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特開2022-154044オルガノポリシロキサンプレポリマーおよびその硬化体
<図面はありません>
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154044
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】オルガノポリシロキサンプレポリマーおよびその硬化体
(51)【国際特許分類】
   C08G 77/44 20060101AFI20221005BHJP
   C08G 77/14 20060101ALI20221005BHJP
   C08L 83/10 20060101ALI20221005BHJP
   C08L 83/08 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
C08G77/44
C08G77/14
C08L83/10
C08L83/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056888
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000178826
【氏名又は名称】日本山村硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124648
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 和夫
(74)【代理人】
【識別番号】100060368
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 迪夫
(74)【代理人】
【識別番号】100154450
【弁理士】
【氏名又は名称】吉岡 亜紀子
(72)【発明者】
【氏名】信藤 卓也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 緑
【テーマコード(参考)】
4J002
4J246
【Fターム(参考)】
4J002CP092
4J002CP171
4J002EG046
4J002EZ046
4J002FD142
4J002FD156
4J002GQ01
4J246AA03
4J246AB02
4J246AB15
4J246BA02X
4J246BA05X
4J246BB021
4J246BB022
4J246BB02X
4J246CA12E
4J246CA12U
4J246CA12X
4J246CA24X
4J246FA131
4J246FC101
4J246FC191
4J246GA01
4J246GA02
4J246GB04
4J246GD08
4J246HA62
(57)【要約】
【課題】柔らかく、よく伸びて、かつ、弾性回復率が高い弾性材料を得ることが可能な縮合型オルガノポリシロキサンプレポリマーとその硬化体を提供する。
【解決手段】縮合型オルガノポリシロキサンプレポリマーは、下記(A)と、下記(A)1モルに対して1モルより多い量の下記(B)とを縮合反応することによって調製されたものである。(A)両末端にシラノール基を有するポリジメチルシロキサンであって、分子量(Mn)が30,000以上であり、分子量分布指数(Mw/Mn;Mwは重量平均分子量,Mnは数平均分子量)が1.3以上であるもの。(B)テトラアルコキシシランのオリゴマー、および/または、前記オリゴマーの完全または部分加水分解物または縮合物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)と、下記(A)1モルに対して1モルより多い量の下記(B)とを縮合反応させることによって調製された縮合型オルガノポリシロキサンプレポリマー。
(A)両末端にシラノール基を有するポリジメチルシロキサンであって、分子量(Mn)が30,000以上であり、分子量分布指数(Mw/Mn;Mwは重量平均分子量,Mnは数平均分子量)が1.3以上であるもの。
(B)テトラアルコキシシランのオリゴマー、および/または、前記オリゴマーの完全または部分加水分解物または縮合物。
【請求項2】
前記(A)は数平均分子量(Mn)が70,000以下である、請求項1に記載の縮合型オルガノポリシロキサンプレポリマー。
【請求項3】
前記(B)は、直鎖状で4量体~10量体であり、アルコキシ基としてメトキシ基またはエトキシ基を有する、請求項1または請求項2に記載の縮合型オルガノポリシロキサンプレポリマー。
【請求項4】
前記(B)が、前記(A)1モルに対して1モルより多く2モル以下配合されている、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の縮合型オルガノポリシロキサンプレポリマー。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の縮合型オルガノポリシロキサンプレポリマーを含む、電極材料。
【請求項6】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の縮合型オルガノポリシロキサンプレポリマーを含む、絶縁材料。
【請求項7】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の縮合型オルガノポリシロキサンプレポリマーの硬化体。
【請求項8】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の縮合型オルガノポリシロキサンプレポリマーと硬化剤とを含む混合物を硬化させた硬化体であって、前記硬化剤は、アルコキシ基を、前記混合物中のエチルシリケートの10重量%以下含む、請求項7に記載の硬化体。
【請求項9】
弾性率が1.5MPa・s以下、伸び率が200%以上、かつ、弾性回復率が90%以上である、請求項7または請求項8に記載の硬化体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的にはオルガノポリシロキサンプレポリマーおよびその硬化体に関する。
【背景技術】
【0002】
オルガノシロキサン組成物の硬化体は、ヒステリシス特性が乏しいことが知られている。例えば特開平9-328615号公報(特許文献1)には、改善されたヒステリシス特性を有する硬化性オルガノシロキサン組成物を得ることを目的として、25℃で20~200Pa・sの粘度を持ち、非末端ケイ素原子結合したエチレン性不飽和炭化水素基を含まないジオルガノビニルシロキシ末端ポリジオルガノシロキサン;25℃で0.1~200Pa・sの粘度を持ち、シロキサンの非末端反復単位の1~5%がビニル基を有するジオルガノビニルシロキシ末端ポリジオルガノシロキサン;ヘキサメチルジシラザン及び1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジビニルジシラザンで処理された補強性シリカ充填剤10~30wt%;1分子あたり少なくとも10個のケイ素に結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンシロキサ架橋剤を含む組成物が提案されている。
【0003】
また、特開2011-241401号公報(特許文献2)には、「へたり」を改善することを目的として、有機結合を主骨格とした弾性材料が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-328615号公報
【特許文献2】特開2011-241401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の硬化性オルガノシロキサン組成物の硬化体は、ヒステリシス改善を目的にシリカ微粒子を配合しているが、導電性の塗膜を作製する際に応用が難しい上、ヒステリシスの改善もセンサーなどの応用には十分ではない。
【0006】
また、特許文献2に記載のように有機結合を主骨格とすれば、柔らかくできるものの、結合エネルギーの低さから耐熱性、対候性が劣る。また、特許文献2の弾性材料のヒステリシスロスも10%を超えるものがあり、十分ではない。有機結合エネルギーは低く、外部応力によって結合が切れてしまうことが多く、「へたり」を十分に改善することが難しいためである。
【0007】
一般的に、低硬度、高伸長率、低弾性率の弾性材料は、繰り返しの変形に弱く、簡単に歪んでしまう。
【0008】
そこで、本発明の目的は、精密なアクチュエータやセンサー用途に応用可能な、柔らかく、よく伸びて、かつ、弾性回復率が高い弾性材料を得ることが可能な縮合型オルガノポリシロキサンプレポリマーとその硬化体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に従った縮合型オルガノポリシロキサンプレポリマーは、下記(A)と、下記(A)1モルに対して1モルより多い量の下記(B)とを縮合反応することによって調製されたものである。
(A)両末端にシラノール基を有するポリジメチルシロキサンであって、分子量(Mn)が30,000以上であり、分子量分布指数(Mw/Mn;Mwは重量平均分子量,Mnは数平均分子量)が1.3以上であるもの。
(B)テトラアルコキシシランのオリゴマー、および/または、前記オリゴマーの完全または部分加水分解物または縮合物。
【0010】
本発明に従った縮合型オルガノポリシロキサンプレポリマーにおいては、(A)は、数平均分子量(Mn)が70,000以下であることが好ましい。
【0011】
本発明に従った縮合型オルガノポリシロキサンプレポリマーにおいては、(B)は、直鎖状で4量体~10量体であり、アルコキシ基としてメトキシ基またはエトキシ基を有することが好ましい。
【0012】
本発明に従った縮合型オルガノポリシロキサンプレポリマーにおいては、(B)が、(A)1モルに対して1モルより多く2モル以下配合されていることが好ましい。言い換えれば、
【0013】
本発明に従った電極材料は、上記のいずれかの縮合型オルガノポリシロキサンプレポリマーを含む。
【0014】
本発明に従った絶縁材料は、上記のいずれかの縮合型オルガノポリシロキサンプレポリマーを含む。
【0015】
本発明に従った硬化体は、上記のいずれかの縮合型オルガノポリシロキサンプレポリマーの硬化体である。
【0016】
本発明に従った硬化体は、上記のいずれかの縮合型オルガノポリシロキサンプレポリマーと硬化剤とを硬化させた硬化体であって、硬化剤中のアルコキシ基の量は縮合型オルガノポリシロキサンプレポリマーと硬化剤の全エチルシリケートの量の10重量%以下であることが好ましい。
【0017】
本発明に従った硬化体は、弾性率が1.5MPa・s以下、伸び率が200%以上、かつ、弾性回復率が90%以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明に従えば、柔らかく、よく伸びて、かつ、弾性回復率が高い弾性材料を得ることが可能な縮合型オルガノポリシロキサンプレポリマーとその硬化体を提供することができる。本発明で得られる縮合型オルガノポリシロキサンプレポリマーは、無機結合の螺旋構造を骨格とし、架橋点を極めて少なくすることで機械的耐性と柔軟性を両立させることにより、復元力の高い弾性体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明に従った縮合型オルガノポリシロキサンプレポリマーについて詳細に説明する。
【0020】
<両末端にシラノール基を有するポリジメチルシロキサン(A)>
本発明の縮合型オルガノポリシロキサンプレポリマーは、両末端に反応性を有するシラノール基を有するポリジメチルシロキサン(PDMS)を一原料としている。両末端にシラノール基を有し、分子鎖が分岐、あるいは末端に複数個のシラノール基を有するもの、その他の反応性官能基を有するものなど、種々の原材料が考えられる。(A)の化学式を(1)に示す。
H-(O-Si(CH-OH ・・・(1)
【0021】
両末端シラノールポリジメチルシロキサンは、直鎖状であることが好ましく、数平均分子量(Mn)は30,000以上であり、70,000以下であることが好ましい。(1)におけるmは、上記の分子量を満たす整数であることが好ましい。Mw/Mnは1.3以上であり、1.5以上であることが好ましい。
【0022】
数平均分子量が30,000未満である場合、合成された縮合型オルガノポリシロキサンプレポリマーを硬化させて得られるオルガノポリシロキサン硬化体が硬くなる。一方、数平均分子量が70,000を超えると、反応が非常に困難となる。そのため、原材料である末端シラノール基を有するPDMSの数平均分子量は30,000以上であり、70,000以下であることが好ましく、60,000以下であることがより好ましく、55,000以下であることがさらに好ましい。
【0023】
分子量分布指数Mw/Mnは、1.3以上であり、1.5以上であることが好ましい。シリコーン原料は、重合を進めた場合、一般的には反応釜の大きさによる温度分布のバラツキなどの影響もあり分子量を狭くすることは難しい。汎用的なシリコーンでは概ね1.3以上、分子量が高いものでは1.5以上になる。リビング重合などによる分子量分布指数Mw/Mnが1.3未満のものも市販されているが、本発明では、このような分子量分布が狭いPDMSでは弾性回復率が低くなる。
【0024】
Mw/Mnが小さいと光に対する透明度や均質性は良好となり、また硬化反応が迅速に完結する利点となるが、分子量分布の狭いポリマーになることで機械的変形に対応する靭性が低くなる。UV域での耐性という観点からは1.5以上が好ましい。反対に、Mw/Mnが大きいと透明度が著しく悪くなるため、Mw/Mnは3.0以下が好ましく、2.5以下がより好ましい。
【0025】
<テトラアルコキシシランのオリゴマー、および/または、このオリゴマーの完全または部分加水分解物または縮合物(B)>
アルコキシ基を有するシランオリゴマーは、一般的にはメチルシリケートやエチルシリケートといった化合物が知られており、簡単に入手することが可能である。そのオリゴマーであるアルキルシリケートの一般構造式は下記の通りとなる。
RO-(Si(OR)-O)-R ・・・(2)
【0026】
ここでRはメチル基、もしくはエチル基であるが、メチル基の場合、反応は迅速に進むが副生成物としてメタノールが発生することもあり、エチル基のものを用いることが望ましい。nは、4~10のもの(4量体~10量体)を用いることが好ましい。nが10(10量体)を超えると、PDMSとの反応性が小さくなり、合成に高温、長時間を要する場合がある。nが4(4量体)未満では、アルキルシリケート単独での重縮合が進行しクラスター粒子が生成する恐れがあり、光透過性の低下を招く場合がある。また、立体障害による反応性の観点から、(B)のオリゴマーは直鎖状であることが好ましい。
【0027】
後述するように、本発明の縮合型オルガノポリシロキサンプレポリマーにおいては、テトラアルコキシシランのオリゴマー、および/または、このオリゴマーの完全または部分加水分解物または縮合物(B)は、両末端にシラノール基を有するポリジメチルシロキサン(A)と同モル以下、用いられる。
【0028】
<有機金属化合物(C)>
本発明の縮合型オルガノポリシロキサンプレポリマーの調製には、有機金属化合物を縮合触媒として合成を進めることが好ましい。縮合触媒に制約は無いが、最も使いやすく添加量を低く抑えることが可能なSn系触媒が有効である。金属系触媒には、Sn系以外でもTi系、Al系、Zn系、Zr系、Bi系等の有機金属化合物が存在するが、反応性が低い、残留時の硬化体の耐熱性低下、着色などの課題を生じるため、Sn系触媒が最も効果的に使用することができる。
【0029】
Sn系触媒としては、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ビスアセチルアセトナート等が一般的である。Sn系触媒は、合成条件次第で少量で効果的な縮合反応を進めることが可能であり、固形分に対して配合量も500ppm以下に抑えることが可能である。
【0030】
<平均分子量の測定>
上記PDMS(A)の平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法により測定し、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比を分子量分布指数とした。標準試料としてポリスチレンを用い、ポリスチレン換算分子量を測定した。なおGPC法によるポリスチレン換算分子量測定は、以下の測定条件で行うものとする。
a)測定機器:東ソー製GPC HLC-8320PC
b)Mn30,000以下のカラム :TSKgel guardColumn Super HZ-H、TSKgel Super HZM-H ×2本
c)Mn30,000以上のカラム :TSKgel guardColumn Super MP(HZ)-N、TSKgel Multipore HZ-N ×3本
d)オーブン温度:40℃
e)溶離液 :テトラヒドロフラン(THF) 1.0mL/min
f)標準試料:ポリスチレン
g)注入量 :100μL
h)濃度 :0.05g/10mL
i)試料調製:2,6-ジ-tert-ブチル-p-フェノール(BHT)が0.2質量%添加されたTHFを溶媒として、室温で攪拌して溶解させる。
j)補正 :検量線測定時と試料測定時とのBHTのピークのずれを補正して、分子量計算を行う。
【0031】
<縮合型オルガノポリシロキサンプレポリマーの作製>
本発明の縮合型オルガノポリシロキサンプレポリマーの作製においては、好ましくは有機金属化合物(C)の存在下で、縮合型オルガノポリシロキサンプレポリマーが合成される。
【0032】
両末端にシラノール基を有するポリジメチルシロキサン(A)とアルコキシ基を有するシランオリゴマー(B)は、アルコキシ基を有するシランオリゴマー(B)が両末端にシラノール基を有するポリジメチルシロキサン(A)1モルに対して1モルより多い分量になるようモル比を調整した配合で、加熱によって脱アルコール(または(B)の完全または部分加水分解物との脱水)による縮合反応を生じる。この反応は、数時間から数十時間で制御され、縮合型オルガノポリシロキサンプレポリマーとなる。合成には、攪拌装置、温度計、滴下ラインを取り付けた反応容器(挿入口が複数個あるフラスコ)を用いる。撹拌装置には、撹拌羽の付随した回転式撹拌機、マグネチックスターラー、二軸遊星式撹拌装置、超音波洗浄装置など、反応に寄与する高粘度液状原料を均質に混ぜる効果があれば特に制限はない。しかし温度制御、雰囲気制御、成分滴下ラインなどを付随させることから、回転式撹拌機、マグネチックスターラーなどが望ましい。合成温度は均一性が重要である。合成温度は60~140℃の間で適宜設定される。低温で長期間反応させる場合や高温で短時間に合成される場合など、原料の種別、配合比率、合成設備などによって個別に設定される。合成雰囲気は、不活性ガスとして例えば窒素ガスを使用し、該反応容器内に含有水分量を一定にした窒素ガスを十分に充満させる。このとき、窒素ガスには、窒素ガス製造装置以外にもボンベや液体窒素からも使用可能である。
【0033】
両末端にシラノール基を有するポリジメチルシロキサン(A)とアルコキシ基を有するシランオリゴマー(B)のモル比(配合比)に関しては、(B)が、上記(A)1モルに対して1モルより多い量の範囲で調整される。(A)と(B)のモル比が上記の範囲で、かつ縮合に適した条件により縮合反応を進めることで、反応中または反応後のゲル化が起こりにくくなり、低分子量シロキサンの残留が無い安定したプレポリマーが得られる。
【0034】
なお、ここで言うモル比とは、ポリスチレンを標準物質とし、テトラヒドロフランを溶離液としてゲルパーミュエーションクロマトグラフ(GPC法)により測定したPDMSの数平均分子量(Mn)と、テトラアルコキシシランのオリゴマーの純度と平均分子量に基づいて計算したモル比である。
【0035】
さらに、本発明の縮合型オルガノポリシロキサンプレポリマーから得られる硬化体は、耐熱性、対候性に優れているため、200℃以上の耐熱領域や屋外暴露状態でも利用することができる。
【0036】
また、弾性率については、アルコキシ基を有するシランオリゴマー(B)が硬化する際の架橋部位を減らすことで弾性率を下げることができる。例えば、硬化剤として、末端の全てがアルコキシ基ではなく、部分的にメチル基になっている硬化剤を用いることで、架橋部位を減らすことができる。より具体的には、例えば、硬化剤中のアルコキシ基の量を、縮合型オルガノポリシロキサンプレポリマーと硬化剤を含む混合物中の全エチルシリケート量の10重量%以下、好ましくは8重量%以下、より好ましくは1重量%以下に調整することによって、架橋部位を減らすことができる。
【0037】
本発明の縮合型オルガノポリシロキサンプレポリマーにカーボン等の導電材料を複合させることによって、伸縮性の電極や伸縮性の透明絶縁膜、伸縮性の電極塗料を作製することができる。
【実施例0038】
以下実施例を用い、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例におけるPDMS中のトルエン含有量は、ガスクロマトグラフィーで測定した。
【0039】
[実施例1~4]
[縮合型オルガノポリシロキサンプレポリマーの作製]
攪拌装置、温度計、滴下ラインを取り付けた反応容器に、窒素ガスを十分に充満させた。このとき、窒素ガスとして、窒素ガス製造装置(ジャパンユニックス社製UNX-200)によって製造したものを用いた。
【0040】
次に、上記窒素ガスを十分に充満させた上記反応容器内に、両末端にシラノール基を有するPDMS(A)と、テトラアルコキシシランのオリゴマー(B)と、有機金属化合物(C)を表1の分量で投入し、均質になるまで撹拌した。オリゴマー(B)としては、エバポレータによる蒸留品(130℃2時間)を用いた。その後室温まで自然放冷し、縮合型オルガノポリシロキサンプレポリマーを得た。
【0041】
使用した原料は次の通りであった。
両末端にシラノール基を有するPDMS(A):モメンティブ社製YF3057(数平均分子量(Mn)33,735、Mw/Mn=1.58)、NuSil社製PRO-2815(数平均分子量(Mn)56,000、Mw/Mn=1.91)。
テトラアルコキシシランのオリゴマー(B):エチルシリケートとして多摩化学工業社製エチルシリケート40(テトラエトキシシランの直鎖状4~6量体であるオリゴマー、平均分子量=745。アルコキシ基36wt%。130℃で2時間蒸留精製したもの)。
有機金属化合物(C):東京化成工業社製ジブチル錫ジラウレート。
【0042】
[硬化剤の作成]
撹拌脱泡装置に装備できる密閉可能なプラスチック容器に、4~6量体のシリケートオリゴマー(実施例1,3:上記(B)と同じ多摩化学工業社製 エチルシリケート40;蒸留精製品。実施例2,4:信越化学工業株式会社製 X-40-9246、アルコキシ基13wt%)、2-エチルヘキサン酸亜鉛(日本化学産業社製 ニッカオクチックス亜鉛18%)、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業株式会社製 KBE-903)を表1の分量で入れ、充分撹拌したところに、tert-ブチルアルコール(富士フイルム和光純薬社製)を表1の分量で添加し、さらに撹拌させたものを、硬化剤として使用した。
【0043】
シリケートオリゴマーのアルコキシ基の含有率は、以下の方法で測定した。シリケートオリゴマーをアルミ製のカップに1.2~1.5g秤量して測定サンプルとした。定温乾燥機(アズワン製ONW-300)を用いて、測定サンプルを100℃で1時間(条件1)加熱し、シリケートオリゴマー中に含まれる溶剤(エタノールや水)を除去した。条件1の加熱後のサンプル重量(W)を測定した。その後、サンプルをさらに200℃で3時間(条件2)加熱し、シリケートオリゴマー中のアルコキシ基を反応・揮発させた。条件2の加熱後のサンプル重量(W)を測定した。条件2の加熱により、シリケートオリゴマーのアルコキシ基がすべて除去できたとして、アルコキシ基の含有率を下記の式より算出した。
アルコキシ基含有率(wt%)=[(W-W)/W]×100
【0044】
[比較例1~2]
実施例1~4の両末端にシラノール基を有するPDMS(A)に代えて、両末端にシラノール基を有するPDMS(a):JNC社製FM9927A(数平均分子量(Mn)30,900、Mw/Mn=1.08)、モメンティブ社製XF3905(数平均分子量(Mn)20,000、Mw/Mn=1.48)を使用した以外は、実施例1~4と同様にして、縮合型オルガノポリシロキサンプレポリマーと硬化剤を作製した。各原料の分量は表2の通りであった。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
[縮合型オルガノポリシロキサンプレポリマー硬化体(シート)の作成]
上記のプレポリマー(主剤)100重量部に硬化体10重量部を配合し、ゾルを作製した。得られたゾルをTPXフィルムに塗布し、150℃で2時間焼成した。得られた硬化体をTPXフィルムから剥離して、500μmのシートを得た。
【0048】
[弾性率および伸び率の評価]
JIS K6251に準拠して引張試験を行い、シートの弾性率と伸び率の測定を行った。500μmのシートから試験用試料としてJIS K6251に規定されている7号ダンベル試験片を作製した。試験用試料を引張試験機((株)島津製作所製「オートグラフAG-I」)を用いて、初期Lを20mmに設定し、歪み速度100mm/分で引張試験を行い、その時の弾性率と、破断時の伸び率を測定した。
【0049】
[弾性回復率の評価]
上記と同様に7号ダンベル試験片を作製し、弾性回復率を評価した。引張試験機((株)島津製作所製「オートグラフAG-I」)を用いて、初期Lを20mmに設定し、速度100mm/分にて、歪みが0%から100%となるまで伸長し、100%から0%となるまで収縮する伸縮サイクルを10サイクル行った。1回目の応力が発生した時の長さをL、10回目の応力が発生した長さをL10(mm)として、弾性回復率を下記の式から算出した。
弾性回復率(%)=[(L10-L)/A]×100 (式中のAは伸張長さ)
【0050】
【表3】
【0051】
表3に示す結果から、本発明の縮合型オルガノポリシロキサンプレポリマーから得られた硬化体は、柔らかく、よく伸びて、弾性回復率が高いことがわかった。
【0052】
[変更例]
上記実施例においては、これに限定されるものではなく、異なった種類、特性の有機金属化合物を使用してもよい。
【0053】
以上に開示された実施の形態と実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の実施の形態と実施例ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正や変形を含むものである。