(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154223
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】オレフィン共重合体の製造方法および遷移金属化合物
(51)【国際特許分類】
C08F 4/6592 20060101AFI20221005BHJP
C08F 210/02 20060101ALI20221005BHJP
C08F 232/00 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
C08F4/6592
C08F210/02
C08F232/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057142
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 雅貴
(72)【発明者】
【氏名】山村 雄一
【テーマコード(参考)】
4J100
4J128
【Fターム(参考)】
4J100AA02P
4J100AR00Q
4J100AR09Q
4J100AR09R
4J100BC41R
4J100CA03
4J100DA09
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4J100FA10
4J100FA19
4J100GA01
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4J100GC35
4J100JA32
4J100JA33
4J128AA01
4J128AB01
4J128AC10
4J128AD05
4J128AD08
4J128AD11
4J128AD16
4J128BA00A
4J128BA02B
4J128BB00A
4J128BB01B
4J128BC12B
4J128BC15B
4J128EA01
4J128EB02
4J128EB26
4J128EC04
4J128FA02
4J128GA04
4J128GA26
(57)【要約】 (修正有)
【課題】芳香族構造を含む環状オレフィン共重合体を効率よく製造出来る方法を提供する。また前記製造方法のオレフィン重合用触媒の成分として好適な新規遷移金属化合物を提供する。
【解決手段】配位子としてシクロペンタジエニル環とピラゾール環を有する第4族遷移金属メタロセン化合物を含むオレフィン重合用触媒の存在下に、エチレンと脂肪族環状オレフィンと、芳香族構造を含む環状オレフィンとを共重合させる方法による。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式[A]で表される遷移金属化合物と
(B)(B-1)有機金属化合物、
(B-2)有機アルミニウムオキシ化合物、および
(B-3)前記遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物
からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と
を含むオレフィン重合用触媒の存在下に
エチレンと、脂環族環状オレフィンと、芳香族構造を含む環状オレフィンとを共重合させるオレフィン共重合体の製造方法。
【化1】
〔式[A]において、
Mはチタン原子、ジルコニウム原子、またはハフニウム原子であり、
nは1~4の整数であり、
Xはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、リン含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、またはジエン系二価誘導体基であり、
R
1`~R
8`はそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~20の炭化水素基、ハロゲン原子、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、窒素含有基、イオウ含有基、またはリン含有基であり、
R
1`~R
5`のうち隣接する基同士は互いに結合して環を形成していてもよく、
R
6`~R
8`の少なくとも1つは芳香族構造を有する置換基である。〕
【請求項2】
前記一般式[A]において、Mはチタン原子である請求項1に記載のオレフィン共重合体の製造方法。
【請求項3】
前記一般式[A]において、R1`は炭素原子数1~20の炭化水素基であり、R2`~R5`は水素原子である請求項1に記載のオレフィン共重合体の製造方法。
【請求項4】
下記一般式[A-1]で表わされる遷移金属化合物。
【化2】
〔式[A-1]において、
Mはチタン原子、ジルコニウム原子、またはハフニウム原子であり、
nは1~4の整数であり、
Xはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、リン含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、またはジエン系二価誘導体基であり、
R
1`~R
8`はそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~20の炭化水素基、ハロゲン原子、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、窒素含有基、イオウ含有基、またはリン含有基であり、
R
1`~R
5`の何れかは、炭素原子数1~20の炭化水素基、ハロゲン原子、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、窒素含有基、イオウ含有基、またはリン含有基であり、
R
1`~R
5`のうち隣接する基同士は互いに結合して環状構造を形成していてもよく、
R
6`~R
8`の少なくとも1つは芳香族構造を有する置換基である。〕
【請求項5】
前記一般式[A-1]において、Mはチタン原子である請求項4に記載の遷移金属化合物。
【請求項6】
前記一般式[A-1]において、R1`は炭素原子数1~20の炭化水素基であり、R2`~R5`は水素原子である請求項4に記載の遷移金属化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はオレフィン共重合体の製造方法に関する。また本発明は新規な遷移金属化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エチレン・α-オレフィン共重合体などのオレフィン重合体を製造するための触媒として、メタロセン化合物と有機アルミニウムオキシ化合物などの共触媒とからなる触媒が知られている。
【0003】
様々なタイプのメタロセン化合物等の遷移金属化合物が盛んに開発されており、たとえば特許文献1には、下記一般式で表される遷移金属化合物(A):
【0004】
【化1】
(式中、MはTi等の周期律表4族の遷移金属を表し、Lは周期律表15族の元素が配位原子となる1価のアニオン性配位子を表し、Xはハロゲン等を表し、mは1~3の整数を表し、R
1~R
5は、水素、ハロゲン又は炭素原子数1~20のアルキル基等を表す。)
ならびに有機アルミニウムオキシ化合物および有機ホウ素化合物から選ばれる1種以上の活性化剤(B)からなる重合触媒の存在下、エチレンおよび/または炭素原子数3~20のα-オレフィンと少なくとも1種類の環状オレフィン化合物との共重合を行う環状オレフィン系共重合体の製造方法が記載され、遷移金属化合物(A)の具体例としては、CpTi(t-Bu
2C=N)Cl
2、およびCp
*Ti(2,6-
iPr
2PhO)Cl
2が挙げられている。(Cpはシクロペンタジエニル基を、Cp
*はη
5-ペンタメチルシクロペンタジエニル基を表す。)。
【0005】
また非特許文献1には、下式で表される遷移金属化合物およびメチルアルミノキサン(MAO)の存在下で、エチレンとノルボルネン等との共重合が行われたことが記載されている。
【0006】
【0007】
また、エチレンと、脂環族環状オレフィンと、芳香族構造を含む環状オレフィンとの共重合体が、レンズ用の樹脂などに好適であることが報告されている。(例えば特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007-63409号公報
【特許文献2】国際公開第2019/107363号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Macromolecules 2011, 44, 1986-1998
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
メタロセン化合物として非特許文献1に記載された遷移金属化合物をオレフィン重合用触媒は、エチレンと、脂環族環状オレフィンと、芳香族構造を含む環状オレフィンとの共重合体に好適であると考えられたが、本発明者らの検討では、芳香族構造を有する環状オレフィンの含有率の高い重合体を得にくい結果が得られた。これは芳香族構造を含む環状オレフィンを用いたことで、前記遷移金属化合物由来の活性点に芳香族構造由来の電子的な影響がおよび、重合速度を低下させ、連鎖移動速度が相対的に高まった可能性が考えられた。
【0011】
よって本発明は、エチレンと、脂環族環状オレフィンと、芳香族構造を含む環状オレフィンとの共重合体の好適な製造方法を提供することを目的としている。また好ましくは前記の製造方法に好適である遷移金属化合物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、たとえば以下の[1]~[6]に関する。
[1]
(A)下記一般式[A]で表される遷移金属化合物と
(B)(B-1)有機金属化合物、
(B-2)有機アルミニウムオキシ化合物、および
(B-3)前記遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物
からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と
を含むオレフィン重合用触媒の存在下に
エチレンと、脂環族環状オレフィンと、芳香族構造を含む環状オレフィンとを共重合させるオレフィン共重合体の製造方法。
【化3】
〔式[A]において、
Mはチタン原子、ジルコニウム原子、またはハフニウム原子であり、
nは1~4の整数であり、
Xはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、リン含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、またはジエン系二価誘導体基であり、
R
1`~R
8`はそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~20の炭化水素基、ハロゲン原子、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、窒素含有基、イオウ含有基、またはリン含有基であり、
R
1`~R
5`のうち隣接する基同士は互いに結合して環を形成していてもよく、
R
6`~R
8`の少なくとも1つは芳香族構造を有する置換基である。〕
【0013】
[2]
前記一般式[A]において、Mはチタン原子である前記[1]のオレフィン共重合体の製造方法。
【0014】
[3]
前記一般式[A]において、R1`は炭素原子数1~20の炭化水素基であり、R2`~R5`は水素原子である前記[1]のオレフィン共重合体の製造方法。
【0015】
[4]
下記一般式[A-1]で表わされる遷移金属化合物。
【0016】
【化4】
〔式[A-1]において、
Mはチタン原子、ジルコニウム原子、またはハフニウム原子であり、
nは1~4の整数であり、
Xはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、リン含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、またはジエン系二価誘導体基であり、
R
1`~R
8`はそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~20の炭化水素基、ハロゲン原子、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、窒素含有基、イオウ含有基、またはリン含有基であり、
R
1`~R
5`の何れかは、炭素原子数1~20の炭化水素基、ハロゲン原子、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、窒素含有基、イオウ含有基、またはリン含有基であり、
R
1`~R
5`のうち隣接する基同士は互いに結合して環状構造を形成していてもよく、
R
6`~R
8`の少なくとも1つは芳香族構造を有する置換基である。〕
【0017】
[5]
前記一般式[A-1]において、Mはチタン原子である前記[4]の遷移金属化合物。
【0018】
[6]
前記一般式[A-1]において、R1`は炭素原子数1~20の炭化水素基であり、R2`~R5`は水素原子である前記[4]の遷移金属化合物。
【発明の効果】
【0019】
本発明のオレフィン共重合体の製造方法を用いる事により、芳香族構造を含む環状オレフィンの含有率が高く、また、ガラス転移温度の高い重合体を製造することが出来る。
また本発明のオレフィン共重合体の製造方法に用いる遷移金属化合物は、新規な化合物である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るオレフィン共重合体の製造方法や遷移金属化合物等をさらに詳細に説明する。
【0021】
〔遷移金属化合物〕
本発明のオレフィン共重合体の製造方法に用いる遷移金属化合物(A)は、下記一般式[A]で表される。
【0022】
【化5】
また、遷移金属化合物(A)の中の特定の構造の遷移金属化合物(A-1)は、新規な化合物である。
【0023】
[遷移金属化合物(A)]
まず、遷移金属化合物(A)について説明する。
【0024】
《M》
式[A]において、Mはチタン原子、ジルコニウム原子、またはハフニウム原子を示し、好ましくはチタン原子、またはジルコニウム原子を示し、さらに好ましくはチタン原子を示す。
【0025】
《R
1`
~R
8`
》
式[A]において、R1`~R8`はそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~20の炭化水素基、ハロゲン原子、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、窒素含有基、イオウ含有基、またはリン含有基であり、R1`~R5`のうち隣接する基同士は互いに結合して環を形成していてもよい。
【0026】
前記ハロゲン原子の例としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
前記炭化水素基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ネオペンチル、n-ヘキシルなどの炭素原子数が1~20、好ましくは1~10の直鎖状または分岐状のアルキル基;
ビニル、アリル(allyl)、イソプロペニルなどの炭素原子数が2~20、好ましくは2~10の直鎖状または分岐状のアルケニル基;
エチニル、プロパルギルなど炭素原子数が2~20、好ましくは2~10の直鎖状または分岐状のアルキニル基;
シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、アダマンチルなどの炭素原子数が3~20、好ましくは3~10の環状飽和炭化水素基;
シクロペンタジエニル、インデニル、フルオレニルなどの炭素原子数5~20の環状不飽和炭化水素基;フェニル、ベンジル、ナフチル、ビフェニル、ターフェニル、フェナントリル、アントラセニルなどの炭素原子数が6~20、好ましくは6~10のアリール基;ならびに
トリル、iso-プロピルフェニル、t-ブチルフェニル、ジメチルフェニル、ジ-t-ブチルフェニルなどのアルキル置換アリール基
が挙げられる。
【0027】
また、例示した前記炭化水素基の水素原子が炭化水素基で置換されたもの、たとえば、ベンジル、クミルなどのアリール基置換アルキル基なども挙げられる。
R1`~R5`のうち隣接する基同士が互いに結合して形成された環を有するシクロペンタジエニル部の例としては、以下の環構造が挙げられ、該環構造はさらに置換基を有していてもよい。
【0028】
【化6】
上記の互いに結合して形成された環は、脂環族構造でも芳香族構造を含む環構造であっても良い。好ましくは脂環族構造であり、炭化水基等の置換基を有する構造であることが好ましい。特に、後述する様な嵩高い置換基を含む構成であることが好ましい。
【0029】
前記ハロゲン含有基の例としては、トリフルオロメチル、ペンタフルオロフェニル、クロロフェニルなどの炭素原子数1~20、好ましくは1~10のハロゲン化炭化水素基が挙げられる。
【0030】
前記ケイ素含有基の例としては、シリル基、シロキシ基、炭化水素置換シリル基、および炭化水素置換シロキシ基が挙げられる。このうち炭化水素置換シリル基として具体的には、メチルシリル、ジメチルシリル、トリメチルシリル、エチルシリル、ジエチルシリル、トリエチルシリル、ジフェニルメチルシリル、トリフェニルシリル、ジメチルフェニルシリル、ジメチル-t-ブチルシリル、ジメチル(ペンタフルオロフェニル)シリルなどが挙げられる。これらの中では、メチルシリル、ジメチルシリル、トリメチルシリル、エチルシリル、ジエチルシリル、トリエチルシリル、ジメチルフェニルシリル、トリフェニルシリルなどが好ましい。特にトリメチルシリル、トリエチルシリル、トリフェニルシリル、ジメチルフェニルシリルが好ましい。炭化水素置換シロキシ基として具体的には、トリメチルシロキシなどが挙げられる。
【0031】
前記酸素含有基の例としては、アルコシキ基、アリーロキシ基、エステル基、エーテル基、アシル基、カルボキシル基、カルボナート基、ヒドロキシ基、ペルオキシ基、カルボン酸無水物基、およびフリル基が挙げられる。
【0032】
酸素含有基のうち、アルコキシ基の好ましい例としては、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、およびtert-ブトキシが挙げられ、
アリーロキシ基の好ましい例としては、フェノキシ、2,6-ジメチルフェノキシ、および2,4,6-トリメチルフェノキシが挙げられ、
エステル基の好ましい例としては、アセチルオキシ、ベンゾイルオキシ、メトキシカルボニル、フェノキシカルボニル、およびp-クロロフェノキシカルボニルが挙げられ、
アシル基の好ましい例としては、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基、p-クロロベンゾイル基、およびp-メトキシベンゾイル基が挙げられる。
【0033】
前記イオウ素含有基の例としては、メルカプト基、チオエステル基、ジチオエステル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、チオアシル基、チオエーテル基、チオシアン酸エステル基、イソチオシアン酸エステル基、スルホンエステル基、スルホンアミド基、チオカルボキシル基、ジチオカルボキシル基、スルホ基、スルホニル基、スルフィニル基、およびスルフェニル基が挙げられる。
【0034】
イオウ含有基のうち、チオエステル基の好ましい例としては、アセチルチオ、ベンゾイルチオ、メチルチオカルボニル、フェニルチオカルボニルが挙げられ、
アルキルチオ基の好ましい例としては、メチルチオ、エチルチオが挙げられ、
アリールチオ基の好ましい例としては、フェニルチオ、メチルフェニルチオ、ナフチルチオが挙げられ、
スルホンエステル基の好ましい例としては、スルホン酸メチル、スルホン酸エチル、スルホン酸フェニルが挙げられ、
スルホンアミド基の好ましい例としては、フェニルスルホンアミド、N-メチルスルホンアミド、N-メチル-p-トルエンスルホンアミドが挙げられる。
【0035】
前記窒素含有基の例としては、アミノ基、イミノ基、アミド基、イミド基、ピロリジノ基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、イソシアノ基、シアン酸エステル基、アミジノ基、ジアゾ基、およびアミノ基がアンモニウム塩となったものが挙げられる。
【0036】
窒素含有基のうち、アミノ基の好ましい例としては、ジメチルアミノ、エチルメチルアミノ、およびジフェニルアミノが挙げられ、
イミノ基の好ましい例としては、メチルイミノ、エチルイミノ、プロピルイミノ、ブチルイミノ、およびフェニルイミノが挙げられ、
アミド基の好ましい例としては、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、およびN-メチルベンズアミドが挙げられ、
イミド基の好ましい例としては、アセトイミド、およびベンズイミドが挙げられる。
【0037】
前記リン含有基の例としては、ホスフィド基、ホスホリル基、チオホスホリル基、およびホスファト基が挙げられる。
【0038】
(R
1`
~R
5`
)
R1`~R5`の中の1つ以上は、特に、メチル、エチル、n-ブロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、ネオペンチル、n-ヘキシルなどの炭素原子数1~20、好ましくは1~10の直鎖状または分岐状のアルキル基;
フェニル、ナフチル、ビフェニル、ターフェニル、フェナントリル、アントラセニルなどの炭素原子数6~20、好ましくは6~10のアリール基;
これらのアリール基の1つ以上の水素原子がハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基またはアリーロキシ基などで置換された置換アリール基
などの炭素原子数1~20の炭化水素基であることが好ましい。本発明において、この様な置換基を1つ以上含む遷移金属化合物は新規化合物であり、例えば後述するオレフィン重合用触媒の成分として好ましい態様である。
【0039】
また、R1`~R5`の中の1つ以上が水素原子であることも好ましい。本発明において、水素原子とは、H-で表される置換基としての水素の事を指す。
上記の態様の中でも、R1`が炭素原子数1~20の炭化水素基であり、R2`~R5`はは水素原子であることが好ましい。前記のR1’は、特に2級炭化水素基、3級炭化水素基から選ばれることが好ましく、特には3級炭化水素基が好ましい。
【0040】
(R
6`
~R
8`
)
式[A]において、R6`~R8`の1つ以上は、芳香族構造を有する置換基である。この様な炭化水素基は、炭素原子数4~20の芳香族炭化水素基であり、具体的には、フェニル基、トリル基、エチルフェニル基、ナフチル基等を挙げることが出来る。勿論、前記芳香族構造は、ハロゲン、ケイ素、酸素、窒素、イオウ、リンなどの所謂ヘテロ原子を含有する構造であっても良い。例えば、ピリジル基や置換ピリジル基等、芳香環構造にヘテロ原子を含む構造や、アルコキシフェニル基等のヘテロ原子を有する置換基を有するフェニル基やナフチル基などのような構造を挙げることが出来る。好ましくは、前記のようなヘテロ原子を有する置換基を含有する芳香族置換基である。この様な置換基として好ましくは、フェニル基、トリル基、ナフチル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基等を挙げることが出来る。
【0041】
上記の中では、R6`および/またはR7`が芳香族構造を有する置換基であることが好ましい。また、2つ以上が芳香族構造を有する置換基であることが好ましい。特には、R6`およびR7`の両方が芳香族構造を有する置換基であることが好ましい。
【0042】
《n》
式[A]において、nは1~4の整数であり、Mの価数およびXの種類に応じて、遷移金属化合物(A)全体として電気的に中性になるように選択される。
【0043】
《X》
式[A]において、Xはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、リン含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、またはジエン系二価誘導体基である。
【0044】
これらのハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、およびリン含有基の具体的な態様は、上述したR1`~R5`およびR8`としてのハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、およびリン含有基の具体的な態様と同様である。
【0045】
前記ホウ素含有基の例としては、ボランジイル基、ボラントリイル基、ジボラニル基、ならびにアルキル基置換ホウ素、アリール基置換ホウ素、ハロゲン化ホウ素、およびアルキル基置換ハロゲン化ホウ素等の基が挙げられる。
【0046】
アルキル基置換ホウ素の例としては、(Et)2B-、(iPr)2B-、(iBu)2B-、(Et)3B、(iPr)3B、または(iBu)3Bで表される基が挙げられ、
アリール基置換ホウ素の例としては、(C6H5)2B-、(C6H5)3B、(C6F5)3B、または(3,5-(CF3)2C6H3)3Bで表される基が挙げられ、
ハロゲン化ホウ素の例としては、BCl2-、またはBCl3で表される基が挙げられ、
アルキル基置換ハロゲン化ホウ素の例としては、(Et)BCl-、(iBu)BCl-、(C6H5)2BClで表される基が挙げられる。このうち三置換のホウ素については、配位結合した状態であることがある。ここで、Etはエチル基、iPrはイソプロピル基、iBuはイソブチル基を表す。
【0047】
前記アルミニウム含有基の例としては、アルキル基置換アルミニウム、アリール基置換アルミニウム、ハロゲン化アルミニウム、アルキル基置換ハロゲン化アルミニウム等の基が挙げられる。
【0048】
アルキル基置換アルミニウムの例としては、(Et)2Al-、(iPr)2Al-、(iBu)2Al-、(Et)3Al、(iPr)3Al、または(iBu)3Alで表される基が挙げられ、
アリール基置換アルミニウムの例としては、(C6H5)2Al-で表される基が挙げられ、
ハロゲン化アルミニウムの例としては、AlCl2-、またはAlCl3で表される基が挙げられ、
アルキル基置換ハロゲン化アルミニウムの例としては、(Et)AlCl-、(iBu)AlCl-で表される基が挙げられる。このうち三置換のアルミニウムについては、配位結合した状態であることがある。ここで、Etはエチル基、iPrはイソプロピル基、iBuはイソブチル基を表す。
【0049】
前記ジエン系二価誘導体基の例としては、1,3-ブタジエニル基、イソプレニル(2-メチル-1,3-ブタジエニル)基、ピペリレニル(1,3-ペンタジエニル)基、2,4-ヘキサジエニル基、1,4-ジフェニル-1,3-ペンタジエニル基、シクロペンタジエニル基など、メタロシクロペンテン基が挙げられる。
【0050】
またXは、Xの具体例として挙げた基同士が互いに結合した構造であって、Mと共に環を形成していてもよい。たとえば、Xは、2つのアルキル基が結合した構造のアルキレン基であって、このアルキレン基がMと共に環を形成していてもよい。
遷移金属化合物(A)の具体例としては、下式で表される化合物が挙げられる。
【0051】
【0052】
遷移金属化合物(A)の存在下でエチレンと、脂環族構造の環状オレフィンと、芳香族構造を含む環状オレフィンとの共重合を行うと、分子量の高い共重合体を比較的高い活性で製造することが出来る。これは、R6`~R8`の少なくとも1つ、特にはR6`およびR7`が芳香族構造を有する置換基であれば、後述する芳香族構造を有する環状オレフィンの芳香族構造部分との親和性が高いと推測されるので、前記環状オレフィンの重合反応活性点(遷移金属化合物(A)の金属原子Mと考えられている)への影響を緩和させる効果がある可能性が考えられる。また、前記の親和性により、重合反応活性点廻りの芳香族構造を有する環状オレフィンの局部的な濃度を高める効果が有る為、前記環状オレフィンの反応性を高める可能性もあると考えられる。
【0053】
【化8】
上記のR
1`~R
8`、M、Xおよびnは、全て遷移金属化合物(A)を表す一般式[A]におけるR
1`~R
8`、M、Xおよびnと同義である。但し、前記した通り、R
1`~R
5`の何れかは、炭素原子数1~20の炭化水素基、ハロゲン原子、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、窒素含有基、イオウ含有基、またはリン含有基である。
【0054】
上記の様な化合物は新規な化合物であり、この化合物をオレフィン重合用触媒として用いると、高いガラス転移温度の重合体を得やすい傾向がある。
【0055】
〔遷移金属化合物の製造方法〕
本発明の遷移金属化合物(A)は公知の方法を組み合わせることによって製造可能であり、代表的な合成経路の一例を以下に示すが、特に製造方法が限定されるわけではない。製造方法としては、たとえば、
下記一般式[a-1]で表されるピラゾール化合物(a-1)とアルキルリチウム(a-2)とを反応させて下記一般式[a-3]で表されるピラゾール化合物のアニオン体(a-3)を製造する工程(1-1)、および
前記アニオン体(a-3)と下記一般式[a-4]で表される化合物(a-4)とを反応させて前記一般式[A]で表される遷移金属化合物(A)を製造する工程(1-2)
を含む製造方法が挙げられる。
【0056】
【化9】
〔式[a-1]、式[a-3]および式[a-4]中、R
1`~R
8`、M、Xおよびnは、それぞれ式[A]中のR
1`~R
8`、M、Xおよびnと同義である。〕
【0057】
まず、各種シクロペンタジエン化合物は公知の方法によって製造可能であり、特に製造方法が限定されるわけではない。例えば、特開2000-136195号公報、特開2009-24019号公報、特許第3674509号、国際公開第1998/015510号、国際公開第2000/049029号、「J.Оrganomet.Chem. 1999,577,211.」、「J.Organomet.Chem. 2003,677,133.」、「Оrganometallics 1988,7,1828.」、「Оrganometallics 1996,15,4857.」、「Оrganometallics 1997,16,2503.」、「Organometallics 2004,23,4693.」、「J.Am.Chem.Soc. 2004,126,2089.」、「Macromol.Chem.Phys. 2004,205,2275.」、「Оrg.Lett. 2008,10,2545.」、「Chem.Rev. 1992,92,965.」、「Science 2012,338,504.」「Organometallics2006,25,3824.」などに記載された製造方法が挙げられる。
【0058】
各種シクロペンタジエン化合物から化合物(a-4)に誘導する方法は公知であり、特に製造方法が限定されるわけではない。公知の製造方法として、例えば「Organometallics2006,25,631.」、「Macromolecules2000,33,2796.」、「J.Organomet.Chem.1995,489,195.」、「J.Am.Chem.Soc.1996,118,1906.」、「Organometallics2006,25,3824.」などに記載された製造方法が挙げられる。
【0059】
ピラゾール化合物(a-1)は公知の方法によって製造可能であり、特に製造法が限定されるわけではない。公知の製造方法として例えば、「J.Org.Chem.1985,50,4736.」、「Inorg.Chem.2012,51,150.」、特開2012-121875号公報に記載された製造方法が挙げられる。
【0060】
ピラゾール化合物のアニオン体(a-3)は公知の方法によって製造可能であり、特に製造方法が限定されるわけではない。公知の製造方法として例えば前記ピラゾール化合物の製造方法として挙げたものに加え、「Adv.Synth.Catal.2005,347,463.」「Organometallics,1997,16,2709.」、「Organometallics,2000,19,2707.」「Inorg.Chem.2009,48,5011.」などに記載された製造方法が挙げられる。
【0061】
本発明の遷移金属化合物(A)は、一般式[a-4]で表される化合物(a-4)とピラゾール化合物のアニオン体(a-3)を用いて公知の方法によって製造可能である。ただし、この際に所望の前記遷移金属化合物(A)の構造に対応するように、ピラゾール化合物のアニオン体(a-3)および化合物(a-4)を特定の組み合わせで選択する。両者を反応させるには、公知の製造方法を参考にすることができ、そのような製造方法として、前記ピラゾール化合物のアニオン体の製造方法に加え、例えば「Macromolecules,2011,44,1986.」などに記載された製造方法が挙げられる。
【0062】
〔オレフィン重合用触媒〕
本発明のオレフィン重合用触媒は、
(A)上述した本発明に係る遷移金属化合物と、
(B)(B-1)有機金属化合物、
(B-2)有機アルミニウムオキシ化合物、および
(B-3)遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物
からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と
を含むことを特徴としている。
【0063】
本発明のオレフィン重合用触媒は、必要に応じて、さらに(C)担体を含んでいてもよく、さらに(D)有機化合物を含んでいてもよい。
【0064】
〈化合物(B)〉
《有機金属化合物(B-1》
有機金属化合物(B-1)(以下「成分(B-1)」ともいう。)としては、例えば、一般式(B-1a)で表される有機アルミニウム化合物(B-1a)、一般式(B-1b)で表される第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物(B-1b)、一般式(B-1c)で表される第2族または第12族金属のジアルキル化合物(B-1c)等の、第1、2族および第12、13族の有機金属化合物が挙げられる。
【0065】
(B-1a):Ra
mAl(ORb)nHpXq
式(B-1a)中、RaおよびRbはそれぞれ独立に炭素数1~15、好ましくは1~4の炭化水素基であり、Xはハロゲン原子であり、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3を満たす数であり、かつm+n+p+q=3である。有機アルミニウム化合物(B-1a)としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムハイドライド等のジアルキルアルミニウムハイドライド、トリシクロアルキルアルミニウムが挙げられる。
【0066】
(B-1b):M2AlRa
4
式(B-1b)中、M2はLi、NaまたはKであり、Raは炭素数1~15、好ましくは1~4の炭化水素基である。錯アルキル化物(B-1b)としては、例えば、LiAl(C2H5)4、LiAl(C7H15)4が挙げられる。
【0067】
(B-1c):RaRbM3
式(B-1c)中、RaおよびRbはそれぞれ独立に炭素数1~15、好ましくは1~4の炭化水素基であり、M3はMg、ZnまたはCdである。化合物(B-1c)としては、例えば、ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジn-ブチルマグネシウム、エチルn-ブチルマグネシウム、ジフェニルマグネシウム、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジn-ブチル亜鉛、ジフェニル亜鉛が挙げられる。
【0068】
有機金属化合物(B-1)の中では、有機アルミニウム化合物(B-1a)が好ましい。
有機金属化合物(B-1)は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0069】
《有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)》
有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)(以下「成分(B-2)」ともいう。)としては、従来公知のアルミノキサンをそのまま使用することができる。具体的には、下記一般式[B2-1]
【0070】
【0071】
【化11】
(式中、Rは炭素数1から10の炭化水素基、nは2以上の整数を示す)
で表わされる化合物、特開平2-78687号公報、特開平2-167305号公報に記載れたベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物、特開平3-103407号公報に記載されている二種類以上のアルキル基を有するアルミノキサンが挙げられる。
【0072】
また、有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)として、下記一般式[B2-3]で表されるような修飾メチルアルミノキサン等も挙げられる。
【0073】
【化12】
(式中、Rは炭素数1から10の炭化水素基、mおよびnはそれぞれ独立に2以上の整数を示す。)
【0074】
この修飾メチルアルミノキサンはトリメチルアルミニウムとトリメチルアルミニウム以外のアルキルアルミニウムを用いて調製されるものである。このような化合物は一般にMMAOと呼ばれている。このようなMMAOは、米国特許第4960878号明細書および米国特許第5041584号明細書で挙げられている方法で調製することができる。
【0075】
さらに、有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)として、下記一般式[B2-4]で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物も挙げることができる。
【0076】
【化13】
(式中、R
cは炭素数1から10の炭化水素基を示す。R
dは、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1から10の炭化水素基を示す。)
【0077】
有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)としては、市販品のために入手が容易なメチルアルミノキサン、およびトリメチルアルミニウムとトリイソブチルアルミニウムを用いて調製したMMAOが好ましい。このうち、各種溶媒への溶解性および保存安定性が改良されたMMAOが特に好ましい。
【0078】
《遷移金属錯体(A)と反応してイオン対を形成する化合物(B-3)》
遷移金属錯体(A)と反応してイオン対を形成する化合物(B-3)(以下「イオン性化合物(B-3)」または「成分(B-3)」ともいう。)としては、特表平1-501950号公報、特表平1-502036号公報、特開平3-179005号公報、特開平3-179006号公報、特開平3-207703号公報、特開平3-207704号公報、USP5321106号などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物などを挙げることができる。さらに、ヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物も挙げることができる。ただし、前述の(B-2)有機アルミニウムオキシ化合物は含まない。
【0079】
イオン性化合物(B-3)としては、好ましくは下記一般式[B3-1]で表されるホウ素化合物が挙げられる。
【0080】
【化14】
式中、R
e+としては、H
+、カルベニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプチルトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオンなどが挙げられる。R
fからR
iは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数1から20の炭化水素基、ケイ素含有基、窒素含有基、酸素含有基、ハロゲン原子およびハロゲン含有基から選ばれる置換基であり、好ましくは置換アリール基である。
【0081】
前記一般式[B3-1]で表されるホウ素化合物の例としては、国際公開第2015/122414号の[0133]~[0144]に記載されたものを挙げることができる。
イオン性化合物(B-3)は、1種単独で用いてもよく2種以上を混合して用いでもよい。
【0082】
(担体(C))
前記担体(C)は、無機または有機の化合物であって、顆粒状ないしは微粒子状の固体であり、触媒成分として遷移金属錯体および担体を使用したオレフィン重合において従来使用されているもの、たとえば特開2011-122146号公報の[0110]~[0122]に記載されたものを使用することができる。
【0083】
(有機化合物成分(D))
前記オレフィン重合用触媒の構成成分として、必要に応じて有機化合物成分(D)を用いてもよい。有機化合物成分(D)は、重合性能および生成ポリマーの物性を向上させる目的で使用される。有機化合物成分(D)としては、例えば、アルコール類、フェノール性化合物、カルボン酸、リン化合物、アミド、ポリエーテルおよびスルホン酸塩等が挙げられる。
【0084】
〔オレフィン重合体の製造方法〕
本発明のオレフィン重合体の製造方法は、上述した本発明のオレフィン重合用触媒の存在下でオレフィンを重合することを特徴としている。
【0085】
本発明のオレフィン重合体の製造方法においては、1種のオレフィンを重合してオレフィン単独重合体を製造してもよく、2種以上のオレフィンを共重合してオレフィン共重合体を製造してもよい。本明細書においては、重合と共重合とを特に区別することなく「重合」とも記載し、オレフィン単独重合体とオレフィン共重合体とを特に区別することなく「オレフィン重合体」とも記載する。
【0086】
重合における、本発明のオレフィン重合用触媒を構成する各成分の使用法、重合器への添加順序は任意に選ばれるが、以下のような方法が例示される。以下では、遷移金属錯体(A)、化合物(B)、担体(C)および有機化合物成分(D)を、それぞれ「成分(A)~(D)」ともいう。
(1)成分(A)を単独で重合器に添加する方法。
(2)成分(A)および成分(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(3)成分(A)を成分(C)に担持した触媒成分と、成分(B)とを任意の順序で重合器に添加する方法。
(4)成分(B)を成分(C)に担持した触媒成分と、成分(A)とを任意の順序で重合器に添加する方法。
(5)成分(A)と成分(B)とを成分(C)に担持した触媒成分を重合器に添加する方法。
【0087】
上記の各方法においては、任意の段階で成分(D)が添加されてもよい。
上記の各方法においては、各触媒成分の少なくとも2種は予め接触されていてもよい。
【0088】
成分(B)が担持されている上記(4)、(5)の各方法においては、必要に応じて担持されていない成分(B)を、任意の順序で添加してもよい。この場合、成分(B)は、同一でも異なっていてもよい。また、成分(C)に成分(A)が担持された固体触媒成分、成分(C)に成分(A)および成分(B)が担持された固体触媒成分は、オレフィンが予備重合されていてもよく、予備重合された固体触媒成分上に、さらに触媒成分が担持されていてもよい。
【0089】
オレフィンの重合は、溶液重合、懸濁重合等の液相重合法または気相重合法のいずれにおいても実施できる。液相重合法において用いられる不活性炭化水素媒体としては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素が挙げられる。不活性炭化水素媒体は1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0090】
上記のようなオレフィン重合用触媒を用いて、オレフィンの重合を行うに際して、遷移金属化合物(A)は、反応容積1リットル当り、通常10-12~10-2モル、好ましくは10-10~10-3モルになるような量で用いられる。
【0091】
有機金属化合物(B-1)は、有機金属化合物(B-1)と、遷移金属化合物(A)中の全遷移金属原子(M)とのモル比〔(B-1)/M〕が通常0.01~50,000、好ましくは0.05~10,000となるような量で用いられる。
【0092】
有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)は、有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)中のアルミニウム原子と、遷移金属化合物(A)中の全遷移金属(M)とのモル比〔(B-2)/M〕が、通常10~5,000、好ましくは20~2,000となるような量で用いられる。
【0093】
イオン化イオン性化合物(B-3)は、イオン化イオン性化合物(B-3)と、遷移金属化合物(A)中の遷移金属原子(M)とのモル比〔(B-3)/M〕が、通常1から10,000、好ましくは1から5,000となるような量で用いられる。
【0094】
担体(C)を用いる場合は、遷移金属化合物(A)と担体(C)との重量比〔(A)/(C)〕が好ましくは0.0001~1、より好ましくは0.0005~0.5、さらに好ましくは0.001~0.1となるような量で用いられる。
【0095】
本発明の製造方法において、前記重合工程における重合温度は、通常-50~+200℃、好ましくは0~180℃であり;重合圧力は、通常常圧~10MPaゲージ圧、好ましくは常圧~5MPaゲージ圧である。重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法において行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる二段以上に分けて行うこともできる。
【0096】
得られるオレフィン重合体の分子量は、重合系に水素を存在させるか、または重合温度を変化させるか、化合物(B)の使用量により調節することができる。水素を添加する場合、その量は生成するオレフィン重合体1kgあたり0.001から5,000NL程度が適当である。
【0097】
本発明のオレフィン重合体の製造方法において重合反応に供されるオレフィンは、エチレンであり、また、炭素数3以上の直鎖状または分岐状のα-オレフィンを併用することも出来る。また、以下の環状オレフィンも必須成分である。即ち脂環族環状オレフィン(Z-2)および芳香族構造を含む環状オレフィン(Z―3)である。
【0098】
(Z-1)エチレンおよび任意の炭素原子数3以上の直鎖状または分岐状のα-オレフィン
本発明のオレフィン重合体の製造方法においては、エチレンが重合反応に供される。
また、任意に炭素原子数3以上の直鎖状または分岐状のα-オレフィンを重合反応に供してもよい。このα-オレフィンの炭素原子数は、好ましくは3~30、より好ましくは2~30である。
【0099】
α-オレフィンの具体例としてはプロピレン、1-ブテン、2-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、および1-エイコセンが挙げられる。
【0100】
(Z-2)脂環族環状オレフィン
脂環族環状オレフィン(Z-2)としては、下記一般式[Z-2]で表わされる化合物が好ましい。このような化合物を用いることで、屈折率を高い重合体を得やすい傾向がある。
【0101】
【化15】
(上記式[Z-2]中、nは0または1であり、mは0または正の整数であり、qは0または1であり、R
1~R
18ならびにR
aおよびR
bは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子またはハロゲン原子で置換されていてもよい炭化水素基であり、R
15~R
18は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、かつ、該単環または多環は二重結合を有していてもよく、またR
15とR
16とで、またはR
17とR
18とでアルキリデン基を形成していてもよい。ただし、該単環および多環は芳香環を含まない。)
【0102】
これらの中でも、ビシクロ[2.2.1]-2-ヘプテン由来の構成単位、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン由来の構成単位およびヘキサシクロ[6,6,1,13,6,110,13,02,7,09,14]ヘプタデセン-4由来の構成単位等から選択される少なくとも一種の構成単位を含むことが好ましく、ビシクロ[2.2.1]-2-ヘプテン由来の構成単位およびテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン由来の構成単位から選択される少なくとも一種の構成単位を含むことがより好ましく、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン由来の構成単位を含むことが特に好ましい。
【0103】
(Z-3)芳香族構造を含む環状オレフィン
芳香族構造含む環状オレフィン(Z-3)としては、例えば下記式(Z-31)で示される化合物、下記式(Z-32)で示される化合物、下記式(Z-33)で示される化合物等が挙げられる。これらの芳香族構造を有する環状オレフィンは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0104】
【0105】
上記式(Z-31)中、nおよびqはそれぞれ独立に0、1または2である。nは0または1であることが好ましく、0であることがより好ましい。qは0または1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
【0106】
R1~R17はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子を除くハロゲン原子、またはフッ素原子を除くハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基であり、R10~R17のうち一つは結合手であり、R15が結合手であることが好ましい。
【0107】
R1~R17はそれぞれ独立に水素原子または炭素原子数1~20の炭化水素基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
またq=0のときR10とR11、R11とR12、R12とR13、R13とR14、R14とR15、R15とR10は、それぞれ独立に、互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、またq=1または2のときR10とR11、R11とR17、R17とR17、R17とR12、R12とR13、R13とR14、R14とR15、R15とR16、R16とR16、R16とR10は、それぞれ独立に、互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、また上記単環または上記多環が二重結合を有していてもよく、上記単環または上記多環が芳香族環であってもよい。
【0108】
上記式(Z-31)の中でも、下記式(Z-31‘)で示される化合物が好ましい。
【0109】
【0110】
上記式(Z-32)中、nおよびmはそれぞれ独立に0、1または2であり、qは1、2または3である。mは0または1であることが好ましく、1であることがより好ましい。nは0または1であることが好ましく、0であることがより好ましい。qは1または2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
【0111】
R18~R31はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子を除くハロゲン原子、またはフッ素原子を除くハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基である。
【0112】
R18~R31はそれぞれ独立に水素原子または炭素原子数1~20の炭化水素基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
またq=1のときR28とR29、R29とR30、R30とR31は、それぞれ独立に、互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、またq=2または3のときR28とR28、R28とR29、R29とR30、R30とR31、R31とR31は、それぞれ独立に、互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、上記単環または上記多環が二重結合を有していてもよく、また上記単環または上記多環が芳香族環であってもよい。
【0113】
【0114】
上記式(Z-33)中、qは1、2または3であり、1または2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
【0115】
R32~R39はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子を除くハロゲン原子、またはフッ素原子を除くハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基である。
【0116】
R32~R39はそれぞれ独立に水素原子または炭素原子数1~20の炭化水素基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
またq=1のときR36とR37、R37とR38、R38とR39は、それぞれ独立に、互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、またq=2または3のときR36とR36、R36とR37、R37とR38、R38とR39、R39とR39は、それぞれ独立に、互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、上記単環または上記多環が二重結合を有していてもよく、また上記単環または上記多環が芳香族環であってもよい。
【0117】
また、炭素原子数1~20の炭化水素基としては、それぞれ独立に、例えば炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数3~15のシクロアルキル基、および芳香族炭化水素基等が挙げられる。より具体的には、アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アミル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基およびオクタデシル基等が挙げられ、シクロアルキル基としてはシクロヘキシル基等が挙げられ、芳香族炭化水素基としてはフェニル基、トリル基、ナフチル基、ベンジル基およびフェニルエチル基等のアリール基またはアラルキル基等が挙げられる。これらの炭化水素基はフッ素原子を除くハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0118】
これらの中でも、芳香族構造を有する環状オレフィン(Z-3)としては、芳香環を1つ有しているものが好ましく、例えば、ベンゾノルボルナジエン、インデンノルボルネンおよびメチルフェニルノルボルネンから選択される少なくとも一種が好ましい。
【0119】
また、芳香族構造を有する環状オレフィン(Z-3)としては、例えば、下記式(Z-31’)で示される化合物、下記式(Z-32’)で示される化合物、下記式(Z-33’)で示される化合物等も挙げられる。これらの芳香族構造を有する環状オレフィン(Z-3)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
上記式(Z-31’)、式(Z-32’)および式(Z-33’)において、mおよびnは0、1または2であり、R1~R36はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子を除くハロゲン原子、またはフッ素原子を除くハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基であり、R10とR11、R11とR12、R12とR13、R13とR14、R25とR26、R26とR27、R27とR28、R33とR34、R34とR35、R35とR36は、それぞれ独立に、互いに結合して単環を形成していてもよく、該単環が二重結合を有していてもよい。
【0124】
また、上記式(Z-31’)、式(Z-32’)および式(Z-33’)において、mは0または1であることが好ましく、1であることがより好ましい。nは0または1であることが好ましく、0であることがより好ましい。R1~R36は水素原子または炭素原子数1~20の炭化水素基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
【0125】
また、炭素原子数1~20の炭化水素基としては、それぞれ独立に、例えば炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数3~15のシクロアルキル基、および芳香族炭化水素基等が挙げられる。より具体的には、アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アミル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基およびオクタデシル基等が挙げられ、シクロアルキル基としてはシクロヘキシル基等が挙げられ、芳香族炭化水素基としてはフェニル基、トリル基、ナフチル基、ベンジル基およびフェニルエチル基等のアリール基またはアラルキル基等が挙げられる。これらの炭化水素基はフッ素原子を除くハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0126】
これらの中でも、芳香族構造を有する環状オレフィン(Z-3)としては、芳香環を1つ有しているものが好ましく、例えば、ベンゾノルボルナジエン、インデンノルボルネンおよびメチルフェニルノルボルネンから選択される少なくとも一種が好ましい。
【0127】
上記の様な芳香族構造を有する環状オレフィン(Z-3)は、本発明の方法で得られるオレフィン共重合体のアッベ数を調整できるので、例えば本発明の方法でレンズ用の材料に適した物性のオレフィン共重合体を得る際の物性制御の上で好適である。
【0128】
本発明のオレフィン重合体の製造方法において重合反応に供されるオレフィンの例としては、さらに、共役/非共役ポリエン、ビニルシクロヘキサンが挙げられる。
【0129】
前記共役/非共役ポリエンとしては、炭素原子数が4~30、好ましくは4~20であり、2つ以上の二重結合を有する環状または鎖状の炭化水素が挙げられる。その具体例としては、ブタジエン、イソプレン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ペンタジエン、1,4-ペンタジエン、1,5-ヘキサジエン、1,4-ヘキサジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-オクタジエン、1,4-オクタジエン、1,5-オクタジエン、1,6-オクタジエン、1,7-オクタジエン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン、5,9-ジメチル-1,4,8-デカトリエンブタジエン、イソプレン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエンなどの特開2011-122146号公報の[0211]に例示された化合物が挙げられる。
【0130】
本発明のオレフィン重合体の製造方法においては、上述したオレフィンと共に、オレフィン以外の重合性化合物を重合してもよく、このような重合性化合物の例としては、極性基および重合性不飽和結合を有する化合物、芳香族ビニル化合物、および官能基含有スチレン誘導体が挙げられる。
【0131】
極性基および重合性不飽和結合を有する化合物の具体例としては、特開2011-122146号公報の[0208]~[0211]に極性基を有する不飽和炭化水素として例示された化合物が挙げられる。
【0132】
芳香族ビニル化合物および官能基含有スチレン誘導体の具体例としては、特開2011-122146号公報の[0211]に例示された化合物が挙げられる。
本発明の製造方法の好ましい態様としては、前記α-オレフィン(Z-1)と前記環状オレフィン(Z-2)とを共重合する態様が挙げられる。この態様においては、前記α-オレフィン(Z-1)としてはエチレンが好ましく、前記環状オレフィン(Z-2)としてはテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセンが好ましい。
【0133】
前記α-オレフィン(Z-1)と、前記環状オレフィン(Z-2)とを共重合する場合は、α-オレフィン(Z-1)の圧力と環状オレフィン(Z-2)、(Z-3)の濃度を任意に設定することができ、特に限定されるものではない。α-オレフィン(Z-1)の圧力は前記重合圧力が好ましい。
【0134】
環状オレフィン(Z-2)は、例えば、前記不活性溶媒を用いた液相重合の場合、好ましくは0.0001~100モル/リットル、より好ましくは0.001~10モル/リットルであり、更に好ましくは0.01~1モル/リットルの条件で用いられる。また、環状オレフィン(Z-3)の濃度は、好ましくは0.0001~1000モル/リットル、より好ましくは0.001~100モル/リットルであり、更に好ましくは0.01~10モル/リットルの条件で用いられる。
【0135】
使用する前記(Z-2)/(Z-3)モル比も任意に設定できるが、0.01~10であることが好ましい。より好ましい下限値は、0.02、さらに好ましくは0.05であり、特に好ましくは0.1である。一方、より好ましい上限値は5であり、さらに好ましくは2であり、特に好ましくは1である。
【0136】
本発明のオレフィン重合体の製造方法で得られるオレフィン重合体は、上記の通り、屈折率、アッベ数などの調整された樹脂とすることが出来るので、例えば、レンズ用の材料として用いることが出来る。
【実施例0137】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0138】
[測定方法]
〔遷移金属化合物の構造〕
遷移金属化合物の構造は、1H-NMRスペクトル(270MHz、日本電子GSH-270)により決定した。
【0139】
〔重合体の重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)〕
オレフィン重合体の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により求めた。Waters社製「Alliance GPC 2000」ゲル浸透クロマトグラフ(高温サイズ排除クロマトグラフ)により得られる分子量分布曲線から計算したものであり、操作条件は、下記の通りである:
【0140】
<使用装置および条件>
測定装置;ゲル浸透クロマトグラフ allianceGPC2000型(Waters社)
解析ソフト;クロマトグラフィデータシステム Empower(商標、Waters社)
カラム;TSKgel GMH6-HT×2 + TSKgel GMH6-HT×2
(内径7.5mm×長さ30cm,東ソー社)
移動相;o-ジクロロベンゼン〔=ОDCB〕(富士フイルム和光純薬(株) 特級試薬)
検出器;示差屈折計(装置内蔵)
カラム温度;140℃
流速;1.0mL/min
注入量;400μL
サンプリング時間間隔;1秒
試料濃度;0.15%(w/v)
分子量較正 単分散ポリスチレン(東ソー社)/分子量495から分子量2060万
【0141】
〔重合体のコモノマー(環状オレフィン)含量〕
特開2011-122146号公報の[0216]~[0219]の記載に従い、13C-NMRスペクトルにより重合体のコモノマー(環状オレフィン)含量を求めた。
【0142】
〔重合体のTg〕
以下の条件でDSC測定を行い、重合体のガラス転移温度(Tg)を求めた。
装置:エスアイアイナノテクノロジー社 DSC6220
測定条件:300℃で5分間ホールドした試料を0℃まで急冷し、その後昇温速度20℃/分で250℃まで昇温する過程においてTgを求めた。
【0143】
〔チタン化合物の製造〕
[合成例1]
100mLの反応器にアボベンゾン6.22g(20.0mmol)とメタノール30mLを仕込み、撹拌しながらヒドラジン一水和物1.50g(30.0mmol)と塩酸0.1mLを加え、1時間加熱還流した。室温まで冷却後、析出した成分を回収、洗浄、減圧乾燥することで、3-(4-tert-ブチルフェニル)-5-(4-メトキシフェニル)-1H-ピラゾールを無色固体として4.42g(収率72%)得た。
1H-NMR(270MHz,CDCl3)δ 7.63-7.69(4H,m,ArH),7.45(2H,d,J=8.6Hz),6.95(2H,d,J=8.6Hz),6.74(1H,s,CH),3.85(3H,s,OCH3),1.35(9H,s,C(CH3)3)ppm
【0144】
[実施例A1]
充分に乾燥、窒素置換した30mLの反応器に合成例1で得た3-(4-tert-ブチルフェニル)-5-(4-メトキシフェニル)-1H-ピラゾール309mg(1.01mmol)、ジエチルエーテル10mLを仕込み撹拌した。この溶液へ、n-ブチルリチウム溶液0.69mL(n-ヘキサン溶液、1.59M、1.1mmol)を0℃で加えた後、室温で24時間撹拌し無色溶液を得た。
【0145】
別の充分に乾燥、窒素置換した30mLの反応器にtert-ブチルシクロペンタジエニルトリクロロチタン279mg(1.01mmol)とジエチルエーテル5mLを仕込み撹拌した。この溶液へ、先に得られた無色溶液を-78℃で加え、室温で24時間撹拌を続けた。反応液の溶媒を留去した後、得られた橙褐色物にジクロロメタンを加え懸濁液を調製し、不溶物をセライトろ過により除去した。得られた溶液を減圧下濃縮した後、n-ヘキサンを加え、-30℃にて静置し発生した固体分を除去した。ろ液を濃縮し、再び-30℃にて静置し油状成分と上澄み液を分離した。油状成分を回収、洗浄、減圧乾燥することにより、下記式(1)で示されるチタン化合物(1)を赤橙色固体として387mg(収率70%)得た。
1H-NMR(270MHz,CDCl3)δ 7.83-7.89(4H,m,ArH),7.50(2H,d,J=8.6Hz,ArH),7.26(1H,s,CH),6.98-7.02(2H,m,ArH),6.70(2H,t,J=2.6Hz,CpH),6.51(2H,t,J=2.6Hz,CpH),3.86(3H,s,OCH3),1.37(9H,s,C(CH3)3),1.18(9H,s,C(CH3)3)ppm
【0146】
【化22】
〔式中、tBuはtert-ブチル基である。〕
【0147】
[合成例2]
100mLの反応器にジベンゾイルメタン4.50g(20.1mmol)とメタノール40mLを仕込み、撹拌しながらヒドラジン一水和物1.50g(30.0mmol)と塩酸0.1mLを加え、1時間加熱還流した。室温まで冷却後、析出した成分を回収、洗浄、減圧乾燥することで、3,5-ジフェニル-1H-ピラゾールを無色固体として3.06g(収率69%)得た。
1H-NMR(270MHz,CDCl3)δ 7.73(4H,d,J=6.9Hz,ArH),7.31-7.43(6H,m,ArH),6.84(1H,s,CH)ppm
【0148】
[実施例A2]
充分に乾燥、窒素置換した30mLの反応器に合成例2で得た3,5-ジフェニル-1H-ピラゾール222mg(1.01mmol)、ジエチルエーテル10mLを仕込み撹拌した。この溶液へ、n-ブチルリチウム溶液0.69mL(n-ヘキサン溶液、1.59M、1.1mmol)を0℃で加えた後、室温で24時間撹拌し薄黄色溶液を得た。
【0149】
別の充分に乾燥、窒素置換した30mLの反応器にtert-ブチルシクロペンタジエニルトリクロロチタン281mg(1.02mmol)とジエチルエーテル5mLを仕込み撹拌した。この溶液へ、先に得られた薄黄色溶液を-78℃で加え、室温で24時間撹拌を続けた。反応液の溶媒を留去した後、得られた橙褐色物にジクロロメタンを加え懸濁液を調製し、不溶物をセライトろ過により除去した。得られた溶液を減圧下濃縮した後、n-ヘキサンを加え、-30℃にて静置することにより得た黄橙色固体を回収、洗浄、減圧乾燥することにより、下記式(2)で示されるチタン化合物(2)を230mg(収率50%)得た。
1H-NMR(270MHz,CDCl3)δ 7.93(4H,d,J=6.9Hz,ArH),7.37-7.51(6H,m,ArH),7.26(1H,s,CH),6.70(2H,t,J=2.6Hz,CpH),6.55(2H,t,J=2.6Hz,CpH),1.16(9H,s,C(CH3)3)ppm
【0150】
【化23】
〔式中、tBuはtert-ブチル基、Phはフェニル基である。〕
【0151】
〔オレフィン重合体の製造〕
[実施例B1]
乾燥した内容積2.0Lの耐圧オートクレーブを十分に窒素置換し、脱水精製したシクロヘキサン/ヘキサン(9/1)混合溶液710mL、テトラシクロドデセン(TD)50mmol、ベンゾノルボルナジエン(BNBD)240mmol、トリエチルアルミニウムをアルミニウム原子換算で1.0mmolを窒素気流下に順次挿入した。次いで50℃に昇温し、エチレン分圧が0.1MPaGとなるようエチレンを供給し、その状態を保持した。その後、実施例A1で得られたチタン化合物(1)を0.005mmol加え、引き続きトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを0.02mmol加え重合を開始した。内温50℃を維持しながら、エチレン分圧が0.1MPaGを保持するようにエチレンを供給し、5分間重合を行った。所定の時間経過後、エチレンの供給を止め、少量のメタノールを添加することにより重合を停止した。反応物を少量の塩酸を含む3リットルのアセトン/メタノール(3/1)混合溶媒中に加えてポリマーを析出させた。同溶媒で洗浄後、130℃にて10時間減圧乾燥し、エチレン・テトラシクロドデセン・ベンゾノルボルナジエン共重合体0.620gを得た。重合活性と、エチレン・テトラシクロドデセン・ベンゾノルボルナジエン共重合体の物性値は以下の通りである。
重合活性:0.12kg-重合体/ミリモル-Ti
ガラス転移温度:167℃
極限粘度[η]:1.41dl/g
構造単位比(エチレン:TD:BNBD)=55.7:24.8:19.5
【0152】
[実施例B2]
チタン化合物(1)を実施例A2で得られたチタン化合物(2)に変更したこと以外は実施例B1と同様の操作を行い、エチレン・テトラシクロドデセン・ベンゾノルボルナジエン共重合体0.449gを得た。重合活性と、エチレン・テトラシクロドデセン・ベンゾノルボルナジエン共重合体の物性値は以下の通りである。
重合活性:0.09kg-重合体/ミリモル-Ti
ガラス転移温度:174℃
極限粘度[η]:1.15dl/g
構造単位比(エチレン:TD:BNBD)=56.2:25.3:18.6
【0153】
[比較例B1]
チタン化合物(1)をMacromolcules 2011, 44, 1986-1998に記載の方法により合成した下記式(3)で表されるチタン化合物(3)0.005mmol、トリエチルアルミニウムをアルミニウム原子換算で0.5mmolに変更したこと以外は実施例B1と同様の操作を行い、エチレン・テトラシクロドデセン・ベンゾノルボルナジエン共重合体を1.91g得た。エチレン・テトラシクロドデセン・ベンゾノルボルナジエン共重合体の物性値等を以下に示す。
【0154】
【化24】
〔式中、tBuはtert-ブチル基であり、iPrはイソプロピル基である。〕
重合活性:0.38kg-重合体/ミリモル-Ti
ガラス転移温度:163℃
極限粘度[η]:2.44dl/g
構造単位比(エチレン:TD:BNBD)=61.7:20.9:17.3
【0155】
上記の実施例と比較例から本発明のオレフィンの重合方法では、芳香族構造を含む環状オレフィンの含有率が高い共重合体を効率的に製造することが出来ることが分かる。特に実施例A1で得られた構造の遷移金属化合物を用いると、その効果が顕著であることも分かる。