(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154106
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】焼結鉱の分析方法及び焼結鉱の分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/63 20060101AFI20221005BHJP
【FI】
G01N21/63 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056987
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】辻 典宏
(72)【発明者】
【氏名】相本 道宏
(72)【発明者】
【氏名】夏井 琢哉
(72)【発明者】
【氏名】小林 剛
【テーマコード(参考)】
2G043
【Fターム(参考)】
2G043AA01
2G043BA02
2G043DA05
2G043EA06
2G043JA01
2G043KA09
2G043MA01
2G043NA01
(57)【要約】
【課題】焼結鉱の成分濃度を、レーザ誘起ブレークダウン発光分光分析を用いて精度よく測定すること。
【解決手段】本発明は、搬送設備の搬送面上を搬送される焼結鉱を分析する方法であり、搬送面上の焼結鉱粒子の粒径及び粒径分布を評価する粒径評価工程と、搬送される焼結鉱粒子に対し分析用のレーザ光を照射することで、レーザ誘起ブレークダウン発光分光分析による成分分析を行って、焼結鉱粒子の成分濃度を特定する成分濃度分析工程と、成分濃度分析工程において分析が行われた焼結鉱粒子と、粒径評価工程において粒径が評価された焼結鉱粒子との対応付けを行い、分析が行われた焼結鉱粒子の粒径を特定する粒径特定工程と、分析が行われた複数の前記焼結鉱粒子に対して、個々の焼結鉱粒子の成分濃度と、粒径と、粒径分布と、に基づき、焼結鉱粒子の平均成分濃度を算出する平均成分濃度算出工程と、を有する。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送設備の搬送面上を搬送される焼結鉱を分析する方法であって、
前記搬送面上の前記焼結鉱の粒子を撮影することで、焼結鉱粒子の粒径及び粒径分布を評価する粒径評価工程と、
搬送される前記焼結鉱粒子に対し分析用のレーザ光を照射することで、レーザ誘起ブレークダウン発光分光分析による成分分析を行って、前記焼結鉱粒子の成分濃度を特定する成分濃度分析工程と、
前記成分濃度分析工程において分析が行われた前記焼結鉱粒子と、前記粒径評価工程において粒径が評価された前記焼結鉱粒子との対応付けを行い、前記分析が行われた焼結鉱粒子の粒径を特定する粒径特定工程と、
前記成分濃度分析工程において分析が行われた複数の前記焼結鉱粒子に対して、個々の前記焼結鉱粒子の前記成分濃度と、前記粒径特定工程において特定された前記個々の焼結鉱粒子の前記粒径と、前記粒径評価工程で得られた前記焼結鉱粒子の粒径分布と、に基づき、前記焼結鉱粒子の平均成分濃度を算出する平均成分濃度算出工程と、
を有する、焼結鉱の分析方法。
【請求項2】
前記粒径評価工程と、前記成分濃度分析工程と、の間に、前記搬送面上に位置する前記焼結鉱の高さをレーザ光により測定する高さ測定工程を更に有し、
前記成分濃度分析工程では、前記高さ測定工程により高さの測定された前記焼結鉱粒子を分析対象として、前記レーザ誘起ブレークダウン発光分光分析を行う、請求項1に記載の焼結鉱の成分分析方法。
【請求項3】
前記成分濃度分析工程では、高さの測定された前記焼結鉱粒子を分析対象とするように、レーザ光の照射タイミングが制御されている、請求項2に記載の焼結鉱の分析方法。
【請求項4】
搬送設備の搬送面上を搬送される焼結鉱を分析する装置であって、
前記搬送面上の前記焼結鉱の粒子を撮影し、得られた撮影画像に基づき、搬送される焼結鉱粒子の粒径及び粒径分布を評価する粒径評価ユニットと、
前記粒径評価ユニットの搬送方向下流側に位置し、搬送される前記焼結鉱粒子に対し、分析用のレーザ光を照射する分析用レーザ光源と、
前記分析用レーザ光源から照射されたレーザ光により誘起された発光を分光しながら検出する分光検出部と、
前記分光検出部による検出結果に基づき、前記焼結鉱粒子の成分濃度を分析する成分濃度分析部と、
前記成分濃度の分析が行われた前記焼結鉱粒子と、前記粒径が評価された前記焼結鉱粒子と、の対応付けを行い、前記分析が行われた焼結鉱粒子の粒径を特定する粒径特定部と、
前記成分濃度分析部により分析が行われた複数の前記焼結鉱粒子に対して、個々の前記焼結鉱粒子の前記成分濃度と、当該個々の焼結鉱粒子の前記粒径と、前記焼結鉱粒子の前記粒径分布と、に基づき、前記焼結鉱粒子の平均成分濃度を算出する平均成分濃度算出部と、
を備える、焼結鉱の分析装置。
【請求項5】
前記焼結鉱の搬送方向に沿って、前記粒径評価ユニットと、前記分析用レーザ光源と、の間に位置し、前記搬送面上に位置する前記焼結鉱にレーザ光を照射する測距用レーザ光源を有し、前記焼結鉱の高さを測定する測距用ユニットと、
前記レーザ光源の駆動制御を少なくとも行う制御部と、
を更に備え、
前記制御部は、前記分析用レーザ光源の焦点位置を少なくとも制御し、
前記分析用レーザ光源は、前記測距用レーザ光源からのレーザ光が照射された前記焼結鉱粒子に対して、分析用のレーザ光を照射する、請求項4に記載の焼結鉱の分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結鉱の分析方法及び焼結鉱の分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ベルトコンベア等の搬送設備の搬送面上に位置する物体を、オンライン、かつ、リアルタイムで選別するための技術が各種提案されている。例えば以下の特許文献1には、LIBS(Laser Induced Breakdown Spectroscopy:レーザ誘起ブレークダウン発光分光分析)を用いて、ベルトコンベア上を搬送される破砕スクラップ片等の選別対象物を選別する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鉄鋼業における製銑プロセスでは、高炉操業に際して、高炉に装入される焼結鉱の分析が行われてきた。かかる分析は、例えば数時間ごとに焼結鉱をサンプリングし、得られた焼結鉱の元素組成を、蛍光X線分析法や化学分析法等により測定することが一般的である。このような焼結鉱の成分分析においても、ベルトコンベア等の搬送設備の搬送面上を搬送される焼結鉱を、焼結鉱の採取を行うことなくオンラインで実施できれば、高炉操業のより一層の効率化を図ることが可能になると期待される。
【0005】
焼結鉱のオンライン分析に対し、上記特許文献1に開示されているようなLIBSによる成分分析を適用することについて、本発明者らは、詳細な検討を行った。その結果、以下のようなことが明らかとなった。
【0006】
すなわち、焼結鉱を分析対象とする場合、焼結鉱にレーザ光を照射し、レーザ光の照射によりスパッタされた焼結鉱の表面成分を分析することになる。実際の操業に用いられる焼結鉱の粒径は、5~50mm程度と幅が大きく、粒径の小さな焼結鉱は、アッシュ分が多いために焼結化が不十分となり、破砕したものであると推察される。そのため、レーザ光が照射された焼結鉱の粒径によっては、LIBSにより得られた成分濃度の結果と、焼結鉱全体の成分濃度と、が一致しない場合が生じうることが懸念される。
【0007】
また、焼結鉱の搬送に一般的に用いられるベルトコンベアでは、ベルトの幅方向中央部が下がっており、幅方向からみたときにベルトが湾曲した状態にあることが多い。その結果、搬送される焼結鉱の粒径は、中央部が比較的大きく、端部に向かうにつれて小さくなる。LIBSの測定装置を設置する場合、レーザ光が照射される箇所は、試料が存在しているベルトの何れかの部分に固定されることが予想される。そのため、LIBSにより測定された焼結鉱の成分濃度は、粒径分布が偏った箇所の情報となって、結果的に焼結鉱全体の成分濃度を網羅できていない状況が生じることが懸念される。
【0008】
以上のように、製銑プロセスに用いられる焼結鉱の成分組成をLIBSによりオンライン分析する場合には、従来から存在する技術をそのまま適用すればよいわけではなく、今般新たに見出された、上記のような焼結鉱に特有の懸念点を解消しなければならないことが判明した。
【0009】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、焼結鉱の成分濃度を、LIBSを用いて精度よく測定することが可能な、焼結鉱の分析方法及び焼結鉱の分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明者らが鋭意検討した結果、焼結鉱の粒径分布を評価する方法と、LIBSによる焼結鉱の成分分析方法と、を組み合わせて、焼結鉱の成分分析結果と粒径分布とを対応付けることができれば、成分分析結果の精度をより向上させることが可能となるのではないかとの着想を得るに至った。
かかる着想に基づき完成された本発明の要旨は、以下の通りである。
【0011】
(1)搬送設備の搬送面上を搬送される焼結鉱を分析する方法であって、前記搬送面上の前記焼結鉱の粒子を撮影することで、焼結鉱粒子の粒径及び粒径分布を評価する粒径評価工程と、搬送される前記焼結鉱粒子に対し分析用のレーザ光を照射することで、レーザ誘起ブレークダウン発光分光分析による成分分析を行って、前記焼結鉱粒子の成分濃度を特定する成分濃度分析工程と、前記成分濃度分析工程において分析が行われた前記焼結鉱粒子と、前記粒径評価工程において粒径が評価された前記焼結鉱粒子との対応付けを行い、前記分析が行われた焼結鉱粒子の粒径を特定する粒径特定工程と、前記成分濃度分析工程において分析が行われた複数の前記焼結鉱粒子に対して、個々の前記焼結鉱粒子の前記成分濃度と、前記粒径特定工程において特定された前記個々の焼結鉱粒子の前記粒径と、前記粒径評価工程で得られた前記焼結鉱粒子の粒径分布と、に基づき、前記焼結鉱粒子の平均成分濃度を算出する平均成分濃度算出工程と、を有する、焼結鉱の分析方法。
(2)前記粒径評価工程と、前記成分濃度分析工程と、の間に、前記搬送面上に位置する前記焼結鉱の高さをレーザ光により測定する高さ測定工程を更に有し、前記成分濃度分析工程では、前記高さ測定工程により高さの測定された前記焼結鉱粒子を分析対象として、前記レーザ誘起ブレークダウン発光分光分析を行う、(1)に記載の焼結鉱の成分分析方法。
(3)前記成分濃度分析工程では、高さの測定された前記焼結鉱粒子を分析対象とするように、レーザ光の照射タイミングが制御されている、(2)に記載の焼結鉱の分析方法。
(4)搬送設備の搬送面上を搬送される焼結鉱を分析する装置であって、前記搬送面上の前記焼結鉱の粒子を撮影し、得られた撮影画像に基づき、搬送される焼結鉱粒子の粒径及び粒径分布を評価する粒径評価ユニットと、前記粒径評価ユニットの搬送方向下流側に位置し、搬送される前記焼結鉱粒子に対し、分析用のレーザ光を照射する分析用レーザ光源と、前記分析用レーザ光源から照射されたレーザ光により誘起された発光を分光しながら検出する分光検出部と、前記分光検出部による検出結果に基づき、前記焼結鉱粒子の成分濃度を分析する成分濃度分析部と、前記成分濃度の分析が行われた前記焼結鉱粒子と、前記粒径が評価された前記焼結鉱粒子と、の対応付けを行い、前記分析が行われた焼結鉱粒子の粒径を特定する粒径特定部と、前記成分濃度分析部により分析が行われた複数の前記焼結鉱粒子に対して、個々の前記焼結鉱粒子の前記成分濃度と、当該個々の焼結鉱粒子の前記粒径と、前記焼結鉱粒子の前記粒径分布と、に基づき、前記焼結鉱粒子の平均成分濃度を算出する平均成分濃度算出部と、を備える、焼結鉱の分析装置。
(5)前記焼結鉱の搬送方向に沿って、前記粒径評価ユニットと、前記分析用レーザ光源と、の間に位置し、前記搬送面上に位置する前記焼結鉱にレーザ光を照射する測距用レーザ光源を有し、前記焼結鉱の高さを測定する測距用ユニットと、前記レーザ光源の駆動制御を少なくとも行う制御部と、を更に備え、前記制御部は、前記分析用レーザ光源の焦点位置を少なくとも制御し、前記分析用レーザ光源は、前記測距用レーザ光源からのレーザ光が照射された前記焼結鉱粒子に対して、分析用のレーザ光を照射する、(4)に記載の焼結鉱の分析装置。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように本発明によれば、焼結鉱の成分濃度を、LIBSを用いて精度よく測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】本発明の実施形態に係る焼結鉱の分析方法の流れの一例を示した流れ図である。
【
図1B】同実施形態に係る焼結鉱の分析方法の流れの一例を示した流れ図である。
【
図2】同実施形態に係る焼結鉱の分析装置の構成の一例を模式的に示した説明図である。
【
図3】同実施形態に係る焼結鉱の分析装置が有する演算処理装置の構成の一例を示したブロック図である。
【
図4】同実施形態に係る演算処理装置が有する演算処理部の構成の一例を示したブロック図である。
【
図5】同実施形態に係る演算処理装置のハードウェア構成の一例を示したブロック図である。
【
図6】実施例で得られた結果を示したグラフ図である。
【
図7】実施例で得られた結果を示したグラフ図である。
【
図8】実施例で得られた結果を示したグラフ図である。
【
図9】実施例で得られた結果を示したグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0015】
(焼結鉱の分析方法の流れについて)
以下では、
図1A及び
図1Bを参照しながら、本発明の実施形態に係る焼結鉱の分析方法(以下、「分析方法」と略記することがある。)の流れについて、説明する。
図1Aに示したように、本実施形態に係る分析方法は、粒径評価工程S11と、成分濃度分析工程S15と、粒径特定工程S17と、平均成分濃度算出工程S19と、を有している。また、
図1Bに示したように、本実施形態に係る分析方法は、粒径評価工程S11と、成分濃度分析工程S15と、の間に、更に、高さ測定工程S13を有していることが好ましい。以下、これらの工程について、詳細に説明する。
【0016】
ここで、本実施形態に係る分析方法で着目する焼結鉱は、例えば、ベルトコンベア等の搬送設備の搬送面上に位置し、かかる搬送設備により搬送されている焼結鉱である。ここで、実際の操業に用いられる焼結鉱の粒径は、5~50mm程度と幅が大きく、粒径の小さいものと大きいものとは、成分組成にも違いが存在する。すなわち、分析対象である焼結鉱自体が、粒径及び成分組成に偏りが存在していると言える。また、焼結鉱の搬送に一般的に用いられるベルトコンベアでは、ベルトの幅方向において、焼結鉱が有する粒径の分布状態に、偏りが存在する(すなわち、中央部に比較的粒径の大きなものが存在し、端部に向かうにつれて粒径が小さいものの割合が増える。)。このように、本実施形態に係る分析方法で着目する、搬送されている焼結鉱には、焼結鉱自体が有する粒径及び成分組成の偏りと、搬送設備に起因する粒径分布の偏りという、二種類の偏りが生じている。
【0017】
上記のような状況を踏まえ、本実施形態に係る分析方法では、搬送されている焼結鉱の粒径及び粒径分布を評価する粒径評価工程S11をまず実施する。この粒径評価工程S11は、ベルトコンベア等の搬送設備の搬送面上に位置する焼結鉱を、各種のカメラ等の撮影装置により撮影し、得られた焼結鉱の撮影画像を画像解析することで、焼結鉱の粒径及び粒径分布を評価する。
【0018】
より詳細には、撮影装置が有する各種のレンズの焦点距離に代表される撮影条件と、撮影装置の設置条件(例えば、搬送設備の搬送面までの大まかな距離等)を事前に把握しておくことで、撮影画像中の焼結鉱粒子の大きさから、実際の焼結鉱粒子の大きさ(粒径)を特定することができる。
【0019】
また、撮影装置が、搬送設備のある幅方向位置に固定されていたとしても、撮影位置を通過する焼結鉱粒子を、統計的に有意な期間(連続的又は間欠的に)撮影することで、様々な粒径を有する焼結鉱粒子が撮影位置を通過すると考えられる。これにより、統計的に有意な撮影期間に得られる複数の撮影画像の視野中には、搬送されている焼結鉱粒子全体の粒径分布とみなすことができる程度の粒径分布が得られるものと期待される。
【0020】
ここで、上記の統計的に有意な撮影期間については、焼結鉱の搬送速度や、時間当たりの搬送量等を考慮して決定すればよい。このような撮影期間としては、例えば2分等の比較的短い時間とすればよい。
【0021】
また、粒径評価工程S11の後段に行われることが好ましい高さ測定工程S13は、ベルトコンベア等の搬送設備の搬送面上に位置する焼結鉱の高さ(搬送面からの高さ)を、レーザ光により測定する工程である。これにより、分析対象とする焼結鉱の高さを特定することが可能となり、後段の成分濃度分析工程S15において、分析に用いるレーザ光を着目する焼結鉱粒子の表面により確実に集光することが可能となる。その結果、分析対象となった焼結鉱粒子の成分濃度を、LIBSにより、精度よく測定することが可能となる。
【0022】
成分濃度分析工程S15は、分析用のレーザ光を照射することで、LIBSによる成分分析を行う工程である。LIBSによる成分分析を実施することで、着目する焼結鉱粒子の成分濃度を、精度よく測定することが可能となる。このような成分濃度分析工程S15は、分析用のレーザ光が照射されるタイミングで分析用のレーザ光の照射位置を通過した焼結鉱粒子に対して、実施される。その結果、様々な粒径を有する焼結鉱粒子に対して、LIBSによる成分分析が実施されて、様々な粒径を有する焼結鉱粒子の成分濃度が特定されるようになる。また、焼結鉱の平均成分分析において、LIBSにより分析する焼結鉱粒子の個数は多いほど精度が向上する。
【0023】
粒径特定工程S17は、成分濃度分析工程S15において分析が行われた焼結鉱粒子と、粒径評価工程S11において粒径が評価された焼結鉱粒子との対応付けを行い、分析が行われた焼結鉱粒子の粒径を特定する。これにより、どのような粒径を有する焼結鉱粒子がどのような成分濃度を有しているのか、という知見を得ることができる。
【0024】
平均成分濃度算出工程S19は、成分濃度分析工程S15において分析が行われた複数の焼結鉱粒子に対して、個々の焼結鉱粒子の成分濃度と、粒径特定工程S11において特定された個々の焼結鉱粒子の粒径と、粒径評価工程S11で得られた焼結鉱粒子の粒径分布と、に基づき、焼結鉱粒子の平均成分濃度を算出する。
【0025】
より詳細には、各粒径における焼結鉱粒子の成分濃度と、粒径分布から特定される各粒径の存在率と、を掛け合わせることで、焼結鉱粒子の平均成分濃度を算出することが可能となる。また、粒径分布を複数の階級(クラス)に分類して各階級の平均成分濃度を算出しておき、かかる平均成分濃度と、各階級に属する焼結鉱粒子の存在率と、から、焼結鉱粒子の全体としての平均成分濃度を算出してもよい。この際、階級(クラス)は最低でも2階級以上とすることで、階級分けをしない場合に比べて、算出される平均成分濃度の精度が向上する。また、階級数を増やすと、精度が向上する方向となり好ましい。ただし、増やし過ぎると、測定値の誤差や焼結鉱粒子毎の成分バラつきの影響によって、精度の向上が図れないこともある。よって、階級数は、2階級の場合よりも精度が向上する範囲内で、適宜設定することが好ましい。また、分析対象とする焼結鉱と粒径分布、平均成分が近い焼結鉱を本発明で事前測定し、化学分析と分析結果が近くなる階級数を選択するのが、より好ましい。更にまた、各階級における粒径範囲についても、適宜設定することができるが、分析対象とする焼結鉱と粒径分布、平均成分が近い焼結鉱を本発明で事前測定し、化学分析と分析結果が近くなる各階級における粒径範囲を選択するのが、より好ましい。
【0026】
このようにして平均成分濃度を算出することで、搬送されている焼結鉱粒子の成分濃度を、LIBSを用いて精度よく測定することが可能となる。
【0027】
以下では、上記のような各工程について、焼結鉱の分析方法に用いる分析装置を説明しながら、より詳細に説明する。
【0028】
(焼結鉱の成分分析装置について)
以下では、
図2~
図4を参照しながら、本実施形態に係る焼結鉱の分析方法に用いられる分析装置について、詳細に説明する。なお、以下では、本実施形態に係る焼結鉱の分析方法が高さ測定工程を有する場合に利用可能な分析装置に着目する。
【0029】
<焼結鉱の分析装置の全体構成>
まず、
図2を参照しながら、本実施形態に係る分析方法に利用可能な、焼結鉱の分析装置(以下、「分析装置」と略記することがある。)の全体構成について説明する。
図2は、本実施形態に係る焼結鉱の分析装置の構成の一例を模式的に示した説明図である。なお、以下の説明では、便宜的に、
図2に示したような座標系を参照しながら説明を行うことがある。
【0030】
図2に模式的に示したように、本実施形態に係る分析装置1は、ベルトコンベア等の搬送設備の搬送面上に存在する焼結鉱を分析対象とする装置である。ここで、本実施形態において、分析対象である焼結鉱は、所定の搬送速度(例えば、5~10m/s程度)で所定の搬送方向(
図2の場合、Z軸正方向)に搬送されているものとする。なお、
図2では、焼結鉱を便宜的に球状の粒子として図示しているが、分析対象とする焼結鉱の形状は特に規定されるものではなく、任意の形状を有している。
【0031】
本実施形態に係る分析装置1は、粒径評価ユニット10と、分析用レーザ光源30と、分光検出部40と、演算処理装置50と、を少なくとも有している。また、本実施形態に係る分析装置1は、上記構成に加え、更に、測距用ユニット20を有していることが好ましい。
【0032】
[粒径評価ユニット10]
本実施形態に係る粒径評価ユニット10は、先だって説明したような粒径評価工程S11のために設けられるユニットである。この粒径評価ユニット10は、各種のレンズが設けられたデジタルカメラ等に代表される撮影装置(図示せず。)と、得られた撮影画像から、撮影画像中に写る物体(本実施形態の場合、焼結鉱粒子)の粒径を評価する演算処理ユニット(図示せず。)と、を有している。
【0033】
粒径評価ユニット10は、例えば演算処理装置50による制御のもとで、所定のタイミングで搬送されている焼結鉱粒子を撮影する。その後、得られた撮影画像から、撮影画像中に存在する焼結鉱粒子それぞれの粒径と、撮影画像中に存在する焼結鉱粒子の粒径分布と、を特定する。その後、得られた粒径に関するデータ(すなわち、取得した撮影画像における、各焼結鉱粒子の粒径と粒径分布に関するデータ)を、演算処理装置50に出力する。
【0034】
このような粒径評価ユニット10は、市販されている各種のデジタルカメラ等の撮影装置と、各種のコンピュータに代表される演算処理ユニットと、を用いて自身で構成したものを用いてもよいし、MBVシステム社製3D Particle Measurement(3DPM)システム等に代表される、市販の粒径評価ユニットを用いてもよい。
【0035】
ここで、粒径評価ユニット10における撮影条件(焦点距離、露出時間、撮影間隔等)については、特に限定されるものではなく、搬送面までの大まかな距離や、周囲の空間の明るさや、焼結鉱の搬送速度等)に応じて、撮影視野内に存在する焼結鉱粒子が合焦状態となるように適宜設定すればよい。
【0036】
[測距用ユニット20]
測距用ユニット20は、先だって説明したような高さ測定工程S13のために設けられるユニットであり、搬送方向に沿って、粒径評価ユニット10と、分析用レーザ光源30との間に設けられる。この測距用ユニット20は、搬送面上に位置する焼結鉱にレーザ光を照射する測距用レーザ光源を有している。測距用ユニット20は、例えば演算処理装置50による制御のもとで、測距用レーザ光源から測距用レーザ光を照射して、焼結鉱の高さを測定する。
【0037】
かかる測距用ユニット20は、焼結鉱の搬送面からの高さを直接測定するものであってもよいし、レーザ光の射出面と焼結鉱との間の距離を測定し、ユニットの設置位置に関する幾何学的な関係から焼結鉱の高さを特定するものであってもよい。
【0038】
なお、測距用ユニット20が焼結鉱の高さを測定する具体的な方式については、特に限定されるものではなく、公知の各種の方式を適宜採用することが可能である。また、測距用ユニット20として、市販の各種のレーザ距離計を用いることも可能である。かかるレーザ距離計として、例えば、小野測器社製LV-8600を挙げることができる。
【0039】
なお、測距用ユニット20を設ける場合、測距用ユニット20により測定された焼結鉱の高さを利用して、後段の分析用レーザ光源30から照射される分析用レーザ光の焦点を制御する。そのため、搬送面上における測距用レーザ光の照射位置(詳細には、
図2のX軸方向の座標)と、分析用レーザ光の照射位置(
図2のX軸方向の座標)とが一致するように、測距用レーザ光及び分析用レーザ光の照射位置を調整することが好ましい。
【0040】
[分析用レーザ光源30]
分析用レーザ光源30は、先だって説明したような成分濃度分析工程S15のために設けられるレーザ光源である。この分析用レーザ光源30は、例えば演算処理装置50による制御のもとで、粒径評価ユニット10によって粒径が評価された領域の少なくとも一部(測距用ユニット20が設けられる場合には、粒径評価ユニット10によって粒径が評価され、かつ、測距用レーザ光源からのレーザ光が照射された部位の少なくとも一部)に対し、分析用のレーザ光を照射する。これにより、分析用レーザ光が照射された焼結鉱粒子の表面がスパッタされてガス化し、かかるガスに由来する発光が生じる。LIBSでは、かかる発光を検出することで、焼結鉱粒子の成分濃度についての分析が行われる。特に、LIBSの場合、分析用レーザ光によって発生したガスがプラズマ状態となり、かかるプラズマから発生する光を分析することで、焼結鉱粒子の成分濃度を特定することが可能となる。
【0041】
ここで、分析用レーザ光源30には、分析用レーザ光の光路長や焦点位置を調整可能なように、各種のレンズやミラー等の光学素子(図示せず。)が設けられていることが好ましい。
【0042】
また、
図2では、分析用レーザ光源30が、搬送面の上方に設けられる場合を例に挙げて図示しているが、分析用レーザ光源30の設置位置は、
図2に示した例に限定されるものではなく、粒径評価ユニット10や測距用レーザ光源よりも搬送方向下流側に、分析用レーザ光を照射可能な位置であれば、任意の位置に設置することが可能である。
【0043】
分析用レーザ光源30として用いられる具体的なレーザ光源の種類や分析用レーザ光の波長については、特に限定されるものではなく、LIBSに利用可能なものであれば、任意のものを利用することが可能である。このようなレーザ光源として、例えば、ルビーレーザ、Tiサファイヤレーザ、YAGレーザ等の固体レーザや、CO2ガスレーザ、Arイオンレーザ、He-Neイオンレーザ、エキシマレーザ等の気体レーザや、各種の半導体レーザや、ファイバレーザ等を挙げることができる。また、分析用レーザ光源30は、CWレーザ光源であってもよいが、焼結鉱に由来する成分からの発光をより確実に生じさせるために、パルスレーザ光源を用いることが好ましい。このようなパルスレーザ光源として、例えばYAGレーザを挙げることができる。
【0044】
また、分析用レーザ光源30の照射面積、繰り返し周波数、パルス幅、パルスエネルギー、集光条件等については、分析対象とする焼結鉱の大まかな成分組成や、搬送速度等に応じて適宜設定すればよいが、照射面積は100μm~1mmφ、繰り返し周波数は10~100Hz、パルス幅は1~20nsが好ましい。パルスエネルギーについては、1mJ以上とすることが好ましく、10mJ以上であることがより好ましい。また、例えば、焦点距離500~1000mmのレンズ等の集光光学素子により、分析対象の分析点において1~10GW/cm2のレーザパワー密度が実現されることが好ましい。
【0045】
ここで、本実施形態に係る分析装置1において、焼結鉱粒子の粒径と、成分濃度と、の対応付けを行うことが重要であることから、粒径が評価された焼結鉱粒子を、成分濃度の分析対象とすることが重要となる。そのため、本実施形態に係る分析装置1では、粒径が評価された焼結鉱粒子に対して、LIBSのための分析用レーザ光が照射されるように(更には、粒径が評価され、測距用レーザ光が照射された焼結鉱粒子に対して、分析用レーザ光が照射されるように)、粒径評価ユニット10、測距用レーザ光源、分析用レーザ光源30の配置位置が設定され、これら機器の動作を同期させることが重要である。これにより、後段の粒径特定工程S17において、粒径評価のために用いられた撮影画像の中に存在するどの焼結鉱粒子について、LIBSが行われたかを、容易に特定することが可能となり、粒径と成分濃度との対応付けを容易かつ確実に実施することが可能となる。
【0046】
[分光検出部40]
本実施形態に係る分光検出部40は、演算処理装置50による制御のもとで、分析用レーザ光源30から照射された分析用レーザ光によって発生した光を、分光しながら検出する。これにより、分析用レーザ光に起因する発光が、どのような波長の光をどの程度の強さで含んでいるのか、を検出することが可能となり、各波長における光の強度を電気信号化することができる。
【0047】
このような分光検出部40については、特に限定されるものではなく、着目する発光の波長範囲や強度に応じて、公知の各種の分光器等を適宜選択すればよい。このような分光器として、例えば、Avantes社製AvanSpec-ULS2048CL-EVO等を挙げることができる。
【0048】
[演算処理装置50]
本実施形態に係る演算処理装置50は、粒径評価ユニット10、測距用ユニット20、分析用レーザ光源30、及び、分光検出部40の動作状態を統括的に制御する。また、演算処理装置50は、分光検出部40から出力された、焼結鉱から発生した発光に関する測定データ(各波長の発光強度に関するデータ)を取得し、かかる測定データに基づき、焼結鉱粒子の成分濃度を、LIBSにより分析する。その上で、演算処理装置50は、粒径に関するデータに基づき、成分濃度が特定された焼結鉱粒子の粒径を特定することで、焼結鉱粒子の粒径と成分濃度との対応付けを行う。このような対応付けが行われることで、演算処理装置50は、粒径分布に関する知見と、かかる対応付けと、を利用して、焼結鉱粒子の平均成分濃度を算出することができる。これにより、本実施形態に係る分析装置1の使用者は、着目する焼結鉱の平均成分濃度や粒径分布を把握することが可能となる。
【0049】
ここで、演算処理装置50の詳細な構成については、以下で改めて説明する。
【0050】
図2に示したような、本実施形態に係る分析装置1は、ベルトコンベア等の搬送設備の幅方向(
図2におけるX軸方向)の略中央部だけに設けられてもよいし、幅方向の複数の位置に設けられてもよい。本実施形態に係る分析装置1を、搬送設備の幅方向の複数の位置に設け、各分析装置1で得られた知見を統合することにより、搬送されている焼結鉱の粒度分布をより正確に特定することが可能となる。その結果、搬送されている焼結鉱の平均成分濃度をより正確に算出することが可能となる。
【0051】
<演算処理装置50の詳細な構成について>
続いて、
図3及び
図4を参照しながら、本実施形態に係る分析装置1が備える演算処理装置50の詳細な構成について説明する。
図3は、本実施形態に係る焼結鉱の成分分析装置が有する演算処理装置の構成の一例を示したブロック図であり、
図4は、本実施形態に係る演算処理装置が有する演算処理部の構成の一例を示したブロック図である。
【0052】
図3に示したように、本実施形態に係る演算処理装置50は、レーザ光源の駆動制御を少なくとも行う制御部の一例としての測定制御部501と、演算処理部503と、結果出力部505と、表示制御部507と、記憶部509と、を主に有している。
【0053】
測定制御部501は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等により実現される。測定制御部501は、粒径評価ユニット10、測距用ユニット20、分析用レーザ光源30、及び、分光検出部40の動作状態を、統括的に制御する。
【0054】
これにより、測定制御部501は、粒径評価ユニット10の撮影条件等、並びに、測距用レーザ光源(図示せず。)及び分析用レーザ光源30の各レーザ光源から照射されるレーザ光の照射条件(例えば、照射タイミング、レーザパワー、焦点制御等)を、所望の状態とすることができる。また、測定制御部501は、測距用ユニット20の全体的な動作状態を制御して、着目する焼結鉱の高さを特定することが可能となる。その結果、測定制御部501は、粒径評価ユニット10及び各レーザ光源の動作を同期させたり、測距ユニット20による焼結鉱の高さの測定結果に基づいて、分析用レーザ光の焦点位置や照射位置を所望の状態に調整したりすることが可能となる。
【0055】
また、測定制御部501は、分光検出部40の動作状態(例えば、検出開始/終了タイミングや、露光時間等)を所望の状態とすることができる。これにより、着目する焼結鉱からの発光を確実に検出することが可能となる。
【0056】
演算処理部503は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。演算処理部503は、LIBSの手法を用いて、分光検出部40から出力された測定データに基づき、成分濃度分析処理を実施する。また、演算処理部503は、粒径評価ユニット10から出力された粒径に関するデータに基づき、成分濃度と粒径との対応付けを実施し、かかる対応付けを利用して、焼結鉱の平均成分濃度を算出する。これにより、分析装置1のユーザは、搬送されている焼結鉱の平均成分濃度や粒径分布を把握することが可能となる。
【0057】
かかる演算処理部503の詳細な構成については、以下で改めて説明する。
【0058】
結果出力部505は、例えば、CPU、ROM、RAM、出力装置、通信装置等により実現される。結果出力部505は、演算処理部503から出力された、着目する焼結体の平均成分濃度及び粒径分布に関する情報を、分析装置1のユーザに出力する。具体的には、結果出力部505は、演算処理部503から出力された平均成分濃度の分析結果に関するデータ及び粒径分布に関するデータを、当該データが生成された日時等に関する時刻データと関連付けて、各種サーバや制御装置に出力したり、プリンタ等の出力装置を利用して紙媒体として出力したりする。また、結果出力部505は、分析結果に関するデータ及び粒径分布に関するデータを、外部に設けられたコンピュータ等の各種の情報処理装置や各種の記録媒体に出力してもよい。
【0059】
また、結果出力部505は、演算処理部503による分析結果に関するデータ及び粒径分布に関するデータを、後述する表示制御部507に出力することができる。
【0060】
表示制御部507は、例えば、CPU、ROM、RAM、出力装置、通信装置等により実現される。表示制御部507は、結果出力部505から出力された分析結果や粒径分布を、分析装置1が備えるディスプレイ等の出力装置や分析装置1の外部に設けられた出力装置等に表示する際の表示制御を行う。これにより、分析装置1のユーザは、着目する焼結鉱の平均成分濃度についての分析結果及び粒径分布に関する評価結果を、その場で把握することが可能となる。
【0061】
記憶部509は、成分分析装置1が備える記憶装置の一例であり、例えば、ROM、RAM、ストレージ装置等により実現される。この記憶部509には、本実施形態に係る分析装置1が何らかの処理を行う際に保存する必要が生じた様々なパラメータや処理の途中経過(例えば、事前に格納されている各種のデータやデータベース、及び、プログラム等)が、適宜記録される。この記憶部509は、測定制御部501、演算処理部503、結果出力部505、表示制御部507等が、自由にデータのリード/ライト処理を行うことが可能である。
【0062】
[演算処理部503の構成について]
次に、
図4を参照しながら、演算処理装置50が有する演算処理部503の構成について、詳細に説明する。
本実施形態に係る演算処理部503は、
図4に示したように、データ取得部511と、成分濃度分析部513と、粒径特定部515と、平均成分濃度算出部517と、を有する。
【0063】
データ取得部511は、例えば、CPU、ROM、RAM、入力装置、通信装置等により実現される。データ取得部511は、粒径評価ユニット10から出力された、焼結鉱粒子の粒径に関するデータと、分光検出部40から出力された、分析用レーザ光の照射に起因する発光の分光測定データと、を取得する。
【0064】
データ取得部511が取得する粒径に関するデータは、評価のもととなった撮影画像を識別するための識別データと、かかる撮影画像中に存在する焼結鉱粒子の粒径に関するデータ(例えば、撮影画像のどのような位置にどのような粒径を有する焼結鉱粒子が存在するのかを示したデータ)と、が関連付けられたデータである。また、データ取得部511が取得する測定データは、着目している波長帯域について、各波長における信号強度(発光強度)がいくつであるかを示したデータ(換言すれば、発光のスペクトルに関するデータ)と、当該データを識別するための識別データ(例えば、当該データが得られた時刻等に関するデータ)と、が関連付けられたデータである。
【0065】
データ取得部511は、かかる測定データを取得すると、取得した測定データを、後述する成分濃度分析部513へと出力する。また、データ取得部511は、かかる粒径に関するデータを取得すると、取得した粒径に関するデータを、後述する粒径特定部515へと出力する。なお、データ取得部511は、取得したこれらデータを、当該データを取得した日時に関する時刻情報と関連付けた上で、履歴情報として記憶部509に格納してもよい。
【0066】
成分濃度分析部513は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。成分濃度分析部513は、分光検出部40による検出結果(すなわち、測定データ)に基づき、LIBSによる焼結鉱の成分分析を行う。具体的には、成分濃度分析部513は、測定データを参照して、どの波長にどの程度の強度の光が検出されたのかを特定する。その上で、成分濃度分析部513は、記憶部509等に格納されているデータベースを参照して、着目する波長の光が、焼結鉱のどのような成分に由来するものであるかを特定する。これにより、着目する焼結鉱に含有される成分を特定することができる。
【0067】
また、成分濃度分析部513は、得られた測定データに含まれる発光強度に関するデータから、特定された成分の濃度を特定する。かかる濃度は、上記のようにして特定された各成分の発光強度から、相対的な含有量として算出されたものであってもよい。また、焼結鉱に多く含まれる成分(例えば、Fe2O3、CaCO3、AlOOH、SiO2等)について、標準試薬を用いて、発光強度と濃度の関係を示す検量線を事前に作成しておき、得られた発光強度から各成分の濃度を算出してもよい。
【0068】
成分濃度分析部513は、上記のようにして焼結鉱に含有されている具体的な成分とその濃度を特定すると、得られた結果を、分析結果として結果出力部505へと出力する。また、成分濃度分析部513は、取得した分析結果に関するデータを、当該データを取得した日時に関する時刻情報と関連付けた上で、履歴情報として記憶部509に格納してもよい。
【0069】
粒径特定部515は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。粒径特定部515は、成分濃度の分析が行われた焼結鉱粒子と、粒径が評価された焼結鉱粒子と、の対応付けを行い、分析が行われた焼結鉱粒子の粒径を特定する。本実施形態に係る分析装置1では、粒径評価ユニット10の動作と、分析用レーザ光源30及び分光検出部40の動作と、が測定制御部501によって制御されて互いの動作の同期がとられている。これにより、粒径評価ユニット10によって粒径が評価された焼結鉱粒子の少なくとも1つが、搬送の過程で分析用レーザ光の照射を受けるようになっている。このような同期により、撮影画像のいずれの画素位置が分析用レーザ光の照射位置となるかを事前に把握しておくことができる。そのため、粒径特定部515は、着目する粒径に関するデータにおいて、どの焼結鉱粒子がLIBSの分析対象となったのかを容易に把握することが可能となる。その結果、粒径特定部515は、分析が行われた焼結鉱粒子の粒径を特定することができる。
【0070】
粒径特定部515は、このようにして特定した、随時入力される粒径に関するデータに基づき、各データにおいてLIBSの対象となっている焼結鉱粒子の粒径を特定すると、得られた特定結果を後段の平均成分濃度算出部517に随時出力する。また、粒径特定部515は、特定した粒径に関するデータを、当該データを取得した日時に関する時刻情報と関連付けた上で、履歴情報として記憶部509に格納してもよい。
【0071】
平均成分濃度算出部517は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。平均成分濃度算出部517は、成分濃度分析部513により分析が行われた複数の焼結鉱粒子に対して、個々の焼結鉱粒子の成分濃度と、粒径特定部515により特定された、個々の焼結鉱粒子の粒径と、焼結鉱粒子の粒径分布と、に基づき、焼結鉱粒子の平均成分濃度を算出する。
【0072】
成分濃度算出部513による成分濃度の分析結果と、粒径特定部515による粒径の特定結果と、を対応付けることで、どのような粒径を有している焼結鉱粒子がどのような成分濃度となっているかという知見を得ることができる。また、粒径評価ユニット10により、搬送されている焼結鉱の全体の粒度分布も把握できることから、得られた知見と粒度分布とを更に組み合わせることで、焼結鉱粒子の平均成分濃度を算出することができる。
【0073】
例えば、各粒径における焼結鉱粒子の成分濃度と、粒径分布から特定される各粒径の存在率と、を掛け合わせることで、焼結鉱粒子の平均成分濃度を算出することが可能となる。また、粒径分布を複数の階級(例えば、粒径Amm未満のクラス、Amm以上Bmm未満のクラス・・・等)に分類して各階級の平均成分濃度を算出しておき、かかる平均成分濃度と、各階級に属する焼結鉱粒子の存在率と、から、焼結鉱粒子の全体としての平均成分濃度を算出してもよい。
【0074】
平均成分濃度算出部517は、例えば上記のようにして搬送されている焼結鉱の平均成分濃度を算出すると、得られた算出結果を、結果出力部505へと出力する。また、平均成分濃度算出部517は、取得した分析結果に関するデータを、当該データを取得した日時に関する時刻情報と関連付けた上で、履歴情報として記憶部509に格納してもよい。
【0075】
以上、
図3及び
図4を参照しながら、本実施形態に係る演算処理装置50の構成の一例について、詳細に説明した。
【0076】
以上、本実施形態に係る演算処理装置50の機能の一例を示した。上記の各構成要素は、汎用的な部材や回路を用いて構成されていてもよいし、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されていてもよい。また、各構成要素の機能を、CPU等が全て行ってもよい。従って、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて、適宜、利用する構成を変更することが可能である。
【0077】
なお、上述のような本実施形態に係る演算処理装置の各機能を実現するためのコンピュータプログラムを作製し、パーソナルコンピュータ等に実装することが可能である。また、このようなコンピュータプログラムが格納された、コンピュータで読み取り可能な記録媒体も提供することができる。記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリなどである。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信してもよい。
【0078】
(演算処理装置50のハードウェア構成について)
次に、
図5を参照しながら、本発明の実施形態に係る演算処理装置50のハードウェア構成について、詳細に説明する。
図5は、本発明の実施形態に係る演算処理装置50のハードウェア構成を説明するためのブロック図である。
【0079】
演算処理装置50は、主に、CPU901と、ROM903と、RAM905と、を備える。また、演算処理装置50は、更に、バス907と、入力装置909と、出力装置911と、ストレージ装置913と、ドライブ915と、接続ポート917と、通信装置919とを備える。
【0080】
CPU901は、中心的な処理装置及び制御装置として機能し、ROM903、RAM905、ストレージ装置913、又はリムーバブル記録媒体921に記録された各種プログラムに従って、演算処理装置50内の動作全般又はその一部を制御する。ROM903は、CPU901が使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する。RAM905は、CPU901が使用するプログラムや、プログラムの実行において適宜変化するパラメータ等を一次記憶する。これらはCPUバス等の内部バスにより構成されるバス907により相互に接続されている。
【0081】
バス907は、ブリッジを介して、PCI(Peripheral Component Interconnect/Interface)バスなどの外部バスに接続されている。
【0082】
入力装置909は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、スイッチ及びレバーなどユーザが操作する操作手段である。また、入力装置909は、例えば、赤外線やその他の電波を利用したリモートコントロール手段(いわゆる、リモコン)であってもよいし、演算処理装置50の操作に対応したPDA等の外部接続機器923であってもよい。更に、入力装置909は、例えば、上記の操作手段を用いてユーザにより入力された情報に基づいて入力信号を生成し、CPU901に出力する入力制御回路などから構成されている。ユーザは、この入力装置909を操作することにより、演算処理装置50に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりすることができる。
【0083】
出力装置911は、取得した情報をユーザに対して視覚的又は聴覚的に通知することが可能な装置で構成される。このような装置として、CRTディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置、プラズマディスプレイ装置、ELディスプレイ装置及びランプなどの表示装置や、スピーカ及びヘッドホンなどの音声出力装置や、プリンタ装置、携帯電話、ファクシミリなどがある。出力装置911は、例えば、演算処理装置50が行った各種処理により得られた結果を出力する。具体的には、表示装置は、演算処理装置50が行った各種処理により得られた結果を、テキスト又はイメージで表示する。他方、音声出力装置は、再生された音声データや音響データ等からなるオーディオ信号をアナログ信号に変換して出力する。
【0084】
ストレージ装置913は、演算処理装置50の記憶部の一例として構成されたデータ格納用の装置である。ストレージ装置913は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)等の磁気記憶デバイス、半導体記憶デバイス、光記憶デバイス、又は光磁気記憶デバイス等により構成される。このストレージ装置913は、CPU901が実行するプログラムや各種データ、及び外部から取得した各種のデータなどを格納する。
【0085】
ドライブ915は、記録媒体用リーダライタであり、演算処理装置50に内蔵、あるいは外付けされる。ドライブ915は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、又は半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体921に記録されている情報を読み出して、RAM905に出力する。また、ドライブ915は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、又は半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体921に記録を書き込むことも可能である。リムーバブル記録媒体921は、例えば、CDメディア、DVDメディア、Blu-ray(登録商標)メディア等である。また、リムーバブル記録媒体921は、コンパクトフラッシュ(登録商標)(CompactFlash:CF)、フラッシュメモリ、又は、SDメモリカード(Secure Digital memory card)等であってもよい。また、リムーバブル記録媒体921は、例えば、非接触型ICチップを搭載したICカード(Integrated Circuit card)又は電子機器等であってもよい。
【0086】
接続ポート917は、機器を演算処理装置50に直接接続するためのポートである。接続ポート917の一例として、USB(Universal Serial Bus)ポート、IEEE1394ポート、SCSI(Small Computer System Interface)ポート、RS-232Cポート、HDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface)ポート等がある。この接続ポート917に外部接続機器923を接続することで、演算処理装置50は、外部接続機器923から直接各種のデータを取得したり、外部接続機器923に各種のデータを提供したりする。
【0087】
通信装置919は、例えば、通信網925に接続するための通信デバイス等で構成された通信インターフェースである。通信装置919は、例えば、有線もしくは無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)、又はWUSB(Wireless USB)用の通信カード等である。また、通信装置919は、光通信用のルータ、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)用のルータ、又は、各種通信用のモデム等であってもよい。この通信装置919は、例えば、インターネットや他の通信機器との間で、例えばTCP/IP等の所定のプロトコルに則して信号等を送受信することができる。また、通信装置919に接続される通信網925は、有線又は無線によって接続されたネットワーク等により構成され、例えば、インターネット、家庭内LAN、社内LAN、赤外線通信、ラジオ波通信又は衛星通信等であってもよい。
【0088】
以上、本発明の実施形態に係る演算処理装置50の機能を実現可能なハードウェア構成の一例を示した。上記の各構成要素は、汎用的な部材を用いて構成されていてもよいし、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されていてもよい。従って、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて、適宜、利用するハードウェア構成を変更することが可能である。
【実施例0089】
以下では、実施例及び比較例を示しながら、本発明に係る焼結鉱の分析方法及び分析装置について、具体的に説明する。なお、以下に示す実施例は、本発明に係る焼結鉱の分析方法及び分析装置の一例にすぎず、本発明に係る焼結鉱の分析方法及び分析装置が以下の例に限定されるものではない。
【0090】
実際の操業に用いられている焼結鉱を、分析対象とした。ベルトコンベアを用いて焼結鉱を7m/secの搬送速度で搬送しているラインに対し、
図2に示したような分析装置を設置した。ここで、粒径評価ユニット10として、MBVシステム社製3DPMシステムを用いた。ただし、測距用ユニット20は設けていない。
【0091】
上記レーザ測距計の下流側に、分析用レーザ光源30を設置するとともに、分光検出部40として、Avantes社製AvanSpec-ULS2048CL-EVOを設置した。ここで、用いた分析用レーザ光源は、パルスエネルギー:40mJ、波長:1064nm、繰返周波数:100Hz、パルス幅:7nsのレーザ光源を用いた。照射面積は、0.5mmφであり、分析点におけるレーザパワー密度は、1GW/cm2であった。
【0092】
上記のような分析装置1を1台用い、ベルトコンベアの幅方向中央部に設置した。かかる分析装置1を用いて、搬送されている焼結鉱を継続的に10分間分析することで、搬送されている焼結鉱の粒度分布を測定するとともに、平均成分濃度を算出した。
【0093】
かかる測定により得られた、Fe、Ca、Siの各濃度(質量%)と粒径(mm)との関係を、
図6~
図8に示した。
図6~
図8から明らかなように、粒径が異なることで、焼結鉱の各成分濃度も異なる値を示していることがわかる。
【0094】
このような成分濃度及び粒径に関する知見をもとに、搬送されている焼結鉱の粒径分布を、粒径1mm未満、粒径1mm以上5mm未満、粒径5mm以上10mm未満、粒径10mm以上25mm未満、粒径25mm以上50mm未満、粒径50mm以上という6つの階級(クラス)に分類し、各クラスに属する焼結鉱の存在率を算出した。得られた結果を、
図9に示した。
【0095】
各階級に属する焼結鉱の平均成分濃度を算出しておき、得られた平均成分濃度と、各階級の存在率とを掛け合わせることで、焼結鉱全体の平均成分濃度を算出した。
【0096】
また、比較として、
図2に示した分析装置1のうち、粒径評価ユニット10及び測距用ユニット20を稼働させずに、分析用レーザ光源30及び分光検出部40を用いて、一般的なLIBS測定を行った。更に、別途、搬送されている焼結鉱をサンプリングし、一般的な化学分析を行って、焼結鉱の成分濃度を測定した。得られた結果を、以下の表1にまとめて示した。
【0097】
【0098】
上記表1から明らかなように、本発明に係る分析装置1を用いたものの方が、通常のLIBS測定のみを実施したものと比較して、化学分析による測定結果に近い値を示していることがわかる。かかる結果より、本発明による焼結鉱の分析方法及び分析装置により、焼結鉱の平均成分組成の測定精度が向上したことがわかる。
【0099】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。