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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154199
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】起泡性組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 23/00 20220101AFI20221005BHJP
【FI】
B01F17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057110
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】近藤 憲介
(72)【発明者】
【氏名】青野 恵太
【テーマコード(参考)】
4D077
【Fターム(参考)】
4D077AA09
4D077AB10
4D077AB11
4D077AB17
4D077AC07
4D077BA01
4D077BA07
4D077DD62X
4D077DD62Y
(57)【要約】
【課題】界面活性剤を当該界面活性剤の臨界ミセル濃度未満の濃度で含有する組成物の泡特性を向上する。
【解決手段】水と、(a)界面活性剤〔以下(a)成分という〕と、(b)ポリペプチド〔以下(b)成分という〕を含有し、(a)成分を、(a)成分の臨界ミセル濃度を1として、0.01以上1.0未満の割合の濃度で含有する、起泡性組成物である。この起泡性組成物を、スプレー等の泡形成機構を有する起泡手段で起泡させて泡を形成する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と、(a)界面活性剤〔以下(a)成分という〕と、(b)ポリペプチド〔以下(b)成分という〕を含有し、(a)成分を、(a)成分の臨界ミセル濃度を1として、0.01以上1.0未満の割合の濃度で含有する、起泡性組成物。
【請求項2】
(b)成分を、0.01ppm以上10,000ppm以下含有する、請求項1に記載の起泡性組成物。
【請求項3】
(a)成分は、(a1)陰イオン界面活性剤〔以下(a1)成分という〕、(a2)非イオン界面活性剤〔以下(a2)成分という〕及び(a3)両性界面活性剤〔以下(a3)成分という〕から選ばれる1種以上の界面活性剤である、請求項1又は2に記載の起泡性組成物。
【請求項4】
(a)成分は、(a1)成分及び(a2)成分の少なくとも一方の界面活性剤と、(a3)成分から選ばれる1種以上の界面活性剤と、を含む、請求項3に記載の起泡性組成物。
【請求項5】
(a1)成分は、アルキルアリールスルホン酸型界面活性剤、硫酸エステル型界面活性剤、アルカンスルホン酸型界面活性剤、オレフィンスルホン酸型界面活性剤、スルホコハク酸アルキルエステル型界面活性剤、及びスルホ脂肪酸エステル型界面活性剤から選ばれる1種以上の陰イオン界面活性剤である、請求項3又は4に記載の起泡性組成物。
【請求項6】
(a2)成分は、アルキル基の炭素数が10以上22以下であるアルキルグリコシド型非イオン界面活性剤である、請求項3~5の何れか1項に記載の起泡性組成物。
【請求項7】
(a3)成分は、アミンオキシド型界面活性剤及びベタイン型界面活性剤から選ばれる1種以上の両性界面活性剤である、請求項3~6の何れか1項に記載の起泡性組成物。
【請求項8】
(b)成分は、リパーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、アルブミン、プロタミン及びポリグルタミン酸から選ばれる1種以上のポリペプチドである、請求項1~7の何れか1項に記載の起泡性組成物。
【請求項9】
(a)成分の含有量と(b)成分の含有量の質量比(a)/(b)が、0.01以上10,000以下である、請求項1~8の何れか1項に記載の起泡性組成物。
【請求項10】
水不溶性無機化合物の含有量が、100ppm以下である、請求項1~9の何れか1項に記載の起泡性組成物。
【請求項11】
水と、(a)界面活性剤〔以下(a)成分という〕と、(b)ポリペプチド〔以下(b)成分という〕を含有し、(a)成分を、(a)成分の臨界ミセル濃度を1として、0.01以上1.0未満の割合の濃度で含有する組成物を、起泡させて泡を形成する、泡の形成方法。
【請求項12】
前記組成物は、(b)成分を、0.01ppm以上10,000ppm以下含有する、請求項11に記載の泡の形成方法。
【請求項13】
(a)成分は、(a1)陰イオン界面活性剤〔以下(a1)成分という〕、(a2)非イオン界面活性剤〔以下(a2)成分という〕及び(a3)両性界面活性剤〔以下(a3)成分という〕から選ばれる1種以上の界面活性剤である、請求項11又は12に記載の泡の形成方法。
【請求項14】
(a)成分は、(a1)成分及び(a2)成分の少なくとも一方の界面活性剤と、(a3)成分から選ばれる1種以上の界面活性剤と、を含む、請求項13に記載の泡の形成方法。
【請求項15】
(a1)成分は、アルキルアリールスルホン酸型界面活性剤、硫酸エステル型界面活性剤、アルカンスルホン酸型界面活性剤、オレフィンスルホン酸型界面活性剤、スルホコハク酸アルキルエステル型界面活性剤、及びスルホ脂肪酸エステル型界面活性剤から選ばれる1種以上の陰イオン界面活性剤である、請求項13又は14に記載の泡の形成方法。
【請求項16】
(a2)成分は、アルキル基の炭素数が10以上22以下であるアルキルグリコシド型非イオン界面活性剤である、請求項13~15の何れか1項に記載の泡の形成方法。
【請求項17】
(a3)成分は、アミンオキシド型界面活性剤及びベタイン型界面活性剤から選ばれる1種以上の両性界面活性剤である、請求項13~16の何れか1項に記載の泡の形成方法。
【請求項18】
(b)成分は、リパーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、アルブミン、プロタミン及びポリグルタミン酸から選ばれる1種以上のポリペプチドである、請求項11~17の何れか1項に記載の泡の形成方法。
【請求項19】
前記組成物中、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量の質量比(a)/(b)が、0.01以上10,000以下である、請求項11~18の何れか1項に記載の泡の形成方法。
【請求項20】
前記組成物は、請求項1~10の何れか1項に記載の起泡性組成物である、請求項11~19の何れか1項に記載の泡の形成方法。
【請求項21】
起泡手段を用いて前記組成物を起泡させて泡を形成する、請求項11~20の何れか1項に記載の泡の形成方法。
【請求項22】
請求項1~10の何れか1項に記載の起泡性組成物を、泡形成機構を具備した容器に充填してなる、泡形成用物品。
【請求項23】
水と、(a)界面活性剤〔以下(a)成分という〕とを含有し、(a)成分を、(a)成分の臨界ミセル濃度を1として、0.01以上1.0未満の割合の濃度で含有する組成物を起泡させる際に、
前記組成物中に(b)ポリペプチド〔以下(b)成分という〕を共存させて、前記組成物を起泡させて泡を形成する、泡特性向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、起泡性組成物、泡の形成方法、泡形成用物品及び泡特性向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
界面活性剤は洗浄剤や化粧品、農薬等様々な場面で使われている。その特性としては油を乳化する、泡を立たせるような効果を用いてあらゆる場面で使用される。
一般的な界面活性剤は、臨界ミセル濃度(critical micelleconcentration)以上で会合体を形成することで泡立たせる効果を発揮することが知られている。したがって、通常、界面活性剤の泡立たせる効果を発揮させるために、界面活性剤は臨界ミセル濃度以上で用いられる。
【0003】
特許文献1~3には、酵素を含み所望の泡特性を有する洗浄組成物が記載されている。また、特許文献4には、カルボキシ基を有する高分子化合物を含み所望の泡特性を有する洗浄組成物が記載されている。特許文献5には、双性イオンポリマーを含み所望の泡特性を有する洗浄組成物が記載されている。しかしこれらは、全て臨界ミセル濃度以上の濃度で使用を想定しているものである。
一方、特許文献6には臨界ミセル濃度以下の陰イオン界面活性剤を含有する、洗濯に供する水の技術が開示されており、脱気処理水と炭酸塩及び炭酸水素塩を含有する水が高い洗浄力を示すことが記載されている。また実施例には酵素を含有する組成物が記載されている。しかしながら該公報は洗浄力を高める技術であり、組成物の起泡性は考慮されておらず、起泡性を改善することの記載も示唆もない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2019-513879号公報
【特許文献2】特表2019-513878号公報
【特許文献3】特表2019-513877号公報
【特許文献4】国際公開第2011/129438号
【特許文献5】特表2003-508549号公報
【特許文献6】特開2004-210970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
地球温暖化などの環境問題が顕在化している昨今、石油由来の界面活性剤をはじめとして、界面活性剤の使用量の低減が求められている。しかしながら、組成物の界面活性剤濃度を低下させると、それに応じて組成物の起泡性が低下する。つまり、組成物における界面活性剤の濃度が当該界面活性剤の臨界ミセル濃度未満では、組成物の起泡性や泡持続性等の泡特性が損なわれるおそれがある。そのため、界面活性剤を当該界面活性剤の臨界ミセル濃度未満の濃度で含有する組成物でも優れた泡特性を維持させる技術が求められる。
【0006】
本発明は、界面活性剤を当該界面活性剤の臨界ミセル濃度未満の濃度で含有する組成物の泡特性を向上する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、水と、(a)界面活性剤〔以下(a)成分という〕と、(b)ポリペプチド〔以下(b)成分という〕を含有し、(a)成分を、(a)成分の臨界ミセル濃度を1として、0.01以上1.0未満の割合の濃度で含有する、起泡性組成物に関する。
【0008】
また、本発明は、水と、(a)成分と、(b)成分を含有し、(a)成分を、(a)成分の臨界ミセル濃度を1として、0.01以上1.0未満の割合の濃度で含有する組成物を、起泡させて泡を形成する、泡の形成方法に関する。
【0009】
また、本発明は、上記の起泡性組成物を、泡形成機構を具備した容器に充填してなる、泡形成用物品に関する。
【0010】
また、本発明は、水と、(a)成分とを含有し、(a)成分を、(a)成分の臨界ミセル濃度を1として、0.01以上1.0未満の割合の濃度で含有する組成物を起泡させる際に、
前記組成物中に(b)成分を共存させて、前記組成物を起泡させて泡を形成する、泡特性向上方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、界面活性剤を当該界面活性剤の臨界ミセル濃度未満の濃度で含有する組成物の泡特性が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明が臨界ミセル濃度(以下、cmcともいう)未満で界面活性剤を含有する組成物の泡特性を向上させる機構は定かではないが、界面活性剤を含む組成物にポリペプチドを共存させることで、静電相互作用等により、ポリペプチドが界面活性剤に作用して、界面活性剤が気液界面に効率的に吸着すること、又は界面活性剤が気液界面から脱離しにくくなることで、界面活性剤を当該界面活性剤のcmc未満の濃度で含有する組成物でも安定した泡を立たせることができると考えられる。
本発明によれば、界面活性剤を当該界面活性剤のcmc未満の濃度で含有する組成物の泡特性が向上する。本発明において泡特性とは、起泡性、泡持続性のいずれか又は両方であってもよく、本発明によれば、界面活性剤を当該界面活性剤のcmc未満の濃度で含有する組成物の起泡性及び/又は泡持続性が向上する。
【0013】
本発明の起泡性組成物は、水と、(a)界面活性剤〔以下(a)成分という〕を含有し、(a)成分を、(a)成分のcmcを1として、0.01以上1.0未満の割合の濃度で含有する。
【0014】
本発明の起泡性組成物は、(a)成分を、初期泡比容及び泡保持性の観点から、(a)成分のcmcを1として、0.01以上、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.10以上、更に好ましくは0.2以上、そして、環境負荷の観点から、1.0未満、好ましくは0.9以下、より好ましくは0.8以下、更に好ましくは0.5以下の割合の濃度で含有する。
【0015】
本発明において、(a)成分の臨界ミセル濃度(cmc)の測定は界面活性剤便覧 産業図書(株)昭和35年発行124頁~133頁に記載されているように可溶化法、電導度法、表面張力法、光散乱法、染料滴定法などの方法で求めることができるが、本発明では測定が困難な場合を除いて表面張力法で求めた値を採用する。すなわち、表面張力計、例えば、協和界面科学株式会社製の自動表面張力計(Surface Tensiometer CBVP-A3)を用い、25℃の恒温室で界面活性剤水溶液の表面張力値を25℃、大気圧下(1013hPa)測定し、表面張力値がほぼ一定となり始める濃度を臨界ミセル濃度とする。なお、(a)成分として2種以上の界面活性剤を用いる場合は、その質量比率を保ったままで同様に測定するものとする。
【0016】
(a)成分は、界面活性剤である。(a)成分は、陰イオン界面活性剤〔以下(a1)成分という〕、非イオン界面活性剤〔以下(a2)成分という〕、及び両性界面活性剤〔以下(a3)成分という〕から選らばれる1種以上の界面活性剤であってよい。
【0017】
(a1)成分は、アルキルアリールスルホン酸型界面活性剤、硫酸エステル型界面活性剤、アルカンスルホン酸型界面活性剤、オレフィンスルホン酸型界面活性剤、スルホコハク酸アルキルエステル型界面活性剤、及びスルホ脂肪酸エステル型界面活性剤から選ばれる1種以上の陰イオン界面活性剤が好ましい。
【0018】
アルキルアリールスルホン酸型界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩等が挙げられる。硫酸エステル型界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩等が挙げられる。アルカンスルホン酸型界面活性剤としては、例えば、アルカンスルホン酸塩等が挙げられる。オレフィンスルホン酸型界面活性剤としては、例えば、α-オレフィンスルホン酸塩、内部オレフィンスルホン酸塩等が挙げられる。スルホコハク酸アルキルエステル型界面活性剤としては、炭素数5以上18以下の脂肪アルコールとスルホコハク酸とのジエステル等が挙げられる。スルホ脂肪酸エステル型界面活性剤としては、α-スルホ脂肪酸低級アルキルエステル塩等が挙げられる。(a1)成分としては、炭素数5以上18以下の脂肪アルコールとスルホコハク酸とのジエステル、アルキル基の炭素数が8以上18以下であるアルキルベンゼンスルホン酸塩、炭素数10以上18以下のアルカンスルホン酸塩、及び炭素数が8以上18以下のアルキル硫酸エステル塩から選ばれる1種以上の陰イオン界面活性剤が好ましい。上記界面活性剤の塩は、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、有機アンモニウム塩が挙げられ、好ましくはアルカリ金属塩である。
【0019】
(a2)成分としては、アルキルグリコシド型非イオン界面活性剤、アルキルエーテル型非イオン界面活性剤、及びアルキルグリセリルエーテル型非イオン界面活性剤から選ばれる1種以上の非イオン界面活性剤が挙げられる。
【0020】
アルキルグリコシド型非イオン界面活性剤としては、例えば、アルキル基の炭素数が8以上、好ましくは10以上、そして、22以下、好ましくは18以下であり、糖、例えばグルコースの平均縮合度は1以上3以下、好ましくは1以上2以下、より好ましくは1以上1.5以下であるアルキルグリコシド型非イオン界面活性剤が挙げられる。アルキルグリコシド型非イオン界面活性剤の炭素数5又は6の糖に由来する残基は、使用される単糖類もしくは2糖類以上の糖によってその構造が決定される。単糖類ではグルコース、ガラクトース、キシロース、マンノース、リキソース、アラビノース、フルクトース又はこれらの混合物等に由来する残基が挙げられ、2糖類以上ではマルトース、キシロビオース、イソマルトース、セロビオース、ゲンチビオース、ラクトース、スクロース、ニゲロース、ツラノース、ラフィノース、ゲンチアノース、メンジトース又はこれらの混合物等に由来する残基が挙げられる。単糖類ではグルコース及びフルクトースであり、2糖類以上ではマルトース及びスクロースである。アルキルエーテル型非イオン界面活性剤としては、炭素数8以上、そして、18以下、好ましくは14以下の直鎖脂肪アルコールに炭素数2又は3のオキシアルキレン、好ましくはオキシエチレン基が平均3モル以上、好ましくは5モル以上、そして、20モル以下、好ましくは15モル以下付加したポリオキシアルキレンアルキルエーテルが挙げられる。アルキルグリセリルエーテル型非イオン界面活性剤としては、炭素数8以上、そして、18以下、好ましくは14以下、より好ましくは12以下のアルキル基を1つ有するアルキルグリセリルエーテル型非イオン界面活性剤が挙げられる。(a2)成分は、アルキルグリコシド型非イオン界面活性剤から選ばれる1種以上の非イオン界面活性剤が好ましく、アルキル基の炭素数が10以上18以下であるアルキルグリコシド型非イオン界面活性剤がより好ましい。
【0021】
(a2)成分は、アルキル基の炭素数が、泡保持性の観点から、好ましくは8以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは12以上であり、そして、起泡性及び泡保持性の観点から、好ましくは22以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは16以下である。(a2)成分は、例えば、アルキル基の炭素数が、好ましくは10以上、より好ましくは12以上であり、そして、好ましくは22以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは16以下であり、糖、例えばグルコースの平均縮合度は1以上3以下、好ましくは1以上2以下、より好ましくは1以上1.5以下であるアルキルグリコシド型非イオン界面活性剤であってよい。
【0022】
(a3)成分としては、アミンオキシド型界面活性剤、及びベタイン型界面活性剤から選ばれる1種以上の両性界面活性剤が挙げられる。(a3)成分は、3級アミンオキシド型界面活性剤、スルホベタイン型界面活性剤、及びカルボベタイン型界面活性剤から選ばれる1種以上の両性界面活性剤であってよい。
【0023】
3級アミンオキシド型界面活性剤としては、例えば、窒素原子に結合する基のうち1つがアミド基又はエステル基で分断されていてもよい炭素数8以上18以下のアルキル基、好ましくは炭素数8以上16以下のアルキル基、更に好ましくは炭素数8以上14以下のアルキル基であり、残りが炭素数1以上3以下のアルキル基、好ましくはメチル基である3級アミンオキシド型界面活性剤が挙げられる。
【0024】
スルホベタイン型界面活性剤としては、例えば、炭素数10以上、そして、18以下、好ましくは16以下、より好ましくは14以下のアルキル基を1つと、炭素数1以上3以下のアルキル基、好ましくはメチル基を2つと、3-スルホプロピル基又は2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル基とを有する化合物が挙げられる。
【0025】
カルボベタイン型界面活性剤としては、例えば、アミド基又はエステル基で分断されていてもよい炭素数10以上、そして、18以下、好ましくは16以下、より好ましくは14以下のアルキル基を1つと、炭素数1以上3以下のアルキル基、好ましくはメチル基を2つと、カルボキシアルキル基、好ましくはカルボキシメチル基を1つ有するカルボベタイン型界面活性剤が挙げられる。
【0026】
(a)成分は、(b)成分のポリペプチドと疎水性相互作用および静電相互作用する官能基を有するものが好ましい。具体的には、スルホン酸、カルボン酸、硫酸エステル、リン酸などの陰イオン基などから選ばれる官能基を有するものが好ましい。また、四級アンモニウム基、アンモニウム基から選ばれる陽イオン基を有するものが好ましい。また、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基などの水素結合基を有する非イオン基を有するものが好ましい。
【0027】
(a)成分は、起泡性及び泡保持性の観点から、(a1)成分が好ましい。(a)成分は、起泡性及び泡保持性の観点から、(a1)成分を含む界面活性剤が好ましい。
【0028】
(a)成分は、起泡性及び泡保持性の観点から、(a1)成分及び(a2)成分の少なくとも一方の界面活性剤と、(a3)成分から選ばれる1種以上の界面活性剤と、を含む界面活性剤であってよい。
【0029】
本発明の起泡性組成物は、(b)ポリペプチド〔以下(b)成分という〕を含有する。(b)成分としては、起泡性及び泡持続性の観点から、リパーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、アルブミン、プロタミン及びポリグルタミン酸から選ばれる1種以上のポリペプチドが好ましく、起泡性、泡持続性及び汚れ等を分解できるという観点から、リパーゼ、アミラーゼ及びプロテアーゼから選ばれる1種以上の酵素として機能するポリペプチドがより好ましい。
【0030】
(b)成分の分子量は、泡保持性の観点から、好ましくは3,000Da以上、より好ましくは10,000Da以上、更に好ましくは20,000Da以上、そして、起泡性及び泡保持性の観点から、好ましくは100,000Da以下、より好ましくは70,000Da以下である。
(b)成分の分子量は、ポリアクリルアミド電気泳動(SDS-PAGE)によって測定されたものである。ポリアクリルアミド電気泳動(SDS-PAGE)では、ポリアクリルアミドゲルとしてレディゲルJ(分離ゲル濃度15%、バイオ・ラッド ラボラトリーズ社製)、標準タンパク質としてバイオ・ラッド ラボラトリーズ社製のSDS-PAGE Molecular Weight Standards, Low Rangeを用いることができる。
【0031】
本発明の起泡性組成物中、(b)成分の濃度は、起泡性と泡持続性の観点から、好ましくは0.01ppm(質量比、以下同様である)以上、より好ましくは1ppm以上、更に好ましくは5ppm以上、更に好ましくは10ppm以上、そして、起泡性と経済性の観点から、好ましくは10,000ppm以下、より好ましくは5,000ppm以下、更に好ましくは800ppm以下、更に好ましくは600ppm以下、更に好ましくは300ppm以下である。
(b)成分の濃度は、ポリペプチド(酵素たんぱく質)としての濃度である。
【0032】
(b)成分が酵素として機能するポリペプチドの場合、(b)成分は、酵素たんぱく質として、上記濃度で本発明の起泡性組成物中に含まれることが好ましい。酵素たんぱく質としての(b)成分の含有量は、バイオ・ラッド ラボラトリーズ社製のプロテインアッセイキットII(カタログ番号500-0002)を用い、標準アッセイ法に従って、キットに添付されたウシ血清アルブミンを標準たんぱく質として定量することができる。
【0033】
本発明の起泡性組成物中、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量の質量比(a)/(b)は、起泡性及び泡保持性の観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.10以上、更に好ましくは1.0以上、更に好ましくは10以上、そして、ポリペプチドの溶解性の観点から、好ましくは10,000以下、より好ましくは1,000以下、更に好ましくは500以下、更に好ましくは100以下、より更に好ましくは50以下である。
【0034】
本発明の起泡性組成物は、スプレー式トリガーにより起泡させた際に、吐出した起泡性組成物の質量(g)と、吐出直後の泡の容量(mL)から算出される初期泡比容(mL/g)が、2.0以上の起泡性組成物であってよい。
【0035】
なお、本発明において、起泡性組成物とは、例えば、後述する実施例の起泡性の評価で、泡比容が1mL/g以上、好ましくは5mL/g以上、より好ましくは7mL/g以上の起泡性を有する組成物であってよい。起泡性の評価で用いるスプレー容器は特開2017-214464号公報の図1記載のスプレー容器が好適である。
【0036】
本発明の起泡性組成物は、水を含有する。水は、通常、起泡性組成物の残部となるような量で用いられる。水としては、イオン交換水、蒸留水を用いることができ、カルシウムやマグネシウムなどの硬度成分を含む水などを用いてもよい。水の硬度(ドイツ硬度°dH)は、例えば、0°dHを超え20°dH以下が好ましい。また、水は、脱気されていない水が好ましい。
【0037】
本発明の起泡性組成物は起泡を損なう恐れのある成分を含有する場合は注意を要する。特に衣料用洗浄剤で頻繁に使用されるゼオライトや粘土鉱物などの水不溶性無機化合物は起泡を抑制するため使用を控えるべきである。本発明の起泡性組成物は、起泡性組成物中の水不溶性無機化合物の含有量が、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下、更に好ましくは10ppm以下であり、そして、起泡性組成物中に水不溶性無機化合物を含有しないことが最も好ましい。水不溶性無機化合物は、20℃の水への溶解度が、0.1g/100g水以下の無機化合物であってよい。
水不溶性無機化合物は、例えば、ゼオライト、粘土鉱物、アルミナ、シリカ等が挙げられる。本発明の起泡性組成物は、ゼオライトの含有量が上記範囲であってよい。
【0038】
本発明の起泡性組成物は、ゲル化防止剤、ポリアクリル酸等の増粘剤、香料、染料、顔料、殺菌剤、防腐剤、pH調整剤等の任意成分を含有し得る。
【0039】
本発明の起泡性組成物は、例えば、食器や衣服の洗浄、消毒、化粧品等の用途に用いることができる。
【0040】
本発明の起泡性組成物ではcmc以下の非常に希薄な濃度の界面活性剤水溶液を起泡させることができる。組成物を起泡させることで、対象物への組成物の付着性を向上させたり、浸透性を付与したりすることができる。例えば、殺菌剤を含有する組成物を泡で対象物に付着させると、殺菌成分が対象物に付着する時間が向上し、より殺菌効果が高まる。また、(b)成分が酵素の場合、本発明の起泡性組成物を泡で対象物に付着させることで酵素反応を持続させ、高い効果が得られる。さらには組成物を泡で供給すると、多孔性材料(例えば、衣類などの材料となる布など)に、組成物中の有効成分を効率よく浸透させることができる。本発明の起泡性組成物は、このような優れた効果をcmc以下の非常に希薄な界面活性剤濃度で達成できる、環境負荷が低減された組成物である。
【0041】
本発明は、水と、(a)成分である界面活性剤と、(b)成分であるポリペプチドと、を混合して起泡性組成物を製造する起泡性組成物の製造方法であって、
(a)成分のcmcを1として、0.01以上1.0未満の割合の濃度となるように、(a)成分を前記起泡性組成物に配合する、起泡性組成物の製造方法を提供する。
【0042】
本発明の起泡性組成物の製造方法における、水、(a)成分及び(b)成分の好ましい態様等は、上記の本発明の起泡性組成物と同様である。本発明の起泡性組成物の好ましい含有量(濃度)は、本発明の起泡性組成物の製造方法における好ましい配合量である。
【0043】
本発明は、水と、(a)成分である界面活性剤と、(b)成分であるポリペプチドを含有し、(a)成分を、(a)成分のcmcを1として、0.01以上1.0未満の割合の濃度で含有する組成物を、起泡させて泡を形成する、泡の形成方法を提供する。
【0044】
本発明の泡の形成方法における、(a)成分及び(b)成分の好ましい態様や起泡性組成物中における(a)成分及び(b)成分の好ましい含有量(濃度)等は、上記の本発明の起泡性組成物と同様である。本発明の起泡性組成物中における(a)成分や(b)成分の好ましい含有量(濃度)は、本発明の泡の形成方法における、泡を形成する際の起泡性組成物中における(a)成分や(b)成分の好ましい含有量(濃度)である。
【0045】
本発明の泡の形成方法では、(a)成分及び(b)成分を含有する本発明の起泡性組成物を、スポンジや、泡形成機構を有するスプレー又はフォームガン等の起泡手段を用いて起泡させて、対象物に組成物を泡として接触させる。起泡手段は、特に限定されるものではないが、泡形成機構を有するスプレイヤーを用いて泡を形成することが好ましい。特に簡便性の観点からトリガーを有する泡形成機構が好適である。
【0046】
本発明は、水と、(a)成分である界面活性剤を含有し、(a)成分を、(a)成分のcmcを1として、0.01以上1.0未満の割合の濃度で含有する組成物を起泡させる際に、
前記組成物中に(b)成分であるポリペプチドを共存させて、前記組成物を起泡させて泡を形成する、泡特性向上方法を提供する。
【0047】
本発明の泡特性向上方法における、(a)成分及び(b)成分の好ましい態様や起泡性組成物中における(a)成分及び(b)成分の好ましい含有量(濃度)等は、上記の本発明の起泡性組成物と同様である。また、組成物は、本発明の起泡性組成物であってよく、組成物を起泡させる際に、上記の本発明の泡の形成方法で説明した、スポンジや、泡形成機構を有するスプレー又はフォームガン等の起泡手段を使用できる。
【0048】
本発明は、上記本発明の起泡性組成物を、泡形成機構を具備した容器に充填してなる、泡形成用物品を提供する。
【0049】
泡形成機構を具備した容器は、例えば、スプレイヤーを具備する容器(以下、スプレー容器ともいう)、好ましくはトリガー式スプレー容器、ポンプ式スプレー容器等の噴射剤を使用しない手動式スプレー装置、噴射剤を用いるエアゾール等が挙げられる。スプレイヤーを具備する容器は、内容物を泡状にして吐出できるトリガー式スプレー容器が好ましく、泡を形成する機構(泡形成機構)を備えたトリガー式スプレー容器がより好ましい。
【0050】
泡形成機構を備えたトリガー式スプレー容器を用いる場合、噴出ノズルに発泡筒を装着し、吐出器の吐出操作によって噴出孔から噴出する内容液を、前記発泡筒の内壁面に衝突させて発泡した状態で吐出させる発泡吐出容器が好適である。その詳細な構造として、例えば、特開2017-214464号公報や特開2007-167719号公報に記載のものを参考にできる。ここで、発泡筒を構成する空気導入孔から入る空気量を調整することで、起泡性組成物と混合する空気量を調整し、好ましく起泡性組成物を起泡させることができる。すなわち、起泡性組成物に対する空気導入量を多くすることで、泡比容の大きな泡とすることができる。
【0051】
泡形成機構を備えたトリガー式スプレー容器を用いる場合、スプレー容器入り泡形成用物品は、1回の操作で、好ましくは0.4mL以上、より好ましくは0.6mL以上、そして、好ましくは10mL以下、より好ましくは5mL以下、更に好ましくは3mL以下、更に好ましくは1.5mL以下の組成物を噴霧する。
すなわち、1回の操作で、好ましくは0.4g以上、より好ましくは0.6g以上、そして、好ましくは10g以下、より好ましくは5g以下、更に好ましくは3g以下、更に好ましくは1.5g以下の組成物を噴霧する。
【0052】
本発明の泡形成用物品において、起泡性組成物が充填される容器は、一般に使用されている容器を用いることができる。容器は、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートを原料として得られ、ブロー成形等によって製造できる。容器の肉厚は、底面と側面と異なってもよく、例えば、0.01mm以上2mm以下が好ましく、容器の容量は、例えば、100mL以上1000mL以下が好ましい。容器に充填される起泡性組成物の量は、取り扱い上、例えば、200mL以上500mL以下が好ましい。なお、容器への起泡性組成物の充填は、常識的な空隙を残して行われる。
【実施例0053】
表1の起泡性組成物を調製し、以下の方法で起泡性組成物の起泡性及び泡持続性を評価した。結果を表1に示す。なお、表1中の配合成分は以下のものである。また、表1中の実施例10の起泡性組成物は、a-3成分を150ppm、a-7成分を100ppm含む組成物であり、実施例11の起泡性組成物は、a-3成分を150ppm、a-8成分を100ppm含む組成物である。
【0054】
<配合成分>
〔(a)成分〕
・a-1:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、富士フイルム和光純薬株式会社製
・a-2:ドデシル硫酸ナトリウム、富士フイルム和光純薬株式会社製
・a-3:スルホコハク酸ジ-2-エチルヘキシルナトリウム、製品名「エアロールCT-1K」、東邦化学工業(株)製
・a-4:スルホコハク酸ビス-(2-プロピルヘプチル)ナトリウム
・a-5:第二級アルカンスルホン酸のナトリウム塩、炭素数14以上17以下の第二級アルカンスルホン酸のナトリウム塩、Hostapur SAS 60、CLARIANT社製
・a-6:アルキルポリグルコシド、製品名「プランタケア2000UP」、BASF SE社製、アルキル基の炭素数8以上16以下、グルコースの縮合度1以上2以下
・a-7:ラウリルジメチルヒドロキシスルホベタイン、製品名「アンヒトール20HD」、花王株式会社製
・a-8:ラウリルジメチルアミンオキサイド、製品名「アンヒトール20N」、花王株式会社製
【0055】
<cmcに対する(a)成分の濃度の割合の算出方法>
各(a)成分のcmcを、表面張力法で求めた。そして、各実施例及び比較例でcmcに対する(a)成分の濃度の割合を算出した。結果を表1に示す。
【0056】
〔(b)成分〕
・b-1:ウシ由来アルブミン、富士フイルム和光純薬株式会社製、分子量約66,000
・b-2:アミラーゼ、製品名「Amplify Prime 100L」、Novozymes社製、分子量55,000
・b-3:プロテアーゼ、製品名「Progress Uno 100L」、Novozymes社製、分子量約25,000
・b-4:リパーゼ、製品名「Lipex Evity 100L」、Novozymes社製、分子量約30,000
なお、表中の(b)成分の配合量は、ポリペプチド(酵素たんぱく質)としての配合量である。
水:イオン交換水
【0057】
<評価方法>
(1)起泡性の評価
表1の起泡性組成物を、トリガー式スプレー容器(キュキュットクリア泡スプレー、花王(株)製)に充填し、200mLメスシリンダー(内径40mm)内に3~10回スプレーした。トリガー式スプレー容器は、特開2017-214464号公報の図1記載のスプレー容器に相当する。スプレー後の200mLメスシリンダー質量を、4桁天秤を用いて測定し、スプレー前のメスシリンダーの質量との差を、泡吐出量(g)とした。吐出直後のメスシリンダー内の泡の容量(mL)を目視で読み取った。泡吐出量(g)を(A)とし、吐出直後の泡の容量(mL)を(B)として、以下の式で泡比容を算出した。泡比容が大きいほど、起泡性に優れる起泡性組成物である。
泡比容(mL/g)=(B)/(A)
【0058】
(2)泡持続性の評価
表1の起泡性組成物を、トリガー式スプレー容器(キュキュットクリア泡スプレー、花王(株)製)に充填し、200mLメスシリンダー(内径40mm)内に3~10回スプレーした。吐出直後及び吐出3分後のメスシリンダー内の泡の容量(mL)を目視で読み取った。吐出直後の泡の容量(mL)を(X)、吐出3分後の泡の容量(mL)を(Y)として、以下の式で泡の泡保持量を算出した。泡保持量の値が1に近いほど、泡持続性に優れる起泡性組成物である。
泡保持量 =(Y)/(X)
【0059】
【表1】