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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154116
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】異型断面繊維および中綿
(51)【国際特許分類】
   D01F 6/00 20060101AFI20221005BHJP
   D01F 6/62 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
D01F6/00 Z
D01F6/00 B
D01F6/62 303G
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057005
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】501270287
【氏名又は名称】帝人フロンティア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】枌原 浩太
【テーマコード(参考)】
4L035
【Fターム(参考)】
4L035AA05
4L035BB31
4L035DD02
4L035DD03
4L035DD08
4L035DD20
4L035FF04
4L035FF08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】加工時にカード開繊等を施す必要がない、開繊性に優れた異型断面繊維を提供することにあり、さらには、この繊維を用いて嵩回復率が優れた中綿を提供することにある。
【解決手段】繊維の断面が特定の異型形状を有することにより、隣接する単繊維間に空隙を保持し、開繊性が良好になる。繊維軸に対して直交する断面形状において、コア部2を有し、該コア部から放射状に突出する複数のフィン部3を有する繊維で、フィン指数が1.05~3.00、フィン部の個数が4~12個、繊維充填率が20~80%である異型断面繊維である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂からなる異型断面繊維であって、繊維軸に対して直交する断面形状において、コア部を有し、該コア部から放射状に突出する複数のフィン部を有する繊維であって、下記式で示すフィン指数が1.05~3.00の範囲であり、前記フィン部の個数が4~12個であり、前記繊維の繊維軸に対して直交する断面において、下記式で示す繊維充填率が20~80%であることを特徴とする、異型断面繊維。
フィン指数 = A/B
A;最大であるフィン部長さ
B;最小であるフィン部長さ
[コア部は、繊維断面形状における形状が円形の場合にはその円を、三角形以上の多角形の場合にはその多角形の内接円を表し、楕円形状の場合にはその短径を表す。フィン部長さとは、前述のコア部中心からコア部に接していないフィン先端部の最も遠い点までの距離から、コア部の半径を減じた値と定義する。]
繊維充填率(%)= (C/D) ×100
C;繊維軸に直交する断面の繊維部分面積
D;繊維軸に直交する断面における外接円面積
【請求項2】
前記の異型断面繊維のフィン倍率が0.4~1.4の範囲である請求項1記載の異型断面繊維。
フィン倍率 = F/E
E;コア部サイズ
F;フィン部長さ
[コア部サイズとは、繊維断面形状におけるコア部が円形の場合にはその円の直径を、三角形以上の多角形の場合にはその多角形の内接円の直径を表し、楕円形状の場合には短径を表す。フィン部長さFは、前記1におけるフィン部長さAと同一である。]
【請求項3】
前記の異型断面繊維の捲縮数が1~13個/25.4mm、捲縮率が1~15%である請求項1、または2に記載の異型断面繊維。
【請求項4】
前記の異型断面繊維を空気開繊した開繊繊維の0.025g/cm荷重条件下で測定した嵩を、0.14g/cm荷重条件下で測定した嵩で除した値が、2.0以上4.0以下の範囲である、請求項1~3のいずれか1項に記載の異型断面繊維。
【請求項5】
前記の異型断面繊維を空気開繊した開繊繊維の0.025g/cm荷重条件下で測定した嵩が、500~950cm/gである、請求項1~4のいずれか1項に記載の異型断面繊維。
【請求項6】
前記の異型断面繊維を空気開繊した開繊繊維の嵩回復率が60%以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載の異型断面繊維。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂がポリエステル系樹脂であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の異型断面繊維。
【請求項8】
ポリエステル系樹脂がポリエチレンテレフタレート系樹脂、またはポリトリメチレンテレフタレート系樹脂である、請求項7に記載の異型断面繊維。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の異型断面繊維を50質量%以上含む中綿であって、JISL1096A法によって測定した保温率が60%以上であることを特徴とする中綿。
【請求項10】
請求項9に記載の中綿を含む、ふとん、まくら、ぬいぐるみ、衣料およびクッション構造体からなる群のいずれか1つから選択されることを特徴とする繊維製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異型断面繊維および中綿に関する。さらに詳しくは、開繊性に優れ、加工時にカード開繊を施すことなく使用することができる、異型断面繊維およびこれを使用した中綿に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ふとん、まくら、ぬいぐるみ、衣料、およびクッション構造体などの分野で詰綿が使用されている。そして、詰綿の嵩高性及び保温性を高めるため、中空、三角、多角断面繊維やコア部と該コア部から放射状に突出するフィン部を有する断面の短繊維等が提案されている(特許文献1~5)。これらの繊維は、一般的に単繊維が多数束ねられた繊維束の状態で延伸された後、所定の繊維長に切断されるため、短繊維の集合体の中に束状の短繊維が多数残るのが一般的である。
【0003】
例えば、特許文献5のコア部から突出するフィン部においても束状の短繊維が多数残り、これらの束状の短繊維は詰め綿を構成する短繊維集合体において嵩性能には寄与しないため、その嵩高性を大きく損なうことになる。従って、束状繊維を多数含む短繊維集合体を、詰綿製品に加工する工程においては、これらの束状の繊維を開くために開繊処理を施す必要がある。一般的には、機械的にカード装置等を使用して開繊し短繊維集合体とすることが多いが、加工プロセスが長くなる点において生産性が課題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平04-327880号公報
【特許文献2】特開2007-125153号公報
【特許文献3】特開平05-302267号公報
【特許文献4】特開昭63-303112号公報
【特許文献5】特開2012-97380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記背景のもとになされたものであり、加工時にカード開繊等を施すことなく、開繊性に優れた異型断面繊維を提供することにある。さらに、この繊維を用いて嵩回復率の優れた中綿を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、繊維の断面が特定の異型形状を有することにより、隣接する単繊維間に空隙を保持し、開繊性が良好になることを見出した。
すなわち、
【0007】
1.熱可塑性樹脂からなる異型断面繊維であって、繊維軸に対して直交する断面形状において、コア部を有し、該コア部から放射状に突出する複数のフィン部を有する繊維であって、下記式で示すフィン指数が1.05~3.00の範囲であり、前記フィン部の個数が4~12個であり、前記繊維の繊維軸に対して直交する断面において、下記式で示す繊維充填率が20~80%であることを特徴とする、異型断面繊維、
フィン指数 = A/B
A;最大であるフィン部長さ
B;最小であるフィン部長さ
[コア部は、繊維断面形状における形状が円形の場合にはその円を、三角形以上の多角形の場合にはその多角形の内接円を表し、楕円形状の場合にはその短径を表す。フィン部長さとは、前述のコア部中心からコア部に接していないフィン先端部の最も遠い点までの距離から、コア部の半径を減じた値と定義する。]
繊維充填率(%)= (C/D) ×100
C;繊維軸に直交する断面の繊維部分面積
D;繊維軸に直交する断面における外接円面積、
であり、
【0008】
2.前記の異型断面繊維のフィン倍率が0.4~1.4の範囲である前記1記載の異型断面繊維、
フィン倍率 = F/E
E;コア部サイズ
F;フィン部長さ
[コア部サイズとは、繊維断面形状におけるコア部が円形の場合にはその円の直径を、三角形以上の多角形の場合にはその多角形の内接円の直径を表し、楕円形状の場合には短径を表す。フィン部長さFは、前記1におけるフィン部長さAと同一である。]
【0009】
3.前記の異型断面繊維の捲縮数が1~13個/25.4mm、捲縮率が1~15%である前記1、または2に記載の異型断面繊維、
4.前記異型断面繊維を空気開繊した開繊繊維とし、その開繊繊維の0.025g/cm荷重条件下で測定した嵩を、0.14g/cm荷重条件下で測定した嵩で除した値が、2.0以上4.0以下の範囲である、前記1~3のいずれか1つに記載の異型断面繊維、
5.前記異型断面繊維を空気開繊した開繊繊維とし、0.025g/cm荷重条件下で測定した嵩が、500~950cm/gである、前記1~4のいずれか1つに記載の異型断面繊維、
6.前記異型断面繊維を空気開繊した開繊繊維とし、その嵩の嵩回復率が60%以上である、前記1~5のいずれか1つに記載の異型断面繊維。
7.前記熱可塑性樹脂がポリエステル系樹脂である、前記1~6のいずれか1つに記載の異型断面繊維、
8.ポリエステル系樹脂がポリエチレンテレフタレート系樹脂、またはポリトリメチレンテレフタレート系樹脂である、前記7に記載の異型断面繊維、であり、そして、
9.前記1~8のいずれか1つに記載の異型断面繊維を50質量%以上含むことを特徴とする、中綿であって、JISL1096A法によって測定した保温率が60%以上であることを特徴とする中綿、であり、そして、
10.前記9記載の中綿を含む、ふとん、まくら、ぬいぐるみ、衣料およびクッション構造体からなる群のいずれか1つから選択されることを特徴とする繊維製品、
が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明による開繊性に優れた繊維を用いることで、加工時にカード開繊せずとも、嵩高性、嵩回復率、保温性に優れた中綿、繊維製品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】繊維軸に対して垂直な面における繊維断面、およびフィン部長さを示す。
図2】繊維断面における外接円、およびコア部を中心とする円を示す。
図3】繊維断面における外接円の取り方を示す。
図4】繊維軸に対して垂直な面における繊維断面およびコア部サイズ、フィン部長さを示す。
図5】空気開繊工程の模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0013】
本発明における中綿は、単糸1本ではなく、複数の短繊維から構成される綿状の形態を指す。
【0014】
まず、本発明の異型断面繊維は、繊維軸に対して直交する単糸断面形状(単糸を単繊維とも称す)において、コア部とフィン部を有し、そのコア部から放射状に突出するフィン部とを有する形状であることが肝要である。コア部から放射状に突出する複数のフィンの長さは、それぞれが同じ長さであるよりは、大小がある方が空間に占める繊維の割合が大きくなる、つまり低繊維充填率の低い方が、繊維集合体として最密充填構造をとりにくくなる。この現象により、本発明の繊維が開繊性に優れることを見出した。
【0015】
本発明の効果として得られる開繊性の良い繊維は、外部からの小さい応力で単繊維同士がずれ動くことができる必要があり、このためには、本発明のような繊維断面にフィン構造を有することに加えて、適度にスパイラル状やΩ型などの曲線状の捲縮をもつ三次元捲縮を組み合わせるとより効果的である。繊維の断面形状は、これに適した形状の吐出孔を有する口金を設計することで達成できる。一方で、スパイラル状などの曲線状捲縮は、異方冷却やサイドバイサイド型複合繊維もしくは芯鞘型複合繊維のいずれかで達成できるが、本発明においては、捲縮の発現を調節しやすい観点で異方冷却が好ましい。スパイラル状などの曲線状捲縮を発現させる効果は、繊維横断面形状に中空部を有する形状である方が大きいが、必ずしも中空部を有する必要はない。前記、繊維軸に対して直交する単糸断面が、中空でなくてもコア部から放射状に突出するフィン部を有する繊維において、フィン部により単繊維表面積が増加するため、異方冷却された面とその反対面の収縮差が大きくなり、スパイラル状などの曲線状捲縮が発現しやすくなる。さらには、フィン部により隣接する単繊維同士の接触面積を低下させることで、繊維同士が離れやすくなる効果があることを見出した。
【0016】
かかるコア部の形状としては、四角、丸、三角、多角形などいずれでもよい。また、前記コア部は上述した捲縮を安定して発現しやすくするために中空であることがさらに好ましいが、かかるコア部の中空の形状としては、四角中空、丸中空、三角中空、多角形中空などいずれでもよい。なお、中空である前記コア部において、優れた嵩高性および圧縮回復性を得る上で中空割れが発生していないことが好ましい。
【0017】
次に、かかるコア部から放射状に突出するフィン部の個数は特に限定されないが、優れた開繊性を得る上で、4~12個であることが必要である。さらに好ましくは6~12個、より好ましくは8~10個である。該フィン部の個数が4個に満たない場合、隣接する繊維同士を空間的に排除する効果が小さく、優れた開繊性が得られない。また、かかるフィン部は、繊維の長さ方向(繊維軸方向)に延在していると、優れた嵩高性および圧縮回復性が得られやすく好ましい。該フィン部の個数が12個を超えると、隣接するフィン同士の距離が近くなり過ぎて口金出糸不良を発生させて工程調子が悪化するため好ましくない。
【0018】
また、前記異型断面繊維において、かかるコア部から放射状に突出するフィン部の形状は特に限定されないが、優れた開繊性を得る上でフィン指数が1.05~3.00の範囲であることが必要である。ここで、フィン指数とは、図1に示すように最大であるフィン部長さA(=X-Z)と最小であるフィン部長さB(=Y-Z)の比である。このように
、フィン部長さとは、前述のコア部の内接円の中心からコア部に接していないフィン先端部の最も遠い点までの距離から、コア部の内接円の半径を減じた値と定義する。
そして、中心1を半径とする円において、各フィンの先端が点接触する半径の内、最大の
半径をX、最小の半径をYとする。
【0019】
フィン指数が大きいと、近接する2本の繊維のコア部分を遠ざける効果が大きいことに他ならず、繊維同士の開繊性が良い指標として用いることができる。フィン指数が1.05未満では、コア部表面の突起としての効果が発現せず、十分な開繊効果が得られない点で好ましくない。一方で、フィン指数が3.00を超える場合は、異型度を高く保つために紡糸条件を極端に急冷する必要があり、紡糸での糸切れが生じる点で好ましくない。
【0020】
また、前記異型断面繊維において、該フィンのフィン倍率は0.4~1.4の範囲であることが好ましく、0.4~1.2の範囲がより好ましい。この範囲により、開繊効果が良好となる。フィン倍率が0.4未満では、コア部表面の突起としての効果が発現せず、十分な開繊効果が得られない点で好ましくない。一方で、フィン倍率が1.4を超える場合は、異型度を高く保つために紡糸条件を極端に急冷する必要があり、紡糸での糸切れが多発する点で好ましくない。
【0021】
尚、本発明に記載のフィン倍率は以下により算出する。
フィン倍率 = F/E
E;コア部サイズ
F;フィン部長さ
[コア部サイズEとは、図4に示すとおり、繊維断面形状におけるコア部が円形の場合にはその円の直径2Zである。三角形以上の多角形の場合にはその多角形の内接円の直径を表し、楕円形状の場合には短半径側の直径を表す。
そして、フィン部長さFとは、図4に示すように、コア部中心1を半径とする円において、各フィンの先端が点接触する半径の内、最大の半径をXとし、繊維断面形状におけるコア部が円形の場合、その円の半径Zとしたとき、X-Zをフィン部長さFとする。フィン部長さFは、前述のフィン部長さAと同一である。]
【0022】
前記異型断面繊維は、その捲縮数は、1~13個/25.4mmの範囲が好ましく、2~12個/25.4mmの範囲であることがより好ましく、3~11個/25.4mmの範囲がさらに好ましい。捲縮数が1個未満の場合は、フィン部による隣接単糸との離れ性効果が得られず、十分な空気開繊性が得られない。一方で、捲縮数が13個を超える場合には、繊維同士の絡合性が強くなりすぎて、空気開繊性が低下するため好ましくない。このような捲縮特性を有する繊維を得るには、紡糸工程において冷却条件を調整することにより得ることができる。捲縮形態は、機械捲縮(ジグザグ状捲縮)でもスパイラル状などの曲線状捲縮(異方冷却や二種以上の樹脂からなる複合繊維による)でもよいが、異方冷却紡糸の製造方法によるスパイラル状などの曲線状捲縮が特に好ましい。
【0023】
前記異型断面繊維において、捲縮率は1~15%の範囲が好ましく、2~14%の範囲であることがより好ましく、3~13%の範囲がさらに好ましい。捲縮率がこの範囲であると、繊維同士の接触面積が適度に低下し開繊性が良好となる。捲縮率が1未満の場合は、フィン部による隣接単糸との離れ性効果が得られず、十分な空気開繊性が得られない。一方で、捲縮率が15を超える場合には、繊維同士の絡合性が強くなりすぎて、空気開繊性が低下するため好ましくない。このような捲縮特性を有する繊維を得るには、紡糸工程において冷却条件、例えば冷却風の温度や風量、口金面から冷却風を当てるまでの距離を調整することにより得ることができる。
【0024】
冷却風の温度は10~50℃が好ましい。14~40℃であることがより好ましく、さ
らに好ましくは18~30℃である。冷却風の風速は0.2~5.0m/秒であることが好ましい。0.4~4.0m/秒であることがより好ましく、さらに好ましくは0.6~3.0m/秒である。口金面から押し出された樹脂が冷却風に当たるまでの距離は10~50mmが好ましい。13~45mmであることがより好ましく、さらに好ましくは16~40mmである。
【0025】
本発明における異型断面繊維の繊維充填率は、20~80%であることが好ましく、25~70%であることがより好ましく、30~60%であることがさらに好ましい。ここで、繊維充填率とは、繊維軸に直交する断面の繊維部分面積を繊維軸に直交する断面における外接円面積で除して算出する。すなわち、本発明に記載の繊維充填率は以下により算出する。
繊維充填率(%)= (C/D) ×100
C;繊維軸に直交する断面の繊維部分面積
D;繊維軸に直交する断面における外接円面積
【0026】
なお、図2に示すようなフィン部の長さが異なる断面における外接円は、フィン部と接する接点の数が最大となる外接円の半径をWとする。図2に示すとおり、外接円の中心と、コア部中心1の位置は必ずしも一致しない。
また、図3には、フィン部を接する接点の数が2、3、4のケースを示した。図3に示すとおり、複数の外接円を取り得ることができるため、フィン部と接する接点の数が最大となる外接円とすることとし、その外接円の半径をWとする。繊維軸に直交する断面における外接円面積Dは、πWである。
【0027】
繊維充填率が20%未満では、繊維としては高空隙を有しているものの、中綿として使用した際に、フィン部の折れや破断で嵩性が維持できないことや、繊維の破片が生じるため好ましくない。一方で、繊維充填率が80%を超えると、実質的に通常の丸中空断面繊維に近づくため、フィン部による隣接単糸との離れ性効果が得られず、好ましくない。
【0028】
本発明における異型断面繊維は、その繊維長が20~100mmの範囲であることが好ましく、25~90mmの範囲がより好ましく、30~80mmの範囲がさらに好ましい。繊維長が20mmに満たない場合は嵩高性が出にくくなる。一方で、繊維長が100mmより長すぎる場合には空気開繊工程で十分に開繊されにくく、よじれた紐状繊維集合体を形成するために好ましくない。
【0029】
本発明における異型断面繊維は、その繊度が1~20デシテックスの範囲であることが好ましく、2~15デシテックスの範囲がより好ましく、3~12デシテックス範囲がさらに好ましい。繊度が1デシテックスに満たない場合は開繊繊維の嵩性が出にくくなるので好ましくない。一方で、繊度が20デシテックスより大きい場合には、中綿としての保温性が低くなるため好ましくない。
【0030】
本発明における異型断面繊維は、従来のカード方式による開繊方法を採用することもできるが、カードによる開繊をせずとも空気開繊により、未開繊部分の殆どない程度に十分な開繊状態が得られるので、カードを省略できるメリットがある。更には、優れた開繊状態で低密度、すなわち繊維間により多くの空気を含む繊維を容易に得られるので、嵩高性と保温性が特に優れている。
【0031】
本発明の異型断面繊維を空気開繊した開繊繊維は、その嵩の0.025g/cm荷重条件下で測定した嵩を、0.14g/cm荷重条件下で測定した嵩で除した値が、2.0以上4.0以下であることが好ましい。前記値が2.0未満の場合は、繊維が空気開繊しにくく好ましくない。一方で、前記値が4.0を超える場合、過度にフィン部を長くするような繊維形態となるため、上述のように生産性を低下させる恐れがあり好ましくない。
【0032】
本発明の異型断面繊維を空気開繊した開繊繊維は、0.025g/cm荷重条件下で測定した嵩が、500~950cm/gであることが好ましい。前記嵩が500cm/g未満の場合は、中綿に優れた嵩性と保温性を得ることができず好ましくない。一方で、950cm/gを超える場合は、過度にフィン部を長くするような繊維形態となるため、上述のように生産性を低下させる恐れがあり好ましくない。
【0033】
本発明における異型断面繊維は、空気開繊した開繊繊維について、嵩回復率が60%以上であることが好ましい。より好ましくは63%以上であり、さらに好ましくは66%以上である。嵩回復率が60%未満の場合、中綿としてすぐにへたってしまい、嵩高性と保温性を長く維持することができない点で好ましくない。
【0034】
ここで、前記記載の空気開繊繊維の作成方法について次のとおり実施した。空気によって繊維を吸入する部位と、圧縮した空気を吹き込む部位と、空気と混合された繊維を排出する部位を有するエジェクターを使用する。繊維を吸入する部位が内径10mmの円形形状で、空気の吸入速度44m/秒、エジェクターの排出部が27mmの円形形状で、エジェクター排出点から40cm離れた点における排出空気速度を18m/秒に調節し、目的とする繊維を1分間に40g吸入部位へ供給して空気開繊繊維とした。
【0035】
本発明における異型断面繊維を形成する樹脂の種類としては、本発明の繊維形態を実現できれば特に限定されないが、成型加工の観点から熱可塑性樹脂であることが好ましい。さらには、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィンなどの通常の繊維形成性ポリマーなどでよい。なかでも、ポリエチレンテレフタレートやポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ステレオコンプレックスポリ乳酸などのポリエステルや、第3成分を共重合させた共重合ポリエステルなどが好ましく例示される。
【0036】
かかるポリエステルとしては、マテリアルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリエステルや、特開2009-091694号公報に記載された、バイオマスすなわち生物由来の物質を原材料として得られたモノマー成分を使用してなるポリエチレンテレフタレートであってもよい。なかでも、ポリトリメチレンテレフタレートがソフト性および回復性の観点で特に好ましい。なお、該ポリマー中には、本発明の目的を損なわない範囲内で必要に応じて、カチオン染料可染剤、着色防止剤、熱安定剤、蛍光増白剤、艶消し剤、着色剤、吸湿剤、無機微粒子が1種または2種以上含まれていてもよい。
【0037】
また目的に応じて、ポリエステルを構成するジカルボン酸成分として、イソフタル酸、フタル酸、5-スルホイソフタル酸のアルカリ金属塩、5-スルホイソフタル酸の4級アンモニウム塩、5-スルホイソフタル酸の4級ホスホニウム塩、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、α、β―(4-カルボキシフェノキシ)エタン、4、4-ジカルボキシフェニル、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、1、3-シクロヘキサンジカルボン酸もしくは1、4-シクロヘキサンジカルボン酸またはこれらの炭素数1~10個の有機基からなるジエステル化合物等を1成分または2成分以上共重合させても良い。
【0038】
同様に、ポリエステルを構成するジオール成分としてジエチレングリコール、1、2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2,2-ビス(p-β-ヒドロキシエチルフェニル)プロパン、ポリエチレングリコール、ポリ(1,2-プロピレン)グリコール、ポリ(トリメチレン)グリコールもしくはポリ(テトラメチレン)グリコール等を1成分または2成分以上共重合させてもよい。さらに、ω-ヒドロキシアルキルカルボン酸、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、トリメリット酸、またはトリメシン酸等のヒドロキシカルボン酸、または、3個以上のカルボン酸成分もしくは水酸基をもつ化合物を1成分または2成分以上共重合して分岐をもたせたポリエステルであることも好ましい。また、上記に例示される組成の異なるポリエステルの混合物を用いることも可能である。
【0039】
本発明における異型断面繊維は、例えば、固有粘度(オルソクロロフェノールを溶媒として使用し35℃で測定)0.50~1.20dL/gのポリエステルポリマーを用いて、目的の繊維を得るための吐出形状を有する口金を用いて常法により紡糸、延伸した後、必要に応じて開繊性に優れるシリコン系等の油剤を付与し、次いで、必要に応じて押し込み型の捲縮付与装置で機械捲縮を付与し、必要に応じて所定の繊維長に切断することにより得られる。
【0040】
捲縮の形態に関しては、機械捲縮だけでなく、スパイラル状捲縮であっても構わないし、機械捲縮とスパイラル状捲縮が混在するΩ型の捲縮であっても構わない。
【0041】
本発明の繊維を構成する樹脂の固有粘度としては、0.50~1.20dL/gであることが好ましい。特に繊維を構成する主成分がポリエチレンテレフタレートの場合、その固有粘度が0.52~0.80dL/gであることがより好ましく、さらには0.55~0.70dL/gが好ましい。また、繊維を構成する主成分がポリトリメチレンテレフタレートの場合、その固有粘度が0.75~1.10dL/gであることがより好ましく、さらには0.80~1.00dL/gが好ましい。固有粘度が低すぎると、繊維の強度が低下し、また繊維化することが困難となる傾向にある。また一方で、固有粘度が高すぎても、紡糸性、延伸性が低下するなどして得られる繊維の性能が低下する傾向になって好ましくない。
【0042】
本発明における異型断面繊維は、例えば、固有粘度(オルソクロロフェノールを溶媒として使用し35℃で測定)0.52~0.80dL/gのポリエチレンテレフタレート系樹脂、あるいは0.50~1.20dL/gのポリトリメチレンテレフタレート系樹脂を用いて異方冷却紡糸することによりスパイラル状やΩ型などの曲線状捲縮を得ることが可能である。
【0043】
口金面より吐出させた直後の糸条に0.4m/秒以上の流速を有する冷却気流を糸条の片側から糸条の進行方向に垂直な方向±20度の範囲の角度で吹き当てることにより、つまり冷却気流の当たる側と反対側の複屈折率の差が大きくなり、複屈折度に高度の断面異方性を有する未延伸糸とすることができる。次いでこの未延伸糸を束ねて延伸後、弛緩状態で熱処理を施すことにより自発的に発現するスパイラル状やΩ型の曲線状捲縮を有するポリエチレンテレフタレート系繊維やポリトリメチレンテレフタレート系繊維が得られる。Ω型捲縮は延伸後にクリンパーで背圧による座屈捲縮を付与した後、弛緩熱処理を行うことで得ることができる。
【0044】
この時、弛緩熱処理を行う前に単繊維同士を十分に離れた状態にすることが重要である。そこで、本発明の異型断面繊維は、特定の形状を有するフィン部の効果により、繊維同士が非常に開繊しやすいため、弛緩熱処理を施す直前に十分開繊することができ、高度なスパイラル状またはΩ型捲縮などの曲線状捲縮を発現することができる。ただし、弛緩熱処理段階で捲縮を発現させ過ぎると、同一形態の捲縮の数本~数十本の単繊維からなる小さい繊維束状になりやすく、単繊維同士が離れにくい状況が発生するため、前述した本発明の異型断面繊維における捲縮物性、つまり、捲縮数が1~13個/25.4mm、捲縮率が1~15%であること好ましく、空気開繊に優れた異型断面繊維を得ることができる。
【0045】
本発明の異型断面繊維を開繊させる方法は、例えば、円筒型または矩形型のエジェクターに繊維束(トウ)を通過させてエジェクター内の空気流により開繊させる方法、繊維束(トウ)の側方に空気噴出孔から吐出した空気流を吹き付けて開繊させる方法、繊維束(トウ)を円柱又は角柱状の棒に押し当て、物理的衝撃により開繊させる方法、繊維束(トウ)に振動する円柱又は角柱状の棒を当てて開繊する方法、さらには、これらの方法を組み合わせる方法が好ましく例示される。特には、エジェクターを使用する方法が、均一に開繊できる点でより好ましい。
【0046】
開繊させた後の繊維束(トウ)は、パンチングプレート、又は金属ネット製のコンベア上に弛緩した状態で載せて熱風循環式連続ドライヤーで熱風を当てることで乾燥、熱処理を施す。この熱処理により異方冷却紡糸による繊維の場合は、スパイラル状などの曲線状捲縮が発現する。
【0047】
本発明の異型断面繊維は、開繊等の効果を損なわない範囲で、シリコーン樹脂、油剤、抗菌剤、防虫剤、撥水剤、吸湿剤、制電剤、難燃剤、および消臭剤からなる群より選択される1種以上の剤(油剤と称することもある)を繊維表面に付着させてもよい。該繊維のフィンによる繊維表面積が大きくなる効果により、これらの剤の機能を発現しやすくすることができ好ましい。なお、前記の剤には、脂肪酸エステル、多価アルコールエステル、エーテルエステル、ポリエーテル、シリコーン、鉱物油などの平滑剤や帯電防止剤、界面活性剤、集束剤、防錆剤、防腐剤、酸化防止剤を加えてもよい。特にシリコーンを含有する剤が好ましい。
【0048】
本発明の中綿は、本発明の異型断面繊維のみで構成することが最も好ましいが、前記異型断面繊維と、セルロース系繊維、丸中空ポリエステル繊維、丸中実ポリエステル繊維、異型ポリエステル繊維などを混ぜて構成してもよい。本発明の中綿は、中綿に使用する全繊維に対して、本発明の異型断面繊維を50質量%以上含むことが必要である。これにより、優れた保温率を有する中綿とすることが可能となる。本発明の異型断面繊維が50質量%未満の場合、保温率が低下するため好ましくない。
【0049】
なお、中綿の保温率は、後述する試験綿をJISL096A法において測定した場合、60%以上となるように構成することが肝要で、本発明の異型断面繊維を50質量%以上含むことで達成することが可能となる。
【0050】
次に、本発明の繊維製品は、本発明の中綿を含む、ふとん、まくら、ぬいぐるみ、衣料、およびクッション構造体からなる群より選択されるいずれかの繊維製品である。通常、これらの繊維製品は、本発明の中綿と側地とで構成される。
【0051】
本発明の繊維製品には、本発明の中綿が50質量%以上含まれることが好ましい。より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90%質量%以上である。また、該繊維製品は、本発明の中綿以外に、カード開繊綿や巻綿等が含まれても差し支えない。
【0052】
本発明の繊維製品の側地を構成する布帛としては、前記のようなポリエステルや綿などからなる繊維で構成された通常の織編物でよいし、不織布であってもよい。本発明の繊維製品は、前記の中綿を含んでいるので、優れた嵩高性、耐圧縮性、および保温性を発現する。
【実施例0053】
以下に本発明の構成、および効果を具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明は
これら実施例になんら限定を受けるものではない。なお、部とは特段断らない限りは質量部を表すものとし、実施例および比較例中の各物性値は、以下の方法に従って測定した。
【0054】
(1)繊度
JIS L 1015:2005 8.5.1 A法に記載の方法により測定した。繊維を数えて300本を一組とし、その質量を量り、見掛繊度を求める。この見掛繊度と別に測定した平衡水分率とから、下式によって正量繊度を算出する。正量繊度の5回の平均値を算出した。
F=[(100+R)/(100+Rc)]×D
F:正量繊度
D:見掛繊度
:公定水分率(%)(日本工業規格JIS L 0105 4.1に規定する値)
Rc:平衡水分率(%)
【0055】
(2)繊維長
JIS L 1015:2005 8.4.1 A法に記載の方法により測定した。
【0056】
(3)捲縮数、捲縮率
JIS L 1015:2005 8.12.1に記載の方法により測定した。
【0057】
(4)フィン指数、繊維充填率、フィン倍率
繊維軸に直交する繊維断面形状を光学顕微鏡にて観察し、その観察した映像からフィン部長さ、コア部サイズ、繊維軸に直交する断面の繊維部分面積、繊維軸に直交する断面における外接円面積を算出して、これらの値からフィン指数、フィン倍率、繊維充填率を算出した。フィン指数、フィン倍率、繊維充填率は、単繊維100本を測定した平均値とする。
フィン指数 = A/B
A;最大であるフィン部長さ
B;最小であるフィン部長さ
[コア部は、繊維断面形状における形状が円形の場合にはその円を、三角形以上の多角形の場合にはその多角形の内接円を表し、楕円形状の場合にはその短径を表す。フィン部長さとは、前述のコア部中心からコア部に接していないフィン先端部の最も遠い点までの距離から、コア部の半径を減じた値と定義する。]
繊維充填率(%)= (C/D) ×100
C;繊維軸に直交する断面の繊維部分面積
D;繊維軸に直交する断面における外接円面積、
【0058】
フィン倍率 = F/E
E;コア部サイズ
F;フィン部長さ
[コア部サイズとは、繊維断面形状におけるコア部が円形の場合にはその円の直径を、三角形以上の多角形の場合にはその多角形の内接円の直径を表し、楕円形状の場合には短径を表す。フィン部長さFは、前記1におけるフィン部長さAと同一である。]
【0059】
(5)空気開繊繊維の嵩測定
空気開繊の方法について次のとおり実施した。空気によって繊維を吸入する部位と、圧縮した空気を吹き込む部位と、圧縮空気送気ラインと、圧縮空気による整流機構を有する部位と、繊維を排出する部位と、繊維を捕集する部位を有するエジェクターを使用した。繊維を吸入する部位が内径10mmの円形形状で、空気の吸入速度44m/秒、エジェクターの排出部が27mmの円形形状で、エジェクター排出点から40cm離れた点におけ
る排出空気速度を18m/秒に調節し、目的とする繊維を1分間に40g吸入部位へ供給して空気開繊繊維とした。
【0060】
前記で得られた空気開繊繊維は、メッシュ状の網で回収し、風速1m/秒以上の空気流が存在しない箇所にて1時間放置した後に、繊維嵩測定に供した。
【0061】
空気開繊ウェブを、直径12.8cmのアクリル製の円筒に入れ、荷重条件0.025g/cm、0.14g/cmでそれぞれ1分放置した後の繊維嵩を測定した。
【0062】
(6)空気開繊繊維の嵩回復率
前記空気開繊繊維を、直径12.8cmのアクリル製円筒に入れ、荷重条件0.60g/cmで1分後の嵩を初期嵩とした。その後、荷重条件10g/cmで1分間保持した嵩を圧縮嵩とした。荷重を開放した後、再度荷重条件0.60g/cmで1分間放置した繊維嵩を回復嵩とした。回復率は、以下で定義した。
回復率(%)=(回復嵩/初期嵩)×100
【0063】
(7)中綿保温率
JIS L1096 8.27.1A法に基づいて、60g/cmの中綿を20cm角に採取し、保温性を評価した。
実施例について、以下に詳細を示す。
【0064】
[実施例1]
ポリトリメチレンテレフタレート(PTT;固有粘度0.95、融点225℃)チップを260℃で溶融し、表1に示した「断面形状」の欄に記載の繊維断面形状となるような紡糸口金(フィン8本)を用い、(280ホール)より吐出量240g/分で吐出させた糸条に、口金面下3.0cmの位置で20℃の冷却用空気を0.7m/秒の流速で糸条の片側から糸条の進行方向に垂直な角度で吹き当て1150m/分の巻取速度で未延伸糸を得た。
【0065】
次いで、得られた未延伸糸を14万dtexのトウにした後、55℃の温水中で1.91倍、続いて65℃の温水中で1.10倍と2段階で延伸した(全延伸倍率2.10倍)。延伸して得られたトウを、円筒型エジェクターを通過させ、圧空流入量の調整によりトウ内に束状の繊維が見られなくなるよう開繊した後、155℃で弛緩熱収縮処理を施して、スパイラル状の三次元捲縮を有する延伸糸を51mmの繊維長に切断し、繊度4.5dtexの捲縮綿を得た。フィン指数、繊維充填率、空気開繊繊維嵩、回復率の結果を表1に示す。
【0066】
[実施例2]
表1に示した「断面形状」の欄に記載の繊維断面形状(実施例1と同形状)となるような紡糸口金を用いて、冷却用空気を1.0m/秒に変更した以外は、実施例1と同様の方法で未延伸糸を得た。
次いで、実施例1と同様の方法で、繊度4.5dtexの捲縮綿を得た。
フィン指数、繊維充填率、空気開繊繊維嵩、回復率の結果を表1に示す。
【0067】
[実施例3]
表1に示した「断面形状」の欄に記載の繊維断面形状となるような紡糸口金に変更し、冷却用空気を1.0m/秒に変更した以外は、実施例1と同様の方法で未延伸糸を得た。
次いで、実施例1と同様の方法で、繊度4.6dtexの捲縮綿を得た。
フィン指数、繊維充填率、空気開繊繊維嵩、回復率の結果を表1に示す。
【0068】
[実施例4]
表1に示した「断面形状」の欄に記載の繊維断面形状となるような紡糸口金(フィン6本)に変更し、冷却用空気を1.0m/秒に変更した以外は、実施例1と同様の方法で未延伸糸を得た。
次いで、実施例1と同様の方法で、繊度4.4dtexの捲縮綿を得た。
フィン指数、繊維充填率、空気開繊繊維嵩、回復率の結果を表1に示す。
【0069】
[実施例5]
表1に示した「断面形状」の欄に記載の繊維断面形状となるような紡糸口金(フィン4本)に変更し、冷却用空気を1.0m/秒に変更した以外は、実施例1と同様の方法で未延伸糸を得た。
次いで、実施例1と同様の方法で、繊度4.5dtexの捲縮綿を得た。
フィン指数、繊維充填率、空気開繊繊維嵩、回復率の結果を表1に示す。
【0070】
[実施例6]
ポリエチレンテレフタレート(PET;固有粘度0.65、融点258℃)チップを285℃で溶融し、表1に示した「断面形状」の欄に記載の繊維断面形状(実施例1と同形状)となるような紡糸口金(フィン8本)を用い、(360ホール)より吐出量410g/分で吐出させた糸条に、口金面下2.1cmの位置で20℃の冷却用空気を1.0m/秒の流速で糸条の片側から糸条の進行方向に垂直な角度で吹き当て1200m/分の巻取速度で未延伸糸を得た。
【0071】
次いで、得られた未延伸糸を14万dtexのトウにした後、72℃の温水中で2.18倍、続いて92℃の温水中で1.05倍と2段階で延伸した(全延伸倍率2.29倍)。延伸して得られたトウを、円筒型エジェクターを通過させ、圧空流入量の調整によりトウ内に束状の繊維が見られなくなるよう開繊した後、155℃で弛緩熱収縮処理を施して、スパイラル状の三次元捲縮を有する延伸糸を51mmの繊維長に切断し、繊度4.4dtexの捲縮綿を得た。フィン指数、繊維充填率、空気開繊繊維嵩、回復率の結果を表1に示す。
【0072】
[実施例7]
表1に示した「断面形状」の欄に記載の繊維断面形状となるような紡糸口金(フィン8本)に変更し、冷却用空気を1.0m/秒に変更した以外は、実施例1と同様の方法で未延伸糸を得た。
次いで、実施例1と同様の方法で、繊度4.6dtexの捲縮綿を得た。
フィン指数、繊維充填率、空気開繊繊維嵩、回復率の結果を表1に示す。
【0073】
[比較例1]
ポリトリメチレンテレフタレート(PTT;固有粘度0.95、融点225℃)チップを260℃で溶融し、表1の比較例1に示した「断面形状」の欄に記載の繊維断面形状となるような紡糸口金(フィン8本)を用い、(280ホール)より吐出量240g/分で吐出させた糸条に、口金面下3.0cmの位置で20℃の冷却用空気を0.7m/秒の流速で糸条の片側から糸条の進行方向に垂直な角度で吹き当て1150m/分の巻取速度で未延伸糸を得た。次いで、得られた未延伸糸を14万dtexのトウにした後、55℃の温水中で1.62倍、続いて65℃の温水中で1.15倍と2段階で延伸した(全延伸倍率1.86倍)。延伸して得られたトウに部分的に機械捲縮を付与し、円筒型エジェクターを通過させ、圧空流入量の調整によりトウ内に束状の繊維が見られなくなるよう開繊した後、155℃で弛緩熱収縮処理を施して、スパイラル状の三次元捲縮を有する延伸糸を51mmの繊維長に切断し、繊度4.6dtexの捲縮綿を得た。フィン指数、繊維充填率、空気開繊繊維嵩、回復率の結果を表1に示す。
【0074】
[比較例2]
ポリトリメチレンテレフタレート(PTT;固有粘度0.95、融点225℃)チップを260℃で溶融し、表1に示した「断面形状」の欄に記載の繊維断面形状となるような紡糸口金(フィン8本)を用い(280ホール)より吐出量240g/分で吐出させた糸条に、口金面下4.0cmの位置で20℃の冷却用空気を1.0m/秒の流速で糸条の片側から糸条の進行方向に垂直な角度で吹き当て1150m/分の巻取速度で未延伸糸を得た。
【0075】
次いで、得られた未延伸糸を14万dtexのトウにした後、55℃の温水中で1.62倍、続いて65℃の温水中で1.15倍と2段階で延伸した(全延伸倍率1.86倍)。延伸して得られたトウに部分的に機械捲縮を付与し、円筒型エジェクターを通過させ、圧空流入量の調整によりトウ内に束状の繊維が見られなくなるよう開繊した後、155℃で弛緩熱収縮処理を施して、スパイラル状の三次元捲縮を有する延伸糸を51mmの繊維長に切断し、繊度4.5dtexの捲縮綿を得た。フィン指数、繊維充填率、空気開繊繊維嵩、回復率の結果を表1に示す。
【0076】
[比較例3]
ポリエチレンテレフタレート(PET;固有粘度0.65、融点258℃)チップを285℃で溶融し、表1に示した「断面形状」の欄に記載の繊維断面形状となるような紡糸口金(フィンなし)を用い、(348ホール)より吐出量490g/分で吐出させた糸条に、口金面下2.1cmの位置で20℃の冷却用空気を0.8m/秒の流速で糸条の片側から糸条の進行方向に垂直な角度で吹き当て1200m/分の巻取速度で未延伸糸を得た。次いで、得られた未延伸糸を14万dtexのトウにした後、72℃の温水中で2.2倍、続いて92℃の温水中で1.15倍と2段階で延伸した(全延伸倍率2.53倍)。延伸して得られたトウを、円筒型エジェクターを通過させ、圧空流入量の調整によりトウ内に束状の繊維が見られなくなるよう開繊した後、155℃で弛緩熱収縮処理を施して、スパイラル状の三次元捲縮を有する延伸糸を51mmの繊維長に切断し、繊度5.6dtexの捲縮綿を得た。空気開繊繊維嵩、回復率の結果を表1に示す。
中綿の実施例について、以下に詳細を示す。
【0077】
【表1】
【0078】
[実施例8]
実施例1で得たPTT繊維100質量%を空気開繊し、中綿用の開繊繊維を得た。得ら
れた中綿の初期嵩と圧縮嵩、保温率の結果を表2に示す。
【0079】
[実施例9]
実施例1で得たPTT繊維80質量%と、比較例3で得たPET繊維20質量%を、その比率でエジェクターに吸引させながら徐々に空気開繊し、中綿用の開繊繊維を得た。得られた中綿の初期嵩と圧縮嵩、保温率の結果を表2に示す。
【0080】
[実施例10]
実施例1で得たPTT繊維60質量%と、比較例3で得たPET繊維40質量%を、その比率でエジェクターに吸引させながら徐々に空気開繊し、中綿用の開繊繊維を得た。得られた中綿の初期嵩と圧縮嵩、保温率の結果を表2に示す。
【0081】
[実施例11]
実施例3で得たPTT繊維60質量%と、比較例3で得たPET繊維40質量%を、その比率でエジェクターに吸引させながら徐々に空気開繊し、中綿用の開繊繊維を得た。得られた中綿の初期嵩と圧縮嵩、保温率の結果を表2に示す。
【0082】
[実施例12]
実施例4で得たPTT繊維60質量%と、比較例3で得たPET繊維40質量%を、その比率でエジェクターに吸引させながら徐々に空気開繊し、中綿用の開繊繊維を得た。得られた中綿の初期嵩と圧縮嵩、保温率の結果を表2に示す。
【0083】
[実施例13]
実施例5で得たPTT繊維60質量%と、比較例3で得たPET繊維40質量%を、その比率でエジェクターに吸引させながら徐々に空気開繊し、中綿用の開繊繊維を得た。得られた中綿の初期嵩と圧縮嵩、保温率の結果を表2に示す。
【0084】
[実施例14]
実施例6で得たPTT繊維100質量%を空気開繊し、中綿用の開繊繊維を得た。得られた中綿の初期嵩と圧縮嵩、保温率の結果を表2に示す。
【0085】
[実施例15]
実施例1で得たPTT繊維60質量%と、実施例2で得たPTT繊維40質量%を、その比率で混ぜながら徐々に空気開繊し、中綿用の開繊繊維を得た。得られた中綿の初期嵩と圧縮嵩、保温率の結果を表2に示す。
【0086】
[実施例16]
実施例7で得たPTT繊維60質量%と、実施例1で得たPTT繊維40質量%を、その比率で混ぜながら徐々に空気開繊し、中綿用の開繊繊維を得た。得られた中綿の初期嵩と圧縮嵩、保温率の結果を表2に示す。
【0087】
[比較例4]
実施例1で得たPTT繊維40質量%と、比較例3で得たPET繊維60質量%を、その比率で混ぜながら徐々に空気開繊し、中綿用の開繊繊維を得た。得られた中綿の初期嵩と圧縮嵩、保温率の結果を表2に示す。
【0088】
[比較例5]
実施例3で得たPTT繊維40質量%と、比較例3で得たPET繊維60質量%を、その比率で混ぜながら徐々に空気開繊し、中綿用の開繊繊維を得た。得られた中綿の初期嵩と圧縮嵩、保温率の結果を表2に示す。
【0089】
【表2】
【0090】
[実施例17]
ポリトリメチレンテレフタレート(PTT;固有粘度0.95、融点225℃)チップ
を260℃で溶融し、表3に示した「断面形状」の欄に記載の繊維断面形状となるような紡糸口金(フィン8本)を用い、(280ホール)より吐出量240g/分で吐出させた糸条に、口金面下3.0cmの位置で20℃の冷却用空気を0.7m/秒の流速で糸条の片側から糸条の進行方向に垂直な角度で吹き当て1150m/分の巻取速度で未延伸糸を得た。
【0091】
次いで、得られた未延伸糸を14万dtexのトウにした後、55℃の温水中で1.91倍、続いて65℃の温水中で1.10倍と2段階で延伸した(全延伸倍率2.10倍)。延伸して得られたトウを、円筒型エジェクターを通過させ、圧空流入量の調整によりトウ内に束状の繊維が見られなくなるよう開繊した後、155℃で弛緩熱収縮処理を施して、スパイラル状の三次元捲縮を有する延伸糸を51mmの繊維長に切断し、繊度4.6dtexの捲縮綿を得た。フィン指数、繊維充填率、空気開繊繊維嵩、回復率の結果を表3に示す。
【0092】
[実施例18]
表3に示した「断面形状」の欄に記載の繊維断面形状となるような紡糸口金を用いて、冷却用空気を1.0m/秒に変更した以外は、実施例17と同様の方法で未延伸糸を得た。
次いで、実施例1と同様の方法で、繊度4.7dtexの捲縮綿を得た。
フィン指数、繊維充填率、空気開繊繊維嵩、回復率の結果を表3に示す。
【0093】
[実施例19]
表3に示した「断面形状」の欄に記載の繊維断面形状となるような紡糸口金(フィン10本)を用いた以外は実施例17と同様の方法で未延伸糸を得た。
次いで、実施例1と同様の方法で、繊度4.6dtexの捲縮綿を得た。
フィン指数、繊維充填率、空気開繊繊維嵩、回復率の結果を表3に示す。
【0094】
[実施例20]
表3に示した「断面形状」の欄に記載の繊維断面形状となるような紡糸口金(フィン6本)を用いた以外は実施例17と同様の方法で未延伸糸を得た。
次いで、実施例1と同様の方法で、繊度4.6dtexの捲縮綿を得た。
フィン指数、繊維充填率、空気開繊繊維嵩、回復率の結果を表3に示す。
【0095】
[実施例21]
表3に示した「断面形状」の欄に記載の繊維断面形状となるような紡糸口金(フィン4本)を用いた以外は実施例17と同様の方法で未延伸糸を得た。
次いで、実施例1と同様の方法で、繊度4.8dtexの捲縮綿を得た。
フィン指数、繊維充填率、空気開繊繊維嵩、回復率の結果を表3に示す。
【0096】
[実施例22]
ポリエチレンテレフタレート(PET;固有粘度0.65、融点258℃)チップを285℃で溶融し、表1に示した「断面形状」の欄に記載の繊維断面形状となるような紡糸口金(フィン8本)を用い、(360ホール)より吐出量410g/分で吐出させた糸条に、口金面下2.1cmの位置で20℃の冷却用空気を1.0m/秒の流速で糸条の片側から糸条の進行方向に垂直な角度で吹き当て1200m/分の巻取速度で未延伸糸を得た。
【0097】
次いで、得られた未延伸糸を14万dtexのトウにした後、72℃の温水中で2.18倍、続いて92℃の温水中で1.05倍と2段階で延伸した(全延伸倍率2.29倍)。延伸して得られたトウを、円筒型エジェクターを通過させ、圧空流入量の調整によりト
ウ内に束状の繊維が見られなくなるよう開繊した後、155℃で弛緩熱収縮処理を施して、スパイラル状の三次元捲縮を有する延伸糸を51mmの繊維長に切断し、繊度4.7dtexの捲縮綿を得た。フィン指数、繊維充填率、空気開繊繊維嵩、回復率の結果を表3に示す。
【0098】
[比較例6]
ポリトリメチレンテレフタレート(PTT;固有粘度0.95、融点225℃)チップを260℃で溶融し、表3に示した「断面形状」の欄に記載の繊維断面形状となるような紡糸口金(フィン8本)を用い、(280ホール)より吐出量240g/分で吐出させた糸条に、口金面下2.1cmの位置で20℃の冷却用空気を1.1m/秒の流速で糸条の片側から糸条の進行方向に垂直な角度で吹き当て1150m/分の巻取速度で未延伸糸を得た。次いで、得られた未延伸糸を14万dtexのトウにした後、55℃の温水中で1.62倍、続いて65℃の温水中で1.15倍と2段階で延伸した(全延伸倍率1.86倍)。延伸して得られたトウを、円筒型エジェクターを通過させ、圧空流入量の調整によりトウ内に束状の繊維が見られなくなるよう開繊した後、155℃で弛緩熱収縮処理を施して、スパイラル状の三次元捲縮を有する延伸糸を51mmの繊維長に切断し、繊度4.8dtexの捲縮綿を得た。フィン指数、繊維充填率、空気開繊繊維嵩、回復率の結果を表3に示す。
【0099】
[比較例7]
ポリトリメチレンテレフタレート(PTT;固有粘度0.95、融点225℃)チップを260℃で溶融し、表1に示した「断面形状」の欄に記載の繊維断面形状となるような紡糸口金(フィン8本)を用い、(280ホール)より吐出量520g/分で吐出させた糸条に、口金面下3.0cmの位置で20℃の冷却用空気を1.3m/秒の流速で糸条の片側から糸条の進行方向に垂直な角度で吹き当て1150m/分の巻取速度で未延伸糸を得た。次いで、得られた未延伸糸を14万dtexのトウにした後、55℃の温水中で2.00倍、続いて65℃の温水中で1.10倍と2段階で延伸した(全延伸倍率2.20倍)。延伸して得られたトウを、円筒型エジェクターを通過させ、圧空流入量の調整によりトウ内に束状の繊維が見られなくなるよう開繊した後、155℃で弛緩熱収縮処理を施して、スパイラル状の三次元捲縮を有する延伸糸を51mmの繊維長に切断し、繊度9.8dtexの捲縮綿を得た。フィン倍率、繊維充填率、空気開繊繊維嵩、回復率の結果を表3に示す。
【0100】
[比較例8]
ポリエチレンテレフタレート(PET;固有粘度0.65、融点258℃)チップを285℃で溶融し、表1に示した「断面形状」の欄に記載の繊維断面形状となるような紡糸口金(フィン8本)を用い、(360ホール)より吐出量410g/分で吐出させた糸条に、口金面下2.1cmの位置で20℃の冷却用空気を1.5m/秒の流速で糸条の片側から糸条の進行方向に垂直な角度で吹き当て1200m/分の巻取速度で未延伸糸を得た。次いで、得られた未延伸糸を14万dtexのトウにした後、72℃の温水中で2.18倍、続いて92℃の温水中で1.05倍と2段階で延伸した(全延伸倍率2.29倍)。延伸して得られたトウを、円筒型エジェクターを通過させ、圧空流入量の調整によりトウ内に束状の繊維が見られなくなるよう開繊した後、155℃で弛緩熱収縮処理を施して、スパイラル状の三次元捲縮を有する延伸糸を51mmの繊維長に切断し、繊度4.6dtexの捲縮綿を得た。フィン倍率、繊維充填率、空気開繊繊維嵩、回復率の結果を表3に示す。
【0101】
[比較例9]
ポリトリメチレンテレフタレート(PTT;固有粘度0.95、融点225℃)チップを260℃で溶融し、表1に示した「断面形状」の欄に記載の繊維断面形状となるような
紡糸口金(フィン3本)を用い、(280ホール)より吐出量240g/分で吐出させた糸条に、口金面下3.0cmの位置で20℃の冷却用空気を1.3m/秒の流速で糸条の片側から糸条の進行方向に垂直な角度で吹き当て1150m/分の巻取速度で未延伸糸を得た。次いで、得られた未延伸糸を14万dtexのトウにした後、55℃の温水中で1.91倍、続いて65℃の温水中で1.10倍と2段階で延伸した(全延伸倍率2.10倍)。延伸して得られたトウを、円筒型エジェクターを通過させ、圧空流入量の調整によりトウ内に束状の繊維が見られなくなるよう開繊した後、155℃で弛緩熱収縮処理を施して、スパイラル状の三次元捲縮を有する延伸糸を51mmの繊維長に切断し、繊度4.8dtexの捲縮綿を得た。フィン倍率、繊維充填率、空気開繊繊維嵩、回復率の結果を表3に示す。
【0102】
[比較例10]
ポリエチレンテレフタレート(PET;固有粘度0.65、融点258℃)チップを285℃で溶融し、表1に示した「断面形状」の欄に記載の繊維断面形状となるような紡糸口金(フィン8本)を用い、(534ホール)より吐出量600g/分で吐出させた糸条に、口金面下2.8cmの位置で25℃の冷却用空気を1.7m/秒の流速で糸条の外周側から内周側へ、糸条の進行方向に垂直な角度で吹き当て1200m/分の巻取速度で未延伸糸を得た。
【0103】
次いで、得られた未延伸糸を14万dtexのトウにした後、72℃の温水中で2.24倍、続いて92℃の温水中で1.05倍と2段階で延伸した(全延伸倍率2.35倍)。延伸して得られたトウをクリンパーに通過して機械捲縮を付与した後、155℃で弛緩熱収縮処理を施して、機械捲縮のみを有する延伸糸を51mmの繊維長に切断し、繊度4.7dtexの捲縮綿を得た。フィン指数、繊維充填率、空気開繊ウェブ繊維嵩、回復率の結果を表3に示す。
【0104】
【表3】
【0105】
中綿の実施例について、以下に詳細を示す。
【0106】
[実施例23]
実施例17のPTT繊維100質量%を空気開繊し、中綿用の開繊繊維を得た。得られた中綿の初期嵩と圧縮嵩、保温率の結果を表4に示す。
【0107】
[実施例24]
実施例17のPTT繊維80質量%と、比較例3のPET繊維20質量%を、その比率で混ぜながら徐々に空気開繊し、中綿用の開繊繊維を得た。得られた中綿の初期嵩と圧縮嵩、保温率の結果を表4に示す。
【0108】
[実施例25]
実施例17のPTT繊維60質量%と、実施例21のPTT繊維40質量%を、その比率で混ぜながら徐々に空気開繊し、中綿用の開繊繊維を得た。得られた中綿の初期嵩と圧縮嵩、保温率の結果を表4に示す。
【0109】
[実施例26]
実施例22のPET繊維100質量%を空気開繊し、中綿用の開繊繊維を得た。得られた中綿の初期嵩と圧縮嵩、保温率の結果を表4に示す。
【0110】
[比較例11]
実施例17のPTT繊維40質量%と、比較例3のPET繊維60質量%を、その比率で混ぜながら徐々に空気開繊し、中綿用の開繊繊維を得た。得られた中綿の初期嵩と圧縮嵩、保温率の結果を表4に示す。
【0111】
[比較例12]
実施例21のPTT繊維40質量%と、比較例3のPET繊維60質量%を、その比率で混ぜながら徐々に空気開繊し、中綿用の開繊繊維を得た。得られた中綿の初期嵩と圧縮嵩、保温率の結果を表4に示す。
【0112】
【表4】
【符号の説明】
【0113】
1. コア部中心
2. コア部
3. フィン部:コア部から外周方向に突出した部位
4. 1を中心とする円
5. 繊維断面における外接円
6. フィン部と2点で接する外接円
7. フィン部と3点で接する外接円
8. フィン部と4点で接する外接円
9. 開繊させる繊維
10. 繊維吸引部位
11. 圧縮空気送気ライン
12. 圧縮空気による整流機構を有する部位
13. 繊維を排出する部位
14. 繊維を捕集する部位
15. 開繊繊維
A:最大であるフィン部長さ
B:最小であるフィン部長さ
C:繊維軸に直行する断面の繊維部分面積
D:繊維軸に直行する断面における外接円面積
E:コア部サイズ
F:フィン部長さ
図1
図2
図3
図4
図5