(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154162
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】自走作業車
(51)【国際特許分類】
B60T 7/08 20060101AFI20221005BHJP
【FI】
B60T7/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057064
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】萬治 寧大
(72)【発明者】
【氏名】久國 智彦
【テーマコード(参考)】
3D124
【Fターム(参考)】
3D124AA03
3D124AA12
3D124AA15
3D124BB02
3D124BB14
3D124CC31
3D124DD29
3D124DD56
3D124DD74
(57)【要約】
【課題】適切にパーキングブレーキが作動状態となる自走作業車を提供する。
【解決手段】自走作業車は、左後輪と右後輪とを有する後輪ユニット2と、左後輪と右後輪とに独立して回転動力を供給する可変走行動力供給ユニットPSUと、第1経路に沿った変位によって左後輪に供給される回転動力の速度を調節する左操作具12aと、第2経路に沿った変位によって右後輪に供給される回転動力の速度を調節する右操作具12bと、可変走行動力供給ユニットPSUに設けられたパーキングブレーキ16と、左操作具12aの第1経路から分岐した第3経路への変位かつ右操作具12bの第2経路から分岐した第4経路への変位に応答してパーキングブレーキ16を作動させるパーキングブレーキ作動部70を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪ユニットと、
左後輪と右後輪とを有する後輪ユニットと、
前記左後輪と前記右後輪とに独立して回転動力を供給する可変走行動力供給ユニットと、
第1経路に沿った変位によって前記可変走行動力供給ユニットから前記左後輪に供給される回転動力の速度を調節する左操作具と、
第2経路に沿った変位によって前記可変走行動力供給ユニットから前記右後輪に供給される回転動力の速度を調節する右操作具と、
前記可変走行動力供給ユニットに設けられたパーキングブレーキと、
前記左操作具の前記第1経路から分岐した第3経路への変位かつ前記右操作具の前記第2経路から分岐した第4経路への変位に応答して前記パーキングブレーキを作動させるパーキングブレーキ作動部と、
を備えた自走作業車。
【請求項2】
前記左操作具の前記第3経路に沿った変位と前記右操作具の前記第4経路に沿った変位とによって、運転者が降車するための降車通路が拡張される請求項1に記載の自走作業車。
【請求項3】
前記第3経路に第1検出位置が設定され、前記第4経路に第2検出位置が設定されており、前記パーキングブレーキ作動部は、前記左操作具の前記第1検出位置への変位かつ前記右操作具の前記第2検出位置への変位に応答して前記パーキングブレーキを作動させる請求項1または2に記載の自走作業車。
【請求項4】
前記パーキングブレーキの作動状態において、前記左操作具の前記第1検出位置からの離脱または前記右操作具の前記第2検出位置からの離脱のいずれかあるいはその両方に応答して、前記パーキングブレーキの作動が解除される請求項3に記載の自走作業車。
【請求項5】
前記パーキングブレーキの作動状態において、前記左操作具の中立位置から前記第1経路に沿った所定範囲の変位または前記右操作具の中立位置から前記第2経路に沿った所定範囲の変位のいずれかあるいはその両方に応答して、前記パーキングブレーキの作動が解除される請求項1または2に記載の自走作業車。
【請求項6】
前記パーキングブレーキの作動状態において、前記左操作具の中立位置から前記第1経路に沿った所定変位率を超えた変位または前記右操作具の中立位置から前記第2経路に沿った所定変位率を超えた離脱のいずれかあるいはその両方に応答して、前記パーキングブレーキの作動が解除される請求項1または2に記載の自走作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左後輪の速度を調節する左操作具と、右後輪の速度を調節する右操作具と、パーキングブレーキとを備えた自走作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、左後輪の速度を調整する左走行レバーと、右後輪の速度を調整する右走行レバーと、ブレーキレバーまたはブレーキペダルの操作によって作動するブレーキ装置とを備えた乗用型草刈り機が開示されている。運転者は、右走行レバーと右走行レバーとを、中立位置に操作し、ブレーキペダルを踏み込むことによって、パーキングブレーキとして機能するブレーキ装置を作動させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された自走作業車では、運転者が降車する際には、左右の走行レバーを中立位置に戻し、さらにブレーキペダルを踏み込んで、駐車ブレーキを作動させる。この降車の際に、パーキングブレーキのかけ忘れが発生する。また、すぐに乗車するつもりで、パーキングブレーキを作動させないで降車したにもかかわらず、そのまま時間が経過し、パーキングブレーキの非作動状態で、作業車を放置するといった問題もある。
本発明の課題は、上記の不都合をできるだけ解消し、適切にパーキングブレーキが作動状態となる自走作業車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の自走作業車は、前輪ユニットと、左後輪と右後輪とを有する後輪ユニットと、前記左後輪と前記右後輪とに独立して回転動力を供給する可変走行動力供給ユニットと、第1経路に沿った変位によって前記可変走行動力供給ユニットから前記左後輪に供給される回転動力の速度を調節する左操作具と、第2経路に沿った変位によって前記可変走行動力供給ユニットから前記右後輪に供給される回転動力の速度を調節する右操作具と、前記可変走行動力供給ユニットに設けられたパーキングブレーキと、前記左操作具の前記第1経路から分岐した第3経路への変位かつ前記右操作具の前記第2経路から分岐した第4経路への変位に応答して前記パーキングブレーキを作動させるパーキングブレーキ作動部と、を備える。
【0006】
この構成によれば、運転者は、車体の速度や向きを変更するために用いられる第1経路や第2経路に沿った操作具の動きに代えて、操作具を第3経路または第4経路に沿って動かすことで、パーキングブレーキが作動(ブレーキON)する。つまり、運転者は、運転時に常に保持している操作具の車速変更用の経路での操作から、異なる経路での操作に切り換えることで、パーキングブレーキを作動させることができる。つまり、パーキングブレーキを作動させる際に、専用のパーキングブレーキ操作具に対する操作が不要となり、パーキングブレーキに対する作動操作が簡素化される。
【0007】
本発明の好適な実施形態では、前記左操作具の前記第3経路に沿った変位と前記右操作具の前記第4経路に沿った変位とによって、運転者が降車するための降車通路が拡張される。この構成では、左操作具の第3経路に沿った変位と右操作具の第4経路に沿った変位とによって、運転者が降車するための降車通路が拡張され、運転者はスムーズに降車することができる。運転者が降車するために必然的に行う、左操作具の第3経路に沿った変位と右操作具の第4経路に沿った変位とによって、パーキングブレーキが作動するので、運転者の降車時におけるパーキングブレーキのかけ忘れが回避される。
【0008】
本発明の好適な実施形態では、前記第3経路に第1検出位置が設定され、前記第4経路に第2検出位置が設定されており、前記パーキングブレーキ作動部は、前記左操作具の前記第1検出位置への変位かつ前記右操作具の前記第2検出位置への変位に応答して前記パーキングブレーキを作動させる。パーキングブレーキを作動させるためのトリガーとして、予め操作具の変位経路における特定位置(検出位置)への到達が用いられると、信頼性の高い安定したパーキングブレーキの作動が実現する。操作具の特定位置(検出位置)への到達は、リミットスイッチなどにより簡単かつ安価に検出することができる。
【0009】
作動(ブレーキON)状態のパーキングブレーキは、運転を再開する際に、解除(ブレーキOFF)されなければならない。パーキングブレーキ解除の1つの実施形態では、前記パーキングブレーキの作動状態において、前記左操作具の前記第1検出位置からの離脱または前記右操作具の前記第2検出位置からの離脱のいずれかあるいはその両方に応答して、前記パーキングブレーキの作動が解除される。運転者が乗車して走行を開始するためには、運転者は操作具を車速調節用の経路に戻して、当該経路に沿って操作具を動かす必要がある。つまり、運転者は、操作具をパーキングブレーキの作動トリガーとなった特定位置(検出位置)から車速調節用の経路まで動かす必要がある。この構成では、操作具をその特定位置(検出位置)から車速調節用の経路まで動かす過程でパーキングブレーキの作動が解除されるので、運転者の運転再開までの動きに無駄が生じない。
【0010】
傾斜地などに駐車している場合、パーキングブレーキを解除すると、車体が動き出す恐れがある。このため、パーキングブレーキの解除は、運転者が車体を動かそうとする時、あるいはその直前が好ましい。このことから、パーキングブレーキ解除の他の1つの実施形態では、前記パーキングブレーキの作動状態において、前記左操作具の中立位置から前記第1経路に沿った所定範囲の変位または前記右操作具の中立位置から前記第2経路に沿った所定範囲の変位のいずれかあるいはその両方に応答して、前記パーキングブレーキの作動が解除される。この所定範囲が適切に設定されることにより、車輪に動力が伝達される瞬間または車輪に動力が伝達される直前に、パーキングブレーキを解除することができる。
【0011】
パーキングブレーキ解除のさらに他の1つの実施形態では、前記パーキングブレーキの作動状態において、前記左操作具の中立位置から前記第1経路に沿った所定変位率を超えた変位または前記右操作具の中立位置から前記第2経路に沿った所定変位率を超えた離脱のいずれかあるいはその両方に応答して、前記パーキングブレーキの作動が解除される。運転者が車体を動かそうとする時は、ある程度の加速度をもって操作具を変位させる。そのような意図的な操作以外で、操作具がゆっくりと変位する場合は、パーキングブレーキ解除が不要な可能性が高い。このため、このような構成も利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】操作レバーユニットに関する制御系の機能ブロック図である。
【
図4】操作レバーを案内するガイドユニットの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一例である実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下の説明では、乗用型草刈機(「自走作業車」の一例)の走行車体に関し、
図1,2に示される矢印Fの方向を「車体前方」、矢印Bの方向を「車体後方」、
図1に示される矢印Uの方向を「車体上方」、矢印Dの方向を「車体下方」、
図2に示される矢印Lの方向を「車体左方」、矢印Rの方向を「車体右方」とする。
【0014】
図1と
図2とに示されるように、乗用型草刈機は、左右一対の前輪を有する前輪ユニット1が遊転可能に装備され、左後輪と右後輪とを有する後輪ユニット2が駆動可能に装備されて走行車体を備えている。走行車体は車体フレーム8を有する。前輪は、キャスタ輪型に構成されている。走行車体の前部に、運転座席3を有する運転部4が形成されている。運転部4の下方に、左後輪と右後輪とに対して独立して回転動力を供給する左モータと右モータとからなる走行用モータユニット5が設けられている。走行車体の後部に、走行用モータユニット5に電力を供給するバッテリパック6が備えられている。前輪ユニット1と後輪ユニット2との間に、草刈装置7が設けられている。草刈装置7は、草刈装置7を走行車体に対して昇降操作するリンク機構9を介して車体フレーム8に支持されている。草刈装置7には、刈刃ハウジング10、刈刃ハウジング10の内部に、車体上下方向に沿う方向の支軸(図示せず)を回転中心にして回転駆動可能に設けられた刈刃11が備えられている。
【0015】
図1と
図2とに示されるように、運転部4には走行車体の車速調整および向き調整を行う操作レバーユニット12が備えられている。操作レバーユニット12を構成する左操作レバー12a(左操作具の一例)と右操作レバー12b(右操作具の一例)は、運転座席3の両横側方に振り分けられている。運転者は、左操作レバー12aと右操作レバー12bとの間を通り抜け、運転座席3の前方に形成されたフロアープレートを通じて、乗車または降車する。
【0016】
図3に示されるように、左操作レバー12aと右操作レバー12bとは、それぞれ第1揺動軸芯P1周りで揺動変位する。この揺動変位は、車体前後方向の変位であり、縦変位と称する。さらに、左操作レバー12aと右操作レバー12bとは、それぞれ第2揺動軸芯P2周りでも揺動変位する。この揺動変位は、車体横断方向の変位であり、横変位と称する。
【0017】
図3と
図4とに示されるように、操作レバーユニット12の安定した変位(揺動)のために、左操作レバー12aと右操作レバー12bとの各基端部をガイドするガイドユニット40が備えられている。ガイドユニット40はプレート構造体であり、左操作レバー12aまたは右操作レバー12bの縦変位を案内する縦案内スロット41と、左操作レバー12aまたは右操作レバー12bの横変位を案内する横案内スロット42とが、上面に形成されている。縦案内スロット41は、縦案内スロット41の中央部において横案内スロット42とつながっている。
【0018】
図4に示されているように、縦案内スロット41に案内されて縦変位する左操作レバー12aの変位経路は第1経路L1と称し、縦案内スロット41に案内されて縦変位する右操作レバー12bの変位経路は第2経路L2と称する。横案内スロット42に案内されて横変位する左操作レバー12aの変位経路は第3経路L3と称し、横案内スロット42に案内されて横変位する右操作レバー12bの変位経路は第4経路L4と称する。第1経路L1と第3経路L3とは、分岐点JPで接続しており、第2経路L2と第4経路L4とは、分岐点JPで接続している。第1経路L1と第3経路L3とは、分岐点JPで、ほぼ直交しており、第2経路L2と第4経路L4とは、分岐点JPで、ほぼ直交している。
【0019】
図3に示されるように、左操作レバー12aの基端付近には、左操作レバー12aの第1経路L1に沿った縦変位を検出するポテンショメータ13が設けられている。同様に、右操作レバー12bの基端付近には、右操作レバー12bの第2経路L2に沿った縦変位を検出するポテンショメータ13が設けられている。各ポテンショメータ13は制御装置50に接続されている。
【0020】
さらに、左操作レバー12aの基端付近には、左操作レバー12aが第3経路L3に設定された特定位置(第1検出位置)に位置することを検出するリミットスイッチ14が設けられている。同様に、右操作レバー12bの基端付近には、右操作レバー12bが第4経路L4に設定された特定位置(第2検出位置)に位置することを検出するリミットスイッチ14が設けられている。各リミットスイッチ14は制御装置50に接続されている。
【0021】
制御装置50には、後輪ユニット2に回転動力を供給する走行用モータユニット5がモータドライバユニット15を介して接続されている。走行用モータユニット5には、左後輪に回転動力を供給する左モータと、右後輪に回転動力を供給する右モータとが含まれている。モータドライバユニット15には、左モータのための左ドライバと、右モータのための右ドライバとが含まれている。制御装置50からモータドライバユニット15への制御信号は、制御装置50に構築された車輪制御部60によって生成される。
【0022】
制御装置50は、操作レバーユニット12の縦変位に基づいて、走行用モータユニット5の回転制御を行う。具体的には、左操作レバー12aが第1経路L1において分岐点JPから前方に変位するほど、左後輪の前進回転速度が高くなり、左操作レバー12aが第1経路L1において分岐点JPから後方に変位するほど、左後輪の後進回転速度が高くなる。同様に、右操作レバー12bが第2経路L2において分岐点JPから前方に変位するほど、右後輪の前進回転速度が高くなり、右操作レバー12bが第2経路L2において分岐点JPから後方に変位するほど、左後輪の後進回転速度が高くなる。左操作レバー12aの分岐点JPの位置、及び右操作レバー12bの分岐点JPの位置が中立位置であり、動力供給が行われない中立状態となる。
【0023】
分岐点JPは、後輪ユニット2への回転動力の伝達をゼロにする中立位置として機能するので、左操作レバー12aが第3経路L3に位置する状態では、左後輪への回転動力の伝達はゼロとなり、中立状態が維持される。同様に、右操作レバー12bが第4経路L4に位置する状態では、左後輪への回転動力の伝達はゼロとなり、中立状態が維持される。
【0024】
図3に示されているように、走行用モータユニット5と後輪ユニット2との間にパーキングブレーキ16が介装されている。パーキングブレーキ16には、左モータと左後輪との間に介装された左ブレーキと、右モータと右後輪との間に介装された右ブレーキとを含んでいる。パーキングブレーキ16と制御装置50とはブレーキドライバ17を介して接続されている。制御装置50からブレーキドライバ17への制御信号は、制御装置50に構築されたパーキングブレーキ作動部70によって生成される。この実施形態では、パーキングブレーキ16は、電磁ブレーキで構成されている。
【0025】
以上の説明から明らかなように、この実施形態では、操作レバーユニット12の変位位置に基づいて、後輪ユニット2に回転動力を供給する可変走行動力供給ユニットPSUは、走行用モータユニット5とパーキングブレーキ16と非図示のトランスミッション機構とからなる。トランスミッション機構には、伝動軸や伝動ギヤが含まれる。
【0026】
パーキングブレーキ作動部70は、操作レバーユニット12の左操作レバー12aが第1検出位置に到達して左側のリミットスイッチ14がONし、かつ右操作レバー12bが第2検出位置に到達して右側のリミットスイッチ14がONした場合、パーキングブレーキ作動部70はパーキングブレーキ16の左ブレーキ及び右ブレーキを作動させる(ブレーキON)。これにより、走行車体は、パーキングブレーキ16が作動している駐車状態となる。
【0027】
図2に示されているように、操作レバーユニット12の左操作レバー12aは、運転座席3の左側から立ち上がって、車体横断方向で車体中心線に向かうように屈折しており、この屈折部分の先端領域にグリップが形成されている。同様に、操作レバーユニット12の右操作レバー12bは、運転座席3の左側から立ち上がって、車体横断方向で車体中心線に向かうように屈折しており、この屈折部分の先端領域にグリップが形成されている。つまり、左操作レバー12aのグリップと右操作レバー12bのグリップとが向き合っており、運転座席3から運転者が降車する際の降車通路を邪魔している。左操作レバー12aが第3経路L3に沿って変位するとともに、右操作レバー12bが第4経路L4に沿って変位することで、左操作レバー12aのグリップと右操作レバー12bのグリップとの間隔が拡張され、運転者が降車するための降車通路が開放される。このため、運転者の降車時には、左操作レバー12aが第3経路L3に沿って変位するとともに、右操作レバー12bが第4経路L4に沿って変位することになり、その時点で、パーキングブレーキ16が作動することは、好都合である。
【0028】
このパーキングブレーキ16の解除方法を以下に説明する。
(1)パーキングブレーキ解除の第1実施形態
操作レバーユニット12の左操作レバー12aが第3経路L3の第1検出位置から離脱したことが、リミットスイッチ14の検出信号から検知されるか、あるいは、右操作レバー12bが第4経路L4の第2検出位置から離脱したことが、リミットスイッチ14の検出信号から検知された場合、パーキングブレーキ作動部70はパーキングブレーキ16を解除する(ブレーキOFF)。
【0029】
(2)パーキングブレーキ解除の第2実施形態
操作レバーユニット12の左操作レバー12aが第3経路L3の第1検出位置から離脱したことが、リミットスイッチ14の検出信号から検知され、かつ、右操作レバー12bが第4経路L4の第2検出位置から離脱したことが、リミットスイッチ14の検出信号から検知された場合、パーキングブレーキ作動部70はパーキングブレーキ16を解除する(ブレーキOFF)。
【0030】
(3)パーキングブレーキ解除の第3実施形態
この実施形態では、第1実施形態や第2実施形態とは異なり、操作レバーユニット12の左操作レバー12aの第3経路L3における挙動、あるいは右操作レバー12bの第4経路L4における挙動では、パーキングブレーキ16が解除されない。操作レバーユニット12の左操作レバー12aの第1経路L1における挙動、または右操作レバー12bの第2経路L2における挙動によってパーキングブレーキ16が解除される。このような操作レバーユニット12の挙動は、ポテンショメータ13の検出信号から検知される。具体的には、パーキングブレーキ16の作動状態において、左操作レバー12aの第1経路L1に沿った挙動としての所定範囲の変位、または右操作レバー12bの第2経路L2に沿った挙動としての所定範囲の変位のいずれか、あるいはその両方に応答して、パーキングブレーキ作動部70はパーキングブレーキ16を解除する。この所定範囲は、分岐点JPからの前進方向または後進方向の所定角度の変位である。
【0031】
(4)パーキングブレーキ解除の第4実施形態
この実施形態は、第3実施形態の変形例である。第4実施形態では、パーキングブレーキ16の作動状態において、左操作レバー12aの中立位置(分岐点JP)から第1経路L1に沿った所定変位率を超えた変位、または右操作具の中立位置から第2経路L2に沿った所定変位率を超えた変位のいずれか、あるいはその両方に応答して、パーキングブレーキ作動部70はパーキングブレーキ16を解除する。変位率は、ポテンショメータ13からの信号が入力されるパーキングブレーキ作動部70の微分演算器によって算出され、所定変位率は、通常、運転者が駐車状態から走行を開始しようとする際の操作レバーユニット12に対する操作挙動に基づいて設定される。
【0032】
(5)パーキングブレーキ解除の第5実施形態
この実施形態は第3実施形態に類似する。第3実施形態では、左操作レバー12aの第1経路L1に沿った所定範囲の変位、または右操作レバー12bの第2経路L2に沿った所定範囲の変位のいずれか、あるいはその両方に応答して、パーキングブレーキ作動部70はパーキングブレーキ16を解除する。これとは異なり、第5実施形態では、左操作レバー12aの第3経路L3に沿った所定範囲の変位、または右操作レバー12bの第2経路L2に沿った所定範囲の変位のいずれか、あるいはその両方に応答して、パーキングブレーキ作動部70はパーキングブレーキ16を解除する。このため、第5実施形態では、
図5に示すように、操作レバーユニット12の左操作レバー12a及び右操作レバー12bの第2揺動軸芯P2周りの揺動変位である横変位(第3経路L3と第4経路L4とに沿った変位)を検出するための横ポテンショメータ140が、設けられている。この横ポテンショメータ140は、制御装置50に接続されており、パーキングブレーキ作動部70は、左操作レバー12a及び右操作レバー12bの横変位を逐次検知することができる。したがって、パーキングブレーキ作動部70は、操作レバーの中立位置(分岐点JP)からの所定角度の横変位の検知により、パーキングブレーキ16を解除することができる。
【0033】
(6)パーキングブレーキ解除の第6実施形態
この実施形態は、第5実施形態の変形例である。第6実施形態では、パーキングブレーキ16の作動状態において、左操作レバー12aの中立位置から第3経路L3に沿った所定変位率を超えた変位、または右操作具の中立位置から第4経路L4に沿った所定変位率を超えた離脱のいずれか、あるいはその両方に応答して、パーキングブレーキ作動部70はパーキングブレーキ16を解除する。変位率は、横ポテンショメータ140からの信号が入力されるパーキングブレーキ作動部70の微分演算器によって算出され、所定変位率は、通常、運転者が駐車状態から走行を開始しようとする際の操作レバーユニット12に対する操作挙動に基づいて設定される。
【0034】
〔別実施形態〕
(1)上述した実施形態では、走行装置として前輪ユニット1及び後輪ユニット2が備えられ、走行装置を駆動する駆動装置として走行用モータユニット5が備えられた例を示したが、これに限らない。たとえば、クローラ式の走行装置、ミニクローラと車輪とが組み合わされた走行装置が備えられたものであってもよい。また、エンジンの動力が入力され、入力された動力を変速して走行装置に伝達することによって走行装置を駆動する無段変速装置が備えられたものであってもよい。
(2)上述した実施形態では、パーキングブレーキ16は、電磁ブレーキで構成されていたが、これに代えて、電動アクチュエータで動作する機械式ブレーキなど、他のブレーキ構造が採用されてもよい。
(3)上述した実施形態では、操作具として、揺動支点周りで揺動する操作レバーが取り上げられたが、摺動タイプの操作具など他のタイプの操作具が用いられてもよい。
(4)上述した実施形態では、操作レバーユニット12の各経路での挙動の検出に、リミットスイッチタイプやポテンショメータタイプの検出デバイスが用いられたが、磁気的検出デバイスや光学的検出デバイスなどの検出デバイスが用いられてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、草刈機の他、運搬車など各種の作業車に適用できる。
【符号の説明】
【0036】
1 :前輪ユニット
2 :後輪ユニット
3 :運転座席
4 :運転部
5 :走行用モータユニット
6 :バッテリパック
7 :草刈装置
8 :車体フレーム
9 :リンク機構
10 :刈刃ハウジング
11 :刈刃
12 :操作レバーユニット
12a :左操作レバー
12b :右操作レバー
13 :ポテンショメータ
14 :リミットスイッチ
15 :モータドライバユニット
16 :パーキングブレーキ
17 :ブレーキドライバ
40 :ガイドユニット
41 :縦案内スロット
42 :横案内スロット
50 :制御装置
60 :車輪制御部
70 :パーキングブレーキ作動部
140 :横ポテンショメータ
PSU :可変走行動力供給ユニット
JP :分岐点
L :矢印
L1 :第1経路
L2 :第2経路
L3 :第3経路
L4 :第4経路
P1 :第1揺動軸芯
P2 :第2揺動軸芯