(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154132
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 10/26 20060101AFI20221005BHJP
B60K 6/442 20071001ALI20221005BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20221005BHJP
B60W 10/30 20060101ALI20221005BHJP
B60W 20/13 20160101ALI20221005BHJP
F16H 61/00 20060101ALI20221005BHJP
B60L 58/15 20190101ALI20221005BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20221005BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
B60W10/26 900
B60K6/442 ZHV
B60W10/08 900
B60W10/30 900
B60W20/13
F16H61/00
B60L58/15
B60L50/60
B60L15/20 S
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057025
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【弁理士】
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(72)【発明者】
【氏名】仲里 友一
【テーマコード(参考)】
3D202
3J552
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA02
3D202BB01
3D202BB15
3D202BB19
3D202BB20
3D202CC04
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3D202DD45
3D202EE00
3J552NA01
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3J552PA59
3J552PA61
3J552QA03A
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3J552QA13A
3J552QA26A
3J552QA42A
3J552SA59
3J552VA50W
5H125AA01
5H125AC12
5H125BC14
5H125BE05
5H125CB02
5H125CB06
5H125EE27
(57)【要約】
【課題】廃電制御においてエンジンの回転数を効率的に低減させることで車両の乗車感覚の向上を図ることができ、かつ、電力の消費量を効率的に増加させることで車両のエネルギーマネジメントの自由度を高めて制御性を向上させる。
【解決手段】ハイブリッド車両1の制御装置において、電気モータ12の回生動作時の制御として、バッテリ60の残容量が閾値未満の場合、回生動作時に発生した電力をバッテリ60に充電する充電動作のみを行う第1制動制御と、残容量が閾値以上の場合充電動作に加えて、当該電力をジェネレータ11に供給してジェネレータ11で生じた回転動力を動力伝達機構70を介してエンジン10に伝達する廃電動作を行う第2制動制御と、が可能であり、第2制動制御を行う場合には、第1制動制御を行う場合よりも、動力伝達機構70に潤滑油として供給する作動油の流量を増加させる制御を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、
前記内燃機関の動力によって発電する第1回転電機と、
充放電が可能な蓄電器と、
駆動輪に接続され、前記蓄電器及び前記第1回転電機の少なくとも一方からの電力供給によって駆動する第2回転電機と、
前記内燃機関、前記第1回転電機及び前記第2回転電機、前記駆動輪の間で動力を伝達する動力伝達機構と、
前記動力伝達機構に作動油の油圧を供給する油圧供給装置と、を備える駆動装置と、
前記駆動装置を制御する制御手段と、を備えるハイブリッド車両の制御装置であって、
前記油圧供給装置は、前記動力伝達機構が備える動力断接用の断接装置に作動油を供給する第1油路と、前記動力伝達機構内の潤滑が必要な個所に作動油を潤滑油として供給する第2油路と、前記第1油路及び前記第2油路への作動油の流量を調節する流量調節手段と、を備え、
前記制御手段は、前記第2回転電機の回生動作時の制御として、
前記蓄電器の残容量が閾値未満の場合、前記第2回転電機の回生動作時に発生した電力を前記蓄電器に充電する充電動作のみを行う第1制動制御と、
前記残容量が前記閾値以上の場合、前記第2回転電機の回生動作時に発生した電力を前記蓄電器に充電する充電動作に加えて又は当該充電動作を行わずに、当該電力を前記第1回転電機に供給して該第1回転電機で生じた回転動力を前記動力伝達機構を介して前記内燃機関に伝達する廃電動作を行う第2制動制御と、が可能であり、
前記第2制動制御を行う場合には、前記第1制動制御を行う場合よりも、前記流量調節手段で前記第2油路へ供給する作動油の流量を増加させる制御を行う
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
前記油圧供給装置は、前記動力伝達機構に供給する作動油の油圧を調節する油圧調節手段を備え、
前記制御手段は、前記第2制動制御を行う場合には、前記第1制動制御を行う場合よりも、前記油圧調節手段で前記第2油路へ供給する作動油の油圧を増加させる制御を行う
ことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
前記油圧供給装置は、
作動油の供給源から吐出される作動油を調圧する調圧バルブと、
前記調圧バルブと前記第1油路との間に設けられて、少なくとも前記調圧バルブで調圧された作動油の前記第1油路への供給の有無を切り替えるシフトバルブと、
少なくとも前記シフトバルブによる切り替えを行う第1ソレノイドバルブと、
前記調圧バルブで調圧される作動油の油圧を少なくとも高圧側と低圧側の少なくとも二段階に切り替える第2ソレノイドバルブと、を備え、
前記制御手段は、前記第1制動制御を行う際には、前記第1ソレノイドバルブをオンすることで前記シフトバルブで前記第1油路へ作動油を供給し、かつ前記第2ソレノイドバルブをオフすることで前記調圧バルブで調圧される作動油の油圧を低圧側の油圧とし、
前記第2制動制御を行う際には、前記第1ソレノイドバルブをオフすることで前記シフトバルブによる前記第1油路への供給を停止し、かつ前記第2ソレノイドバルブをオンすることで前記調圧バルブで調圧される作動油の油圧を高圧側の油圧とする
ことを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド車両用の駆動装置の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動源としてエンジンと電気モータを備えるハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に示すように、駆動源としてエンジンと電気モータを備えるハイブリッド車両がある。このようなハイブリッド車両では、バッテリ(蓄電器)の満充電時(バッテリの残容量SOCが閾値以上のとき)には、減速回生によりジェネレータ(発電機)として機能する電気モータで発電された電力をバッテリに充電することができない。そのため、バッテリの満充電時には、ジェネレータで発電した電力をトラクションモータ(駆動モータ)に送り、トラクションモータでエンジンを空転させることで電力を消費する制御(以下、これを廃電制御という。)を実施して電力を消化している。
【0003】
また、特許文献2に記載の従来技術では、バッテリの満充電時に、電動式オイルポンプを最大消費電力で作動させることで廃電制御を実施して電力を消化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-1351号公報
【特許文献2】特開2010-151100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載のような廃電制御を行う場合、トラクションモータでエンジンを空転させることでエンジンの回転数が高くなる場合がある。エンジンの回転数が高くなると、車両に振動や騒音が生じることがあり、これらが乗員に感知されると車両の乗り心地などの乗車感覚に影響を及ぼすおそれがある。特に、車両の減速時にはエンジンの回転数が高回転になり易いことで車両の振動や騒音が大きくなるおそれがより高くなる。そのため、廃電制御を行う際には、エンジンの回転数を可能な限り低減させることで、車両の乗車感覚の向上を図ることが必要である。
【0006】
その一方で、ハイブリッド車両では、バッテリの満充電時の廃電制御で電力を十分に消費できないと、車両のエネルギーマネジメントに制約が生じることで走行制御などの効率化を図ることができないおそれがある。そのため、廃電制御において出来るだけ効率良く電力を消費できるようにすることが重要な課題である。
【0007】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、廃電制御においてエンジンの回転数を効率的に低減させることで車両の乗車感覚の向上を図ることができ、かつ、電力の消費量を効率的に増加させることで車両のエネルギーマネジメントの自由度を高めて制御性を向上させることができるハイブリッド車両の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明にかかるハイブリッド車両の制御装置は、内燃機関(10)と、内燃機関(10)の動力によって発電する第1回転電機(11)と、充放電が可能な蓄電器(60)と、駆動輪(20)に接続され、蓄電器(60)及び第1回転電機(11)の少なくとも一方からの電力供給によって駆動する第2回転電機(12)と、内燃機関(10)、第1回転電機(11)及び第2回転電機(12)、駆動輪(20)の間で動力を伝達する動力伝達機構(70)と、動力伝達機構(70)に作動油の油圧を供給する油圧供給装置(40)と、を備える駆動装置(100)と、駆動装置(100)を制御する制御手段(50)と、を備えるハイブリッド車両の制御装置であって、油圧供給装置(40)は、動力伝達機構(70)が備える動力断接用の断接装置(21)に作動油を供給する第1油路(L1)と、動力伝達機構(70)内の潤滑が必要な個所に作動油を潤滑油として供給する第2油路(L5,L2)と、第1油路(L1)及び第2油路(L5,L2)への作動油の流量を調節する流量調節手段(62,64,65)と、を備え、制御手段(50)は、第2回転電機(12)の回生動作時の制御として、蓄電器(60)の残容量が閾値未満の場合、第2回転電機(12)の回生動作時に発生した電力を蓄電器(60)に充電する充電動作のみを行う第1制動制御と、残容量が閾値以上の場合、第2回転電機(12)の回生動作時に発生した電力を蓄電器(60)に充電する充電動作に加えて又は当該充電動作を行わずに、当該電力を第1回転電機(11)に供給して該第1回転電機(11)で生じた回転動力を動力伝達機構(70)を介して内燃機関(10)に伝達する廃電動作を行う第2制動制御と、が可能であり、第2制動制御を行う場合には、第1制動制御を行う場合よりも、流量調節手段(62,64,65)で第2油路(L5,L2)へ供給する作動油の流量を増加させる制御を行うことを特徴とする。
【0009】
また、このハイブリッド車両の制御装置は、油圧供給装置(40)は、動力伝達機構(70)に供給する作動油の油圧を調節する油圧調節手段(61,63)を備え、制御手段(50)は、第2制動制御を行う場合には、第1制動制御を行う場合よりも、油圧調節手段(61,63)で第2油路(L5,L2)へ供給する作動油の油圧を増加させる制御を行うようにしてもよい。
【0010】
本発明にかかるハイブリッド車両の制御装置によれば、第2制動制御を行う場合には、第1制動制御を行う場合よりも、流量調節手段で第2油路へ供給する作動油の流量を増加させる制御を行うことで、動力伝達機構に供給される潤滑油としての作動油の流量を増加させることができる。また、第2制動制御を行う場合には、第1制動制御を行う場合よりも、油圧調節手段で第2油路へ供給する作動油の油圧を増加させる制御を行うことで、動力伝達機構に供給される作動油の油圧を増加させることができる。これらによって、第2制動制御で行われる廃電動作において、第1回転電機から内燃機関へ動力が伝達される動力伝達機構内で生じる作動油(潤滑油)による摩擦抵抗(フリクション)を意図的に増加させることができる。この増加する摩擦抵抗によって、エンジンの回転数を効率的に低減させることができ、また、第1回転電機で消費される電力を効率的に増加させることができる。したがって、廃電制御においてエンジンの回転数を効率的に低減させることで車両の乗車感覚の向上を図ることができ、かつ、電力の消費量を効率的に増加させることで車両のエネルギーマネジメントの自由度を高めて制御性を向上させることができる。
【0011】
また、本発明のハイブリッド車両の制御装置は、その一実施態様として、油圧供給装置(40)は、作動油の供給源(OP1)から吐出される作動油を調圧する調圧バルブ(61)と、調圧バルブ(61)と第1油路(L1)との間に設けられて、少なくとも調圧バルブ(61)で調圧された作動油の第1油路(L1)への供給の有無を切り替えるシフトバルブ(64,65)と、少なくともシフトバルブ(64,65)による切り替えを行う第1ソレノイドバルブ(62)と、調圧バルブ(61)で調圧される作動油の油圧を少なくとも高圧側と低圧側の少なくとも二段階に切り替える第2ソレノイドバルブ(63)と、を備え、制御手段(50)は、第1制動制御を行う際には、第1ソレノイドバルブ(62)をオンすることでシフトバルブ(65,64)で第1油路(L1)へ作動油を供給し、かつ第2ソレノイドバルブ(63)をオフすることで調圧バルブ(61)で調圧される作動油の油圧を低圧側の油圧とし、第2制動制御を行う際には、第1ソレノイドバルブ(62)をオフすることでシフトバルブ(65,64)による第1油路(L1)への供給を停止し、かつ第2ソレノイドバルブ(63)をオンすることで調圧バルブ(61)で調圧される作動油の油圧を高圧側の油圧とするようにしてもよい。
なお、上記の括弧内の符号は、後述する実施形態における対応する構成要素の図面参照番号を参考のために示すものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかるハイブリッド車両の制御装置によれば、廃電制御においてエンジンの回転数を効率的に低減させることで車両の乗車感覚の向上を図ることができ、かつ、電力の消費量を効率的に増加させることで車両のエネルギーマネジメントの自由度を高めて制御性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係るハイブリッド車両の概略構成を示す図である。
【
図3】油圧制御回路の各作動状態における第1、第2ソレノイドバルブのオン・オフ、レギュレータバルブ、第1シフトバルブ、リリーフバルブ、ライン圧それぞれの状態、及び車両の走行モードを示す表である。
【
図4】制動制御の各状態を示し、(a)は、第1制動制御時のエネルギーの流れを示す説明図であり、(b)は、第2制動制御時のエネルギーの流れを示す説明図である。
【
図5】フリクション増加制御を含む第2制動制御の手順を示すフローチャートである。
【
図6】エンジンの回転数と動力伝達機構内の摩擦抵抗(フリクション)との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るハイブリッド車両の概略構成を示す図である。同図に示すハイブリッド車両1は、駆動源としてのエンジン(内燃機関)10と、同じく駆動源としての電気モータ(第2回転電機)12及び発電機としてのジェネレータ(第1回転電機)11を備えている。
【0015】
電気モータ12は、バッテリ60から電力供給を受けて駆動して、エンジン駆動力をアシストすることが可能である。また、減速走行時には、電気モータ12は、車輪20側からの回転駆動により発電を行ってバッテリ60を充電すること(エネルギー回生)が可能である。このように、車両1は、エンジン10及び電気モータ12を駆動源とし、ジェネレータ11でエネルギー回生可能なハイブリッド車両である。
【0016】
〔駆動装置の基本構成〕
駆動装置100は、エンジン10の出力軸(クランクシャフト)10aにフライホイール13を介して連結される入力軸14と、入力軸14に対して平行に配置された出力軸15とを備えている。出力軸15は、ファイナル駆動ギヤ16、ファイナル従動ギヤ17、ディファレンシャルギヤ18、及び左右の駆動軸19を介して左右の車輪20に接続されている。
【0017】
入力軸14は、クラッチ(断接装置)21を介して第1駆動ギヤ22を支持し、この第1駆動ギヤ22は、出力軸15に固定された従動ギヤ23に噛合している。
【0018】
中空のモータ軸24の内部にジェネレータ軸25が相対回転自在に嵌合しており、ジェネレータ11は、電気モータ12と同軸上に配置されている。モータ軸24に固定された第2駆動ギヤ26と従動ギヤ23とが噛合し、入力軸14に固定されたジェネレータ駆動ギヤ27と、ジェネレータ軸25に固定されたジェネレータ従動ギヤ28とが噛合する。
【0019】
このように構成された駆動装置100によれば、電気モータ12を駆動させると、電気モータ12の駆動力が、第2駆動ギヤ26、従動ギヤ23、出力軸15、ファイナル駆動ギヤ16、ファイナル従動ギヤ17、ディファレンシャルギヤ18、及び駆動軸19の順に経由して、左右の車輪20に伝達される。
【0020】
電気モータ12は、正逆両方向に回転可能であるため、その回転方向に応じて車両を前進走行及び後進走行させることができる。また、車両の減速時に、車輪20から伝達される駆動力で電気モータ12を駆動してジェネレータとして機能させれば、車両の運動エネルギーを電気エネルギーとして回収することができる。
【0021】
一方、クラッチ21を締結した状態でエンジン10を駆動させれば、エンジン10の駆動力が、フライホイール13、入力軸14、クラッチ21、第1駆動ギヤ22、従動ギヤ23、出力軸15、ファイナル駆動ギヤ16、ファイナル従動ギヤ17、ディファレンシャルギヤ18、及び駆動軸19の順で経由して左右の車輪20に伝達される。
【0022】
これにより、車両の前進走行時にエンジン10の駆動力で電気モータ12の駆動力をアシストすることができる。このとき、電気モータ12を空転させれば、エンジン10の駆動力だけで車両を前進走行させることもできる。
【0023】
また、エンジン10が駆動しているとき、エンジン10の駆動力は、フライホイール13、入力軸14、ジェネレータ駆動ギヤ27、ジェネレータ従動ギヤ28、及びジェネレータ軸25の順で経由してジェネレータ11に伝達される。これにより、ジェネレータ11で発電することができる。逆に、エンジン10の停止中にジェネレータ11をモータとして駆動させれば、その駆動力でエンジン10を始動することができる。
【0024】
さらに、駆動装置100は、図示しないハウジング内に配設された2つのオイルポンプOP1,OP2を備えている。第1オイルポンプOP1は、エンジン10の駆動に伴い駆動されるメカ式オイルポンプである。ここでは、第1オイルポンプOP1のポンプシャフト(第1オイルポンプ駆動軸)29に固定された第1オイルポンプギヤ30が、ジェネレータ駆動ギヤ27と噛合している。これにより、エンジン10の駆動時に第1オイルポンプOP1は常時駆動する。
【0025】
第2オイルポンプOP2は、駆動軸19の回転に伴い駆動するメカ式オイルポンプである。ここでは、第2オイルポンプOP2のポンプシャフト(第2オイルポンプ駆動軸)31に固定された第2オイルポンプギヤ32が、ファイナル従動ギヤ17に噛合している。これにより、車両の前進時に第2オイルポンプOP2は常時駆動する。
【0026】
〔油圧制御回路〕
図2は、
図1に示す駆動装置の油圧制御回路を示す図である。
図2に示すように、駆動装置100は、クラッチ油路L1、潤滑油路L2及び冷却油路L3にそれぞれ適宜な油圧を供給するための油圧制御回路(油圧制御装置)40を備えている。
【0027】
具体的には、クラッチ油路L1は、クラッチ21にオイルを供給するための油路であり、クラッチ21の油室、詳しくは背圧室に接続されている。また、クラッチ油路L1には、アキュムレータ46と、当該クラッチ油路L1の油圧(クラッチ圧)を検出するための油圧センサ47とが設けられている。潤滑油路L2は、被潤滑部42をオイルで潤滑するための油路である。被潤滑部42は、ここでは、ディファレンシャルギヤ18(
図1参照)や駆動装置100内のベアリングなど、駆動装置100内で潤滑が必要とされる箇所である。冷却油路L3は、被冷却部41をオイルで冷却するための油路である。被冷却部41は、ここでは、電気モータ12及びジェネレータ11である。また、冷却油路L3には、オイルクーラ44が設けられている。
【0028】
電力供給制御、エネルギー回生制御(充電制御)及び駆動装置100の制御を行うためにECU(Electronic Control Unit)50が車両に搭載されており、ECU50は、電気モータ12、ジェネレータ11及び油圧制御回路40などを制御する。
【0029】
ECU50は、各種演算処理を実行するCPUと、CPUで実行される各種演算プログラム、各種テーブル、演算結果などを記憶するROM及びRAMからなる記憶装置(メモリ)とを備え、各種電気信号を入力すると共に、演算結果などに基いて駆動信号を外部に出力する。
【0030】
油圧制御回路40は、レギュレータバルブ(調圧バルブ)61、2つのソレノイドバルブ62,63、2つのシフトバルブ64,65、及びリリーフバルブ66などを備えている。
【0031】
第1オイルポンプOP1の吐出ポートは、レギュレータバルブ61の入口ポート61aに接続されており、第1オイルポンプOP1が駆動すると、オイルパン51からオイルが汲み上げられ、ストレーナ52を介してレギュレータバルブ61にオイルが供給される。オイルパン51には、オイルパン51内に貯留されるオイルの温度を検出する油温センサ53が設けられている。
【0032】
一方、第2オイルポンプOP2が駆動されると、オイルパン51からオイルが汲み上げられ、ストレーナ52を介して潤滑油路L2あるいは冷却油路L3にオイルが供給される。なお、このオイル経路は、車両前進時に、エンジン10が停止していても、潤滑油路L2に適宜な油圧を供給することが可能なように構成されている。また、このオイル経路には、車両の後進時に第2オイルポンプOP2でエアレーションが発生することを防止するための2つのチェックバルブ(ワンウェイバルブ)56,57が設けられている。
【0033】
レギュレータバルブ61は、第1オイルポンプOP1から吐出される油圧を調圧して、クラッチ油路L1側のクラッチ元油路L4にクラッチ21を作動可能な高い油圧(高いライン圧)を供給する第1切替状態と、クラッチ油路L1側のクラッチ元油路L4にクラッチ21を作動不可能な低い油圧(低いライン圧)を供給する第2切替状態とを選択的に切替可能に構成されている。この切り替えは、第2ソレノイドバルブ63から、第2シフトバルブ65を介してレギュレータバルブ61に入力される制御圧によって行われる。なお、レギュレータバルブ61は、第1切替状態及び第2切替状態共に、油圧を冷却油路L3及び潤滑油路L2側の冷却・潤滑元油路L5に供給する。
【0034】
第1切替状態では、レギュレータバルブ61は、その第1出口ポート61bから、クラッチ元油路L4を介して第1シフトバルブ65に高いライン圧を供給する。第2切替状態では、レギュレータバルブ61は、その第1出口ポート61bから、クラッチ元油路L4を介して第2シフトバルブ65に低いライン圧を供給する。そして、レギュレータバルブ61は、第1切替状態及び第2切替状態共に、その第2出口ポート61cから、冷却・潤滑元油路L5にライン圧の残圧を供給する。
【0035】
各ソレノイドバルブ62,63は、ソレノイド62a,63aに通電された電流値に応じて弁が開いて、通電電流値に応じた制御圧を出力し、通電が遮断されると弁が閉じられ、制御圧の出力を停止する常閉型のリニアソレノイドバルブである。以下の説明では、ソレノイドバルブ62,63のソレノイド62a,63aに通電している状態(ソレノイドバルブ62,63が制御圧を出力している状態)をソレノイドバルブ62,63をオンしている状態(オン状態)といい、ソレノイドバルブ62,63のソレノイド62a,63aへの通電を遮断している状態(ソレノイドバルブ62,63が制御圧を出力していない状態)をソレノイドバルブ62,63をオフしている状態(オフ状態)という場合がある。
【0036】
第2ソレノイドバルブ63から出力される制御圧は、第2シフトバルブ65にこれを図面左方の開き側に押圧する背圧として入力される。これにより、第2シフトバルブ65から第1シフトバルブ64に制御圧に対応する油圧が供給される。
【0037】
さらに、第2ソレノイドバルブ63から出力された制御圧は、第2シフトバルブ65を介して、レギュレータバルブ61にこれを図面右方の開き側に押圧する背圧として入力される。これにより、レギュレータバルブ61の第1切替状態と第2切替状態との切替えが行われる。
【0038】
2つのシフトバルブ64,65は、クラッチ元油路L4とクラッチ油路L1との間に直列に接続されている。第1シフトバルブ64は、クラッチ元油路L4とクラッチ油路L1とを連通させ、クラッチ21に油圧(クラッチ圧)を供給する第3切替状態と、クラッチ元油路L4とクラッチ油路L1とを遮断させ、クラッチ21にクラッチ圧を供給しない第4切替状態とを選択的に切替可能に構成されている。この切替えは、第1ソレノイドバルブ62から第1シフトバルブ64に入力される制御圧によって行われる。
【0039】
第3切替状態では、第1ソレノイドバルブ62から第1シフトバルブ64に制御圧が入力され、第1シフトバルブ64は、その入口ポート64aと出口ポート64bとが連通され、クラッチ元油路L4及び第2シフトバルブ65を介して供給されたライン圧が制御圧に応じたクラッチ圧とされてクラッチ油路L1に供給される。
【0040】
一方、第4切替状態では、第1ソレノイドバルブ62から第1シフトバルブ64に制御圧が入力されず、又は、第1シフトバルブ64を図面左方の開き側に押圧する背圧には十分でない制御圧が入力されないので、第1シフトバルブ64は、その入口ポート64aと出口ポート64bとの連通が遮断され、クラッチ油路L1にクラッチ圧は供給されない。
【0041】
リリーフバルブ66は、冷却・潤滑元油路L5に設けられ、冷却・潤滑元油路L5から冷却油路L3及び潤滑油路L2に油圧を供給する第5切替状態と、冷却・潤滑元油路L5をドレンする第6切替状態とを選択的に切替可能に構成されている。
【0042】
第1ソレノイドバルブ62から第1シフトバルブ64に入力された制御圧は、さらに、第2シフトバルブ65を介して、リリーフバルブ66にこれを図面左方の開き側に押圧する背圧として入力される。これにより、リリーフバルブ66の第5切替状態と第6切替状態との切替えが行われる。
【0043】
このように、第1ソレノイドバルブ62は、第1シフトバルブ64の第3切替状態及びリリーフバルブ66の第5切替状態と、第1シフトバルブ64の第4切替状態及びリリーフバルブ66の第6切替状態とを切替可能な制御圧を出力する。
【0044】
リリーフバルブ66は、図面右方の閉じ位置にばね66aで付勢保持されている。従って、通常時は、冷却・潤滑元油路L5の油圧が保持されている。しかし、第2ソレノイドバルブ62から出力される制御圧が、リリーフバルブ66の弁を図面左方の開き側に押圧する背圧として入力されると、ばね66aの付勢力に抗して開き位置に切替えられ、ドレンポート66bからオイルがドレンされる。
【0045】
〔作動状態〕
以下、上記のように構成された油圧制御回路40の4つの作動状態について
図3を参照して説明する。
図3は、油圧制御回路40の各作動状態における第1、第2ソレノイドバルブ62,63のオン・オフ、レギュレータバルブ61、第1シフトバルブ64、リリーフバルブ66、ライン圧それぞれの状態、及び車両の走行モードを示す表である。各作動状態は、ECU50から指令に基くソレノイド62a,63aへの通電状態(ソレノイドバルブ62,63のオン/オフ状態)に応じて生じる。
【0046】
〔第1作動状態〕
第1作動状態は、冷却油路L3及び潤滑油路L2に必要量の油圧を供給し、且つクラッチ21を作動可能な高いクラッチ圧を供給する必要がある状態である。第1作動状態は、例えば、クラッチ21を締結して、エンジン10の駆動力を使用して車両を走行するOD(オーバドライブ)モード時に生じる状態である。
【0047】
第1作動状態では、第2ソレノイドバルブ63及び第1ソレノイドバルブ62の各ソレノイド63a,62aに通電される。ソレノイド63aに通電された第2ソレノイドバルブ63は制御圧を出力し、この制御圧は第2シフトバルブ65を作動させてレギュレータバルブ61に入力され、レギュレータバルブ61は第1切替状態となる。そのため、レギュレータバルブ61からクラッチ元油路L4に高いライン圧が供給される。そして、通電された第1ソレノイドバルブ62は、第1シフトバルブ64に制御圧を出力し、第1シフトバルブ64は第3切替状態となる。よって、第1シフトバルブ64に入力された高いライン圧は第1シフトバルブ64を通して、高いクラッチ圧がクラッチ油路L1を介してクラッチ21に供給される。
【0048】
また、第1ソレノイドバルブ62から出力された制御圧は、2つのシフトバルブ64,65を介してリリーフバルブ66に入力されており、リリーフバルブ66は第6切替状態となっている。よって、冷却・潤滑元油路L5はドレンされており、冷却油路L3及び潤滑油路L2に油圧は供給されない。
【0049】
〔第2作動状態〕
第2作動状態は、冷却油路L3に必要時にのみ油圧を供給し、且つクラッチ21に高いクラッチ圧を供給する必要がない状態である。第2作動状態は、例えば、電気モータ12の駆動力を使用して車両を走行するECVTモードであって、低温であるために電気モータ12を冷却する必要がないときに生じる状態である。
【0050】
第2作動状態では、正常時には、第2ソレノイドバルブ63のソレノイド63aには通電されず、第1ソレノイドバルブ62のソレノイド62aには通電される。ソレノイド63aに通電されないので第2ソレノイドバルブ63は制御圧を出力せず、制御圧が入力されないレギュレータバルブ61は第2切替状態となる。そのため、レギュレータバルブ61からクラッチ元油路L4に低いライン圧が供給され、冷却・潤滑元油路L5にライン圧が供給される。しかし、ソレノイド62aに通電された第1ソレノイドバルブ62は制御圧を出力し、この制御圧が入力されているリリーフバルブ66は第6作動状態であり、冷却・潤滑元油路L5に供給されたオイルはドレンされる。
【0051】
〔第3作動状態〕
第3作動状態は、冷却油路L3及び潤滑油路L2に必要時にのみ油圧を供給し、且つクラッチ21に高いクラッチ圧を供給する必要の無い状態である。第3作動状態は、例えば、エンジン10の駆動力を使用して車両を走行するOD(オーバドライブ)モード時の状態である。また、この第3状態は、後述する廃電運転の実施を伴う第2制動制御においてフリクション増加制御を実施する場合の状態でもある。
【0052】
第3作動状態では、第2ソレノイドバルブ63のソレノイド63aに通電されるが、第1ソレノイドバルブ62のソレノイド62aには通電されない。ソレノイド63aに通電された第2ソレノイドバルブ63は制御圧を出力し、この制御圧が入力されたレギュレータバルブ61は第1切替状態となる。そのため、レギュレータバルブ61からクラッチ元油路L4には高いライン圧が供給される。しかし、ソレノイド62aに通電されない第1ソレノイドバルブ62は制御圧を出力せず、第1シフトバルブ64は第4切替状態となり、クラッチ油路L1に油圧(クラッチ圧)が供給されない。その一方で、冷却油路L3及び潤滑油路L2側の冷却・潤滑元油路L5には作動油が供給される。この際、クラッチ油路L1に油圧が供給されないことで、第3切替状態の場合と比較して、冷却・潤滑元油路L5及び潤滑油路L2に供給される作動油の流量が増加する。また、この第3状態では、第1ソレノイドバルブ62がオフしていることで、リリーフバルブ66が冷却・潤滑元油路L5から冷却油路L3及び潤滑油路L2に油圧を供給する第5切替状態となっている(ドレンされていない)おり、これにより、潤滑油路L2に潤滑油としての作動油が供給される状態となる。
【0053】
〔第4作動状態〕
第4作動状態は、クラッチ21に高いクラッチ圧を供給する必要がなく、且つ冷却油路L3及び潤滑油路L2にオイルを供給する必要がある状態である。第4作動状態は、例えば、低温時を除く電気モータ12の駆動力を使用して車両を走行するECVTモード又はEVモード時など、エンジン10を駆動させていない時、例えば、アイドルストップ時、エンジン始動時、エンジン停止時、アイドル充電時などに生じる状態である。
【0054】
第4作動状態では、2つのソレノイドバルブ62,63の各ソレノイド62a,63aの何れも通電されない。ソレノイド63aに通電されないので第2ソレノイドバルブ63は制御圧を出力せず、制御圧が入力されないレギュレータバルブ61は第2切替状態となる。そのため、レギュレータバルブ61からクラッチ元油路L4に低いライン圧が供給され、冷却・潤滑元油路L5にライン圧が供給される。そして、ソレノイド62aに通電されないので第1ソレノイドバルブ62も制御圧を出力せず、リリーフバルブ66は第5切替状態となり、冷却油路L3及び潤滑油路L2にオイルが供給される。
【0055】
〔廃電制御〕
次に、車両の制動時に選択し得る制動制御の形態について説明する。
図4は、制動制御の各状態を示し、
図4(a)は、第1制動制御時のエネルギーの流れを示す説明図であり、
図4(b)は、第2制動制御時のエネルギーの流れを示す説明図である。
【0056】
図4(a)に示す第1制動制御は、バッテリ60残容量に十分な空きがあることでバッテリ60の充電性能の低下が無い場合の制御であって、回転する駆動輪20の動力によって電気モータ12が発電機として動作し、電気モータ12が発生した回生電力をバッテリ60に充電する。また、
図4(b)に示す第2制動制御は、バッテリ60残容量に十分な空きが無くバッテリ60の充電性能が低下している場合(バッテリ60満充電時)の制御であって、回転する駆動輪20の動力によって電気モータ12が発電機として動作し、電気モータ12が発生した回生電力の一部をバッテリ60に充電し、残りの回生電力は、ジェネレータ11を力行運転してエンジン10を逆駆動(空回し)することによって消費する。なお、第2制動制御を行う際のエンジン10の回転数の許容値は、車速VPが高いほど高く設定される。なお、第2制動制御では、バッテリ60が完全に満充電の状態の場合は、回転する駆動輪20の動力によって電気モータ12が発電機として動作するが、電気モータ12が発生した回生電力は、バッテリ60に充電されず、ジェネレータ11を力行運転してエンジン10を逆駆動することによってすべて消費される。バッテリ60の残容量が閾値(バッテリ60が満充電と判断される閾値)以下の場合は上記の第1制動制御が行われ、残容量が閾値を越えている場合は上記の第2制動制御が行われる。
【0057】
このように、第1制動制御と第2制動制御制御のいずれの制御でも、電気モータ12を発電機として作動する回生制動を行う。また、第2制動制御では、回生電力の少なくとも一部によってジェネレータ11を電動機として駆動し、ジェネレータ11の負荷をエンジン10とする。すなわち、第2制動制御では、回生電力の少なくとも一部を廃電する。
【0058】
そして、本実施形態のハイブリッド車両1では、上記の廃電運転を伴う第2制動制御の実施中に、油圧制御装置40の第1ソレノイドバルブ62をオフし、かつ第2ソレノイドバルブ63をオンすることで、高いライン圧を供給する状態とし、かつ潤滑油の流量を増加させることでエンジン10(回転軸10a)の摩擦抵抗(フリクション)を増加させる制御(これを「フリクション増加制御」という。)を行う。以下、このフリクション増加制御について説明する。
【0059】
図5は、フリクション増加制御を含む第2制動制御の手順を示すフローチャートである。ここでは、まず、車両1の走行中に減速時であるか否かが判断される(ステップS1)。その結果、減速時である場合(YES)は、続けてバッテリ60の残容量(SOC)が閾値以下であるか否かが判断される(ステップS2)。その結果、残容量(SOC)が閾値以下であれば(YES)、廃電運転を伴わない第1制動制御が行われる(ステップS3)。その一方で、残容量(SOC)が閾値を越えていれば(NO)、廃電運転を伴う第2制動制御が行われる(ステップS4)。そして、この廃電運転を伴う第2制動制御においてフリクション増加制御が実施される(ステップS5)。
【0060】
フリクション増加制御では、上記の第3作動状態において説明したように、第2ソレノイドバルブ63のソレノイド63aに通電されるが、第1ソレノイドバルブ62のソレノイド62aには通電されない。ソレノイド63aに通電された第2ソレノイドバルブ63は制御圧を出力し、この制御圧が入力されたレギュレータバルブ61は第1切替状態となる。そのため、レギュレータバルブ61からクラッチ元油路L4には高いライン圧が供給される。また、ソレノイド62aに通電されない第1ソレノイドバルブ62は制御圧を出力せず、第2シフトバルブ64は第4切替状態となり、クラッチ油路L1に油圧(クラッチ圧)が供給されない。その一方で、冷却油路L3及び潤滑油路L2側の冷却・潤滑元油路L5には作動油が供給される。この際、クラッチ油路L1に油圧が供給されないことで、第3切替状態の場合と比較して、冷却・潤滑元油路L5及び潤滑油路L2に供給される作動油の流量が増加する。また、このフリクション増加制御では、第1ソレノイドバルブ62がオフしていることで、リリーフバルブ66が冷却・潤滑元油路L5から冷却油路L3及び潤滑油路L2に油圧を供給する第5切替状態となっている(ドレンされていない)。これにより、潤滑油路L2に潤滑油としての作動油が供給される状態となる。
【0061】
図6は、エンジンの回転数と動力伝達機構内の摩擦抵抗(フリクション)との関係を示すグラフで、横軸にエンジン10の回転数Nを取り、縦軸に動力伝達機構70内の摩擦抵抗(フリクション)Fを取っている。そして、同図(a)は、第1ソレノイドバルブ62をオンする場合(点線)とオフする場合(実線)それぞれの値を示し、同図(b)は、第2ソレノイドバルブ63をオンする場合(点線)とオフする場合(実線)それぞれの値を示している。同図(a)のグラフに示すように、第1ソレノイドバルブ62をオフする場合(実線)は、オンする場合(点線)と比較して動力伝達機構70内の摩擦抵抗(フリクション)が増加する。また、同図(b)のグラフに示すように、第2ソレノイドバルブ63をオンする場合(実線)は、オフする場合(点線)と比較して動力伝達機構70内の摩擦抵抗(フリクション)が増加する。
【0062】
以上説明したように、本実施形態のハイブリッド車両の制御装置によれば、バッテリ60の残容量が閾値以下の場合、電気モータ12の回生動作時に発生した電力をバッテリ60に充電する充電動作のみを行う第1制動制御と、残容量が閾値を越えている場合、電気モータ12の回生動作時に発生した電力を、バッテリ60に充電する充電動作に加えて又は当該充電動作を行わずに、当該電力をジェネレータ11に供給して該ジェネレータ11で生じた回転動力を動力伝達機構70を介してエンジン10に伝達する廃電動作を行う第2制動制御とが可能である。
【0063】
そして、第2制動制御を行う場合には、第1制動制御を行う場合よりも、動力伝達機構70に供給される作動油の油圧を増加させ(高いライン圧とする)、かつ、潤滑油路L2への作動油(潤滑油)の供給量を増加させる制御を行うことで、動力伝達機構70に供給される潤滑油としての作動油の流量を増加させる。これらによって、第2制動制御で行われる廃電動作において、ジェネレータ11からエンジン10へ動力が伝達される動力伝達機構70内で生じる作動油(潤滑油)による摩擦抵抗(フリクション)を意図的に増加させることができる。この増加する摩擦抵抗によって、エンジン10の回転数を効率的に低減させることができ、また、ジェネレータ11で消費される電力を効率的に増加させることができる。したがって、廃電制御においてエンジン10の回転数を効率的に低減させることで車両の乗車感覚の向上を図ることができ、かつ、電力の消費量を効率的に増加させることで車両1のエネルギーマネジメントの自由度を高めて制御性を向上させることができる。
【0064】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 車両(ハイブリッド車両)
10 エンジン(内燃機関)
10a 回転軸
11 ジェネレータ(第1回転電機)
12 電気モータ(第2回転電機)
13 フライホイール
14 入力軸
15 出力軸
16 ファイナル駆動ギヤ
17 ファイナル従動ギヤ
18 ディファレンシャルギヤ
19 駆動軸
20 車輪(駆動輪)
21 クラッチ(断接装置)
22 駆動ギヤ
23 従動ギヤ
24 モータ軸
25 ジェネレータ軸
26 駆動ギヤ
27 ジェネレータ駆動ギヤ
28 ジェネレータ従動ギヤ
29 ポンプシャフト
30 オイルポンプギヤ
32 オイルポンプギヤ
40 油圧制御回路(油圧制御装置)
41 被冷却部
42 被潤滑部
44 オイルクーラ
46 アキュムレータ
47 油圧センサ
50 制御手段(ECU)
51 オイルパン
52 ストレーナ
53 油温センサ
56 チェックバルブ
57 チェックバルブ
60 バッテリ(蓄電器)
61 レギュレータバルブ
61a 入口ポート
61b 出口ポート
61c 出口ポート
62 第1ソレノイドバルブ
62a ソレノイド
63 第2ソレノイドバルブ
63a ソレノイド
64 第1シフトバルブ
64a 入口ポート
64b 出口ポート
65 第2シフトバルブ
66 リリーフバルブ
66a ばね
66b ドレンポート
70 動力伝達機構
100 駆動装置
L1 クラッチ油路
L2 潤滑油路
L3 冷却油路
L4 クラッチ元油路
L5 冷却・潤滑元油路
OP1,OP2 オイルポンプ