(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154142
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】車両の後方映像表示装置
(51)【国際特許分類】
B60R 1/00 20220101AFI20221005BHJP
B60R 1/04 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
B60R1/00 A
B60R1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057035
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】永井 孝明
(57)【要約】
【課題】通常使用時に必要以上の後方の映像情報が乗員の視界に入り込むのを抑制でき、かつ、必要時には後方の広い範囲の映像を視認することができる車両の後方映像表示装置を提供する。
【解決手段】後方映像表示装置は、投影部と、凹面鏡11と、一対の遮蔽壁12と、を備える。投影部は、車両の後方の映像を投影する。凹面鏡11は、投影部の映像を反射させて乗員に虚像として視認させる。一対の遮蔽壁12は、凹面鏡11の鏡面11aに対して乗員側に離間した位置に、左右に離間して配置されている。一対の遮蔽壁12の離間幅W1は、凹面鏡11の左右方向の幅W2よりも狭く設定されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の後方の映像を投影する投影部と、
前記投影部の映像を反射させて乗員に虚像として視認させる凹面鏡と、
前記凹面鏡の鏡面に対して乗員側に離間した位置に、左右に離間して配置された一対の遮蔽壁と、を備え、
一対の前記遮蔽壁の離間幅は、前記凹面鏡の左右方向の幅よりも狭いことを特徴とする車両の後方映像表示装置。
【請求項2】
一対の前記遮蔽壁は、通常運転姿勢で前記凹面鏡の前記鏡面の中央に正対する乗員の視点から前記凹面鏡の左右の側縁部領域が隠れるように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の車両の後方映像表示装置。
【請求項3】
前記凹面鏡の前記側縁部領域には、車両の側部後方の映像を左右方向に圧縮した映像が前記投影部から投影されることを特徴とする請求項2に記載の車両の後方映像表示装置。
【請求項4】
前記投影部は、投影する映像に指標を追加表示する指標表示部を備え、
前記指標表示部は、車両の方向指示器が操作されたときには、前記方向指示器の操作された側と同じ側の前記側縁部領域に投影される映像に、映像上の距離の変化を示す指標を追加表示することを特徴とする請求項3に記載の車両の後方映像表示装置。
【請求項5】
前記投影部は、
車両の中央後方を撮影する中央カメラの映像を前記凹面鏡の中央領域に投影し、
車両の左後方を撮影する左側カメラの映像を前記凹面鏡の左側の前記側縁部領域に投影し、
車両の右後方を撮影する右側カメラの映像を前記凹面鏡の右側の前記側縁部領域に投影することを特徴とする請求項4に記載の車両の後方映像表示装置。
【請求項6】
車両の後方の映像を投影する投影部と、
前記投影部の映像を反射させて乗員に虚像として視認させる凹面鏡と、
前記凹面鏡の鏡面に対して乗員側に離間した位置に、上下に離間して配置された一対の遮蔽壁と、を備え、
一対の前記遮蔽壁の離間幅は、前記凹面鏡の上下方向の幅よりも狭いことを特徴とする車両の後方映像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両後方の映像を車室内の乗員に提供する車両の後方映像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車両後方の映像を運転席の前方上部に映し出す後方映像表示装置を備えた車両が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の後方映像表示装置は、カメラで撮影した車両の後方の映像を投影する投影部であるディスプレイと、ディスプレイの映像を反射させて乗員に虚像として視認させる凹面鏡を備えている。この後方映像表示装置では、カメラで撮影した車両後方の映像を凹面鏡で反射させて左右の広い視野角をもって映し出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の後方映像表示装置は、広い画角を持ったレンズのカメラ映像を写した場合に、広い範囲の多く映像情報が凝縮されたかたちで映り込むことになる。このため、通常走行時には、凹面鏡の左右の側縁部領域に映り込む多量の映像情報が運転者による後方視認の妨げになることがある。また、特許文献1以外の公知技術として、広い画角の映像を液晶ディスプレイに表示するものもあるが、この技術の場合も、すべての情報が画角内に表示されるため、同じく情報過多となってしまう。
【0006】
そこで本発明は、通常使用時に必要以上の後方の映像情報が乗員の視界に入り込むのを抑制でき、かつ、必要時には後方の広い範囲の映像を視認することができる車両の後方映像表示装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車両の後方映像表示装置は、上記課題を解決するために、以下の構成を採用した。
即ち、本出願一の発明の係る車両の後方映像表示装置は、車両の後方の映像を投影する投影部(例えば、実施形態のディスプレイ10)と、前記投影部の映像を反射させて乗員に虚像として視認させる凹面鏡(例えば、実施形態の凹面鏡11)と、前記凹面鏡の鏡面(例えば、実施形態の鏡面11a)に対して乗員側に離間した位置に、左右に離間して配置された一対の遮蔽壁(例えば、実施形態の遮蔽壁12)と、を備え、一対の前記遮蔽壁の離間幅は、前記凹面鏡の左右方向の幅よりも狭いことを特徴とする。
【0008】
上記の構成により、投影部から投影された車両の後方の映像は、凹面鏡で反射して虚像として乗員方向に映し出される。このとき、映像は凹面鏡に反射して映し出されるため、その映像は奥行き感があり、かつ、視野角の広いものとなる。しかし、視野角が広くなると、必要以上の映像情報が凹面鏡の側縁部領域に映り込み、車両の通常走行時に運転者が車両後方の状況を把握しづらくなる。本構成では、乗員が通常運転姿勢で凹面鏡を覗き込むときには、凹面鏡の左右の側縁部領域が遮蔽部によって隠されて視認できなくなる。このため、左右の後側方の必要以上の映像情報が乗員の視界に入り込むのを抑制することができる。
一方、乗員が車両後部の左右方向のより多くの映像情報を必要とする場合には、乗員が凹面鏡の鏡面を覗き込む位置を左右に移動させることで、凹面鏡の側縁部領域に映る車両後側方の映像を視認することが可能になる。
【0009】
一対の前記遮蔽壁は、通常運転姿勢で前記凹面鏡の前記鏡面の中央に正対する乗員の視点から前記凹面鏡の左右の側縁部領域(例えば、実施形態の側縁部領域11s)が隠れるように配置されるようにしても良い。
【0010】
この場合、通常運転姿勢での乗員の視点からは、凹面鏡の左右の側縁部領域の映像が見えなくなる。このため、乗員が意図して覗き込み位置を左右に移動させたときにのみ、後側方の多くの映像情報を取得することが可能になる。
【0011】
前記凹面鏡の前記側縁部領域には、車両の側部後方の映像を左右方向に圧縮した映像が前記投影部から投影されるようにしても良い。
【0012】
この場合、凹面鏡の側縁部領域には、左右方向に圧縮した映像が投影されるため、側縁部領域の幅の拡大を抑制した状態で、広い範囲の後側方の映像を側縁部領域に表示することが可能になる。したがって、本構成を採用した場合には、凹面鏡の幅の拡大によって前方視界が狭まるのを抑制しつつ、凹面鏡の側縁部領域に後側方の広い範囲の映像を映し出すことができる。
【0013】
前記投影部は、投影する映像に指標を追加表示する指標表示部(例えば、実施形態の指標表示部40)を備え、前記指標表示部は、車両の方向指示器が操作されたときには、前記方向指示器の操作された側と同じ側の前記側縁部領域に投影される映像に、映像上の距離の変化を示す指標を追加表示するようにしても良い。
【0014】
この場合、車両の方向指示器が操作されたときに、凹面鏡のうちの、方向指示器の操作された側と同じ側の側縁部領域に、映像上の距離の変化を示す指標が表示される。このため、左右に圧縮された側縁部領域の映像を覗き込む乗員が、映像上において距離感を正確に把握することが可能になる。
【0015】
前記投影部は、車両の中央後方を撮影する中央カメラ(例えば、実施形態の中央カメラ32)の映像を前記凹面鏡の中央領域に投影し、車両の左後方を撮影する左側カメラ(例えば、実施形態の左側カメラ34L)の映像を前記凹面鏡の左側の前記側縁部領域に投影し、車両の右後方を撮影する右側カメラ(例えば、実施形態の右側カメラ34R)の映像を前記凹面鏡の右側の前記側縁部領域に投影するようにしても良い。
【0016】
この場合、左側カメラと右側カメラを用いて、車両の左後方と右後方の正確な映像情報を、凹面鏡の左右の側縁部領域に、左右方向に圧縮した映像として映し出すことが可能になる。したがって、本構成を採用した場合、凹面鏡の側縁部領域に映し出される映像の劣化を抑制し、乗員による視認性をより高めることができる。
【0017】
本出願の他の発明の係る車両の後方映像表示装置は、車両の後方の映像を投影する投影部と、前記投影部の映像を反射させて乗員に虚像として視認させる凹面鏡と、前記凹面鏡の鏡面に対して乗員側に離間した位置に、上下に離間して配置された一対の遮蔽壁と、を備え、一対の前記遮蔽壁の離間幅は、前記凹面鏡の上下方向の幅よりも狭いことを特徴とする。
【0018】
上記の構成により、乗員が通常運転姿勢で凹面鏡を覗き込むときには、凹面鏡の上縁部領域と下縁部領域が遮蔽部によって隠されて視認できなくなる。このため、後方の上下の必要以上の映像情報が乗員の視界に入り込むのを抑制することができる。
一方、乗員が車両後部の上下方向のより多くの映像情報を必要とする場合には、乗員が凹面鏡の鏡面を覗き込む位置を上下に移動させることで、凹面鏡の上縁部領域や下縁部領域に映る車両後方の映像を視認することが可能になる。例えば、駐車時等に車両後部直下の車止めの位置を視認することができる。
【発明の効果】
【0019】
本出願の一の発明に係る車両の後方映像表示装置は、凹面鏡の鏡面に対して乗員側に離間した位置に、左右に離間して一対の遮蔽壁が配置され、その一対の遮蔽壁の離間幅が凹面鏡の左右方向の幅よりも狭くなっている。このため、乗員が通常運転姿勢で凹面鏡を覗き込むときには、凹面鏡の左右の側縁部領域が遮蔽部によって隠れ、乗員が凹面鏡の鏡面を覗き込む位置を左右に移動させたときには、凹面鏡の側縁部領域に映る車両後側方の映像を視認することが可能になる。
本出願の他の発明に係る車両の後方映像表示装置は、凹面鏡の鏡面に対して乗員側に離間した位置に、上下に離間して一対の遮蔽壁が配置され、その一対の遮蔽壁の離間幅が凹面鏡の上下方向の幅よりも狭くなっている。このため、乗員が通常運転姿勢で凹面鏡を覗き込むときには、凹面鏡の上縁部領域と下縁部領域が遮蔽部によって隠れ、乗員が凹面鏡の鏡面を覗き込む位置を上下に移動させたときには、凹面鏡の上縁部領域や下縁部領域に映る車両後方の映像を視認することが可能になる。
したがって、本出願の発明に係る車両の後方映像表示装置を採用した場合には、通常使用時に必要以上の後方の映像情報が乗員の視界に入り込むのを抑制でき、かつ、必要時には後方の広い範囲の映像を視認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】第1実施形態の後方映像表示装置の概略構成図。
【
図3】第1実施形態の後方映像表示装置の凹面鏡と遮蔽壁を示す正面図。
【
図4】第1実施形態の後方映像表示装置の基準視点での映像の見え方を示す模式的な上面図。
【
図5】第1実施形態の後方映像表示装置の基準視点から左にずれた視点での映像の見え方を示す模式的な上面図。
【
図6】第2実施形態の後方映像表示装置を搭載した車両の上面図。
【
図7】第2実施形態の後方映像表示装置の概略構成図。
【
図8】第2実施形態の後方映像表示装置の凹面鏡を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、図面の適所には、車両の前方を示す矢印FRと、車両の上方を指す矢印UPと、車両の左側方を指す矢印LHが示されている。
【0022】
<第1実施形態>
図1は、本実施形態の後方映像表示装置1の斜視図であり、
図2は、後方映像表示装置1の概略構成図である。
本実施形態の後方映像表示装置1は、車室内の運転席の車幅方向中央寄りの前部上方位置に配置されている。後方映像表示装置1は、車両後方を撮影するカメラ13の映像を投影する投影部であるディスプレイ10と、ディスプレイ10の映像を反射させて乗員に虚像として視認させる凹面鏡11と、凹面鏡11の鏡面11aに対して乗員側(車両後方側)に離間した位置に、左右に離間して配置された一対の遮蔽壁12と、を備えている。ディスプレイ10は、
図2に示すように、車両後方を映すカメラ13から映像信号を受け取り、その映像信号を基にして表示部14に適正な映像を映し出す映像制御部15を有する。カメラ13は、例えば、車両後部の車幅方向略中央位置に設置される。
【0023】
後方映像表示装置1は、凹面鏡11が内部に設置される筐体16を備えている。筐体16は、車幅方向に長い長方体の、隣接する二つの長尺面の一部が左右方向に沿って斜めに切り欠かれた概略形状とされている。斜めに切り欠かれた部分(傾斜部)には、車幅方向に長尺な開口17が形成されている。筐体16内の開口17と対向する一方の壁は車両後方側に向く前壁とされ、その前壁の車両後方側に向く面には、凹面鏡11が取り付けられている。また、筐体16内の開口17と対向する他方の壁は下方に向く上壁とされ、その上壁にはディスプレイ10が取り付けられている。上壁には、ディスプレイ10の表示部14が筐体16内に臨むように投影開口18が形成されている。
【0024】
凹面鏡11は、正面視が横長の長方形状に形成されている。凹面鏡11は、鏡面11aが車両後方側に向き、その鏡面11aの中央領域が車両前方側に凹状に湾曲して窪んでいる。本実施形態の凹面鏡11は、上下の寸法に比較して車幅方向の長さが長いため、鏡面11aに反射して映り込む像は、鏡面11aの側縁部領域11s(
図3参照)では歪み量が大きくなっている。
【0025】
また、筐体16の開口17部分には、ハーフミラー19と、一対の遮蔽壁12が配置されている。ハーフミラー19は、車両前方側に向かって下方に傾斜する傾斜姿勢で筐体16の開口17に取り付けられている。一対の遮蔽壁12は、ハーフミラー19の左右両側に隣接して配置されている。
なお、
図1では、別体の遮蔽壁12が筐体16の開口17側に取り付けられるように描かれているが、遮蔽壁12は筐体16に一体に形成するようにしても良い。ただし、遮蔽壁12は、いずれの場合も光を透過しない、若しくは、光を透過しにくい材料によって形成される。
【0026】
ハーフミラー19は、ディスプレイ10からハーフミラー19に入射した光(映像)を凹面鏡11に向けて反射させ、凹面鏡11で反射して乗員の視点E方向に進む光(映像)の透過を許容する。
【0027】
図3は、凹面鏡11と一対の遮蔽壁12を示す正面図である。なお、
図3では、遮蔽壁12は仮想線で示されている。
図3に示すように、筐体16に配置された一対の遮蔽壁12の左右方向の離間幅W1は、凹面鏡11の左右の幅W2よりも狭く設定されている。
【0028】
また、一対の遮蔽壁12は、通常運転姿勢で凹面鏡11の鏡面11aの中央に正対する乗員の視点Eから凹面鏡11の左右の側縁部領域11sが隠れるように配置されている。この側縁部領域11sは、車線変更時等に視認が必要となる領域である。したがって、通常運転姿勢で凹面鏡11の鏡面11aの中央に正対した乗員の視点Eからは、側縁部領域11sが遮蔽壁12によって隠され、不要に情報量が多くなってしまう左右端の映像は視認されない。
なお、本実施形態の後方映像表示装置1と乗員の視点Eの位置関係等は、例えば、国際連合欧州経済委員会が定める規則(UN/ECE-R46)等の法規に基づいて定められている。
【0029】
図4は、後方映像表示装置1の基準視点(通常運転姿勢で凹面鏡11の鏡面11aの中央に正対した乗員の視点E)での映像の見え方を示す模式的な上面図である。
図5は、後方映像表示装置1の基準視点(通常運転姿勢で凹面鏡11の鏡面11aの中央に正対した乗員の視点E)から左にずれた視点での映像の見え方を示す模式的な上面図である。
なお、
図4,
図5中の符号20は、ハーフミラー19で反射したディスプレイ10の投影像(映像)であり、符号11Vは、凹面鏡11の前方側に位置されるように見える虚像の仮想スクリーンである。また、
図4,
図5中の矢印A1は、投影像20(映像)の虚像が映って見える仮想スクリーン11Vの全領域であり、矢印A2は、乗員の視点Eから見える仮想スクリーン11V上の範囲である。
【0030】
図4に示すように、乗員が通常運転姿勢で凹面鏡11の鏡面11aの中央に正対すると、凹面鏡11の左右の側縁部領域11sが遮蔽壁12によって乗員の視界から隠れる。この結果、乗員の視点Eから見える仮想スクリーン11Vの範囲は、左右の側縁部領域11Vsを除いた範囲となる。したがって、乗員には、車両の側部後方の映像(必要以上に多くの側部後方の情報を含む映像)は視認されない。このため、乗員は直進運転に必要な車両後方の状況を容易に把握することができる。
【0031】
また、
図4に示す状態から、乗員が
図5に示すように視点Eを右方向に移動させると、今まで左側の遮蔽壁12で隠されていた凹面鏡11の左側の側縁部領域11Vsが乗員の視界上に現れる。この結果、乗員の視点Eから見える仮想スクリーン11Vの範囲は、左側の側縁部領域11Vsを含むようになる。したがって、乗員からは左側の側部後方の広い範囲の映像が視認可能となる。このため、例えば、車両が左側に車線変更する場合や左折する場合には、乗員が後方映像表示装置1を通して左側後方の広い範囲を視認し、安全の確認を行うことができる。
なお、
図4に示す状態から、乗員が視点Eを左方向に移動させた場合には、上記と同様の原理により、右側の側部後方の広い範囲の映像を凹面鏡11の右側の側縁部領域11sによって視認することができる。
【0032】
<第1実施形態の効果>
本実施形態の後方映像表示装置1は、凹面鏡11の鏡面11aに対して乗員側に離間した位置に、左右に離間して一対の遮蔽壁12が配置され、その一対の遮蔽壁12の離間幅W1が凹面鏡11の左右方向の幅W2よりも狭くなっている。このため、乗員が通常運転姿勢で凹面鏡11を覗き込んだ場合には、凹面鏡11の左右の側縁部領域11sが遮蔽壁12によって隠れ、乗員が凹面鏡11の鏡面11aを覗き込む位置を左右に移動させた場合には、凹面鏡11の側縁部領域11sに映る車両の後側方の映像を視認することが可能になる。
したがって、本実施形態の後方映像表示装置1を採用した場合には、通常使用時に必要以上の後側方の映像情報が乗員の視界に入り込むのを抑制でき、かつ、必要時には後側方の広い範囲の映像を視認することができる。
【0033】
また、本実施形態の後方映像表示装置1では、通常運転姿勢で凹面鏡11の鏡面11aの中央に正対する乗員の視点Eから凹面鏡11の左右の側縁部領域11sが隠れるように一対の遮蔽壁12が配置されている。このため、通常運転姿勢での乗員の視点Eからは、凹面鏡11の左右の側縁部領域11sの映像が見えなくなる。したがって、乗員が意図して覗き込み位置を左右に移動させたときにのみ、後側方の多くの映像情報を取得することができる。
【0034】
<第2実施形態>
図6は、本実施形態の後方映像表示装置101を搭載した車両30の上面図であり、
図7は、本実施形態の後方映像表示装置101の概略構成図である。
車両30は、
図6に示すようにテールゲート31の上端の車幅方向中央領域に、車両後方の映像を撮影する中央カメラ32が設置されている。また、車両左右のドアミラー33L,33Rには、夫々車両の側部後方の映像を撮影する左側カメラ34Lと右側カメラ34Rが取り付けられている。
【0035】
中央カメラ32、左側カメラ34L、右側カメラ34Rで夫々撮影された映像は、映像信号としてディスプレイ110(投影部)の映像制御部115に入力される。ディスプレイ110の表示部14は、映像制御部115からの表示指令を受けて各カメラ32,34L,34Rで撮影した映像を映し出す。ディスプレイ110の表示部14の中央領域には、中央カメラ32で撮影した映像がそのまま表示される。これに対し、表示部14の左側の側縁部領域には、左側カメラ34Lで撮影された映像を左右方向に所定比率で圧縮したものが表示される。また、表示部14の右側の側縁部領域には、右側カメラ34Rで撮影された映像を左右方向に所定比率で圧縮したものが表示される。なお、凹面鏡11の大きさに応じ圧縮を行わずに表示しても良い。
【0036】
後方映像表示装置101の筐体16には、第1実施形態と同様に、凹面鏡11と、ハーフミラー19と、一対の遮蔽壁12とが取り付けられている。これらの構成は第1実施形態のものと同様とされている。
【0037】
図8は、凹面鏡11と一対の遮蔽壁12を示す、第1実施形態の
図3と同様の正面図である。
本実施形態の場合も、筐体16に配置された一対の遮蔽壁12の左右方向の離間幅W1は、凹面鏡11の左右の幅W2よりも狭く設定されている。
また、一対の遮蔽壁12は、通常運転姿勢で凹面鏡11の鏡面11aの中央に正対する乗員の視点Eから凹面鏡11の左右の側縁部領域11sが隠れるように配置されている。
【0038】
ここで、ディスプレイ110の表示部14の映像は、ハーフミラー19で反射して凹面鏡11の鏡面11aに投影される。このとき、凹面鏡11の鏡面11aの中央領域には、車両後方の中央の映像がそのまま投影され、凹面鏡11の鏡面11aの左側の側縁部領域11sには、車両の左後方の映像が左右方向に圧縮されて投影され、凹面鏡11の鏡面11aの右側の側縁部領域11sには、車両の右後方の映像が左右方向に圧縮されて投影される。
【0039】
ディスプレイ110の映像制御部115は、投影する映像に指標を追加表示する指標表示部40を備えている。指標表示部40は、車両の方向指示器(図示せず)が運転者によって操作されたときに、方向指示器の操作方向と同じ側の側縁部領域11sに投影される映像に、映像上の距離の変化を示すガイド線L1,L2,L3(指標)を追加表示する。ガイド線L1,L2,L3は、例えば、映像の奥行方向に等間隔に配置した水平な所定幅の線とし、奥行き方向の先方にあるものほど線の長さが短くなるようにしたものであっても良い。
なお、
図8では、左右の側縁部領域11sの両方にガイド線L1,L2,L3が描かれているが、実際には、方向指示器が操作された側の一方の側縁部領域11sにのみ追加表示される。
【0040】
本実施形態の後方映像表示装置101の場合も、乗員が通常運転姿勢で凹面鏡11の鏡面11aの中央に正対すると、凹面鏡11の左右の側縁部領域11sが遮蔽壁12によって乗員の視界から隠れる。この結果、乗員の視点Eから見える凹面鏡11上の範囲が、左右の側縁部領域11sを除いた範囲となる。
また、乗員が通常運転姿勢で凹面鏡11の鏡面11aの中央に正対する位置から視点Eを左右方向に移動させると、今まで遮蔽壁12で隠されていた凹面鏡11上の側縁部領域11sが乗員から視認可能となる。この結果、乗員は、側縁部領域11sに映し出される車両の後部側方の広い範囲の映像を視認することが可能となる。
【0041】
<第2実施形態の効果>
本実施形態の後方映像表示装置101は、基本的な構成は第1実施形態と同様とされているため、前述した第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0042】
また、本実施形態の後方映像表示装置101は、凹面鏡11の側縁部領域11sに、車両30の側部後方の映像を左右方向に圧縮した映像がディスプレイ10から投影される。このため、凹面鏡11の側縁部領域11sの幅の拡大を抑制した状態で、広い範囲の後側方の映像を側縁部領域11sに表示することができる。
したがって、本実施形態の後方映像表示装置101を採用した場合には、凹面鏡11の幅の拡大によって運転席からの前方視界が狭まるのを抑制しつつ、凹面鏡11の側縁部領域11sに後側方の広い範囲の映像を映し出すことができる。
【0043】
また、本実施形態の後方映像表示装置101は、車両30の方向指示器が操作されたときに、凹面鏡11のうちの、方向指示器の操作された側と同じ側の側縁部領域11sに投影される映像に、ディスプレイ10の指標表示部40が映像上の距離の変化を示すガイド線L1,L2,L3(指標)を追加表示する。このため、左右方向に圧縮された側縁部領域11sの映像を覗き込む乗員が、映像上において距離感を正確に把握することが可能になる。
したがって、本構成を採用した場合には、側縁部領域11sの映像の圧縮量が大きい場合であっても、視認する側縁部領域11sの映像から乗員が車両30の側部後方の様子を適切に把握することができる。
【0044】
さらに、本実施形態の後方映像表示装置101は、ディスプレイ10が中央カメラ32の映像を凹面鏡11の中央領域11cに投影し、左側カメラ34Lの映像を凹面鏡11の左側の側縁部領域11sに投影し、右側カメラ34Rの映像を凹面鏡の右側の側縁部領域に投影する。そして、こうして凹面鏡11に投影された映像は合成された形で凹面鏡11の鏡面11aに映し出される。このため、車両の左後方と右後方の正確な映像情報を左側カメラ34Lと右側カメラ34Rを用いて取得し、これらのカメラ34L,34Rで取得した映像を左右方向に圧縮して凹面鏡11の左右の側縁部領域11sに映し出すことができる。
したがって、本実施形態の後方映像表示装置101を採用した場合には、凹面鏡11の側縁部領域11sに映し出される映像の劣化を抑制し、乗員による視認性をより高めることができる。
【0045】
<他の実施形態体>
上記の各実施形態では、凹面鏡11の鏡面11aに対して乗員側に離間した位置に一対の遮蔽壁12が左右に離間して配置され、一対の遮蔽壁12の左右の離間幅が凹面鏡11の左右方向の幅よりも狭く設定されている。これに対し、凹面鏡の鏡面に対して乗員側に離間した位置に一対の遮蔽壁を上下に離間して配置し、一対の遮蔽壁の上下の離間幅を凹面鏡の上下方向の幅よりも狭く設定するようにしても良い。
【0046】
この場合、乗員が通常運転姿勢で凹面鏡を覗き込んだときには、凹面鏡の上縁部領域と下縁部領域が遮蔽壁によって隠れ、乗員が凹面鏡の鏡面を覗き込む位置を上下に移動させたときには、凹面鏡の側縁部領域に映る車両の後側方の映像を視認することが可能になる。
【0047】
車両の走行時に、凹面鏡を通して車両の後部直下の映像が運転者の目に入ると、道路の動きが速く、乗員に煩わしさを与えてしまう。本実施形態では、乗員が通常運転姿勢で凹面鏡を覗き込むときには、凹面鏡の上縁部と下縁部が遮蔽壁によって遮蔽されるため、凹面鏡を覗き込む乗員に煩わしさを与えることがない。
一方、車両の駐車時等に車両の後部直下の車止めを確認するとき等には、運転者の視点を上方に移動させることにより、凹面鏡の下縁部に映る車両の後部直下の車止め等を視認することが可能になる。
【0048】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
例えば、上記の第2実施形態の説明では、車両の方向指示器が運転者によって操作されたときに、側縁部領域11sに追加表示される指標として、水平に延びるガイド線L1,L2,L3を例示している。しかし、側縁部領域11sに追加表示される指標はこれに限定されるものではなく、奥行き方向の先方に向かって中央側に傾斜する直線状のガイド線や曲線状のガイド線であっても良い。また、追加表示される指標は、線以外の塗分け表示や模様等であっても良い。
【0049】
また、上記の各実施形態では、ハーフミラーに一度反射させた映像を凹面鏡に反射させているが、投影部(ディスプレイ)から直接映像を投影するようにしても良い。この場合、映像側で歪み補正を行うことにより、ハーフミラーによる輝度の減少等を抑制することができる。さらに、本構成の場合、上記の実施形態のハーフミラーの位置にレンズを配置し、乗員が映像の投影を希望しないときにレンズと凹面鏡の間を暗くすることにより、レンズを鏡体として用いることも可能になる。
【符号の説明】
【0050】
1,101…後方映像表示装置
10,110…ディスプレイ(投影部)
11…凹面鏡
11a…鏡面
11s…側縁部領域
12…遮蔽壁
32…中央カメラ
34L…左側カメラ
34R…右側カメラ
40…指標表示部
L1,L2,L3…ガイド線(指標)