(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154209
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】昇温装置、昇温プログラム及び昇温方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/633 20140101AFI20221005BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20221005BHJP
H01M 10/6571 20140101ALI20221005BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20221005BHJP
H02J 7/04 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
H01M10/633
H01M10/615
H01M10/6571
H01M10/625
H02J7/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057126
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】大貫 泰道
【テーマコード(参考)】
5G503
5H031
【Fターム(参考)】
5G503AA07
5G503BA01
5G503BB01
5G503CB11
5G503DA08
5G503GA01
5H031AA09
5H031CC09
5H031KK03
(57)【要約】
【課題】回路で発生する損失を低減させること。
【解決手段】昇温装置は、第一コンデンサ、第二コンデンサ、第一スイッチ素子、第二スイッチ素子及び第三スイッチ素子を備える交流発生回路について、第一スイッチ素子、第二スイッチ素子及び第三スイッチ素子が非通電状態となっている初期状態から第一スイッチ素子のデューティ比及び第二スイッチ素子のデューティ比と第三スイッチ素子のデューティ比との一方のデューティ比を0パーセントから増加させ、初期状態から第一スイッチ素子のデューティ比及び第二スイッチ素子のデューティ比と第三スイッチ素子のデューティ比との一方のデューティ比を増加させた分だけ第一スイッチ素子のデューティ比及び第二スイッチ素子のデューティ比と第三スイッチ素子のデューティ比との他方のデューティ比を100パーセントから減少させるデューティ比制御処理を実行するスイッチ素子制御部を備える。
【選択図】
図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端子が蓄電体の端子に接続されている第一コンデンサと、前記第一コンデンサの他方の端子及び前記蓄電体の端子に接続されている第一スイッチ素子と、一方の端子が前記蓄電体の端子に接続されている第二コンデンサと、前記蓄電体の端子及び前記第二コンデンサの他方の端子に接続されている第二スイッチ素子と、前記第一コンデンサの他方の端子及び前記第二コンデンサの他方の端子に接続されている第三スイッチ素子と、を備える交流発生回路について、前記第一スイッチ素子、前記第二スイッチ素子及び前記第三スイッチ素子が非通電状態となっている初期状態から前記第一スイッチ素子のデューティ比及び前記第二スイッチ素子のデューティ比と前記第三スイッチ素子のデューティ比との一方のデューティ比を0パーセントから増加させ、前記初期状態から前記第一スイッチ素子のデューティ比及び前記第二スイッチ素子のデューティ比と前記第三スイッチ素子のデューティ比との一方のデューティ比を増加させた分だけ前記第一スイッチ素子のデューティ比及び前記第二スイッチ素子のデューティ比と前記第三スイッチ素子のデューティ比との他方のデューティ比を100パーセントから減少させるデューティ比制御処理を実行するスイッチ素子制御部を備える昇温装置。
【請求項2】
前記スイッチ素子制御部は、前記第一スイッチ素子、前記第二スイッチ素子及び前記第三スイッチ素子の少なくとも一つが寄生ダイオードを有する前記交流発生回路について、前記デューティ比制御処理を実行する、
請求項1に記載の昇温装置。
【請求項3】
前記スイッチ素子制御部は、前記第一スイッチ素子及び前記第二スイッチ素子が通電状態であり、前記第三スイッチ素子が非通電状態である状態と、前記第一スイッチ素子及び前記第二スイッチ素子が非通電状態であり、前記第三スイッチ素子が通電状態である状態との間に設けるデッドタイムの長さを所定の値よりも短いものとし、所定の閾値を超える電流の発生を回避可能な長さとする、
請求項2に記載の昇温装置。
【請求項4】
前記スイッチ素子制御部は、前記第一スイッチ素子、前記第二スイッチ素子及び前記第三スイッチ素子の少なくとも一つに還流ダイオードが接続されている前記交流発生回路について、前記デューティ比制御処理を実行する、
請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の昇温装置。
【請求項5】
前記スイッチ素子制御部は、前記第一スイッチ素子及び前記第二スイッチ素子が通電状態であり、前記第三スイッチ素子が非通電状態である状態と、前記第一スイッチ素子及び前記第二スイッチ素子が非通電状態であり、前記第三スイッチ素子が通電状態である状態との間に設けるデッドタイムの長さを所定の値よりも短いものとし、所定の閾値を超える電流の発生を回避可能な長さとする、
請求項4に記載の昇温装置。
【請求項6】
前記スイッチ素子制御部は、前記第一スイッチ素子、前記第二スイッチ素子及び前記第三スイッチ素子の少なくとも一つが絶縁ゲートバイポーラトランジスタ又は金属酸化膜半導体電界効果トランジスタである前記交流発生回路について、前記デューティ比制御処理を実行する、
請求項1から請求項5のいずれか一つに記載の昇温装置。
【請求項7】
一方の端子が蓄電体の端子に接続されている第一コンデンサと、前記第一コンデンサの他方の端子及び前記蓄電体の端子に接続されている第一スイッチ素子と、一方の端子が前記蓄電体の端子に接続されている第二コンデンサと、前記蓄電体の端子及び前記第二コンデンサの他方の端子に接続されている第二スイッチ素子と、前記第一コンデンサの他方の端子及び前記第二コンデンサの他方の端子に接続されている第三スイッチ素子と、を備える交流発生回路について、前記第一スイッチ素子、前記第二スイッチ素子及び前記第三スイッチ素子が非通電状態となっている初期状態から前記第一スイッチ素子のデューティ比及び前記第二スイッチ素子のデューティ比と前記第三スイッチ素子のデューティ比との一方のデューティ比を0パーセントから増加させ、前記初期状態から前記第一スイッチ素子のデューティ比及び前記第二スイッチ素子のデューティ比と前記第三スイッチ素子のデューティ比との一方のデューティ比を増加させた分だけ前記第一スイッチ素子のデューティ比及び前記第二スイッチ素子のデューティ比と前記第三スイッチ素子のデューティ比との他方のデューティ比を100パーセントから減少させるデューティ比制御処理を実行するスイッチ素子制御機能をコンピュータに実現させる昇温プログラム。
【請求項8】
一方の端子が蓄電体の端子に接続されている第一コンデンサと、前記第一コンデンサの他方の端子及び前記蓄電体の端子に接続されている第一スイッチ素子と、一方の端子が前記蓄電体の端子に接続されている第二コンデンサと、前記蓄電体の端子及び前記第二コンデンサの他方の端子に接続されている第二スイッチ素子と、前記第一コンデンサの他方の端子及び前記第二コンデンサの他方の端子に接続されている第三スイッチ素子と、を備える交流発生回路について、前記第一スイッチ素子、前記第二スイッチ素子及び前記第三スイッチ素子が非通電状態となっている初期状態から前記第一スイッチ素子のデューティ比及び前記第二スイッチ素子のデューティ比と前記第三スイッチ素子のデューティ比との一方のデューティ比を0パーセントから増加させ、前記初期状態から前記第一スイッチ素子のデューティ比及び前記第二スイッチ素子のデューティ比と前記第三スイッチ素子のデューティ比との一方のデューティ比を増加させた分だけ前記第一スイッチ素子のデューティ比及び前記第二スイッチ素子のデューティ比と前記第三スイッチ素子のデューティ比との他方のデューティ比を100パーセントから減少させるデューティ比制御処理を実行する昇温方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇温装置、昇温プログラム及び昇温方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から二次電池の劣化が抑制され易い好適な温度まで二次電池を昇温させる技術が利用されている。このような技術の一例として、例えば、特許文献1に開示されている充放電装置が挙げられる。
【0003】
当該充放電装置は、電力貯蔵装置の充放電を制御するものであり、加温判断部と、加温制御部とを備える。加温判断部は、電力貯蔵装置の起動時に電力貯蔵装置の温度を取得し、温度に基づいて電力貯蔵装置を加温するか否かを判断する。加温制御部は、加温判断部が電力貯蔵装置を加温すると判断した場合に、電力貯蔵装置の温度および充電レベルに対応する電力貯蔵装置の内部抵抗の抵抗値の周波数特性を求め、周波数特性に基づいて決定した充放電周期で電力貯蔵装置の充電と放電を交互に繰り返す制御を行うことにより電力貯蔵装置の加温を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した充放電装置は、スイッチング素子の制御の方法によっては、回路で発生する損失が大きくなってしまうことがある。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、回路で発生する損失を低減させることができる昇温装置、昇温プログラム及び昇温方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る昇温装置、昇温プログラム及び昇温方法は、以下の構成を採用した。
【0008】
(1):この発明の一態様に係る昇温装置は、一方の端子が蓄電体の端子に接続されている第一コンデンサと、前記第一コンデンサの他方の端子及び前記蓄電体の端子に接続されている第一スイッチ素子と、一方の端子が前記蓄電体の端子に接続されている第二コンデンサと、前記蓄電体の端子及び前記第二コンデンサの他方の端子に接続されている第二スイッチ素子と、前記第一コンデンサの他方の端子及び前記第二コンデンサの他方の端子に接続されている第三スイッチ素子と、を備える交流発生回路について、前記第一スイッチ素子、前記第二スイッチ素子及び前記第三スイッチ素子が非通電状態となっている初期状態から前記第一スイッチ素子のデューティ比及び前記第二スイッチ素子のデューティ比と前記第三スイッチ素子のデューティ比との一方のデューティ比を0パーセントから増加させ、前記初期状態から前記第一スイッチ素子のデューティ比及び前記第二スイッチ素子のデューティ比と前記第三スイッチ素子のデューティ比との一方のデューティ比を増加させた分だけ前記第一スイッチ素子のデューティ比及び前記第二スイッチ素子のデューティ比と前記第三スイッチ素子のデューティ比との他方のデューティ比を100パーセントから減少させるデューティ比制御処理を実行するスイッチ素子制御部を備える昇温装置である。
【0009】
(2):上記(1)の態様において、前記スイッチ素子制御部は、前記第一スイッチ素子、前記第二スイッチ素子及び前記第三スイッチ素子の少なくとも一つが寄生ダイオードを有する前記交流発生回路について、前記デューティ比制御処理を実行するものである。
【0010】
(3):上記(2)の態様において、前記スイッチ素子制御部は、前記第一スイッチ素子及び前記第二スイッチ素子が通電状態であり、前記第三スイッチ素子が非通電状態である状態と、前記第一スイッチ素子及び前記第二スイッチ素子が非通電状態であり、前記第三スイッチ素子が通電状態である状態との間に設けるデッドタイムの長さを所定の値より短いものとし、所定の閾値を超える電流の発生を回避可能な長さとするものである。
【0011】
(4):上記(1)から(3)のいずれか一つに記載の態様において、前記スイッチ素子制御部は、前記第一スイッチ素子、前記第二スイッチ素子及び前記第三スイッチ素子の少なくとも一つに還流ダイオードが接続されている前記交流発生回路について、前記デューティ比制御処理を実行するものである。
【0012】
(5):上記(4)の態様において、前記スイッチ素子制御部は、前記第一スイッチ素子及び前記第二スイッチ素子が通電状態であり、前記第三スイッチ素子が非通電状態である状態と、前記第一スイッチ素子及び前記第二スイッチ素子が非通電状態であり、前記第三スイッチ素子が通電状態である状態との間に設けるデッドタイムの長さを所定の値よりも短いものとし、所定の閾値を超える電流の発生を回避可能な長さとするものである。
【0013】
(6):上記(1)から(5)のいずれか一つに記載の態様において、前記スイッチ素子制御部は、前記第一スイッチ素子、前記第二スイッチ素子及び前記第三スイッチ素子の少なくとも一つが絶縁ゲートバイポーラトランジスタ又は金属酸化膜半導体電界効果トランジスタである前記交流発生回路について、前記デューティ比制御処理を実行するものである。
【0014】
(7):この発明の一態様に係る昇温プログラムは、一方の端子が蓄電体の端子に接続されている第一コンデンサと、前記第一コンデンサの他方の端子及び前記蓄電体の端子に接続されている第一スイッチ素子と、一方の端子が前記蓄電体の端子に接続されている第二コンデンサと、前記蓄電体の端子及び前記第二コンデンサの他方の端子に接続されている第二スイッチ素子と、前記第一コンデンサの他方の端子及び前記第二コンデンサの他方の端子に接続されている第三スイッチ素子と、を備える交流発生回路について、前記第一スイッチ素子、前記第二スイッチ素子及び前記第三スイッチ素子が非通電状態となっている初期状態から前記第一スイッチ素子のデューティ比及び前記第二スイッチ素子のデューティ比と前記第三スイッチ素子のデューティ比との一方のデューティ比を0パーセントから増加させ、前記初期状態から前記第一スイッチ素子のデューティ比及び前記第二スイッチ素子のデューティ比と前記第三スイッチ素子のデューティ比との一方のデューティ比を増加させた分だけ前記第一スイッチ素子のデューティ比及び前記第二スイッチ素子のデューティ比と前記第三スイッチ素子のデューティ比との他方のデューティ比を100パーセントから減少させるデューティ比制御処理を実行するスイッチ素子制御機能をコンピュータに実現させる昇温プログラムである。
【0015】
(8):この発明の一態様に係る昇温方法は、一方の端子が蓄電体の端子に接続されている第一コンデンサと、前記第一コンデンサの他方の端子及び前記蓄電体の端子に接続されている第一スイッチ素子と、一方の端子が前記蓄電体の端子に接続されている第二コンデンサと、前記蓄電体の端子及び前記第二コンデンサの他方の端子に接続されている第二スイッチ素子と、前記第一コンデンサの他方の端子及び前記第二コンデンサの他方の端子に接続されている第三スイッチ素子と、を備える交流発生回路について、前記第一スイッチ素子、前記第二スイッチ素子及び前記第三スイッチ素子が非通電状態となっている初期状態から前記第一スイッチ素子のデューティ比及び前記第二スイッチ素子のデューティ比と前記第三スイッチ素子のデューティ比との一方のデューティ比を0パーセントから増加させ、前記初期状態から前記第一スイッチ素子のデューティ比及び前記第二スイッチ素子のデューティ比と前記第三スイッチ素子のデューティ比との一方のデューティ比を増加させた分だけ前記第一スイッチ素子のデューティ比及び前記第二スイッチ素子のデューティ比と前記第三スイッチ素子のデューティ比との他方のデューティ比を100パーセントから減少させるデューティ比制御処理を実行する昇温方法である。
【発明の効果】
【0016】
(1)から(6)によれば、昇温装置は、第一スイッチ素子及び第二スイッチ素子の少なくとも一方が有する寄生ダイオードの逆回復時間の間に第三スイッチ素子に貫通電流が流れないように交流発生回路を制御する。或いは、(1)から(6)によれば、昇温装置は、第一スイッチ素子及び第二スイッチ素子の少なくとも一方に接続されている還流ダイオードの逆回復時間の間に第三スイッチ素子に貫通電流が流れないように交流発生回路を制御する。したがって、昇温装置は、このような貫通電流が流れることにより第三スイッチ素子で発生する損失を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第一実施例及び第二実施例に係る駆動機構の一例を示す図である。
【
図2】第一実施例及び第二実施例に係る昇温装置により制御される交流発生回路の一例を示す図である。
【
図3】第一実施例及び第二実施例に係る交流発生回路に含まれている第一スイッチ素子、第二スイッチ素子及び第三スイッチ素子に供給されるゲート信号と、交流発生回路により蓄電体に供給される交流電流との一例を示す図である。
【
図4】比較例に係る昇温装置により三つのスイッチ素子に供給されるゲート信号と、当該ゲート信号が供給された場合における第三スイッチ素子の二つの端子の電位と、当該ゲート信号が供給された場合に第三スイッチ素子を流れる電流及び第一スイッチ素子を流れる電流と、第三スイッチ素子で発生する損失との一例を示す図である。
【
図5】
図4に示した第一期間において交流発生回路を流れる電流の一例を示す図である。
【
図6】
図4に示した第二期間において交流発生回路を流れる電流の一例を示す図である。
【
図7】
図4に示した第三期間において交流発生回路を流れる電流の一例を示す図である。
【
図8】
図4に示した第四期間において交流発生回路を流れる電流の一例を示す図である。
【
図9】第一スイッチ素子、第二スイッチ素子及び第三スイッチ素子各々のデューティ比の比較例に係る経時的な変化と、当該デューティ比を有するゲート信号が交流発生回路に供給された場合に蓄電体、第一コンデンサ及び第二コンデンサ各々に印加される電圧と、蓄電体に供給される電流と、第一スイッチ素子、第二スイッチ素子及び第三スイッチ素子各々で発生する損失との一例を示す図である。
【
図10】第一実施例に係る昇温装置により三つのスイッチ素子に供給されるゲート信号と、当該ゲート信号が供給された場合における第三スイッチ素子の二つの端子の電位と、当該ゲート信号が供給された場合に第三スイッチ素子を流れる電流及び第一スイッチ素子を流れる電流と、第三スイッチ素子で発生する損失との一例を示す図である。
【
図11】
図10に示した第一期間において交流発生回路を流れる電流の一例を示す図である。
【
図12】
図10に示した第二期間において交流発生回路を流れる電流の一例を示す図である。
【
図13】
図10に示した第三期間において交流発生回路を流れる電流の一例を示す図である。
【
図14】
図10に示した第四期間において交流発生回路を流れる電流の一例を示す図である。
【
図15】第一スイッチ素子、第二スイッチ素子及び第三スイッチ素子各々のデューティ比の第一実施例に係る経時的な変化と、当該デューティ比を有するゲート信号が交流発生回路に供給された場合に蓄電体、第一コンデンサ及び第二コンデンサ各々に印加される電圧と、蓄電体に供給される電流と、第一スイッチ素子、第二スイッチ素子及び第三スイッチ素子各々で発生する損失との一例を示す図である。
【
図16】第二実施例に係る昇温装置により三つのスイッチ素子に供給されるゲート信号と、当該ゲート信号が供給された場合における第三スイッチ素子の二つの端子の電位と、当該ゲート信号が供給された場合に第三スイッチ素子を流れる電流及び第一スイッチ素子を流れる電流と、第三スイッチ素子で発生する損失との一例を示す図である。
【
図17】第二実施例に係る昇温装置により三つのスイッチ素子に供給されるゲート信号と、当該ゲート信号が供給された場合における第三スイッチ素子の二つの端子の電位と、当該ゲート信号が供給された場合に第三スイッチ素子を流れる電流と、第一スイッチ素子を流れる電流及び第三スイッチ素子で発生する損失との一例を示す図である。
【
図18】
図16に示した第一期間において交流発生回路を流れる電流の一例を示す図である。
【
図19】
図16に示した第二期間において交流発生回路を流れる電流の一例を示す図である。
【
図20】
図16に示した第三期間において交流発生回路を流れる電流の一例を示す図である。
【
図21】
図16に示した第四期間において交流発生回路を流れる電流の一例を示す図である。
【
図22】
図17に示した第五期間において交流発生回路を流れる電流の一例を示す図である。
【
図23】
図17に示した第六期間において交流発生回路を流れる電流の一例を示す図である。
【
図24】
図17に示した第七期間において交流発生回路を流れる電流の一例を示す図である。
【
図25】第一スイッチ素子、第二スイッチ素子及び第三スイッチ素子各々のデューティ比の第二実施例に係る経時的な変化と、当該デューティ比を有するゲート信号が交流発生回路に供給された場合に蓄電体、第一コンデンサ及び第二コンデンサ各々に印加される電圧と、蓄電体に供給される電流と、第一スイッチ素子、第二スイッチ素子及び第三スイッチ素子各々で発生する損失との一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照し、本発明に係る昇温装置、昇温プログラム及び昇温方法の実施例について説明する。
【0019】
まず、
図1から
図3を参照しながら実施例に係る駆動機構について説明する。
図1は、第一実施例及び第二実施例に係る駆動機構の一例を示す図である。
図1に示した駆動機構1は、二輪、三輪又は四輪の車両等の移動体を駆動する機構である。
図1に示すように、駆動機構1は、蓄電体10と、PDU(Power Drive Unit)20と、回転電機30と、エンジン40と、駆動輪50と、昇温装置60とを備える。
【0020】
蓄電体10は、例えば、二次電池であり、直流電力を発生させてPDU20に供給する。PDU20は、昇圧器と、インバータとを備える。PDU20は、蓄電体10から供給された直流電力を昇圧器により昇圧させる。そして、PDU20は、昇圧器で昇圧した直流電力をインバータにより三相交流電力に変換して回転電機30に供給する。
【0021】
回転電機30は、回転子と、固定子とを備える。回転電機30は、移動体が備える駆動輪50に動力を供給する電動機として機能する。また、回転電機30は、移動体が減速している間に移動体の運動エネルギーを使用して発電する発電機として機能してもよい。エンジン40は、例えば、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンであり、移動体が備える駆動輪50に動力を供給する。
【0022】
昇温装置60は、蓄電体10に交流電流を流すことにより蓄電体10を好適に動作する温度まで昇温させる。
図1に示すように、昇温装置60は、交流発生回路61と、スイッチ素子制御部62とを備える。
【0023】
図2は、第一実施例及び第二実施例に係る昇温装置により制御される交流発生回路の一例を示す図である。
図2に示すように、交流発生回路61は、第一コンデンサC1と、第二コンデンサC2と、第一スイッチ素子S1と、第二スイッチ素子S2と、第三スイッチ素子S3と、第一ダイオードD1と、第二ダイオードD2と、第三ダイオードD3と、第一ゲート信号送信部G1と、第二ゲート信号送信部G2と、第三ゲート信号送信部G3と、を備える。また、第一スイッチ素子S1、第二スイッチ素子S2及び第三スイッチ素子S3は、例えば、N型の金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET:Metal-oxide-semiconductor Field-effect Transistor)である。
【0024】
第一コンデンサC1は、一方の端子が蓄電体10の正極に接続されており、他方の端子が第一スイッチ素子S1のドレイン端子及び第三スイッチ素子S3のソース端子に接続されている。第一スイッチ素子S1は、ドレイン端子が第一コンデンサC1の他方の端子に接続されており、ソース端子が蓄電体10の負極及び第二コンデンサC2の一方の端子に接続されている。第二コンデンサC2は、一方の端子が蓄電体10の負極及び第一スイッチ素子S1のソース端子に接続されており、他方の端子が第二スイッチ素子のソース端子及び第三スイッチ素子S3のドレイン端子に接続されている。また、第一コンデンサC1の静電容量と第二コンデンサC2の静電容量とは等しい。
【0025】
第二スイッチ素子S2は、ドレイン端子が蓄電体10の正極及び第一コンデンサC1の一方の端子に接続されており、ソース端子が第二コンデンサC2の他方の端子及び第三スイッチ素子S3のドレイン端子に接続されている。第三スイッチ素子S3は、ドレイン端子が第二スイッチ素子S2のソース端子及び第二コンデンサC2の他方の端子に接続されており、ソース端子が第一スイッチ素子S1のドレイン端子及び第一コンデンサC1の他方の端子に接続されている。
【0026】
第一ダイオードD1は、第一スイッチ素子S1に接続されている還流ダイオードであり、カソード端子が第一スイッチ素子S1のドレイン端子に接続されており、アノード端子が第一スイッチ素子S1のソース端子に接続されている。第二ダイオードD2は、第二スイッチ素子S2に接続されている還流ダイオードであり、カソード端子が第二スイッチ素子S2のドレイン端子に接続されており、アノード端子が第二スイッチ素子S2のソース端子に接続されている。第三ダイオードD3は、第二スイッチ素子S2に接続されている還流ダイオードであり、カソード端子が第三スイッチ素子S3のドレイン端子に接続されており、アノード端子が第三スイッチ素子S3のソース端子に接続されている。
【0027】
第一ゲート信号送信部G1は、第一スイッチ素子S1のゲート端子に接続されており、第一スイッチ素子S1のゲート端子にハイ又はローの電圧を印加する。第二ゲート信号送信部G2は、第二スイッチ素子S2のゲート端子に接続されており、第二スイッチ素子S2のゲート端子にハイ又はローの電圧を印加する。第三ゲート信号送信部G3は、第三スイッチ素子S3のゲート端子に接続されており、第三スイッチ素子S3のゲート端子にハイ又はローの電圧を印加する。
【0028】
第一スイッチ素子S1、第二スイッチ素子S2及び第三スイッチ素子S3は、いずれもゲート端子にハイの電圧が印加された場合、ソース端子とドレイン端子との間のコンダクタンスが高く、電流を通す通電状態となる。一方、第一スイッチ素子S1、第二スイッチ素子S2及び第三スイッチ素子S3は、いずれもゲート端子にローの電圧が印加された場合、ソース端子とドレイン端子との間のコンダクタンスが低く、電流をほとんど通さない非通電状態となる。
【0029】
したがって、第一スイッチ素子S1のゲート端子及び第二スイッチ素子S2のゲート端子にハイの電圧が印加されており、第三スイッチ素子S3のゲート端子にローの電圧が印加されている場合、第一コンデンサC1と第二コンデンサC2とが並列接続となる。一方、第一スイッチ素子S1のゲート端子及び第二スイッチ素子S2のゲート端子にローの電圧が印加されており、第三スイッチ素子S3のゲート端子にハイの電圧が印加されている場合、第一コンデンサC1と第二コンデンサC2とが直列接続となる。また、第一スイッチ素子S1のゲート端子及び第二スイッチ素子S2のゲート端子にハイの電圧が印加される期間と、第三スイッチ素子S3のゲート端子にハイの電圧が印加される期間との間には、第一スイッチ素子S1、第二スイッチ素子S2及び第三スイッチ素子S3の全てを非通電状態とする期間であるデッドタイムが設けられる。
【0030】
図3は、第一実施例及び第二実施例に係る交流発生回路に含まれている第一スイッチ素子、第二スイッチ素子及び第三スイッチ素子に供給されるゲート信号と、交流発生回路により蓄電体に供給される交流電流との一例を示す図である。
【0031】
図3(a)は、横軸が時間を示しており、縦軸が第三スイッチ素子S3のゲート端子に印加されるハイ又はローの電圧を示している。
図3(b)は、横軸が時間を示しており、縦軸が第一スイッチ素子S1及び第二スイッチ素子S2のゲート端子に印加されるハイ又はローの電圧を示している。
図3(a)に示したゲート信号の周期は、
図3(b)に示したゲート信号の周期と等しい。
図3(c)は、横軸が時間を示しており、縦軸が交流発生回路61により蓄電体10に供給される電流を示している。
【0032】
第一コンデンサC1と第二コンデンサC2とが直列接続となっている場合における交流発生回路61の共振周波数は、蓄電体10が有するインダクタンス成分に依存しており、両者が並列接続となっている場合における交流発生回路61の共振周波数の約2倍の周波数となる。このため、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、第三スイッチ素子S3のゲート端子にハイの電圧が印加される時間と、第一スイッチ素子S1のゲート端子及び第二スイッチ素子S2のゲート端子にハイの電圧が印加される時間との比は、1対2となっている。これにより、交流発生回路61は、
図3(c)に示したような比較的高い精度で共振する交流電流を蓄電体10に供給することができる。なお、
図3(c)は、蓄電体10を充電する方向の電流を正の電流として示している。
【0033】
スイッチ素子制御部62は、後述するデューティ比制御処理を実行する。スイッチ素子制御部62は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のハードウェアプロセッサがソフトウェアとして実現されている制御プログラムを実行することにより実現される。スイッチ素子制御部62の少なくとも一部は、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)等のハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。
【0034】
[比較例]
次に、
図4から
図9を参照しながら比較例に係る昇温装置に含まれるスイッチ素子制御部が交流発生回路61を制御する処理について説明する。
【0035】
図4は、比較例に係る昇温装置により三つのスイッチ素子に供給されるゲート信号と、当該ゲート信号が供給された場合における第三スイッチ素子の二つの端子の電位と、当該ゲート信号が供給された場合に第三スイッチ素子を流れる電流及び第一スイッチ素子を流れる電流と、第三スイッチ素子で発生する損失との一例を示す図である。また、
図4は、第一期間T1、第二期間T2、第三期間T3及び第四期間T4を示している。
【0036】
図4(a)は、第一スイッチ素子S1、第二スイッチ素子S2及び第三スイッチ素子S3のゲート端子に印加されるハイ又はローの電圧の経時的な変化を示している。具体的には、
図4(a)は、第三スイッチ素子S3のゲート端子に印加される電圧の経時的な変化を上段に実線で示しており、第一スイッチ素子S1のゲート端子及び第二スイッチ素子S2のゲート端子に印加される電圧の経時的な変化を下段に実線で示している。比較例に係る昇温装置が備えるスイッチ素子制御部は、
図4(a)に示したゲート信号を第一スイッチ素子S1、第二スイッチ素子S2及び第三スイッチ素子S3のゲート端子に供給する。また、第一スイッチ素子S1、第二スイッチ素子S2及び第三スイッチ素子S3が同時に導通状態となると、短絡電流が生じるため、第一スイッチ素子S1及び第二スイッチ素子S2と第三スイッチ素子S3とは排他的に導通状態としなければならない。スイッチ素子の応答遅れなども考慮して、全てのスイッチ素子に対して非導通状態とする時間幅すなわちデッドタイムを設定する必要があり、
図4(a)では第二期間T2と第三期間T3がデッドタイムに相当する。
【0037】
図4(b)は、三つのスイッチ素子のゲート端子各々に
図4(a)に示した電圧が印加された場合における第三スイッチ素子S3のドレイン端子の電位の経時的な変化を実線で示している。また、
図4(b)は、三つのスイッチ素子のゲート端子各々に
図4(a)に示した電圧が印加された場合における第三スイッチ素子S3のソース端子の電位の経時的な変化を点線で示している。
【0038】
図4(c)は、三つのスイッチ素子のゲート端子各々に
図4(a)に示した電圧が印加された場合に第三スイッチ素子S3のドレイン端子に流れ込む電流の経時的な変化を実線で示している。当該電流は、第三スイッチ素子S3のドレイン端子に流れ込む場合、正の電流となり、第三スイッチ素子S3を流れる電流と第三ダイオードD3を流れる電流との合計の電流となる。また、
図4(c)は、三つのスイッチ素子のゲート端子各々に
図4(a)に示した電圧が印加された場合に第一スイッチ素子S1のソース端子に流れ込む電流の経時的な変化を点線で示している。当該電流は、第一スイッチ素子S1のソース端子に流れ込む場合、正の電流となり、第一スイッチ素子S1を流れる電流と第一ダイオードD1を流れる電流との合計の電流となる。
【0039】
図4(d)は、三つのスイッチ素子のゲート端子各々に
図4(a)に示した電圧が印加された場合に第三スイッチ素子S3に貫通電流が流れることにより発生する損失の経時的な変化を実線で示している。
【0040】
図5は、
図4に示した第一期間において交流発生回路を流れる電流の一例を示す図である。
図4に示した第一期間T1では、第一スイッチ素子S1及び第二スイッチ素子S2が通電状態となり、第三スイッチ素子S3が非通電状態となるため、第一コンデンサC1と第二コンデンサC2とが並列接続となる。したがって、
図5に矢印A51及び矢印A52で示すように電流が流れる。第一コンデンサC1及び第二コンデンサC2は、この電流により充電される。
【0041】
また、
図4に示した第一期間T1の間、第一スイッチ素子S1が通電状態であるため、第三スイッチ素子S3のソース端子の電位は、
図4(b)に点線で示すように、蓄電体10の負極の電位0V(ボルト)に等しくなる。一方、
図4に示した第一期間T1の間、第二コンデンサC2が充電され続け、第二コンデンサC2に印加される電圧が上昇し続けるため、第三スイッチ素子S3のドレイン端子の電位は、
図4(b)に実線で示すように、増加し続ける。
【0042】
また、
図4に示した第一期間T1の間、第三スイッチ素子S3が非通電状態であるため、第三スイッチ素子S3のドレイン端子に流れ込む電流は、
図4(c)に実線で示すように、略0A(アンペア)となる。一方、
図4に示した第一期間T1の間、第一スイッチ素子S1が通電状態であるため、第一スイッチ素子S1のソース端子に流れ込む電流は、
図4(c)に点線で示すように、略一定かつ負の電流となる。
【0043】
また、
図4に示した第一期間T1の間、第三スイッチ素子S3に流れ込む電流が略0Aであるため、第三スイッチ素子S3に貫通電流が流れることにより発生する損失は、
図4(d)に実線で示すように、略0W(ワット)となる。
【0044】
図6は、
図4に示した第二期間において交流発生回路を流れる電流の一例を示す図である。
図4に示した第二期間T2では、第一スイッチ素子S1、第二スイッチ素子S2及び第三スイッチ素子S3のいずれも非通電状態となる。しかし、第三スイッチ素子S3に第三ダイオードD3が接続されているため、
図6に矢印A60で示すように第一コンデンサC1、第三ダイオードD3及び第二コンデンサC2に電流が流れる。第一コンデンサC1及び第二コンデンサC2は、この電流により充電される。第二期間T2は、第一スイッチ素子S1及び第二スイッチ素子S2が非通電状態となった時点から第二コンデンサC2が満充電されるまでの期間である。
【0045】
また、
図4に示した第二期間T2の間、第三ダイオードD3に電流が流れているため、第三スイッチ素子S3のソース端子の電位は、
図4(b)に点線で示すように、第三スイッチ素子S3のドレイン端子の電位に等しい電位まで急激に上昇する。一方、
図4に示した第二期間T2の間も第二コンデンサC2が充電されるため、第三スイッチ素子S3のドレイン端子の電位は、
図4(b)に実線で示すように、第二コンデンサC2が満充電された場合の電位まで上昇する。
【0046】
また、
図4に示した第二期間T2の間、第三スイッチ素子S3のドレイン端子から電流が流れ出しているため、第三スイッチ素子S3のドレイン端子に流れ込む電流は、
図4(c)に実線で示すように、負の電流となる。一方、
図4に示した第二期間T2の間、第一スイッチ素子S1には電流が流れないため、第一スイッチ素子S1のソース端子に流れ込む電流は、
図4(c)に点線で示すように、略0Aとなる。
【0047】
また、
図4に示した第二期間T2の間、第三スイッチ素子S3に流れ込む電流が略0Aであるため、第三スイッチ素子S3に貫通電流が流れることにより発生する損失は、
図4(d)に実線で示すように、略0Wとなる。
【0048】
図7は、
図4に示した第三期間において交流発生回路を流れる電流の一例を示す図である。
図4に示した第三期間T3では、第一スイッチ素子S1、第二スイッチ素子S2及び第三スイッチ素子S3のいずれも非通電状態となる。しかし、第一スイッチ素子S1に第一ダイオードD1が接続されており、第二スイッチ素子S2に第二ダイオードD2が接続されている。また、第三期間T3が開始した時点では、第三ダイオードD3は直前まで順方向に電流が流れていたため逆回復動作となり、逆回復時間の間は第二コンデンサC2、第三ダイオードD3、第一コンデンサC1の順で電流が流れ、逆回復時間経過後は第三ダイオードD3は非通電状態となる。また、第一コンデンサC1及び第二コンデンサC2が満充電となっている。このため、第一コンデンサC1が放電することにより、
図7に矢印A71で示すように、第一ダイオードD1及び第一コンデンサC1に電流が流れる。また、同様に、第二コンデンサC2が放電することにより、
図7に矢印A72で示すように、第二コンデンサC2及び第二ダイオードD2に電流が流れる。
【0049】
また、
図4に示した第三期間T3の間、第一スイッチ素子S1に電流が流れていないため、第三スイッチ素子S3のソース端子の電位は、
図4(b)に点線で示すように、蓄電体10の負極の電位0Vまで急激に低下する。一方、
図4に示した第三期間T3の間、第二コンデンサC2が放電しているため、第三スイッチ素子S3のドレイン端子の電位は、
図4(b)に実線で示すように、減少し続ける。
【0050】
また、
図4に示した第三期間T3の間、第三スイッチ素子S3に電流が流れていないため、第三スイッチ素子S3のドレイン端子に流れ込む電流は、
図4(c)に実線で示すように、略0Aとなる。一方、
図4に示した第三期間T3の間、第一スイッチ素子S1に電流が流れていないため、第一スイッチ素子S1のソース端子に流れ込む電流は、略0Aとなる。
【0051】
また、
図4に示した第三期間T3の間、第三スイッチ素子S3に流れ込む電流が略0Aであるため、第三スイッチ素子S3に貫通電流が流れることにより発生する損失は、
図4(d)に実線で示すように、0Wとなる。
【0052】
図8は、
図4に示した第四期間において交流発生回路を流れる電流の一例を示す図である。
図4に示した第四期間T4では、第一スイッチ素子S1及び第二スイッチ素子S2が非通電状態であり、第三スイッチ素子S3が通電状態となる。第四期間T4が開始した時点では、直前まで第一ダイオードD1及び第二ダイオードD2に順方向の電流が流れていて、第三スイッチ素子S3が非通電状態から通電状態に変化することで、第一ダイオードD1及び第二ダイオードD2に逆方向の電圧が印加され、逆回復電流が発生する。つまり、
図7に矢印A71で示した電流及び矢印A72で示した電流が流れている時に、第三スイッチ素子S3が通電状態となる。したがって、
図8に矢印A80で示すように、第二ダイオードD2、第三スイッチ素子S3及び第一ダイオードD1に電流が流れる。
【0053】
また、
図4に示した第四期間T4の間、第三スイッチ素子S3のソース端子の電位は、
図4(b)に点線で示すように、第三スイッチ素子S3のドレイン端子の電位と共に減少しつつ、時々急激に減少して第三スイッチ素子S3のドレイン端子の電位と等しい電位に戻る挙動を示す。一方、
図4に示した第四期間T4の間、第三スイッチ素子S3のドレイン端子の電位は、
図4(b)に実線で示すように、蓄電体10の負極の電位0Vに等しい電位となるまで減少し続ける。
【0054】
また、
図4に示した第四期間T4の間、第三スイッチ素子S3のドレイン端子に電流が流れ込んでいるため、第三スイッチ素子S3のドレイン端子に流れ込む電流は、
図4(c)に実線で示すように、正の電流となる。一方、
図4に示した第四期間T4の間、第一スイッチ素子S1には電流が流れないため、第一スイッチ素子S1のソース端子に流れ込む電流は、第三スイッチ素子S3で損失が発生している時を除き、略0Aとなる。
【0055】
また、
図4に示した第四期間T4が開始した時点で、第三スイッチ素子S3に貫通電流が流れることにより発生する損失は、
図4(d)に実線で示すように、第一ダイオードD1及び第二ダイオードD2の逆回復時間の間、0Wを超える値となる。つまり、第一スイッチ素子S1及び第二スイッチ素子S2が通電状態で、第三スイッチ素子S3が非通電状態で、電池を放電する方向に電流が流れ、第一スイッチ素子S1及び第二スイッチ素子S2が非通電状態に転じ、第三スイッチ素子S3も非通電状態であるデッドタイムの期間中に、第三ダイオードD3を経由して継続して電池を放電する方向に電流が流れていたものが、電池の有するインダクタンスと第一コンデンサC1及び第二コンデンサC2との共振作用により、電池を充電する方向に電流が転じ、第三ダイオードD3を経由せずに第一ダイオードD1及び第二ダイオードD2に順方向の電流が流れ始めた後に、第三スイッチ素子S3を通電状態にすると、第一ダイオードD1及び第二ダイオードD2の逆回復時間の間、第二ダイオードD2、第三スイッチ素子S3及び第一ダイオードD1に貫通電流が流れ、大きな損失が発生する。すなわち、デッドタイムの長さが所定の値よりも短いものとすれば、大きな損失の発生は防止できる。
【0056】
図9は、第一スイッチ素子、第二スイッチ素子及び第三スイッチ素子各々のデューティ比の経時的な変化と、当該デューティ比を有するゲート信号が交流発生回路に供給された場合に蓄電体、第一コンデンサ及び第二コンデンサ各々に印加される電圧と、蓄電体に供給される電流と、第一スイッチ素子、第二スイッチ素子及び第三スイッチ素子各々で発生する損失との一例を示す図である。
【0057】
図9(a)は、第一スイッチ素子S1、第二スイッチ素子S2及び第三スイッチ素子S3のデューティ比の経時的な変化を示している。具体的には、
図9(a)は、第三スイッチ素子S3のデューティ比の経時的な変化を実線で示している。また、
図9(a)は、第一スイッチ素子S1及び第二スイッチ素子S2のデューティ比の経時的な変化を点線で示している。
【0058】
比較例に係るスイッチ素子制御部は、
図9(a)に示すように、第三スイッチ素子S3のデューティ比を0%から33%まで一定の速度で増加させる。また、比較例に係るスイッチ素子制御部は、
図9(a)に示すように、第一スイッチ素子S1及び第二スイッチ素子S2のデューティ比を0%から66%まで第三スイッチ素子S3と同じ速度で増加させる。この比較例において、
図9(a)に一点鎖線で示したように、デッドタイムは100%から1%まで時間経過に伴い減少する。
【0059】
図9(b)は、
図9(a)に示したデューティ比を有するゲート信号が交流発生回路に供給された場合に蓄電体10、第一コンデンサC1又は第二コンデンサC2に印加される電圧の経時的な変化を示している。具体的には、
図9(b)は、
図9(a)に示したデューティ比を有するゲート信号が交流発生回路61に供給された場合に蓄電体10に印加される電圧の経時的な変化を実線で示している。また、
図9(b)は、
図9(a)に示したデューティ比を有するゲート信号が交流発生回路61に供給された場合に第一コンデンサC1又は第二コンデンサC2に印加される電圧の経時的な変化を点線で示している。
【0060】
蓄電体10に印加される電圧の振幅は、
図9(b)に実線で示すように、第一スイッチ素子S1及び第二スイッチ素子S2のデューティ比と、第三スイッチ素子S3のデューティ比との少なくとも一方の増加に伴って増加する。また、第一コンデンサCに印加される電圧の振幅は、
図9(b)に点線で示すように、第一スイッチ素子S1及び第二スイッチ素子S2のデューティ比と、第三スイッチ素子S3のデューティ比との少なくとも一方の増加に伴って増加する。同様に、第二コンデンサC2に印加される電圧の振幅は、
図9(b)に点線で示すように、第一スイッチ素子S1及び第二スイッチ素子S2のデューティ比と、第三スイッチ素子S3のデューティ比との少なくとも一方の増加に伴って増加する。
【0061】
図9(c)は、
図9(a)に示したデューティ比を有するゲート信号が交流発生回路61に供給された場合に蓄電体10に供給される電流を示している。蓄電体10に供給される電流は、
図9(c)に示すように、第一スイッチ素子S1及び第二スイッチ素子S2のデューティ比と、第三スイッチ素子S3のデューティ比との少なくとも一方の増加に伴って増加する。
【0062】
図9(d)は、
図9(a)に示したデューティ比を有するゲート信号が交流発生回路61に供給された場合に第一スイッチ素子S1、第二スイッチ素子S2又は第三スイッチ素子S3で発生する損失を示している。具体的には、
図9(d)は、第一スイッチ素子S1又は第二スイッチ素子S2で発生する損失を実線で示している。また、
図9(d)は、第三スイッチ素子S3で発生する損失を点線で示している。
【0063】
図9(d)に示すように、第一スイッチ素子S1で発生する損失、第二スイッチ素子S2で発生する損失及び第三スイッチ素子S3で発生する損失は、いずれも蓄電体10を流れる電流の振幅が略一定になってから所定の時間が経過する前に極大となってしまっている。また、デッドタイムの長さが所定の値よりも短い領域では、第一スイッチ素子S1で発生する損失、第二スイッチ素子S2で発生する損失及び第三スイッチ素子S3で発生する損失は、小さい値で安定する。
【0064】
[第一実施例]
次に、
図10から
図15を参照しながら第一実施例に係る昇温装置60に含まれるスイッチ素子制御部62が交流発生回路61を制御する処理について説明する。
【0065】
図10は、第一実施例に係る昇温装置により三つのスイッチ素子に供給されるゲート信号と、当該ゲート信号が供給された場合における第三スイッチ素子の二つの端子の電位と、当該ゲート信号が供給された場合に第三スイッチ素子を流れる電流及び第一スイッチ素子を流れる電流と、第三スイッチ素子で発生する損失との一例を示す図である。また、
図10は、第一期間T11、第二期間T12、第三期間T13及び第四期間T14を示している。
【0066】
図10(a)は、第一スイッチ素子S1、第二スイッチ素子S2及び第三スイッチ素子S3のゲート端子に印加されるハイ又はローの電圧の経時的な変化を示している。具体的には、
図10(a)は、第三スイッチ素子S3のゲート端子に印加される電圧の経時的な変化を上段に実線で示しており、第一スイッチ素子S1のゲート端子及び第二スイッチ素子S2のゲート端子に印加される電圧の経時的な変化を下段に実線で示している。第一実施例に係るスイッチ素子制御部62は、
図10(a)に示したゲート信号を第一スイッチ素子S1、第二スイッチ素子S2及び第三スイッチ素子S3のゲート端子に供給する。
【0067】
図10(b)は、三つのスイッチ素子のゲート端子各々に
図10(a)に示した電圧が印加された場合における第三スイッチ素子S3のドレイン端子の電位の経時的な変化を実線で示している。また、
図10(b)は、三つのスイッチ素子のゲート端子各々に
図10(a)に示した電圧が印加された場合における第三スイッチ素子S3のソース端子の電位の経時的な変化を点線で示している。
【0068】
図10(c)は、三つのスイッチ素子のゲート端子各々に
図10(a)に示した電圧が印加された場合に第三スイッチ素子S3のドレイン端子に流れ込む電流の経時的な変化を実線で示している。当該電流は、第三スイッチ素子S3のドレイン端子に流れ込む場合、正の電流となり、第三スイッチ素子S3を流れる電流と第三ダイオードD3を流れる電流との合計の電流となる。また、
図10(c)は、三つのスイッチ素子のゲート端子各々に
図10(a)に示した電圧が印加された場合に第一スイッチ素子S1のソース端子に流れ込む電流の経時的な変化を点線で示している。当該電流は、第一スイッチ素子S1のソース端子に流れ込む場合、正の電流となり、第一スイッチ素子S1を流れる電流と第一ダイオードD1を流れる電流との合計の電流となる。
【0069】
図10(d)は、三つのスイッチ素子のゲート端子各々に
図10(a)に示した電圧が印加された場合に第三スイッチ素子S3に貫通電流が流れることにより発生する損失の経時的な変化を実線で示している。
【0070】
図11は、
図10に示した第一期間において交流発生回路を流れる電流の一例を示す図である。
図10に示した第一期間T11では、第一スイッチ素子S1及び第二スイッチ素子S2が通電状態となり、第三スイッチ素子S3が非通電状態となるため、第一コンデンサC1と第二コンデンサC2とが並列接続となる。したがって、
図11に矢印A111及び矢印A112で示すように電流が流れる。第一コンデンサC1及び第二コンデンサC2は、この電流により充電される。
【0071】
また、
図10に示した第一期間T11の間、第一スイッチ素子S1が通電状態であるため、第三スイッチ素子S3のソース端子の電位は、
図10(b)に点線で示すように、蓄電体10の負極の電位0Vに等しくなる。一方、
図10に示した第一期間T11の間、第二コンデンサC2が充電され続け、第二コンデンサC2に印加される電圧が上昇し続けるため、第三スイッチ素子S3のドレイン端子の電位は、
図10(b)に実線で示すように、増加し続ける。
【0072】
また、
図10に示した第一期間T11の間、第三スイッチ素子S3が非通電状態であるため、第三スイッチ素子S3のドレイン端子に流れ込む電流は、
図10(c)に実線で示すように、略0Aとなる。一方、
図10に示した第一期間T11の間、第一スイッチ素子S1が通電状態であるため、第一スイッチ素子S1のソース端子に流れ込む電流は、
図10(c)に点線で示すように、略一定かつ負の電流となる。
【0073】
また、
図10に示した第一期間T11の間、第三スイッチ素子S3に流れ込む電流が略0Aであるため、第三スイッチ素子S3に貫通電流が流れることにより発生する損失は、
図10(d)に実線で示すように、0W(ワット)となる。
【0074】
図12は、
図10に示した第二期間において交流発生回路を流れる電流の一例を示す図である。
図10に示した第二期間T12では、第一スイッチ素子S1、第二スイッチ素子S2及び第三スイッチ素子S3のいずれも非通電状態となる。しかし、第三スイッチ素子S3に第三ダイオードD3が接続されているため、
図12に矢印A120で示すように第一コンデンサC1、第三ダイオードD3及び第二コンデンサC2に電流が流れる。第一コンデンサC1及び第二コンデンサC2は、この電流により充電される。
【0075】
また、
図10に示した第二期間T12は、第一スイッチ素子S1及び第二スイッチ素子S2が通電状態であり、第三スイッチ素子S3が非通電状態である状態と、第一スイッチ素子S1及び第二スイッチ素子S2が非通電状態であり、第三スイッチ素子S3が通電状態である状態との間に設けるデッドタイムである。また、第一実施例に係るスイッチ素子制御部62は、第一スイッチ素子S1及び第二スイッチ素子S2が通電状態から非通電状態へ変化する遷移時間と、第三スイッチ素子S3が非通電状態から通電状態へ変化する遷移時間を考慮してデッドタイムの最短時間を定め、所定の閾値を超える電流の発生を回避可能な長さになるよう第二期間T12の長さを調整する。
【0076】
また、
図10に示した第二期間T12の間、第三ダイオードD3に電流が流れているため、第三スイッチ素子S3のソース端子の電位は、
図10(b)に点線で示すように、第三スイッチ素子S3のドレイン端子の電位に等しい電位まで急激に上昇し始める。一方、
図10に示した第二期間T12の間も第二コンデンサC2が充電されるため、第三スイッチ素子S3のドレイン端子の電位は、
図10(b)に実線で示すように、第二コンデンサC2が満充電された場合の電位まで上昇する。
【0077】
また、
図10に示した第二期間T12の間、第三スイッチ素子S3のドレイン端子から電流が流れ出しているため、第三スイッチ素子S3のドレイン端子に流れ込む電流は、
図10(c)に実線で示すように、増加し始める。一方、
図10に示した第二期間T12の間、第一スイッチ素子S1のソース端子に流れ込む電流は、
図10(c)に点線で示すように、減少し始める。
【0078】
また、
図10に示した第二期間T12の間、第三スイッチ素子S3に流れ込む電流が略0Aであるため、第三スイッチ素子S3に貫通電流が流れることにより発生する損失は、
図10(d)に実線で示すように、0Wとなる。
【0079】
図13は、
図10に示した第三期間において交流発生回路を流れる電流の一例を示す図である。
図10に示した第三期間T13では、第一スイッチ素子S1及び第二スイッチ素子S2が
図10に示した第二期間T12に引き続き非通電状態となり、第三スイッチ素子S3が通電状態に切り替わる。このため、
図13に矢印A130で示すように、
図10に示した第二期間T12で第三ダイオードD3に流れていた電流が第三スイッチ素子S3を流れるようになる。第一コンデンサC1及び第二コンデンサC2は、この電流により充電される。
【0080】
また、
図10に示した第三期間T13の間、第三スイッチ素子S3が通電状態となっているため、第三スイッチ素子S3のソース端子の電位は、
図10(b)に点線で示すように、第二コンデンサC2の他方の端子の電位、すなわち第三スイッチ素子S3のドレイン端子の電位まで急激に上昇する。一方、
図10に示した第三期間T13の間、第二コンデンサC2が充電されて続けているため、第三スイッチ素子S3のドレイン端子の電位は、
図10(b)に実線で示すように、第一コンデンサC1及び第二コンデンサC2が満充電されるまで増加し続ける。
【0081】
また、
図10に示した第三期間T13の間、第三スイッチ素子S3のドレイン端子に流れ込む電流は、
図10(c)に実線で示すように、正の電流となる。一方、
図10に示した第三期間T13の間、第一スイッチ素子S1のソース端子に流れ込む電流は、
図10(c)に点線で示すように、負の電流となる。
【0082】
また、
図10に示した第三期間T13の間、第三スイッチ素子S3に貫通電流が流れることにより発生する損失は、
図10(d)に実線で示すように、0Wとなる。
【0083】
図14は、
図10に示した第四期間において交流発生回路を流れる電流の一例を示す図である。
図10に示した第四期間T14では、
図10に示した第三期間T13と同様に、第一スイッチ素子S1及び第二スイッチ素子S2が非通電状態となっており、第三スイッチ素子S3が通電状態となっている。また、第一コンデンサC1及び第二コンデンサC2は、
図10に示した第三期間T13が終了した時点で満充電となっている。したがって、
図14に矢印A140で示すように、第二コンデンサC2、第三スイッチ素子S3及び第一コンデンサC1に電流が流れる。また、この電流は、第一コンデンサC1及び第二コンデンサC2が放電することにより流れる。
【0084】
また、
図10に示した第四期間T14の間、第三スイッチ素子S3が通電状態となるため、第三スイッチ素子S3のソース端子の電位は、
図10(b)に点線で示すように、第二コンデンサC2の他方の端子の電位、すなわち第三スイッチ素子S3のドレイン端子の電位まで急激に上昇する。一方、
図10に示した第四期間T14の間、第二コンデンサC2が放電しているため、第三スイッチ素子S3のドレイン端子の電位は、
図10(b)に実線で示すように、蓄電体10の負極の電位0Vに等しい電位となるまで減少し続ける。
【0085】
また、
図10に示した第四期間T14の間、第三スイッチ素子S3のドレイン端子に電流が流れ込んでいるため、第三スイッチ素子S3のドレイン端子に流れ込む電流は、
図10(c)に実線で示すように、正の電流となる。一方、
図10に示した第四期間T14の間、第一スイッチ素子S1には電流が流れないため、第一スイッチ素子S1のソース端子に流れ込む電流は、略0Aとなる。
【0086】
また、
図10に示した第四期間T14は、第一ダイオードD1及び第二ダイオードD2の逆回復時間となっていない。このため、第三スイッチ素子S3に貫通電流が流れることにより発生する損失は、
図10(d)に実線で示すように、0Wとなる。
【0087】
図15は、
図10に示したゲート信号が交流発生回路に供給された場合において蓄電体、第一コンデンサ及び第二コンデンサ各々に印加される電圧と、第一スイッチ素子、第二スイッチ素子及び第三スイッチ素子各々のデューティ比と、蓄電体に供給される電流と、第一スイッチ素子、第二スイッチ素子及び第三スイッチ素子各々で発生する損失との一例を示す図である。
【0088】
図15(a)は、第一スイッチ素子S1、第二スイッチ素子S2及び第三スイッチ素子S3のデューティ比の経時的な変化を示している。具体的には、
図15(a)は、第三スイッチ素子S3のデューティ比の経時的な変化を実線で示している。また、
図15(a)は、第一スイッチ素子S1及び第二スイッチ素子S2のデューティ比の経時的な変化を点線で示している。
【0089】
第一実施例に係るスイッチ素子制御部62は、
図15(a)に点線で示すように、第一スイッチ素子S1及び第二スイッチ素子S2のデューティ比を0%から66%まで増加させる処理を実行する。当該処理は、第一スイッチ素子S1、第二スイッチ素子S2及び第三スイッチ素子S3が非通電状態となっている初期状態から第一スイッチ素子S1のデューティ比及び第二スイッチ素子S2のデューティ比を0パーセントから増加させる処理の一例である。
【0090】
また、第一実施例に係るスイッチ素子制御部62は、
図15(a)に実線で示すように、第三スイッチ素子S3のデューティ比を0%から100%まで一定の速度で増加させる処理を実行する。
【0091】
そして、第一実施例に係るスイッチ素子制御部62は、
図15(a)に実線で示すように、第三スイッチ素子S3のデューティ比を100%から33%まで第一スイッチ素子S1及び第二スイッチ素子S2のデューティ比を増加させる速度と同じ速度で減少させる処理を実行する。当該処理は、
図15(a)に示すように、第一スイッチ素子S1及び第二スイッチ素子S2のデューティ比を0%から66%まで第三スイッチ素子S3と同じ速度で増加させる処理が開始すると同時に開始される。また、当該処理は、第一スイッチ素子S1、第二スイッチ素子S2及び第三スイッチ素子S3が非通電状態となっている初期状態から第一スイッチ素子S1のデューティ比及び第二スイッチ素子S2のデューティ比を増加させた分だけ第三スイッチ素子S3のデューティ比を100パーセントから減少させる処理の一例である。
【0092】
図15(b)は、
図15(a)に示したデューティ比を有するゲート信号が交流発生回路61に供給された場合に蓄電体10、第一コンデンサC1又は第二コンデンサC2に印加される電圧の経時的な変化を示している。具体的には、
図15(b)は、
図15(a)に示したデューティ比を有するゲート信号が交流発生回路61に供給された場合に蓄電体10に印加される電圧の経時的な変化を実線で示している。また、
図15(b)は、
図15(a)に示したデューティ比を有するゲート信号が交流発生回路61に供給された場合に第一コンデンサC1又は第二コンデンサC2に印加される電圧の経時的な変化を点線で示している。
【0093】
蓄電体10に印加される電圧の振幅は、
図15(b)に実線で示すように、第一スイッチ素子S1及び第二スイッチ素子S2のデューティ比の増加と、第三スイッチ素子S3のデューティ比の減少とに伴って増加する。また、第一コンデンサC1に印加される電圧の振幅は、
図15(b)に点線で示すように、第一スイッチ素子S1及び第二スイッチ素子S2のデューティ比の増加と、第三スイッチ素子S3のデューティ比の減少とに伴って増加する。同様に、第二コンデンサC2に印加される電圧の振幅は、
図15(b)に点線で示すように、第一スイッチ素子S1及び第二スイッチ素子S2のデューティ比の増加と、第三スイッチ素子S3のデューティ比の減少とに伴って増加する。
【0094】
図15(c)は、
図15(a)に示したデューティ比を有するゲート信号が交流発生回路61に供給された場合に蓄電体10に供給される電流を示している。蓄電体10に供給される電流は、
図15(c)に示すように、第一スイッチ素子S1及び第二スイッチ素子S2のデューティ比の増加と、第三スイッチ素子S3のデューティ比の減少とに伴って増加する。
【0095】
図15(d)は、
図15(a)に示したデューティ比を有するゲート信号が交流発生回路61に供給された場合に第一スイッチ素子S1、第二スイッチ素子S2又は第三スイッチ素子S3で発生する損失を示している。具体的には、
図15(d)は、第一スイッチ素子S1又は第二スイッチ素子S2で発生する損失を実線で示している。また、
図15(d)は、第三スイッチ素子S3で発生する損失を点線で示している。
【0096】
図15(d)に点線で示すように、第三スイッチ素子S3で発生する損失は、蓄電体10を流れる電流の振幅が略一定となる状態に向かうに伴って増加し、当該電流の振幅が略一定の状態となってから所定の時間が経過した後に略一定となる。また、第三スイッチ素子S3で発生する損失は、比較例の場合に第三スイッチ素子S3で発生する損失と異なり、増加している途中で極大となることが無い。さらに、これらは、
図15(d)に実線で示すように、第一スイッチ素子S1で発生する損失及び第二スイッチ素子S2で発生する損失についても同様である。
【0097】
[第二実施例]
次に、
図16から
図25を参照しながら第二実施例に係る昇温装置60に含まれるスイッチ素子制御部62が交流発生回路61を制御する処理について説明する。
【0098】
図16は、第二実施例に係る昇温装置により三つのスイッチ素子に供給されるゲート信号と、当該ゲート信号が供給された場合における第三スイッチ素子の二つの端子の電位と、当該ゲート信号が供給された場合に第三スイッチ素子を流れる電流及び第一スイッチ素子を流れる電流と、第三スイッチ素子で発生する損失との一例を示す図である。また、
図16は、第一期間T21、第二期間T22、第三期間T23及び第四期間T24を示している。
【0099】
図17は、第二実施例に係る昇温装置により三つのスイッチ素子に供給されるゲート信号と、当該ゲート信号が供給された場合における第三スイッチ素子の二つの端子の電位と、当該ゲート信号が供給された場合に第三スイッチ素子を流れる電流と、第一スイッチ素子を流れる電流及び第三スイッチ素子で発生する損失との一例を示す図である。また、
図17は、第四期間T24、第五期間T25、第六期間T26及び第七期間T27を示している。
【0100】
図16(a)及び
図17(a)は、第一スイッチ素子S1、第二スイッチ素子S2及び第三スイッチ素子S3のゲート端子に印加されるハイ又はローの電圧の経時的な変化を示している。具体的には、
図16(a)及び
図17(a)は、第三スイッチ素子S3のゲート端子に印加される電圧の経時的な変化を上段に実線で示しており、第一スイッチ素子S1のゲート端子及び第二スイッチ素子S2のゲート端子に印加される電圧の経時的な変化を下段に実線で示している。第二実施例に係るスイッチ素子制御部62は、
図16(a)及び
図17(a)に示したゲート信号を第一スイッチ素子S1、第二スイッチ素子S2及び第三スイッチ素子S3のゲート端子に供給する。
【0101】
図16(b)及び
図17(b)は、三つのスイッチ素子のゲート端子各々に
図16(a)及び
図17(b)に示した電圧が印加された場合における第三スイッチ素子S3のドレイン端子の電位の経時的な変化を実線で示している。また、
図16(b)及び
図17(b)は、三つのスイッチ素子のゲート端子各々に
図16(a)及び
図17(b)に示した電圧が印加された場合における第三スイッチ素子S3のソース端子の電位の経時的な変化を点線で示している。
【0102】
図16(c)及び
図17(c)は、三つのスイッチ素子のゲート端子各々に
図16(a)及び
図17(a)に示した電圧が印加された場合に第三スイッチ素子S3のドレイン端子に流れ込む電流の経時的な変化を実線で示している。当該電流は、第三スイッチ素子S3のドレイン端子に流れ込む場合、正の電流となり、第三スイッチ素子S3を流れる電流と第三ダイオードD3を流れる電流との合計の電流となる。また、
図16(c)及び
図17(c)は、三つのスイッチ素子のゲート端子各々に
図16(a)及び
図17(c)に示した電圧が印加された場合に第一スイッチ素子S1のソース端子に流れ込む電流の経時的な変化を点線で示している。当該電流は、第一スイッチ素子S1のソース端子に流れ込む場合、正の電流となり、第一スイッチ素子S1を流れる電流と第一ダイオードD1を流れる電流との合計の電流となる。また、
図17(c)は、三つのスイッチ素子のゲート端子各々に
図17(c)に示した電圧が印加された場合に第一ダイオードD1に順方向に流れる電流の経時的な変化を一点鎖線で示している。
【0103】
図16(d)及び
図17(d)は、三つのスイッチ素子のゲート端子各々に
図16(a)及び
図17(d)に示した電圧が印加された場合に第三スイッチ素子S3に貫通電流が流れることにより発生する損失の経時的な変化を実線で示している。
【0104】
図18は、
図16に示した第一期間において交流発生回路を流れる電流の一例を示す図である。
図16に示した第一期間T21では、第一スイッチ素子S1及び第二スイッチ素子S2が通電状態となり、第三スイッチ素子S3が非通電状態となるため、第一コンデンサC1と第二コンデンサC2とが並列接続となる。したがって、
図18に矢印A181及び矢印A182で示すように電流が流れる。第一コンデンサC1及び第二コンデンサC2は、この電流により充電される。
【0105】
また、
図16に示した第一期間T21の間、第一スイッチ素子S1が通電状態であるため、第三スイッチ素子S3のソース端子の電位は、
図16(b)に点線で示すように、蓄電体10の負極の電位0Vに等しくなる。一方、
図16に示した第一期間T21の間、第二コンデンサC2が充電され続け、第二コンデンサC2に印加される電圧が上昇し続けるため、第三スイッチ素子S3のドレイン端子の電位は、
図16(b)に実線で示すように、増加し続ける。
【0106】
また、
図16に示した第一期間T21の間、第三スイッチ素子S3が非通電状態であるため、第三スイッチ素子S3のドレイン端子に流れ込む電流は、
図16(c)に実線で示すように、略0Aとなる。一方、
図16に示した第一期間T21の間、第一スイッチ素子S1が通電状態であり、第一スイッチ素子S1のソース端子から電流が流れ出しているため、第一スイッチ素子S1のソース端子に流れ込む電流は、
図16(c)に点線で示すように、略一定かつ負の電流となる。
【0107】
また、
図16に示した第一期間T21の間、第三スイッチ素子S3に流れ込む電流が略0Aであるため、第三スイッチ素子S3に貫通電流が流れることにより発生する損失は、
図16(d)に実線で示すように、0W(ワット)となる。
【0108】
図19は、
図16に示した第二期間において交流発生回路を流れる電流の一例を示す図である。
図16に示した第二期間T22では、第一スイッチ素子S1、第二スイッチ素子S2及び第三スイッチ素子S3のいずれも非通電状態となる。しかし、第三スイッチ素子S3に第三ダイオードD3が接続されているため、
図19に矢印A190で示すように第一コンデンサC1、第三ダイオードD3及び第二コンデンサC2に電流が流れる。第一コンデンサC1及び第二コンデンサC2は、この電流により充電される。
【0109】
また、
図16に示した第二期間T22は、第一スイッチ素子S1及び第二スイッチ素子S2が通電状態であり、第三スイッチ素子S3が非通電状態である状態と、第一スイッチ素子S1及び第二スイッチ素子S2が非通電状態であり、第三スイッチ素子S3が通電状態である状態との間に設けるデッドタイムである。また、第二実施例に係るスイッチ素子制御部62は、第一スイッチ素子S1及び第二スイッチ素子S2が通電状態から非通電状態へ変化する遷移時間と、第三スイッチ素子S3が非通電状態から通電状態へ変化する遷移時間を考慮してデッドタイムの最短時間を定め、所定の閾値を超える電流の発生を回避可能な長さになるよう第二期間T22の長さを調整する。
【0110】
また、
図16に示した第二期間T22の間、第三ダイオードD3に電流が流れているため、第三スイッチ素子S3のソース端子の電位は、
図16(b)に点線で示すように、第三スイッチ素子S3のドレイン端子の電位に等しい電位まで急激に上昇し始める。一方、
図16に示した第二期間T22の間も第二コンデンサC2が充電されるため、第三スイッチ素子S3のドレイン端子の電位は、
図16(b)に実線で示すように、第二コンデンサC2が満充電された場合の電位に向かって上昇する。
【0111】
また、
図16に示した第二期間T22の間、第三スイッチ素子S3のドレイン端子から電流が流れ出しているため、第三スイッチ素子S3のドレイン端子に流れ込む電流は、
図16(c)に実線で示すように、減少し始める。一方、
図16に示した第二期間T22の間、第一スイッチ素子S1のソース端子に流れ込む電流は、
図16(c)に点線で示すように、増加し始める。
【0112】
また、
図16に示した第二期間T22の間、第三スイッチ素子S3に流れ込む電流が略0Aであるため、第三スイッチ素子S3に貫通電流が流れることにより発生する損失は、
図16(d)に実線で示すように、0Wとなる。
【0113】
図20は、
図16に示した第三期間において交流発生回路を流れる電流の一例を示す図である。
図16に示した第三期間T23では、第一スイッチ素子S1及び第二スイッチ素子S2が
図16に示した第二期間T22に引き続き非通電状態となり、第三スイッチ素子S3が通電状態に切り替わる。このため、
図20に矢印A200で示すように、
図16に示した第二期間T22で第三ダイオードD3に流れていた電流が第三スイッチ素子S3を流れるようになる。第一コンデンサC1及び第二コンデンサC2は、この電流により充電される。
【0114】
また、
図16に示した第三期間T23の間、第三スイッチ素子S3が通電状態となっているため、第三スイッチ素子S3のソース端子の電位は、
図16(b)に点線で示すように、第二コンデンサC2の他方の端子の電位、すなわち第三スイッチ素子S3のドレイン端子の電位まで急激に上昇する。一方、
図16に示した第三期間T23の間、第二コンデンサC2が充電されて続けているため、第三スイッチ素子S3のドレイン端子の電位は、
図16(b)に実線で示すように、第一コンデンサC1及び第二コンデンサC2が満充電されるまで増加し続ける。
【0115】
また、
図16に示した第三期間T23の間、第三スイッチ素子S3のドレイン端子に流れ込む電流は、
図16(c)に実線で示すように、負の電流となる。一方、
図16に示した第三期間T23の間、第一スイッチ素子S1のソース端子に流れ込む電流は、
図16(c)に点線で示すように、正の電流となる。
【0116】
また、
図16に示した第三期間T23の間、第三スイッチ素子S3に貫通電流が流れることにより発生する損失は、
図16(d)に実線で示すように、0Wとなる。
【0117】
図21は、
図16に示した第四期間において交流発生回路を流れる電流の一例を示す図である。
図16及び
図17に示した第四期間T24では、
図16に示した第三期間T3と同様に、第一スイッチ素子S1及び第二スイッチ素子S2が非通電状態となっており、第三スイッチ素子S3が通電状態となっている。また、第一コンデンサC1及び第二コンデンサC2は、
図16に示した第三期間T23が終了した時点で満充電となっている。したがって、
図21に矢印A210で示すように、第二コンデンサC2、第三スイッチ素子S3及び第一コンデンサC1に電流が流れる。また、この電流は、第一コンデンサC1及び第二コンデンサC2が放電することにより流れる。
【0118】
また、
図16及び
図17に示した第四期間T24の間、第三スイッチ素子S3が通電状態となるため、第三スイッチ素子S3のソース端子の電位は、
図16(b)及び
図17(b)に点線で示すように、第二コンデンサC2の他方の端子の電位、すなわち第三スイッチ素子S3のドレイン端子の電位と略一致する。一方、
図16及び
図17に示した第四期間T24の間、第二コンデンサC2が放電しているため、第三スイッチ素子S3のドレイン端子の電位は、
図16(b)及び
図17(b)に実線で示すように、減少する。
【0119】
また、
図16及び
図17に示した第四期間T24の間、第三スイッチ素子S3のドレイン端子に電流が流れ込んでいるため、第三スイッチ素子S3のドレイン端子に流れ込む電流は、
図16(c)及び
図17(c)に実線で示すように、正の電流となる。一方、
図16及び
図17に示した第四期間T24の間、第一スイッチ素子S1には電流が流れないため、第一スイッチ素子S1のソース端子に流れ込む電流は、略0Aとなる。
【0120】
また、
図16及び
図17に示した第四期間T24は、第一ダイオードD1及び第二ダイオードD2の逆回復時間となっていない。このため、第三スイッチ素子S3に貫通電流が流れることにより発生する損失は、
図16(d)及び
図17(d)に実線で示すように、0Wとなる。
【0121】
図22は、
図17に示した第五期間において交流発生回路を流れる電流の一例を示す図である。
図17に示した第五期間T25では、第一スイッチ素子S1及び第二スイッチ素子S2が通電状態に切り替わり、第三スイッチ素子S3が第四期間T24に引き続き非通電状態となる。しかし、第一スイッチ素子S1に第一ダイオードD1が接続されており、第二スイッチ素子S2に第二ダイオードD2が接続されている。また、第五期間T25が開始した時点では、第一コンデンサC1及び第二コンデンサC2が放電し続けている。このため、第一コンデンサC1が放電することにより、
図22に矢印A221で示すように、第一ダイオードD1及び第一コンデンサC1に電流が流れる。また、同様に、第二コンデンサC2が放電することにより、
図22に矢印A222で示すように、第二コンデンサC2及び第二ダイオードD2に電流が流れる。
【0122】
また、
図17に示した第五期間T25の間、第一スイッチ素子S1に電流が流れていないため、第三スイッチ素子S3のソース端子の電位は、
図17(b)に点線で示すように、蓄電体10の負極の電位0Vまで急激に低下する。一方、
図17に示した第五期間T25の間、第二コンデンサC2が放電しているため、第三スイッチ素子S3のドレイン端子の電位は、
図17(b)に実線で示すように、減少し続ける。
【0123】
また、
図17に示した第五期間T25の間、第三スイッチ素子S3に電流が流れていないため、第三スイッチ素子S3のドレイン端子に流れ込む電流は、
図17(c)に実線で示すように、略0Aとなる。一方、
図17に示した第五期間T25の間、第一スイッチ素子S1に電流が流れていないため、第一スイッチ素子S1のソース端子に流れ込む電流は、
図17(c)に点線で示すように、略0Aとなる。なお、第一ダイオードD1に順方向に流れる電流は、
図17(c)に一点鎖線で示すように、第五期間T25の間、正の電流となる。
【0124】
また、
図17に示した第五期間T25の間、第三スイッチ素子S3に流れ込む電流が略0Aであるため、第三スイッチ素子S3に貫通電流が流れることにより発生する損失は、
図17(d)に実線で示すように、0Wとなる。
【0125】
図23は、
図17に示した第六期間において交流発生回路を流れる電流の一例を示す図である。
図17に示した第六期間T26では、第五期間T25に引き続き第一スイッチ素子S1及び第二スイッチ素子S2が通電状態となっており、第三スイッチ素子S3が非通電状態となっている。したがって、
図22に矢印A221で示すように、第五期間T25に第一ダイオードD1を流れていた電流が、
図23に矢印A231で示すように、第一スイッチ素子S1を流れるようになる。また、
図22に矢印A222で示すように、第五期間T25に第二ダイオードD2を流れていた電流が、
図23に矢印A232で示すように、第二スイッチ素子S2を流れるようになる。
【0126】
また、
図17に示した第六期間T26の間、第一スイッチ素子S1に電流が流れているため、第三スイッチ素子S3のソース端子の電位は、
図17(b)に点線で示すように、蓄電体10の負極の電位0Vとなる。一方、
図17に示した第六期間T26の間、第二コンデンサC2が放電しているため、第三スイッチ素子S3のドレイン端子の電位は、
図17(b)に実線で示すように、減少し続ける。
【0127】
また、
図17に示した第六期間T26の間、第三スイッチ素子S3に電流が流れていないため、第三スイッチ素子S3のドレイン端子に流れ込む電流は、
図17(c)に実線で示すように、略0Aとなる。一方、
図17に示した第六期間T26の間、第一スイッチ素子S1に電流が流れているため、第一スイッチ素子S1のソース端子に流れ込む電流は、
図17(c)に点線で示すように、正の電流となる。
【0128】
また、
図17に示した第六期間T26の間、第三スイッチ素子S3に流れ込む電流が略0Aであるため、第三スイッチ素子S3に貫通電流が流れることにより発生する損失は、
図17(d)に実線で示すように、0Wとなる。
【0129】
図24は、
図17に示した第七期間において交流発生回路を流れる電流の一例を示す図である。
図17に示した第七期間T17では、
図17に示した第三期間T23と同様に、第一スイッチ素子S1及び第二スイッチ素子S2が非通電状態となっており、第三スイッチ素子S3が通電状態となっている。また、第一コンデンサC1及び第二コンデンサC2は、
図17に示した第三期間T23が終了した時点で略電荷を蓄えていない状態となっている。したがって、
図24に矢印A241で示すように、第一コンデンサC1及び第一スイッチ素子S1に電流が流れる。第一コンデンサC1は、この電流により充電される。また、
図24に矢印A242で示すように、第二スイッチ素子S2及び第二コンデンサC2に電流が流れる。第一コンデンサC1は、この電流により充電される。
【0130】
また、
図17に示した第七期間T17の間、第一スイッチ素子S1が通電状態となるため、第三スイッチ素子S3のソース端子の電位は、
図17(b)に点線で示すように、蓄電体10の負極の電位0Vに等しい電位となるまで減少し続ける。一方、
図17に示した第七期間T17の間、第二コンデンサC2が充電されているため、第三スイッチ素子S3のドレイン端子の電位は、
図17(b)に実線で示すように、増加し続ける。
【0131】
また、
図17に示した第七期間T17の間、第三スイッチ素子S3に電流が流れていないため、第三スイッチ素子S3のドレイン端子に流れ込む電流は、
図17(c)に実線で示すように、略0Aとなる。一方、
図17に示した第七期間T17の間、第一スイッチ素子S1のソース端子から電流が流れ出しているため、第一スイッチ素子S1のソース端子に流れ込む電流は、負の電流となる。
【0132】
また、
図17に示した第七期間T17は、第三スイッチ素子S3に電流がながれていない。このため、第三スイッチ素子S3に貫通電流が流れることにより発生する損失は、
図17(d)に実線で示すように、0Wとなる。
【0133】
図25は、
図16及び
図17に示したゲート信号が交流発生回路に供給された場合において蓄電体、第一コンデンサ及び第二コンデンサ各々に印加される電圧と、第一スイッチ素子、第二スイッチ素子及び第三スイッチ素子各々のデューティ比と、蓄電体に供給される電流と、第一スイッチ素子、第二スイッチ素子及び第三スイッチ素子各々で発生する損失との一例を示す図である。
【0134】
図25(a)は、第一スイッチ素子S1、第二スイッチ素子S2及び第三スイッチ素子S3のデューティ比の経時的な変化を示している。具体的には、
図25(a)は、第三スイッチ素子S3のデューティ比の経時的な変化を実線で示している。また、
図25(a)は、第一スイッチ素子S1及び第二スイッチ素子S2のデューティ比の経時的な変化を点線で示している。
【0135】
第二実施例に係るスイッチ素子制御部62は、
図25(a)に実線で示すように、第三スイッチ素子S3のデューティ比を0%から33%まで一定の速度で増加させる処理を実行する。当該処理は、第一スイッチ素子S1、第二スイッチ素子S2及び第三スイッチ素子S3が非通電状態となっている初期状態から第三スイッチ素子S3のデューティ比を0パーセントから増加させる処理の一例である。
【0136】
また、第二実施例に係るスイッチ素子制御部62は、
図25(a)に点線で示すように、第一スイッチ素子S1及び第二スイッチ素子S2のデューティ比を0%から100%まで一定の速度で増加させる処理を実行する。
【0137】
そして、第二実施例に係るスイッチ素子制御部62は、
図25(a)に点線で示すように、第一スイッチ素子S1及び第二スイッチ素子S2のデューティ比を100%から66%まで第三スイッチ素子S3のデューティ比を減少させる速度と同じ速度で減少させる処理を実行する。当該処理は、
図25(a)に示すように、第三スイッチ素子S3のデューティ比を100%から66%まで一定の速度で減少させる処理が開始すると同時に開始させる。また、当該処理は、第一スイッチ素子S1、第二スイッチ素子S2及び第三スイッチ素子S3が非通電状態となっている初期状態から第三スイッチ素子S3のデューティ比を増加させた分だけ第一スイッチ素子S1及び第二スイッチ素子S2のデューティ比を100パーセントから減少させる処理の一例である。
【0138】
図25(b)は、
図25(a)に示したデューティ比を有するゲート信号が交流発生回路61に供給された場合に蓄電体10、第一コンデンサC1又は第二コンデンサC2に印加される電圧の経時的な変化を示している。具体的には、
図25(b)は、
図25(a)に示したデューティ比を有するゲート信号が交流発生回路61に供給された場合に蓄電体10に印加される電圧の経時的な変化を実線で示している。また、
図25(b)は、
図25(a)に示したデューティ比を有するゲート信号が交流発生回路61に供給された場合に第一コンデンサC1又は第二コンデンサC2に印加される電圧の経時的な変化を点線で示している。
【0139】
蓄電体10に印加される電圧の振幅は、
図25(b)に実線で示すように、第一スイッチ素子S1及び第二スイッチ素子S2のデューティ比の減少と、第三スイッチ素子S3のデューティ比の増加とに伴って増加する。また、第一コンデンサC1に印加される電圧の振幅は、
図25(b)に点線で示すように、第一スイッチ素子S1及び第二スイッチ素子S2のデューティ比の減少と、第三スイッチ素子S3のデューティ比の増加とに伴って増加する。同様に、第二コンデンサC2に印加される電圧の振幅は、
図25(b)に点線で示すように、第一スイッチ素子S1及び第二スイッチ素子S2のデューティ比の減少と、第三スイッチ素子S3のデューティ比の増加とに伴って増加する。
【0140】
図25(c)は、
図25(a)に示したデューティ比を有するゲート信号が交流発生回路61に供給された場合に蓄電体10に供給される電流を示している。蓄電体10に供給される電流は、
図25(c)に示すように、第一スイッチ素子S1及び第二スイッチ素子S2のデューティ比の減少と、第三スイッチ素子S3のデューティ比の増加とに伴って増加する。
【0141】
図25(d)は、
図25(a)に示したデューティ比を有するゲート信号が交流発生回路61に供給された場合に第一スイッチ素子S1、第二スイッチ素子S2又は第三スイッチ素子S3で発生する損失を示している。具体的には、
図25(d)は、第一スイッチ素子S1又は第二スイッチ素子S2で発生する損失を実線で示している。また、
図25(d)は、第三スイッチ素子S3で発生する損失を点線で示している。
【0142】
図25(d)に点線で示すように、第三スイッチ素子S3で発生する損失は、蓄電体10を流れる電流の振幅が略一定となる状態に向かうに伴って増加し、当該電流の振幅が略一定の状態となってから所定の時間が経過した後に略一定となる。また、第三スイッチ素子S3で発生する損失は、比較例の場合に第三スイッチ素子S3で発生する損失と異なり、増加している途中で極大となることが無い。さらに、これらは、
図25(d)に実線で示すように、第一スイッチ素子S1で発生する損失及び第二スイッチ素子S2で発生する損失についても同様である。
【0143】
以上、実施例に係る昇温装置60について説明した。昇温装置60は、第一スイッチ素子S1、第二スイッチ素子S2及び第三スイッチ素子S3が非通電状態となっている初期状態から第一スイッチ素子S1のデューティ比及び第二スイッチ素子S2のデューティ比と第三スイッチ素子S3のデューティ比との一方のデューティ比を0パーセントから増加させる。また、昇温装置60は、初期状態から第一スイッチ素子S1のデューティ比及び第二スイッチ素子S2のデューティ比と第三スイッチ素子S3のデューティ比との一方のデューティ比を増加させた分だけ第一スイッチ素子S1のデューティ比及び第二スイッチ素子S2のデューティ比と第三スイッチ素子S3のデューティ比との他方のデューティ比を100パーセントから減少させる。
【0144】
これにより、昇温装置60は、第一ダイオードD1及び第二ダイオードD2の逆回復時間の間に第三スイッチ素子S3に貫通電流が流れないように交流発生回路61を制御する。したがって、昇温装置60は、このような貫通電流が流れることにより第三スイッチ素子S3で発生する損失を低減させることができる。
【0145】
なお、上述した実施形態では、蓄電体10が二次電池である場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。蓄電体10は、例えば、電界二重層コンデンサ又は電解コンデンサであってもよい。
【0146】
また、上述した実施形態では、第一スイッチ素子S1、第二スイッチ素子S2及び第三スイッチ素子S3が金属酸化膜半導体電界効果トランジスタである場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、第一スイッチ素子S1、第二スイッチ素子S2及び第三スイッチ素子S3の少なくとも一つは、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)であってもよい。
【0147】
また、上述した実施形態では、第一ダイオードD1、第二ダイオードD2及び第三ダイオードD3が還流ダイオードである場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、第一ダイオードD1は、第一スイッチ素子S1の寄生ダイオードであってもよい。また、例えば、第二ダイオードD2は、第二スイッチ素子S2の寄生ダイオードであってもよい。同様に、第三ダイオードD3は、第三スイッチ素子S3の寄生ダイオードであってもよい。
【0148】
さらに、第一実施例に係るスイッチ素子制御部62は、第一ダイオードD1、第二ダイオードD2及び第三ダイオードD3の少なくとも一つが寄生ダイオードである場合、デッドタイムの長さを所定の値よりも短いものとし、所定の閾値を超える電流の発生を回避可能な長さになるよう調整する。
【0149】
以上、本発明の実施例について図面を参照しながら説明した。ただし、昇温装置、昇温プログラム及び昇温方法は、上述した実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形、置換、組み合わせ及び設計変更の少なくとも一つを加えることができる。
【0150】
また、上述した本発明の実施例の効果は、一例として説明した効果である。したがって、本発明の実施例は、上述した効果以外にも上述した実施例の記載から当業者が認識し得る他の効果も奏し得る。
【符号の説明】
【0151】
1…駆動機構、10…蓄電体、20…PDU、30…回転電機、40…エンジン、50…駆動輪、60…昇温装置、61…交流発生回路、62…スイッチ素子制御部、C1…第一コンデンサ、C2…第二コンデンサ、D1…第一ダイオード、D2…第二ダイオード、D3…第三ダイオード、G1…第一ゲート信号送信部、G2…第二ゲート信号送信部、G3…第三ゲート信号送信部、S1…第一スイッチ素子、S2…第二スイッチ素子、S3…第三スイッチ素子