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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154046
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】気体圧縮システム
(51)【国際特許分類】
   F04B 49/10 20060101AFI20221005BHJP
   F04B 49/06 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
F04B49/10 331L
F04B49/06 331Z
F04B49/10 331P
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056890
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】任 之家
【テーマコード(参考)】
3H145
【Fターム(参考)】
3H145AA16
3H145AA25
3H145AA42
3H145BA39
3H145CA25
3H145DA32
3H145DA39
3H145EA36
3H145EA38
3H145EA49
(57)【要約】
【課題】設定された累積運転時間の目標差分が実現可能であるかを推定することができる気体圧縮システムを提供する。
【解決手段】気体圧縮システムは、圧縮機1A,1B,1Cと、圧縮機の運転台数を制御する台数制御装置6と、目標差分ΔTを設定するユーザインターフェイス7とを備える。台数制御装置6は、所定の期間にて、圧縮機1A,1B,1Cの累積運転時間が平準化するように、運転すべき圧縮機を選択する制御を行い、その後、圧縮機1Aの累積運転時間が所定の整備時間に達したときに圧縮機1A,1B,1Cの累積運転時間が目標差分ΔTずつずれるように、運転すべき圧縮機を選択する制御を行う。台数制御装置6は、所定の期間が経過したときに目標差分の上限値ΔTmaxを演算し、目標差分ΔTが上限値ΔTmax以下であるか否かを判定し、目標差分ΔTが上限値ΔTmaxを超える場合に、その旨をユーザインターフェイス7で報知する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の圧縮機と、
前記圧縮機の運転台数を制御すると共に、前記複数の圧縮機のそれぞれの運転時間を取得する台数制御装置と、
前記複数の圧縮機のそれぞれの累積運転時間を離散化する場合の目標差分を設定するユーザインターフェイスとを備え、
前記台数制御装置は、
予め設定された所定の期間にて、前記複数の圧縮機のそれぞれの累積運転時間が平準化するように、運転すべき圧縮機を選択する制御を行い、
その後、前記複数の圧縮機のうちの1つの圧縮機の累積運転時間が所定の整備時間に達したときに前記複数の圧縮機のそれぞれの累積運転時間が前記目標差分ずつずれるように、運転すべき圧縮機を選択する制御を行う、気体圧縮システムであって、
前記台数制御装置は、
前記所定の期間が経過したときに、前記所定の期間における前記複数の圧縮機のそれぞれの運転時間及び前記台数制御装置の運転時間に基づいて、前記目標差分の上限値を演算し、
前記ユーザインターフェイスで設定された前記目標差分が前記上限値以下であるか否かを判定し、
前記ユーザインターフェイスで設定された前記目標差分が前記上限値を超える場合に、その旨を前記ユーザインターフェイスで報知することを特徴とする気体圧縮システム。
【請求項2】
請求項1に記載の気体圧縮システムにおいて、
前記台数制御装置は、
前記ユーザインターフェイスで設定された前記目標差分が前記上限値を超える場合に、前記目標差分を前記上限値に補正してよいか否かを確認するための画面を前記ユーザインターフェイスに表示させ、
前記目標差分を前記上限値に補正してよい旨が前記ユーザインターフェイスを介し入力された場合に、前記目標差分を前記上限値に補正することを特徴とする気体圧縮システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の気体圧縮システムにおいて、
前記台数制御装置は、
前記ユーザインターフェイスで設定された前記目標差分が前記上限値を超える場合に、前記複数の圧縮機のそれぞれの累積運転時間を平準化する制御を継続してよいか否かを確認するための画面を前記ユーザインターフェイスに表示させ、
前記複数の圧縮機のそれぞれの累積運転時間を平準化する制御を継続してよい旨が前記ユーザインターフェイスを介し入力された場合に、前記複数の圧縮機のそれぞれの累積運転時間を平準化する制御を継続することを特徴とする気体圧縮システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機の運転台数を制御する台数制御装置を備えた気体圧縮システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、複数の圧縮機と、複数の圧縮機から吐出された圧縮気体((詳細には、圧縮空気)を貯留する貯留タンクと、貯留タンク内の圧力を検出する圧力センサと、圧力センサで検出された圧力に基づいて圧縮機の運転台数を制御する台数制御装置とを備えた気体圧縮システムを開示する。
【0003】
特許文献1の台数制御装置は、複数の圧縮機のそれぞれの累積運転時間が平準化するように、運転すべき圧縮機を選択する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-152698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術では、複数の圧縮機のそれぞれの累積運転時間を平準化する。そのため、複数の圧縮機のそれぞれの累積運転時間が同時に所定の整備時間に達し、複数の圧縮機の整備を同時に行う。
【0006】
その一方で、整備タイミングや整備費用の集中を避けたい等の理由から、複数の圧縮機のそれぞれの累積運転時間を離散化させたいというニーズもある。そこで、台数制御装置は、複数の圧縮機のうちの1つの圧縮機の累積運転時間が所定の整備時間に達したときに複数の圧縮機のそれぞれの累積運転時間が目標差分ずつずれるように、運転すべき圧縮機を選択する制御を行うことが考えられる。前述した目標差分は、ユーザインターフェイスで設定されることが考えられる。しかし、システムの運転状況によっては、ユーザインターフェイスで設定された目標差分を実現できない可能性がある。そのため、整備計画に支障をきたす可能性がある。
【0007】
本発明は、上記事柄に鑑みてなされたものであり、設定された累積運転時間の目標差分が実現可能であるかを推定することを課題の一つとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、特許請求の範囲に記載の構成を適用する。本発明は、上記課題を解決するための手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、複数の圧縮機と、前記圧縮機の運転台数を制御すると共に、前記複数の圧縮機のそれぞれの運転時間を取得する台数制御装置と、前記複数の圧縮機のそれぞれの累積運転時間を離散化する場合の目標差分を設定するユーザインターフェイスとを備え、前記台数制御装置は、予め設定された所定の期間にて、前記複数の圧縮機のそれぞれの累積運転時間が平準化するように、運転すべき圧縮機を選択する制御を行い、その後、前記複数の圧縮機のうちの1つの圧縮機の累積運転時間が所定の整備時間に達したときに前記複数の圧縮機のそれぞれの累積運転時間が前記目標差分ずつずれるように、運転すべき圧縮機を選択する制御を行う、気体圧縮システムであって、前記台数制御装置は、前記所定の期間が経過したときに、前記所定の期間における前記複数の圧縮機のそれぞれの運転時間及び前記台数制御装置の運転時間に基づいて、前記目標差分の上限値を演算し、前記ユーザインターフェイスで設定された前記目標差分が前記上限値以下であるか否かを判定し、前記ユーザインターフェイスで設定された前記目標差分が前記上限値を超える場合に、その旨を前記ユーザインターフェイスで報知する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、設定された累積運転時間の目標差分が実現可能であるかを推定することができる。
【0010】
なお、上記以外の課題、構成及び効果は、以下の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態における気体圧縮システムの構成を表す概略図である。
図2】本発明の一実施形態における台数制御装置の台数制御を表すフローチャートである。
図3】本発明の一実施形態における台数制御装置の目標差分判定制御を表すフローチャートである。
図4】本発明の一実施形態における各圧縮機の累積運転時間の変化の具体例を表す図である。
図5】本発明の一変形例における各圧縮機の累積運転時間の変化の具体例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0013】
図1は、本実施形態における気体圧縮システムの構成を表す概略図である。
【0014】
本実施形態の気体圧縮システムは、3台の圧縮機1A,1B,1Cと、圧縮機1A,1B,1Cから吐出された圧縮気体(詳細には、例えば圧縮空気)を貯留する貯留タンク2とを備え、取出弁3及び供給配管4を介し貯留タンク2から生産ライン(図示せず)へ圧縮気体を供給するようになっている。
【0015】
また、本実施形態の気体圧縮システムは、貯留タンク2内の圧力を検出する圧力センサ5と、圧力センサ5で検出された圧力に基づき、圧縮機の運転台数を制御する台数制御装置6と、台数制御装置6に接続されたユーザインターフェイス7と、圧縮機1A,1B,1C及び台数制御装置6を互いに通信可能に接続する有線式又は無線式の通信ネットワーク8とを備える。
【0016】
台数制御装置6は、詳細を図示しないものの、例えば、プログラムや設定を記憶するメモリと、プログラムや設定に基づいて処理を実行するプロセッサと、プロセッサと通信ネットワーク8の間に介在する通信インターフェイスとを有する。ユーザインターフェイス7は、例えば、台数制御装置6と有線又は無線にて通信可能なスマートフォン等の外部端末であるか、若しくは台数制御装置6と一体になったタッチパネル等である。ユーザインターフェイス7は、通信ネットワーク8を介し取得された圧縮機1A,1B,1Cの情報を表示すると共に、ユーザが設定を入力可能としている。
【0017】
圧縮機1Aは、気体(詳細には、例えば空気)を圧縮する圧縮機本体9Aと、圧縮機本体9Aを駆動するモータ10Aと、例えば台数制御装置6からの指令に応じてモータ10Aを制御し、ひいては圧縮機本体9Aを制御する制御部11Aと、圧縮機本体9Aの吐出側に設けられ、配管12を介し貯留タンク2に接続されたタンク13Aと、タンク13A内の圧力を検出する圧力センサ14Aと、図示しないユーザインターフェイス(詳細には、例えばディスプレイ及び押しボタン)とを備える。なお、圧力センサ14Aで検出された圧力は、圧力センサ5で検出された圧力とほぼ同じである。
【0018】
制御部11Aは、詳細を図示しないものの、例えば、プログラムや設定を記憶するメモリと、プログラムや設定に基づいて処理を実行するプロセッサと、プロセッサと通信ネットワーク8の間に介在する通信インターフェイスとを有する。ユーザインターフェイスは、圧縮機1Aの情報を表示すると共に、ユーザが設定を入力可能としている。
【0019】
圧縮機1B,1Cは、圧縮機1Aと同様の構成である。すなわち、圧縮機1Bは、圧縮機本体9B、モータ10B、制御部11B、タンク13B、圧力センサ14B、及びユーザインターフェイスを備える。圧縮機1Cは、圧縮機本体9C、モータ10C、制御部11C、タンク13C、圧力センサ14C、及びユーザインターフェイスを備える。
【0020】
台数制御装置6の台数制御の詳細について、図2を用いて説明する。図2は、本実施形態における台数制御装置の台数制御を表すフローチャートである。
【0021】
台数制御装置6は、圧力センサ5で検出された圧力が所定の範囲内となるように、圧縮機の運転台数を制御する。詳しく説明すると、台数制御装置6は、圧力センサ5で検出された圧力が予め設定された上限値Puまで上昇したどうかを判定する(ステップS1)。そして、圧力センサ5で検出された圧力が上限値Puまで上昇した場合に、駆動中の圧縮機のうちのいずれかを停止する指令を出力する。圧縮機の制御部は、前述の停止指令に応じて圧縮機本体を停止させる。これにより、圧縮機の運転台数が減少する(ステップS2)。
【0022】
台数制御装置6は、圧力センサ5で検出された圧力が予め設定された下限値Pd(但し、Pd<Pu)まで下降したどうかを判定する(ステップS3)。そして、圧力センサ5で検出された圧力が下限値Pdまで下降した場合に、停止中の圧縮機のうちのいずれかを駆動する指令を出力する。圧縮機の制御部は、前述の駆動指令に応じて圧縮機本体を駆動させる。これにより、圧縮機の運転台数が増加する(ステップS4)。
【0023】
台数制御装置6は、上述した台数制御を行うと共に、タイマを用いて、圧縮機1Aの運転時間(詳細には、圧縮機本体9Aの運転時間)、圧縮機1Bの運転時間(詳細には、圧縮機本体9Bの運転時間)、圧縮機1Cの運転時間(詳細には、圧縮機本体9Cの運転時間)、及び台数制御装置6の運転時間(詳細には、少なくとも1つの圧縮機本体が運転状態である時間であって、言い換えれば、システムの運転時間)を取得する。
【0024】
台数制御装置6は、予め設定された所定の期間(例えば1年)にて、圧縮機Aの累積運転時間、圧縮機1Bの累積運転時間、及び圧縮機1Cの累積運転時間が平準化するように、圧縮機を選択する制御を行う。そして、所定の期間の経過後、圧縮機A1の累積運転時間、圧縮機1Bの累積運転時間、及び圧縮機1Cの累積運転時間が離散化するように、圧縮機を選択する制御へ移行する。詳細には、例えば圧縮機1A,1B,1Cの順序で優先順位が設定されていれば、圧縮機1Aの累積運転時間が所定の整備時間Tmcに達したときに、圧縮機1Aの累積運転時間と圧縮機1Bの累積運転時間との差分が目標差分ΔTとなり、圧縮機1Bの累積運転時間と圧縮機1Cの累積運転時間との差分が目標差分ΔTとなるように、圧縮機を選択する制御へ移行する。上述した目標差分ΔTや優先順位は、所定の期間の経過前又は経過直後に、ユーザインターフェイス7で設定される。
【0025】
ここで、本実施形態の最も大きな特徴として、台数制御装置6は、所定の期間が経過したときに、所定の期間における圧縮機1Aの運転時間T1、圧縮機1Bの運転時間T2、圧縮機1Cの運転時間T3、及び台数制御装置6の運転時間Tbに基づいて、目標差分の上限値ΔTmaxを演算する(下記の式(1)及び式(2)参照)。
ΔTmax={(Tmc×n-(T1+T2+…+Tn))×(1-L)}/(1+2+…+(n-1)) ・・・(1)
L=(T1+T2+…+Tn)/(n×Tb) ・・・(2)
【0026】
上記の式(1)は、n台(本実施形態では、n=3)の圧縮機のうちの1台の圧縮機を連続運転して、その累積運転時間が所定の整備時間Tmcに到達する場合を想定することにより、導き出される。式(1)中のLは、システムの負荷率であって、式(2)で表される。
【0027】
台数制御装置6は、ユーザインターフェイス7で設定された目標差分ΔTが上限値ΔTmax以下であるか否かにより、設定された目標差分ΔTが実現可能であるか否かを判定する。そして、目標差分ΔTが上限値ΔTmaxを超える場合に、その旨をユーザインターフェイス7で報知するようになっている。この目標差分判定制御の詳細について、図3を用いて説明する。
【0028】
図3は、本実施形態における台数制御装置の目標差分判定制御を表すフローチャートである。
【0029】
台数制御装置6は、所定の期間(例えば1年)が経過するまで、圧縮機Aの累積運転時間、圧縮機1Bの累積運転時間、及び圧縮機1Cの累積運転時間が平準化するように、圧縮機を選択する制御を行う(ステップS11)。
【0030】
台数制御装置6は、所定の期間が経過したときに、所定の期間における圧縮機1Aの運転時間T1、圧縮機1Bの運転時間T2、圧縮機1Cの運転時間T3、及び台数制御装置6の運転時間Tbに基づいて、目標差分の上限値ΔTmaxを演算する(ステップS13)。そして、ユーザインターフェイス7で設定された目標差分ΔTが上限値ΔTmax以下であるか否かにより、設定された目標差分ΔTが実現可能であるか否かを判定する(ステップS14)。
【0031】
ユーザインターフェイス7で設定された目標差分ΔTが上限値ΔTmax以下である場合に(すなわち、設定された目標差分ΔTが実現可能である場合に)、台数制御装置6は、圧縮機A1の累積運転時間、圧縮機1Bの累積運転時間、及び圧縮機1Cの累積運転時間が離散化するように、圧縮機を選択する制御へ移行する(ステップS15)。
【0032】
ユーザインターフェイス7で設定された目標差分ΔTが上限値ΔTmaxを超える場合に、台数制御装置6は、確認画面(図示せず)をユーザインターフェイス7に表示させる(ステップS16)。この確認画面は、目標差分ΔTを上限値ΔTmaxに補正してよいか否かをユーザに確認すると共に、補正しないのであれば、圧縮機1A,1B,1Cのそれぞれの累積運転時間を平準化する制御を継続してよいか否かをユーザに確認するための画面である。
【0033】
台数制御装置6は、目標差分ΔTを上限値ΔTmaxに補正してよい旨がユーザインターフェイス7を介し入力された場合に、目標差分ΔTを上限値ΔTmaxに補正する(ステップS18)。その後、圧縮機A1の累積運転時間、圧縮機1Bの累積運転時間、及び圧縮機1Cの累積運転時間が離散化するように、圧縮機を選択する制御へ移行する(ステップS15)。
【0034】
台数制御装置6は、圧縮機1A,1B,1Cのそれぞれの累積運転時間を平準化する制御を継続してよい旨がユーザインターフェイス7を介し入力された場合に、圧縮機1A,1B,1Cのそれぞれの累積運転時間を平準化する制御を継続する(ステップS19)。
【0035】
次に、本実施形態の動作の具体例を、図4を用いて説明する。
【0036】
図4は、本実施形態における各圧縮機の累積運転時間の変化の具体例を表す図である。図4の括弧内の数値は、各圧縮機の仮想累積運転時間を示す。なお、この具体例では、所定の期間は1年間であり、1年間あたりのシステムの運転時間は3000時間、システムの負荷率Lは0.67である。所定の整備時間Tmcは10000時間であり、ユーザインターフェイス7で設定された目標差分ΔTは2000時間である。
【0037】
台数制御装置6は、1年間にて、圧縮機1A,1B,1Cのそれぞれの累積運転時間が平準化するように、運転すべき圧縮機を選択する制御を行う。これにより、1年の経過後に、圧縮機1A,1B,1Cのそれぞれの累積運転時間が2000時間となる。
【0038】
台数制御装置6は、1年が経過したときに、上記の式(1)及び式(2)を用いて、目標差分の上限値ΔTmax=2667時間を演算する。そして、ユーザインターフェイス7で設定された目標差分ΔT=2000時間が上限値ΔTmax以下であるから、この目標差分ΔTを用いて、圧縮機1A,1B,1Cのそれぞれの累積運転時間が離散化するように、運転すべき圧縮機を選択する制御に移行する。
【0039】
詳しく説明すると、圧縮機1A,1B,1Cの順序の優先順位であれば、台数制御装置6は、圧縮機1Aの累積運転時間をそのままとして圧縮機1Aの仮想累積運転時間とし、圧縮機1Bの累積運転時間に目標差分ΔTを加算して圧縮機1Bの仮想累積運転時間とし、圧縮機1Cの累積運転時間に目標差分ΔT×2を加算して圧縮機1Cの仮想累積運転時間とする。これにより、圧縮機1Aの仮想累積運転時間が2000時間となり、圧縮機1Bの仮想累積運転時間が4000時間となり、圧縮機1Cの仮想累積運転時間が6000時間となる。
【0040】
台数制御装置6は、圧縮機1A,1B,1Cのそれぞれの仮想累積運転時間が平準化するように、言い換えれば、仮想累積運転時間が少ないほど優先するように、圧縮機を選択する制御を行う。これにより、1年あたりのシステムの運転時間や負荷率が変化しなければ、下記のように、各圧縮機の仮想累積運転時間が推移する。
【0041】
1年6ヵ月の経過後に、圧縮機1Aの仮想累積運転時間が3500時間となり、圧縮機1Bの仮想累積運転時間が5500時間となり、圧縮機1Cの仮想累積運転時間が6000時間となる。実際には、圧縮機1Aの累積運転時間が3500時間となり、圧縮機1Bの累積運転時間が3500時間となり、圧縮機1Cの累積運転時間が2000時間となる。
【0042】
2年の経過後に、圧縮機1Aの仮想累積運転時間が5000時間となり、圧縮機1Bの仮想累積運転時間が6500時間となり、圧縮機1Cの仮想累積運転時間が6500時間となる。実際には、圧縮機1Aの累積運転時間が5000時間となり、圧縮機1Bの累積運転時間が4500時間となり、圧縮機1Cの累積運転時間が2500時間となる。
【0043】
3年の経過後に、圧縮機1Aの仮想累積運転時間が8000時間となり、圧縮機1Bの仮想累積運転時間が8000時間となり、圧縮機1Cの仮想累積運転時間が8000時間となる。実際には、圧縮機1Aの累積運転時間が8000時間となり、圧縮機1Cの累積運転時間が6000時間となり、圧縮機1Cの累積運転時間が4000時間となる。
【0044】
4年の経過後に、圧縮機1Aの仮想累積運転時間が10000時間となり、圧縮機1Bの仮想累積運転時間が10000時間となり、圧縮機1Cの仮想累積運転時間が10000時間となる。実際には、圧縮機1Aの累積運転時間が10000時間となり、圧縮機1Bの累積運転時間が8000時間となり、圧縮機1Cの累積運転時間が6000時間となる。したがって、圧縮機1Aの累積運転時間のみが所定の整備時間に達し、圧縮機1Aのみの整備を行う。
【0045】
5年の経過後に、圧縮機1Bの累積運転時間のみが所定の整備時間に達し、圧縮機1Bのみの整備を行う。6年の経過後に、圧縮機1Cの累積運転時間のみが所定の整備時間に達し、圧縮機1Cのみの整備を行う。
【0046】
以上のように本実施形態においては、圧縮機1A,1B,1Cのそれぞれの累積運転時間を離散化させて、整備タイミングや整備費用の集中を避けることができる。また、所定の期間が経過したときに、所定の期間におけるシステムの運転実績に基づき、設定された累積運転時間の目標差分が実現可能であるかを推定することができる。したがって、ユーザの整備計画を支援することができる。
【0047】
なお、上記実施形態において、台数制御装置6は、各圧縮機の累積運転時間に目標差分を一度に加算して仮想累積運転時間を算出する場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、各圧縮機の累積運転時間に目標差分を例えば2回に分割して加算して仮想累積運転時間を算出してもよい。このような変形例を、図5を用いて説明する。
【0048】
図5は、本変形例における各圧縮機の累積運転時間の変化の具体例を表す図である。図5の括弧内の数値は、各圧縮機の仮想累積運転時間を示す。なお、この具体例では、所定の期間は1年間であり、1年間あたりのシステムの運転時間は3000時間、システムの負荷率Lは0.67である。所定の整備時間Tmcは10000時間であり、ユーザインターフェイス7で設定された目標差分ΔTは2000時間である。
【0049】
台数制御装置6は、1年が経過したときに、圧縮機1Aの累積運転時間をそのままとして圧縮機1Aの仮想累積運転時間とし、圧縮機1Bの累積運転時間に目標差分ΔT/2を加算して圧縮機1Bの仮想累積運転時間とし、圧縮機1Cの累積運転時間に目標差分ΔTを加算して圧縮機1Cの仮想累積運転時間とする。これにより、圧縮機1Aの仮想累積運転時間が2000時間となり、圧縮機1Bの仮想累積運転時間が3000時間となり、圧縮機1Cの仮想累積運転時間が4000時間となる。
【0050】
台数制御装置6は、圧縮機1A,1B,1Cのそれぞれの仮想累積運転時間が平準化するように、言い換えれば、仮想累積運転時間が少ないほど優先するように、圧縮機を選択する制御を行う。これにより、1年あたりのシステムの運転時間や負荷率が変化しなければ、下記のように、各圧縮機の仮想累積運転時間が推移する。
【0051】
1年4ヵ月の経過後に、圧縮機1Aの仮想累積運転時間が3000時間となり、圧縮機1Bの仮想累積運転時間が4000時間となり、圧縮機1Cの仮想累積運転時間が4000時間となる。実際には、圧縮機1Aの累積運転時間が3000時間となり、圧縮機1Bの累積運転時間が3000時間となり、圧縮機1Cの累積運転時間が2000時間となる。
【0052】
2年の経過後に、圧縮機1Aの仮想累積運転時間が5000時間となり、圧縮機1Bの仮想累積運転時間が5000時間となり、圧縮機1Cの仮想累積運転時間が5000時間となる。実際には、圧縮機1Aの累積運転時間が5000時間となり、圧縮機1Bの累積運転時間が4000時間となり、圧縮機1Cの累積運転時間が3000時間となる。
【0053】
台数制御装置6は、2年が経過したときに、圧縮機1Aの仮想累積運転時間をそのままとし、圧縮機1Bの仮想累積運転時間に目標差分ΔT/2を更に加算し、圧縮機1Cの仮想累積運転時間に目標差分ΔTを更に加算する。これにより、圧縮機1Aの仮想累積運転時間が5000時間となり、圧縮機1Bの仮想累積運転時間が6000時間となり、圧縮機1Cの仮想累積運転時間が7000時間となる。
【0054】
そして、2年4ヵ月の経過後に、圧縮機1Aの仮想累積運転時間が6000時間となり、圧縮機1Bの仮想累積運転時間が7000時間となり、圧縮機1Cの仮想累積運転時間が7000時間となる。実際には、圧縮機1Aの累積運転時間が6000時間となり、圧縮機1Bの累積運転時間が5000時間となり、圧縮機1Cの累積運転時間が3000時間となる。
【0055】
3年の経過後に、圧縮機1Aの仮想累積運転時間が8000時間となり、圧縮機1Bの仮想累積運転時間が8000時間となり、圧縮機1Cの仮想累積運転時間が8000時間となる。実際には、圧縮機1Aの累積運転時間が8000時間となり、圧縮機1Bの累積運転時間が6000時間となり、圧縮機1Cの累積運転時間が4000時間となる。
【0056】
4年の経過後に、圧縮機1Aの仮想累積運転時間が10000時間となり、圧縮機1Bの仮想累積運転時間が10000時間となり、圧縮機1Cの仮想累積運転時間が10000時間となる。実際には、圧縮機1Aの累積運転時間が10000時間となり、圧縮機1Bの累積運転時間が8000時間となり、圧縮機1Cの累積運転時間が6000時間となる。したがって、圧縮機1Aの累積運転時間のみが所定の整備時間に達し、圧縮機1Aのみの整備を行う。
【0057】
5年の経過後に、圧縮機1Bの累積運転時間のみが所定の整備時間に達し、圧縮機1Bのみの整備を行う。6年の経過後に、圧縮機1Cの累積運転時間のみが所定の整備時間に達し、圧縮機1Cのみの整備を行う。
【0058】
本変形例においても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。また、本変形例では、圧縮機の累積運転時間の平準化から離散化に移行したときの初期において、上記実施形態と比べ、圧縮機1Bと圧縮機1Cの累積運転時間の偏差、すなわち、運転負荷の偏差を低減することができる。
【0059】
なお、上記変形例では、各圧縮機の累積運転時間に目標差分を2回に分割して加算して仮想累積運転時間を算出した場合を例にとって説明したが、これに限られず、目標差分を3回以上に分割して加算してもよい。また、加算回数は、設定された時間間隔に基づくか、若しくは、設定された目標差分の分割値に基づいて設定されてもよい。
【0060】
以上において、気体圧縮システムは、3台の圧縮機を備えた場合を例にとって説明したが、これに限られず、2台、又は4台以上の圧縮機を備えてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1A,1B,1C…圧縮機、6…台数制御装置、7…ユーザインターフェイス
図1
図2
図3
図4
図5