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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154131
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】動力装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/04 20100101AFI20221005BHJP
   F16H 1/46 20060101ALI20221005BHJP
   F16H 48/06 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
F16H57/04 J
F16H57/04 N
F16H1/46
F16H48/06
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057024
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【弁理士】
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(72)【発明者】
【氏名】川口 義高
(72)【発明者】
【氏名】木藤 亮
(72)【発明者】
【氏名】竹谷 和晃
【テーマコード(参考)】
3J027
3J063
【Fターム(参考)】
3J027FB02
3J027GB03
3J027GC24
3J027GC26
3J027GD04
3J027GD07
3J027GD13
3J027HB07
3J063AA02
3J063AB12
3J063AB13
3J063AC01
3J063XD15
3J063XD32
3J063XD53
3J063XD62
3J063XD73
3J063XE06
3J063XF13
3J063XF14
(57)【要約】
【課題】潤滑油に含まれる多様な異物を簡便な構造により捕捉する。
【解決手段】動力装置1は、駆動源と、変速機5と、差動装置6と、オイルガター7と、を備える。差動装置6は、差動ケース61と、軸受66と、デファレンシャルギヤと、を有する。オイルガター7は、軸受66に潤滑油を導く。また、オイルガター7は、差動装置6の側方に位置し、凹部により潤滑油に含まれる異物Cを捕捉する第1コンタミキャッチ部71と、第1コンタミキャッチ部71の下流側且つ差動装置6の側方に位置し、凸部により潤滑油に含まれる異物Cを捕捉する第2コンタミキャッチ部72と、第1コンタミキャッチ部71の上流側且つ変速機5のピニオンギヤ53の側方に位置し、凹部により潤滑油に含まれる異物Cを捕捉する第3コンタミキャッチ部73と、を有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機又は内燃機関からなる駆動源と、
前記駆動源と車両の左車輪及び右車輪との間の動力伝達経路上に配置される変速機と、
前記変速機により変速された出力を前記左車輪と前記右車輪とに分配する差動装置と、
前記差動装置に潤滑油を導くオイルガターと、を備える動力装置であって、
前記変速機は、
前記駆動源と機械的に接続される第1ギヤと、
前記第1ギヤと同一の回転軸心を含み、前記差動装置と機械的に接続される第2ギヤと、
前記第1ギヤ及び前記第2ギヤのそれぞれと噛み合う複数のピニオンギヤと、
複数の前記ピニオンギヤのそれぞれを自転可能に支持するピニオンホルダと、を備え、
前記差動装置は、
前記回転軸心の軸方向において、前記第1ギヤに対して前記駆動源とは反対側に位置し、
前記第2ギヤと機械的に接続される差動ケースと、
前記差動ケースを支持する軸受と、
前記差動ケースに収容されたデファレンシャルギヤと、を有し、
前記オイルガターは、
前記軸受に潤滑油を導き、
前記差動装置の側方に位置し、当該オイルガターの底面に形成された凹部により前記潤滑油に含まれる異物を捕捉する第1コンタミキャッチ部と、
前記第1コンタミキャッチ部の下流側且つ前記差動装置の側方に位置し、当該オイルガターの底面に形成された凸部により前記潤滑油に含まれる異物を捕捉する第2コンタミキャッチ部と、
前記第1コンタミキャッチ部の上流側且つ複数の前記ピニオンギヤのうちの少なくともいずれかの側方に位置し、当該オイルガターの底面に形成された凹部により前記潤滑油に含まれる異物を捕捉する第3コンタミキャッチ部と、を有する、動力装置。
【請求項2】
前記オイルガターは、
前記第1コンタミキャッチ部の上流側且つ前記第3コンタミキャッチ部の下流側に少なくとも位置する第1区間と、
前記第1区間の下流側に少なくとも位置し、前記第1区間よりも大きく傾斜した第2区間と、を有する、請求項1に記載の動力装置。
【請求項3】
前記第1区間は、前記第2ギヤの側方に位置する、請求項2に記載の動力装置。
【請求項4】
前記第3コンタミキャッチ部において前記オイルガターの底面に形成された凹部は、前記第1コンタミキャッチ部において前記オイルガターの底面に形成された凹部よりも、深く形成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の動力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、動力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両に搭載され、潤滑油を用いる装置において、潤滑油に含まれる異物を捕捉するための構造を潤滑油の流通経路に設けることが行われている。例えば特許文献1には、変速機における潤滑油の流通経路にマグネットを配置することにより、潤滑油に含まれる鉄等の異物を磁力で捕捉する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-150949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような技術では、磁力により引き寄せられない種類の材質からなる異物を捕捉することが難しい。また、新たにマグネットを配置することにより構造が複雑化する場合があり、特に、潤滑油に含まれる様々な大きさの異物に対応するために互いに性能等の異なる複数のマグネットを配置しようとすると、構造が一層複雑化する。
【0005】
そこで、本開示に係る動力装置は、潤滑油に含まれる多様な異物を簡便な構造により捕捉することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る動力装置(1)は、電動機(2)又は内燃機関からなる駆動源と、駆動源と車両の左車輪及び右車輪との間の動力伝達経路上に配置される変速機(5)と、変速機(5)により変速された出力を左車輪と右車輪とに分配する差動装置(6)と、差動装置(6)に潤滑油を導くオイルガター(7)と、を備える動力装置(1)であって、変速機(5)は、駆動源と機械的に接続される第1ギヤ(51)と、第1ギヤ(51)と同一の回転軸心を含み、差動装置(6)と機械的に接続される第2ギヤ(52)と、第1ギヤ(51)及び第2ギヤ(52)のそれぞれと噛み合う複数のピニオンギヤ(53)と、複数のピニオンギヤ(53)のそれぞれを自転可能に支持するピニオンホルダ(54)と、を備え、差動装置(6)は、回転軸心の軸方向において、第1ギヤ(51)に対して駆動源とは反対側に位置し、第2ギヤ(52)と機械的に接続される差動ケース(61)と、差動ケース(61)を支持する軸受(66)と、差動ケース(61)に収容されたデファレンシャルギヤと、を有し、オイルガター(7)は、軸受(66)に潤滑油を導き、差動装置(6)の側方に位置し、当該オイルガター(7)の底面に形成された凹部により潤滑油に含まれる異物(C)を捕捉する第1コンタミキャッチ部(71)と、第1コンタミキャッチ部(71)の下流側且つ差動装置(6)の側方に位置し、当該オイルガター(7)の底面に形成された凸部により潤滑油に含まれる異物(C)を捕捉する第2コンタミキャッチ部(72)と、第1コンタミキャッチ部(71)の上流側且つ複数のピニオンギヤ(53)のうちの少なくともいずれかの側方に位置し、当該オイルガター(7)の底面に形成された凹部により潤滑油に含まれる異物(C)を捕捉する第3コンタミキャッチ部(73)と、を有する。
【0007】
この動力装置(1)によれば、オイルガター(7)の上流側から順に、凹部により構成される第3コンタミキャッチ部(73)、凹部により構成される第1コンタミキャッチ部(71)、及び凸部により構成される第2コンタミキャッチ部(72)が設けられている。これにより、オイルガター(7)を流れる潤滑油に含まれる異物(C)のうち、重量又はサイズが比較的大きい異物(C)が、第3コンタミキャッチ部(73)の凹部に沈降することにより捕捉される。また、第3コンタミキャッチ部(73)で捕捉されなかった異物Cのうち、重量又はサイズが中程度の異物(C)が、第2コンタミキャッチ部(72)の凹部に沈降することにより捕捉される。さらに、第1コンタミキャッチ部(71)及び第2コンタミキャッチ部(72)で捕捉されなかった重量又はサイズが比較的小さい異物(C)が、第1コンタミキャッチ部(71)の凸部に堰き止められることにより捕捉される。よって、潤滑油に含まれる多様な異物(C)を簡便な構造により捕捉することができる。また、動力装置(1)によれば、異物(C)による軸受(66)の摩耗を抑制することができる。さらに、動力装置(1)によれば、オイルガター(7)により潤滑油が軸受(66)に導かれた後に、当該潤滑油が差動ケース(61)の下部に供給されることで当該部位における油面が上昇しやすい。その結果、差動ピニオンシャフト(62)の少なくとも一部が潤滑油に浸ることで当該潤滑油が左右のサイドギヤ(64A,64B)に導かれる。このとき、潤滑油に含まれる異物(C)がオイルガター(7)により捕捉(除去)されているため、異物(C)による差動ピニオンシャフト(62)及び左右のサイドギヤ(64A,64B)の摩耗についても抑制することができる。
【0008】
本開示の一態様に係る動力装置(1)では、オイルガター(7)は、第1コンタミキャッチ部(71)の上流側且つ第3コンタミキャッチ部(73)の下流側に少なくとも位置する第1区間(70a)と、第1区間(70a)の下流側に少なくとも位置し、第1区間(70a)よりも大きく傾斜した第2区間(70b)と、を有してもよい。
【0009】
ピニオンギヤ(53)によると主として低回転域から潤滑油が掻き上げられるため、オイルガター(7)の傾斜が比較的小さくてもオイルガター(7)を潤滑油が好適に流れる。このため、ピニオンギヤ(53)(例えば、ピニオンギヤ(53)の大径ギヤ(53a)(カウンタギヤ))により掻き上げられた潤滑油に含まれる重量又はサイズの比較的大きい異物(C)を、第3コンタミキャッチ部(73)により捕捉することができる。また、変速機(5)及び差動装置(6)によると主として中高回転域から潤滑油が掻き上げられるため、オイルガター(7)の傾斜を比較的大きくすることによりオイルガター(7)を潤滑油が好適に流れる。このため、第3コンタミキャッチ部(73)により捕捉されずに通過した異物(C)、並びに、変速機(5)(例えば、変速機(5)の第2ギヤ(52)(リングギヤ))及び差動装置(6)により新たに掻き上げられた潤滑油に含まれる重量又はサイズが中程度又は比較的小さい異物(C)を、第1コンタミキャッチ部(71)及び第2コンタミキャッチ部(72)により捕捉することができる。ここで、第2区間(70b)は大きく傾斜しており第2区間(70b)を流れる潤滑油の流速を増大させやすいため、第1コンタミキャッチ部(71)及び第2コンタミキャッチ部(72)のそれぞれに重量又はサイズの異なる異物(C)を捕捉する機能を好適に分配させることが可能となる。このように、オイルガター(7)に隣接して配置されている機構の種類(例えば、変速機(5)の第2ギヤ(52)及びピニオンギヤ(53)、並びに差動装置(6))によって潤滑油を掻き上げる撹拌性能が異なることからオイルガター(7)を流れる潤滑油の流量に差が生じても、第1コンタミキャッチ部(71)、第2コンタミキャッチ部(72)、及び第3コンタミキャッチ部(73)のうち流量に適した部分によって、より確実に異物(C)を捕捉することが可能となる。
【0010】
本開示の一態様に係る動力装置(1)では、第1区間(70a)は、第2ギヤ(52)の側方に位置してもよい。
【0011】
変速機(5)の第2ギヤ(52)(リングギヤ)によると主として中回転域から潤滑油が掻き上げられるため、傾斜が比較的小さい第1区間(70a)で潤滑油を十分に回収することができる。そして、回収された潤滑油を傾斜が比較的大きい第2区間(70b)に送出することにより、オイルガター(7)を潤滑油が好適に流れる。したがって、流量に適した部分によって、より確実に異物(C)を捕捉することが可能となる。
【0012】
本開示の一態様に係る動力装置(1)では、第3コンタミキャッチ部(73)においてオイルガター(7)の底面に形成された凹部は、第1コンタミキャッチ部(71)においてオイルガター(7)の底面に形成された凹部よりも、深く形成されていてもよい。
【0013】
これによれば、第3コンタミキャッチ部(73)により重量又はサイズが相対的に大きい異物(C)を捕捉するとともに、第1コンタミキャッチ部(71)により重量又はサイズが相対的に小さい異物(C)を捕捉することができる。したがって、より確実に異物(C)を捕捉することが可能となる。
【0014】
なお、上記の括弧内の符号は、後述する実施形態における構成要素の符号を本開示の一例として示したものであって、本開示を実施形態の態様に限定するものではない。
【発明の効果】
【0015】
このように、本開示に係る動力装置は、潤滑油に含まれる多様な異物を簡便な構造により捕捉することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本実施形態に係る動力装置の断面図である。
図2図2は、隔壁及びピニオンギヤを差動装置側から見た側面図である。
図3図3は、第2ギヤ、ピニオンギヤ、及びピニオンホルダを差動装置側から見た斜視図である。
図4図4は、図3のIV-IV線に沿う断面図である。
図5図5は、オイルガターを説明するための動力装置の断面を示す斜視図である。
図6図6は、オイルガターの斜視図である。
図7図7は、図6のVII-VII線に沿った断面を示すオイルガターの側面図である。
図8図8は、図6のVIII-VIII線に沿った断面を示すオイルガターの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して例示的な実施形態について説明する。なお、各図における同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
[動力装置]
図1は、本実施形態に係る動力装置1の断面図である。図2は、隔壁43及びピニオンギヤ53を差動装置6側から見た側面図である。図2に示されるI-I線に沿う断面図が図1に相当する。図3は、第2ギヤ52、ピニオンギヤ53、及びピニオンホルダ54を差動装置6側から見た斜視図である。図4は、図3のIV-IV線に沿う断面図である。図1図4に示される動力装置1は、電動機2を車軸駆動用の駆動源とするものであり、前輪駆動装置又は後輪駆動装置としてハイブリッド車、電気自動車等の電動車両に設けられる。なお、駆動源は、車軸駆動可能なものであれば電動機2に限定されず、例えば内燃機関であってもよい。
【0019】
動力装置1は、左車輪(不図示)又は右車輪(不図示)にそれぞれ接続される左右の車軸3A,3Bと連結されている。車軸3A,3Bは、車幅方向に沿って同軸上に配置されている。動力装置1のハウジング4は全体が略円筒状に形成され、動力装置1は、ハウジング4の内部に、車軸駆動用の電動機2、電動機2の駆動回転を減速する変速機5、変速機5で減速された駆動回転を車軸3A、3Bに分配する差動装置6、及び当該動力装置1の各機構を潤滑する潤滑油を回収するオイルガター7を備える。なお、動力装置1は、上述したように駆動源として電動機2に代えて(又は、電動機2に加えて)内燃機関を備えてもよい。また、図1~4において、オイルガター7は図示されていない。
【0020】
ハウジング4は、電動機2を収容する第1ケース41、及び、変速機5及び差動装置6を収容する第2ケース42を備える。第1ケース41と第2ケース42との境界部には隔壁43が設けられ、この隔壁43によって第1ケース41の内部空間と第2ケース42の内部空間とが仕切られている。隔壁43は、ボルト47を介して第1ケース41の外周部に設けられた段差部41bに締結される。このため、第1ケース41と隔壁43との合わせ面A1は、第1ケース41と第2ケース42との合わせ面A2よりも第1ケース41側に位置している。ハウジング4の底部は、潤滑油(液状媒体)を貯留する貯留部44として機能する。貯留部44において潤滑油が貯留される液面である静止油面レベルは、電動機2における潤滑油の掻上げ損失を低減するために、電動機2のエアギャップ(後述するステータ21の内周とロータ22の外周との間に確保される隙間)よりも低く設定されている。なお、隔壁43の下部には、潤滑油の流通を許容する連通口43aが形成されている。
【0021】
[電動機]
電動機2は、第1ケース41の内周部に固定されるステータ21、及び、ステータ21の内周側に回転可能に配置されるロータ22を備える。ロータ22の内周部には、一方の車軸3Aの外周を囲繞するロータ軸23が結合され、このロータ軸23が車軸3Aと同軸上に相対回転可能となるように第1ケース41の端部壁41a及び隔壁43のそれぞれに軸受24,25を介して支持されている。また、車軸3A及びロータ軸23の一端側は、隔壁43を貫通して第2ケース42内に延出し、車軸3Aの他端側は、第1ケース41の端部壁41aを貫通してハウジング4の外側方に延出している。
【0022】
[変速機]
変速機5は、電動機2と車両の左車輪及び右車輪との間の動力伝達経路上に配置される。変速機5は、電動機2と機械的に接続される第1ギヤ51、第1ギヤ51と同一の回転軸心を有し、差動装置6の差動ケース61と機械的に接続される第2ギヤ52(リングギヤ)、第1ギヤ51及び第2ギヤ52のそれぞれと噛み合う複数のピニオンギヤ53、及び複数のピニオンギヤ53のそれぞれを自転可能かつ公転不能に支持するピニオンホルダ54を備えている。変速機5において、第1ギヤ51から電動機2の駆動回転が入力されると、ピニオンギヤ53及び第2ギヤ52を介して減速された駆動回転が差動装置6の差動ケース61に出力される。
【0023】
第1ギヤ51は、外歯車からなり、ロータ軸23に一体に形成されている。ピニオンギヤ53は、外歯車からなる大径ギヤ53a(カウンタギヤ)、外歯車からなる小径ギヤ53b、並びに大径ギヤ53a及び小径ギヤ53bを一体回転可能に支持するピニオンシャフト53cを備える。大径ギヤ53aは、ピニオンシャフト53cの電動機2側に結合され、第1ギヤ51と噛み合う。また、小径ギヤ53bは、ピニオンシャフト53cの差動装置6側に一体に形成され、第2ギヤ52と噛み合う。ピニオンシャフト53cは、電動機2側の端部が隔壁43に軸受55を介して回転可能に支持され、差動装置6側の端部がピニオンホルダ54のピニオンギヤ支持部54aに軸受56を介して回転可能に支持されている。
【0024】
変速機5は、3つのピニオンギヤ53を備える。3つのピニオンギヤ53は、第1ギヤ51を中心として周方向に等間隔(120°間隔)で配置されている。3つのピニオンギヤ53のうち少なくとも1つは、一部又は全体が前述した貯留部44内に位置し、電動機2の駆動に伴う回転により貯留部44内の潤滑油を掻き上げる回転体として機能している。例えば図2においては、第1ギヤ51の真下に配置される最下部のピニオンギヤ53が潤滑油を掻き上げる回転体として機能し、掻き上げられた潤滑油が上側の2つのピニオンギヤ53に供給されている。ここで、図2において反時計回りにピニオンギヤ53が回転すると仮定すると、最下部のピニオンギヤ53の回転によって掻き上げられた潤滑油は、主に左上に位置するピニオンギヤ53に供給され、さらに左上に位置するピニオンギヤ53の回転によって飛散した潤滑油は主に右上に位置するピニオンギヤ53に順次供給される。
【0025】
第2ギヤ52は、ギヤ部52aが内歯車からなり、ピニオンギヤ53の小径ギヤ53bと噛み合う。第2ギヤ52は、ギヤ部52aからピニオンホルダ54(ピニオンギヤ支持部54a)の外周側を跨いで差動装置6側に延出する接続部52bを備え、この接続部52bがスプライン等の接続手段を介して差動装置6の差動ケース61と機械的に接続されている。換言すると、第2ギヤ52は、差動ケース61との接続部52bを構成する第2ギヤ大径部52c、ピニオンギヤ53と噛み合うギヤ部52aを構成する第2ギヤ小径部52d、及び第2ギヤ大径部52cと第2ギヤ小径部52dとを連結する第2ギヤ連結部52eを有しており、第2ギヤ小径部52dの外径は、第2ギヤ大径部52cの外径よりも小さくなっている。また、第2ギヤ52は、下端部が前述した貯留部44内に位置し、電動機2の駆動に伴う回転により貯留部44内の潤滑油を掻き上げる回転体としても機能している。
【0026】
ピニオンホルダ54は、軸受56を介してピニオンギヤ53のピニオンシャフト53cを回転可能に支持する3つのピニオンギヤ支持部54a、隔壁43に固定される3つの固定部54b、及びピニオンホルダ54の中心部(ピニオンギヤ支持部54a及び固定部54bの内径側)に形成された有底円筒状のカップ部54cを備える。
【0027】
ピニオンギヤ支持部54aは、差動装置6の差動ケース61と機械的に接続される第2ギヤ52と、ピニオンギヤ53の小径ギヤ53bと、の噛合部Mよりも差動装置6の差動ケース61側に配置されている。これにより、一端側が軸受55を介して隔壁43で支持されるピニオンシャフト53cの他端側を軸受56を介してピニオンギヤ支持部54aで支持することにより、ピニオンギヤ53を両持ち状態で適切に支持することが可能になる。
【0028】
3つの固定部54bは、周方向において隣接するピニオンギヤ支持部54aの中間部に位置しており、それぞれがボルト57を介して隔壁43に締結される。これにより、隔壁43は、ピニオンシャフト53cの支持部材とピニオンホルダ54の支持部材とに兼用される。
【0029】
カップ部54cは、軸方向において噛合部Mの一端側から他端側に亘って且つ径方向において噛合部Mの内周側で一方の車軸3Aの外周を空間部Sを介して囲繞するとともに、一端側の底部54dには、一方の車軸3Aが貫通する貫通孔54eが形成されている。また、カップ部54cの他端側の内周部は、軸受65を介して差動ケース61の一端側を回転可能に支持している。これにより、ピニオンホルダ54は、ピニオンギヤ53の支持部材と差動ケース61の支持部材とに兼用される。
【0030】
[差動装置]
差動装置6は、上述した第1ギヤ51及び第2ギヤ52の回転軸心の軸方向において、第1ギヤ51に対して電動機2とは反対側に位置している。つまり、差動装置6は、動力装置1において電動機2とは反対側の端部に配置されている。差動装置6は、変速機5により変速された出力を左車輪と右車輪とに分配する。より詳細には、差動装置6は、第2ギヤ52から差動ケース61に入力される駆動回転を左右の車軸3A,3Bに分配しつつ、左右の車軸3A,3Bの回転差を許容するために、差動ケース61、差動ピニオンシャフト62、差動ピニオンギヤ63、及び左右のサイドギヤ64A,64Bを備える。また、差動装置6は、差動ケース61を支持する軸受65,66を備える。
【0031】
差動ケース61は、差動ピニオンシャフト62と差動ピニオンギヤ63と左右のサイドギヤ64A,64Bとを収容する球状の差動ケース本体61a、差動ケース本体61aの外周部から径方向に延びて第2ギヤ52と機械的に接続される入力プレート61b、及び差動ケース本体61aの両側部から軸方向に延びる左右の延出部61c,61dを備える。一方の延出部61cは、内周部で一方の車軸3Aを回転自在に支持するとともに、外周部が軸受65を介してピニオンホルダ54で回転可能に支持されている。また、他方の延出部61dは、内周部で他方の車軸3Bを回転自在に支持するとともに、外周部が軸受66を介して第2ケース42の端部壁42aで回転可能に支持されている。つまり、軸受66は、上述した第1ギヤ51及び第2ギヤ52の回転軸心の軸方向において、差動装置6の両端部のうち第1ギヤ51とは反対側の端部に位置している。
【0032】
差動ピニオンシャフト62は、差動ケース本体61aに車軸3A,3Bと直交する方向を向いて支持されており、差動ケース本体61aの内部で傘歯車からなる2つの差動ピニオンギヤ63を回転可能に支持している。つまり、差動ピニオンシャフト62は、差動ケース61の回転に応じて差動ピニオンギヤ63を公転させつつ、差動ピニオンギヤ63の自転を許容している。
【0033】
左右のサイドギヤ64A,64Bは、傘歯車からなり、差動ピニオンギヤ63に対して両側方から噛み合うように差動ケース本体61aの内部に回転可能に支持されるとともに、スプラインなどの接続手段を介して左右の車軸3A,3Bと機械的に接続されている。差動ピニオンギヤ63が自転せずに公転している状態、例えば、直進走行時には、左右のサイドギヤ64A,64Bが等速で回転し、その駆動回転が左右の車軸3A,3Bに伝達される。また、カーブ走行時や右左折時には、差動ピニオンギヤ63が自転することにより、左右のサイドギヤ64A,64Bが相対回転し、左右の車軸3A,3Bの回転差が許容される。このように、差動ピニオンギヤ63及び左右のサイドギヤ64A,64Bは、差動ケース61に収容されたデファレンシャルギヤとして機能する。
【0034】
[オイルガター]
図5は、オイルガター7を説明するための動力装置1の断面を示す斜視図である。図6は、オイルガター7の斜視図である。図7は、図6のVII-VII線に沿った断面を示すオイルガター7の側面図である。図8は、図6のVIII-VIII線に沿った断面を示すオイルガター7の側面図である。図5図8に示されるオイルガター7は、差動装置6に潤滑油を導く経路(潤滑油の流通経路)である。オイルガター7は、ハウジング4の貯留部44から変速機5及び差動装置6等により掻き上げられた潤滑油を回収し、例えば差動装置6の差動ケース61(差動ケース61の延出部61d)を支持する軸受66に導く(供給する)。
【0035】
オイルガター7は、上側が開放された樋状を呈し、ハウジング4の第2ケース42における内周面に沿って動力装置1の軸方向(例えば、電動機2のロータ軸23の延在方向)に延在している。具体的には、オイルガター7は、少なくとも変速機5のピニオンギヤ53(複数のピニオンギヤ53のうちの少なくともいずれか)の側方から、第2ギヤ52及び差動装置6の側方を経て、軸受66の側方に至るように延在している。オイルガター7は、ピニオンギヤ53の側方に位置する側が潤滑油の上流側であり、軸受66の側方に位置する側が潤滑油の下流側である。オイルガター7は、鉛直方向においては、電動機2のロータ軸23の中心軸線よりも上方に位置している。
【0036】
オイルガター7は、上流側に位置する第1区間70a、及び、下流側に位置する第2区間70bを有する。第1区間70aは、後述する第1コンタミキャッチ部71の上流側且つ第3コンタミキャッチ部73の下流側に少なくとも位置している。つまり、第1区間70aは、第1コンタミキャッチ部71の上流側且つ第3コンタミキャッチ部73の下流側の位置を最下流部として、当該最下流部よりも上流側に延在している。第1区間70aは、当該最下流部から上流側に、少なくとも第3コンタミキャッチ部73の下流側の位置まで延在している。なお、第1区間70aは、当該最下流部から第3コンタミキャッチ部73の上流側の位置(例えば、オイルガター7の上流端)まで延在していてもよい。第1区間70aと第2区間70bとは互いに連続的に接続されている。つまり、第1区間70aの最下流部と第2区間70bの最上流部とは連続的に接続されている。上流側に位置する第1区間70aを流れた潤滑油は、引き続き第1区間70aの下流側に位置する第2区間70bを流れる。
【0037】
第1区間70aは、第2区間70bよりも傾斜が小さい。例えば、第1区間70aは、水平に構成されていてもよく(すなわち、傾斜していなくてもよく)、第2区間70bよりも小さく傾斜していてもよい。ここでは、第1区間70aは、変速機5のピニオンギヤ53及び第2ギヤ52の側方に位置している。第1区間70aは、低中回転域からピニオンギヤ53及び第2ギヤ52により掻き上げられた潤滑油を回収可能な高さに配置されている。第2区間70bは、第1区間よりも大きく傾斜している。第2区間70bは、例えば差動装置6の側方に位置している。第2区間70bの下流端(すなわち、オイルガター7の下流端)は、差動装置6(例えば、差動装置6の軸受66)に向かう注ぎ口を形成している。これにより、オイルガター7を流れた潤滑油は差動装置6に向かって流れ落ちる。
【0038】
オイルガター7は、潤滑油に含まれている異物C(コンタミ:contamination)を捕捉するための構造として、第1コンタミキャッチ部71、第2コンタミキャッチ部72、及び第3コンタミキャッチ部73を有する。ここで、「異物」とは、例えば潤滑油に含まれる固形物であってもよい。異物は、潤滑油よりも比重の大きい物体であってもよい。つまり、異物Cは、潤滑油に沈降する物体であってもよい。異物Cを構成する物質は特に限定されず、例えば金属、樹脂、油脂等であってもよい。
【0039】
第1コンタミキャッチ部71は、オイルガター7の底面に形成された凹部により潤滑油に含まれる異物Cを捕捉する構造である。第1コンタミキャッチ部71は、オイルガター7の第2区間70bに形成されている。つまり、第1コンタミキャッチ部71は、差動装置6の側方に位置している。
【0040】
第1コンタミキャッチ部71は、オイルガター7の底面において、上流側から下流側に向かって急角度に下方に向かうように(深くなるように)形成された下降部71a、下降部71aの下流側において凹部の深さが略一定に形成された下底部71b、及び下底部71bの下流側において急角度に上方に向かい、下降部71aの上流側の高さまで戻るように形成された上昇部71cを含む。換言すると、第1コンタミキャッチ部71は、オイルガター7の底面が袋状に凹まされた形状を有している。下底部71bの底面は、上流から下流に向かう方向における中央部分が凸状に形成されている。また、下底部71bは、下降部71a側の端部の深さが上昇部71c側の端部の深さよりも深くなるように形成されている。
【0041】
第2コンタミキャッチ部72は、オイルガター7の底面に形成された凸部により潤滑油に含まれる異物Cを捕捉する構造である。第2コンタミキャッチ部72は、オイルガター7の第2区間70bに形成されている。つまり、第1コンタミキャッチ部71は、差動装置6の側方に位置している。特に、第2コンタミキャッチ部72は、第1コンタミキャッチ部71の下流側に位置している。
【0042】
第2コンタミキャッチ部72は、オイルガター7の底面において、上流側から下流側に向かう方向に対して交差する方向(例えば、直交する方向)に延在するリブ状を呈している。より詳細には、オイルガター7は、オイルガター7の上流側から下流側に向かう方向に対する左右両側の内側面を互いにつなぐように(すなわち、一方の内側面から他方の内側面に至るように)、延在している。第2コンタミキャッチ部72は、オイルガター7の上流側から下流側に向かう方向の幅について特に限定されず、当該第2コンタミキャッチ部72の高さよりも幅の方が小さくてもよく、高さと幅とが同等であってもよく、高さよりも幅の方が大きくてもよい(つまり、第2コンタミキャッチ部72は、棚状を呈していてもよい。)。
【0043】
第3コンタミキャッチ部73は、オイルガター7の底面に形成された凹部により潤滑油に含まれる異物Cを捕捉する構造である。第1区間70aが第3コンタミキャッチ部73の下流側に位置している場合には、第3コンタミキャッチ部73は、オイルガター7の第1区間70aの上流側に形成されていることとなる。第3コンタミキャッチ部73は、第1コンタミキャッチ部71(及び第2コンタミキャッチ部72)の上流側に位置している。また、第3コンタミキャッチ部73は、変速機5のピニオンギヤ53(複数のピニオンギヤ53のうちの少なくともいずれか)の側方に位置している。
【0044】
第3コンタミキャッチ部73は、オイルガター7の底面において、上流側から下流側に向かって急角度に下方に向かうように(深くなるように)形成された下降部73a、下降部73aの下流側において凹部の深さが略一定に形成された下底部73b、及び下底部73bの下流側において急角度に上方に向かい、下降部73aの上流側の高さまで戻るように形成された上昇部73cを含む。換言すると、第3コンタミキャッチ部73は、オイルガター7の底面が袋状に凹まされた形状を有している。第3コンタミキャッチ部73においてオイルガター7の底面に形成された凹部は、第1コンタミキャッチ部71においてオイルガター7の底面に形成された凹部よりも、深く形成されている。
【0045】
続いて、オイルガター7により潤滑油が差動装置6に供給される態様について説明する。
【0046】
電動機2が駆動されると、電動機2の駆動回転が変速機5に伝達される。変速機5では、電動機2と機械的に接続される第1ギヤ51が回転し、これに伴い、複数のピニオンギヤ53及び第2ギヤ52が回転する。この際、ハウジング4の貯留部44に貯留されている潤滑油が、ピニオンギヤ53(例えば、ピニオンギヤ53の大径ギヤ53a(カウンタギヤ))の回転により掻き上げられる。特に、ピニオンギヤ53は主として低回転域から潤滑油を掻き上げる。ピニオンギヤ53により掻き上げられた潤滑油は、オイルガター7の第1区間70aにより回収される。低回転域からピニオンギヤ53により比較的多量の潤滑油が撹拌されるため、第1区間70aにおいてはオイルガター7の傾斜が比較的小さくてもオイルガター7を潤滑油が好適に流れる。
【0047】
ピニオンギヤ53により掻き上げられた潤滑油に含まれる重量又はサイズが大きい異物Cは、第3コンタミキャッチ部73の凹部に沈降することにより捕捉される。特に、第3コンタミキャッチ部73においてオイルガター7の底面に形成された凹部は、第1コンタミキャッチ部71においてオイルガター7の底面に形成された凹部よりも深く形成されているため、第3コンタミキャッチ部73は第1コンタミキャッチ部71と比較して重量又はサイズが大きい異物Cを好適に捕捉することができる。
【0048】
また、ハウジング4の貯留部44に貯留されている潤滑油が、第2ギヤ52の回転により掻き上げられる。特に、第2ギヤ52は主として中回転域から潤滑油を掻き上げる。第2ギヤ52により掻き上げられた潤滑油は、オイルガター7の第1区間70aにより回収される。中回転域から第2ギヤ52により比較的多量の潤滑油が撹拌されるため、第1区間70aにおいてはオイルガター7の傾斜が比較的小さくてもオイルガター7を潤滑油が好適に流れる。
【0049】
変速機5において減速された駆動回転は、差動装置6に伝達される。この際、ハウジング4の貯留部44に貯留されている潤滑油が、差動装置6の回転により掻き上げられる。特に、差動装置6は主として高回転域から潤滑油を掻き上げる。差動装置6により掻き上げられた潤滑油は、オイルガター7の第2区間70bにより回収される。差動装置6により撹拌される潤滑油の量は高回転域でないと多くなりにくいものの、第2区間70bにおいてはオイルガター7の傾斜が比較的大きく構成されることにより、オイルガター7を潤滑油が好適に流れる。
【0050】
第3コンタミキャッチ部73で捕捉されなかった重量又はサイズが中程度の異物Cは、第1コンタミキャッチ部71の凹部に沈降することにより捕捉される。また、差動装置6により掻き上げられた潤滑油に含まれる異物Cも、第1コンタミキャッチ部71の凹部に沈降することにより捕捉される。第1コンタミキャッチ部71で捕捉されなかった重量又はサイズが小さい異物Cは、潤滑油に含まれた状態で下流へと進行する。
【0051】
第1コンタミキャッチ部71で捕捉されなかった重量又はサイズが小さい異物Cは、第2コンタミキャッチ部72の凸部に堰き止められることにより捕捉される。また、差動装置6により新たに掻き上げられた潤滑油に含まれる異物Cも、第2コンタミキャッチ部72の凸部に堰き止められることにより捕捉される。
【0052】
このようにして、オイルガター7を通過する潤滑油から異物Cが好適に捕捉されて除去される。オイルガター7の下流端は差動装置6(例えば、差動装置6の軸受66)に向かう注ぎ口を形成しているため、オイルガター7を流れた潤滑油は異物Cが除去された上で差動装置6(例えば、差動装置6の軸受66)に供給される。
【0053】
[作用及び効果]
以上説明したように、動力装置1は、電動機2又は内燃機関からなる駆動源と、駆動源と車両の左車輪及び右車輪との間の動力伝達経路上に配置される変速機5と、変速機5により変速された出力を左車輪と右車輪とに分配する差動装置6と、差動装置6に潤滑油を導くオイルガター7と、を備える動力装置1であって、変速機5は、駆動源と機械的に接続される第1ギヤ51と、第1ギヤ51と同一の回転軸心を含み、差動装置6と機械的に接続される第2ギヤ52と、第1ギヤ51及び第2ギヤ52のそれぞれと噛み合う複数のピニオンギヤ53と、複数のピニオンギヤ53のそれぞれを自転可能に支持するピニオンホルダ54と、を備え、差動装置6は、回転軸心の軸方向において、第1ギヤ51に対して駆動源とは反対側に位置し、第2ギヤ52と機械的に接続される差動ケース61と、差動ケース61を支持する軸受66と、差動ケース61に収容されたデファレンシャルギヤと、を有し、オイルガター7は、軸受66に潤滑油を導き、差動装置6の側方に位置し、当該オイルガター7の底面に形成された凹部により潤滑油に含まれる異物Cを捕捉する第1コンタミキャッチ部71と、第1コンタミキャッチ部71の下流側且つ差動装置6の側方に位置し、当該オイルガター7の底面に形成された凸部により潤滑油に含まれる異物Cを捕捉する第2コンタミキャッチ部72と、第1コンタミキャッチ部71の上流側且つ複数のピニオンギヤ53のうちの少なくともいずれかの側方に位置し、当該オイルガター7の底面に形成された凹部により潤滑油に含まれる異物Cを捕捉する第3コンタミキャッチ部73と、を有する。
【0054】
動力装置1によれば、オイルガター7の上流側から順に、凹部により構成される第3コンタミキャッチ部73、凹部により構成される第1コンタミキャッチ部71、及び凸部により構成される第2コンタミキャッチ部72が設けられている。これにより、オイルガター7を流れる潤滑油に含まれる異物Cのうち、重量又はサイズが比較的大きい異物Cが、第3コンタミキャッチ部73の凹部に沈降することにより捕捉される。また、第3コンタミキャッチ部73で捕捉されなかった異物Cのうち、重量又はサイズが中程度の異物Cが、第2コンタミキャッチ部72の凹部に沈降することにより捕捉される。さらに、第1コンタミキャッチ部71及び第2コンタミキャッチ部72で捕捉されなかった重量又はサイズが比較的小さい異物Cが、第1コンタミキャッチ部71の凸部に堰き止められることにより捕捉される。よって、潤滑油に含まれる多様な異物Cを簡便な構造により捕捉することができる。また、動力装置1によれば、異物Cによる軸受66の摩耗を抑制することができる。さらに、動力装置1によれば、オイルガター7により潤滑油が軸受66に導かれた後に、当該潤滑油が差動ケース61の下部に供給されることで当該部位における油面が上昇しやすい。その結果、差動ピニオンシャフト62の少なくとも一部が潤滑油に浸ることで当該潤滑油が左右のサイドギヤ64A,64Bに導かれる。このとき、潤滑油に含まれる異物Cがオイルガター7により捕捉(除去)されているため、異物Cによる差動ピニオンシャフト62及び左右のサイドギヤ64A,64Bの摩耗についても抑制することができる。
【0055】
動力装置1では、オイルガター7は、第1コンタミキャッチ部71の上流側且つ第3コンタミキャッチ部73の下流側に少なくとも位置する第1区間70aと、第1区間70aの下流側に少なくとも位置し、第1区間70aよりも大きく傾斜した第2区間70bと、を有する。
【0056】
ピニオンギヤ53によると主として低回転域から潤滑油が掻き上げられるため、オイルガター7の傾斜が比較的小さくてもオイルガター7を潤滑油が好適に流れる。このため、ピニオンギヤ53(例えば、ピニオンギヤ53の大径ギヤ53a(カウンタギヤ))により掻き上げられた潤滑油に含まれる重量又はサイズの比較的大きい異物Cを、第3コンタミキャッチ部73により捕捉することができる。また、変速機5及び差動装置6によると主として中高回転域から潤滑油が掻き上げられるため、オイルガター7の傾斜を比較的大きくすることによりオイルガター7を潤滑油が好適に流れる。このため、第3コンタミキャッチ部73により捕捉されずに通過した異物C、並びに、変速機5(例えば、変速機5の第2ギヤ52(リングギヤ))及び差動装置6により新たに掻き上げられた潤滑油に含まれる重量又はサイズが中程度又は比較的小さい異物Cを、第1コンタミキャッチ部71及び第2コンタミキャッチ部72により捕捉することができる。ここで、第2区間70bは大きく傾斜しており第2区間70bを流れる潤滑油の流速を増大させやすいため、第1コンタミキャッチ部71及び第2コンタミキャッチ部72のそれぞれに重量又はサイズの異なる異物Cを捕捉する機能を好適に分配させることが可能となる。このように、オイルガター7に隣接して配置されている機構の種類(例えば、変速機5の第2ギヤ52及びピニオンギヤ53、並びに差動装置6)によって潤滑油を掻き上げる撹拌性能が異なることからオイルガター7を流れる潤滑油の流量に差が生じても、第1コンタミキャッチ部71、第2コンタミキャッチ部72、及び第3コンタミキャッチ部73のうち流量に適した部分によって、より確実に異物Cを捕捉することが可能となる。
【0057】
動力装置1では、第1区間70aは、第2ギヤ52の側方に位置する。
【0058】
変速機5の第2ギヤ52(リングギヤ)によると主として中回転域から潤滑油が掻き上げられるため、傾斜が比較的小さい第1区間70aで潤滑油を十分に回収することができる。そして、回収された潤滑油を傾斜が比較的大きい第2区間70bに送出することにより、オイルガター7を潤滑油が好適に流れる。したがって、流量に適した部分によって、より確実に異物Cを捕捉することが可能となる。
【0059】
動力装置1では、第3コンタミキャッチ部73においてオイルガター7の底面に形成された凹部は、第1コンタミキャッチ部71においてオイルガター7の底面に形成された凹部よりも、深く形成されている。
【0060】
これによれば、第3コンタミキャッチ部73により重量又はサイズが相対的に大きい異物Cを捕捉するとともに、第1コンタミキャッチ部71により重量又はサイズが相対的に小さい異物Cを捕捉することができる。したがって、より確実に異物Cを捕捉することが可能となる。
【0061】
[変形形態]
上述した実施形態は、当業者の知識に基づいて変更又は改良が施された様々な形態により実施可能である。
【0062】
例えば、上述した実施形態において、オイルガター7は、第1コンタミキャッチ部71の上流側且つ第3コンタミキャッチ部73の下流側に位置する第1区間70aと、第1区間70aの下流側に位置し、第1区間70aよりも大きく傾斜した第2区間70bと、を有している。また、第1区間70aは、第2ギヤ52の側方に位置している。しかし、オイルガター7においては、相対的に傾斜の小さい第1区間70aと相対的に傾斜の大きい第2区間70bとの位置関係は、このような位置に限定されない。
【0063】
また、上述した実施形態において、第3コンタミキャッチ部73においてオイルガター7の底面に形成された凹部は、第1コンタミキャッチ部71においてオイルガター7の底面に形成された凹部よりも、深く形成されている。しかし、第3コンタミキャッチ部73においてオイルガター7の底面に形成された凹部は、第1コンタミキャッチ部71においてオイルガター7の底面に形成された凹部よりも、浅く形成されていてもよく、同等の深さに形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 動力装置
2 電動機(駆動源)
5 変速機
6 差動装置
7 オイルガター
51 第1ギヤ
52 第2ギヤ
53 ピニオンギヤ
54 ピニオンホルダ
61 差動ケース
63 差動ピニオンギヤ(デファレンシャルギヤ)
64A,64B サイドギヤ(デファレンシャルギヤ)
66 軸受
70a 第1区間
70b 第2区間
71 第1コンタミキャッチ部
72 第2コンタミキャッチ部
73 第3コンタミキャッチ部
C 異物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8