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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154048
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】発光装置およびプロジェクター
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/11 20210101AFI20221005BHJP
   H01S 5/343 20060101ALI20221005BHJP
   H01L 33/24 20100101ALI20221005BHJP
   H01L 33/32 20100101ALI20221005BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20221005BHJP
   G03B 21/14 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
H01S5/11
H01S5/343 610
H01L33/24
H01L33/32
G03B21/00 D
G03B21/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056896
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】502350504
【氏名又は名称】学校法人上智学院
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100148323
【弁理士】
【氏名又は名称】川▲崎▼ 通
(74)【代理人】
【識別番号】100168860
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 充史
(72)【発明者】
【氏名】島田 浩行
(72)【発明者】
【氏名】岸野 克巳
【テーマコード(参考)】
2K203
5F173
5F241
【Fターム(参考)】
2K203FA23
2K203FA24
2K203FA25
2K203FA34
2K203FA44
2K203FA54
2K203FA62
2K203GA02
2K203GA06
2K203MA04
5F173AB74
5F173AB90
5F173AH04
5F173AP05
5F173AP09
5F173AP13
5F173AR26
5F241AA14
5F241CA05
5F241CA10
5F241CA12
5F241CA40
5F241CA65
5F241CA66
5F241CB15
5F241CB23
5F241CB25
5F241FF16
(57)【要約】
【課題】電極で吸収される光を低減することができる発光装置を提供する。
【解決手段】基板と、前記基板に設けられ、複数の柱状部を有する積層体と、前記積層体の前記基板とは反対側に設けられ、前記積層体に電流を注入する電極と、を有し、前記柱状部は、第1導電型の第1半導体層と、前記第1導電型と異なる第2導電型の第2半導体層と、前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられた発光層と、を有し、前記第1半導体層は、前記基板と前記発光層との間に設けられ、前記積層体は、隣り合う前記柱状部の前記第2半導体層の間に設けられたAlN層を有し、前記AlN層の屈折率は、前記第2半導体層の屈折率よりも低い、発光装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に設けられ、複数の柱状部を有する積層体と、
前記積層体の前記基板とは反対側に設けられ、前記積層体に電流を注入する電極と、
を有し、
前記柱状部は、
第1導電型の第1半導体層と、
前記第1導電型と異なる第2導電型の第2半導体層と、
前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられた発光層と、
を有し、
前記第1半導体層は、前記基板と前記発光層との間に設けられ、
前記積層体は、隣り合う前記柱状部の前記第2半導体層の間に設けられたAlN層を有し、
前記AlN層の屈折率は、前記第2半導体層の屈折率よりも低い、発光装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記AlN層は、前記基板側の第1端を有し、
前記発光層は、前記基板とは反対側の第2端を有し、
前記第1端と前記基板との間の距離は、前記第2端と前記基板との間の距離以上である、発光装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記積層体は、前記第2半導体層と前記電極との間に設けられた前記第2導電型の第3半導体層を有し、
前記第3半導体層の不純物濃度は、前記第2半導体層の不純物濃度よりも高い、発光装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記第3半導体層は、前記AlN層と前記電極との間に設けられている、発光装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の発光装置を有する、プロジェクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置およびプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザーは、高輝度の次世代光源として期待されている。特に、ナノコラムを適用した半導体レーザーは、ナノコラムによるフォトニック結晶の効果によって、狭放射角で高出力の発光が実現できると期待されている。
【0003】
例えば特許文献1には、シリコン基板上に、n型GaNナノコラム層、発光層を形成し、ナノコラム径を広げながらp型GaNコンタクト層をエピタキシャル成長させた上に、半透明のp型電極を形成させてなる半導体発光素子が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-49062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、p型GaN層が複数のナノコラムにわたって連続した1つの層となっているため、当該層における面内方向の平均屈折率が高くなる。そのため、発光層に光を閉じ込めることが難しくなり、発光層で発生した光が電極側に漏れる。電極側に光が漏れると、光が電極において吸収され損失となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る発光装置の一態様は、
基板と、
前記基板に設けられ、複数の柱状部を有する積層体と、
前記積層体の前記基板とは反対側に設けられ、前記積層体に電流を注入する電極と、
を有し、
前記柱状部は、
第1導電型の第1半導体層と、
前記第1導電型と異なる第2導電型の第2半導体層と、
前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられた発光層と、
を有し、
前記第1半導体層は、前記基板と前記発光層との間に設けられ、
前記積層体は、隣り合う前記柱状部の前記第2半導体層の間に設けられたAlN層を有し、
前記AlN層の屈折率は、前記第2半導体層の屈折率よりも低い。
【0007】
本発明に係るプロジェクターの一態様は、
前記発光装置の一態様を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る発光装置を模式的に示す断面図。
図2】参考例に係る発光装置を模式的に示す断面図。
図3】本実施形態に係る発光装置の製造工程を模式的に示す断面図。
図4】本実施形態に係る発光装置の製造工程を模式的に示す断面図。
図5】本実施形態に係る発光装置の製造工程を模式的に示す断面図。
図6】本実施形態に係るプロジェクターを模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0010】
1. 発光装置
まず、本実施形態に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る発光装置100を模式的に示す断面図である。
【0011】
発光装置100は、図1に示すように、例えば、基板10と、積層体20と、第1電極70と、第2電極72と、を有している。発光装置100は、半導体レーザーである。
【0012】
基板10は、例えば、Si基板、GaN基板、サファイア基板、SiC基板などである。
【0013】
積層体20は、基板10に設けられている。図示の例では、積層体20は、基板10上に設けられている。積層体20は、例えば、バッファー層22と、柱状部30と、絶縁層40と、AlN層50と、第3半導体層60と、を有している。
【0014】
本明細書では、積層体20の積層方向(以下、単に「積層方向」ともいう)において、発光層34を基準とした場合、発光層34から第2半導体層36に向かう方向を「上」とし、発光層34から第1半導体層32に向かう方向を「下」として説明する。また、積層方向と直交する方向を「面内方向」ともいう。また、「積層体20の積層方向」とは、柱状部30の第1半導体層32と発光層34との積層方向のことである。
【0015】
バッファー層22は、基板10上に設けられている。バッファー層22は、例えば、Siがドープされたn型のGaN層である。
【0016】
柱状部30は、バッファー層22上に設けられている。柱状部30は、バッファー層22から上方に突出した柱状の形状を有している。言い換えれば、柱状部30は、バッファー層22を介して基板10から上方に突出している。柱状部30は、例えば、ナノコラム、ナノワイヤー、ナノロッド、ナノピラーとも呼ばれる。柱状部30の平面形状は、例えば、六角形などの多角形、円である。
【0017】
柱状部30の径は、例えば、50nm以上500nm以下である。柱状部30の径を500nm以下とすることによって、高品質な結晶の発光層34を得ることができ、かつ、発光層34に内在する歪を低減することができる。これにより、発光層34で発生する光を高い効率で増幅することができる。
【0018】
なお、「柱状部の径」とは、柱状部30の平面形状が円の場合は、直径であり、柱状部30の平面形状が円ではない形状の場合は、最小包含円の直径である。例えば、柱状部30の径は、柱状部30の平面形状が多角形の場合、該多角形を内部に含む最小の円の直径であり、柱状部30の平面形状が楕円の場合、該楕円を内部に含む最小の円の直径である。
【0019】
柱状部30は、複数設けられている。隣り合う柱状部30の間隔は、例えば、1nm以
上500nm以下である。複数の柱状部30は、積層方向からみて、所定の方向に所定のピッチで配列されている。複数の柱状部30は、例えば、三角格子状、正方格子状に配置されている。複数の柱状部30は、フォトニック結晶の効果を発現することができる。
【0020】
なお、「柱状部のピッチ」とは、所定の方向に沿って隣り合う柱状部30の中心間の距離である。「柱状部の中心」とは、柱状部30の平面形状が円の場合は、該円の中心であり、柱状部30の平面形状が円ではない形状の場合は、最小包含円の中心である。例えば、柱状部30の中心は、柱状部30の平面形状が多角形の場合、該多角形を内部に含む最小の円の中心であり、柱状部30の平面形状が楕円の場合、該楕円を内部に含む最小の円の中心である。
【0021】
柱状部30は、第1半導体層32と、発光層34と、第2半導体層36と、を有している。
【0022】
第1半導体層32は、バッファー層22上に設けられている。第1半導体層32は、基板10と発光層34との間に設けられている。第1半導体層32は、第1導電型の半導体層である。第1半導体層32は、例えば、Siがドープされたn型のGaN層である。
【0023】
発光層34は、第1半導体層32と第2半導体層36との間に設けられている。発光層34は、電流が注入されることで光を発生させる。発光層34は、例えば、ウェル層と、バリア層と、を有している。ウェル層およびバリア層は、不純物が意図的にドープされていないi型の半導体層である。ウェル層は、例えば、InGaN層である。バリア層は、例えば、GaN層である。発光層34は、ウェル層とバリア層とから構成されたMQW(Multiple Quantum Well)構造を有している。
【0024】
なお、発光層34を構成するウェル層およびバリア層の数は、特に限定されない。例えば、ウェル層は、1層だけ設けられていてもよく、この場合、発光層34は、SQW(Single Quantum Well)構造を有している。
【0025】
第2半導体層36は、発光層34上に設けられている。第2半導体層36は、第1導電型と異なる第2導電型の半導体層である。第2半導体層36は、例えば、Mgがドープされたp型のGaN層である。第1半導体層32および第2半導体層36は、発光層34に光を閉じ込める機能を有するクラッド層である。
【0026】
なお、図示はしないが、第1半導体層32と発光層34との間、および発光層34と第2半導体層36との間の少なくとも一方に、i型のInGaN層およびGaN層からなるOCL(Optical Confinement Layer)が設けられていてもよい。また、第2半導体層36は、p型のAlGaN層からなるEBL(Electron Blocking Layer)を有してもよい。
【0027】
発光装置100では、p型の第2半導体層36、不純物が意図的にドープされていないi型の発光層34、およびn型の第1半導体層32により、pinダイオードが構成される。発光装置100では、第1電極70と第2電極72との間に、pinダイオードの順バイアス電圧を印加すると、発光層34に電流が注入されて発光層34において電子と正孔との再結合が起こる。この再結合により発光が生じる。発光層34で発生した光は、面内方向に伝搬し、複数の柱状部30によるフォトニック結晶の効果により定在波を形成して、発光層34で利得を受けてレーザー発振する。そして、発光装置100は、+1次回折光および-1次回折光をレーザー光として、積層方向に出射する。
【0028】
なお、図示はしないが、基板10とバッファー層22との間、または基板10の下に反
射層が設けられていてもよい。該反射層は、例えば、DBR(Distributed Bragg Reflector)層である。該反射層によって、発光層34において発生した光を反射させることができ、発光装置100は、第2電極72側からのみ光を出射することができる。
【0029】
絶縁層40は、隣り合う柱状部30の発光層34の間に設けられている。図示の例では、絶縁層40は、発光層34の側面を覆っている。絶縁層40は、積層方向からみて、発光層34を囲んでいる。図示の例では、絶縁層40は、下面に凹部42が設けられた形状を有している。絶縁層40の一部は、例えば、隣り合う柱状部30の第1半導体層32の間に設けられている。絶縁層40の屈折率は、発光層34の屈折率よりも低い。絶縁層40の屈折率は、例えば、AlN層50の屈折率よりも低い。絶縁層40は、例えば、Al層である。
【0030】
AlN層50は、絶縁層40上に設けられている。AlN層50は、隣り合う柱状部30の第2半導体層36の間に設けられている。絶縁層40は、積層方向からみて、第2半導体層36を囲んでいる。AlN層50の屈折率は、第2半導体層36の屈折率よりも低い。AlN層50は、絶縁性である。AlN層50は、窒化アルミニウムからなる層である。
【0031】
AlN層50は、基板10側の第1端52を有している。図示の例では、第1端52は、AlN層50の下面で構成されている。発光層34は、基板10とは反対側の第2端35を有している。第2端35は、第2電極72側の端である。図示の例では、第2端35は、発光層34の上面で構成されている。第1端52と基板10との間の距離D1は、第2端35と基板10との間の距離D2以上である。図示の例では、距離D1は、距離D2と等しい。図示はしないが、距離D1は、距離D2よりも大きくてもよい。絶縁層40の積層方向における位置によって、第1端52の位置を調整することができる。AlN層50は、発光層34と離間している。AlN層50は、隣り合う柱状部30の発光層34の間には設けられていない。
【0032】
AlN層50の上面と、第2半導体層36の上面とは、例えば、面一である。そのため、第3半導体層60の平坦性を高くすることができ、第2電極72の平坦性を高くすることができる。これにより、複数の柱状部30に対して、均一性よく電流を注入することができる。
【0033】
第3半導体層60は、第2半導体層36と第2電極72との間に設けられている。第3半導体層60は、さらに、AlN層50と第2電極72との間に設けられている。第3半導体層60は、AlN層50および複数の柱状部30にわたって設けられている。第3半導体層60は、第2導電型の半導体層である。第2半導体層36は、例えば、Mgがドープされたp型のGaN層である。第3半導体層60の不純物濃度は、第2半導体層36の不純物濃度よりも高い。第3半導体層60の不純物濃度が第2半導体層36の不純物濃度よりも高いことは、例えば、アトムプローブ分析法によって確認することができる。
【0034】
第1電極70は、バッファー層22上に設けられている。バッファー層22は、第1電極70とオーミックコンタクトしていてもよい。第1電極70は、第1半導体層32と電気的に接続されている。図示の例では、第1電極70は、バッファー層22を介して、第1半導体層32と電気的に接続されている。第1電極70は、発光層34に電流を注入するための一方の電極である。第1電極70としては、例えば、バッファー層22側から、Cr層、Ni層、Au層の順序で積層したものなどを用いる。
【0035】
第2電極72は、第3半導体層60上に設けられている。第2電極72は、積層体20の基板10とは反対側に設けられている。第3半導体層60は、第2電極72とオーミッ
クコンタクトしていてもよい。第2電極72は、第2半導体層36と電気的に接続されている。図示の例では、第2電極72は、第3半導体層60を介して、第2半導体層36と電気的に接続されている。第2電極72は、発光層34に電流を注入するための他方の電極である。第2電極72としては、例えば、ITO(indium tin oxide)などを用いる。
【0036】
なお、上記では、隣り合う柱状部30の第1半導体層32の間に、空隙が設けられている例について説明したが、隣り合う柱状部30の第1半導体層32の間に、AlN層が設けられていてもよい。
【0037】
また、上記では、InGaN系の発光層34について説明したが、発光層34としては、出射される光の波長に応じて、電流が注入されることで発光可能な様々な材料系を用いることができる。例えば、AlGaN系、AlGaAs系、InGaAs系、InGaAsP系、InP系、GaP系、AlGaP系などの半導体材料を用いることができる。
【0038】
発光装置100は、例えば、以下の作用効果を有する。
【0039】
発光装置100では、積層体20は、隣り合う柱状部30の第2半導体層36の間に設けられたAlN層50を有し、AlN層50の屈折率は、第2半導体層36の屈折率よりも低い。そのため、発光装置100では、第2半導体層が複数の柱状部にわたって連続した1つの層となっている場合に比べて、AlN層50における面内方向の平均屈折率(積層体20のAlN層50が設けられている部分の面内方向の平均屈折率)を低くすることができる。これにより、図1に示すように、積層方向における光強度のピークを発光層34の位置に合わせることができる。
【0040】
例えば図2に示すように、径が広がりながら第2半導体層1036が成長し、第2半導体層1036が複数の柱状部1030にわたって連続した1つの層となる連続部1038を有する場合、連続部1038における面内方向の平均屈折率が高くなる。そのため、図2に示すように、積層方向における光強度のピークは、第2電極1072側にずれる。なお、図2は、参考例に係る発光装置1000を模式的に示す断面図である。発光装置1000は、基板1010と、バッファー層1022と、柱状部1030と、第1電極1070と、第2電極1072と、を有している。柱状部1030は、第1半導体層1032と、発光層1034と、第2半導体層1036と、を有している。
【0041】
以上のように、発光装置100では、発光装置1000に比べて、発光層34に光を閉じ込めることができる。その結果、発光装置100では、第2電極72側に漏れる光を低減することができ、第2電極72で吸収される光を低減することができる。
【0042】
発光装置100では、AlN層50は、基板10側の第1端52を有し、発光層34は、基板10とは反対側の第2端35を有し、第1端52と基板10との間の距離D1は、第2端35と基板10との間の距離D2以上である。そのため、発光装置100では、距離D1が距離D2より小さい場合に比べて、発光層34と、隣り合う柱状部30の発光層34の間の部分と、の屈折率差を大きくすることができる。これにより、フォトニック結晶の効果を、より確実に発現させることができる。例えば距離D1が距離D2より小さく隣り合う柱状部の発光層の間にAlN層が存在すると、発光層と、隣り合う柱状部の発光層の間の部分と、の屈折率差が小さくなる。
【0043】
発光装置100では、積層体20は、第2半導体層36と第2電極72との間に設けられた第2導電型の第3半導体層60を有し、第3半導体層60の不純物濃度は、第2半導体層36の不純物濃度よりも高い。そのため、発光装置100では、第3半導体層が設けられていない場合に比べて、積層体20と第2電極72とのコンタクト抵抗を低減するこ
とができる。これにより、電流の注入効率を高くすることができる。
【0044】
発光装置100では、第3半導体層60は、AlN層50と第2電極72との間に設けられている。そのため、発光装置100では、第3半導体層がAlN層と第2電極との間に設けられていない場合に比べて、第2電極72の平坦性を高くすることができる。これにより、複数の柱状部30に対して、均一性よく電流を注入することができる。
【0045】
2. 発光装置の製造方法
次に、本実施形態に係る発光装置100の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図3図5は、本実施形態に係る発光装置100の製造工程を模式的に示す断面図である。
【0046】
図3に示すように、基板10上に、バッファー層22をエピタキシャル成長させる。エピタキシャル成長させる方法としては、例えば、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法などが挙げられる。
【0047】
次に、バッファー層22上に、図示せぬマスク層を形成する。マスク層は、例えば、電子ビーム蒸着法やスパッタ法などによる成膜、およびパターニングによって形成される。パターニングは、例えば、フォトリソグラフィーおよびエッチングによって行われる。マスク層は、例えば、酸化シリコン層、チタン層、酸化チタン層、酸化アルミニウム層などである。
【0048】
次に、マスク層をマスクとしてバッファー層22上に、第1半導体層32、発光層34、および第2半導体層36を、この順でエピタキシャル成長させる。エピタキシャル成長させる方法としては、例えば、MBE法が挙げられる。MBE法は、MOCVD法に比べて、柱状の形状を形成し易い。本工程により、複数の柱状部30を形成することができる。
【0049】
図4に示すように、隣り合う柱状部30の発光層34の間に絶縁層40を形成する。絶縁層40は、例えば、ALD(Atomic Layer Deposition)法によって形成される。絶縁層40は、例えば、バッファー層22まで到達せず、下面に凹部42が設けられた形状となる。絶縁層40とバッファー層22との間には、空隙が形成される。
【0050】
次に、第2半導体層36上および第2半導体層36の側方に、AlN層50をエピタキシャル成長させる。エピタキシャル成長させる方法としては、例えば、MOCVD法が挙げられる。MOCVD法は、MBE法に比べて、横方向に成長し易く、隣り合う柱状部30と絶縁層40とで囲まれた空間をAlN層50で埋めることができる。さらに、AlN層50をエピタキシャル成長させるので、均一性の高い層を形成することができる。
【0051】
図5に示すように、AlN層50および第2半導体層36をエッチバックする。エッチバックは、例えば、ICP(Inductively Coupled Plasma)方式のエッチング装置を用いて行う。第2半導体層36およびAlN層50は、ともにIII-IV族化合物半導体であるため、エッチングレートの差が小さい。そのため、例えば、第2半導体層36の上面と、AlN層50の上面と、を面一にすることができる。
【0052】
図1に示すように、第2半導体層36上およびAlN層50上に、第3半導体層60をエピタキシャル成長させる。エピタキシャル成長させる方法としては、例えば、MOCVD法が挙げられる。
【0053】
次に、バッファー層22上に第1電極70を形成し、第3半導体層60上に第2電極7
2を形成する。第1電極70および第2電極72は、例えば、真空蒸着法などにより形成される。第1電極70および第2電極72の形成順序は、特に限定されない。
【0054】
以上の工程により、発光装置100を製造することができる。
【0055】
なお、第2電極72として、例えば、Siがドープされたn型の高濃度GaN層を用いてもよい。高濃度GaN層の不純物濃度は、第1半導体層32の不純物濃度よりも高い。高濃度GaN層は、第3半導体層60とトンネル接合されている。高濃度GaN層は、例えば、MBE法によってエピタキシャル成長される。
【0056】
3. プロジェクター
次に、本実施形態に係るプロジェクターについて、図面を参照しながら説明する。図6は、本実施形態に係るプロジェクター900を模式的に示す図である。
【0057】
プロジェクター900は、例えば、光源として、発光装置100を有している。
【0058】
プロジェクター900は、図示しない筐体と、筐体内に備えられている赤色光、緑色光、青色光をそれぞれ出射する赤色光源100R、緑色光源100G、青色光源100Bと、を有している。なお、便宜上、図6では、赤色光源100R、緑色光源100G、および青色光源100Bを簡略化している。
【0059】
プロジェクター900は、さらに、筐体内に備えられている、第1光学素子902Rと、第2光学素子902Gと、第3光学素子902Bと、第1光変調装置904Rと、第2光変調装置904Gと、第3光変調装置904Bと、投射装置908と、を有している。第1光変調装置904R、第2光変調装置904G、および第3光変調装置904Bは、例えば、透過型の液晶ライトバルブである。投射装置908は、例えば、投射レンズである。
【0060】
赤色光源100Rから出射された光は、第1光学素子902Rに入射する。赤色光源100Rから出射された光は、第1光学素子902Rによって集光される。なお、第1光学素子902Rは、集光以外の機能を有していてもよい。後述する第2光学素子902Gおよび第3光学素子902Bについても同様である。
【0061】
第1光学素子902Rによって集光された光は、第1光変調装置904Rに入射する。第1光変調装置904Rは、入射した光を画像情報に応じて変調させる。そして、投射装置908は、第1光変調装置904Rによって形成された像を拡大してスクリーン910に投射する。
【0062】
緑色光源100Gから出射された光は、第2光学素子902Gに入射する。緑色光源100Gから出射された光は、第2光学素子902Gによって集光される。
【0063】
第2光学素子902Gによって集光された光は、第2光変調装置904Gに入射する。第2光変調装置904Gは、入射した光を画像情報に応じて変調させる。そして、投射装置908は、第2光変調装置904Gによって形成された像を拡大してスクリーン910に投射する。
【0064】
青色光源100Bから出射された光は、第3光学素子902Bに入射する。青色光源100Bから出射された光は、第3光学素子902Bによって集光される。
【0065】
第3光学素子902Bによって集光された光は、第3光変調装置904Bに入射する。
第3光変調装置904Bは、入射した光を画像情報に応じて変調させる。そして、投射装置908は、第3光変調装置904Bによって形成された像を拡大してスクリーン910に投射する。
【0066】
また、プロジェクター900は、第1光変調装置904R、第2光変調装置904G、および第3光変調装置904Bから出射された光を合成して投射装置908に導くクロスダイクロイックプリズム906を有することができる。
【0067】
第1光変調装置904R、第2光変調装置904G、および第3光変調装置904Bによって変調された3つの色光は、クロスダイクロイックプリズム906に入射する。クロスダイクロイックプリズム906は、4つの直角プリズムを貼り合わせて形成され、その内面に赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが配置されている。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が合成され、カラー画像を表す光が形成される。そして、合成された光は、投射装置908によりスクリーン910上に投射され、拡大された画像が表示される。
【0068】
なお、赤色光源100R、緑色光源100G、および青色光源100Bは、発光装置100を映像の画素として画像情報に応じて制御することで、第1光変調装置904R、第2光変調装置904G、および第3光変調装置904Bを用いずに、直接的に映像を形成してもよい。そして、投射装置908は、赤色光源100R、緑色光源100G、および青色光源100Bによって形成された映像を、拡大してスクリーン910に投射してもよい。
【0069】
また、上記の例では、光変調装置として透過型の液晶ライトバルブを用いたが、液晶以外のライトバルブを用いてもよいし、反射型のライトバルブを用いてもよい。このようなライトバルブとしては、例えば、反射型の液晶ライトバルブや、デジタルマイクロミラーデバイス(Digital Micro Mirror Device)が挙げられる。また、投射装置の構成は、使用されるライトバルブの種類によって適宜変更される。
【0070】
また、光源を、光源からの光をスクリーン上で走査させることにより、表示面に所望の大きさの画像を表示させる画像形成装置である走査手段を有するような走査型の画像表示装置の光源装置にも適用することが可能である。
【0071】
上述した実施形態に係る発光装置は、プロジェクター以外にも用いることが可能である。プロジェクター以外の用途には、例えば、屋内外の照明、ディスプレイ、レーザープリンター、スキャナー、車載用ライト、光を用いるセンシング機器、通信機器等の光源がある。
【0072】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成、例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0073】
上述した実施形態および変形例から以下の内容が導き出される。
【0074】
発光装置の一態様は、
基板と、
前記基板に設けられ、複数の柱状部を有する積層体と、
前記積層体の前記基板とは反対側に設けられ、前記積層体に電流を注入する電極と、
を有し、
前記柱状部は、
第1導電型の第1半導体層と、
前記第1導電型と異なる第2導電型の第2半導体層と、
前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられた発光層と、
を有し、
前記第1半導体層は、前記基板と前記発光層との間に設けられ、
前記積層体は、隣り合う前記柱状部の前記第2半導体層の間に設けられたAlN層を有し、
前記AlN層の屈折率は、前記第2半導体層の屈折率よりも低い。
【0075】
この発光装置によれば、電極側に漏れる光を低減することができ、電極で吸収される光を低減することができる。
【0076】
発光装置の一態様において、
前記AlN層は、前記基板側の第1端を有し、
前記発光層は、前記基板とは反対側の第2端を有し、
前記第1端と前記基板との間の距離は、前記第2端と前記基板との間の距離以上であってもよい。
【0077】
この発光装置によれば、発光層と、隣り合う柱状部の発光層の間の部分と、の屈折率差を大きくすることができる。
【0078】
発光装置の一態様において、
前記積層体は、前記第2半導体層と前記電極との間に設けられた前記第2導電型の第3半導体層を有し、
前記第3半導体層の不純物濃度は、前記第2半導体層の不純物濃度よりも高くてもよい。
【0079】
この発光装置によれば、積層体と電極とのコンタクト抵抗を低減することができる。
【0080】
発光装置の一態様において、
前記第3半導体層は、前記AlN層と前記電極との間に設けられていてもよい。
【0081】
この発光装置によれば、電極の平坦性を高くすることができる。
【0082】
プロジェクターの一態様は、
前記発光装置の一態様を有する。
【符号の説明】
【0083】
10…基板、20…積層体、22…バッファー層、30…柱状部、32…第1半導体層、34…発光層、35…第2端、36…第2半導体層、40…絶縁層、42…凹部、50…AlN層、52…第1端、60…第3半導体層、70…第1電極、72…第2電極、100…発光装置、100R…赤色光源、100G…緑色光源、100B…青色光源、900…プロジェクター、902R…第1光学素子、902G…第2光学素子、902B…第3光学素子、904R…第1光変調装置、904G…第2光変調装置、904B…第3光変調装置、906…クロスダイクロイックプリズム、908…投射装置、910…スクリーン、1000…発光装置、1010…基板、1022…バッファー層、1030…柱状部、1032…第1半導体層、1034…発光層、1036…第2半導体層、1038…連
続部、1070…第1電極、1072…第2電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6