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特開2022-154143導電粒子の分散液とその製造方法、導電膜形成用の塗布液及び導電被膜付基材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154143
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】導電粒子の分散液とその製造方法、導電膜形成用の塗布液及び導電被膜付基材
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/22 20060101AFI20221005BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20221005BHJP
   C09D 5/24 20060101ALI20221005BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20221005BHJP
   C09D 7/62 20180101ALI20221005BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
H01B1/22 A
H01B13/00 Z
C09D5/24
C09D183/04
C09D7/62
H01B5/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057036
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】港 康佑
(72)【発明者】
【氏名】荒金 宏忠
(72)【発明者】
【氏名】村口 良
【テーマコード(参考)】
4J038
5G301
5G307
【Fターム(参考)】
4J038DL051
4J038HA216
4J038JA19
4J038JA20
4J038JC32
4J038KA06
4J038MA14
4J038NA20
4J038PA19
4J038PB09
4J038PC03
5G301DA13
5G301DA23
5G301DA42
5G301DD01
5G301DE01
5G307FA01
5G307FB01
5G307FC10
(57)【要約】
【課題】低抵抗と高硬度を両立可能な導電粒子を実現する。
【解決手段】本発明はアンチモンドープ酸化スズを含有する導電粒子の分散液に関する。導電粒子は、一次粒子が連結して形成された鎖状粒子のクラスターを含んでおり、この分散液には、導電粒子が1~20質量%含まれているとともに、導電粒子の含有量に対して0.05%~0.5%の質量のクラスター形成剤が含まれている。この分散液を動的光散乱式の粒度分布計で測定した粒子径分布において、体積平均の粒子径が10~50nmであり、体積基準で、粒子径の小さい側から累積して16%になるときの粒子径D16と84%になるときの粒子径D84との差(D84-D16)が3~50nmである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンチモンドープ酸化スズを含有する導電粒子の分散液であって、
前記導電粒子は、一次粒子が連結して形成された鎖状粒子のクラスターを含み、
前記分散液には、前記導電粒子が1~20質量%含まれているとともに、前記導電粒子の含有量に対して0.05%~0.5%の質量のクラスター形成剤が含まれており、
当該分散液を動的光散乱式の粒度分布計で測定した粒子径分布において、体積平均の粒子径が10~50nmであり、体積基準で、粒子径の小さい側から累積して16%になるときの粒子径D16と84%になるときの粒子径D84との差(D84-D16)が3~50nmである分散液。
【請求項2】
前記クラスター形成剤が酸または高分子凝集剤である請求項1に記載の分散液。
【請求項3】
前記導電粒子の含有量に対して3%~15%の質量のアルコキシシランが含まれることを特徴とする請求項1または2に記載の分散液。
【請求項4】
アンチモンドープ酸化スズを含有する一次粒子が連結した鎖状粒子の分散液を準備する工程と、
前記分散液に一次粒子の状態で存在する質量と鎖状粒子の状態で存在する質量の和に対して0.05%~0.5%の質量のクラスター形成剤を添加する工程と、を備えることを特徴とする導電粒子の分散液の製造方法。
【請求項5】
アンチモンドープ酸化スズを含有する導電粒子と、アルコキシシランオリゴマーと、溶剤を含む導電膜形成用の塗布液であって、
前記導電粒子は、一次粒子が連結して形成された鎖状粒子のクラスターを含んでおり、
当該塗布液には、前記導電粒子が1~20質量%含まれているとともに、前記導電粒子の含有量の0.05~0.5%の質量のクラスター形成剤と前記導電粒子の含有量の25~300%のアルコキシシランオリゴマーが含まれており、
当該塗布液を動的光散乱式の粒度分布計で測定した粒子径分布において、体積平均の粒子径が70~600nmであり、体積基準で、粒子径の小さい側から累積して16%になるときの粒子径D16と84%になるときの粒子径D84との差(D84-D16)が60~800nmである塗布液。
【請求項6】
請求項5に記載の塗布液による膜が基材上に設けられたことを特徴とする導電被膜付基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性の鎖状粒子を含む分散液と、この分散液を用いて調製された導電膜形成用の塗布液及び導電被膜付基材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、導電粒子を含む塗布液を用いて、基板上に導電膜が形成されている。透明な導電膜は表示装置、タッチパネル、太陽電池等に利用されている。導電膜の透明性と低抵抗を両立するために、鎖状導電粒子を含む塗布液が用いられている。さらに、膜の強度を向上させるために、鎖状導電粒子と結合しやすいアルコキシシランオリゴマーをバインダ成分として含む塗布液が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
また、鎖状粒子を用いて帯電防止及び電磁波遮蔽に優れた膜を得ることが知られている(例えば、特許文献2を参照)。特許文献2では、導電性の一次粒子の分散液をイオン交換処理した後でpHを調製して一次粒子を鎖状に配列させる工程と、アルコールを加えて有機珪素化合物を加水分解することにより一次粒子を連結させる工程により鎖状粒子が製造されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-157026号公報
【特許文献2】特開2006-339113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の塗布液では、絶縁性のバインダ成分が徐々に鎖状導電粒子の表面を覆い、膜を形成した際に鎖状導電粒子間に絶縁性成分が存在する構造になるため、多数の導電パスが形成でき難くなる。すなわち、時間経過とともに導電性が低くなり、初期の塗布液によって形成された膜と同様の導電性が得られない、という課題があった。
【0006】
さらに、近年では、導電膜の低抵抗化が求められており、特許文献1や特許文献2に開示された鎖状導電粒子では、低抵抗化と高硬度を両立することができなかった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、導電膜の低抵抗化を可能にする導電粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はアンチモンドープ酸化スズ(ATO)を含んだ導電粒子の分散液に関する。導電粒子は、一次粒子が連結して形成された鎖状粒子のクラスターを含んでいる。分散液には、導電粒子が1~20質量%含まれているとともに、導電粒子の含有量に対して0.05%~0.5%の質量のクラスター形成剤が含まれている。この分散液を動的光散乱式の粒度分布計で測定した粒子径分布において、体積平均の粒子径が10~50nmであり、体積基準で、粒子径の小さい側から累積して16%になるときの粒子径D16と84%になるときの粒子径D84との差(D84-D16)が3~50nmである。クラスター形成剤は鎖状粒子をクラスター化するために添加されている。クラスター形成剤として酸または高分子凝集剤が用いられる。
【0009】
また、本発明による導電粒子の分散液の製造方法は、ATOを含有する一次粒子が連結した鎖状粒子の分散液を準備する工程と、この分散液中に一次粒子の状態で存在する質量と鎖状粒子の状態で存在する質量の和に対して、0.05%~0.5%の質量の分散剤を添加する工程と、を備えている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、ATOを含有する導電粒子の分散液であり、導電粒子は、一次粒子が連結して形成された鎖状粒子のクラスターを含んでいる。この分散液には、導電粒子が1~20質量%含まれているとともに、導電粒子の含有量に対して0.05~0.5%の質量のクラスター形成剤が含まれている。この分散液を動的光散乱式の粒度分布計で粒子径分布を測定したとき、体積平均の粒子径が10~50nmであり、体積基準で、粒子径の小さい側から累積して16%になるときの粒子径D16と84%になるときの粒子径D84との差(D84-D16)が3~50nmである。なお、これ以降、この粒子径差(D84-D16)を粒径分布の幅と称す。このとき、一次粒子の平均粒子径は3~10nmが好ましい。
【0011】
導電粒子が20質量%を超えると、適切な大きさのクラスターを形成することも、その大きさで安定的に存在させることも困難である。1質量%未満では、導電粒子の量が少なすぎて実用的ではない。また、クラスターを形成させるためには、クラスター形成剤は導電粒子の含有量の0.05%の以上の質量が必要であり、0.5%を超えると導電性が顕著に低下するおそれがある。
【0012】
鎖状粒子で形成されたクラスターがどのように存在しているかは、動的光散乱方式で測定された粒径分布から知ることができる。すなわち、クラスターが多く存在すると、体積平均粒子径が大きくなり、また粒子径分布も広くなる。体積平均粒子径と粒径分布の幅が前述の範囲にあれば、クラスターの存在による効果が得られる。例えば、導電パスが良好に形成されているため低抵抗が実現できる。このような分散液を用いた塗布液では、導電粒子が他成分(バインダなど)と接触(反応)する面積が少ないため、経時変化が抑制される。この塗布液により得られた膜は、クラスターのサイズが制御されているため、光散乱(ヘーズ)が抑制され、光学特性を損なうこともない。
【0013】
さらに、導電粒子の含有量に対して3~25%の質量のアルコキシシランを加えることにより、クラスターの構造が固定される。そのため、分散液に撹拌や超音波印加を行ってもクラスターが再分散し難くなる。アルコキシシランの量が少なすぎると、クラスターを固定化できないおそれがある。また、多すぎると、アルコキシシランがクラスターの表面を過剰に覆ってしまい、導電性が低下するおそれがある。アルコキシシランの添加量は、3~15%が好ましい。アルコキシシランは、一般に「R -Si(OR4-n 〔式1〕」で表される。ここで、R1およびR2は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一でも異なってもよい。また、nは0~3の整数である。アルコキシシランの具体例を表1に示す。
【0014】
【表1】
【0015】
また、鎖状粒子は、ATOを成分として含む一次粒子が鎖状に3個以上連結した粒子である。粒子が分岐して連結した部分が存在していてもよい。すなわち、主鎖の部分で3個以上の一次粒子が連結した構造であり、分岐部が存在してもかまわない。一次粒子とは、単分散状態の無機粒子である。一次粒子の平均粒子径は3~10nmが好ましい。透過型電子顕微鏡(TEM)で撮影した画像から、任意の100個の一次粒子について粒子径を測定し、その平均値を一次粒子の平均粒子径とする。さらに、この画像から任意の粒子を50個選択し、各粒子の連結数を計測する。50個の粒子の連結数の平均値を平均連結数とした。平均連結数は3以上が好ましく、特に5以上が好ましい。一次粒子の平均連結数が少ないと、導電性の向上効果が十分に得られないおそれがある。平均粒子径が小さすぎると、結晶性が低く、一次粒子そのものの導電性が十分に得られないおそれがある。逆に、平均粒子径が大きすぎると、鎖状構造を発達させることが難しく、鎖状化したとしても導電パスが効果的に形成され難くなり、膜の導電性が十分に得られないおそれがある。一次粒子には、アンチモンや酸化錫以外の元素が、導電性を著しく阻害しない程度であれば含まれていてもよい。
【0016】
次に、導電粒子の分散液の製造方法を説明する。まず、ATOを含有する一次粒子が連結して形成された鎖状粒子の分散液を準備する。特開2006-339113号公報に開示された方法など、公知の方法を用いて鎖状粒子の分散液を調製することができる。この分散液に、導電粒子成分(分散液中に一次粒子として存在する導電粒子と鎖状粒子として存在する導電粒子の合計量)の0.05%~0.5%の質量のクラスター形成剤を添加する。これにより、鎖状粒子のクラスターが形成される。分散液中の鎖状粒子の濃度、pH、温度、撹拌時間により、クラスターの構造を制御することができる。クラスター形成剤により鎖状粒子は二次元的、三次元的に連結して、立体的なクラスターを形成する。クラスター形成剤として、酸、高分子凝集剤を用いることができる。高分子凝集剤として、ノニオン系、アニオン系、カチオン系、両性系、ポリアミン系、ジシアンジアミド系などの凝集剤が例示できる。クラスター形成剤の種類により、適切な添加量は異なる。酸としてギ酸、酢酸、クエン酸、安息香酸などの有機酸、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ヨウ化水素酸、テトラフルオロホウ酸などの無機酸が例示できる。水に容易に溶解し、工業的に入手しやすい塩酸、硫酸、硝酸、リン酸が好ましい。
【0017】
〈塗布液〉
このような導電粒子の分散液にバインダ成分と溶剤を加えて、塗布液を調製する。すなわち、本発明の塗布液は、ATOを含有する導電粒子と、アルコキシシランオリゴマー(バインダ成分)と溶剤を含んでいる。導電粒子は一次粒子が連結して形成された鎖状粒子のクラスターを含んでいる。塗布液には、導電粒子の含有量の0.05~0.5%の質量のクラスター形成剤と導電粒子の含有量の25~300%のアルコキシシランオリゴマーが含まれている。この塗布液を動的光散乱式の粒度分布計で測定した粒子径分布において、体積平均の粒子径が70~600nmであり、体積基準で、粒子径の小さい側から累積して16%になるときの粒子径D16と84%になるときの粒子径D84との差(D84-D16)が60~800nmである。導電粒子の分散液にバインダ成分や溶剤が加えられると、クラスター同士がさらにゆるく固められて、大きな構造体(フロキュレート)が形成される。そのため、動的光散乱方式による測定では、前述の分散液に比べ、体積平均粒子径や粒径分布の幅が大きくなる。
【0018】
ここで使用する溶剤は、塗布後に乾燥工程等によって除去できればよい。クラスターの構造制御を阻害しないアルコール、グリコール、グリコールエーテル類、ケトン等の親水性の有機溶剤が適している。具体的には、1-メトキシ-2-プロパノール、ジアセトンアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトンが例示できる。
【0019】
アルコキシシランオリゴマーの重量平均分子量は1000~20000が好ましい。アルコキシシランオリゴマーは、前述の「式1」で表されるアルコキシシランの加水分解重合物であり、ここでは、nは0~2の整数である。nが3の場合は、2分子間の結合しかできないため、オリゴマーを形成することができない。nは小さいほど好ましく、nが0のアルコキシシランを用いることが最も好ましい。このようなアルコキシシランを用いれば、クラスター同士の間に電気を通しにくい有機成分が少なくなり、高い導電性が得られる。
【0020】
また、前述の通り、導電粒子の含有量の25~300%のアルコキシシランオリゴマーが塗布液中に存在する。すなわち、導電粒子とアルコキシシランオリゴマーの質量比は、80:20~25:75の範囲にある。アルコキシシランオリゴマーが少ないと、バインダ成分が少なくなり、十分な膜硬度が得られないおそれがある。また、多すぎると、塗布液中でクラスターを構成する粒子の表面との反応が過剰に進み、塗布液の保存安定性が低下するおそれがある。
【0021】
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。
【実施例0022】
[実施例1]
はじめに、ATO粒子(一次粒子)を含む水分散液を用意する(ATO粒子の平均粒子径5nm、固形分濃度20.0質量%、pH6.9)。この分散液にATO粒子の固形分量の40%に相当する質量の両性イオン交換樹脂を加えて、25℃で2時間攪拌する。その後、金網を用いて両性イオン交換樹脂を分離する。これにより、ATO粒子が鎖状に連結し、鎖状粒子の水分散液が得られる。
【0023】
この鎖状粒子の水分散液の固形分濃度が5質量%になるように、純水で希釈する。この水分散液100.0gに、クラスター形成剤として塩酸(濃度1.0質量%)を0.5g加え、25℃で5分間攪拌する。これにより、鎖状粒子がクラスターを形成し、本発明の導電粒子の分散液が得られる。
【0024】
〈塗布液〉
この導電粒子の分散液に、バインダ成分と溶剤を加えて塗布液を調製する。本実施例では、導電粒子の分散液60.3gを25℃で攪拌しながら純水を2.7g添加した。続いてソルミックスAP-11(エタノールを主溶剤とするアルコール混合溶剤)を17.0g添加した。5分間攪拌した後、バインダ成分20.0gを攪拌しながら添加した。さらに、25℃で15分間攪拌した後、濾過することにより、塗布液が得られる。ここでは、バインダ成分として、テトラメトキシシランを加水分解して得られた分子量4980のアルコキシシランオリゴマー(固形分濃度9.9質量)のエタノール分散品を使用した。
【0025】
〈膜付基材〉
この塗布液を、バーコーター法でガラス基板上に塗布し、80℃で1分間乾燥させた。さらに、130℃の乾燥機内で30分間加熱した。これにより、膜付基材を得た。
【0026】
導電粒子の分散液および塗布液の調製条件を表2、表3に示す。また、以下の各物性を測定した結果も同表に示す。なお、後述の実施例や比較例についても同様に行った。
【0027】
(1)導電粒子の濃度、導電粒子量の測定
磁性ルツボに分散液を秤量し、1000℃で一定時間加熱し、加熱前後の重量比から導電粒子の固形分濃度を求めた。
【0028】
導電粒子の分散液にATO成分以外の固形分が含まれている場合には、誘導結合プラズマ発光分光分析装置を用いて分散液を測定し、分散液中に含まれる各元素の存在量を求めて導電粒子量を特定することができる。
【0029】
(2)分散液中のクラスター形成剤の含有量
分散液に遠心分離を行い、導電粒子と上澄みを分離した。ICP発光分光分析装置を用いて、この上澄みに含まれる元素とその含有量を測定する。この結果と、予めクラスター形成剤を同様に分析して得たリファレンスとを対比し、上澄みに含まれるクラスター形成剤と含有量を特定した。
【0030】
(3)体積平均粒子径、粒径分布の幅
動的光散乱方式粒度分布計(MICROTRAC社製NANOTRAC Wave 2-UT151)を用いて分散液を測定し、分散液の平均粒子径と粒径分布の幅(粒子径差:D84-D16)を求めた。
【0031】
(4)鉛筆硬度
膜付基材の鉛筆硬度を、JIS S-6006で規定された鉛筆を用いて、表面性測定機(新東科学株式会社製 トライボギア)により測定した。測定機の操作マニュアルに従って各硬度の鉛筆で表面上を500gの荷重をかけて掃引した。掃引跡を確認し、傷が観察されなかった最も高い硬度の値を鉛筆硬度の値とした。
【0032】
(5)表面抵抗と保存安定性
調製直後の塗布液を用いて作製した膜付基材の表面抵抗を表面抵抗測定機(三菱化学アナリテック社製ハイレスターUX MCP-HT800)を用いて測定した。次に、この塗布液を水温40℃に調整した浴槽の中に24時間静置した。この加温処理後の塗布液を用いて、同様に膜付基材を作製し、表面抵抗を測定した。表面抵抗の変化率(加温処理後の塗布液による膜付基材の表面抵抗値/初期の塗布液による膜付基材の表面抵抗値)に基づいて、保存安定性を評価した。
【0033】
以下の説明では、実施例1と相違する点について記載する。
【0034】
[実施例2]
本実施例では、クラスター形成剤としてポリ塩化アルミニウム(多木化学社製 高塩基性塩化アルミニウムPAC♯1000)を使用した。濃度が0.2質量%になるように純水で希釈し、これを5.0g添加した。
【0035】
〈塗布液〉
導電粒子の分散液63.0gに純水を添加せずに25℃で撹拌した。
【0036】
[実施例3]
本実施例では、クラスター形成剤としてポリエチレンイミン(富士フィルム和光純薬社製 平均分子量600)を使用した。濃度が2.0%になるように純水で希釈し、これを0.8g添加した。
【0037】
〈塗布液〉
導電粒子の分散液60.5gに、純水の添加量を2.6gの純水を添加した。
【0038】
[実施例4]
本実施例では、鎖状粒子の水分散液を、固形分濃度が10.0質量%になるように純水で希釈した。さらに塩酸(濃度1.0質量%)の添加量を1.0gとして、25℃で5分間攪拌する。さらに、クラスター構造を固定化させるためにテトラメトキシシランを添加した。ここでは、実施例1でバインダ成分として使用したアルコキシシランオリゴマーを4.9g添加し、25℃で1時間攪拌した。これ以外は実施例1と同様に導電粒子の分散液を調製した。
【0039】
〈塗布液〉
また、この分散液を32.3g、純水の添加量を30.7g、溶剤(AP-11)の添加量を18.6g、バインダ成分を18.4gとした。
【0040】
[実施例5]
本実施例では、クラスター構造を固定化させるために添加するアルコキシシランオリゴマーの量を24.5gとした。これ以外は、実施例4と同様に導電粒子の分散液を調製した。
【0041】
〈塗布液〉
また、この分散液を38.0g、純水の添加量を25.0g、溶剤(AP-11)の添加量を24.5g、バインダ成分の添加量を12.5gとした。
【0042】
[実施例6]
本実施例では、鎖状粒子の水分散液を、固形分濃度が20.0質量%になるように純水で希釈した。この分散液100.0gに、クラスター形成剤として塩酸(濃度1.0質量%)を1.0g加えた。
【0043】
〈塗布液〉
導電粒子の分散液を15.2g、純水の添加量を47.9gとした。
【0044】
[実施例7]
本実施例では、鎖状粒子の水分散液を、固形分濃度が15.0質量%になるように純水で希釈した。この分散液100.0gに、クラスター形成剤として塩酸(濃度1.0質量%)を1.5g加えた。
【0045】
〈塗布液〉
導電粒子の分散液を20.3g、純水の添加量を42.7gとした。
【0046】
[実施例8]
本実施例では、鎖状粒子の水分散液を、固形分濃度が10.0質量%になるように純水で希釈した。この分散液100.0gに、クラスター形成剤として塩酸(濃度1.0質量%)を1.0g加えた。
【0047】
〈塗布液〉
導電粒子の分散液を30.3g、純水の添加量を32.7gとした。
【0048】
[実施例9]
本実施例では、鎖状粒子の水分散液を、固形分濃度が10.0質量%になるように純水で希釈した。この分散液100.0gに、クラスター形成剤としてリン酸(濃度1.0質量%)を1.0g加えた。
【0049】
〈塗布液〉
導電粒子の分散液を30.3g、純水の添加量を32.7gとした。
【0050】
[実施例10]
本実施例では、鎖状粒子の水分散液を、固形分濃度が10.0質量%になるように純水で希釈した。この分散液100.0gに、クラスター形成剤として硝酸(濃度1.0質量%)を1.0g加えた。
【0051】
〈塗布液〉
導電粒子の分散液を30.3g、純水の添加量を32.7gとした。
【0052】
[比較例1]
本比較例では、鎖状粒子を調製せずに、ATO粒子(一次粒子)に直接クラスター形成剤を加えた。すなわち、実施例1と同じATO粒子の水分散液(固形分濃度20.0質量%)100.0gに、クラスター形成剤として塩酸(濃度1.0質量%)を5.0g加えたところ分散液が増粘し、ゲル状となった。そのため、導電粒子の分散液や塗布液を得ることができなかった。
【0053】
[比較例2]
本比較例では、実施例1と同様に鎖状粒子の水分散液を調製したものの、クラスター形成剤を用いなかった。この鎖状粒子の水分散液を15.0g、純水の添加量を48.0gとして塗布液を調製した。
【0054】
[比較例3]
本比較例では、クラスター形成剤として塩酸(濃度1.0質量%)を3.0g加えた。導電粒子の分散液を61.5g、純水の添加量を1.5gとした以外は、実施例1と同様に塗布液を調製したが、凝集が発生し、塗料として使用できなかった。
【0055】
[比較例4]
本比較例では、クラスター形成剤として実施例2と同じポリ塩化アルミニウムを純水で希釈し、濃度5.0%としたものを1.0g添加した。
【0056】
導電粒子の分散液を60.6g、純水の添加量を2.4gとした以外は、実施例1と同様に塗布液を調製したが、凝集が発生し、塗料として使用できなかった。
【0057】
[比較例5]
本比較例では、クラスター形成剤として実施例3と同じポリエチレンイミンを純水で希釈し、濃度5.0%としたものを1.0g添加した。
【0058】
導電粒子の分散液を60.6g、純水の添加量を2.4gとした以外は、実施例1と同様に塗布液を調製したが、凝集が発生し、塗料として使用できなかった。
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】