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特開2022-154140分岐流路閉塞装置及び分岐流路閉塞方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154140
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】分岐流路閉塞装置及び分岐流路閉塞方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 55/10 20060101AFI20221005BHJP
   F16L 55/00 20060101ALI20221005BHJP
   F16K 43/00 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
F16L55/10
F16L55/00 C
F16K43/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057033
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】592239394
【氏名又は名称】川崎市
(71)【出願人】
【識別番号】396020361
【氏名又は名称】株式会社水道技術開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】森下 和彦
(72)【発明者】
【氏名】松永 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】志村 友行
(72)【発明者】
【氏名】横関 拓也
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 博教
【テーマコード(参考)】
3H025
3H066
【Fターム(参考)】
3H025DA01
3H025DA02
3H025DB17
3H025DC02
3H025DD04
3H066AA03
3H066BA38
(57)【要約】
【課題】作業効率の高いコンパクトな分岐流路閉塞装置及び分岐流路閉塞方法を提供する。
【解決手段】流体管から分岐した分岐管部の流路を閉塞する分岐流路閉塞装置Xであって、分岐管部と流体管との接続部分に係止される係止機構4と、分岐管部の流路を閉塞可能な弾性部材5Cを有するシール機構5と、係止機構4及びシール機構5を支持する軸部材7と、を備え、シール機構5は、弾性部材5Cの内部に流体を流入させる流体流入部51と、弾性部材5Cの一端を支持する第一支持部5Abと、弾性部材5Cの他端を支持する第二支持部5Bbとを有しており、第一支持部5Abと第二支持部5Bbとは相対移動可能な分割構造である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体管から分岐した分岐管部の流路を閉塞する分岐流路閉塞装置であって、
前記分岐管部と前記流体管との接続部分に係止される係止機構と、
前記分岐管部の流路を閉塞可能な弾性部材を有するシール機構と、
前記係止機構及び前記シール機構を支持する軸部材と、を備え、
前記シール機構は、前記弾性部材の内部に流体を流入させる流体流入部と、前記弾性部材の一端を支持する第一支持部と、前記弾性部材の他端を支持する第二支持部とを有しており、
前記第一支持部と前記第二支持部とは相対移動可能な分割構造である分岐流路閉塞装置。
【請求項2】
前記シール機構は、前記軸部材に接続される第一環状部材と、当該第一環状部材よりも前記流体管側に位置する第二環状部材とを更に備え、
前記弾性部材は、前記第一環状部材と前記第一支持部とに挟持される第一被挟持部と、前記第二環状部材と前記第二支持部に挟持される第二被挟持部と、前記第一被挟持部と前記第二被挟持部とを接続し、前記流体流入部から流体が流入することにより膨張する膨張部と、を有している請求項1に記載の分岐流路閉塞装置。
【請求項3】
前記軸部材は、前記係止機構を操作する内筒軸と、当該内筒軸と同軸芯で前記内筒軸が内挿される外筒軸とを、を含む1軸構造であり、
前記内筒軸と前記外筒軸との隙間に前記流体流入部と連通する流体流路が形成されている請求項1又は2に記載の分岐流路閉塞装置。
【請求項4】
前記係止機構は、ナットの回転操作により拡径可能に構成されている請求項1から3のいずれか一項に記載の分岐流路閉塞装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の分岐流路閉塞装置を用いた分岐流路閉塞方法であって、
作業弁により前記分岐管部の流路を閉塞する仮閉塞工程と、
前記仮閉塞工程の後、前記分岐管部に接続された既設流体機器を撤去する撤去工程と、
前記既設流体機器が撤去された前記分岐管部に、前記係止機構及び前記シール機構を有する前記軸部材が密封状態で挿入された作業ケースを装着する装着工程と、
前記作業弁を開弁した後、前記軸部材を操作して前記係止機構を前記接続部分に係止する係止工程と、
前記弾性部材の内部に流体を供給して、前記分岐管部の流路を閉塞する閉塞工程と、を含む分岐流路閉塞方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体管から分岐した分岐管部の流路を閉塞する分岐流路閉塞装置、及び、分岐流路閉塞装置を用いた分岐流路閉塞方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流体管(水道管等)の分岐管部に設置された開閉弁(補修弁等)や開閉弁の上部に設置された空気弁又は消火栓等で構成される既設の流体機器が耐用年数を経過した等の理由により、新規の流体機器に交換される(流体機器が更新される)ときに用いられる分岐流路閉塞装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の分岐流路閉塞装置は、外側操作軸と、外側操作軸に内挿された内側操作軸と、外側操作軸及び内側操作軸の操作により分岐管部と流体管との接続部分に係止される抜止め係止手段と、外側操作軸を内側操作軸に対して相対移動させることにより拡径方向に弾性変形させて分岐管部の流路を閉塞するシール材と、を備えている。この外側操作軸及び内側操作軸は、継ぎ足し連結可能に分割されており、作業空間が小さな場所においても作業効率を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-38227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の分岐流路閉塞装置は、外側操作軸を内側操作軸に対して相対移動させてシール材を拡径方向に弾性変形させる際、作業用ケース上部に取り付けられた油圧ジャッキによる大きな駆動力が必要となり、作業効率を高める上で改善の余地がある。また、シール材を拡径方向に弾性変形させて分岐管部の流路を閉塞しているため、シール材の非圧縮状態と圧縮状態との差だけ軸方向の寸法を確保しなければならず大型化すると共に、分岐管部の内径に合わせてシール材の径方向寸法を調整する必要があり、分岐管部に分岐流路閉塞装置を適用する上での自由度が低いものであった。
【0006】
そこで、作業効率の高いコンパクトな分岐流路閉塞装置及び分岐流路閉塞方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る分岐流路閉塞装置の特徴構成は、流体管から分岐した分岐管部の流路を閉塞する分岐流路閉塞装置であって、前記分岐管部と前記流体管との接続部分に係止される係止機構と、前記分岐管部の流路を閉塞可能な弾性部材を有するシール機構と、前記係止機構及び前記シール機構を支持する軸部材と、を備え、前記シール機構は、前記弾性部材の内部に流体を流入させる流体流入部と、前記弾性部材の一端を支持する第一支持部と、前記弾性部材の他端を支持する第二支持部とを有しており、前記第一支持部と前記第二支持部とは相対移動可能な分割構造である点にある。
【0008】
本構成では、分岐管部と流体管との接続部分に係止される係止機構により、流体圧による軸部材の上方向への移動が防止され、分岐管部の流路を閉塞するシール機構により軸部材の下方向の移動が防止される。その結果、この分岐流路閉塞装置を分岐管部に装着すれば、分岐管部からの流体の流出を防止した状態で流体機器を交換することができる。
【0009】
本構成におけるシール機構は、弾性部材内部に流体を流入させる流体流入部を有しており、この流体流入部から流体が流入することにより弾性部材を膨張させて分岐管部の流路を閉塞する。つまり、従来のようにシール材を圧縮して拡径方向に弾性変形させるものではなく、流体圧により膨張させている。その結果、油圧ジャッキ等の大きな駆動力を要せず、流体流入部より流体を供給するだけで良いので、作業効率を高めることができる。しかも、シール機構を流体圧により膨張させる弾性部材で構成すれば、流体圧を変更するだけで自由に膨張量を変更することが可能となり、装置の軸方向寸法を大きくすること無く、あらゆる内径の分岐管部に対応することができる。
【0010】
しかも、本構成におけるシール機構は、弾性部材を支持する第一支持部と第二支持部とが相対移動可能な分割構造であるため、弾性部材を支持した状態で第一支持部と第二支持部とを離間させて弾性部材にテンションをかければ、膨張前の弾性部材の変形を防止することが可能となる。その結果、流体流入部から流体を流入させることにより弾性部材を膨張させたとき、弾性部材を均等に膨張させることが可能となり、分岐管部の流路を確実に閉塞することができる。このように、作業効率の高いコンパクトな分岐流路閉塞装置を提供できた。
【0011】
他の特徴構成は、前記シール機構は、前記軸部材に接続される第一環状部材と、当該第一環状部材よりも前記流体管側に位置する第二環状部材とを更に備え、前記弾性部材は、前記第一環状部材と前記第一支持部とに挟持される第一被挟持部と、前記第二環状部材と前記第二支持部に挟持される第二被挟持部と、前記第一被挟持部と前記第二被挟持部とを接続し、前記流体流入部から流体が流入することにより膨張する膨張部と、を有している点にある。
【0012】
本構成のように、第一環状部材及び第一支持部と、第二環状部材及び第二支持部とで弾性部材の両端(第一被挟持部及び第二被挟持部)を挟持しているので、膨張部が膨張したときの姿勢を安定させることができる。
【0013】
他の特徴構成は、前記軸部材は、前記係止機構を操作する内筒軸と、当該内筒軸と同軸芯で前記内筒軸が内挿される外筒軸とを、を含む1軸構造であり、前記内筒軸と前記外筒軸との隙間に前記流体流入部と連通する流体流路が形成されている点にある。
【0014】
本構成のように、内筒軸と外筒軸との隙間に流体流入部と連通する流体流路が形成された1軸構造とすれば、流体流入部をシール機構の中心付近に設けることが可能となるため、流体圧により弾性部材を均等に膨張させることができる。しかも、係止機構を操作する際、外筒軸にガイドされながら内筒軸が移動するため、内筒軸の傾きを防止し、耐久性を向上させることができる。
【0015】
他の特徴構成は、前記係止機構は、ナットの回転操作により拡径可能に構成されている点にある。
【0016】
本構成のように、ナット操作により係止機構を拡径させれば操作性に優れ、ナットが回転不能となったことによる係止機構の係止完了確認が容易である。
【0017】
本発明に係る分岐流路閉塞方法の特徴構成は、上述した何れかの分岐流路閉塞装置を用いた分岐流路閉塞方法であって、作業弁により前記分岐管部の流路を閉塞する仮閉塞工程と、前記仮閉塞工程の後、前記分岐管部に接続された既設流体機器を撤去する撤去工程と、前記既設流体機器が撤去された前記分岐管部に、前記係止機構及び前記シール機構を有する前記軸部材が密封状態で挿入された作業ケースを装着する装着工程と、前記作業弁を開弁した後、前記軸部材を操作して前記係止機構を前記接続部分に係止する係止工程と、前記弾性部材の内部に流体を供給して、前記分岐管部の流路を閉塞する閉塞工程と、を含む点にある。
【0018】
本方法では、分岐管部と流体管との接続部分に係止機構を係止することにより、流体圧による軸部材の上方向への移動が防止され、シール機構に流体を供給して分岐管部の流路を閉塞することにより軸部材の下方向の移動が防止される。その結果、分岐流路閉塞装置を分岐管部に装着して閉塞工程を実行した後は、流体機器を容易に交換することができる。
【0019】
さらに、本方法におけるシール機構は、シール材を圧縮して拡径方向に弾性変形させるものではなく、弾性部材を流体圧により膨張させている。その結果、油圧ジャッキ等の大きな駆動力を要せず、シール機構に流体を供給するだけで良いので、作業効率を高めることができる。しかも、シール機構を流体圧により膨張させる弾性部材で構成すれば、流体圧を変更するだけで自由に膨張量を変更することが可能となり、装置の軸方向寸法を大きくすること無く、あらゆる内径の分岐管部に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】既設の流体機器を示す側面図である。
図2】本実施形態に係る分岐流路閉塞装置を示す側断面図である。
図3】シール機構の外観図である。
図4】シール機構の断面図である。
図5】弾性部材の姿勢修正手順を示す断面図である。
図6】分岐流路閉塞装置の作動手順を示す側断面図である。
図7】仮閉塞工程及び撤去工程を示す側面図である。
図8】装着工程を示す側断面図である。
図9】係止工程及び閉塞工程を示す側断面図である。
図10】第一撤去工程を示す側断面図である。
図11】第一設置工程を示す側断面図である。
図12】第二撤去工程を示す部分側断面図である。
図13】第二設置工程を示す側面図である。
図14】別実施形態に係る仮閉塞工程を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明に係る分岐流路閉塞装置及び分岐流路閉塞方法の実施形態について、図面に基づいて説明する。本実施形態では、流体機器を構成する空気弁及び仕切弁を更新するために分岐流路閉塞装置を用いる一例を説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下において、重力方向を下、重力方向とは反対方向を上として説明することがある。
【0022】
図1に示すように、水道管1(流体管の一例)の途中に径方向外側に突出形成された分岐管部2の連結フランジ部2cに、仕切弁3(既設流体機器の一例)の上流側(下側)の連結フランジ部3aが、ボルト,ナットにより脱着自在に水密状態で締付け固定されている。また、仕切弁3の下流側(上側)の連結フランジ部3bには、空気弁6(既設流体機器の一例)の連結フランジ部6aが、ボルト,ナットにより水密状態で締付け固定されている。
【0023】
本実施形態では、水道管1内の上水の流れを維持した不断水状態のまま、設定耐久年数に至った又は劣化による漏水や故障等の理由により、後述する分岐流路閉塞装置Xを用いて既設の仕切弁3及び空気弁6を新規の補修弁8及び空気弁9(新規流体機器)に更新する(図13参照)。
【0024】
図2には、分岐流路閉塞装置Xの側断面図が示されている。分岐流路閉塞装置Xは、上述した水道管1から分岐した分岐管部2の流路を閉塞する(図9も参照)。分岐流路閉塞装置Xは、分岐管部2と水道管1との接続部分2aに係止される係止機構4と、分岐管部2の流路を閉塞可能なシール機構5(図9も参照)と、係止機構4及びシール機構5を支持し、内筒軸7A及び外筒軸7Bの1軸構造である軸部材7と、軸部材7を保持する保持部材15と、を備えている。詳細は後述するが、本実施形態におけるシール機構5は、内部に空気(流体の一例)が流入する流体流入部51を有しており、流体流入部51から空気が流入することにより径方向外側に膨張して分岐管部2の流路を閉塞する。
【0025】
係止機構4は、上流側端部(下端部)に設けられ、内筒軸7Aの先端が当接して移動を規制する板状部材41と、板状部材41が固定され、内筒軸7Aが移動可能に内挿された案内部材42と、案内部材42の内部に配置されたスプリング43と、案内部材42の外側で、スプリング43の径方向外側に揺動自在に接続された複数(本実施形態では周方向に2つ)の係止リンク44と、を有している。
【0026】
板状部材41は、案内部材42(後述する棒状部材42a)の上流側端面(下面)に固定されている。板状部材41の下流側端面(上面)にスプリング43の付勢力により移動した内筒軸7Aの先端が当接することにより、内筒軸7Aの下方向移動が規制されている。板状部材41の左右両端には、上流側の一対の係止リンク44の一端が揺動自在に枢支連結されている。
【0027】
案内部材42は、一端が後述する先端プレート55に固定されると共に他端が板状部材41に固定された複数(本実施形態では4つ)の棒状部材42aと、複数の棒状部材42aの間に支持された状態で、軸方向にスライド移動自在なスライド部材42bとを有している。複数の棒状部材42aの内側には、移動自在な内筒軸7Aの一部と、この内筒軸7Aの外周側に配置されたスプリング43とが収容されている。また、スライド部材42bの左右両端には、下流側の一対の係止リンク44の他端が揺動自在に枢支連結されている。
【0028】
図6の左図から中央図に示すように、係止リンク44は、内筒軸7Aの下流側(上方側)への移動に連動して、拡径姿勢に張り出すことが可能である。拡径姿勢の係止リンク44は、シール機構5による分岐流路閉塞箇所よりも上流側における分岐管部2の内周壁面、つまり、分岐管部2の内周面の分岐流路開口周縁(接続部分2a)に対して係合する。このとき、後述する解除防止機構10により、内筒軸7Aの先端は、板状部材41から離間した状態が維持されている。
【0029】
図2図3に示すように、シール機構5は、一対の上環状部材5Aと、一対の下環状部材5Bと、中空筒部材54と、先端プレート55と、上環状部材5Aと下環状部材5Bとの間に配置された弾性部材5Cと、を有している。
【0030】
一対の上環状部材5Aは、第一円盤状部材5Aa(第一環状部材の一例)と、第一円盤状部材5Aaに対して複数(本実施形態では8つ)の六角穴付きボルト等で構成される引寄ボルト52で連結された第一止水金具5Ab(第一支持部の一例)と、で構成されている。一対の下環状部材5Bは、第二円盤状部材5Ba(第二環状部材の一例)と、第二円盤状部材5Baに対して複数(本実施形態では8つ)の引寄ボルト53,55aで連結された第二止水金具5Bb(第二支持部の一例)と、で構成されている。本実施形態における第一止水金具5Abと第二止水金具5Bbとは、引寄ボルト52及び/又は引寄ボルト53,55aを螺合することにより、相対移動可能な分割構造となっている。
【0031】
図4に示すように、第一円盤状部材5Aaは、上流側端面(下面)が凹状に形成された基部56aと、基部56aから下流側(上側)に延出した延出部56bとが一体形成されている。基部56aには、延出部56bに隣接した環状部位に引寄ボルト52が挿入される複数(本実施形態では8つ)の貫通孔56a1が周方向に等間隔に形成されている。延出部56bの外周面には、保持部材15の内周面に装着された一対の内周シール部材saが当接しており、延出部56bの内周面には、内筒軸7Aが対向している。延出部56bの下流側端部(上端部)の外周面には、雄ねじ部56b1が形成されており、この雄ねじ部56b1に外筒軸7Bの上流側端部(下端部)の内周面に形成された雌ねじ部7Baが螺合されることにより、第一円盤状部材5Aaと外筒軸7Bとが連結される。つまり、第一円盤状部材5Aaは、外筒軸7Bに支持されている。また、延出部56bの下流側端部(上端部)の外周面には、雄ねじ部56b1よりも上流側(下側)にOリングsbが装着されるシール溝56b2が形成されており、雄ねじ部56b1よりも下流側(上側)にOリングshを圧縮するテーパ面56b5が形成されている。
【0032】
延出部56bの上流側端部(下端部)の内周面には、雌ねじ部56b3が形成されており、中空筒部材54の下流側端部(上端部)の外周面に形成された雄ねじ部54aに螺合されることにより、第一円盤状部材5Aaと中空筒部材54とが連結される。つまり、中空筒部材54も、第一円盤状部材5Aaを介して外筒軸7Bに支持されている。また、延出部56bの上流側端部(下端部)の内周面には、雌ねじ部56b3よりも下流側(上側)にOリングscが装着されるシール溝56b4が形成されている。このOリングscは、第一円盤状部材5Aaと中空筒部材54とが連結されることにより、中空筒部材54の雄ねじ部54aの下流側端部(上端部)に形成されたテーパ面54a1が当接して圧縮される。
【0033】
第一止水金具5Abは、カップ状に形成されており、円盤基部57aと、円盤基部57aの最も外周側から上流側(下側)に延出した円筒部57bとが一体形成されている。円盤基部57aは、中央に中空筒部材54が挿入される挿入孔部57a1が貫通形成されており、最も外周側に弾性部材5Cの一端が係合する第一段差部57a2が形成されている。また、円盤基部57aの挿入孔部57a1に隣接した外周側には、Oリングsdが装着されるシール溝57a3が形成されており、このシール溝57a3の更に外周側には、引寄ボルト52が螺合される複数(本実施形態では8つ)の雌ねじ孔57a4が周方向に等間隔に形成されている。円筒部57bは、第二止水金具5Bbの外側に隣接しており、第二止水金具5Bbが内挿される外筒となっている。
【0034】
第二円盤状部材5Baは、下流側端面(上面)が凹状に形成されている。第二円盤状部材5Baは、中央に中空筒部材54が挿入される挿入孔部58aが貫通形成されており、この挿入孔部58aよりも外周側に、六角穴付きボルト等で構成される引寄ボルト53,55aが挿入される複数(本実施形態では8つ)の貫通孔58bが周方向に等間隔に形成されている。挿入孔部58aの内周面には、Oリングsjが装着されるシール溝58a1と、このシール溝58a1よりも上流側(下側)に中空筒部材54が係止される係止凹部58a2とが形成されている。つまり、第二円盤状部材5Baも、第一円盤状部材5Aa及び中空筒部材54を介して外筒軸7Bに支持されている。
【0035】
第二止水金具5Bbは、中央に中空筒部材54が挿入される挿入孔部59aが貫通形成されており、最も外周側に弾性部材5Cの他端が係合する第二段差部59bが形成されている。また、挿入孔部59aに隣接した外周側には、Oリングsfが装着されるシール溝59cが形成されており、このシール溝59cの更に外周側には、引寄ボルト53,55aが螺合される複数(本実施形態では8つ)の雌ねじ孔59dが周方向に等間隔に形成されている。第二止水金具5Bbは、第一止水金具5Abの円筒部57bの内側に隣接しており、円筒部57bが外挿される内筒となっている。
【0036】
中空筒部材54は、一対の上環状部材5A及び一対の下環状部材5Bが外挿されると共に、内筒軸7Aが内挿される。この中空筒部材54の軸方向中央付近には、弾性部材5Cを膨張させるための流体導入空間Aに連通する流体流入部51として、複数の貫通孔が形成されている。また、中空筒部材54は、一端に、第一円盤状部材5Aaの延出部56bに形成された雌ねじ部56b3に螺合する雄ねじ部54aが形成されており、他端に、第二円盤状部材5Baに形成された係止凹部58a2に係合する環状突出部54bが形成されている。中空筒部材54を第一止水金具5Ab及び一対の下環状部材5Bの内部に挿入して環状突出部54b及び係止凹部58a2を係合させた状態で、中空筒部材54を第一円盤状部材5Aaに螺合することにより、第一円盤状部材5Aaと第二円盤状部材5Baとが位置決めされる。また、第二円盤状部材5Baに複数(本実施形態では4つ)の六角穴付きボルト等で構成される引寄ボルト55aで固定された先端プレート55により中空筒部材54の落下が防止される。
【0037】
先端プレート55は、中央に内筒軸7Aが挿入される挿入孔部55bが貫通形成されており、引寄ボルト53の頭部を収容する複数(本実施形態では4つ)の貫通孔55c及び引寄ボルト55aの雄ねじが挿入される複数(本実施形態では4つ)の貫通孔(不図示)が周方向に交互に配置されている。また、先端プレート55の上流側端面(下面)には、案内部材42の棒状部材42aが螺子固定されており(図2も参照)、先端プレート55の下流側端面(上面)には、挿入孔部55bと貫通孔55cとの間に、Oリングsgが装着されるシール溝55dが形成されている。挿入孔部55bの内周面には、外周シール部材siが装着されるシール溝55eが形成されており、この外周シール部材siが内筒軸7Aに密着している。
【0038】
弾性部材5Cは、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)のような耐久性に優れた合成ゴム等で構成されており、一対の上環状部材5Aに挟持される第一被挟持部61と、一対の下環状部材5Bに挟持される第二被挟持部62と、第一被挟持部61と第二被挟持部62とを接続し、流体流入部51から空気が流入することにより膨張する膨張部63と、を有している。
【0039】
第一被挟持部61は、膨張部63から内側に断面L字状に屈曲しており、同様に、第二被挟持部62は、膨張部63から内側に断面L字状に屈曲している。第一被挟持部61を第一止水金具5Abの第一段差部57a2に係合させると共に、第二被挟持部62を第二止水金具5Bbの第二段差部59bに係合させることにより、弾性部材5Cの一端が第一止水金具5Abに支持され、弾性部材5Cの他端が第二止水金具5Bbに支持される。膨張部63は、自然状態では屈曲変形した形状であり、引寄ボルト52及び/又は引寄ボルト53,55aを締め増して、第一止水金具5Abと第二止水金具5Bbとを離間させることにより、直立形状となる。
【0040】
図5には、弾性部材5Cの姿勢修正手順が示されている。同図の左図に示すように、第一被挟持部61を第一止水金具5Abの第一段差部57a2に係合させると共に、第二被挟持部62を第二止水金具5Bbの第二段差部59bに係合させ、中空筒部材54を一対の上環状部材5A及び一対の下環状部材5Bの内部に装着して、引寄ボルト52及び引寄ボルト53,55aで仮締めする。この状態では、第一止水金具5Abと第二止水金具5Bbとが近接しており、膨張部63が屈曲変形した形状となっている。次いで、同図の右図に示すように、引寄ボルト52及び引寄ボルト53,55aを締め増すことにより、第一止水金具5Abが第一円盤状部材5Aaに当接すると共に第二止水金具5Bbが第二円盤状部材5Baに当接して、第一止水金具5Abと第二止水金具5Bbとが離間する。その結果、膨張部63に引張力がかかり、膨張部63が直立形状となる。この構成により、中空筒部材54、第一止水金具5Ab及び第二止水金具5Bbで囲まれた密封空間が、流体導入空間Aとなっている。
【0041】
図6の右図に示すように、外筒軸7Bから流体流入部51を介して流体導入空間Aに導入された空気により、膨張部63が流体圧を受けて径方向外側に膨張する。このように、弾性部材5Cを支持した状態で第一止水金具5Abと第二止水金具5Bbとを離間させて弾性部材5Cにテンションをかければ、膨張前の弾性部材5Cの変形を防止することが可能となる。その結果、流体流入部51から空気を流入させることにより弾性部材5Cを膨張させたとき、弾性部材5Cを均等に膨張させることが可能となり、分岐管部2の流路を確実に閉塞することができる。なお、膨張部63の膨張率や強度については、分岐管部2の構造や内径に応じて設計されている。
【0042】
図2に戻り、内筒軸7Aは、後述する作業ケース30の天板部30bに固定される保持部材15の中央部を、水密状態で軸方向に貫通する中実棒状部材で構成されている。空気弁6の上面から構造物の天井壁Rまでの作業用空間の高さが制限されているため、この作業用空間の制限高さに対応して軸方向で複数に分割された分割内筒軸7A1,7A2で構成されている。内筒軸7Aは、係止機構4及びシール機構5が設けられた第一分割内筒軸7A1と、第一分割内筒軸7A1の上端部に対して雄雌ねじ連結で構成される連結部11で接続される第二分割内筒軸7A2と、を少なくとも有している。また、第二分割内筒軸7A2の上端部に対して更に分割操作軸を連結することが可能である。
【0043】
外筒軸7Bは、後述する作業ケース30の天板部30bに固定される保持部材15の中央部を、水密状態で軸方向に摺動自在に貫通する中空棒状部材で構成されている。外筒軸7Bには、内筒軸7Aと同軸芯で内筒軸7Aが内挿されており、内筒軸7Aと外筒軸7Bとの隙間に流体流入部51と連通する流体流路Fが形成されている。
【0044】
外筒軸7Bは、内筒軸7Aと同様に、作業用空間の制限高さに対応して軸方向で複数に分割された外筒軸7B1,7B2で構成されている。外筒軸7Bは、上流側端部(下端部)の内周面に形成された雌ねじ部7Baが第一円盤状部材5Aaの雄ねじ部56b1に螺合されることにより、シール機構5と連結されている。また、外筒軸7Bは、係止機構4,シール機構5及び保持部材15が設けられた第一分割外筒軸7B1と、第一分割外筒軸7B1の上端部に対して雄雌ねじ連結で構成される連結部12で接続される第二分割外筒軸7B2と、を少なくとも有している。第二分割外筒軸7B2の上端部には、空気圧送器等の流体供給機構13から空気を供給するためのカプラ13aが接続されている。なお、第二分割外筒軸7B2の上端部に対して更に分割操作軸を連結することが可能である。
【0045】
内筒軸7Aと外筒軸7Bとに亘って係止機構4の係止状態の解除を防止する解除防止機構10が設けられている。解除防止機構10は、内筒軸7Aの下流側端部(上端部)に形成された雄ねじ部7Aaと、雄ねじ部7Aaに螺合される操作ナット10A(ナットの一例)と、外筒軸7Bの下流側端面(上面)に配置され、操作ナット10Aの回転を支持するベアリング7Bbと、で構成されている。また、係止機構4は、操作ナット10Aの回転操作により一対の係止リンク44が拡径可能に構成されている。操作ナット10Aをベアリング7Bbに摺接させながら回転させることにより、内筒軸7Aが上昇して一対の係止リンク44が拡径し、これら係止リンク44が分岐管部2の内周面の分岐流路開口周縁に対して係合する(図9も参照)。そして、操作ナット10Aが回転不能となったことにより、係止機構4の係止が完了し、操作ナット10Aと雄ねじ部7Aaとにより、係止機構4の係止状態の解除が防止される。このように、操作ナット10Aの回転操作により係止機構4を拡径させれば操作性に優れ、操作ナット10Aが回転不能となったことによる係止機構4の係止完了確認が容易である。なお、解除防止機構10としてのベアリング7Bbを省略して、操作ナット10Aと外筒軸7Bの下流側端面(上面)とを摺接させても良い。
【0046】
保持部材15は、外筒軸7Bを保持し、後述する作業ケース30の天板部30bにボルトBで固定される円盤状部材で構成されている。この保持部材15は、中央部分で外筒軸7Bが挿入される外筒軸用貫通孔15aが形成されている。外筒軸用貫通孔15aには、内周面に一対の内周シール部材saが装着されており、この内周シール部材saにより外筒軸7Bが保持部材15に対して水密状態に保持されている。また、保持部材15の外周面(天板部30bの環状溝)には、外周シール部材seが設けられており、作業ケース30の天板部30bと保持部材15との隙間からの漏水が防止される。
【0047】
上述した分岐流路閉塞装置Xは、作業ケース30に装着して用いられる。作業ケース30は、端部が径方向外側に突出した連結フランジ部30aを有する筺体であり、連結フランジ部30aの反対側に中央部分が開口された天板部30bを有している。また、作業ケース30の側壁には、不図示の掻取り清掃具で掻き取られた錆瘤等を外部に排出する排水バルブ22が接続されている。
【0048】
天板部30bは、円環筒状の外周壁部30baと、外周壁部30baの上端を径方向内側に突出させた環状突出部30bbと、が一体形成されている。外周壁部30baの内周面には、上述した外周シール部材seが装着される環状溝が形成されており、環状突出部30bbには、保持部材15を固定するためのボルトBが挿入される複数の貫通孔が形成されている。また、環状突出部30bbには、作業ケース30を取り外す際に、カプラ13aを通過させるための切欠部30bcが形成されている。
【0049】
作業ケース30の天板部30bには、係止機構4,シール機構5及び保持部材15が装着されている軸部材7が自重で下降することを防止する下降規制具24が設けられている。下降規制具24は、内筒軸7A及び外筒軸7Bを挾持固定可能な一対の挾持板24Aと、両挾持板24Aを挾持状態に締付け固定する六角穴付きボルト24Bと、挾持板24Aと天板部30bとの間隔を調整する間隔調整ボルト24Cと、で構成されている。
【0050】
続いて、図7図14を用いて、分岐流路閉塞方法及び流体機器更新方法を説明する。
【0051】
分岐流路閉塞方法は、図7に示すように、既設の仕切弁3(作業弁の一例、既設流体機器の一例)により分岐管部2の流路を閉塞する仮閉塞工程と、仮閉塞工程の後、分岐管部2に接続された既設の空気弁6(既設流体機器の一例)を撤去する撤去工程と、図8に示すように、空気弁6が撤去された分岐管部2に、係止機構4及びシール機構5が接続された軸部材7が密封状態で挿入された作業ケース30を装着する装着工程と、図9に示すように、仕切弁3を開弁した後、軸部材7を操作して係止機構4を分岐管部2の分岐流路開口周縁(接続部分2a)に係止する係止工程と、弾性部材5Cの内部に空気を供給して、分岐管部2の流路を閉塞する閉塞工程と、を含んでいる。
【0052】
さらに、流体機器更新方法は、図10に示すように、閉塞工程の後、分岐流路閉塞装置Xを残置した状態で作業ケース30を撤去する第一撤去工程と、図11に示すように、第一撤去工程の後、補修弁8(新設流体機器)と作業ケース30とを分岐管部2に設置する第一設置工程と、図12に示すように、第一設置工程の後、補修弁8により分岐管部2の流路を閉塞して分岐流路閉塞装置Xを撤去する第二撤去工程と、図13に示すように、空気弁9(新設流体機器)を補修弁8に設置する第二設置工程と、を含んでいる。
【0053】
図7に示すように、仮閉塞工程では、既設の仕切弁3の弁体3cを移動させて分岐管部2の流路を閉塞する。既設の仕切弁3の老朽化等により弁体3cが固着して移動できない場合は、図14に示すように、締付け輪16を両連結フランジ部2c,3aの外周面に装着する。この締付け輪16は、略半円弧状の一対の締付け分割輪16Aと一つの締付け分割輪16Aに固定された仕切板弁16Cとを有しており、両連結フランジ部2c,3aのボルト,ナットを緩めた後、各締付け分割輪16Aの周方向両端部に固着された連結片16B同士をボルト,ナットで引寄せ固定する。そして、仕切板弁16Cの弁板16Caを両連結フランジ部2c,3aの間に挿入することにより、分岐管部2の流路を閉塞する。分岐管部2の流路を閉塞した後は、撤去工程で、既設の空気弁6を撤去する。図示しないが、仮閉塞工程の後、清掃機が装着された作業ケース30を仕切弁3の下流側の連結フランジ部3bに装着し、分岐管部2の内面を清掃する。このとき、既設の仕切弁3の弁体3cが固着して移動できない場合は、作業ケース30と仕切弁3との間に作業用仕切弁(不図示)を設置する。
【0054】
次いで、図8に示すように、装着工程では、仕切弁3の下流側の連結フランジ部3bに、作業ケース30の連結フランジ部30aをボルト,ナットで固定する。作業ケース30の内部には、係止機構4及びシール機構5が収容されており、係止機構4及びシール機構5を支持する軸部材7(外筒軸7B)は、保持部材15により保持され、下降規制具24により挟持固定されている。このとき、図6の左図に示すように、第一止水金具5Abが第一円盤状部材5Aaに当接すると共に第二止水金具5Bbが第二円盤状部材5Baに当接しており、シール機構5の膨張部63は、作業ケース30の内部に直立形状で収容されている。
【0055】
次いで、図9に示すように、仕切弁3を開弁して下降規制具24の六角穴付きボルト24Bを緩めた後、手動又は不図示のレバーブロック(登録商標)等の下降器具により軸部材7を操作して、係止機構4及びシール機構5を下降させる。そして、第二分割内筒軸7A2及び第二分割外筒軸7B2の上端部が作業ケース30の天板部30bに位置するまで、係止機構4及びシール機構5が下降したとき、第二分割内筒軸7A2及び第二分割外筒軸7B2に第三分割内筒軸7A3及び第三分割外筒軸7B3を連結する。次いで、係止機構4が分岐管部2の分岐流路開口周縁(接続部分2a)に位置するまで、手動等により第三分割内筒軸7A3及び第三分割外筒軸7B3を操作した後、第三分割内筒軸7A3及び第三分割外筒軸7B3に、下流側端部(上端部)の雄ねじ部7Aaに操作ナット10Aが螺合された第四分割内筒軸7A4、及び、カプラ13a及びベアリング7Bbが装着された第四分割外筒軸7B4を連結する。このように、構造物の天井壁Rまでの作業用空間の高さが制限されている場合でも、この作業用空間の制限高さに対応して複数に分割された軸部材7を用いることで作業効率を高めることができる。
【0056】
次いで、係止工程では、第四分割外筒軸7B4の下流側端面(上面)に配置されたベアリング7Bbに摺接させながら操作ナット10Aを回転させることにより、内筒軸7Aを引き上げ操作して係止機構4を分岐管部2の分岐流路開口周縁(接続部分2a)に係止させる。より詳細に説明すると、内筒軸7Aを下流側(上方側)へ移動させることにより、係止機構4の係止リンク44を拡径姿勢にし、分岐管部2の内周面の分岐流路開口周縁に対して係合させる。操作ナット10Aが回転不能となったことにより、係止機構4の係止が完了し、操作ナット10Aと雄ねじ部7Aaとにより、係止機構4の係止状態の解除が防止される。次いで、下降規制具24の六角穴付きボルト24Bを締付けて、軸部材7(外筒軸7B)を挟持固定する。その結果、下降規制具24により、軸部材7(外筒軸7B)の自重による落下が防止される。
【0057】
次いで、閉塞工程では、弾性部材5Cの内部に空気を供給して、分岐管部2の流路を閉塞する。より詳細に説明すると、流体供給機構13からカプラ13aを介して外筒軸7Bと内筒軸7Aとの隙間の流体流路Fに空気を供給し、流体流入部51から流体導入空間Aに空気を導入する(図6の右図も参照)。その結果、膨張部63が流体圧を受けて径方向外側に膨張し、分岐管部2の内面に密着して分岐管部2の流路を閉塞する。このように、本実施形態の閉塞工程では、油圧ジャッキ等の大きな駆動力を要せず、流体流入部51から空気を供給するだけで良いので、作業効率を高めることができる。しかも、シール機構5を流体圧により膨張する弾性部材5Cで構成すれば、流体圧を変更するだけで自由に膨張量を変更することが可能となり、装置の軸方向寸法を大きくすること無く、あらゆる内径の分岐管部2に対応することができる。
【0058】
次いで、図10に示すように、第一撤去工程では、分岐流路閉塞装置Xを残置した状態で作業ケース30及び仕切弁3を撤去する。より詳細に説明すると、作業ケース30の天板部30bのボルトBを取外して、天板部30bと保持部材15との固定を解除し、作業ケース30の連結フランジ部30aと仕切弁3の下流側の連結フランジ部3bとを固定するボルト,ナットを取外して、作業ケース30を撤去する。そして、分岐管部2の連結フランジ部2cと仕切弁3の上流側の連結フランジ部3aとを固定するボルト,ナットを取外して、仕切弁3を撤去する。このとき、分岐管部2と水道管1との接続部分2aに係止機構4を係止させることにより、流体圧による軸部材7(内筒軸7A)の上方向への移動が防止され、シール機構5に空気を供給して分岐管部2の流路を閉塞することにより軸部材7の下方向の移動が防止される。さらに、解除防止機構10を構成する雄ねじ部7Aaに螺合される操作ナット10Aが外筒軸7Bの下流側端面(上面)に配置されたベアリング7Bbに当接することにより、内筒軸7Aが自重により下降し係止リンク44が縮径して係止機構4の係止状態が解除されることが防止される。また、保持部材15の径方向寸法は、仕切弁3の内径よりも小さいため、作業ケース30及び仕切弁3を確実に撤去することができる。
【0059】
次いで、図11に示すように、第一設置工程では、第一撤去工程の後、新規の補修弁8を分岐管部2にボルト,ナットにより締結して設置すると共に、作業ケース30を新規の補修弁8にボルト,ナットにより締結して設置する。そして、作業ケース30の天板部30bと保持部材15とをボルトBにより固定し、作業ケース30内を密閉状態に維持する。次いで、内筒軸7Aに螺合されている操作ナット10Aを緩め、内筒軸7Aを下降させて、係止機構4の係止リンク44を縮径させると共に、流体流入部51からの流体導入を停止して、弾性部材5Cに作用する流体圧を低下させて弾性部材5Cを縮径させる(図12も参照)。次いで、手動等により軸部材7を操作して、係止機構4及びシール機構5を上昇させる。このとき、分割された軸部材7の連結を順番に解除しながら、係止機構4及びシール機構5が作業ケース30内に収容されるまで、軸部材7を上昇させる。
【0060】
次いで、図12に示すように、第二撤去工程では、係止機構4及びシール機構5が作業ケース30内に収容された状態で、補修弁8により分岐管部2の流路を閉塞して分岐流路閉塞装置Xを撤去する。最後に、図13に示すように、第二設置工程では、空気弁9(新設流体機器)を補修弁8に設置して、流体機器の更新が完了する。
【0061】
[その他の実施形態]
(1)軸部材7は、係止機構4を操作する内筒軸7Aと、流体流入部51に空気を供給する外筒軸7Bと、を分離させた2軸構造としても良い。
(2)係止機構4は、内筒軸7Aを操作することにより、拡径姿勢に変更できるものであれば、上述した形態に限定されない。
(3)上述した実施形態では、一対の上環状部材5Aを第一円盤状部材5Aaと第一止水金具5Abとで構成し、一対の下環状部材5Bを第二円盤状部材5Baと第二止水金具5Bbで構成した。これに代えて、上環状部材5A又は下環状部材5Bを、弾性部材5Cの被挟持部61,62が固定された環状部材で構成して、第一止水金具5Ab及び第二止水金具5Bbの何れか一方を移動可能に形成しても良い。この場合でも、第一止水金具5Abと第二止水金具5Bbとは、引寄ボルト52又は引寄ボルト53,55aを螺合することにより、相対移動可能な分割構造となる。
【0062】
(4)上述した第一被挟持部61及び第二被挟持部62は、膨張部63と一体の弾性部材5Cで構成せずに、金属等で構成された第一被挟持部61及び第二被挟持部62を弾性部材5Cとしての膨張部63と接続しても良い。
(5)上述した実施形態では、シール機構5の内部に空気を流入させたが、水等の液体を流入させても良い。
(6)上述した保持部材15に代えて、シール機構5に内筒軸7A及び外筒軸7Bを保持する機構を設けても良い。
(7)上述した解除防止機構10に代えて、内筒軸7Aを把持する機構を別途設けても良い。
(8)上述した実施形態では、上水が流通する水道管1を用いて説明したが、上水以外の液体や、ガス等の気体が流通する流体管としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、流体管から分岐した分岐管部の流路を閉塞する分岐流路閉塞装置、及び、分岐流路閉塞装置を用いた分岐流路閉塞方法に利用可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 :水道管(流体管)
2 :分岐管部
2a :接続部分
3 :仕切弁(作業弁)
4 :係止機構
5 :シール機構
5Aa :第一円盤状部材(第一環状部材)
5Ab :第一止水金具(第一支持部)
5Ba :第二円盤状部材(第二環状部材)
5Bb :第二止水金具(第二支持部)
5C :弾性部材
6 :空気弁(既設流体機器)
7 :軸部材
7A :内筒軸
7B :外筒軸
10A :操作ナット(ナット)
30 :作業ケース
51 :流体流入部
61 :第一被挟持部
62 :第二被挟持部
63 :膨張部
F :流体流路
X :分岐流路閉塞装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14