(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154095
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】シャツ
(51)【国際特許分類】
A41B 1/08 20060101AFI20221005BHJP
【FI】
A41B1/08 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056973
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】501270287
【氏名又は名称】帝人フロンティア株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】502188147
【氏名又は名称】株式会社クリミナル
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 勝
(72)【発明者】
【氏名】所 辰雄
(57)【要約】
【課題】着用者の腕周りに対する窮屈感が軽減された着心地の良いシャツを提供することを課題とする。
【解決手段】着用者の腕を覆う袖部を備え、前記袖部は外袖と内袖とによって形成され、前記外袖は後方に配される外袖後端縁と該外袖後端縁に対向する外袖前端縁と前記外袖後端縁及び前記外袖前端縁のそれぞれにつながった外袖上端縁とを有し、前記内袖は後方に配される内袖後端縁と該内袖後端縁に対向する内袖前端縁と前記内袖後端縁及び前記内袖前端縁のそれぞれにつながった内袖上端縁とを有し、前記外袖後端縁は、基端から先端に向かうにつれて前記外袖前端縁に近付く方向に傾斜しており、且つ、前記内袖後端縁は、基端から先端に向かうにつれて前記内袖前端縁に近付く方向に傾斜している、シャツ。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の腕を覆う袖部を備え、
前記袖部は、外袖と、内袖とによって形成され、
前記外袖は、後方に配される外袖後端縁と、該外袖後端縁に対向する外袖前端縁と、前記外袖後端縁及び前記外袖前端縁のそれぞれにつながった外袖上端縁とを有し、
前記内袖は、後方に配される内袖後端縁と、該内袖後端縁に対向する内袖前端縁と、前記内袖後端縁及び前記内袖前端縁のそれぞれにつながった内袖上端縁とを有し、
前記外袖後端縁は、基端から先端に向かうにつれて前記外袖前端縁に近付く方向に傾斜しており、且つ、前記内袖後端縁は、基端から先端に向かうにつれて前記内袖前端縁に近付く方向に傾斜しており、
前記外袖前端縁及び前記外袖上端縁の交点を通り且つ幅方向に延びる直線である外袖バストラインと、前記外袖後端縁の先端を通り且つ長さ方向に延びる直線である外袖丈線とを互いに直交するように描き、
また、前記内袖前端縁及び前記内袖上端縁の交点を通り且つ幅方向に延びる直線である内袖バストラインと、前記内袖後端縁の先端を通り且つ長さ方向に延びる直線である内袖丈線とを互いに直交するように描き、
さらに、前記外袖後端縁の先端と前記外袖後端縁及び前記外袖バストラインの交点とを結ぶ外袖仮想直線、及び、前記内袖後端縁の先端と前記内袖後端縁及び前記内袖バストラインの交点とを結ぶ内袖仮想直線を描いたときに、
前記外袖仮想直線と前記外袖丈線とのなす第1角度と、前記内袖仮想直線と前記内袖丈線とのなす第2角度との和が10~30°である、シャツ。
【請求項2】
前記外袖後端縁及び前記内袖後端縁のそれぞれが、後方に膨らんだ湾曲状に形成されている、請求項1に記載のシャツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャツに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワイシャツ等のように、着用者の正面側を覆う前身頃と、前記着用者の背面側を覆う後身頃と、前記前身頃及び前記後身頃のそれぞれに接合され前記着用者の腕を覆う一対の袖部とを備えるシャツが知られている。(例えば特許文献1)。
【0003】
図10に示したように、従来技術のシャツは、各袖部が1枚の袖部形成生地Cによって構成されている。袖部形成生地Cは、基端から先端に向かって互いに近づくように形成された一対の側端縁部C1を有する。そして、各袖部は、各側端縁部C1が接合されることによって形成された袖下線を有するものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者らが検討したところ、従来技術のシャツには着用者の腕周りにおける着心地に改善の余地があることが判明した。具体的には、従来技術のシャツを着用した着用者は、シャツによる腕周りに対する窮屈感を覚えることがある。また、このような窮屈感は、着用者の疲労の原因ともなり得る。このように、従来技術のシャツには、着用者の腕周りに接触する部分における改善の余地がある。
【0006】
上記事情に鑑み、本発明は、着用者の腕周りに対する窮屈感が軽減された着心地の良いシャツを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、袖部を外袖と内袖とで形成し、さらに、これらの互いに接合される接合端縁の上下方向に対する傾斜角度を所定の値に設定することによって、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明に係るシャツは、
着用者の腕を覆う袖部を備え、
前記袖部は、外袖と、内袖とによって形成され、
前記外袖は、後方に配される外袖後端縁と、該外袖後端縁に対向する外袖前端縁と、前記外袖後端縁及び前記外袖前端縁のそれぞれにつながった外袖上端縁とを有し、
前記内袖は、後方に配される内袖後端縁と、該内袖後端縁に対向する内袖前端縁と、前記内袖後端縁及び前記内袖前端縁のそれぞれにつながった内袖上端縁とを有し、
前記外袖後端縁は、基端から先端に向かうにつれて前記外袖前端縁に近付く方向に傾斜しており、且つ、前記内袖後端縁は、基端から先端に向かうにつれて前記内袖前端縁に近付く方向に傾斜しており、
前記外袖前端縁及び前記外袖上端縁の交点を通り且つ幅方向に延びる直線である外袖バストラインと、前記外袖後端縁の先端を通り且つ長さ方向に延びる直線である外袖丈線とを互いに直交するように描き、
また、前記内袖前端縁及び前記内袖上端縁の交点を通り且つ幅方向に延びる直線である内袖バストラインと、前記内袖後端縁の先端を通り且つ長さ方向に延びる直線である内袖丈線とを互いに直交するように描き、
さらに、前記外袖後端縁の先端と前記外袖後端縁及び前記外袖バストラインの交点とを結ぶ外袖仮想直線、及び、前記内袖後端縁の先端と前記内袖後端縁及び前記内袖バストラインの交点とを結ぶ内袖仮想直線を描いたときに、
前記外袖仮想直線と前記外袖丈線とのなす第1角度と、前記内袖仮想直線と前記内袖丈線とのなす第2角度との和が10~30°である。
【0009】
斯かる構成によれば、前記外袖仮想直線と前記外袖丈線とのなす第1角度と、前記内袖仮想直線と前記内袖丈線とのなす第2角度との和が10~30°であることによって、着用者の腕周りに対する窮屈感が軽減され、それによって着心地の良いものとなる。
【0010】
また、本発明に係るシャツは、好ましくは、
前記外袖後端縁及び前記内袖後端縁のそれぞれが、後方に膨らんだ湾曲状に形成されている。
【0011】
斯かる構成によれば、前記外袖後端縁及び前記内袖後端縁のそれぞれが後方に膨らんだ湾曲状に形成されていることによって、着用者の腕周りに対する窮屈感がより軽減され、更に着心地の良いものとなる。
【発明の効果】
【0012】
以上の通り、本発明によれば、着用者の腕周りに対する窮屈感が軽減された着心地の良いシャツを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るシャツの正面図である。
【
図3】
図3は、
図1のシャツの前身頃の接合前の状態を示す図である。
【
図4】
図4は、
図1のシャツのヨーク及び後身頃の接合前の状態を別個に示す図である。
【
図5】
図5は、
図1のシャツの外袖及び内袖の接合前の状態を別個に示す図である。
【
図6】
図6は、
図5において、外袖後端縁及び内袖後端縁それぞれの傾斜角度を説明するための図である。
【
図7】
図7は、外袖後端縁及び内袖後端縁のそれぞれの上端部のみが接合された状態を示す。
【
図9】
図9は、実施例における3DCADによるシミュレーションデータの一例を示す。
【
図10】
図10は、従来技術のシャツにおける袖部形成生地を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係るシャツについて、ワイシャツを例示して説明する。
【0015】
図1~2に示されるように、本実施形態に係るシャツ1は、着用者の正面側を覆う前身頃10と、前記着用者の背面側を覆う後身頃20と、前記着用者の肩回りを覆うヨーク30と、前記着用者の首回りに配される襟部40と、前記着用者の腕を覆う一対の袖部50とを備えている。また、シャツ1は、各部分が接合されることによって形成された接合部60を備えている。本実施形態の接合部60は、糸による縫合によって形成されている。なお、以下では、シャツ1を正面側又は背面側から見たときの左右方向を幅方向、該幅方向に直交する方向を上下方向と称することがある。また、
図3~6は、上記の各部分を構成する生地片が接合される前の状態(分断された状態)を示す。
【0016】
図1に示されるように、前身頃10は、複数のボタンホールが形成された上前身頃11と、各ボタンホールに係合可能な複数のボタンを有する下前身頃12とを有する。
【0017】
図3に示されるように、上前身頃11は、シャツ1のアームホールを形成するアームホール形成端縁112と、後身頃20との接合端縁となる上前身頃側端縁113とを有する。本実施形態の上前身頃側端縁113は、幅方向内方に湾曲するように形成されている。
【0018】
同様に、下前身頃12は、シャツ1のアームホールを形成するアームホール形成端縁122と、後身頃20との接合端縁となる下前身頃側端縁123とを有する。本実施形態の下前身頃側端縁123は、シャツ1の幅方向内方に湾曲するように形成されている。
【0019】
このような上前身頃11及び下前身頃12を有する前身頃10において、以下では、アームホール形成端縁112又はアームホール形成端縁122の下端(言い換えれば、上前身頃側端縁113又は下前身頃側端縁123の上端)を通り且つ幅方向に延びる直線を前身頃バストラインBLfと称し、上前身頃側端縁113又は下前身頃側端縁123の最も幅方向内方に入り込んだ点を通り且つ幅方向に延びる直線を前身頃ウエストラインWLfと称し、上前身頃側端縁113又は下前身頃側端縁123の下端を通り且つ幅方向に延びる直線を前身頃ヒップラインHLfと称する。
【0020】
前身頃10は、前身頃バストラインBLfから前身頃ウエストラインWLfに向かうにつれて幅が小さくなるように形成されていることが好ましい。これによって、着用者の外観が良好なものとなる。加えて、B体型等のように胴囲よりも胸囲の方が大きい体型の着用者の胸囲における窮屈感を軽減することができる。また、前身頃10は、前身頃ウエストラインWLfから前身頃ヒップラインHLfに向かうにつれて幅が大きくなるように形成されていることが好ましい。これによって、着用者の腹回りにおいてシャツ1がくびれた状態となり、着用者の見栄えが良好なものとなる。
【0021】
上前身頃11は、さらに、ヨーク30との接合端縁となる左上端縁111を有する。本実施形態の左上端縁111は、シャツ1の幅方向における中央部から側端部に向かうにつれて下方に傾斜するように形成されている。左上端縁111は、上方に膨らんだ湾曲状に形成されていることが好ましい。
【0022】
下前身頃12は、さらに、ヨーク30との接合端縁となる右上端縁121を有する。本実施形態の右上端縁121は、シャツ1の幅方向における中央部から側端部に向かうにつれて下方に傾斜するように形成されている。右上端縁121は、上方に膨らんだ湾曲状に形成されていることが好ましい。
【0023】
図4に示されるように、後身頃20は、ヨーク30との接合端縁となる上端縁21を有する。本実施形態の上端縁21は、その中心から両端に向かうにつれて下方に傾斜するように形成されている。上端縁21は、上方に膨らんだ湾曲状に形成されていることが好ましい。また、上端縁21は、その中心からシャツ1の幅方向に延びる直線部211と、直線部211の両端から下方に傾斜するように延びる一対の湾曲部212とを有することがより好ましい。
【0024】
上端縁21の両端を結ぶことによって描かれる線分LS1の長さに対する直線部211の長さの比は、0.1~0.16であることが好まし、0.04~0.10であることがより好ましい。線分LS1の長さは、通常40~60cmであるため、直線部211の長さは、4.0~9.6cmであることが好ましく、1.6~6.0cmであることがより好ましい。
【0025】
また、後身頃20は、シャツ1のアームホールを形成するアームホール形成端縁22と、前身頃10との接合端縁となる後身頃側端縁23とを有する。本実施形態の後身頃側端縁23のそれぞれは、シャツ1の幅方向内方に湾曲するように形成されている。
【0026】
このような後身頃20において、以下では、アームホール形成端縁22の下端(言い換えれば、後身頃側端縁23の上端)を通り且つシャツ1の幅方向に延びる直線を後身頃バストラインBLbと称し、後身頃側端縁23の最も幅方向内方に入り込んだ点を通り且つシャツ1の幅方向に延びる直線を後身頃ウエストラインWLbと称し、後身頃側端縁23の下端を通り且つシャツ1の幅方向に延びる直線を後身頃ヒップラインHLbと称する。
【0027】
後身頃20は、後身頃バストラインBLbから後身頃ウエストラインWLbに向かうにつれて幅が小さくなるように形成されていることが好ましい。これによって、着用者の外観が良好なものとなる。加えて、B体型等のように胴囲よりも胸囲の方が大きい体型の着用者の胸囲における窮屈感を更に軽減することができる。また、後身頃20は、前身頃ウエストラインWLbから後身頃ヒップラインHLbに向かうにつれて幅が大きくなるように形成されていることが好ましい。これによって、着用者の腹回りにおいてシャツ1がくびれた状態となり、着用者の見栄えが更に良好なものとなる。
【0028】
本実施形態の後身頃20は、上下方向に沿って延びる一対のダーツ24が形成されている。本実施形態のダーツ24は、後身頃バストラインBLbと後身頃ヒップラインHLbとの間に延びる縦長のひし形状に形成されている。また、各ダーツ24は、最も拡幅した部分が後身頃ウエストラインWLbに重なるように形成されている。さらに、各ダーツ24は、後身頃20の上端縁21における湾曲部212の下方に形成されていることが好ましい。これによって、着用者の肩甲骨によって後身頃20に生じ得る後方に突き出す部分と、各ダーツ24とが、上下方向に沿って並び易くなるため、シワの発生が抑制される。
【0029】
図1及び
図4に示されるように、ヨーク30は、シャツ1とされた際に、前身頃10との接合端縁となる一対の前側下端縁31と、後身頃20との接合端縁となる後側下端縁32と、各前側下端縁31をつなぐように形成され着用者の首回りに配される首回り端縁33と、シャツ1のアームホールを形成する一対のヨーク側端縁34とを有する。
【0030】
前側下端縁31のそれぞれは、前身頃10の左上端縁111及び右上端縁121に接合される。これによって、シャツ1は、前身頃10とヨーク30とが接合された部分である一対の前側ヨーク接合部61を有するものとなる。本実施形態の前側下端縁31は、上方に膨らんだ湾曲状に形成されている。
【0031】
図2及び
図4に示されるように、後側下端縁32は、後身頃20の上端縁21に接合される。これによって、シャツ1は、後身頃10とヨーク30とが接合された部分である後側ヨーク接合部62を有するものとなる。
【0032】
後側下端縁32は、その中心から両端に向かうにつれて下方に傾斜するように形成されている。本実施形態の後側下端縁32は、シャツ1とされた際に、上方に膨らんだ湾曲状に形成されている。後側下端縁32は、その中心からシャツ1の幅方向に延びる直線部321と、直線部321の両端から下方に傾斜するように延びる一対の湾曲部322とを有することが好ましい。直線部321は、後身頃20の直線部211に接合される。また、湾曲部322は、後身頃20の湾曲部212に接合される。
【0033】
後側下端縁32の両端を結ぶことによって描かれる線分LS2の長さに対する直線部321の長さの比は、0.1~0.16であることが好ましく、0.04~0.10であることがより好ましい。線分LS2の長さは、通常40~60cmであるため、直線部321の長さは、4.0~9.6cmであることが好ましく、1.6~6.0cmであることがより好ましい。
【0034】
ヨーク側端縁34のそれぞれは、袖部50が有するアームホール形成端縁(後述する外袖上端縁513及び内袖上端縁523)に接合されている。これによって、シャツ1は、ヨーク30と袖部50とが接合された部分である袖部接合部63を有するものとなる。
【0035】
本実施形態のヨーク側端縁34のそれぞれは、シャツ1の幅方向内方に湾曲するように形成されている。また、ヨーク側端縁34のそれぞれは、前身頃10との接合端である前端が後身頃20との接合端である後端よりも幅方向外方に配されている。
【0036】
図5~7に示されるように、袖部50は、外側(シャツ1の幅方向外方側)に配される外袖51と、内側(シャツ1の幅方向内方側)に配される内袖52とが互いに接合されることによって形成されている。
【0037】
図5に示されるように、外袖51は、後方に配される外袖後端縁511と、外袖後端縁511に対向する(並行する)外袖前端縁512と、外袖後端縁511及び外袖前端縁512のそれぞれの上端につながった外袖上端縁513と、外袖後端縁511及び外袖前端縁512のそれぞれの下端につながった外袖下端縁514とを有する。
【0038】
本実施形態の外袖後端縁511は、後方に膨らんだ湾曲状に形成されている。
【0039】
本実施形態の外袖前端縁512は、後方に膨らんだ湾曲状に形成されている。より具体的には、本実施形態の外袖前端縁512は、中央部に形成された角部(後述する外袖ウエストラインWLoが交差する部分)から基端及び先端のそれぞれに向かうにつれて前方に傾斜するように形成されている。これによって、肘を曲げた状態の着用者の腕周りの窮屈感を軽減することができる。
【0040】
外袖上端縁513は、後述する内袖上端縁523とともに、袖山線を構成している。本実施形態では、外袖上端縁513に袖山線の頂点である袖山点が配されている。該袖山点は、外袖上端縁513における前後方向中央よりも後方に配されている。また、外袖上端縁513は、前記袖山点から前端及び後端のそれぞれに向かうにつれて下方に傾斜するように形成されている。
【0041】
外袖下端縁514は、シャツ1の他の部分と接合されず、それによって、袖部50の袖口を形成している。
【0042】
上記のような外袖51には、外袖上端縁513の前端(言い換えれば、外袖前端縁512の基端)を通り且つ外袖51の幅方向に延びる外袖バストラインBLoと、外袖前端縁512の最も後方に入り込んだ点を通り且つ外袖51の幅方向に延びる外袖ウエストラインWLoとを描くことができる。
【0043】
内袖52は、後方に配される内袖後端縁521と、内袖後端縁521に対向する(並行する)内袖前端縁522と、内袖後端縁521及び内袖前端縁522のそれぞれの上端につながった内袖上端縁523と、内袖後端縁521及び内袖前端縁522のそれぞれの下端につながった内袖下端縁524とを有する。
【0044】
本実施形態の内袖後端縁521は、後方に膨らんだ湾曲状に形成されている。内袖後端縁521は、外袖後端縁511に接合される。これによって、シャツ1の袖部50は、後方に配される後方袖部接合部64を有するものとなる。
【0045】
本実施形態の内袖前端縁522は、後方に膨らんだ湾曲状に形成されている。より具体的には、本実施形態の内袖前端縁522は、中央部に形成された角部(後述する内袖ウエストラインWLiが交差する部分)から基端及び先端のそれぞれに向かうにつれて前方に傾斜するように形成されている。これによって、肘を曲げた状態の着用者の腕周りの窮屈感を更に軽減することができる。
【0046】
上記のような内袖52には、内袖上端縁523の前端(言い換えれば、内袖前端縁522の基端)を通り且つ内袖52の幅方向に延びる内袖バストラインBLiと、内袖前端縁522の最も後方に入り込んだ点を通り且つ内袖52の幅方向に延びる内袖ウエストラインWLiとを描くことができる。
【0047】
内袖バストラインBLiの長さは、11~18cmであることが好ましい。また、内袖後端縁521の先端と内袖前端縁522の先端とを結ぶ線分の長さは、4~12cmであることが好ましい。
【0048】
さらに、
図6に示されるように、着用者の腕周りの窮屈感を軽減する上では、外袖後端縁511及び内袖後端縁521それぞれの上下方向に対する傾斜角度が所定の関係を有することが重要である。
【0049】
具体的には、外袖バストラインBLoに直交し、外袖後端縁511の先端を通り且つ外袖51の長さ方向に延びる直線である外袖丈線L1と、外袖後端縁511の先端と外袖後端縁511及び外袖バストラインBLoの交点とを結ぶ外袖仮想直線VLoを描く。
【0050】
また、内袖バストラインBLiに直交し、内袖後端縁521の先端を通り且つ内袖52の長さ方向に延びる直線である内袖丈線L2と、内袖後端縁521の先端と内袖後端縁521及び内袖バストラインBLiの交点とを結ぶ内袖仮想直線VLiを描く。
【0051】
そして、外袖仮想直線VLoと外袖丈線L1とのなす角度である第1角度θ1と、内袖仮想直線VLiと内袖丈線L2とのなす角度である第2角度θ2との和が10~30°であることが重要である。より好ましくは、第1角度θ1と第2角度θ2との和が10~20°である。これによって、着用者の腕周りの窮屈感が更に軽減され、シャツ1が着心地の良いものとなる。
【0052】
第1角度θ1及び第2角度θ2のそれぞれの角度は、前記和が上記範囲内に収まれば特に限定されないが、第1角度θ1は5~15°であることが好ましく、7~10°であることがより好ましい。また、第2角度θ2は5~15°であることが好ましく、7~10°であることがより好ましい。
【0053】
図7に示されるように、第1角度θ1及び第2角度θ2が上記のような値であることによって、外袖51と内袖52のそれぞれの上端部を接合したときに、外袖後端縁511と内袖後端縁521との間に隙間Gが形成されることとなる。これによって、外袖51の外袖後端縁511と内袖52の内袖後端縁521とで形成される接合部の周囲が、後方に膨出するような立体形状となり、着用者の腕周りにおける窮屈感が軽減され、シャツ1の着心地が良好になる。
【0054】
また、
図8に示されるように、本実施形態のシャツ1は、袖部50が基端から先端に向かうにつれて後方から前方に傾斜するように形成されている。これによって、着用者の肘とシャツ1の袖部50との接触圧が軽減され、特に、デスクワーク中の着用者の腕周りに対する窮屈感が軽減される。
【0055】
以上のように、例示として実施形態を示したが、本発明に係るシャツは、上記実施形態の構成に限定されるものではない。また、本発明に係るシャツは、上記作用効果により限定されるものでもない。本発明に係るシャツは、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0056】
例えば、上記実施形態に係るシャツはワイシャツであるが、これに限定されず、カジュアルシャツであってもよい。
【実施例0057】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0058】
ユカアンドアルファ社製3DCADを使用したシミュレーションによって、シャツによる着用者の腕周りに対する窮屈感及びシャツにおけるシワの発生について評価した。具体的には、生地は、60番手、綿100%オックスフォード(収縮性無し、縦横2本平織)に設定した。
図3~
図6に示すような上前身頃、下前身頃、ヨーク、及び後身頃を備えるシャツについて、外袖の後端縁に関する第1角度θ1及び内袖の後端縁に関する第2角度θ2の値を種々変更して複数のシャツをデザインし、それぞれを平均体型の日本人にフィッティングした。なお、外袖の外袖後端縁及び内袖の内袖後端縁のそれぞれの形状は、シャツとされた際に後方に膨らんだ湾曲状となるようにデザインした。
【0059】
[腕周りにおける窮屈感の評価]
図9に示したように、フィッティングした状態の生地を、一辺の長さが2cmの正三角形領域に分割し、各領域の伸長率を観察した。生地の伸長のない領域を伸長率100%の領域とし、伸長率が101%以上の領域を着圧領域とした。着圧領域の数が少ないほど腕周りに対する窮屈感の軽減されたシャツであると評価することができる。本実施例では、着圧領域の数が150未満であれば、従来技術のシャツと比較して十分に窮屈感が軽減された良好なシャツであると評価することとした。結果は、下記表1に示したとおりである。
【0060】
[袖部におけるシワの評価]
袖部のシワの発生量をカウントし、下記評価基準により評価した。結果は、下記表1に示したとおりである。
(シワの評価基準)
○:シワの発生量が5本未満である。
△:シワの発生量が6~15本である。
×:シワの発生量が15本よりも多い。
【0061】
【0062】
比較例1の結果から、外袖における第1角度θ1と内袖における第2角度θ2との和が10°未満の場合、着圧領域の数が多くなり、着用者の腕周りに対する窮屈感も大きくなる傾向があると認められる。また、比較例2の結果から、第1角度θ1と第2角度θ2との和が30°を超える場合にも、着圧領域の数が多くなり、着用者の腕周りに対する窮屈感も大きくなる傾向があると認められる。これらに対して、実施例1~実施例6の結果から、第1角度θ1と第2角度θ2との和が10~30°の場合には、着圧領域の数が少なくなり、着用者の腕回りに対する窮屈感が軽減され、更には、シワの発生が抑制される傾向があると認められた。
1:シャツ、10:前身頃、11:上前身頃、111:左上端縁、112:アームホール形成端縁、113:上前身頃側端縁、12:下前身頃、121:右上端縁、122:アームホール形成端縁、123:下前身頃側端縁、20:後身頃、21:上端縁、211:直線部、212:湾曲部、22:アームホール形成端縁、23:後身頃側端縁、24:ダーツ、30:ヨーク、31:前側下端縁、32:後側下端縁、321:直線部、322:湾曲部、33:首回り端縁、34:ヨーク側端縁、35:前方延出領域、36:後方延出領域、40:襟部、50:袖部、51:外袖、511:外袖後端縁、512:外袖前端縁、513:外袖上端縁、514:外袖下端縁、52:内袖、521:内袖後端縁、522:内袖前端縁、523:内袖上端縁、524:内袖下端縁、60:接合部、61:前側ヨーク接合部、62:後側ヨーク接合部、63:袖部接合部、64:後方袖部接合部、
BLf:前身頃バストライン、WLf:前身頃ウエストライン、HLf:前身頃ヒップライン、BLb:後身頃バストライン、WLb:後身頃ウエストライン、HLb:後身頃ヒップライン、BLo:外袖バストライン、WLo:外袖ウエストライン、BLi:内袖バストライン、WLi:内袖ウエストライン、L1:外袖丈線、L2:内袖丈線、VLo:外袖仮想直線、VLi:内袖仮想直線、θ1:第1角度、θ2:第2角度