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特開2022-154069植物における、クロロフィルを保持する能力、クロロフィルを生産する能力、及び、生長する能力から選択される1以上の能力を評価する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154069
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】植物における、クロロフィルを保持する能力、クロロフィルを生産する能力、及び、生長する能力から選択される1以上の能力を評価する方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/29 20060101AFI20221005BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALI20221005BHJP
   A01H 5/00 20180101ALI20221005BHJP
   A01H 1/00 20060101ALI20221005BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALN20221005BHJP
   C12Q 1/6844 20180101ALN20221005BHJP
【FI】
C12N15/29
C12Q1/68 ZNA
A01H5/00 A
A01H1/00 Z
A01H1/00 A
C12Q1/686 Z
C12Q1/6844 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056931
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】591060980
【氏名又は名称】岡山県
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野田 壮一郎
(72)【発明者】
【氏名】小川 健一
(72)【発明者】
【氏名】毛利 拓
(72)【発明者】
【氏名】上北 健
(72)【発明者】
【氏名】田岡 直明
【テーマコード(参考)】
2B030
4B063
【Fターム(参考)】
2B030AA02
2B030AA03
2B030AD06
2B030AD08
2B030CA05
2B030CA14
4B063QA01
4B063QA08
4B063QA13
4B063QQ04
4B063QQ09
4B063QQ28
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR73
4B063QR78
4B063QS24
4B063QS25
4B063QX01
(57)【要約】
【課題】本発明は、植物における、クロロフィルを保持する能力、クロロフィルを生産する能力、及び、生長する能力から選択される1以上の能力を評価する方法を提供する。
【解決手段】本発明の方法は、植物におけるALKBH8、ALKBH8のホモログ、TGA9、TGA9のホモログ、GRF15、GRF15のホモログ、At3g61540、At3g61540のホモログ、At2g01818、及び、At2g01818のホモログから選択される1以上の遺伝子の発現及び/又は前記遺伝子遺伝子に由来するタンパク質の活性を測定する工程11を含む。前記発現又は活性が低い植物は、前記1以上の能力が高い植物であると結論付けることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物における、クロロフィルを保持する能力、クロロフィルを生産する能力、及び、生長する能力から選択される1以上の能力を評価する方法であって、
植物におけるALKBH8、ALKBH8のホモログ、TGA9、TGA9のホモログ、GRF15、GRF15のホモログ、At3g61540、At3g61540のホモログ、At2g01818、及び、At2g01818のホモログから選択される1以上の遺伝子の発現及び/又は前記遺伝子に由来するタンパク質の活性を測定する工程11
を含む方法。
【請求項2】
ALKBH8又はALKBH8のホモログの遺伝子が、以下の(1A)~(1F):
(1A)配列番号1、2、3又は48に記載の塩基配列、
(1B)配列番号4、5、6又は49に記載のアミノ酸配列、又は、当該アミノ酸配列と70%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列、
(1C)KEGG(京都エンサイクロペディア オブ ジーンズ アンド ゲノムス)において以下のID:
dosa:Os04t0602700-00、dosa:Os02t0750500-01、osa:4330741、osa:4336893、ath:AT1G36310、ath:AT1G31600、aly:ARALYDRAFT_473619、aly:ARALYDRAFT_473716、crb:CARUB_v10009616mg、crb:CARUB_v10009306mg、csat:104757812、csat:104787286、csat:104777497、csat:104742087、csat:104741763、csat:104777194、eus:EUTSA_v10004311mg、eus:EUTSA_v10006757mg、brp:103867438、brp:103848760、brp:103833805、bna:111205055、bna:106411643、bna:106447489、bna:106399512、bna:106411644、bna:106412207、bna:106411637、bna:106418960、boe:106342941、boe:106308184、boe:106307572、thj:104798532、thj:104813129、cpap:110812544、cpap:110818506、cit:102616373、cit:102625137、cic:CICLE_v10001407mg、cic:CICLE_v10004016mg、tcc:18606930、tcc:18592225、gra:105773784、gra:105764921、ghi:107962467、ghi:107918198、ghi:107946865、ghi:107946842、ghi:107933507、dzi:111275453、dzi:111295045、dzi:111312355、egr:104444193、egr:104456636、gmx:100784028、gmx:100777529、gmx:100807751、pvu:PHAVU_002G123600g、pvu:PHAVU_009G027100g、vra:106759935、vra:106777615、var:108335758、var:108329993、ccaj:109815811、ccaj:109796724、mtr:MTR_2g460880、mtr:MTR_5g026030、cam:101494433、cam:101511642、adu:107460794、adu:107487073、aip:107606112、aip:107642443、lja:Lj0g3v0064359.1、lja:Lj0g3v0046209.1、lja:Lj2g3v1573010.1、lja:Lj2g3v1573010.2、lang:109348998、lang:109357026、fve:101305382、fve:101301875、pper:18776672、pper:18788824、pmum:103336690、pmum:103332964、pavi:110755353、pavi:110753860、mdm:103441609、mdm:103416044、mdm:103401476、pxb:103934470、pxb:103955543、zju:107422678、zju:107430520、csv:101210859、csv:101216715、cmo:103485433、cmo:103487636、mcha:111008031、mcha:111020230、cmax:111477075、cmax:111487507、cmax:111489322、rcu:8263009、rcu:8280124、jcu:105643385、jcu:105638853、hbr:110640684、hbr:110644165、hbr:110667825、pop:POPTR_0003s10550g、pop:POPTR_0002s09190g、 pop:POPTR_0975s00200g、jre:109007265、jre:109021366、jre:109019322、jre:109012454、vvi:100252728、vvi:100262638、sly:101260324、sly:101263510、spen:107015589、spen:107005551、sot:102591578、sot:102587122、cann:107867583、cann:107850720、nta:107782177、nta:107784057、nta:107778504、nta:107777356、nta:107799087、nta:107802481、nsy:104228789、nsy:104246141、nsy:104231727、nto:104097471、nto:104088120、nto:104104403、ini:109170629、ini:109170202、sind:105159340、sind:105164991、oeu:111404274、oeu:111377742、oeu:111378936、oeu:111383327、han:110868608、han:110918392、bvg:104892444、bvg:104905687、soe:110774879、soe:110797769、nnu:104610319、nnu:104600059、obr:102703096、bdi:100835069、bdi:100827681、ats:109741229、ats:109760172、sbi:8066423、sbi:8072284、zma:103627749、zma:100282025、sita:101777379、sita:101775180、pda:103713010、pda:103715224、egu:105053522、egu:105033011、mus:103996326、mus:103990395、dct:110097186、dct:110106918、aof:109832664、aof:109825376、atr:18422692、atr:18422136、smo:SELMODRAFT_78730、smo:SELMODRAFT_78643、smo:SELMODRAFT_112315、smo:SELMODRAFT_112271、ppp:PHYPADRAFT_106932、ppp:PHYPADRAFT_15669、vcn:VOLCADRAFT_108374、mng:MNEG_3576、olu:OSTLU_88555、ota:OT_ostta13g02300、ota:OT_ostta11g00670、bpg:Bathy04g02310、bpg:Bathy13g02890、mis:MICPUN_86885、mis:MICPUN_60739、mpp:MICPUCDRAFT_41620、mpp:MICPUCDRAFT_17097、apro:F751_1394、又は、gsl:Gasu_35150
が付与されている遺伝子の塩基配列、
(1D)KEGGにおいて(1C)に記載のIDが付与されている遺伝子にコードされるアミノ酸配列、又は、当該アミノ酸配列と70%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列、
(1E)(1A)、(1B)、(1C)又は(1D)の塩基配列と70%以上の配列同一性を有する塩基配列、
(1F)(1A)、(1B)、(1C)、(1D)又は(1E)の塩基配列と相補的な塩基配列、
のいずれかの塩基配列を含むDNA又はRNAである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
TGA9又はTGA9のホモログの遺伝子が、以下の(2A)~(2F):
(2A)配列番号34、35、36、37又は38に記載の塩基配列、
(2B)配列番号39、40、41、42又は43に記載のアミノ酸配列、又は、当該アミノ酸配列と70%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列、
(2C)KEGG(京都エンサイクロペディア オブ ジーンズ アンド ゲノムス)において以下のID:
aly:9325751、csat:104755012、crb:17900540、eus:EUTSA_v10007490mg、bna:106412233、boe:106344082、brp:103871579、又は、rsz:108860791
が付与されている遺伝子の塩基配列、
(2D)KEGGにおいて(2C)に記載のIDが付与されている遺伝子にコードされるアミノ酸配列、又は、当該アミノ酸配列と70%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列、
(2E)(2A)、(2B)、(2C)又は(2D)の塩基配列と70%以上の配列同一性を有する塩基配列、
(2F)(2A)、(2B)、(2C)、(2D)又は(2E)の塩基配列と相補的な塩基配列、
のいずれかの塩基配列を含むDNA又はRNAである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
GRF15又はGRF15のホモログの遺伝子が、以下の(3A)~(3F):
(3A)配列番号26に記載の塩基配列、
(3B)配列番号27に記載のアミノ酸配列、又は、当該アミノ酸配列と70%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列、
(3C)KEGG(京都エンサイクロペディア オブ ジーンズ アンド ゲノムス)において以下のID:
bna:106429451、boe:106342871、又は、brp:103863788
が付与されている遺伝子の塩基配列、
(3D)KEGGにおいて(3C)に記載のIDが付与されている遺伝子にコードされるアミノ酸配列、又は、当該アミノ酸配列と70%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列、
(3E)(3A)、(3B)、(3C)又は(3D)の塩基配列と70%以上の配列同一性を有する塩基配列、
(3F)(3A)、(3B)、(3C)、(3D)又は(3E)の塩基配列と相補的な塩基配列、
のいずれかの塩基配列を含むDNA又はRNAである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
At3g61540又はAt3g61540のホモログの遺伝子が、以下の(4A)~(4F):
(4A)配列番号28に記載の塩基配列、
(4B)配列番号29に記載のアミノ酸配列、又は、当該アミノ酸配列と70%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列、
(4C)KEGG(京都エンサイクロペディア オブ ジーンズ アンド ゲノムス)において以下のID:
aly:9314457、crb:17884851、csat:104788446、eus:EUTSA、rsz:108814367、bna:106406599、boe:106296419、又は、brp:103830306
が付与されている遺伝子の塩基配列、
(4D)KEGGにおいて(4C)に記載のIDが付与されている遺伝子にコードされるアミノ酸配列、又は、当該アミノ酸配列と70%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列、
(4E)(4A)、(4B)、(4C)又は(4D)の塩基配列と70%以上の配列同一性を有する塩基配列、
(4F)(4A)、(4B)、(4C)、(4D)又は(4E)の塩基配列と相補的な塩基配列、
のいずれかの塩基配列を含むDNA又はRNAである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
At2g01818又はAt2g01818のホモログの遺伝子が、以下の(5A)~(5F):
(5A)配列番号44又は45に記載の塩基配列、
(5B)配列番号46又は47に記載のアミノ酸配列、又は、当該アミノ酸配列と70%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列、
(5C)KEGG(京都エンサイクロペディア オブ ジーンズ アンド ゲノムス)において以下のID:
aly:9311163、eus:EUTSA_v10005480mg、csat:104710111、crb:17885477、brp:103854038、bna:106432932、boe:106325697、又は、rsz:108809176
が付与されている遺伝子の塩基配列、
(5D)KEGGにおいて(5C)に記載のIDが付与されている遺伝子にコードされるアミノ酸配列、又は、当該アミノ酸配列と70%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列、
(5E)(5A)、(5B)、(5C)又は(5D)の塩基配列と70%以上の配列同一性を有する塩基配列、
(5F)(5A)、(5B)、(5C)、(5D)又は(5E)の塩基配列と相補的な塩基配列、
のいずれかの塩基配列を含むDNA又はRNAである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
工程11が、植物から取得したDNA又はRNAを鋳型として核酸増幅反応を行い前記遺伝子の発現を測定することを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
植物における、クロロフィルを保持する能力、クロロフィルを生産する能力、及び、生長する能力から選択される1以上の能力を評価するためのマーカーであって、
ALKBH8、ALKBH8のホモログ、TGA9、TGA9のホモログ、GRF15、GRF15のホモログ、At3g61540、At3g61540のホモログ、At2g01818、及び、At2g01818のホモログから選択される1以上の遺伝子の全部又は一部、或いは、前記遺伝子に由来するタンパク質からなるマーカー。
【請求項9】
クロロフィルを保持する能力、クロロフィルを生産する能力、及び、生長する能力から選択される1以上の能力が高い植物を選抜する方法であって、
植物におけるALKBH8、ALKBH8のホモログ、TGA9、TGA9のホモログ、GRF15、GRF15のホモログ、At3g61540、At3g61540のホモログ、At2g01818、及び、At2g01818のホモログから選択される1以上の遺伝子の発現及び/又は前記遺伝子に由来するタンパク質の活性を測定する工程21と、
工程21において測定された、前記遺伝子の発現及び/又は前記遺伝子に由来するタンパク質の活性が、対照となる植物と比較して低い植物を選抜する工程22と
を含む方法。
【請求項10】
工程21が、植物から取得したDNA又はRNAを鋳型として核酸増幅反応を行い前記遺伝子の発現を測定することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
クロロフィルを保持する能力、クロロフィルを生産する能力、及び、生長する能力から選択される1以上の能力が高い植物を育種する方法であって、
植物の第1の親個体と、ALKBH8、ALKBH8のホモログ、TGA9、TGA9のホモログ、GRF15、GRF15のホモログ、At3g61540、At3g61540のホモログ、At2g01818、及び、At2g01818のホモログから選択される1以上の遺伝子の発現及び/又は前記遺伝子に由来するタンパク質の活性が、前記第1の親個体と同じ又はより低い第2の親個体とを交配して子孫を得る工程31と、
前記子孫における前記遺伝子の発現及び/又は前記遺伝子に由来するタンパク質の活性を測定する工程32と、
工程32において測定された、前記子孫における前記遺伝子の発現及び/又は前記遺伝子に由来するタンパク質の活性が、前記第2の親個体における前記遺伝子の発現及び/又は前記遺伝子に由来するタンパク質の活性と同じ又はより低い場合に、前記子孫を選抜する工程33と
を含む方法。
【請求項12】
工程31が、前記子孫から取得したDNA又はRNAを鋳型として核酸増幅反応を行い前記遺伝子の発現を測定することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
植物における、クロロフィルを保持する能力、クロロフィルを生産する能力、及び、生長する能力から選択される1以上の能力を向上させる方法であって、
植物において、ALKBH8、ALKBH8のホモログ、TGA9、TGA9のホモログ、GRF15、GRF15のホモログ、At3g61540、At3g61540のホモログ、At2g01818、及び、At2g01818のホモログから選択される1以上の遺伝子の発現及び/又は前記遺伝子に由来するタンパク質の活性を抑制する工程41
を含む方法。
【請求項14】
工程41が、
(I)植物のゲノムDNAにおける前記遺伝子の破壊、
(II)植物への、前記遺伝子に対するアンチセンスDNAの導入、並びに、
(III)植物への、前記遺伝子に由来するタンパク質に対するアンタゴニストの導入、
のいずれか1つ以上を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ALKBH8、ALKBH8のホモログ、TGA9、TGA9のホモログ、GRF15、GRF15のホモログ、At3g61540、At3g61540のホモログ、At2g01818、及び、At2g01818のホモログから選択される1以上の遺伝子の発現及び/又は前記遺伝子に由来するタンパク質の活性が抑制された植物(ただしシロイヌナズナである場合を除く)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物における、クロロフィルを保持する能力、クロロフィルを生産する能力、及び、生長する能力から選択される1以上の能力を評価する方法に関する。
【0002】
本発明はまた、植物における前記1以上の能力を評価するためのマーカーに関する。
本発明はまた、前記1以上の能力が高い植物を選抜する方法に関する。
本発明はまた、前記1以上の能力が高い植物を育種する方法に関する。
【0003】
本発明はまた、植物における前記1以上の能力を向上させる方法に関する。
本発明はまた、前記1以上の能力が向上された植物に関する。
【背景技術】
【0004】
将来、世界の人口増加によって食糧危機が引き起こされると予測されており、作物の増産は人類にとって解決すべき課題である。その中、遺伝子組み換えによって作物の生長や収量を向上させる方法が開発されている。例えば、ABP遺伝子の破壊によって植物内のサイトカイニンを増加させ、植物体あたりの収量を増加させることができる(特許文献1)。また。γ-グルタミルシステインシンセターゼ遺伝子を活性化させ、植物内のグルタチオン量を高めることで植物の生長や収量が向上させることができる(特許文献2)。さらに、ZIMモチーフを含みCCTモチーフ、GATA型Zinc Fingerドメインを含まない遺伝子群を、植物中で過剰発現されることで、植物の生長および収量を増加することができる(特許文献3)。
【0005】
ALKBH8遺伝子は、様々な生物に広く保存されており、シロイヌナズナにおいてはtRNAの修飾に関わる遺伝子として報告されている(非特許文献1)。具体的には、ALKBH8タンパク質はメチル化したウリジン(mcm5U: 5-methoxycarbonyl-methyluridine)をヒドロキシル化して(S)-mchm5U: 5-(S)-[methoxycarbonyl-(hydroxy)methyl]uridineに変換することに関わっている。一方、ALKBH8遺伝子はこのtRNAの修飾に関わる機能以外は報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2014-501521
【特許文献2】WO2008/087932
【特許文献3】特開2008-271805
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Leihne et al.(2011) Nucleic Acids Res 39:7688-7701
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これまで報告されている植物の生長を促進させる方法には、それぞれ課題が存在する。例えば、植物ホルモンは生長段階によって繊細に制御する必要があり、特許文献1の様に、サイトカイニン量を多くすることで、増収を促すことができる作物は一部の作物に限られる。
【0009】
特許文献2または特許文献3の様に、遺伝子群を植物内に導入し、過剰発現させた方法を用いた組み換え作物の作成は技術がいる上、実用的な作物にするために、様々な規制をクリアすることが必要であり、時間とコストがかかる。
【0010】
一方、クロロフィルを長期間保持する能力や、クロロフィルを生産する能力を高めることができれば、植物の生長を効果的に促進することができると考えられるが、これらの能力を向上させる技術として満足できるものは従来提供されてない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、植物のALKBH8、ALKBH8のホモログ、TGA9、TGA9のホモログ、GRF15、GRF15のホモログ、At3g61540、At3g61540のホモログ、At2g01818、及び、At2g01818のホモログから選択される1以上の遺伝子の発現及び/又は前記遺伝子に由来するタンパクの活性を抑制することで、葉中のクロロフィルが長時間保持され、クロロフィル含量が高まり、植物の生長が促進されるという驚くべき知見を見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、以下の発明を包含する。
【0012】
(1)
植物における、クロロフィルを保持する能力、クロロフィルを生産する能力、及び、生長する能力から選択される1以上の能力を評価する方法であって、
植物におけるALKBH8、ALKBH8のホモログ、TGA9、TGA9のホモログ、GRF15、GRF15のホモログ、At3g61540、At3g61540のホモログ、At2g01818、及び、At2g01818のホモログから選択される1以上の遺伝子の発現及び/又は前記遺伝子に由来するタンパク質の活性を測定する工程11
を含む方法。
(2)
ALKBH8又はALKBH8のホモログの遺伝子が、以下の(1A)~(1F):
(1A)配列番号1、2、3又は48に記載の塩基配列、
(1B)配列番号4、5、6又は49に記載のアミノ酸配列、又は、当該アミノ酸配列と70%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列、
(1C)KEGG(京都エンサイクロペディア オブ ジーンズ アンド ゲノムス)において以下のID:
dosa:Os04t0602700-00、dosa:Os02t0750500-01、osa:4330741、osa:4336893、ath:AT1G36310、ath:AT1G31600、aly:ARALYDRAFT_473619、aly:ARALYDRAFT_473716、crb:CARUB_v10009616mg、crb:CARUB_v10009306mg、csat:104757812、csat:104787286、csat:104777497、csat:104742087、csat:104741763、csat:104777194、eus:EUTSA_v10004311mg、eus:EUTSA_v10006757mg、brp:103867438、brp:103848760、brp:103833805、bna:111205055、bna:106411643、bna:106447489、bna:106399512、bna:106411644、bna:106412207、bna:106411637、bna:106418960、boe:106342941、boe:106308184、boe:106307572、thj:104798532、thj:104813129、cpap:110812544、cpap:110818506、cit:102616373、cit:102625137、cic:CICLE_v10001407mg、cic:CICLE_v10004016mg、tcc:18606930、tcc:18592225、gra:105773784、gra:105764921、ghi:107962467、ghi:107918198、ghi:107946865、ghi:107946842、ghi:107933507、dzi:111275453、dzi:111295045、dzi:111312355、egr:104444193、egr:104456636、gmx:100784028、gmx:100777529、gmx:100807751、pvu:PHAVU_002G123600g、pvu:PHAVU_009G027100g、vra:106759935、vra:106777615、var:108335758、var:108329993、ccaj:109815811、ccaj:109796724、mtr:MTR_2g460880、mtr:MTR_5g026030、cam:101494433、cam:101511642、adu:107460794、adu:107487073、aip:107606112、aip:107642443、lja:Lj0g3v0064359.1、lja:Lj0g3v0046209.1、lja:Lj2g3v1573010.1、lja:Lj2g3v1573010.2、lang:109348998、lang:109357026、fve:101305382、fve:101301875、pper:18776672、pper:18788824、pmum:103336690、pmum:103332964、pavi:110755353、pavi:110753860、mdm:103441609、mdm:103416044、mdm:103401476、pxb:103934470、pxb:103955543、zju:107422678、zju:107430520、csv:101210859、csv:101216715、cmo:103485433、cmo:103487636、mcha:111008031、mcha:111020230、cmax:111477075、cmax:111487507、cmax:111489322、rcu:8263009、rcu:8280124、jcu:105643385、jcu:105638853、hbr:110640684、hbr:110644165、hbr:110667825、pop:POPTR_0003s10550g、pop:POPTR_0002s09190g、 pop:POPTR_0975s00200g、jre:109007265、jre:109021366、jre:109019322、jre:109012454、vvi:100252728、vvi:100262638、sly:101260324、sly:101263510、spen:107015589、spen:107005551、sot:102591578、sot:102587122、cann:107867583、cann:107850720、nta:107782177、nta:107784057、nta:107778504、nta:107777356、nta:107799087、nta:107802481、nsy:104228789、nsy:104246141、nsy:104231727、nto:104097471、nto:104088120、nto:104104403、ini:109170629、ini:109170202、sind:105159340、sind:105164991、oeu:111404274、oeu:111377742、oeu:111378936、oeu:111383327、han:110868608、han:110918392、bvg:104892444、bvg:104905687、soe:110774879、soe:110797769、nnu:104610319、nnu:104600059、obr:102703096、bdi:100835069、bdi:100827681、ats:109741229、ats:109760172、sbi:8066423、sbi:8072284、zma:103627749、zma:100282025、sita:101777379、sita:101775180、pda:103713010、pda:103715224、egu:105053522、egu:105033011、mus:103996326、mus:103990395、dct:110097186、dct:110106918、aof:109832664、aof:109825376、atr:18422692、atr:18422136、smo:SELMODRAFT_78730、smo:SELMODRAFT_78643、smo:SELMODRAFT_112315、smo:SELMODRAFT_112271、ppp:PHYPADRAFT_106932、ppp:PHYPADRAFT_15669、vcn:VOLCADRAFT_108374、mng:MNEG_3576、olu:OSTLU_88555、ota:OT_ostta13g02300、ota:OT_ostta11g00670、bpg:Bathy04g02310、bpg:Bathy13g02890、mis:MICPUN_86885、mis:MICPUN_60739、mpp:MICPUCDRAFT_41620、mpp:MICPUCDRAFT_17097、apro:F751_1394、又は、gsl:Gasu_35150
が付与されている遺伝子の塩基配列、
(1D)KEGGにおいて(1C)に記載のIDが付与されている遺伝子にコードされるアミノ酸配列、又は、当該アミノ酸配列と70%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列、
(1E)(1A)、(1B)、(1C)又は(1D)の塩基配列と70%以上の配列同一性を有する塩基配列、
(1F)(1A)、(1B)、(1C)、(1D)又は(1E)の塩基配列と相補的な塩基配列、
のいずれかの塩基配列を含むDNA又はRNAである、(1)に記載の方法。
(3)
TGA9又はTGA9のホモログの遺伝子が、以下の(2A)~(2F):
(2A)配列番号34、35、36、37又は38に記載の塩基配列、
(2B)配列番号39、40、41、42又は43に記載のアミノ酸配列、又は、当該アミノ酸配列と70%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列、
(2C)KEGG(京都エンサイクロペディア オブ ジーンズ アンド ゲノムス)において以下のID:
aly:9325751、csat:104755012、crb:17900540、eus:EUTSA_v10007490mg、bna:106412233、boe:106344082、brp:103871579、又は、rsz:108860791
が付与されている遺伝子の塩基配列、
(2D)KEGGにおいて(2C)に記載のIDが付与されている遺伝子にコードされるアミノ酸配列、又は、当該アミノ酸配列と70%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列、
(2E)(2A)、(2B)、(2C)又は(2D)の塩基配列と70%以上の配列同一性を有する塩基配列、
(2F)(2A)、(2B)、(2C)、(2D)又は(2E)の塩基配列と相補的な塩基配列、
のいずれかの塩基配列を含むDNA又はRNAである、(1)に記載の方法。
(4)
GRF15又はGRF15のホモログの遺伝子が、以下の(3A)~(3F):
(3A)配列番号26に記載の塩基配列、
(3B)配列番号27に記載のアミノ酸配列、又は、当該アミノ酸配列と70%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列、
(3C)KEGG(京都エンサイクロペディア オブ ジーンズ アンド ゲノムス)において以下のID:
bna:106429451、boe:106342871、又は、brp:103863788
が付与されている遺伝子の塩基配列、
(3D)KEGGにおいて(3C)に記載のIDが付与されている遺伝子にコードされるアミノ酸配列、又は、当該アミノ酸配列と70%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列、
(3E)(3A)、(3B)、(3C)又は(3D)の塩基配列と70%以上の配列同一性を有する塩基配列、
(3F)(3A)、(3B)、(3C)、(3D)又は(3E)の塩基配列と相補的な塩基配列、
のいずれかの塩基配列を含むDNA又はRNAである、(1)に記載の方法。
(5)
At3g61540又はAt3g61540のホモログの遺伝子が、以下の(4A)~(4F):
(4A)配列番号28に記載の塩基配列、
(4B)配列番号29に記載のアミノ酸配列、又は、当該アミノ酸配列と70%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列、
(4C)KEGG(京都エンサイクロペディア オブ ジーンズ アンド ゲノムス)において以下のID:
aly:9314457、crb:17884851、csat:104788446、eus:EUTSA、rsz:108814367、bna:106406599、boe:106296419、又は、brp:103830306
が付与されている遺伝子の塩基配列、
(4D)KEGGにおいて(4C)に記載のIDが付与されている遺伝子にコードされるアミノ酸配列、又は、当該アミノ酸配列と70%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列、
(4E)(4A)、(4B)、(4C)又は(4D)の塩基配列と70%以上の配列同一性を有する塩基配列、
(4F)(4A)、(4B)、(4C)、(4D)又は(4E)の塩基配列と相補的な塩基配列、
のいずれかの塩基配列を含むDNA又はRNAである、(1)に記載の方法。
(6)
At2g01818又はAt2g01818のホモログの遺伝子が、以下の(5A)~(5F):
(5A)配列番号44又は45に記載の塩基配列、
(5B)配列番号46又は47に記載のアミノ酸配列、又は、当該アミノ酸配列と70%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列、
(5C)KEGG(京都エンサイクロペディア オブ ジーンズ アンド ゲノムス)において以下のID:
aly:9311163、eus:EUTSA_v10005480mg、csat:104710111、crb:17885477、brp:103854038、bna:106432932、boe:106325697、又は、rsz:108809176
が付与されている遺伝子の塩基配列、
(5D)KEGGにおいて(5C)に記載のIDが付与されている遺伝子にコードされるアミノ酸配列、又は、当該アミノ酸配列と70%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列、
(5E)(5A)、(5B)、(5C)又は(5D)の塩基配列と70%以上の配列同一性を有する塩基配列、
(5F)(5A)、(5B)、(5C)、(5D)又は(5E)の塩基配列と相補的な塩基配列、
のいずれかの塩基配列を含むDNA又はRNAである、(1)に記載の方法。
(7)
工程11が、植物から取得したDNA又はRNAを鋳型として核酸増幅反応を行い前記遺伝子の発現を測定することを含む、(1)~(6)のいずれかに記載の方法。
(8)
植物における、クロロフィルを保持する能力、クロロフィルを生産する能力、及び、生長する能力から選択される1以上の能力を評価するためのマーカーであって、
ALKBH8、ALKBH8のホモログ、TGA9、TGA9のホモログ、GRF15、GRF15のホモログ、At3g61540、At3g61540のホモログ、At2g01818、及び、At2g01818のホモログから選択される1以上の遺伝子の全部又は一部、或いは、前記遺伝子に由来するタンパク質からなるマーカー。
(9)
クロロフィルを保持する能力、クロロフィルを生産する能力、及び、生長する能力から選択される1以上の能力が高い植物を選抜する方法であって、
植物におけるALKBH8、ALKBH8のホモログ、TGA9、TGA9のホモログ、GRF15、GRF15のホモログ、At3g61540、At3g61540のホモログ、At2g01818、及び、At2g01818のホモログから選択される1以上の遺伝子の発現及び/又は前記遺伝子に由来するタンパク質の活性を測定する工程21と、
工程21において測定された、前記遺伝子の発現及び/又は前記遺伝子に由来するタンパク質の活性が、対照となる植物と比較して低い植物を選抜する工程22と
を含む方法。
(10)
工程21が、植物から取得したDNA又はRNAを鋳型として核酸増幅反応を行い前記遺伝子の発現を測定することを含む、(9)に記載の方法。
(11)
クロロフィルを保持する能力、クロロフィルを生産する能力、及び、生長する能力から選択される1以上の能力が高い植物を育種する方法であって、
植物の第1の親個体と、ALKBH8、ALKBH8のホモログ、TGA9、TGA9のホモログ、GRF15、GRF15のホモログ、At3g61540、At3g61540のホモログ、At2g01818、及び、At2g01818のホモログから選択される1以上の遺伝子の発現及び/又は前記遺伝子に由来するタンパク質の活性が、前記第1の親個体と同じ又はより低い第2の親個体とを交配して子孫を得る工程31と、
前記子孫における前記遺伝子の発現及び/又は前記遺伝子に由来するタンパク質の活性を測定する工程32と、
工程32において測定された、前記子孫における前記遺伝子の発現及び/又は前記遺伝子に由来するタンパク質の活性が、前記第2の親個体における前記遺伝子の発現及び/又は前記遺伝子に由来するタンパク質の活性と同じ又はより低い場合に、前記子孫を選抜する工程33と
を含む方法。
(12)
工程31が、前記子孫から取得したDNA又はRNAを鋳型として核酸増幅反応を行い前記遺伝子の発現を測定することを含む、(11)に記載の方法。
(13)
植物における、クロロフィルを保持する能力、クロロフィルを生産する能力、及び、生長する能力から選択される1以上の能力を向上させる方法であって、
植物において、ALKBH8、ALKBH8のホモログ、TGA9、TGA9のホモログ、GRF15、GRF15のホモログ、At3g61540、At3g61540のホモログ、At2g01818、及び、At2g01818のホモログから選択される1以上の遺伝子の発現及び/又は前記遺伝子に由来するタンパク質の活性を抑制する工程41
を含む方法。
(14)
工程41が、
(I)植物のゲノムDNAにおける前記遺伝子の破壊、
(II)植物への、前記遺伝子に対するアンチセンスDNAの導入、並びに、
(III)植物への、前記遺伝子に由来するタンパク質に対するアンタゴニストの導入、
のいずれか1つ以上を含む、(13)に記載の方法。
(15)
ALKBH8、ALKBH8のホモログ、TGA9、TGA9のホモログ、GRF15、GRF15のホモログ、At3g61540、At3g61540のホモログ、At2g01818、及び、At2g01818のホモログから選択される1以上の遺伝子の発現及び/又は前記遺伝子に由来するタンパク質の活性が抑制された植物(ただしシロイヌナズナである場合を除く)。
【発明の効果】
【0013】
上記(1)~(7)に記載の方法によれば、植物における、クロロフィルを保持する能力、クロロフィルを生産する能力、及び、生長する能力から選択される1以上の能力を簡便に評価することができる。
【0014】
上記(8)に記載のマーカーは、植物における前記1以上の能力を評価するために有用である。
【0015】
上記(9)又は(10)に記載の方法によれば、前記1以上の能力が高い植物を選抜することができる。
【0016】
上記(11)又は(12)に記載の方法によれば、前記1以上の能力が高い植物を育種することができる。
【0017】
上記(13)又は(14)に記載の方法によれば、植物における前記1以上の能力を向上させることができる。
上記(15)に記載の植物は、前記1以上の能力が高められた植物である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、シロイヌナズナのALKBH8遺伝子の4つのスプライスバリアント(At1g31600.1、At1g31600.2、At1g31600.3、At1g31600.4)のコーディング領域における、シロイヌナズナT-DNA挿入変異体(SALK_083838C、SALK_094502C)でのT-DNAの挿入位置、及び、プライマーの位置を示す。
図2図2は、シロイヌナズナのT-DNA挿入変異体(SALK_083838C、SALK_094502C)、及び、野生株のDNAを鋳型とし、At1g31600遺伝子を検出するためのプライマーセット1、又は、T-DNAが挿入された境界領域を検出するためのプライマーセット2を用いたPCRの結果を示す。
図3図3は、播種後10週目の、シロイヌナズナの野生株及び2種のALKBH8破壊株(alkbh8-1、alkbh8-2)の写真である。
図4図4は、シロイヌナズナのGRF15(At2g10450)遺伝子のコーディング領域における、シロイヌナズナT-DNA挿入変異体(SALK_112825)でのT-DNAの挿入位置、及び、プライマーの位置を示す。
図5図5は、シロイヌナズナのT-DNA挿入変異体(SALK_112825)、及び、野生株のDNAを鋳型とし、GRF15(At2g10450)遺伝子を検出するためのプライマーセット1、又は、T-DNAが挿入された境界領域を検出するためのプライマーセット2を用いたPCRの結果を示す。
図6図6は、シロイヌナズナのKPHMT2(At3g61530)遺伝子及びAt3g61540遺伝子のコーディング領域における、シロイヌナズナT-DNA挿入変異体(SALK_135878)でのT-DNAの挿入位置、及び、プライマーの位置を示す。
図7図7は、シロイヌナズナのT-DNA挿入変異体(SALK_135878)、及び、野生株のDNAを鋳型とし、KPHMT2(At3g61530)遺伝子及びAt3g61540遺伝子を検出するためのプライマーセット1、又は、T-DNAが挿入された境界領域を検出するためのプライマーセット2を用いたPCRの結果を示す。
図8図8は、シロイヌナズナのTGA9(At1g08320)遺伝子の5つのスプライシングバリアント(At1g08320.1、At1g08320.2、At1g08320.3、At1g08320.4及びAt1g08320.5)のコーディング領域における、シロイヌナズナT-DNA挿入変異体(SALK_091349)でのT-DNAの挿入位置、及び、プライマーの位置を示す。
図9図9は、シロイヌナズナのT-DNA挿入変異体(SALK_091349)、及び、野生株のDNAを鋳型とし、TGA9(At1g08320)遺伝子を検出するためのプライマーセット1、又は、T-DNAが挿入された境界領域を検出するためのプライマーセット2を用いたPCRの結果を示す。
図10図10は、シロイヌナズナのAt2g01818遺伝子の2つのスプライシングバリアント(At2g01818.1及びAt2g01818.2)のコーディング領域における、シロイヌナズナT-DNA挿入変異体(SAIL_568_E01)でのT-DNAの挿入位置、及び、プライマーの位置を示す。
図11図11は、シロイヌナズナのT-DNA挿入変異体(SAIL_568_E01)、及び、野生株のDNAを鋳型とし、At2g01818遺伝子を検出するためのプライマーセット1、又は、T-DNAが挿入された境界領域を検出するためのプライマーセット2を用いたPCRの結果を示す。
図12図12は、クロロフィルが維持されている度合いを示す評価点が0点、1点、2点、3点である場合の、シロイヌナズナのロゼット葉の外観を示す。
図13図13は、シロイヌナズナの野生株(Col)及びGRF15、At3g61540、TGA9、At2g01818遺伝子破壊株の、播種後日数(DAS)48日目、56日目、63日目、70日目の各時点での、1株あたりの緑葉指数の平均値(n=9)を示す。
図14図14は、シロイヌナズナの野生株(Col)及びGRF15、At3g61540、TGA9、At2g01818遺伝子破壊株の、生育終期の播種10週目(70日目)における、クロロフィル含量の評価点が1~3の範囲のロゼット葉(緑葉)の1株あたりの合計枚数の平均値(各株n=9)と、野生株の緑葉枚数を100としたときの、各遺伝子破壊株の緑葉枚数の相対比を示す。
図15図15は、イネにおけるALKBH8遺伝子のオルソログに当たるOs04g0602700遺伝子のコーディング領域における、OsALKBH8_seq_fプライマー、OsALKBH8_seq_rプライマー及びゲノム編集に用いたガイドRNA(gOsALKBH8-1)の位置を示す。
図16図16は、イネOsALKBH8遺伝子破壊株及び野生型イネの、8週齢時点でのSPAD値(葉のクロロフィル量と相関する指標)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明が対象とする「植物」の種類は特に限定されず双子葉植物、単子葉植物等の種々の植物であってよい。
【0020】
双子葉植物としては、例えばアサガオ属植物、ヒルガオ属植物、サツマイモ属植物、ネナシカズラ属植物、ナデシコ属植物、ハコベ属植物、タカネツメクサ属植物、ミミナグサ属植物、ツメクサ属植物、ノミノツヅリ属植物、オオヤマフスマ属植物、ワチガイソウ属植物、ハマハコベ属植物、オオツメクサ属植物、シオツメクサ属植物、マンテマ属植物、センノウ属植物、フシグロ属植物、ナデシコ科植物、モクマモウ科植物、ドクダミ科植物、コショウ科植物、センリョウ科植物、ヤナギ科植物、ヤマモモ科植物、クルミ科植物、カバノキ科植物、ブナ科植物、ニレ科植物、クワ科植物、イラクサ科植物、カワゴケソウ科植物、ヤマモガシ科植物、ボロボロノキ科植物、ビャクダン科植物、ヤドリギ科植物、ウマノスズクサ科植物、ヤッコソウ科植物、ツチトリモチ科植物、タデ科植物、アカザ科植物、ヒユ科植物、オシロイバナ科植物、ヤマトグサ科植物、ヤマゴボウ科植物、ツルナ科植物、スベリヒユ科植物、モクレン科植物、ヤマグルマ科植物、カツラ科植物、スイレン科植物、マツモ科植物、キンポウゲ科植物、アケビ科植物、メギ科植物、ツヅラフジ科植物、ロウバイ科植物、クスノキ科植物、ケシ科植物、フウチョウソウ科植物、アブラナ科植物、モウセンゴケ科植物、ウツボカズラ科植物、ベンケイソウ科植物、ユキノシタ科植物、トベラ科植物、マンサク科植物、スズカケノキ科植物、バラ科植物、マメ科植物、カタバミ科植物、フウロソウ科植物、アマ科植物、ハマビシ科植物、ミカン科植物、ニガキ科植物、センダン科植物、ヒメハギ科植物、トウダイグサ科植物、アワゴケ科植物、ツゲ科植物、ガンコウラン科植物、ドクウツギ科植物、ウルシ科植物、モチノキ科植物、ニシキギ科植物、ミツバウツギ科植物、クロタキカズラ科植物、カエデ科植物、トチノキ科植物、ムクロジ科植物、アワブキ科植物、ツリフネソウ科植物、クロウメモドキ科植物、ブドウ科植物、ホルトノキ科植物、シナノキ科植物、アオイ科植物、アオギリ科植物、サルナシ科植物、ツバキ科植物、オトギリソウ科植物、ミゾハコベ科植物、ギョリュウ科植物、スミレ科植物、イイギリ科植物、キブシ科植物、トケイソウ科植物、シュウカイドウ科植物、サボテン科植物、ジンチョウゲ科植物、グミ科植物、ミソハギ科植物、ザクロ科植物、ヒルギ科植物、ウリノキ科植物、ノボタン科植物、ヒシ科植物、アカバナ科植物、アリノトウグサ科植物、スギナモ科植物、ウコギ科植物、セリ科植物、ミズキ科植物、イワウメ科植物、リョウブ科植物、イチヤクソウ科植物、ツツジ科植物、ヤブコウジ科植物、サクラソウ科植物、イソマツ科植物、カキノキ科植、ハイノキ科植物、エゴノキ科植物、モクセイ科植物、フジウツギ科植物、リンドウ科植物、キョウチクトウ科植物、ガガイモ科植物、ハナシノブ科植物、ムラサキ科植物、クマツヅラ科植物、シソ科植物、ナス科植物、ゴマノハグサ科植物、ノウゼンカズラ科植物、ゴマ科植物、ハマウツボ科植物、イワタバコ科植物、タヌキモ科植物、キツネノマゴ科植物、ハマジンチョウ科植物、ハエドクソウ科植物、オオバコ科植物、アカネ科植物、スイカズラ科植物、レンプクソウ科植物、オミナエシ科植物、マツムシソウ科植物、ウリ科植物、キキョウ科植物、キク科植物等が例示できる。
【0021】
単子葉植物としては例えばウキクサ属植物、アオウキクサ属植物、カトレア属植物,シンビジウム属植物,デンドロビューム属植物,ファレノプシス属植物,バンダ属植物,パフィオペディラム属植物,ラン科植物、ガマ科植物、ミクリ科植物、ヒルムシロ科植物、イバラモ科植物、ホロムイソウ科植物、オモダカ科植物、トチカガミ科植物、ホンゴウソウ科植物、イネ科植物、カヤツリグサ科植物、ヤシ科植物、サトイモ科植物、ホシグサ科植物、ツユクサ科植物、ミズアオイ科植物、イグサ科植物、ビャクブ科植物、ユリ科植物、ヒガンバナ科植物、ヤマノイモ科植物、アヤメ科植物、バショウ科植物、ショウガ科植物、カンナ科植物、ヒナノシャクジョウ科植物等が例示できる。単子葉植物としてはイネ科植物が好ましく、イネ科植物としてはイネが特に好ましい。
【0022】
<1.クロロフィルを保持する能力>
本発明において「クロロフィルを保持する能力」とは、葉などの植物体中に生産されたクロロフィルを一定期間にわたり保持する能力を指す。植物体中にクロロフィルをより長時間に亘って保持することができる植物は、クロロフィルを保持する能力が高い植物であるといえる。
【0023】
高等植物はクロロフィルとしてクロロフィルaとクロロフィルbとを有する。本発明においてクロロフィルは、クロロフィルa及びクロロフィルbの少なくとも一方、好ましくは両方を指す。
【0024】
<2.クロロフィルを生産する能力>
本発明において「クロロフィルを生産する能力」とは、葉などの植物体中においてクロロフィルを生産する能力を指す。植物体中において、特に葉において、クロロフィルをより多く生産することができる植物は、クロロフィルを生産する能力が高い植物であるといえる。
【0025】
<3.生長する能力>
本発明において植物の「生長」とは、典型的には、植物の各生長段階(幼苗、栄養生長、生殖生長)のいずれかの時期における、バイオマスの重量、草丈、葉面積、茎数のいずれか1項目以上が増加することを指す。これらの項目の増加がより大きい植物は、生長する能力が高い植物であるといえる。
【0026】
<4.遺伝子>
<4.1.ALKBH8又はALKBH8のホモログ>
ALKBH8(AlkB homolog 8)は、RNA recognition motif(RRM)、ヒドロキシル活性を持つAlkB Domain及びメチルトランスフェラーゼ活性を持つTrm9-Like Domainのいずれかから構成されるALKBHファミリーの一つである。シロイヌナズナのALKBH8(At1g31600)には4つのスプライシングバリアントAt1g31600.1、At1g31600.2、At1g31600.3、At1g31600.4が存在する。At1g31600.1及びAt1g31600.3のコーディング領域の塩基配列を配列番号1、At1g31600.2のコーディング領域の塩基配列を配列番号2、At1g31600.4のコーディング領域の塩基配列を配列番号3にそれぞれ示す。At1g31600.1及びAt1g31600.3のアミノ酸配列を配列番号4、At1g31600.2のアミノ酸配列を配列番号5、At1g31600.4のアミノ酸配列を配列番号6にそれぞれ示す。
【0027】
イネにおけるALKBH8遺伝子のホモログ(オルソログ)に当たるOs04g0602700(以下、OsALKBH8と表記)は、KEGG(http://www.genome.jp/kegg/)にdosa:Os04t0602700-00のIDが付与され、その塩基配列と、該塩基配列にコードされるアミノ酸配列が登録されている。OsALKBH8の塩基配列を配列番号48に、アミノ酸配列を配列番号49に示す。
【0028】
本発明において「ALKBH8又はALKBH8のホモログの遺伝子」は、シロイヌナズナ由来のALKBH8遺伝子に限らず、同等の機能を有する遺伝子、及び、その変異体も包含する。
【0029】
ALKBH8又はALKBH8のホモログの遺伝子として、KEGG(京都エンサイクロペディア オブ ジーンズ アンド ゲノムス)(http://www.genome.jp/kegg/)に以下のIDが付与された遺伝子が登録されている。KEGGでは、各遺伝子についてその塩基配列と、該塩基配列にコードされるアミノ酸配列が登録されている。
【0030】
【表1】





【0031】
より好ましくは、ALKBH8又はALKBH8のホモログの遺伝子は、上記(1A)~(1F)のいずれかの塩基配列を含む又は上記(1A)~(1F)のいずれかの塩基配列からなるDNA又はRNAである。
【0032】
ここで、ALKBH8又はALKBH8のホモログの遺伝子がRNAである場合、上記(1A)~(1F)のいずれかの塩基配列におけるチミン(T)は、ウラシル(U)に読み替える。
【0033】
上記(1B)のより好ましい実施形態は、配列番号4、5、6又は49に記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列、或いは、配列番号4、5、6又は49に記載のアミノ酸配列と好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列である。上記(1B)の塩基配列がコードするアミノ酸配列からなるタンパク質は、ALKBH8活性を有するものであればよい。本発明においてALKBH8活性とは、メチル化したウリジン(mcm5U: 5-methoxycarbonyl-methyluridine)をヒドロキシル化して(S)-mchm5U: 5-(S)-[methoxycarbonyl-(hydroxy)methyl]uridineに変換する活性を指す。好ましくは、上記(1B)の塩基配列がコードするアミノ酸配列からなるタンパク質のALKBH8活性は、配列番号4、5、6又は49に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質のALKBH8活性の80%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは100%以上である。
【0034】
上記(1D)のより好ましい実施形態は、KEGGにおいて上記(1C)に記載のIDが付与されている遺伝子にコードされるアミノ酸配列をコードする塩基配列、或いは、KEGGにおいて上記(1C)に記載のIDが付与されている遺伝子にコードされるアミノ酸配列と好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列である。上記(1D)の塩基配列がコードするアミノ酸配列からなるタンパク質は、ALKBH8活性を有するものであればよい。好ましくは、上記(1D)の塩基配列がコードするアミノ酸配列からなるタンパク質のALKBH8活性は、KEGGにおいて上記(1C)に記載のIDが付与されている遺伝子にコードされるアミノ酸配列からなるタンパク質のALKBH8活性の80%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは100%以上である。
【0035】
上記(1E)のより好ましい実施形態は、上記(1A)、上記(1B)、上記(1C)又は上記(1D)の塩基配列と好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上の配列同一性を有する塩基配列である。上記(1E)の塩基配列は、それがコードするアミノ酸配列からなるタンパク質がALKBH8活性を有するものであればよい。好ましくは、上記(1E)の塩基配列がコードするアミノ酸配列からなるタンパク質のALKBH8活性は、上記(1A)、上記(1B)、上記(1C)又は上記(1D)の塩基配列がコードするアミノ酸配列からなるタンパク質のALKBH8活性の80%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは100%以上である。
【0036】
上記(1B)、(1D)及び(1E)において、同一性の値は、複数のアミノ酸配列又は塩基配列間の同一性を演算するソフトウェア(例えば、FASTA、DNASIS、及びBLAST)を用いてデフォルトの設定で算出した値を示す。塩基配列の同一性の値は、一致度が最大となるように一対の塩基配列をアライメントした際に一致する塩基の数を算出し、当該一致する塩基の数の、比較した塩基配列の全塩基数に対する割合として算出される。同一性の決定方法の詳細については、例えばAltschul et al,Nuc.Acids.Res.25,3389-3402,1977及びAltschul et al,J.Mol.Biol.215,403-410,1990に記載されている。後述する(2B)、(2D)、(2E)、(3B)、(3D)、(3E)、(4B)、(4D)、(4E)、(5B)、(5D)及び(5E)における同一性も同様に算出される。
【0037】
<4.2.TGA9又はTGA9のホモログ>
TGA9は、塩基性領域ロイシンジッパー転写因子の一つである。シロイヌナズナのTGA9(At1g08320)には5つのスプライシングバリアントAt1g08320.1、At1g08320.2、At1g08320.3、At1g08320.4及びAt1g08320.5が存在する。At1g08320.1、At1g08320.2、At1g08320.3、At1g08320.4及びAt1g08320.5のそれぞれのコーディング領域の塩基配列を配列番号34、35、36、37、38に、それぞれのアミノ酸配列を39、40、41、42、43に示す。
【0038】
本発明において「TGA9又はTGA9のホモログの遺伝子」は、シロイヌナズナ由来のTGA9遺伝子に限らず、同等の機能を有する遺伝子、及び、その変異体も包含する。
【0039】
TGA9又はTGA9のホモログの遺伝子として、KEGG(京都エンサイクロペディア オブ ジーンズ アンド ゲノムス)(http://www.genome.jp/kegg/)に以下のIDが付与された遺伝子が登録されている。KEGGでは、各遺伝子についてその塩基配列と、該塩基配列にコードされるアミノ酸配列が登録されている。
【0040】
【表2】
【0041】
より好ましくは、TGA9又はTGA9のホモログの遺伝子は、上記(2A)~(2F)のいずれかの塩基配列を含む又は上記(2A)~(2F)のいずれかの塩基配列からなるDNA又はRNAである。
【0042】
ここで、TGA9又はTGA9のホモログの遺伝子がRNAである場合、上記(2A)~(2F)のいずれかの塩基配列におけるチミン(T)は、ウラシル(U)に読み替える。
【0043】
上記(2B)のより好ましい実施形態は、配列番号39、40、41、42又は43に記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列、或いは、配列番号39、40、41、42又は43に記載のアミノ酸配列と好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列である。上記(2B)の塩基配列がコードするアミノ酸配列からなるタンパク質は、TGA9活性を有するものであればよい。好ましくは、上記(2B)の塩基配列がコードするアミノ酸配列からなるタンパク質のTGA9活性は、配列番号39、40、41、42又は43に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質のTGA9活性の80%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは100%以上である。
【0044】
上記(2D)のより好ましい実施形態は、KEGGにおいて上記(2C)に記載のIDが付与されている遺伝子にコードされるアミノ酸配列をコードする塩基配列、或いは、KEGGにおいて上記(2C)に記載のIDが付与されている遺伝子にコードされるアミノ酸配列と好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列である。上記(2D)の塩基配列がコードするアミノ酸配列からなるタンパク質は、TGA9活性を有するものであればよい。好ましくは、上記(2D)の塩基配列がコードするアミノ酸配列からなるタンパク質のTGA9活性は、KEGGにおいて上記(2C)に記載のIDが付与されている遺伝子にコードされるアミノ酸配列からなるタンパク質のTGA9活性の80%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは100%以上である。
【0045】
上記(2E)のより好ましい実施形態は、上記(2A)、上記(2B)、上記(2C)又は上記(2D)の塩基配列と好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上の配列同一性を有する塩基配列である。上記(2E)の塩基配列は、それがコードするアミノ酸配列からなるタンパク質がTGA9活性を有するものであればよい。好ましくは、上記(2E)の塩基配列がコードするアミノ酸配列からなるタンパク質のTGA9活性は、上記(2A)、上記(2B)、上記(2C)又は上記(2D)の塩基配列がコードするアミノ酸配列からなるタンパク質のTGA9活性の80%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは100%以上である。
【0046】
<4.3.GRF15又はGRF15のホモログ>
GRF15は、生長調節因子の一つである。シロイヌナズナのGRF15(At2g10450)遺伝子のコーディング領域の塩基配列を配列番号26に示し、当該遺伝子によりコードされているシロイヌナズナGRF15のアミノ酸配列を配列番号27に示す。
【0047】
本発明において「GRF15又はGRF15のホモログの遺伝子」は、シロイヌナズナ由来のGRF15遺伝子に限らず、同等の機能を有する遺伝子、及び、その変異体も包含する。
【0048】
GRF15又はGRF15のホモログの遺伝子として、KEGG(京都エンサイクロペディア オブ ジーンズ アンド ゲノムス)(http://www.genome.jp/kegg/)に以下のIDが付与された遺伝子が登録されている。KEGGでは、各遺伝子についてその塩基配列と、該塩基配列にコードされるアミノ酸配列が登録されている。
【0049】
【表3】
【0050】
より好ましくは、GRF15又はGRF15のホモログの遺伝子は、上記(3A)~(3F)のいずれかの塩基配列を含む又は上記(3A)~(3F)のいずれかの塩基配列からなるDNA又はRNAである。
【0051】
ここで、GRF15又はGRF15のホモログの遺伝子がRNAである場合、上記(3A)~(3F)のいずれかの塩基配列におけるチミン(T)は、ウラシル(U)に読み替える。
【0052】
上記(3B)のより好ましい実施形態は、配列番号27に記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列、或いは、配列番号27に記載のアミノ酸配列と好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列である。上記(3B)の塩基配列がコードするアミノ酸配列からなるタンパク質は、GRF15活性を有するものであればよい。好ましくは、上記(3B)の塩基配列がコードするアミノ酸配列からなるタンパク質のGRF15活性は、配列番号27に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質のGRF15活性の80%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは100%以上である。
【0053】
上記(3D)のより好ましい実施形態は、KEGGにおいて上記(3C)に記載のIDが付与されている遺伝子にコードされるアミノ酸配列をコードする塩基配列、或いは、KEGGにおいて上記(3C)に記載のIDが付与されている遺伝子にコードされるアミノ酸配列と好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列である。上記(3D)の塩基配列がコードするアミノ酸配列からなるタンパク質は、GRF15活性を有するものであればよい。好ましくは、上記(3D)の塩基配列がコードするアミノ酸配列からなるタンパク質のGRF15活性は、KEGGにおいて上記(3C)に記載のIDが付与されている遺伝子にコードされるアミノ酸配列からなるタンパク質のGRF15活性の80%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは100%以上である。
【0054】
上記(3E)のより好ましい実施形態は、上記(3A)、上記(3B)、上記(3C)又は上記(3D)の塩基配列と好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上の配列同一性を有する塩基配列である。上記(3E)の塩基配列は、それがコードするアミノ酸配列からなるタンパク質がGRF15活性を有するものであればよい。好ましくは、上記(3E)の塩基配列がコードするアミノ酸配列からなるタンパク質のGRF15活性は、上記(3A)、上記(3B)、上記(3C)又は上記(3D)の塩基配列がコードするアミノ酸配列からなるタンパク質のGRF15活性の80%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは100%以上である。
【0055】
<4.4.At3g61540又はAt3g61540のホモログ>
At3g61540がコードするタンパク質は、α/β-ヒドロラーゼスーパーファミリータンパク質の一つである。シロイヌナズナのAt3g61540遺伝子のコーディング領域の塩基配列を配列番号28に示し、当該遺伝子によりコードされているシロイヌナズナAt3g61540のアミノ酸配列を配列番号29に示す。
【0056】
本発明において「At3g61540又はAt3g61540のホモログの遺伝子」は、シロイヌナズナ由来のAt3g61540遺伝子に限らず、同等の機能を有する遺伝子、及び、その変異体も包含する。
【0057】
At3g61540又はAt3g61540のホモログの遺伝子として、KEGG(京都エンサイクロペディア オブ ジーンズ アンド ゲノムス)(http://www.genome.jp/kegg/)に以下のIDが付与された遺伝子が登録されている。KEGGでは、各遺伝子についてその塩基配列と、該塩基配列にコードされるアミノ酸配列が登録されている。
【0058】
【表4】
【0059】
より好ましくは、At3g61540又はAt3g61540のホモログの遺伝子は、上記(4A)~(4F)のいずれかの塩基配列を含む又は上記(4A)~(4F)のいずれかの塩基配列からなるDNA又はRNAである。
【0060】
ここで、At3g61540又はAt3g61540のホモログの遺伝子がRNAである場合、上記(4A)~(4F)のいずれかの塩基配列におけるチミン(T)は、ウラシル(U)に読み替える。
【0061】
上記(4B)のより好ましい実施形態は、配列番号29に記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列、或いは、配列番号29に記載のアミノ酸配列と好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列である。上記(4B)の塩基配列がコードするアミノ酸配列からなるタンパク質は、At3g61540活性を有するものであればよい。好ましくは、上記(4B)の塩基配列がコードするアミノ酸配列からなるタンパク質のAt3g61540活性は、配列番号29に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質のAt3g61540活性の80%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは100%以上である。
【0062】
上記(4D)のより好ましい実施形態は、KEGGにおいて上記(4C)に記載のIDが付与されている遺伝子にコードされるアミノ酸配列をコードする塩基配列、或いは、KEGGにおいて上記(4C)に記載のIDが付与されている遺伝子にコードされるアミノ酸配列と好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列である。上記(4D)の塩基配列がコードするアミノ酸配列からなるタンパク質は、At3g61540活性を有するものであればよい。好ましくは、上記(4D)の塩基配列がコードするアミノ酸配列からなるタンパク質のAt3g61540活性は、KEGGにおいて上記(4C)に記載のIDが付与されている遺伝子にコードされるアミノ酸配列からなるタンパク質のAt3g61540活性の80%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは100%以上である。
【0063】
上記(4E)のより好ましい実施形態は、上記(4A)、上記(4B)、上記(4C)又は上記(4D)の塩基配列と好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上の配列同一性を有する塩基配列である。上記(4E)の塩基配列は、それがコードするアミノ酸配列からなるタンパク質がAt3g61540活性を有するものであればよい。好ましくは、上記(4E)の塩基配列がコードするアミノ酸配列からなるタンパク質のAt3g61540活性は、上記(4A)、上記(4B)、上記(4C)又は上記(4D)の塩基配列がコードするアミノ酸配列からなるタンパク質のAt3g61540活性の80%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは100%以上である。
【0064】
<4.5.At2g01818又はAt2g01818のホモログ>
At2g01818がコードするタンパク質は、PLATZ型転写因子ファミリータンパク質の一つである。シロイヌナズナのAt2g01818遺伝子には2つのスプライシングバリアントAt2g01818.1及びAt2g01818.2が存在する。At2g01818.1及びAt2g01818.2のそれぞれのコーディング領域の塩基配列を配列番号44、45に、それぞれのアミノ酸配列を配列番号46、47に示す。
【0065】
本発明において「At2g01818又はAt2g01818のホモログの遺伝子」は、シロイヌナズナ由来のAt2g01818遺伝子に限らず、同等の機能を有する遺伝子、及び、その変異体も包含する。
【0066】
At2g01818又はAt2g01818のホモログの遺伝子として、KEGG(京都エンサイクロペディア オブ ジーンズ アンド ゲノムス)(http://www.genome.jp/kegg/)に以下のIDが付与された遺伝子が登録されている。KEGGでは、各遺伝子についてその塩基配列と、該塩基配列にコードされるアミノ酸配列が登録されている。
【0067】
【表5】
【0068】
より好ましくは、At2g01818又はAt2g01818のホモログの遺伝子は、上記(5A)~(5F)のいずれかの塩基配列を含む又は上記(5A)~(5F)のいずれかの塩基配列からなるDNA又はRNAである。
【0069】
ここで、At2g01818又はAt2g01818のホモログの遺伝子がRNAである場合、上記(5A)~(5F)のいずれかの塩基配列におけるチミン(T)は、ウラシル(U)に読み替える。
【0070】
上記(5B)のより好ましい実施形態は、配列番号46又は47に記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列、或いは、配列番号46又は47に記載のアミノ酸配列と好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列である。上記(5B)の塩基配列がコードするアミノ酸配列からなるタンパク質は、At2g01818活性を有するものであればよい。好ましくは、上記(5B)の塩基配列がコードするアミノ酸配列からなるタンパク質のAt2g01818活性は、配列番号46又は47に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質のAt2g01818活性の80%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは100%以上である。
【0071】
上記(5D)のより好ましい実施形態は、KEGGにおいて上記(5C)に記載のIDが付与されている遺伝子にコードされるアミノ酸配列をコードする塩基配列、或いは、KEGGにおいて上記(5C)に記載のIDが付与されている遺伝子にコードされるアミノ酸配列と好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列である。上記(5D)の塩基配列がコードするアミノ酸配列からなるタンパク質は、At2g01818活性を有するものであればよい。好ましくは、上記(5D)の塩基配列がコードするアミノ酸配列からなるタンパク質のAt2g01818活性は、KEGGにおいて上記(5C)に記載のIDが付与されている遺伝子にコードされるアミノ酸配列からなるタンパク質のAt2g01818活性の80%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは100%以上である。
【0072】
上記(5E)のより好ましい実施形態は、上記(5A)、上記(5B)、上記(5C)又は上記(5D)の塩基配列と好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上の配列同一性を有する塩基配列である。上記(5E)の塩基配列は、それがコードするアミノ酸配列からなるタンパク質がAt2g01818活性を有するものであればよい。好ましくは、上記(5E)の塩基配列がコードするアミノ酸配列からなるタンパク質のAt2g01818活性は、上記(5A)、上記(5B)、上記(5C)又は上記(5D)の塩基配列がコードするアミノ酸配列からなるタンパク質のAt2g01818活性の80%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは100%以上である。
【0073】
<5.植物の能力を評価する方法>
本発明の一態様は、
植物における、クロロフィルを保持する能力、クロロフィルを生産する能力、及び、生長する能力から選択される1以上の能力を評価する方法であって、
植物におけるALKBH8、ALKBH8のホモログ、TGA9、TGA9のホモログ、GRF15、GRF15のホモログ、At3g61540、At3g61540のホモログ、At2g01818、及び、At2g01818のホモログから選択される1以上の遺伝子の発現及び/又は前記遺伝子に由来するタンパク質の活性を測定する工程11
を含む方法に関する。
【0074】
本発明者らは驚くべきことに、前記遺伝子の発現及び/又は前記遺伝子に由来するタンパク質の活性が抑制された植物は、前記発現及び活性が抑制されていない植物(例えば野生型植物)と比較して、クロロフィルを保持する能力、クロロフィルを生産する能力、及び、生長する能力が向上していることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0075】
工程11において測定された検査対象植物の前記遺伝子の発現及び/又は前記遺伝子に由来するタンパク質の活性が、対照となる植物(例えば、検査対象植物に対応する野生型植物や、育種の際の素材となった植物)と比較して抑制されている場合に、検査対象植物は、前記1以上の能力がより高い植物であると判断することができ、前記発現又は活性が、対照となる植物と比較して同等又はより高い場合には、検査対象植物は、前記1以上の能力が、対象となる植物と同等又はより低い植物であると判断することができる。
【0076】
本発明において「前記遺伝子に由来するタンパク質」とは、ALKBH8、ALKBH8のホモログ、TGA9、TGA9のホモログ、GRF15、GRF15のホモログ、At3g61540、At3g61540のホモログ、At2g01818、及び、At2g01818のホモログから選択される1以上の遺伝子から転写及び翻訳を経て生成されるタンパク質を指す。
【0077】
本発明において、前記遺伝子の発現は、植物の細胞内で前記遺伝子に対応するmRNAを定量することで測定してもよいし、植物の細胞内で前記遺伝子に由来するタンパク質を定量することで測定してもよいし、植物の細胞内で前記遺伝子に対応するゲノムDNAの塩基配列の定量又は有無を検出することにより測定してもよい(前記遺伝子に対応するゲノムDNAの塩基配列が存在しない場合は、前記遺伝子の発現はないと結論付けることができ、前記遺伝子に対応するゲノムDNAの塩基配列が野生型よりも少ない場合は、前記遺伝子の発現が少ないと結論付けることができる)。
【0078】
本発明において、ALKBH8及びALKBH8のホモログから選択される1以上の遺伝子に由来するタンパク質の活性は、上記のALKBH8活性を指標に測定することができる。
【0079】
本発明において、TGA9及びTGA9のホモログから選択される1以上の遺伝子に由来するタンパク質の活性は、上記のTGA9活性を指標に測定することができる。
【0080】
本発明において、GRF15及びGRF15のホモログから選択される1以上の遺伝子に由来するタンパク質の活性は、上記のGRF15活性を指標に測定することができる。
【0081】
本発明において、At3g61540及びAt3g61540のホモログから選択される1以上の遺伝子に由来するタンパク質の活性は、上記のAt3g61540活性を指標に測定することができる。
【0082】
本発明において、At2g01818及びAt2g01818のホモログから選択される1以上の遺伝子に由来するタンパク質の活性は、上記のAt2g01818活性を指標に測定することができる。
【0083】
工程11は、好ましくは、植物から取得したDNA又はRNAを鋳型として核酸増幅反応を行い前記遺伝子の発現を測定することを含む。ここで、植物から取得したDNAとしては、ゲノムDNAや、mRNAから調製したcDNA等が例示できる。植物から取得したRNAとしてはmRNAが例示できる。核酸増幅反応のためのプライマーセットは、前記遺伝子の塩基配列に特徴的な領域を特異的に増幅できるように設計すればよい。核酸増幅反応は、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法により行ってもよいし、LAMP法などの等温増幅法により行ってもよい。
【0084】
<6.マーカー>
本発明の他の一態様は、
植物における、クロロフィルを保持する能力、クロロフィルを生産する能力、及び、生長する能力から選択される1以上の能力を評価するためのマーカーであって、
ALKBH8、ALKBH8のホモログ、TGA9、TGA9のホモログ、GRF15、GRF15のホモログ、At3g61540、At3g61540のホモログ、At2g01818、及び、At2g01818のホモログから選択される1以上の遺伝子の全部又は一部、或いは、前記遺伝子に由来するタンパク質からなるマーカーに関する。
【0085】
上記の通り、前記遺伝子の発現及び/又は前記遺伝子に由来するタンパク質の活性が抑制された植物は、前記発現及び活性が抑制されていない植物(例えば野生型植物)と比較して、クロロフィルを保持する能力、クロロフィルを生産する能力、及び、生長する能力が向上していることから、前記遺伝子の全部又は一部、或いは、前記遺伝子に由来するタンパク質は、前記1以上の能力を評価するためのマーカーとして有用である。
【0086】
マーカーとしては特に、前記遺伝子に対応するmRNA、当該mRNAの断片、当該mRNAから調製されたcDNA、又は、当該cDNAの断片が好ましい。
【0087】
<7.植物を選抜する方法>
本発明の他の一態様は、
クロロフィルを保持する能力、クロロフィルを生産する能力、及び、生長する能力から選択される1以上の能力が高い植物を選抜する方法であって、
植物におけるALKBH8、ALKBH8のホモログ、TGA9、TGA9のホモログ、GRF15、GRF15のホモログ、At3g61540、At3g61540のホモログ、At2g01818、及び、At2g01818のホモログから選択される1以上の遺伝子の発現及び/又は前記遺伝子に由来するタンパク質の活性を測定する工程21と、
工程21において測定された、前記遺伝子の発現及び/又は前記遺伝子に由来するタンパク質の活性が、対照となる植物と比較して低い植物を選抜する工程22と
を含む方法に関する。
【0088】
工程21は工程11と同様に行うことができる。
【0089】
工程21において測定された前記遺伝子の発現及び/又は前記遺伝子に由来するタンパク質の活性が、対照となる植物と比較して低い植物は、当該対照となる植物と比較して、前記1以上の能力が高い植物であるから、工程22ではこれを選抜する。
【0090】
工程22における「対照となる植物」としては、対応する野生型植物や、育種の際の素材となった植物(親個体等)が典型例である。
【0091】
<8.植物を育種する方法>
本発明の他の一態様は、
クロロフィルを保持する能力、クロロフィルを生産する能力、及び、生長する能力から選択される1以上の能力が高い植物を育種する方法であって、
植物の第1の親個体と、ALKBH8、ALKBH8のホモログ、TGA9、TGA9のホモログ、GRF15、GRF15のホモログ、At3g61540、At3g61540のホモログ、At2g01818、及び、At2g01818のホモログから選択される1以上の遺伝子の発現及び/又は前記遺伝子に由来するタンパク質の活性が、前記第1の親個体と同じ又はより低い第2の親個体とを交配して子孫を得る工程31と、
前記子孫における前記遺伝子の発現及び/又は前記遺伝子に由来するタンパク質の活性を測定する工程32と、
工程32において測定された、前記子孫における前記遺伝子の発現及び/又は前記遺伝子に由来するタンパク質の活性が、前記第2の親個体における前記遺伝子の発現及び/又は前記遺伝子に由来するタンパク質の活性と同じ又はより低い場合に、前記子孫を選抜する工程33と
を含む方法に関する。
【0092】
工程31における第2の親個体は、典型的には、前記遺伝子の発現及び/又は前記遺伝子に由来するタンパク質の活性が抑制された植物個体であり、より好ましくは、前記発現及び/又は活性が野生型と比較して抑制された植物個体である。
【0093】
本態様の方法では、前記遺伝子の発現及び/又は前記遺伝子に由来するタンパク質の活性が抑制された植物個体を第2の親個体として用い、第1の親個体と交配して得た子孫のなかから、前記発現及び/又は活性が第2の親個体と同様又はより低い植物個体を選抜することで、前記1以上の能力が高い植物を効率的に育種することが可能となる。
【0094】
工程32は工程11と同様に行うことができる。
【0095】
工程32において測定された前記遺伝子の発現及び/又は前記遺伝子に由来するタンパク質の活性が、第2の親個体と比較して同じ又はより低い子孫は、第2の親個体と比較して、前記1以上の能力が同等またはより高い植物であるから、工程33ではこれを選抜する。
【0096】
工程33で選抜された子孫は、更に別の植物個体と交配して次世代の子孫を得るために用いてもよい。
【0097】
<9.植物の能力を向上させる方法>
本発明の他の一態様は、
植物における、クロロフィルを保持する能力、クロロフィルを生産する能力、及び、生長する能力から選択される1以上の能力を向上させる方法であって、
植物において、ALKBH8、ALKBH8のホモログ、TGA9、TGA9のホモログ、GRF15、GRF15のホモログ、At3g61540、At3g61540のホモログ、At2g01818、及び、At2g01818のホモログから選択される1以上の遺伝子の発現及び/又は前記遺伝子に由来するタンパク質の活性を抑制する工程41
を含む方法に関する。
【0098】
工程41での、前記遺伝子の発現及び/又は前記遺伝子に由来するタンパク質の活性の抑制は、植物の染色体上にある前記遺伝子の塩基配列又は前記遺伝子の発現を制御する機能を有する塩基配列(制御配列)を一部又は完全に欠損させること、前記遺伝子の発現量を低下させること、前記遺伝子の転写産物を分解すること、前記遺伝子の翻訳産物(タンパク質)の活性を抑制すること、前記タンパク質を分解すること、などを包含する。
【0099】
例えば、前記遺伝子の塩基配列又は制御配列を一部又は完全に欠損させる方法、或いは、前記遺伝子の発現を低下させる方法としては、薬剤、放射線や紫外線による遺伝子の変異、T-DNA法、ゲノム編集法、トランスポゾン法、トランスジーン法、転写後遺伝子サイレンシング法、RNAi法、ナンセンス仲介減衰法(Nonsense mediated decay、NMD)、リボザイム法、アンチセンス法、miRNA法(micro-RNA)、siRNA法(small interfering RNA)、抗体法等を挙げることができる。
【0100】
前記タンパク質の活性を抑制する方法としては、前記タンパク質に対するアンタゴニストを植物に導入し、拮抗阻害、競争阻害させることを挙げることができる。
【0101】
工程41は、特に好ましくは、
(I)植物のゲノムDNAにおける前記遺伝子の破壊、
(II)植物への、前記遺伝子に対するアンチセンスDNAの導入、並びに、
(III)植物への、前記遺伝子に由来するタンパク質に対するアンタゴニストの導入、
のいずれか1つ以上を含む。
(I)における前記遺伝子の破壊は、前記遺伝子の塩基配列又は制御配列を一部又は完全に欠損させることを指す。
【0102】
工程41を行う時期は問わない。例えば、種子の段階でもいいし、各成長段階(幼苗、栄養成長、生殖成長)、カルスの段階でもよい。また、工程41を行う植物の部位も問わない。例えば、生殖分裂組織または茎頂のような特定の細胞または細胞組織でのみでもよい。
【0103】
<10.植物>
本発明の他の一態様は、
ALKBH8、ALKBH8のホモログ、TGA9、TGA9のホモログ、GRF15、GRF15のホモログ、At3g61540、At3g61540のホモログ、At2g01818、及び、At2g01818のホモログから選択される1以上の遺伝子の発現及び/又は前記遺伝子に由来するタンパク質の活性が抑制された植物(ただしシロイヌナズナである場合を除く)に関する。
【0104】
本態様の植物は、クロロフィルを保持する能力、クロロフィルを生産する能力、及び、生長する能力から選択される1以上の能力が高いため有用である。
【0105】
本態様の植物は、上記の工程41を含む方法により生産することができる。
以下、本発明を、具体例を参照して説明する。しかしながら、以下の具体例は本発明の特範囲を限定するものではない。
【実施例0106】
(1)シロイヌナズナのALKBH8遺伝子はAGIコード:At1g31600で特定される。なお、このAt1g31600は、Leihne et al. (2011) Nucleic Acids Res 39: 7688-7701によってtRNAの修飾に関わる遺伝子として報告されている。
【0107】
シロイヌナズナALKBH8(At1g31600)遺伝子のコーディング領域の塩基配列を配列番号1、2、3に示し、当該遺伝子によりコードされているALKBH8のアミノ酸配列を配列番号4、5、6に示した。
【0108】
(2)シロイヌナズナのT-DNAタグライン
At1g31600遺伝子にT-DNAが挿入されたシロイヌナズナT-DNA挿入変異体は、Nottingham Arabidopsis Stock Center (http://arabidopsis.info/)より入手したSALK_083838CおよびSALK_094502Cを用いた。
【0109】
(3)T-DNA挿入位置およびホモラインの確認
SALK_083838C(「alkbh8-1」とする)およびSALK_094502C(「alkbh8-2」とする)は、図1の通り、At1g31600遺伝子上にT-DNAが挿入されている。まず、入手した種子を栽培し、以下の手順により、ホモでT-DNAが挿入されている株であることを確認した。
【0110】
具体的には、下層にバーミキュライト(ニッタイ)、中層にクレハ園芸培土(クレハ)、上層にバーミキュライトを80ml:40ml:40mlの割合で積層した6cm×6cm×5cmのポットに、alkbh8-1株、alkbh8-2株および野生型のシロイヌナズナ(Col)を播種し、4週後、各々の株からロゼット葉を採取し、DNAを抽出した。alkbh8-1株およびalkbh8-2株においてT-DNAが挿入された境界領域を検出するためのプライマーセット(プライマーセット2)として5’-TGGTTCACGTAGTGGGCCATCG-3’(LBa1:配列番号7)および5’-TGAGCTTCCGTCGTTTGTT-3’(AtALKBH8_seq_f:配列番号8)を用い、At1g31600遺伝子を検出するためのプライマーセット(プライマーセット1)としてAtALKBH8_seq_fおよび5’-TCGTGCTTCACCGGATAATAAG-3’(AtALKBH8_seq_r:配列番号9)を用いた(図1)。対照として野生型のシロイヌナズナ(Col)においても上述のプライマーセットでPCRを行った。PCRはいずれのプライマーセットにおいても1サイクルの94℃(1分)に続けて、35サイクルの94℃(30秒)、60℃(30秒)および72℃(2分)で反応を行った。
【0111】
2つの変異株(alkbh8-1株、alkbh8-2株)のDNAでは、どちらも、プライマーセット2を用いたPCRによるT-DNAが挿入された境界領域の増幅が確認され、プライマーセット1を用いたPCRによるAt1g31600遺伝子の増幅は確認されなかった(図2)。一方、野生型のシロイヌナズナ(Col)のDNAでは、プライマーセット2を用いたPCRによるT-DNAが挿入された境界領域の増幅が確認されず、プライマーセット1を用いたPCRによるAt1g31600遺伝子の増幅は確認された(図2)。これらのバンドパターンから、これらの変異体にはT-DNAがAt1g31600遺伝子へホモに挿入されていると判断した。
【実施例0112】
生長解析
<実験1>
野生型のシロイヌナズナ(Col)と実施例1記載のALKBH8破壊株(alkbh8-1株、alkbh8-2株)の生長を比較した。栽培は、約100μmol/m/sの光強度にて16時間明期、8時間暗期の日長周期とし、温度は22℃の条件下で行った。培土はバーミキュライトとクレハ園芸培土を用いた。具体的には、6cm×6cm×5cmポットの下層にバーミキュライト、中層にクレハ園芸培土、上層にバーミキュライトを80ml:40ml:40mlの割合で積層して栽培した。クレハ園芸培土には、窒素0.47mg/ml、リン酸1.18mg/ml、加里0.71mg/mlの割合で配合している。通常この条件で生育させたシロイヌナズナは新たな追肥なしでも窒素欠乏の兆候を示さない。栽植密度は1ポットあたり3個体になるように栽培した。水は適宜培土が乾燥しないように底面潅水した。N数は、地上部重の測定には各区9ポット、クロロフィル含量の測定には各区6個体とした。
【0113】
生長は4週目の地上部重および葉中のクロロフィル含量を測定し、評価した。その結果、4週目の野生株の地上部重は489mg/ポットであるのに対し、ALKBH8破壊株の地上部重は601mg/ポット及び610mg/ポットであり、野生株と比較しALKBH8破壊株は23~25%地上部重が大きいことが確認された。また、葉中の面積当たりのクロロフィル含量は、クロロフィルa換算で野生株21.6nmol/cmに対し、ALKBH8破壊株は23.5nmol/cm及び22.6nmol/cmであり、野生株に比較し5~9%増加していた。またクロロフィルbは野生株5.4nmol/cmに対し、ALKBH8破壊株は5.9nmol/cm及び5.7nmol/cmであり、野生株と比較し6~9%増加していた。このように、ALKBH8遺伝子を破壊することによって、葉中のクロロフィル含量が増加し、その結果光合成量が増加して植物の生長を促進することができることが確認された。
【0114】
【表6】
【0115】
<実験2>
次に、肥料量を増やし、シロイヌナズナ(Col)野生株と実施例1記載のALKBH8破壊株の生長を比較した。光強度、明暗期、温度は実験1と同様に行った。培土は6cm×6cm×5cmポットの下層にバーミキュライト、中層にクレハ園芸培土、上層にバーミキュライトを40ml:80ml:40mlの割合で積層して栽培した。栽植密度は1ポットあたり3個体になるように栽培した。水は適宜培土が乾燥しないように底面潅水した。1週目から5週目まで週1回、1mMの酸化型グルタチオンを底面潅水で施用した。また、4週目には液体肥料「ハイポネックス原液」(ハイポネックスジャパン製)を水で1000倍希釈した液を底面潅水で与えた。N数は各区8ポット(24個体)とした。
【0116】
試験は10週目の分枝数、最終地上部重を測定し、生長を評価した。その結果、10週目の分枝数は、野生株は1個体当たり平均3.7本であったのに対し、ALKBH8破壊株は4.7本及び4.3本であり野生株と比較し8~13%増加していた。最終地上部重は、野生株が1268mg/ポットであったのに対し、ALKBH8破壊株は1298mg/ポット及び1343mg/ポットであり野生株と比較し2~6%増加した。
【0117】
以上の結果は、肥料を十分与えた条件下でもALKBH8遺伝子を破壊することによって、さらに植物の生長速度を速くすることができることを示す。
【0118】
【表7】
【0119】
<実験3>
シロイヌナズナ(Col)野生株と実施例1記載のALKBH8破壊株のクロロフィル含量を経時的に比較した。試験条件(光強度、明暗期、温度)は実験1および2と同様に行った。培土は実験2と同様に6cm×6cm×5cmポットの下層にバーミキュライト、中層にクレハ園芸培土、上層にバーミキュライトを40ml:80ml:40mlの割合で積層して栽培した。栽植密度は1ポットあたり3個体になるように栽培した。水は適宜培土が乾燥しないように底面潅水した。また、4週目には液体肥料「ハイポネックス原液」(ハイポネックスジャパン製)を水で1000倍希釈した液を底面潅水で与えた。さらに、クロロフィル含量を測定する植物には、1週目から5週目まで週1回、1mMの酸化型グルタチオンを底面潅水で施用した。
【0120】
播種後4週目、5週目、6週目にそれぞれ8個体からロゼット葉をサンプリングし、葉の重量あたりのクロロフィルaおよびクロロフィルbの含量を測定した。また、各区2ポットで、10週目にクロロフィルが保持されているロゼット葉の枚数を計数した。
【0121】
その結果、6週目に野生株はクロロフィルaおよびクロロフィルb含量がそれぞれ2.07nmol/mg、0.56nmol/mgであるのに対し、ALKBH8破壊株のalkbh8-1ではそれぞれ2.16nmol/mg、0.59nmol/mg、alkbh8-2ではそれぞれ2.23nmol/mg、0.61nmol/mgと、クロロフィル含量がより増加していた。また、10週目の野生株は、ほぼ全てのロゼット葉が黄化し、クロロフィルが保持されていなかったのに対して、ALKBH8破壊株のロゼット葉は、緑葉の数が1個体当たり2.3枚(alkbh8-1)、1.0枚(alkbh8-2)と、明らかにクロロフィルが保持されていることがわかった。
【0122】
従って、ALKBH8を破壊することによって、長期間クロロフィル含量を保持することができることが明らかになった。
【0123】
【表8】
【0124】
【表9】
【実施例0125】
(1)シロイヌナズナGRF15遺伝子破壊変異体
(1-1)シロイヌナズナのGRF15遺伝子はAGIコード:At2g10450で特定される。
シロイヌナズナGRF15(At2g10450)遺伝子のコーディング領域の塩基配列を配列番号26に示し、当該遺伝子によりコードされているシロイヌナズナGRF15のアミノ酸配列を配列番号27に示した。
【0126】
(1-2)シロイヌナズナのT-DNAタグライン
At2g10450遺伝子にT-DNAが挿入されたシロイヌナズナT-DNA挿入変異体は、Nottingham Arabidopsis Stock Center (http://arabidopsis.info/)より入手したSALK_112825を用いた。
【0127】
(1-3)T-DNA挿入位置およびホモラインの確認
SALK_112825は、図4の通り、GRF15(At2g10450)遺伝子上にT-DNAが挿入されている。まず、入手した種子を栽培し、以下の手順により、ホモでT-DNAが挿入されている株であることを確認した。
【0128】
具体的には、下層にバーミキュライト(ニッタイ)、中層にクレハ園芸培土(クレハ)、上層にバーミキュライトを80ml:40ml:40mlの割合で積層した6cm×6cm×5cmのポットに、SALK_112825株および野生型のシロイヌナズナ(Col)を播種し、4週後、各々の株からロゼット葉を採取し、DNAを抽出した。SALK_112825株においてT-DNAが挿入された境界領域を検出するためのプライマーセット(プライマーセット2)としてGRF15_seq_f(配列番号10)及びLBa1(配列番号7)を用い、GRF15(At2g10450)遺伝子を検出するためのプライマーセット(プライマーセット1)としてGRF15_seq_f(配列番号10)及びGRF15_seq_r(配列番号11)を用いた(図4)。対照として野生型のシロイヌナズナ(Col)においても上述のプライマーセットでPCRを行った。PCRはいずれのプライマーセットにおいても1サイクルの94℃(1分)に続けて、35サイクルの94℃(30秒)、60℃(30秒)および72℃(3分)で反応を行った。
【0129】
SALK_112825株のDNAでは、プライマーセット2を用いたPCRによるT-DNAが挿入された境界領域の増幅が確認され、プライマーセット1を用いたPCRによるGRF15(At2g10450)遺伝子の増幅は確認されなかった(図5)。一方、野生型のシロイヌナズナ(Col)のDNAでは、プライマーセット2を用いたPCRによるT-DNAが挿入された境界領域の増幅が確認されず、プライマーセット1を用いたPCRによるGRF15(At2g10450)遺伝子の増幅は確認された(図5)。これらのバンドパターンから、SALK_112825株にはT-DNAがGRF15(At2g10450)遺伝子へホモに挿入されていると判断した。
【0130】
(2)シロイヌナズナAt3g61540遺伝子破壊変異体
(2-1)シロイヌナズナのAGIコード:At3g61540で特定される遺伝子(At3g61540遺伝子)のコーディング領域の塩基配列を配列番号28に示し、当該遺伝子によりコードされているシロイヌナズナAt3g61540遺伝子のアミノ酸配列を配列番号29に示した。
【0131】
シロイヌナズナゲノムDNA上においてAt3g61540遺伝子の上流に隣接し、転写方向がAt3g61540遺伝子とは逆向きのKPHMT2遺伝子はAGIコード:At3g61530で特定される。シロイヌナズナのKPHMT2(At3g61530)遺伝子には、2つのスプライシングバリアントAt3g61530.1及びAt3g61530.2が知られており、それぞれのコーディング領域の塩基配列を配列番号30、31に、それぞれのアミノ酸配列を配列番号32、33に示した。
【0132】
(2-2)シロイヌナズナのT-DNAタグライン
At3g61540遺伝子にT-DNAが挿入されたシロイヌナズナT-DNA挿入変異体は、Nottingham Arabidopsis Stock Center (http://arabidopsis.info/)より入手したSALK_135878を用いた。
【0133】
(2-3)T-DNA挿入位置およびホモラインの確認
SALK_135878は、図6の通り、At3g61540遺伝子の開始コドンの近傍のAt3g61540遺伝子のコーディング領域内であり且つKPHMT2(At3g61530)遺伝子の開始コドンよりもKPHMT2遺伝子の上流側の非翻訳領域にT-DNAが挿入されている。まず、入手した種子を栽培し、以下の手順により、ホモでT-DNAが挿入されている株であることを確認した。
【0134】
具体的には、前記(1-3)記載のポットに、SALK_135878株および野生型のシロイヌナズナ(Col)を播種し、4週後、各々の株からロゼット葉を採取し、DNAを抽出した。SALK_135878株においてT-DNAが挿入された境界領域を検出するためのプライマーセット(プライマーセット2)としてLBa1(配列番号7)及びAt3g61540_seq_r(配列番号13)を用い、KPHMT2(At3g61530)遺伝子及びAt3g61540遺伝子を検出するためのプライマーセット(プライマーセット1)としてKPHMT2_seq_r(配列番号12)及びAt3g61540_seq_r(配列番号13)を用いた(図6)。対照として野生型のシロイヌナズナ(Col)においても上述のプライマーセットでPCRを行った。PCRの反応条件は前記(1-3)記載の通りとした。
【0135】
SALK_135878株のDNAでは、プライマーセット2を用いたPCRによるT-DNAが挿入された境界領域の増幅が確認され、プライマーセット1を用いたPCRによるKPHMT2(At3g61530)-At3g61540遺伝子の増幅は確認されなかった(図7)。一方、野生型のシロイヌナズナ(Col)のDNAでは、プライマーセット2を用いたPCRによるT-DNAが挿入された境界領域の増幅が確認されず、プライマーセット1を用いたPCRによるKPHMT2(At3g61530)-At3g61540遺伝子の増幅は確認された(図7)。これらのバンドパターンから、SALK_135878株にはT-DNAがAt3g61540遺伝子へホモに挿入されていると判断した。
【0136】
(3)シロイヌナズナTGA9遺伝子破壊変異体
(3-1)シロイヌナズナのTGA9遺伝子はAGIコード:At1g08320で特定される。
シロイヌナズナTGA9(At1g08320)遺伝子には、5つのスプライシングバリアントAt1g08320.1、At1g08320.2、At1g08320.3、At1g08320.4及びAt1g08320.5が知られており、それぞれのコーディング領域の塩基配列を配列番号34、35、36、37、38に、それぞれのアミノ酸配列を39、40、41、42、43に示した。
【0137】
(3-2)シロイヌナズナのT-DNAタグライン
At1g08320遺伝子にT-DNAが挿入されたシロイヌナズナT-DNA挿入変異体は、Nottingham Arabidopsis Stock Center (http://arabidopsis.info/)より入手したSALK_091349を用いた。
【0138】
(3-3)T-DNA挿入位置およびホモラインの確認
SALK_091349は、図8の通り、TGA9(At1g08320)遺伝子上にT-DNAが挿入されている。まず、入手した種子を栽培し、以下の手順により、ホモでT-DNAが挿入されている株であることを確認した。
【0139】
具体的には、前記(1-3)記載のポットに、SALK_091349株および野生型のシロイヌナズナ(Col)を播種し、4週後、各々の株からロゼット葉を採取し、DNAを抽出した。SALK_091349株においてT-DNAが挿入された境界領域を検出するためのプライマーセット(プライマーセット2)としてTGA9_seq_f(配列番号14)及びLBa1(配列番号7)を用い、TGA9(At1g08320)遺伝子を検出するためのプライマーセット(プライマーセット1)としてTGA9_seq_f(配列番号14)及びTGA9_seq_r(配列番号15)を用いた(図8)。対照として野生型のシロイヌナズナ(Col)においても上述のプライマーセットでPCRを行った。PCRの反応条件は前記(1-3)記載の通りとした。
【0140】
SALK_091349株のDNAでは、プライマーセット2を用いたPCRによるT-DNAが挿入された境界領域の増幅が確認され、プライマーセット1を用いたPCRによるTGA9(At1g08320)遺伝子の増幅は確認されなかった(図9)。一方、野生型のシロイヌナズナ(Col)のDNAでは、プライマーセット2を用いたPCRによるT-DNAが挿入された境界領域の増幅が確認されず、プライマーセット1を用いたPCRによるTGA9(At1g08320)遺伝子の増幅は確認された(図9)。これらのバンドパターンから、SALK_091349株にはT-DNAがTGA9(At1g08320)遺伝子へホモに挿入されていると判断した。
【0141】
(4)シロイヌナズナAt2g01818遺伝子破壊変異体
(4-1)シロイヌナズナのAGIコード:At2g01818で特定される遺伝子(At2g01818遺伝子)には、2つのスプライシングバリアントAt2g01818.1及びAt2g01818.2が知られており、それぞれのコーディング領域の塩基配列を配列番号44、45に、それぞれのアミノ酸配列を46、47に示した。
【0142】
(4-2)シロイヌナズナのT-DNAタグライン
At2g01818遺伝子にT-DNAが挿入されたシロイヌナズナT-DNA挿入変異体は、Nottingham Arabidopsis Stock Center (http://arabidopsis.info/)より入手したSAIL_568_E01を用いた。
【0143】
(4-3)T-DNA挿入位置およびホモラインの確認
SAIL_568_E01は、図10の通り、At2g01818遺伝子上にT-DNAが挿入されている。まず、入手した種子を栽培し、以下の手順により、ホモでT-DNAが挿入されている株であることを確認した。
【0144】
具体的には、前記(1-3)記載のポットに、SAIL_568_E01株および野生型のシロイヌナズナ(Col)を播種し、4週後、各々の株からロゼット葉を採取し、DNAを抽出した。SAIL_568_E01株においてT-DNAが挿入された境界領域を検出するためのプライマーセット(プライマーセット2)としてAT2G01818_seq_f(配列番号16)及びLB3(配列番号18)を用い、At2g01818遺伝子を検出するためのプライマーセット(プライマーセット1)としてAT2G01818_seq_f(配列番号16)及びAT2G01818_seq_r(配列番号17)を用いた(図10)。対照として野生型のシロイヌナズナ(Col)においても上述のプライマーセットでPCRを行った。PCRの反応条件は前記(1-3)記載の通りとした。
【0145】
SAIL_568_E01株のDNAでは、プライマーセット2を用いたPCRによるT-DNAが挿入された境界領域の増幅が確認され、プライマーセット1を用いたPCRによるAt2g01818遺伝子の増幅は確認されなかった(図11)。一方、野生型のシロイヌナズナ(Col)のDNAでは、プライマーセット2を用いたPCRによるT-DNAが挿入された境界領域の増幅が確認されず、プライマーセット1を用いたPCRによるAt2g01818遺伝子の増幅は確認された(図11)。これらのバンドパターンから、SAIL_568_E01株にはT-DNAがAt2g01818遺伝子へホモに挿入されていると判断した。
【0146】
【表10】
【実施例0147】
シロイヌナズナ(Col)野生株と実施例3記載のGRF15、At3g61540、TGA9、At2g01818遺伝子破壊株のクロロフィルが保持されているロゼット葉の枚数を経時的に比較した。
【0148】
試験条件(光強度、明暗期、温度)は実施例2実験1、2及び3と同様に行った。培土は実施例2実験1と同様に6cm×6cm×5cmポットの下層にバーミキュライト、中層にクレハ園芸培土、上層にバーミキュライトを80ml:40ml:40mlの割合で積層して栽培した。栽植密度は1ポットあたり3個体になるように栽培した。水は適宜培土が乾燥しないように底面潅水した。
【0149】
播種後7週目(48日目)、8週目(56日目)、9週目(63日目)、10週目(70日目)にクロロフィルが保持されているロゼット葉の枚数を計数した。ロゼット葉の完全展開葉の各々の、クロロフィルが維持されている度合を0~3の範囲の連続値として点数付けし、1株における個々の葉の評価点の合計値を「緑葉指数」とした。0点、1点、2点、3点はそれぞれ以下の状態を示す。
0:緑色が残っていない
1:葉の一部のみに緑色が残る
2:緑色が薄くなっている
3:濃い緑色が残っている
ロゼット葉の完全展開葉のみカウントした。野生株及び遺伝子破壊株のそれぞれn=9で評価を行い、1株あたりの緑葉指数の平均値を求めた。
図12に、クロロフィルが維持されている度合いを示す評価点が0点、1点、2点、3点である場合の、シロイヌナズナのロゼット葉の外観を示す。
【0150】
図13に、シロイヌナズナ野生株(Col)及び実施例3記載のGRF15、At3g61540、TGA9、At2g01818遺伝子破壊株の、播種後日数(DAS)48日目、56日目、63日目、70日目の各時点での、1株あたりの緑葉指数の平均値(n=9)を示す。
【0151】
図14に、シロイヌナズナ野生株(Col)及び実施例3記載のGRF15、At3g61540、TGA9、At2g01818遺伝子破壊株の、生育終期の播種10週目(70日目)の、クロロフィル含量の評価点が1~3の範囲のロゼット葉(緑葉)の1株あたりの合計枚数の平均値(各株n=9)と、野生株の緑葉枚数を100としたときの、各遺伝子破壊株の緑葉枚数の相対比を示す。
【0152】
図13及び14に示す結果は、シロイヌナズナのGRF15遺伝子、At3g61540遺伝子、TGA9遺伝子、又は、At2g01818遺伝子の遺伝子破壊株では、野生株と比較して、クロロフィルの経時的な減少が抑制されていること、及び、生育終期でもクロロフィルが保持されていることを示す。
【実施例0153】
(1)イネALKBH8遺伝子破壊株の作出
イネにおけるALKBH8遺伝子のオルソログに当たるOs04g0602700(以下、OsALKBH8と表記)は、KEGG(http://www.genome.jp/kegg/)にdosa:Os04t0602700-00のIDが付与され、その塩基配列と、該塩基配列にコードされるアミノ酸配列が登録されている。OsALKBH8の塩基配列を配列番号48に、アミノ酸配列を配列番号49に示す。
【0154】
OsALKBH8に対し、ゲノム編集用のガイドRNA転写配列を2種類(配列番号19及び配列番号20)設計した。設計配列に基づき、それぞれ相補的なオリゴDNAを2本合成したものをアニーリングさせた。pU6-ccdB-gRNAベクターを制限酵素BbsIで処理し、QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN)を用いたゲル抽出により精製した。Takara Ligation Mix(タカラバイオ)を用いて制限酵素処理後のベクターとガイドRNA転写配列をライゲーションした。Ecos Competent E. coli DH5α(ニッポンジーン)に導入し、50μg/mLアンピシリン入りLB培地プレート上で37℃で一晩培養した。50μg/mLアンピシリン入り液体LB培地2mLに、プレート上のコロニーをかき取って加え、37℃、180rpmで一晩振盪培養した。QIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN)を用いてプラスミドを精製した。OsU6-2_F2プライマー(配列番号21)、M13_Fプライマー(配列番号22)を用いてシーケンス解析を行い、配列を確認した。配列が正しいことが確認できたプラスミドと、pZH-gYSA-PubiMMCas9ベクターを制限酵素I-SceIで処理し、QIAquick Gel Extraction Kitを用いたゲル抽出により、それぞれプラスミドから切り出した断片とベクターのバックボーンを精製した。Takara Ligation Mixを用いてそれらをライゲーションし、Ecos Competent E. coli DH5αに導入した。50μg/mLスペクチノマイシン入りLB培地プレート上で、37℃で一晩培養した。大腸菌のコロニーの一部をかき取ったものを鋳型とし、M13_Rプライマー(配列番号50)、PZmUbi_Rプライマー(配列番号23)、OsU6-2_F2プライマー(配列番号21)を用いたPCRを行った。目的の断片が挿入されていると思われるベクターを持つ大腸菌を、スペクチノマイシン入り液体LB培地で、37℃、180rpmで一晩振盪培養し、QIAprep Spin Miniprep Kitを用いてプラスミドを精製した。上記の3つのプライマーを用いてシーケンス解析を行い、目的の配列が挿入されていることを確認した。
【0155】
イネ(日本晴)の種子を70%エタノールで1分間、20%次亜塩素酸ナトリウムで1時間処理し、滅菌水で5回洗浄した。種子をカルス誘導培地プレート上に置き、30℃、16時間明記・8時間暗期でインキュベートした。3週間培養後に、生じたカルスを別のカルス誘導培地上に移した。
【0156】
アグロバクテリウムEHA101株のコンピテントセルを氷上で融解させ、上述の通り作製したプラスミドpZH-gOsALKBH8-PubiMMCas9を加えた。Gene Pulser II(Bio-Rad)を18kV、25μFに設定し、菌液を電極間0.1cmのキュベットに入れ、エレクトロポレーションを行った。キュベットにSOC培地を加えて菌液と混合し、試験管に移して28℃、180rpmで3時間振盪培養した。培養後の菌液を50μg/mLカナマイシン、50μg/mLスペクチノマイシン入りLB培地プレート上に塗り広げ、28℃でインキュベートした。2日間培養したコロニーをかき取り、50μg/mLカナマイシン、50μg/mLスペクチノマイシン入り液体LB培地に加え、28℃、180rpmで振盪培養した。1日培養後の培養液を1,700×gで10分間遠心した。形質転換用液体培地を入れ、OD600=0.1程度になるように菌を懸濁させた。滅菌シャーレに形質転換用液体培地5mLを入れ、カルス誘導培地上で3日培養した上記のカルスを移し、上記の菌懸濁液をかけ、5分間静置した。カルスを共培養用培地上に移し、28℃、暗所で培養した。
【0157】
3日間培養後のカルスを滅菌水20mLで5回洗浄した。500μg/mLカルベニシリン入り滅菌水20mLでさらに3回洗浄した。カルスを選抜用培地上に移し、30℃、16時間明期・8時間暗期で培養した。2週間培養した後、生存しているカルスを再分化用培地上に移し、同様の条件で培養した。これ以降、2週間ごとにカルスを新しい再分化用培地に移した。シュートが分化してきたカルスは、ホルモンフリー培地に移し、同様の条件で培養した。
【0158】
3号鉢(直径9cm、高さ8cm)にバーミキュライトを詰めて吸水させた。ホルモンフリー培地上で試験管の上部まで葉が伸びた植物を鉢に植え替えた。支柱を立て、ナイロン袋を被せて、輪ゴムでとめておいた。14時間明期(32℃)、10時間暗期(25℃)で培養した。1週間程度かけて袋に徐々に切り込みを入れ、順化させた。
【0159】
バーミキュライト10L、キングソイル特1号(カサネン工業)2Lを混合し、1/2000aワグネルポットに詰めた。上記の3号鉢で2週間程度培養した植物を、ワグネルポットに植え替えた。12時間明期(30℃)、12時間暗期(25℃)で培養した。植え替えて2か月程度経った時点から2週間に1回、ハイポネックス原液2000倍希釈液を与えた。移植から3か月半経った時点で、栽培条件を11時間明期(28℃)、13時間暗期(23℃)に変更し、4か月たった時点で、10時間明期(27℃)、14時間暗期(22℃)に変更した。
【0160】
栽培中のT0植物から1mm角程度の葉片を採取し、抽出バッファーに浸し、すり潰した。抽出液を20倍希釈した試料を鋳型として、OsALKBH8_seq_fプライマー(配列番号24)とOsALKBH8_seq_rプライマー(配列番号25)のセットを用いてPCRを行い、同じプライマーを用いて得られた産物のシーケンス解析を行った。塩基の挿入または欠落が確認されたT0植物を成熟するまで栽培し、T0植物を自家交配してT1種子を採取した。さらにT1種子を播種、栽培し、T1植物を自家交配してT2種子を得て試験に用いた。OsALKBH8遺伝子における、OsALKBH8_seq_fプライマー、OsALKBH8_seq_rプライマー及びガイドRNA(gOsALKBH8-1)の位置を図15に示す。
【0161】
【表11】
【0162】
上記のイネALKBH8遺伝子破壊株の作出に用いた培地及び抽出バッファーの組成及び調製方法を以下に示す。
【0163】
<カルス誘導培地>
【表12】
【0164】
1M KOHを数滴加えてpHを5.8に調整した後、イオン交換水で80mLにメスアップした。寒天640mgを加え、オートクレーブで121℃、20分間滅菌した。24穴ウェルプレート2枚に1.5mLずつ分注し、カルス誘導培地とした。
【0165】
<形質転換用液体培地>
【表13】
【0166】
1M KOHを数滴加えてpHを5.6に調整した後、イオン交換水で200mLにメスアップした。オートクレーブで121℃、20分間滅菌した。培地を冷ました後、100mg/mLアセトシリンゴン・DMSO溶液を20μL加えて混合した。
【0167】
<共培養用培地>
【表14】
【0168】
1M KOHを数滴加えてpHを5.6に調整した後、イオン交換水で200mLにメスアップした。寒天1.6gを加え、オートクレーブで121℃、20分間滅菌した。培地を60℃以下に冷ました後、100mg/mLアセトシリンゴン・DMSO溶液を20μL加えた。角形シャーレ(96×96×15mm)に40mLずつ分注し、形質転換用培地とした。
【0169】
<選抜用培地>
【表15】
【0170】
1M KOHを数滴加えてpHを5.8に調整した後、イオン交換水で200mLにメスアップした。寒天1.6gを加え、オートクレーブで121℃、20分間滅菌した。培地を60℃以下に冷ました後、100mg/mLハイグロマイシン100μL、100mg/mLカルベニシリン1000μLを加え、混合した。角形シャーレ(96×96×15mm)に40mLずつ分注し、選抜用培地とした。
【0171】
<再分化用培地>
【表16】
【0172】
5N HClを数滴加えてpHを5.8に調整した後、イオン交換水で200mLにメスアップした。寒天1.6gを加え、オートクレーブで121℃、20分間滅菌した。培地を60℃以下に冷ました後、100mg/mLハイグロマイシン100μL、100mg/mLカルベニシリン400μLを加え、混合した。角形シャーレ(96×96×15mm)に40mLずつ分注し、再分化用培地とした。
【0173】
<ホルモンフリー培地>
【表17】
【0174】
1M KOHを数滴加えてpHを5.8に調整し、イオン交換水で50mLにメスアップした。寒天400mgを加え、オートクレーブで121℃、20分間滅菌した。培養用試験管(直径4cm、高さ13cm)2本に25mLずつ分注した。
【0175】
<抽出バッファー>
【表18】
【0176】
(2)イネOsALKBH8遺伝子破壊株のクロロフィル量の測定
バーミキュライト10L、キングソイル特1号(カサネン工業)2Lの割合で混合した土を、1/2000aワグネルポットに詰めた。6月上旬に、土に十分に吸水させた後、上記(1)で作出したイネOsALKBH8遺伝子破壊株のT2種子および野生型イネの種子を1ポット当たり6粒播種し、特定網室内にて栽培した。2週間栽培後に間引きを行い、1ポット当たり3個体にした。8週齢になった時点で、主茎の上から2番目の完全展開葉の中央付近にて、葉緑素計SPAD-502Plus(コニカミノルタ)を用いてSPAD値を測定した。SPAD値は植物の葉のクロロフィル量と相関する指標である。
【0177】
結果を図16に示す。イネOsALKBH8遺伝子破壊株は、野生型イネと比較して、8週齢時点でSPAD値が17%高く、クロロフィル量が多いことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0178】
本発明は、農業、園芸の分野において利用することができる。
【配列表フリーテキスト】
【0179】
配列番号7~25、50:プライマー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【配列表】
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