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特開2022-154220フィルム切断装置およびフィルム切断方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154220
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】フィルム切断装置およびフィルム切断方法
(51)【国際特許分類】
   B26D 1/04 20060101AFI20221005BHJP
   B26D 3/00 20060101ALI20221005BHJP
   B26D 7/26 20060101ALI20221005BHJP
   B26D 5/02 20060101ALI20221005BHJP
   B65H 19/26 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
B26D1/04 Z
B26D3/00 601B
B26D7/26
B26D5/02 Z
B65H19/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057137
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮沢 靖直
【テーマコード(参考)】
3C021
3C027
3F064
【Fターム(参考)】
3C021JA04
3C021JA10
3C027GG01
3C027GG02
3C027GG06
3C027GG08
3F064AA03
3F064CA02
3F064CA05
3F064DA02
3F064DA03
(57)【要約】
【課題】巻取装置で巻き取られたフィルムに打痕が生じることを防止することができるフィルム切断装置および切断方法を提供すること。
【解決手段】フィルム切断装置EAは、フィルムを巻き取る巻取装置に設けられ、フィルムを切断するフィルム切断装置であって、超硬合金またはセラミックで形成された切断刃10と、切断刃10を保持する保持手段20と、フィルムASを当該フィルムASの切断位置に支持する支持手段30と、切断刃10を保持した保持手段20をフィルムを横切る方向に移動させ、切断刃10でフィルムを切断する切断手段40とを備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムを巻き取る巻取装置に設けられ、前記フィルムを切断するフィルム切断装置であって、
超硬合金またはセラミックで形成された切断刃と、
前記切断刃を保持する保持手段と、
前記フィルムを当該フィルムの切断位置に支持する支持手段と、
前記切断刃を保持した前記保持手段を前記フィルムを横切る方向に移動させ、前記切断刃で前記フィルムを切断する切断手段とを備えていることを特徴とするフィルム切断装置。
【請求項2】
前記切断刃は、一方の端部に設けられた第1切先と、前記第1切先から延びる第1刃先と、他方の端部に設けられた第2切先と、前記第2切先から延びる第2刃先とを備え、
前記保持手段は、前記第1刃先と前記第2刃先との位置を入れ替えて前記切断刃を保持可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載のフィルム切断装置。
【請求項3】
前記切断刃は、前記第1刃先と前記第2刃先とが下底に設けられた台形形状とされていることを特徴とする請求項2に記載のフィルム切断装置。
【請求項4】
前記保持手段は、前記第1刃先または前記第2刃先に沿う方向に前記切断刃をスライド可能に構成されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のフィルム切断装置。
【請求項5】
前記切断刃は、両刃であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のフィルム切断装置。
【請求項6】
前記切断刃に非粘着処理が施されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のフィルム切断装置。
【請求項7】
前記非粘着処理としてサンドブラストまたは溶射が施されたことを特徴とする請求項6に記載のフィルム切断装置。
【請求項8】
フィルムの巻き取りに際して、前記フィルムを切断するフィルム切断方法であって、
前記フィルムを当該フィルムの切断位置に支持する支持工程と、
超硬合金またはセラミックで形成された切断刃を前記支持工程で支持された前記フィルムを横切る方向に移動させ、前記切断刃で前記フィルムを切断する切断工程とを実施することを特徴とするフィルム切断方法。
【請求項9】
前記切断刃は、一方の端部に設けられた第1切先と、前記第1切先から延びる第1刃先と、他方の端部に設けられた第2切先と、前記第2切先から延びる第2刃先とを備え、
前記第1刃先と前記第2刃先との位置を入れ替えて前記切断刃を保持する保持工程を実施することを特徴とする請求項8に記載のフィルム切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムを巻き取る巻取装置に設けられるフィルム切断装置およびフィルム切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルムを巻き取る巻取装置に設けられ、切断刃でフィルムを切断するフィルム切断装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-48173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された切断機構20(フィルム切断装置)では、カッター26(切断刃)の切断能力(切れ味)が十分でなく、フィルム切断時にフィルムの切り屑やささくれ等の異物が多く発生するため、切断されたフィルムが異物とともに巻き取られることで、フィルムに打痕が生じるおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、巻取装置で巻き取られたフィルムに打痕が生じることを防止することができるフィルム切断装置およびフィルム切断方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るフィルム切断装置は、フィルムを巻き取る巻取装置に設けられ、前記フィルムを切断するフィルム切断装置であって、超硬合金またはセラミックで形成された切断刃と、前記切断刃を保持する保持手段と、前記フィルムを当該フィルムの切断位置に支持する支持手段と、前記切断刃を保持した前記保持手段を前記フィルムを横切る方向に移動させ、前記切断刃で前記フィルムを切断する切断手段とを備えている。
【0007】
本発明の一態様に係るフィルム切断装置において、前記切断刃は、一方の端部に設けられた第1切先と、前記第1切先から延びる第1刃先と、他方の端部に設けられた第2切先と、前記第2切先から延びる第2刃先とを備え、前記保持手段は、前記第1刃先と前記第2刃先との位置を入れ替えて前記切断刃を保持可能に構成されていることが好ましい。
【0008】
本発明の一態様に係るフィルム切断装置において、前記切断刃は、前記第1刃先と前記第2刃先とが下底に設けられた台形形状とされていることが好ましい。
【0009】
本発明の一態様に係るフィルム切断装置において、前記保持手段は、前記第1刃先または前記第2刃先に沿う方向に前記切断刃をスライド可能に構成されていることが好ましい。
【0010】
本発明の一態様に係るフィルム切断装置において、前記切断刃は、両刃であることが好ましい。
【0011】
本発明の一態様に係るフィルム切断装置において、前記切断刃に非粘着処理が施されていることが好ましい。
【0012】
本発明の一態様に係るフィルム切断装置において、前記非粘着処理としてサンドブラストまたは溶射が施されていることが好ましい。
【0013】
本発明の一態様に係るフィルム切断方法は、フィルムの巻き取りに際して、前記フィルムを切断するフィルム切断方法であって、前記フィルムを当該フィルムの切断位置に支持する支持工程と、超硬合金またはセラミックで形成された切断刃を前記支持工程で支持された前記フィルムを横切る方向に移動させ、前記切断刃で前記フィルムを切断する切断工程とを実施する。
【0014】
本発明の一態様に係るフィルム切断方法において、前記切断刃は、一方の端部に設けられた第1切先と、前記第1切先から延びる第1刃先と、他方の端部に設けられた第2切先と、前記第2切先から延びる第2刃先とを備え、前記第1刃先と前記第2刃先との位置を入れ替えて前記切断刃を保持する保持工程を実施することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、切断刃が超硬合金またはセラミックで形成されているため、切断刃の切断能力が高く、フィルム切断時の異物の発生を抑制することができるので、巻取装置で巻き取られたフィルムに打痕が生じることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一実施形態に係るフィルム切断装置を備えた巻取装置の説明図。
図2】一実施形態に係るフィルム切断装置の切断刃および保持手段の説明図。
図3】一実施形態に係るフィルム切断装置および巻取装置の動作説明図。
図4】変形例に係るフィルム切断装置の切断刃の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、本実施形態におけるX軸、Y軸、Z軸は、それぞれが直交する関係にあり、X軸およびY軸は、所定平面内の軸とし、Z軸は、前記所定平面に直交する軸とする。さらに、本実施形態では、Y軸と平行な図1の手前方向から観た場合を基準とし、方向を示した場合、「上」がZ軸の矢印方向で「下」がその逆方向、「左」がX軸の矢印方向で「右」がその逆方向、「前」がY軸の矢印方向で「後」がその逆方向とする。
【0018】
フィルム切断装置EAは、フィルムASを巻き取る巻取装置EA1に設けられ、フィルムASを切断する装置であって、超硬合金またはセラミックで形成された切断刃10と、切断刃10を保持する保持手段20と、フィルムASを当該フィルムASの切断位置に支持する支持手段30と、切断刃10を保持した保持手段20をフィルムASを横切る方向に移動させ、切断刃10でフィルムASを切断する切断手段40とを備え、フィルムASを巻き取る巻取手段50とで巻取装置EA1を構成している。なお、本実施形態のフィルムASは、偏光フィルム、位相差フィルム、反射防止フィルム等の光学フィルムである。
【0019】
切断刃10は、一方の端部に設けられた第1切先11と、第1切先11から延びる第1刃先12と、他方の端部に設けられた第2切先13と、第2切先13から延びる第2刃先14とを備えている。
本実施形態の場合、切断刃10は、第1刃先12と第2刃先14とが下底に設けられた台形形状とされ(図2(B)参照)、かつ両刃とされている。また、切断刃10には、サンドブラストまたは溶射等による非粘着処理が施されている。
【0020】
保持手段20は、図2(A)にも示すように、切断刃10を保持する第1保持部材21と、第1保持部材21を保持する第2保持部材22とを備えている。本実施形態の場合、保持手段20は、第1刃先12または第2刃先14に沿う方向に切断刃10をスライド可能、かつ第1刃先12と第2刃先14との位置を入れ替えて切断刃10を保持可能に構成されている。
第1保持部材21は、切断刃10を挟持する一対の挟持部材21Aと、切断刃10と挟持部材21Aとの間に介装されるスペーサ21Bと、一対の挟持部材21Aを相互に固定する皿ねじ等のねじまたはビス等の固定部材21Cとを備えている(図2(B)参照)。一方の挟持部材21Aには、切断刃10を収容するための溝21Dが設けられている。
第2保持部材22は、第1保持部材21が差し込まれて収容される凹部22Aを備えている。凹部22Aは、フィルムASに対して切断刃10が傾斜するように傾斜して設けられ、第1保持部材21が差し込まれた状態で少なくとも切断刃10が凹部22Aから突出する深さとされ、深さ方向に直交する方向の断面形状が第1保持部材21の外形形状と一致している。
【0021】
支持手段30は、駆動機器としての回動モータ31と、前後方向に並んで配置され、回動モータ31の出力軸31Aに支持された一対のアーム32と、一対のアーム32に支持されたニップローラ33と、ニップローラ33よりもアーム32の先端部側で一対のアーム32に支持されたガイドローラ34とを備えている。
【0022】
切断手段40は、ニップローラ33とガイドローラ34との間の位置で一対のアーム32に支持され、前後方向に移動可能なスライドテーブル41Aを有する駆動機器としてのロッドレスシリンダ41と、ロッドレスシリンダ41のスライドテーブル41Aに支持され、出力軸42Aで保持手段20を支持する駆動機器としての直動モータ42とを備えている。
【0023】
巻取手段50は、フィルムASを案内するガイドローラ51と、基台52Bから上方に延びる支持脚52Cに支持された駆動機器としての回動モータ52と、中央部が回動モータ52の出力軸52Aに支持された第1アーム53と、中央部が回動モータ52の出力軸52Aに支持され、第1アーム53と直行する方向に延設された第2アーム54と、第1アーム53の一方の端部に支持された駆動機器としての回動モータ55と、回動モータ55の図示しない出力軸に支持され、巻取コアCRを支持する第1巻取軸56と、第1アーム53の他方の端部に支持された駆動機器としての回動モータ57と、回動モータ57の図示しない出力軸に支持され、巻取コアCRを支持する第2巻取軸58と、第2アーム54の各々の端部に支持された一対のガイドローラ59とを備えている。
【0024】
以上のフィルム切断装置EAを備えた巻取装置EA1の動作を説明する。
先ず、図1中実線で示す初期位置に各部材が配置された巻取装置EA1に対し、当該巻取装置EA1の使用者(以下、単に「使用者」という)が、切断刃10を一対の挟持部材21Aで挟持して保持手段20にセットする。次いで、使用者が巻取軸56、58に巻取コアCRを支持させて固定するとともに、当該巻取コアCRの外周表面にフィルムASの幅方向に延びる両面粘着テープBAを貼付する。その後、使用者が、第1巻取軸56に支持された巻取コアCRの両面粘着テープBAに、フィルムASの先端部を貼付して固定する。
【0025】
次に、巻取手段50が回動モータ55を駆動し、第1巻取軸56でのフィルムASの巻き取りを開始する。そして、第1巻取軸56で所定長さのフィルムASが巻き取られたことが、ローラエンコーダやロータリエンコーダ等で構成された図示しない検知手段に検知されると、巻取手段50が回動モータ52を駆動し、図3に示すように、第1アーム53および第2アーム54を時計回り方向に回転させて、第1巻取軸56と第2巻取軸58との位置を入れ替える。次いで、巻取手段50が回動モータ57を駆動し、第2巻取軸58の回転を開始した後、支持手段30が回動モータ31を駆動し、図3中二点鎖線で示すように、アーム32を時計回り方向に回転させて、ニップローラ33でフィルムASを巻取コアCRに押圧する。この際、フィルムASは、第2巻取軸58に支持された巻取コアCRの表面の両面粘着テープBAに貼付され、当該両面粘着テープBAを介して当該巻取コアCRに固定される。また、ニップローラ33およびガイドローラ34によって、フィルムASに張力が付与されてその弛みが除去されるとともに、フィルムASが切断位置に支持される。
【0026】
その後、切断手段40が直動モータ42を駆動し、保持手段20を移動して切断刃10を突出させる。次に、切断手段40がロッドレスシリンダ41を駆動し、保持手段20を前後方向に移動させることによって、切断刃10でフィルムASを切断した後、支持手段30および切断手段40が回動モータ31および直動モータ42を駆動し、アーム32および切断刃10を初期位置に復帰させる。これにより、第1巻取軸56でのフィルムASの巻き取りが終了し、第2巻取軸58でのフィルムASの巻き取りが開始される。
なお、第1巻取軸56で巻き取られたフィルムASは、第1巻取軸56から抜き取られ、無人搬送車等の図示しない搬送手段によって、次工程または倉庫に搬送される。また、使用者は、第1巻取軸56に巻取コアCRを支持させて固定した後、当該巻取コアCRの外周表面に両面粘着テープBAを貼付する。
【0027】
そして、第2巻取軸58で所定長さのフィルムASが巻き取られたことが、図示しない検知手段に検知されると、巻取手段50が回動モータ52を駆動し、上記と同様にして第1巻取軸56と第2巻取軸58との位置を入れ替えた後、第1巻取軸56の回転を開始する。次いで、支持手段30および切断手段40が回動モータ31およびロッドレスシリンダ41を駆動し、フィルムASに対して上記と同様の動作を行うことで、第2巻取軸58で巻き取られているフィルムASを切断して第2巻取軸58での巻き取りを終了するとともに、第1巻取軸56でのフィルムASの巻き取りを開始する。以降、巻取装置EA1でのフィルムASの巻き取りが終了するまで、上記同様の動作が繰り返される。
【0028】
ここで、フィルム切断装置EAでは、切断刃10を保持手段20にセットしてから、例えば6カ月のような相応の期間が経過すると、切断刃10の第1刃先12におけるフィルムASの切断に使用されていた領域が摩耗してくる。この場合、使用者が第1保持部材21を第2保持部材22から抜き取り、一対の挟持部材21Aの固定状態を解除して切断刃10を第1刃先12に沿って右方向にスライドさせた後、再び一対の挟持部材21Aで切断刃10を挟持し、第1保持部材21を凹部22Aに差し込んで第2保持部材22に保持させる。これにより、その後の切断には、第1刃先12の他の領域が使用されるため、切断刃10の切れ味を維持し続けることができる。
【0029】
その後、さらに6カ月のような相応の期間が経過すると、第1刃先12の他の領域も摩耗してくる。このため、使用者が第1保持部材21を第2保持部材22から抜き取り、一対の挟持部材21Aの固定状態を解除して切断刃10の第1刃先12と第2刃先14との位置を入れ替えた後、再び一対の挟持部材21Aで切断刃10を挟持し、第1保持部材21を凹部22Aに差し込んで第2保持部材22に保持させる。これにより、その後は第2刃先14が切断に使用されるため、切断刃10の切れ味をさらに維持し続けることができる。そして、第2刃先14におけるフィルムAS切断に使用されていた領域が摩耗してきた場合は、上記と同様にして、一対の挟持部材21Aの固定状態を解除して切断刃10を第2刃先14に沿って右方向にスライドさせた後、第1保持部材21を凹部22Aに差し込んで第2保持部材22に保持させることで、切断刃10の切れ味をさらに維持し続けることができる。
【0030】
以上のような実施形態によれば、切断刃10が超硬合金またはセラミックで形成されているため、切断刃10の切断能力が高く、フィルムAS切断時の異物の発生を抑制することができるので、巻取装置EA1で巻き取られたフィルムASに打痕が生じることを防止することができる。特に、フィルムASが光学フィルムの場合には、その構造上、フィルムAS自身から切り屑やささくれ等の異物が発生しやすい傾向があるが、切断刃10で切断することにより異物の発生を効果的に抑制し、打痕が生じることを防止することができる。
さらに、切断刃10が超硬合金またはセラミックで形成されているため、従来のように使い捨てするのではなく、切断刃10を研磨して繰り返し使うことができる。このため、切断刃10にかかるコストを抑制することができる。
【0031】
また、保持手段20が第1刃先12と第2刃先14との位置を入れ替えて切断刃10を保持可能に構成されているため、第1刃先12および第2刃先14の一方でフィルムASを切断した後、第1刃先12と第2刃先14との位置を入れ替えることにより、第1刃先12および第2刃先14の他方でフィルムASを切断することができる。このため、1つの切断刃10を長く使用することができ、切断刃10にかかるコストを抑制することができる。
【0032】
また、切断刃10は、第1刃先12と第2刃先14とが下底に設けられた台形形状とされているので、第1刃先12および第2刃先14ともに切断刃10の一辺に設けられる。このため、第1刃先12や第2刃先14が複数の辺に設けられている場合に比べて、切断刃10をスライドさせたり、第1刃先12と第2刃先14との位置入れ替えたりする際の安全性が向上する。さらに、切断刃10の研磨が一辺だけでよく、メンテナンスが容易になる。
【0033】
また、保持手段20は、第1刃先12または第2刃先14に沿う方向に切断刃10をスライド可能に構成されているため、各刃先12、14を複数の領域に分けて使用することで、1つの切断刃10を長く使用することができ、切断刃10にかかるコストを抑制することができる。
【0034】
また、切断刃10が両刃になっているため、フィルムASの切断時にフィルムASが切断刃10の両側に逃げることができ、フィルムASの切り屑が発生することを抑制することができる。その上、フィルムASにハードコート層がある場合には、ハードコート層が割れて生じる異物が発生しにくくなり、フィルムASに粘着剤層がある場合には、粘着剤層がはみ出してフィルムASから分離したいわゆる糊玉が発生しにくくなる。さらに、片刃の場合とは異なり、第1刃先12と第2刃先14との位置入れ替えても、刃の位置が変わってしまうことがない。
【0035】
また、切断刃10に非粘着処理が施されているので、粘着剤層を有するフィルムASを切断した場合に、当該フィルムASの粘着剤が切断刃10に付着することを防止することができ、切断刃10の切れ味を維持することができる。
【0036】
また、切断刃10の非粘着処理として、フッ素コートやシリコーンコートではなく、サンドブラストまたは溶射が施されているため、フッ素やシリコーンが混入してはいけないフィルムASも切断することができる。
【0037】
以上のように、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。また、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれる。
【0038】
例えば、切断刃10の種別、形状や、切先11、13および刃先12、14の位置等は、特に限定されることはない。即ち、切断刃10は、例えば、図4(A)に示すように、平行四辺形形状とされ、互いに対向する一方の対辺が第1刃先12となり、他方の対辺が第2刃先14となっていてもよいし、図4(B)に示すように、台形形状の切断刃10において、台形形状の一方の脚部分が第1刃先12となり、他方の脚部分が第2刃先14となっていてもよいし、図4(C)に示すように、正六角形の互いに対向する一対の対辺を長くした形状とされ、その長さ方向の一方の端部が第1刃先12となり、他方の端部が第2刃先14となっていてもよいし、図4(D)に示すように、矩形形状とされ、互いに対向する一方の対辺が第1刃先12となり、他方の対辺が第2刃先14となっていてもよい。
切断刃10の非粘着処理は、特に限定されることはなく、例えば、フッ素コート、シリコーンコート、サンドブラスト、または溶射が施されてもよい。
第1刃先12および第2刃先14は、互いに連続して設けられていてもよいし、互いに連続せず別々に設けられていてもよい。
切断刃10をスライドさたり、第1刃先12と第2刃先14との位置を入れ替えたりするまでの相応の期間は、6カ月に限られず、6カ月未満であってもよいし、6カ月より長くてもよい。
【0039】
保持手段20は、スペーサ21Bに代えてまたは併用して、一対の挟持部材21Aの一方または両方に切断刃10を受容可能な溝が形成されていてもよいし、切断刃10の一方の面側および他方の面側の両方にスペーサ21Bが設けられていてもよいし、スペーサ21Bが備わっていてもよいし、備わっていなくてもよい。
保持手段20は、フィルムASに対する切断刃10の傾斜角度を調整可能に構成されてもよい。即ち、保持手段20は、例えば、一対の挟持部材21Aで切断刃10を挟持する際、挟持部材21Aに対する切断刃10の角度を変更することで、切断刃10の傾斜角度を調整可能としてもよいし、第1保持部材21をメカチャックやチャックシリンダ等の把持手段で構成し、当該把持手段で第1保持部材21を把持する際、把持手段に対する第1保持部材21の角度を変更することで、切断刃10の傾斜角度を調整可能としてもよいし、凹部22Aの傾斜角度が異なる複数の第2保持部材22を予め用意し、第2保持部材22を交換することで、切断刃10の傾斜角度を調整可能としてもよいし、ロッドレスシリンダ41のスライドテーブル41Aに支持された駆動機器としての回動モータの出力軸で第2保持部材22を支持し、回動モータで第2保持部材22を回転させることで、切断刃10の傾斜角度を調整可能としてもよい。
【0040】
支持手段30は、ガイドローラ34に代えてまたは併用して、例えば、切断刃10を挿通可能な挿通孔が設けられた吸引部でフィルムASを吸引することで、フィルムASの弛みを除去するとともに、当該フィルムASを切断位置に支持してもよい。
【0041】
切断手段40は、ロッドレスシリンダ41が一対のアーム32に支持されずに独立して配置された構成であってもよい。この場合、ロッドレスシリンダ41は、切断刃10でフィルムASを切断することができるように、ニップローラ33で第2巻取軸58に押圧されたフィルムASの近傍に配置されてもよい。
【0042】
巻取手段50は、回動モータ57および第2巻取軸58に代えて、第1アーム53にガイドローラが支持されていてもよいし、回動モータ55および第1巻取軸56以外の構成が備わっていなくてもよく、フィルムASが切断されて巻き取られた巻取コアCRが第1巻取軸56から取り除かれた後、再び第1巻取軸56に巻取コアCRを固定し、当該第1巻取軸56でフィルムASを巻き取ってもよい。
【0043】
フィルムASは、長尺状のものであれば、その材質、種別、形状等は、特に限定されることはない。例えば、フィルムASは、粘着剤層だけの単層のもの、基材シートと粘着剤層との間に中間層を有するもの、基材シートの上面にカバー層を有する等3層以上のもの、更には、粘着剤層の両面に剥離ライナーが積層された所謂両面粘着フィルムのようなものであってもよく、両面粘着フィルムは、単層又は複層の中間層を有するものや、中間層のない単層又は複層のものであってよい。なお、フィルムASを機能的、用途的な読み方に換え、例えば、保護フィルム、ハードコートフィルム等の任意のフィルムを用いることができる。
【0044】
本発明における手段および工程は、それら手段および工程について説明した動作、機能または工程を果たすことができる限りなんら限定されることはなく、まして、前記実施形態で示した単なる一実施形態の構成物や工程に全く限定されることはない。例えば、保持手段は、切断刃を保持可能なものであればどのようなものでもよく、出願当初の技術常識に照らし合わせてその技術範囲内のものであればなんら限定されることはない(その他の手段および工程も同じ)。
【0045】
前記実施形態における駆動機器は、回動モータ、直動モータ、リニアモータ、単軸ロボット、2軸または3軸以上の関節を備えた多関節ロボット等の電動機器、エアシリンダ、油圧シリンダ、ロッドレスシリンダおよびロータリシリンダ等のアクチュエータ等を採用することができる上、それらを直接的又は間接的に組み合せたものを採用することもできる。
前記実施形態において、ローラ等の回転部材が採用されている場合、当該回転部材を回転駆動させる駆動機器を備えてもよいし、回転部材の表面や回転部材自体をゴムや樹脂等の変形可能な部材で構成してもよいし、回転部材の表面や回転部材自体を変形しない部材で構成してもよいし、ローラの代わりに回転するまたは回転しないシャフトやブレード等の他の部材を採用してもよいし、押圧ローラや押圧ヘッド等の押圧手段や押圧部材といった被押圧物を押圧するものが採用されている場合、上記で例示したものに代えてまたは併用して、ローラ、丸棒、ブレード材、ブラシ状部材の他、大気やガス等の気体の吹き付けによるものを採用してもよいし、押圧するものをゴム、樹脂、スポンジ等の変形可能な部材で構成してもよいし、金属や樹脂等の変形しない部材で構成してもよいし、支持(保持)手段や支持(保持)部材等の被支持部材(被保持部材)を支持(保持)するものが採用されている場合、メカチャックやチャックシリンダ等の把持手段、クーロン力、接着剤(接着シート、接着テープ)、粘着剤(粘着シート、粘着テープ)、磁力、ベルヌーイ吸着、吸引吸着、駆動機器等で被支持部材を支持(保持)する構成を採用してもよいし、付勢手段が採用されている場合、ばね、ゴム、樹脂または駆動機器等で構成してもよい。
【符号の説明】
【0046】
EA…フィルム切断装置
EA1…巻取装置
10…切断刃
11…第1切先
12…第1刃先
13…第2切先
14…第2刃先
20…保持手段
30…支持手段
40…切断手段
AS…フィルム
図1
図2
図3
図4