(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154150
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】ギアードモータ
(51)【国際特許分類】
F16H 1/28 20060101AFI20221005BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20221005BHJP
H02K 5/22 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
F16H1/28
H02K7/116
H02K5/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057046
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】石水 昭夫
【テーマコード(参考)】
3J027
5H605
5H607
【Fターム(参考)】
3J027FA18
3J027FA37
3J027GB03
3J027GC13
3J027GC25
3J027GC26
3J027GD04
3J027GD08
3J027GD12
3J027GE26
3J027GE27
5H605AA07
5H605AA08
5H605BB05
5H605BB10
5H605BB14
5H605CC01
5H605CC02
5H605CC06
5H605CC08
5H605CC10
5H605DD09
5H605EC04
5H605EC08
5H607BB01
5H607BB07
5H607BB10
5H607BB14
5H607BB25
5H607CC01
5H607CC03
5H607CC09
5H607DD10
5H607DD14
5H607EE33
(57)【要約】
【課題】製造工程を追加しなくても、ギアボックスのギアの摺動抵抗を低減するためのワッシャを固定することのできるギアードモータを提供すること。
【解決手段】ギアードモータ1は、モータ10と、複数のギアを内側に収容したギアハウジング20を備えたギアボックス2と、樹脂製のホルダ7とを有している。ホルダ7において、ギアボックス支持部71は、モータ10の出力側L1の端部に重っており、ギアハウジング20とギアボックス支持部71とは係合によって固定されている。ギアボックス2とギアボックス支持部71との間にはワッシャ8が配置され、ワッシャ8の外周側の端部81は、ギアハウジング20とギアボックス支持部71との間に挟持されている。ホルダ7は、配線基板3を径方向の内側から支持する基板支持部76を有する。ワッシャ8はステンレス等の鉄鋼材からなる摺動ワッシャである。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータの回転中心軸線方向の出力側の端部に重なるギアボックス支持部を備えたホルダと、
前記ギアボックス支持部の前記出力側で前記ギアボックス支持部に支持されたギアボックスと、
前記ギアボックスと前記ギアボックス支持部との間に配置されたワッシャと、
を有し、
前記ギアボックスは、複数のギアと、前記複数のギアを内側に収容したギアハウジングと、を備え、
前記ワッシャの径方向外側の端部は、前記ギアハウジングと前記ギアボックスとの間に挟持されていることを特徴とするギアードモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のギアードモータにおいて、
前記ギアハウジングにおける前記ギアボックス支持部の側の端部は、前記ギアボックス支持部を径方向外側から囲む円環状の内壁部と、前記内壁部に前記出力側で隣接する位置で前記ギアボックス支持部の側に向いた円環状の段部と、を備え、
前記ワッシャの径方向外側の端部は、前記段部と前記ギアボックス支持部との間に挟持されていることを特徴とするギアードモータ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のギアードモータにおいて、
前記ホルダは樹脂製であり、
前記モータは、前記ギアボックス支持部と係合して前記ギアボックス支持部を保持する第1係合部を備えることを特徴とするギアードモータ。
【請求項4】
請求項3に記載のギアードモータにおいて、
前記ギアボックス支持部は、前記モータの側に突出した第1係合凸部を備え、
前記第1係合部は、前記第1係合凸部が前記出力側から進入して係合する第1係合穴を含むことを特徴とするギアードモータ。
【請求項5】
請求項4に記載のギアードモータにおいて、
前記モータは、軸受を保持する端板を前記出力側の端部に備え、
前記端板に前記第1係合穴が設けられていることを特徴とするギアードモータ。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載のギアードモータにおいて、
前記ギアボックス支持部は、前記ギアハウジングと係合して前記ギアハウジングを保持する第2係合部を備えることを特徴とするギアードモータ。
【請求項7】
請求項6に記載のギアードモータにおいて、
前記ギアハウジングには径方向に貫通する第2係合穴が設けられ、
前記第2係合部は、前記第2係合穴に径方向内側から進入して係合する第2係合凸部を含むことを特徴とするギアードモータ。
【請求項8】
請求項7に記載のギアードモータにおいて、
前記第2係合穴に前記第2係合凸部が係合した状態で、前記第2係合穴からは、前記ワッシャの外周側の端部が視認可能であることを特徴とするギアードモータ。
【請求項9】
請求項1から8までの何れか一項に記載のギアードモータにおいて、
前記複数のギアには、前記ギアハウジングの内周面に形成された内歯ギアと噛み合う遊
星ギアが含まれていることを特徴とするギアードモータ。
【請求項10】
請求項1から9までの何れか一項に記載のギアードモータにおいて、
前記モータの外周側に配置された配線基板を有し、
前記ホルダは、前記ギアボックス支持部から前記モータの外周側に延在して前記配線基板を径方向の内側から支持する基板支持部を有することを特徴とするギアードモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータにギアボックスが一体に設けられたギアードモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
モータに対してギアボックスが一体に設けられたギアードモータにおいて、モータとギアボックスとの間には、ギアボックスを支持する金属製の支持板が配置されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された支持板は、ギアを回転可能に支持する支軸を保持するため、強度面から材質が選定されている。このため、支持板にギアが接した際、支持板とギアとの間での摺動抵抗が大きいため、摺動ロスが大きい。そこで、支持板とギアとの間にワッシャを配置した構造が考えるが、ワッシャを配置しただけでは、ギアの回転に伴ってワッシャの位置がずれてしまう結果、ワッシャの外周端とギアとが擦れてしまい、摺動ロスが大きくなるという問題点がある。一方、ワッシャを固定するには組立工数が増大するという問題点がある。
【0005】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、製造工程を追加しなくても、ギアボックスのギアの摺動抵抗を低減するためのワッシャを固定することのできるギアードモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明において、ギアードモータは、モータと、前記モータの回転中心軸線方向の出力側の端部に重なるギアボックス支持部を備えたホルダと、前記ギアボックス支持部の前記出力側で前記ギアボックス支持部に支持されたギアボックスと、前記ギアボックスと前記ギアボックス支持部との間に配置されたワッシャと、を有し、前記ギアボックスは、複数のギアと、前記複数のギアを内側に収容したギアハウジングと、を備え、前記ワッシャの径方向外側の端部は、前記ギアハウジングと前記ギアボックスとの間に挟持されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るギアードモータでは、ギアボックスとギアボックス支持部との間にワッシャが配置されているため、ギアボックスに用いたギアがギアボックス支持部の側に移動したときでも、ギアはワッシャと摺動する。このため、ギアの摺動抵抗が低い。また、ワッシャの径方向外側の端部は、ギアハウジングとギアボックスとの間に挟持されているため、モータに固定したホルダとギアボックスとを結合させれば、ワッシャを自動的に固定することができる。それ故、製造工程を追加しなくても、ワッシャを固定することができる。
【0008】
本発明において、前記ギアハウジングにおける前記ギアボックス支持部の側の端部は、前記ギアボックス支持部を径方向外側から囲む円環状の内壁部と、前記内壁部に前記出力側で隣接する位置で前記ギアボックス支持部の側に向いた円環状の段部と、を備え、前記
ワッシャの径方向外側の端部は、前記段部と前記ギアボックス支持部との間に挟持されている態様を採用することができる。かかる態様によれば、ギアハウジングの段部にワッシャの径方向外側の端部を重ねた状態で、モータに固定したホルダとギアボックスとを結合させることができるので、組み立てが容易である。
【0009】
本発明において、前記ホルダは樹脂製であり、前記モータは、前記ギアボックス支持部と係合して前記ギアボックス支持部を保持する第1係合部を備える態様を採用することができる。かかる態様によれば、係合によって、ギアボックス支持部をモータに固定することができるので、タップ穴やネジを設けなくてもよい。従って、部品点数および製造工数の削減を図ることができる。また、ホルダは樹脂製であるため、モータとの係合に適した構造を容易に実現することができる。
【0010】
本発明において、前記ギアボックス支持部は、前記モータの側に突出した第1係合凸部を備え、前記第1係合部は、前記第1係合凸部が前記出力側から進入して係合する第1係合穴を含む態様を採用することができる。かかる態様によれば、ギアボックス支持部をモータの側に押し付けることによって、ホルダをモータに固定することができる。
【0011】
本発明において、前記モータは、軸受を保持する端板を前記出力側の端部に備え、前記端板に前記第1係合穴が設けられている態様を採用することができる。
【0012】
本発明において、前記ギアボックス支持部は、前記ギアハウジングと係合して前記ギアハウジングを保持する第2係合部を備える態様を採用することができる。かかる態様によれば、係合によって、ギアハウジングをギアボックス支持部に固定することができる。従って、ギアハウジングをギアボックス支持部に固定する際、ネジ等を設けなくてもよいので、部品点数および製造工数の削減を図ることができる。また、ホルダは樹脂製であるため、ギアハウジングとの係合に適した構造を容易に実現することができる。
【0013】
本発明において、前記ギアハウジングには径方向に貫通する第2係合穴が設けられ、前記第2係合部は、前記第2係合穴に径方向内側から進入して係合する第2係合凸部を含む態様を採用することができる。かかる態様によれば、ギアハウジングをギアボックス支持部に押し付けた際、第2係合穴に第2係合凸部が係合するので、ギアボックス支持部にギアハウジングを固定することができる。
【0014】
本発明において、前記第2係合穴に前記第2係合凸部が係合した状態で、前記第2係合穴からは、前記ワッシャの外周側の端部が視認可能である態様を採用することができる。かかる態様によれば、ギアードモータを組み立て終えた段階で、ワッシャの有無を確認することができる。
【0015】
本発明において、前記複数のギアには、前記ギアハウジングの内周面に形成された内歯ギアと噛み合う遊星ギアが含まれている態様を採用することができる。
【0016】
本発明において、前記モータの外周側に配置された配線基板を有し、前記ホルダは、前記ギアボックス支持部から前記モータの外周側に延在して前記配線基板を径方向の内側から支持する基板支持部を有する態様を採用することができる。かかる態様によれば、モータの外周側に配線基板を固定するためのホルダを利用して、モータの出力側でギアボックスを保持することができるため、組み立て工数の大幅な増加や新たな部品の追加を行わなくても、モータの外周側にホルダを介して配線基板が固定されたギアードモータを提供することができる。従って、モータの外周側にホルダを介して配線基板が固定されたギアードモータを安価に提供することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るギアードモータでは、ギアボックスとギアボックス支持部との間にワッシャが配置されているため、ギアボックスに用いたギアがギアボックス支持部の側に移動したときでも、ギアはワッシャと摺動する。このため、ギアの摺動抵抗が低い。また、ワッシャの径方向外側の端部は、ギアハウジングとギアボックスとの間に挟持されているため、モータに固定したホルダとギアボックスとを結合させれば、ワッシャを自動的に固定することができる。それ故、製造工程を追加しなくても、ワッシャを固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図4】
図1に示すギアードモータからギアハウジングを外した様子を示す分解斜視図。
【
図6】
図4に示すモータから配線基板等を外した状態を示す分解斜視図。
【
図7】
図6に示すホルダ等を反出力側からみた斜視図。
【
図8】
図1に示すギアードモータの組み立て工程を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面を参照して、本発明を適用したギアードモータ1の一例を説明する。なお、以下の説明では、モータ10の回転中心軸線Lが延在している回転軸線L方向の両側のうち、ギアボックス2が設けられている側が出力側L1であり、ギアボックス2が設けられている側とは反対側が反出力側L2である。また、配線基板3等を説明するにあたっては、回転中心軸線L周りの一方側にCWを付し、他方側にCCWを付して説明する。
【0020】
(ギアードモータ1の全体構成)
図1は、本発明を適用したギアードモータ1の斜視図である。
図2は、
図1に示すギアードモータ1の側面図である。
図3は、
図1に示すギアードモータ1の断面図である。
図3には、回転中心軸線Lに沿ってギアードモータ1を切断した断面を示してある。
図4は、
図1に示すギアードモータ1からギアハウジング20を外した様子を示す分解斜視図である。
【0021】
図1、
図2、
図3および
図4に示すように、本形態のギアードモータ1は、モータ10と、モータ10に対して回転軸線L方向の出力側L1に配置されたギアボックス2と、モータ10の外周側に配置された配線基板3と、モータ10に固定されたホルダ7とを有しており、ホルダ7は、ギアボックス2および配線基板3を保持している。すなわち、モータ10の外周側に配線基板3を固定するためのホルダ7を利用して、モータ10の出力側L1でギアボックス2を保持する。このため、組み立て工数の大幅な増加や新たな部品の追加を行わなくても、モータ10の外周側にホルダ7を介して配線基板3が固定されたギアードモータ1を提供することができる。それ故、モータ10の外周側にホルダ7を介して配線基板3が固定されたギアードモータ1を安価に提供することができる。
【0022】
モータ10は、円筒状のステータ4と、ステータ4の出力側L1の第1端部11に溶接等の方法で固定された金属製の第1端板12と、ステータ4の反出力側L2の第2端部13に溶接等の方法で固定された金属製の第2端板14とを有している。従って、モータ10は、回転中心軸線L方向の両側に第1端板12および第2端板14を備える。モータ10において、モータ本体を構成するステータ4の径方向外側には、配線基板3等を備えた給電部15が設けられている。給電部15では、配線基板3の周方向の他方側CCWの端
部に外部からの給電部材19が接続される。本形態において、給電部材19はコネクタ190である。
【0023】
(モータ10の構成)
図3に示すように、モータ10は、ステッピングモータであり、ステータ4では、出力側LlのA相用のステータ4Aと、反出力側L2のB相用のステータ4Bとが回転中心軸線L方向に重ねて配置されている。このため、ステータ4では、第1コイル46Aが巻回された第1コイルボビン42Aと、第2コイル46Bが巻回された第2コイルボビン42Bとが回転中心軸線L方向に重ねて配置されている。第1コイルボビン42Aにおいて回転中心軸線L方向の両側には、円環状の内ステータコア43A、および円環状の外ステータコア44Aが重ねて配置されている。第2コイルボビン42Bにおいて回転中心軸線L方向の両側には、円環状の内ステータコア43B、および円環状の外ステータコア44Bが重ねて配置されている。第1コイルボビン42Aおよび第2コイルボビン42Bの内周面では、内ステータコア43A、43Bおよび外ステータコア44A、44Bの複数の極歯45が周方向に並んでいる。本形態では、外ステータコア44Aの外周側部分が第1コイルボビン42Aおよび第2コイルボビン42Bの径方向外側まで延在してモータケース41を構成している。従って、ステータ4の出力側L1の第1端部11は、外ステータコア44Aの環状部分47からなる。ステータ4の反出力側L2の第2端部13は、外ステータコア44Bの環状部分48からなる。
【0024】
ステータ4の径方向内側にはロータ5が同軸状に配置されている。ロータ5では回転軸50が回転中心軸線Lに沿って延在し、回転軸50は、第1端板12から出力側L1に突出している。回転軸50の反出力側L2寄りの位置には円筒状の永久磁石59が接着剤等によって固着されている。永久磁石59は、ステータ4の内側において、外周面が径方向の内側でステータ4の極歯45と所定の間隔を介して対向している。
【0025】
回転軸50は、第1端板12に保持された第1軸受61によって回転可能に支持されている。第1軸受61と永久磁石59との間には、回転軸50が貫通するワッシャ66が配置されている。モータ10の反出力側L2において、回転軸50は、第2端板14に保持された第2軸受62によって回転可能に支持されている。第2軸受62と永久磁石59との間には、回転軸50が貫通する円環状のワッシャ67が配置されている。
【0026】
(ギアボックス2の構成)
図5は、
図4に示すギア等を示す分解斜視図である。
図3、
図4、および
図5に示すように、ギアボックス2は、以下に説明する複数のギアと、複数のギアを内側に収容した筒状のギアハウジング20とを備えており、ギアハウジング20からは出力部材25のセレーション部250が出力側L1に突出している。本形態において、複数のギアには、ギアハウジング20の内周面に形成された内歯ギア201と噛み合う遊星ギアが含まれており、ギアハウジング20の内側には、回転中心軸線Lに沿って配置された3段の遊星ギア機構21、22、23が構成されている。従って、モータ10の回転は減速して出力部材25に伝達される。
【0027】
第1段目の遊星ギア機構21は、モータ10の回転軸50に固定された太陽ギア210と、遊星キャリア211と、遊星キャリア211に回転可能に保持された計3つの遊星ギア212と、ギアハウジング20の内周面に設けられた内歯ギア201とによって構成されている。第2段目の遊星ギア機構22は、前段の遊星ギア機構21の遊星キャリア211に設けられた太陽ギア220と、遊星キャリア221と、遊星キャリア221に回転可能に保持された計3つの遊星ギア222と、ギアハウジング20の内周面に設けられた内歯ギア201とによって構成されている。第3段目の遊星ギア機構23は、前段の遊星ギア機構22の遊星キャリア221に設けられた太陽ギア230と、遊星キャリア231と
、遊星キャリア231に回転可能に保持された計3つの遊星ギア232と、ギアハウジング20の内周面に設けられた内歯ギア201とによって構成されている。ここで、遊星キャリア231は、出力部材25の一部として構成されている。
【0028】
(第1端子台151および第2端子台152の構成)
図6は、
図4に示すモータ10から配線基板3等を外した状態を示す分解斜視図である。
図3および
図6に示すように、モータケース41は周方向の一部を切り欠いた切り欠き410が設けられている。第1コイルボビン42Aにおいて、切り欠き410に対応する角度位置には、反出力側L2のフランジ部420Aの径方向外側の端部に第1端子台151が設けられている。第1端子台151には、2本のピン状の第1端子152が周方向で離間する位置に保持されている。第1端子台151の径方向外側の端部、および2本の第1端子152は切り欠き410から径方向外側に突出している。第2コイルボビン42Bにおいて、切り欠き410に対応する角度位置には、反出力側L2のフランジ部420Bの径方向外側の端部に第2端子台153が設けられている。第2端子台153には2本の、ピン状の第2端子154が周方向で離間する位置に保持されている。第1端子152および第2端子154では、第1コイル46Aおよび第2コイル46Bの端部が絡げられた後、ハンダで固定される。
【0029】
第1端子台151の径方向外側の端部、2本の第1端子152、第2端子台153の径方向外側の端部、および2本の第2端子154は、切り欠き410から径方向外側に突出し、第1端子152および第2端子154は、第1端子台151および第2端子台153の径方向外側の端面に対向するように配置された配線基板3に接続されている。より具体的には、配線基板3には、第1端子152および第2端子154が貫通する計4つの貫通穴36が形成されており、4つの貫通穴36の周りに形成されたランド37に第1端子152および第2端子154が半田(図示せず)によって接続されている。
【0030】
第1端子台151の径方向外側の面、および第2端子台153の径方向外側の面において、第1端子152および第2端子154の根元に相当する部分151a、153aは、周方向の両側の端部151b、151c、153b、153cより径方向の内側に凹んだ低所部になっている。このため、配線基板3は、端部151b、151c、153b、153cに当接して径方向の位置決めが行われる結果、配線基板3は、第1端子152および第2端子154の根元に相当する部分151a、153aに、
図3に示す隙間Gを介して対向する。従って、配線基板3は、第1端子152および第2端子154の根元部分に巻回されたコイル線と接触しないので、コイル線の断線が発生しにくい。
【0031】
(ホルダ7の構成)
図7は、
図6に示すホルダ7等を反出力側L2からみた斜視図である。
図3、
図6および
図7に示すように、ホルダ7は、モータ10の出力側L1の端部を構成する第1端板12に出力側L1から重なるギアボックス支持部71と、ギアボックス支持部71からモータ10の外周側に延在する基板支持部76とを有している。従って、ギアハウジング20には、ギアボックス支持部71から基板支持部76が延在する部分を通すための切り欠き29が設けられている。ここで、ギアボックス支持部71はギアボックス2を反出力側L2から保持し、基板支持部76は配線基板3を径方向の内側から保持する。それ故、簡素な構成のホルダ7によって、ギアボックス2および配線基板3を保持することができる。ギアボックス支持部71は、第1端板12と略同一サイズの円板状であり、ギアボックス支持部71は、ギアボックス支持部71の径方向外側の端部から反出力側L2に延在する板状部分である。本形態において、ホルダ7は樹脂製である。より具体的には、ホルダ7はガラス繊維入りの強化樹脂からなる。
【0032】
本形態において、ホルダ7は、モータ10に固定されている。より具体的には、
図7に
示すように、モータ10は、ギアボックス支持部71と係合してギアボックス支持部71を保持する第1係合部16を備える。本形態において、ギアボックス支持部71は、モータ10の側に突出した複数の第1係合凸部72を備えており、第1係合部16は、複数の第1係合凸部72が出力側L1から進入して係合する複数の第1係合穴160を含む。本形態において、ホルダ7は、モータ10の出力側L1の端部を構成する第1端板12に出力側L1から重なっていることから、複数の第1係合穴160からなる第1係合部16は、第1端板12に設けられている。
【0033】
従って、第1係合凸部72を出力側L1から第1係合穴160に進入させると、第1係合凸部72の先端部において径方向外側に向けて折れ曲がった爪部721は、第1端板12の反出力側L2の面に当接し、ホルダ7は、第1端板12に固定される。このように本形態では、ホルダ7のギアボックス支持部71をモータ10の側に押し付けた際の第1係合凸部72と第1係合穴160との係合によって、ギアボックス支持部71をモータ10に固定することができる。それ故、タップ穴やネジを設けなくてもよいので、部品点数および製造工数の削減を図ることができる。また、ホルダ7は樹脂製であるため、第1係合凸部72については、モータ10の第1端板12に形成した第1係合穴160との係合に適した構造を容易に実現することができる。さらに、本形態では、
図6に示すように、第1係合穴160の出力側L1の開口縁において、径方向内側に位置する部分160a、および径方向外側に位置する部分160bの双方が斜めに面取りした形状になっている。従って、第1係合穴160への第1係合凸部72の挿入が容易であるとともに、第1係合凸部72の破損や削れを防止することができる。
【0034】
また、
図4に示すように、ギアボックス支持部71は、ギアハウジング20と係合してギアハウジング20を保持する第2係合部73を備える。本形態において、ギアハウジング20には、ギアハウジング20を周方向で離間する複数の第2係合穴26が設けられており、第2係合部73は、複数の第2係合穴26に径方向内側から進入して係合する複数の第2係合凸部731からなる。このように本形態では、ギアハウジング20をギアボックス支持部71に押し付けた際、第2係合穴26に第2係合凸部731が係合するので、ギアボックス支持部71にギアハウジング20を固定することができる。従って、ネジ等を設けなくてもよいので、部品点数および製造工数の削減を図ることができる。また、ホルダ7は樹脂製であるため、第2係合凸部731については、ギアハウジング20に形成した第2係合穴26との係合に適した構造を容易に実現することができる。
【0035】
図6に示すように、基板支持部76は、モータケース41の外周面に径方向外側から重なる板状であり、第1端子台151の径方向外側の端部、2本の第1端子152、第2端子台153の径方向外側の端部、および2本の第2端子154は切り欠き410から径方向外側に突出させる開口部760が形成されている。従って、配線基板3は、基板支持部76に径方向外側から重なった状態で第1端子152および第2端子154と接続される。ここで、配線基板3は、剛性基板およびフレキシブル配線基板のいずれであってもよいが、本形態において、配線基板3は剛性基板である。
【0036】
基板支持部76では、配線基板3と重なる領域が径方向内側に向けて凹んだ凹部77になっており、4つの貫通穴36に第1端子152および第2端子154が嵌るように、配線基板3を径方向外側から凹部77に配置すると、配線基板3は凹部77に重なる。この状態で配線基板3は一部が凹部77から径方向外側に突出しているが、凹部77によって、配線基板3が凹部77から径方向外側に突出する寸法を小さくすることができる。
【0037】
ここで、凹部77には、周方向の一方側CWに第1側壁771が存在し、出力側L1に第2側壁772が存在する。従って、配線基板3を凹部77に配置した際、配線基板3の周方向の一方側CWの第1端部31は凹部77の第1側壁771に当接し、配線基板3の
出力側L1の第2端部32は凹部77の第2側壁772に当接する。従って、配線基板3をホルダ7に確実に固定することができる。
【0038】
これに対して、凹部77には、周方向の他方側CCWおよび反出力側L2には側壁が存在しないため、配線基板3を凹部77に重ねると、配線基板3の周方向の他方側CCWの第3端部33、および反出力側L2の第4端部34は基板支持部76から張り出した状態となる。ここで、第3端部33には、
図8に示す電極30が形成されている。従って、配線基板3の第3端部33にコネクタ190(
図1参照)からなる給電部材19を接続する。
【0039】
配線基板3には、配線基板3を貫通する複数の第3係合穴38が設けられ、基板支持部76には、複数の第3係合穴38に各々、嵌る複数の第3係合凸部78が設けられている。従って、第3係合穴38に第3係合凸部78が嵌るように配線基板3を配置した際、
図2に実線Laで示すように、第3係合凸部78において第3係合穴38から突出した部分を、
図2に一点鎖線Lbで示すように、熱溶着によって配線基板3に径方向外側から重なるように変形させることによって、配線基板3は、ホルダ7に保持される。本形態において、複数の第3係合凸部78は、周方向の一方側CWの第1凸部781と、周方向の他方側CCWの第2凸部782とからなり、複数の第3係合穴38は、第1凸部781が嵌る第1穴381と、第2凸部782が嵌る第2穴382とからなる。第1穴381は、配線基板3の第1端部31まで溝状に延在したスリットであり、凹部77の底壁770には、第1凸部781と第1側壁771とを繋ぐリブ状の凸部780が形成されている。
【0040】
(ワッシャ8の構成)
図3および
図4に示すように、ギアボックス2とギアボックス支持部71との間には円環状のワッシャ8が配置されている。より具体的には、ギアボックス2の第1段目の遊星ギア機構21に用いた遊星ギア212とギアボックス支持部71との間には円環状のワッシャ8が配置されている。従って、遊星ギア212がギアボックス支持部71と直接、接触しないので、摺動ロスを低減することができる。特に本形態では、ホルダ6を樹脂成形する際、ギアボックス支持部71に第1係合凸部72を設けるための金型を配置する穴710(
図6参照)を設けたため、遊星ギア212が穴710の縁に引っ掛かるおそれがあるが、ワッシャ8によって、遊星ギア212が穴710の縁に引っ掛かるという事態が発生しにくい。また、ワッシャ8は、ギアボックス支持部71と略同一の外形寸法を有している。このため、ワッシャ8の端部が遊星ギア212に引っ掛かるという事態が発生しない。ワッシャ8は金属製である。例えば、ワッシャ8はステンレス等の鉄鋼材からなる摺動ワッシャである。
【0041】
ここで、ギアハウジング20の反出力側L2側の端部27は、内歯ギア201が形成されている部分より内径が大きい。このため、ギアボックス2の端部27は、ギアボックス支持部71を径方向外側から囲む円環状の内壁部271と、反出力側L2側に向いた円環状の段部272とを備えている。また、ワッシャ8の外径は、内歯ギア201が形成されている部分の内径より大きい。このため、ワッシャ8の外周側の端部81は、ギアボックス支持部71とギアハウジング20段部272との間に保持されている。従って、ギアボックス2の遊星ギア212がワッシャ8と接する状態で回転した際、ワッシャ8の位置ずれ等が発生しにくい。また、ワッシャ8の位置ずれ等が発生しないので、ワッシャ8の変形等も発生しにくい。さらに、モータ10で発生した熱がギアボックス2に伝達されるのを抑制することができる。
【0042】
(組み立て工程)
図8は、
図1に示すギアードモータ1の組み立て工程を示す説明図である。ギアードモータ1の組み立て工程では、
図3および
図8に示すように、ギアハウジング20の内部に
遊星ギア機構21、22、23を組み込んでギアボックス2を完成させた後、ワッシャ8を配置する。一方、モータ10の側では、ホルダ7および配線基板3等を組み付ける。次に、ギアボックス2の側とモータ10の側とを回転中心軸線L方向で重ねる。その結果、複数の第2係合凸部731が各々、複数の第2係合穴26に径方向内側から進入して係合するので、ギアボックス2の側とモータ10の側とを結合させる。その結果、ギアードモータ1が完成する。なお、配線基板3については、上記の組み立て前、あるいは組み立て後のいずれのタイミングでホルダ7に固定してもよい。
【0043】
本形態は、
図8に示す工程を行う際、ギアハウジング20の段部272にワッシャ8の径方向外側の端部81を重ねた状態で、モータ10に固定したホルダ7とギアボックス2とを結合させることができるので、組み立てが容易である。また、組み立て終了後、
図2に示すように、ギアハウジング20の第2係合穴26にはホルダ7の第2係合凸部731が係合しているが、この状態でも、第2係合穴26からはワッシャ8の外周側の端部81を視認することができる。従って、ギアードモータ1を組み立て終えた段階でも、ワッシャ8の有無を確認することができる。
【0044】
(その他の実施形態)
上記実施形態においては、配線基板3が剛性基板であったが、配線基板3がフレキシブル配線基板である場合に本発明を適用してもよい。この場合でも、配線基板3は、ホルダ7によって保護されるため、フレキシブル配線基板に補強板等を貼ることを省略することができる。
【0045】
上記実施形態において、モータ10の第1係合部16は、ギアボックス支持部71の第1係合凸部72と係合する第1係合穴160であったが、モータ10の第1係合部16は、ギアボックス支持部71の係合穴と係合する係合凸部であってもよい。
【0046】
上記実施形態において、ギアボックス支持部71の第2係合部73は、ギアハウジング20の第2係合穴26に係合する第2係合凸部731であったが、ギアボックス支持部71の第2係合部73は、ギアハウジング20の係合凸部が係合する係合穴であってもよい。
【0047】
上記実施形態において、ホルダ7には、基板支持部76が設けられていたが、ホルダ7に基板支持部76が設けられていない場合に本発明を適用してもよい。例えば、ホルダ7がギアボックス支持部71のみを備えた円環状の部材である場合に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0048】
1…ギアードモータ、2…ギアボックス、3…配線基板、4、4A、4B…ステータ、5…ロータ、7…ホルダ、8…ワッシャ、10…モータ、11…第1端部、12…第1端板…第2端部、14…第2端板、16…第1係合部、19…給電部材、20…ギアハウジング、21、22、23…遊星ギア機構、25…出力部材、26…第2係合穴、41…モータケース、42A…第1コイルボビン、42B…第2コイルボビン、43A、43B…内ステータコア、44A、44B…外ステータコア、45…極歯、46A…第1コイル、46B…第2コイル、50…回転軸、59…永久磁石、61…第1軸受、62…第2軸受、71…ギアボックス支持部、72…第1係合凸部、73…第2係合部、76…基板支持部、77…凹部、78…第3係合凸部、151…第1端子台、152…第1端子、153…第2端子台、154…第2端子、160…第1係合穴、190…コネクタ、201…内歯ギア、212、222、232…遊星ギア、271…内壁部、272…段部、381…第1穴、382…第2穴、731…第2係合凸部、760…開口部、771…第1側壁、772…第2側壁、781…第1凸部、782…第2凸部、G…隙間、L…回転中心軸線、
L1…出力側、L2…反出力側、CW…一方側、CCW…他方側