示すように、略水平方向から案内された水系材料と略水平方向から案内された原料液とを混合する構造であってもよいし、図2(C)に示すように、略水平方向から案内された水系材料と略垂直方向から案内された原料液とを混合する構造であってもよいし、図2(D)に示すように、ななめ上方向から案内された水系材料とななめ上方向から案内された原料液とを混合する構造であってもよい。
【0092】
混合部41において、原料液は、水系材料供給手段30から供給された水系材料の保有する熱量で亜臨界温度に瞬時に加熱され、原料液と水系材料との反応が開始される。この反応により、窒化ホウ素粒子の表面処理反応が始まる。
【0093】
なお、混合部41は、必須の構成ではない。混合部41を設けて急速混合を実現してもよいが、混合部41を設けなくてもよい。この場合、図3に示すように、原料調整部12から供給される原料スラリーは、加熱部23を直接通る。この場合、加熱温度は、350℃程度であることが好ましい。
【0094】
[反応処理部42]
図1に戻る。反応処理部42は、窒化ホウ素粒子の反応条件である亜臨界状態を所定の時間維持するものであれば、特に限定されない。反応処理部42として、例えば、加熱筒内部において複数回巻かれた螺旋管、溶融塩浴ジャケット、流動砂浴等の恒温層で覆われた反応器等が挙げられる。
【0095】
反応処理部42を、加熱筒内部において複数回巻かれた螺旋管又は恒温層で覆われた反応器とすることにより、混合部41からの壁面を通した熱伝導による原料液と水系材料との混合物の温度変化や温度ムラを防いで、亜臨界状態での粒子合成において必要とされる精密な温度制御を実現できる。
【0096】
反応処理部42の下流側にハイドロサイクロンを設けることもできる。ハイドロサイクロンを設けることにより、反応生成物と流体とを分離させ、この流体の圧力で反応器温度を制御することができる。ハイドロサイクロンを設ける構成は、反応生成物の回収収率を向上できるうえ、反応器温度の制御性を向上させることもでき、好ましい。反応処理部42を略垂直方向に形成し、原料液と水系材料との混合物が上方の混合部41から下方のハイドロサイクロンまでを流れるようにする構成は、反応処理部42の温度を均一に維持しやすいため、好ましい。
【0097】
原料液と水系材料との反応生成物が反応処理部42を通過すると、反応処理部42の出口からは、表面にヒドロキシ基(水酸基)が付された窒化ホウ素粒子を含有する高温高圧流体が出される。
【0098】
粒子の表面処理と生産性とを高めるため、反応処理部42は、原料液及び水系材料を含む流体の反応時間が5分以上であるよう構成されることが好ましい。粒子の表面処理をさらに促すため、反応時間が10分以上であるよう構成されることがより好ましい。
【0099】
反応処理部42の劣化を抑えるため、反応処理部42は、原料液及び前記水系材料を含む流体の反応時間が30分以下であるよう構成されることが好ましい。劣化をさらに抑えるため、反応時間が20分以下であるよう構成されることがより好ましい。
【0100】
〔粒子回収手段50〕
粒子回収手段50は、反応処理部42から出される粒子含有高温高圧流体を冷却する高温高圧流体冷却部51と、粒子含有高温高圧流体から粒子を回収する粒子回収部52と、を有する。
【0101】
[高温高圧流体冷却部51]
高温高圧流体冷却部51は、溶媒貯蔵部11から供給される水系材料を加圧し、低温高圧流体にする低温高圧流体調製部511と、低温高圧流体を粒子含有高温高圧流体に加え、粒子含有低温高圧流体にする流体混合部512と、を含んで構成される。
【0102】
(低温高圧流体調製部511)
低温高圧流体調製部511は、溶媒貯蔵部11から供給される水系材料を加圧し、低温高圧流体にするものであれば、特に限定されない。低温高圧流体調製部511として、例えば、加圧ポンプが挙げられる。水系材料を加圧することにより、流体混合部512に低温高圧流体を連続的に供給できる。
【0103】
必須の態様ではないが、低温高圧流体調製部511から上述した有機修飾剤を供給可能な構成にしてもよい。この場合、流体混合部512において加熱し、窒化ホウ素粒子を有機修飾する。その際、急速昇温は要しない。
【0104】
低温高圧流体調製部511から有機修飾剤を供給可能にすることで、窒化ホウ素粒子の表面を反応させ、窒化ホウ素粒子の表面にヒドロキシ基(水酸基)を出す表面処理と、表面処理後の粒子を有機修飾する処理とを分けた連続プロセスを提供できる。そして、前段の処理と後段の処理とを分けることで、前段の処理での最適条件と、後段の処理での最適条件とに分けることができる。
【0105】
なお、、前段の処理と後段の処理とを一緒にすることもできます。その場合には、有機修飾剤を、原料に混ぜておくか、原料加圧部14の後工程にて供給すればよい。
【0106】
(流体混合部512)
流体混合部512は、低温高圧流体調製部511から供給される低温高圧流体と、接触手段40から供給される高温高圧流体とを混合して粒子回収部52に送出するものであれば、特に限定されない。流体混合部512は、例えば、一方の端部周辺において低温高圧流体調製部511及び接触手段40と接続され、他方の端部周辺において粒子回収部52と接続する管として構成される。
【0107】
低温高圧流体と高温高圧流体とを混合することにより、流体の状態変化に伴う熱量、すなわち蒸発潜熱に相当する熱量を、速やかに取り除き、安全かつ安定した運転を行える。さらに、この混合によって高温高圧流体を臨界温度以下となるまで冷却すれば、高温高圧流体が急速に冷却され、粒子を生成する反応をほぼ瞬時に停止できる。したがって、生成物である粒子を、ほぼ均一な粒径に揃えられる。冷却された低温高圧流体と高温高圧流体とを混合した粒子含有低温高圧流体を粒子回収部52に送出することにより、粒子含有低温高圧流体から、有機修飾された窒化ホウ素粒子を回収できる。
【0108】
流体混合部512は、臨界温度以下になった粒子含有低温高圧流体を外部冷却する構造をさらに含むことが好ましい。臨界温度以下になった粒子含有低温高圧流体を外部冷却する構造をさらに含むことにより、低温高圧流体の消費量と混合流体中に含まれる粒子の濃度の低下とを抑えつつ、粒子含有低温高圧流体の温度を、粒子回収部52での粒子の回収に適した温度まで下げられる。
【0109】
[粒子回収部52]
粒子回収部52は、粒子含有低温高圧流体から粒子と低温高圧流体とに固液分離するフィルタ521と、フィルタ521に対して重力方向下方に設けられ、フィルタ521で分離された粒子を回収する粒子溜522と、フィルタ521で分離された低温高圧流体を排水する排水槽523と、を含んで構成される。
【0110】
(フィルタ521)
フィルタ521は、重力方向下方から供給される粒子含有低温高圧流体から、粒子と低温高圧流体とを分離するものであれば、特に限定されない。フィルタ521として、例えば、インラインフィルタが挙げられる。フィルタ521が粒子と低温高圧流体とを分離するため、有機修飾された窒化ホウ素粒子を捕集できる。粒子含有低温高圧流体が重力方向下方からフィルタ521へ供給されるため、フィルタ521が捕集した粒子は、重力によって重力下方に設置された粒子溜522へと落下する。したがって、フィルタ521表面におけるフィルタケーキの形成が抑えられ、フィルタケーキの蓄積によるフィルタ521の目詰まりを緩和できる。これにより、長時間の安定した運転が可能となり、しかも、粒子を容易に回収することができる。
【0111】
なお、フィルタ521は、固定式であってもよく、可動式のピストン形式であってもよい。
【0112】
(粒子溜522)
粒子溜522は、フィルタ521から落下してくる粒子を回収するものであれば、特に限定されない。粒子溜522がフィルタ521から落下してくる粒子を回収することにより、接触手段40で生成され、高温高圧流体冷却部51で冷却された粒子を回収できる。
【0113】
本実施形態において、粒子回収部52は、複数の流路に分かれている。複数の流路に分かれていることで、回収する装置の切り替えをしつつ、粒子溜522に溜まった製品を常圧回収することが可能である。
【0114】
(排水槽523)
排水槽523は、フィルタ521で分離された低温高圧流体を回収するものであれば、特に限定されない。排水槽523は、低温高圧流体の収容に適した容積、強度、耐食性等を有する。
【0115】
<有機修飾された窒化ホウ素粒子の連続製造方法>
続いて、有機修飾された窒化ホウ素粒子の連続製造方法について説明する。
【0116】
〔原料液の生成と加圧〕
溶媒貯蔵部11に貯蔵された溶媒は、原料調整部12に供給される。供給された溶媒は、原料調整部12において原料の窒化ホウ素を溶解し、原料液となる。生成された原料液は、原料脱気部13において脱気され、原料加圧部14に送出される。脱気された原料液は、原料加圧部14で加圧され、混合部41へと送出される。
【0117】
〔高温高圧の水系材料の生成〕
上述の原料液の生成と加圧と同時に、溶媒貯蔵部11に貯蔵された溶媒を、水系材料脱気部21に供給する。供給された溶媒は、水系材料脱気部21で脱気され、加圧部22に送出される。脱気された水系材料は、加圧部22で加圧され、さらに加熱部23に送られて加熱され、亜臨界状態又は超臨界状態となる。そして、亜臨界状態又は超臨界状態の水系材料は、水系材料供給手段30を経由して混合部41に送出される。
【0118】
〔原料液と水系材料との接触〕
原料加圧部14で加圧された原料液と、水系材料供給手段30から送出された亜臨界状態の水系材料とは、混合部41で接触して高温高圧流体となる。そして、高温高圧流体は、反応処理部42に送出される。高温高圧流体が亜臨界状態の反応処理部42に滞留することで表面処理反応が進み、窒化ホウ素粒子の表面へのヒドロキシ基(水酸基)の修飾が行われる。そして、高温高圧流体は、流体混合部512へ送出される。
【0119】
〔高温高圧流体の冷却〕
反応処理部42から供給された高温高圧流体は、溶媒貯蔵部11に貯蔵された溶媒を低温高圧流体調製部511で加圧した低温高圧流体と、流体混合部512で混合される。この混合によって、高温高圧流体は冷却されて粒子の有機修飾反応を停止し、有機修飾された窒化ホウ素粒子を含有する低温高圧流体となる。当該低温高圧流体は、フィルタ521へ送出される。
【0120】
〔粒子の回収〕
流体混合部512から送出された粒子含有低温高圧流体は、重力方向下方からフィルタ521に供給され、有機修飾された窒化ホウ素粒子と低温高圧流体とに分離される。有機修飾された窒化ホウ素粒子は、重力によって落下して、重力方向下方に設置された粒子溜522に回収され、フィルタ521を通過した低温高圧流体は排水槽523に回収される。
【0121】
また、連続製造装置を使用するため、装置入口から原料液及び水系材料を供給し、有機修飾された窒化ホウ素粒子を装置出口から出すことで、連続式反応器での生産システムを実現でき、有機修飾された窒化ホウ素粒子の生産性が高まる。
【0122】
よって、本発明によると、高い有機修飾率を有する窒化ホウ素粒子を安定して効率よく提供することができる。
【0123】
<<変形例に係る窒化ホウ素粒子の連続製造装置>>
図4は、変形例に係る連続製造装置1の概略模式図である。
【0124】
本実施形態では、原料液供給手段10と、高温・高圧手段20及び水系材料供給手段30とが別ルートで構成され、原料液供給手段10の出口と水系材料供給手段30の出口とが接触手段40の入口で合流するように構成されていたが、これに限るものではない。図4に示すとおり、原料加圧部14の出口と接触手段40の入口との間に加熱部23を設け、原料液供給手段10、高温・高圧手段20及び水系材料供給手段30を1つのルートで構成してもよい。変形例に係る連続製造装置1によると、装置構成をより簡素化することができる。
【符号の説明】
【0125】
1 連続製造装置
10 原料供給手段
11 溶媒貯蔵部
12 原料調整部
13 原料脱気部
14 原料加圧部
15 ノズル
20 高温・高圧手段
21 水系材料脱気部
22 加圧部
23 加熱部
30 水系材料供給手段
40 接触手段
41 混合部
42 反応処理部
50 粒子回収手段
51 高温高圧流体冷却部
511 低温高圧流体調製部
512 流体混合部
52 粒子回収部
521 フィルタ
522 粒子溜
523 排水槽
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2022-03-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化ホウ素粉末に酸を加えること、窒化ホウ素粉末に塩基を加えること、窒化ホウ素粉末に酸化剤を加えること、窒化ホウ素粉末に還元剤を加えること、及び窒化ホウ素粉末に400℃以下での水熱処理又は400℃以下でのソルボサーマル処理を行うことから選択されるいずれか1種以上を含む前処理を行い、原料となる窒化ホウ素粉末に含まれるB-Nの結合を、-BOHとHN-及び/又は-B(OH) とH N-の形にする工程と、
前記前処理の後、前記前処理がなされた窒化ホウ素粉末に水系溶媒を加えて窒化ホウ素粉末を水系溶媒に均一に分散させる工程と、
前記前処理がなされた窒化ホウ素と有機修飾剤とを水系溶媒に分散したスラリーフィードを連続的に供給し、亜臨界状態にある水系材料と酸又は塩基の共存下で連続的に接触させる接触工程を含む、有機修飾された窒化ホウ素粒子の連続製造方法。
【請求項2】
窒化ホウ素粉末に酸を加えること、窒化ホウ素粉末に塩基を加えること、窒化ホウ素粉末に酸化剤を加えること、窒化ホウ素粉末に還元剤を加えること、及び窒化ホウ素粉末に400℃以下での水熱処理又は400℃以下でのソルボサーマル処理を行うことから選択されるいずれか1種以上を含む前処理を行い、原料となる窒化ホウ素粉末に含まれるB-Nの結合を、-BOHとHN-及び/又は-B(OH) とH N-の形にする工程と、
前記前処理の後、前記前処理がなされた窒化ホウ素粉末及び有機修飾剤に水系溶媒を加えて窒化ホウ素粉末を水系溶媒に均一に分散させる工程と、
前記前処理がなされた窒化ホウ素と、有機修飾剤とを水系溶媒に分散したスラリーフィードを連続的に供給し、亜臨界状態にある水系材料と酸又は塩基の共存下で連続的に接触させる接触工程とを含む、有機修飾された窒化ホウ素粒子の連続製造方法。
【請求項3】
前記有機修飾剤が両親媒性を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記有機修飾剤は、フォスフォン酸類、カテコール類、アルコール類、チオール類、アミン類及びカルボン酸類から選択されるいずれか1種以上を含有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記水系材料の温度は150℃以上370℃以下であり、圧力は前記水系材料の温度での前記水系材料の飽和蒸気圧以上40MPa以下である、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。