(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154231
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】医療用留置具搬送装置及び留置具付き医療用留置具搬送装置
(51)【国際特許分類】
A61F 2/966 20130101AFI20221005BHJP
【FI】
A61F2/966
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057152
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】吉原 章仙
(72)【発明者】
【氏名】兼政 賢一
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA56
4C267BB10
4C267CC09
4C267CC19
4C267DD01
(57)【要約】
【課題】シースの先端部の角度を好適に調整可能な医療用留置具搬送装置、及び留置具付き医療用留置具搬送装置を提供する。
【解決手段】医療用留置具搬送装置は、ステントグラフト2の搬送時にステントグラフト2が周囲に配設される長尺のインナーシース4と、インナーシース4の径方向外側を覆ってインナーシース4に対して軸方向の近位側に摺動することでステントグラフト2を露出させるアウターシース5と、インナーシース4の遠位端部4bに先端部70aを接続されてインナーシース4の軸方向に配設され、近位側に牽引されることで、インナーシース4を屈曲させる内側操作線70と、アウターシース5の遠位端部5aに先端部71a、72aを接続されてアウターシース5の軸方向に配設され、近位側に牽引されることで、アウターシース5を屈曲させる外側操作線71、72と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
留置具を体内にデリバリーするための医療用留置具搬送装置であって、
前記留置具の搬送時に前記留置具が周囲に配設される長尺のインナーシースと、
該インナーシースの径方向外側を覆い、前記インナーシースに対して軸方向に摺動可能に構成されており、前記留置具の搬送時に前記留置具の外周を覆い、前記インナーシースに対して軸方向の近位側に摺動することで前記留置具を露出させるアウターシースと、
前記インナーシースの遠位端部に先端部を接続されて前記インナーシースの軸方向に配設され、近位側に牽引されることで、前記インナーシースを屈曲させる内側操作線と、
前記アウターシースの遠位端部に先端部を接続されて前記アウターシースの軸方向に配設され、近位側に牽引されることで、前記アウターシースを屈曲させる外側操作線と、
を備えることを特徴とする医療用留置具搬送装置。
【請求項2】
前記外側操作線は、前記アウターシース内において、前記アウターシースの軸心を通る仮想平面上に少なくとも一対設けられており、
前記内側操作線は、前記インナーシース内において、前記仮想平面上に一本配設されている請求項1に記載の医療用留置具搬送装置。
【請求項3】
前記インナーシースの遠位端部及び前記アウターシースの遠位端部は、自然状態において屈曲状態となるように所定の屈曲方向にそれぞれ賦形されており、前記インナーシースの遠位端部及び前記アウターシースの遠位端部の前記屈曲方向が共通している請求項1又は2に記載の医療用留置具搬送装置。
【請求項4】
前記インナーシースに対して前記アウターシースを近位側に引いて前記留置具を展開する際に使用者に操作される操作部を更に備え、
該操作部は、前記アウターシースに取り付けられ、前記インナーシースに対して軸方向に摺動可能に取り付けられており、
前記操作部には、前記内側操作線に対して巻回及び引き出し可能な内側操作線用ボビンが設けられている請求項1から3のいずれか一項に記載の医療用留置具搬送装置。
【請求項5】
前記内側操作線を摺動可能に支持する折返し部を更に備え、
該折返し部は、前記内側操作線用ボビンよりも近位側に配設されており、
前記内側操作線は、前記内側操作線用ボビンから近位側に引き出され、前記折返し部により折り返されて、前記内側操作線の前記先端部が前記インナーシースの前記遠位端部に固定されている請求項4に記載の医療用留置具搬送装置。
【請求項6】
前記操作部の近位側への移動位置に応じて、前記内側操作線用ボビンに対して前記内側操作線を巻回し及び引き出す弛み調整機構を備える請求項4又は5に記載の医療用留置具搬送装置。
【請求項7】
前記留置具が近位方向に移動することを制限する押さえ部材を更に備え、
前記内側操作線用ボビンは、外周部に歯を有して歯車状に形成されており、
前記押さえ部材は、遠近方向に延在するラック部を有し、
該ラック部と前記内側操作線用ボビンが噛合していることにより、前記弛み調整機構として機能する請求項6に記載の医療用留置具搬送装置。
【請求項8】
前記留置具が近位方向に移動することを制限する押さえ部材を更に備え、
該押さえ部材は、径方向において、前記インナーシースと前記操作部との間に少なくとも一部が配設されており、
前記押さえ部材には、径方向において、前記インナーシースの外側の空間と前記操作部の内側の空間とを連通させる貫通孔が形成されており、
前記貫通孔に、前記内側操作線が通されている請求項4から7のいずれか一項に記載の医療用留置具搬送装置。
【請求項9】
前記インナーシースに対して前記アウターシースを近位側に引いて前記留置具を展開する際に使用者に操作される操作部を更に備え、
該操作部は、前記アウターシースに取り付けられ、前記インナーシースに対して軸方向に摺動可能に取り付けられており、
前記操作部には、前記外側操作線に対して巻回及び引き出し可能な外側操作線用ボビンが設けられている請求項1から8のいずれか一項に記載の医療用留置具搬送装置。
【請求項10】
前記内側操作線用ボビン及び前記外側操作線用ボビンのそれぞれは、外周部に歯を有して歯車状に形成されており、
前記内側操作線用ボビンと前記外側操作線用ボビンとが噛合可能に配設されている請求項4を引用する請求項9に記載の医療用留置具搬送装置。
【請求項11】
前記内側操作線用ボビンと前記外側操作線用ボビンとは、噛合位置から噛合解除位置に移動可能に配設されている請求項10に記載の医療用留置具搬送装置。
【請求項12】
前記内側操作線における近位側の一部の径方向外側を覆って、長尺に延在する操作線誘導部を更に備え、
該操作線誘導部は、前記アウターシース及び前記インナーシースの外側に配置されている請求項1から11のいずれか一項に記載の医療用留置具搬送装置。
【請求項13】
前記インナーシースに対して前記アウターシースを近位側に引いて前記留置具を展開する際に使用者に操作されるアウターシース操作部と、
該アウターシース操作部とは別個に設けられ、前記インナーシースに直接的又は間接的に取り付けられたインナーシース操作部と、を更に備え、
前記インナーシース操作部には、前記内側操作線に対して巻回及び引き出し可能な内側操作線用ボビンが設けられている請求項1から3のいずれか一項に記載の医療用留置具搬送装置。
【請求項14】
前記留置具がステントグラフトであり、前記ステントグラフトを大動脈弓に留置するための医療用留置具搬送装置であって、
前記内側操作線の牽引力は、引張長さが5mmのときに、8N以上20N以下である請求項1から13のいずれか一項に記載の医療用留置具搬送装置。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の医療用留置具搬送装置と、
前記インナーシースに取り付けられた前記留置具と、を備える留置具付き医療用留置具搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用留置具搬送装置及び留置具付き医療用留置具搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用に体内に留置される留置具として、ステント又はステントグラフト等がある。
湾曲形状を有する弓部大動脈に留置具を留置する医療用留置具搬送装置(ステントグラフト搬送装置)において、インナーシースカニューレ又はイントロデューサに弓部に沿った形状を事前に付与(賦形)させることがある。このように、インナーシースカニューレ又はイントロデューサを賦形することで、ステントグラフトのフィッティングを向上させる試みがなされている。
【0003】
例えば、下記の特許文献1には、湾曲された先端部を有してインナーシースとアウターシースとを備えるシース(同文献にはカテーテル部と記載。)を備える医療用留置具搬送装置(同文献には、ステントデリバリー装置と記載。)が開示されている。このシースは、ガイドワイヤの湾曲に沿って、体管内にステントグラフトを留置するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の医療用留置具搬送装置におけるシースは、一定の湾曲形状しか付与されていないため、人の体管においては様々な屈曲形状が存在するところ、留置具を留置する際に、シースを適切な形状に調整することは困難であった。
【0006】
図15を参照して、この問題について説明する。
図15は、従来のインナーシース400及びアウターシース500を用いてステントグラフト2を展開している状態を示す図である。
図15(a)は大弯側にアウターシース500を配設したステントグラフト2展開前のイメージ図、
図15(b)はステントグラフト2展開中のイメージ図である。
【0007】
例えば、アウターシース500の先端部の曲率半径が、ステントグラフト2の留置対象部位である大動脈弓50の曲率半径よりも大きい場合には、大動脈弓50のうち、軸線50bよりも外側に沿ってアウターシース500が配設されることになる。
この状態からアウターシース500を近位側に引いてステントグラフト2を展開すると、小弯側の内壁との接触よりも大弯側の内壁との接触が多くなり、バーズビークが小弯側に生じることがある。このバーズビークの発生を抑制可能な装置が求められていた。
【0008】
特に、ストレート形状のステントグラフト2を大動脈弓50に留置する際には、アウターシース500の遠位端部が屈曲していたとしても、ステントグラフト2が小弯側の内壁から離れてしまうことがあった。アウターシース500を近位側(末端側)に引いて、ステントグラフト2がアウターシース500から露出したときに、ステントグラフト2から真っ直ぐな形状に復元する力が働いて、インナーシース400を大弯側に移動させるためである。
このように、従来の医療用留置具搬送装置においては、シース先端部の角度調整に関して改善の余地があった。
【0009】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものであり、シースの先端部の角度を好適に調整可能な医療用留置具搬送装置、及び留置具付き医療用留置具搬送装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の医療用留置具搬送装置は、留置具を体内にデリバリーするための医療用留置具搬送装置であって、前記留置具の搬送時に前記留置具が周囲に配設される長尺のインナーシースと、該インナーシースの径方向外側を覆い、前記インナーシースに対して軸方向に摺動可能に構成されており、前記留置具の搬送時に前記留置具の外周を覆い、前記インナーシースに対して軸方向の近位側に摺動することで前記留置具を露出させるアウターシースと、前記インナーシースの遠位端部に先端部を接続されて前記インナーシースの軸方向に配設され、近位側に牽引されることで、前記インナーシースを屈曲させる内側操作線と、前記アウターシースの遠位端部に先端部を接続されて前記アウターシースの軸方向に配設され、近位側に牽引されることで、前記アウターシースを屈曲させる外側操作線と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の留置具付き医療用留置具搬送装置は、前記医療用留置具搬送装置と、前記インナーシースに取り付けられた前記留置具と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の医療用留置具搬送装置、及び留置具付き医療用留置具搬送装置によればシースの先端部の角度を好適な角度に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】搬送装置(ステントグラフト付き搬送装置)により、ステントグラフトを大動脈弓に留置している状態を示す模式図である。
【
図2】ステントグラフトの近位端部以外をアウターシースから露出させた状態を示す模式図である。
【
図3】ステントグラフトを展開する際のプッシャーとインナーシースとの位置関係を説明する模式図である。
【
図4】(a)は、直線状態のインナーシースを示す図、(b)は、屈曲状態(自然状態)のインナーシースを示す図である。
【
図5】インナーシース及びアウターシースを用いてステントグラフトを展開している状態を示す(a)は大動脈弓の軸線に沿ってアウターシースを配設したステントグラフト展開前のイメージ図、(b)はステントグラフト展開中のイメージ図である。
【
図6】アウターシースを可動する際の牽引長さと牽引力の関係性を示した図である。
【
図7】管状部の長さに対する空間の長さの比と操作線の最大引張荷重との関係性を示す図である。
【
図8】内側操作線用ボビン及び外側操作線用ボビンを備える操作機構を示す模式図である。
【
図9】第1変形例に係る折返しボビンを備える操作機構を示す模式図である。
【
図10】(a)は、第2変形例に係る歯車状の内側操作線用ボビン及び外側操作線用ボビンを備える操作機構を示す模式図である。(b)は、(a)に記載のXB部を拡大して示す図である。
【
図11】第2変形例に係る操作機構を底面から見た模式図であり、内側操作線用ボビンと外側操作線用ボビンが噛合している状態を示す図である。
【
図12】第2変形例に係る操作機構を底面から見た模式図であり、内側操作線用ボビンと外側操作線用ボビンが離間している状態を示す図である。
【
図13】第3変形例に係るケーブルガイドを備える操作機構を示す模式図である。
【
図14】第4変形例に係るインナーシース操作ハンドルとアウターシース操作ハンドルとを備える操作機構を示す模式図である。
【
図15】従来のインナーシース及びアウターシースを用いてステントグラフトを展開している状態を示す(a)は大弯側にアウターシースを配設したステントグラフト展開前のイメージ図、(b)はステントグラフト展開中のイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、以下に説明する部材の形状、寸法、配置等については、本発明の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
また、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
なお、以下において、使用者(施術者)に近い側を近位側(基端側、末端側)、遠い側を遠位側(先端側、中枢側)という。
【0015】
<概要>
はじめに、本実施形態に係る医療用留置具搬送装置(搬送装置1)及び留置具付き医療用留置具搬送装置(ステントグラフト付き搬送装置1S)の概要を、
図1及び
図2を主に参照して説明する。
図1は、搬送装置1(ステントグラフト付き搬送装置1S)により、ステントグラフト2を大動脈弓50に留置している状態を示す模式図である。
図2は、ステントグラフト2の近位端部2c以外をアウターシース5から露出させた状態を示す模式図である。なお、
図1においては、
図2に示すインナーシース4を簡略化して示している。
【0016】
本実施形態に係る医療用留置具搬送装置(搬送装置1)は、留置具(ステントグラフト2)を体内にデリバリーするためのものである。
搬送装置1は、ステントグラフト2の搬送時にステントグラフト2が周囲に配設される長尺のインナーシース4と、インナーシース4の径方向外側を覆い、インナーシース4に対して軸方向に摺動可能に構成されており、ステントグラフト2の搬送時にステントグラフト2の外周を覆い、インナーシース4に対して軸方向の近位側に摺動することでステントグラフト2を露出させるアウターシース5と、インナーシース4の遠位端部4bに先端部70aを接続されてインナーシース4の軸方向に配設され、近位側に牽引されることで、インナーシース4を屈曲させる内側操作線70と、アウターシース5の遠位端部5aに先端部71a、72aを接続されてアウターシース5の軸方向に配設され、近位側に牽引されることで、アウターシース5を屈曲させる外側操作線71、72と、を備えることを特徴とする。
【0017】
「留置具」には、ステントグラフト2の他、グラフト部2bを備えていないステント部2aのみのステント(ベアステント)や、人工弁その他の生体管腔内に留置される留置具が含まれるものとする。
さらに、本書において「屈曲」とは、緩やかに曲がった状態である「湾曲」の他に、鋭敏に曲がった状態をも含む表現である。
【0018】
また、内側操作線70及び外側操作線71、72による屈曲方向については特に限定されない。
つまり、インナーシース4又はアウターシース5に対して、これらの自然状態から曲げモーメントを加えることによって変形させることを屈曲させることとする。したがって、特にインナーシース4又はアウターシース5が、曲げ状態で賦形(プリシェイプ)されている場合には、これを直線状態に戻すことも屈曲させることに含めるものとする。
【0019】
上記のように、インナーシース4とアウターシース5との双方を屈曲可能な構成とすることで、インナーシース4又はアウターシース5だけでは調整しきれなかった角度まで調整することができる。このため、搬送装置1は、屈曲度の大きな大動脈弓50等の高度屈曲血管にステントグラフト2を供給する際に好適に用いられる。
【0020】
そして、上記構成によれば、搬送装置1は、血管の内壁にステントグラフト2を密着させやすくなることで、バーズビーク(エンドリーク)の低減に寄与でき、意図せぬ部分に血流を通すことを抑制できる。
さらに、インナーシース4の屈曲を内側操作線70が担い、アウターシース5の屈曲を外側操作線71、72が担うことで、いずれか一方の操作線しかないものと比較して、シース3全体の屈曲に対する各操作線の負荷を軽減できる。
【0021】
上記の医療用留置具搬送装置(搬送装置1)と、インナーシース4に取り付けられた留置具(ステントグラフト2)と、を備えるものを、留置具付き医療用留置具搬送装置(ステントグラフト付き搬送装置1S)という。
上記構成によれば、留置具付き医療用留置具搬送装置(ステントグラフト付き搬送装置1S)においても、上記の効果を享受することができる。
【0022】
<搬送装置の各部の構成>
搬送装置1の各部の構成について、
図1及び
図2加えて、
図3から
図7を参照して説明する。
図3は、ステントグラフト2を展開する際のプッシャー11とインナーシース4との位置関係を説明する模式図である。
図4(a)は、直線状態のインナーシース4を示す図、
図4(b)は、屈曲状態(自然状態)のインナーシース4を示す図である。
図5は、インナーシース4及びアウターシース5を用いてステントグラフト2を展開している状態を示す
図5(a)は大動脈弓50の軸線50bに沿ってアウターシース5を配設したステントグラフト2展開前のイメージ図、
図5(b)はステントグラフト2展開中のイメージ図である。
図6は、アウターシース5を可動する際の牽引長さと牽引力の関係性を示した図、
図7は、管状部41bの長さに対する空間41cの長さの比と内側操作線70の最大引張荷重との関係性を示す図である。
【0023】
本実施形態に係る搬送装置1は、留置具がステントグラフト2であり、
図1に示すように、ステントグラフト2を体内の大動脈弓50等(大動脈瘤55等の病変部)に留置(供給)するものであり、ステントグラフト2を収容するシース3を備える。
より具体的には、本実施形態に係る搬送装置1は、シース3を下行大動脈51に通して大動脈弓50まで挿入して、ステントグラフト2が大動脈瘤55のある大動脈弓50の内壁50aを略均一に押圧するように、ステントグラフト2を留置する。
【0024】
本実施形態に係るステントグラフト2は、樹脂膜であるグラフト部2bと、グラフト部2bに縫合により取り付けられた金属ワイヤであるステント部2aと、から構成されており、本実施形態においては約150mmである。なお、ステントグラフト2の長さは、110mmから200mmの長さであってもよい。
【0025】
シース3は、ステントグラフト2が遠位端部4bの外周に取り付けられたインナーシース4と、ステントグラフト2の基端側への移動を制限するプッシャー11(
図3参照。)と、インナーシース4、ステントグラフト2及びプッシャー11を覆うアウターシース5と、を備える。
【0026】
インナーシース4及びアウターシース5の主な材料としては、熱可塑性ポリマー材料を用いることができる。この熱可塑性ポリマー材料としては、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリアミド(PA)、ポリアミドエラストマー(PAE)、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)などのナイロンエラストマー、ポリウレタン(PU)、エチレン-酢酸ビニル樹脂(EVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)又はポリプロピレン(PP)を挙げることができる。
【0027】
アウターシース5は、シース3の体内への挿入時にステントグラフト2を覆って保護するものである。
また、アウターシース5は、ステントグラフト2の体内への留置時に、近位側に引かれてステントグラフト2を露出可能なように、インナーシース4及びプッシャー11に対して軸方向に摺動可能に取り付けられている。
本実施形態に係るアウターシース5は、初期状態において、賦形により屈曲状態に形成されており、外側操作線71、72の牽引により直線化や、更なる屈曲も可能な構成のものを例に説明する。
【0028】
外側操作線71、72は、アウターシース5内において、アウターシース5の軸心を通る仮想平面上に少なくとも一対設けられている。後述する内側操作線70は、インナーシース4内において、仮想平面上に一本配設されている。
【0029】
上記の「仮想平面上」に関しては、仮想平面上において完全に中心線までもが一致するように配置されているものに限定されず、製造誤差等を考慮して、内側操作線70の一部が仮想平面上にあればよい。
また、「一本」に関しては、内側操作線70が複数本の撚り線によって構成される場合には、全体として一本として数えるものとする。
上記構成によれば、外側操作線によるアウターシース5の変形量と内側操作線70によるインナーシース4の変形量とを足し合わせて、シース3全体の変形量を最大化できる。
そして、内側操作線70のインナーシース4への組付け、外側操作線71、72をアウターシース5に組み付けたときにアウターシース5とインナーシース4の操作方向を決定することができる。
【0030】
図2に示すように、アウターシース5の遠位端部5aには、固定リング5bが取り付けられている。固定リング5bに、外側操作線71の先端部71aと、外側操作線72の先端部72aと、が取り付けられている。
【0031】
固定リング5bは、インナーシース4の遠位端部4bに設けられた固定チップ41fよりも径方向外側にあるため、外側操作線71、72は、内側操作線70よりも大きな曲げモーメントを付与しやすい。このため、シース3全体を湾曲させる際には、外側操作線71、72の牽引が行われる。
【0032】
例えば、分岐した血管の選択時にシース3を方向付けるときには、インナーシース4に通される不図示のガイドワイヤが用いられるが、外側操作線71、72によるアウターシース5の可動機構は、血管選択時にも使用可能である。このため、アウターシース5の可動機構により、血管走行性を高めることができる。
【0033】
また、本実施形態に係るアウターシース5は屈曲した形状に賦形されている。アウターシース5が屈曲した形状に賦形されていると、加わる曲げモーメントが小さく屈曲量の小さいインナーシース4よりも、動き(屈曲方向の形状の変化)が大きいために、X線透視下で直感的に形状を理解することができる。
【0034】
インナーシース4は、
図4(b)に示すように、初期状態において、賦形により屈曲状態に形成されており、インナーシース4は、アウターシース5に収まっている間は、
図4(a)に示すように強制的に直線化されるので、インナーシース4の内部に設けられた内側操作線70は弛まずに張力が生じた状態となる。
【0035】
インナーシース4の遠位端部4b及びアウターシース5の遠位端部5aは、自然状態において屈曲状態となるように所定の屈曲方向にそれぞれ賦形されている。そして、インナーシース4の遠位端部4b及びアウターシース5の遠位端部5aの屈曲方向が共通している。
【0036】
上記構成によれば、ステントグラフト2の展開中(アウターシース5から曝露させるとき)に、インナーシース4及びアウターシース5が賦形されていることにより、屈曲状態を維持しやすくなるため、大動脈弓50の軸心を同軸としてステントグラフト2を放出させやすくなる。
【0037】
さらには、インナーシース4及びアウターシース5が賦形されていることによって、これらを牽引する内側操作線70及び外側操作線71、72の可動域を減らすことができる。このため、牽引の際に内側操作線70、外側操作線71、72に加わる負荷を低減できる。
【0038】
このため、内側操作線70、外側操作線71、72の最大引張荷重を低く抑えることができることで、これらを細径化でき、これらを内包するインナーシース4及びアウターシース5の薄肉化が可能となる。これに伴い、ステントグラフト2の配設空間の確保と放出展開時の抵抗の低減が実現でき、より大きなステントグラフト2を装填可能となる。
【0039】
インナーシース4は、不図示のガイドワイヤを通すように構成されており、インナーシース4の外周にはステントグラフト2が固定される。インナーシース4の直径(後述するガイドワイヤルーメン部40と操作線用ルーメン部41とを合わせた最大径)は約6mmである。
【0040】
また、
図1に示すように、インナーシース4の遠位端部4b(後述する固定チップ41fよりも先端)には、先端チップ12が接合されている。先端チップ12は、シース3が血管内を走行する際に血管を損傷しないように、シース3の先端を保護するものである。なお、
図4、
図5及び
図15においては、先端チップ12の図示を省略している。
【0041】
インナーシース4には、
図4に示すように、不図示のガイドワイヤが通されるガイドワイヤルーメン部40と、内側操作線70が通される操作線用ルーメン部41と、が形成されている。
操作線用ルーメン部41は、ガイドワイヤルーメン部40よりも剛性が低い低剛性領域(空間41c)を有して、ガイドワイヤルーメン部40に並列して設けられている。本実施形態に係る操作線用ルーメン部41及びガイドワイヤルーメン部40のそれぞれの内径は1.00mmであり、外径は1.25mmである。
【0042】
なお、インナーシース4に、不図示のトリガーワイヤが通される不図示のトリガーワイヤルーメン部が更に形成されていてもよい。このトリガーワイヤは、インナーシース4にステントグラフト2を固定する不図示のワイヤの結び目に取り付けられており、インナーシース4からステントグラフト2を離脱させる際に、トリガーワイヤが牽引されて当該結び目が解かれる。
【0043】
また、「低剛性領域」としては、物体(管状部41a、41b)のない部位である空間41cを例に挙げた。つまり、本実施形態に係る「低剛性領域」は、空間41cを含み、この空間41cは、操作線用ルーメン部41に属するものである。
しかしながら本発明はこのような構成に限定されず、例えば、低剛性領域は、物体に該当するが、ガイドワイヤルーメン部40よりもヤング率が低い素材で形成されていることにより剛性が低い領域であってもよい。
つまり、内側操作線70は、インナーシース4(操作線用ルーメン部41)の中間部分から露出しない構成であってもよい。
【0044】
また、「ルーメン部」については、内腔だけではなく、内腔を画定する部位(孔の内壁又は管体)を含む概念である。
また、ガイドワイヤルーメン部40と操作線用ルーメン部41とは、具体的には、熱融着、接着等により接続されている。
【0045】
上記構成によれば、内側操作線70を牽引することで、ガイドワイヤルーメン部40よりも剛性の低い低剛性領域(空間41c)を有する操作線用ルーメン部41側にインナーシース4を屈曲させやすくなる。
【0046】
なお、内側操作線70は、ガイドワイヤルーメン部40の遠位端部におけるガイドワイヤルーメン部40の軸線方向に垂直な方向にずれた操作線用ルーメン部41の遠位端部41d(固定チップ41f)に固定されている。このように構成されていることで、内側操作線70を牽引したときに、ガイドワイヤルーメン部40に曲げモーメントを付与することができる。このため、簡単な構成でインナーシース4を屈曲させることができる。
【0047】
本実施形態においては、ガイドワイヤルーメン部40の側面に、管状部41a、41bを有する樹脂製の操作線用ルーメン部41が接合されている。なお、管状部41bに金属材料を採用したり、一つのチューブの肉厚内部に複数のルーメンが形成されていたりすることで、ガイドワイヤルーメン部40への接続をより強固にしてもよい。
【0048】
操作線用ルーメン部41は、低剛性領域(空間41c)よりも剛性が高い高剛性領域(管状部41a、41b)を更に備える。操作線用ルーメン部41は、高剛性領域(管状部41a、41b)と低剛性領域(空間41c)とを長尺方向において交互に有する。
【0049】
上記構成によれば、内側操作線70が通る操作線用ルーメン部41を画定する部位が、高剛性領域(管状部41a、41b)と低剛性領域(空間41c)を長尺方向において交互に有することで、内側操作線70を牽引したときにインナーシース4の長尺方向の各部位を屈曲させることができる。結果として、このような構成によれば、長尺方向において長い範囲でインナーシース4を屈曲させることができ、屈曲量を大きくすることができる。
【0050】
より具体的には、本実施形態に係る操作線用ルーメン部41は、長尺方向に断続的に設けられた複数の管状部41a、41bによって形成されている。高剛性領域は、管状部41a、41bであり、低剛性領域は、隣接する管状部41a、41bの間の空間41cである。
なお、「管状部41a、41b」については、チューブやリングが含まれる他、内側操作線70を通す孔を画定するものであればよい。
【0051】
上記構成によれば、低剛性領域が空間41cによって形成されていることで、インナーシース4が屈曲する際に、空間41cを挟んで隣接する管状部41a、41b同士の干渉を避け、インナーシース4をスムーズに屈曲させることができる。
つまり、空間41cにより、インナーシース4を屈曲させたときに、操作線用ルーメン部41において、復元力として生じる内部応力が大きくなることを抑制できる。
【0052】
低剛性領域(空間41c)は、インナーシース4に取り付けられた留置具(ステントグラフト2)の先端側の一部領域に設けられている。具体的には、空間41cは、
図2に示すようにステントグラフト2の先端側に重なる位置に形成されている。
【0053】
上記構成によれば、低剛性領域(空間41c)が留置具(ステントグラフト2)の先端側の一部領域に設けられていることで、ステントグラフト2の先端側の一部領域のみを屈曲させやすくして、ステントグラフト2を体内の屈曲部分に沿うように留置することができる。
なお、ステントグラフト2の少なくとも先端側を屈曲できる点で、ステントグラフト2の先端側の一部領域に重なるように空間41cが設けられていればよいが、このような構成に限定されない。例えば、空間41cは、ステントグラフト2の長尺方向の全体に亘って配設されていてもよい。
【0054】
図3に示すように、低剛性領域(空間41c)の近位端41eは、インナーシース4における賦形された形状の屈曲開始位置4aよりも遠位側に配設されていると好適である。
上記構成によれば、低剛性領域(空間41c)の近位端41eが賦形された形状の屈曲開始位置4aよりも近位側にあることで、内側操作線70による牽引によって、空間41cのある操作線用ルーメン部41で賦形された形状を更に屈曲させやすくなる。
【0055】
本実施形態に係る操作線用ルーメン部41の遠位端部41dには、内側操作線70の先端部70aを固定する固定部(固定チップ41f)が設けられており、内側操作線70は、固定チップ41fに溶接されている。
なお、
図4においては、内側操作線70の先端部70aが固定チップ41fに突き当たった状態で固定チップ41fに接続(溶接)されている構成を示しているが、本発明はこのような構成に限定されない。内側操作線70の先端部70aは、固定チップ41fの外周面に沿わせられた状態で溶接されていてもよい。
【0056】
上記構成によれば、内側操作線70が固定チップ41fに溶接されていることで、例えばカシメによって内側操作線70が固定チップ41fに接続されているものと比較して、接合強度を高めることができる。このため、内側操作線70が操作線用ルーメン部41から破断して、インナーシース4から外れることを防ぐことができる。
なお、内側操作線70が、レーザー溶接、アーク溶接又は抵抗溶接その他の溶接によって固定チップ41fに接合されていれば、接合強度が高く好適であるが、本発明はこのような構成に限定されない。
例えば、内側操作線70は、半田接合の他、熱融着、接着剤による接着や機械的掛止(カシメ)などによって固定チップ41fに接続されていてもよい。
【0057】
インナーシース4における賦形された形状の屈曲開始位置4aは、プッシャー11の接続部11aよりも遠位側に配置されている。
本実施形態に係るプッシャー11は、円筒状に形成されており、インナーシース4の外周を覆うように、インナーシース4の外径よりも若干大きな内径で形成されて、インナーシース4の外周に組み付けられている。
【0058】
上記構成によれば、賦形された形状の屈曲開始位置4aが、プッシャー11の接続部11aよりも遠位側にあることで、プッシャー11に近位方向の移動を制限されたステントグラフト2とともにインナーシース4を屈曲状態にすることができる。
【0059】
また、ステントグラフト2がインナーシース4に取り付けられた状態において、ステントグラフト2の近位端部2cは、低剛性領域(空間41c)の近位端41eよりも近位側、かつ、プッシャー11の接続部11aよりも遠位側に配設されている。
低剛性領域(空間41c)の近位端41eとは、本実施形態に関して
図4に示すように、操作線用ルーメン部41において空間41cが複数設けられている場合には、複数の空間41cのうち最も近位側にある空間41cの近位端41eである。
【0060】
上記構成によれば、留置具(ステントグラフト2)の近位端部2cが、低剛性領域(空間41c)の近位端41eよりも近位側にあることで、ステントグラフト2の近位端部2cの位置を内側操作線70の牽引によって変形しにくい位置に安定させることができる。
また、ステントグラフト2の近位端部2cがプッシャー11の接続部11aよりも遠位側にあることで、ステントグラフト2の近位方向の移動をプッシャー11で制限することができる。
【0061】
インナーシース4は、屈曲状態に賦形されていたとしても、アウターシース5に覆われた状態だと、アウターシース5の内壁からの付勢(反力)により屈曲方向の変形が規制される。
そして、
図5(b)に示すように、アウターシース5が近位側に引かれて、インナーシース4が露出したときに、アウターシース5からの付勢がなくなるため、賦形した状態(自然状態)に屈曲することになる。
この点、本実施形態に係るインナーシース4とアウターシース5は同じ方向に賦形されているため、アウターシース5の遠位端部5aにおける曲率半径と、インナーシース4の遠位端部4bにおける曲率半径の差が低く抑えられる。このため、アウターシース5から露出したインナーシース4の遠位端部4bが屈曲方向外側に移動することを抑制できる。
したがって、使用者は、インナーシース4を軸線50bに沿わせた状態でステントグラフト2を展開できるため、展開前からステントグラフト2の展開位置を定めやすくなる。
【0062】
なお、このような展開前からステントグラフト2の展開位置を定めやすくするためには、インナーシース4とアウターシース5とが同じ方向に賦形されて屈曲しているものであると好適であるが、このような構成に限定されない。
例えば、インナーシース4とアウターシース5がともに賦形されていないものであってもよい。このような場合でも、インナーシース4及びアウターシース5それぞれの遠位端部4b、5aがステントグラフト2の展開前において直線に近い傾きであれば、使用者は、アウターシース5の遠位端部5aの直線的な傾きからアウターシース5を近位側に引いたときに露出するインナーシース4の遠位端部4bがほぼ同じ傾きとなることを予測できる。
【0063】
なお、シース3を体内に挿入した後は、X線透視下でシース3の位置の確認が可能である。大動脈弓50におけるシース3の位置は、不図示の造影ワイヤを目印に位置を合わせる方法、プリシェイプ構造(賦形)により、大動脈弓50内にシース3を自然と収める方法がある。
【0064】
図2に示す状態、つまり、ステントグラフト2の近位端部2cをアウターシース5が覆っている状態においては、ステントグラフト2内に入ってくる血流の出口がないため、血流を遅くする又は止める必要がある。
一方で、この状態においては、インナーシース4の屈曲度合いを内側操作線70で変更することで、ステントグラフト2の遠位端部2d側の位置を変更できる。これとともに、アウターシース5の屈曲度合いを外側操作線71、72で変更することで、ステントグラフト2の近位端部2c側の位置を変更できる。つまり、この状態においては、ステントグラフト2の両端の位置を調整できる。
【0065】
図3に示す状態、つまり、ステントグラフト2を完全に展開させた状態になった後では、ステントグラフト2内に入ってくる血流の出口が、ステントグラフト2の近位端部2cとプッシャー11及びアウターシース5との間にできるため、血流を確保することができる。そしてこの状態で、内側操作線70に対して牽引又は弛緩することで、ステントグラフト2の遠位端部2dの屈曲量を調整して位置決めを行うことができる。
【0066】
また、アウターシース5の可動機構によれば、ステントグラフト2の長手方向の各部を軸線50bに沿った好適な位置で展開することができる。
具体的には、アウターシース5が、ステントグラフト2を完全に覆っている位置から、
図2に示すステントグラフト2の近位端部2cのみを覆っている位置に至るまでのアウターシース5の近位側への相対移動に伴って、外側操作線71、72に対して牽引又は弛緩することで、ステントグラフト2の長手方向の各部を好適な位置で展開できる。
【0067】
図6に示すように、5つのアウターシース5を試料として、引張試験を行った結果、外側操作線71、72の引張長が約20mmのときに、アウターシース5には、約15Nの負荷がかかった。なお、ステントグラフト2をアウターシース5の内部に入れた際には約4Nから約5Nの負荷が追加でかかることとなる。
なお、内側操作線70の引張長が約5mmのときに、約10Nから約20Nの負荷がかかった。
【0068】
図4(a)に示すように、空間41cの軸線方向の長さをAとし、管状部41bの軸線方向の長さをBとし、複数の空間41cの近位端41e(管状部41aの遠位端)から操作線用ルーメン部41の遠位端部41dまでの長さをCとする。なお、Cは、内側操作線70を牽引したときの屈曲長さと等しい。
【0069】
内側操作線70の牽引後におけるインナーシース4の曲率半径の目標値を30mmから40mm(大動脈弓50の形状に沿う値)とした場合には、曲げ長Cは65mmであればよい。
【0070】
本実施形態に係る内側操作線70の牽引力は、引張長さが5mmのときに、8N以上20N以下である。
より具体的には、
図7に示す、管状部41bの一つ(一つ当たり)の長尺方向の長さに対する空間41cの一つ(一つ当たり)の長尺方向の長さ(A/Bの値)が1以上3以下の範囲で、牽引力は上記の範囲であると好適である。
内側操作線70を8N以上20N以下の力で牽引することにより、ステントグラフト2の配設位置を微調整可能である。
図7によれば、空間41cの一つ(一つ当たり)の長尺方向の長さは、管状部41bの一つ(一つ当たり)の長尺方向の長さの1倍以上の大きさであると(A/Bの値が1以上であると)少ない力でインナーシース4を曲げることができることがわかる。
【0071】
空間41cの長さの割合が管状部41bの長さの割合に対して小さすぎると、インナーシース4を屈曲させる際に、内側操作線70から操作線用ルーメン部41にかかる垂直荷重が大きくなり、ガイドワイヤルーメン部40と操作線用ルーメン部41の接合部が剥離してしまう。
【0072】
上記数値範囲内であれば、インナーシース4を屈曲させやすく、かつ、
図7に示すように、インナーシース4を屈曲させる際に内側操作線70による引張荷重を小さくすることができる。
また、
図7に示すように、A/Bの比は大きくなるほど(樹脂部の距離比が短くなるほど)、小さな牽引力で曲げることができる可能性が示唆された。
【0073】
[操作機構について]
次に、
図8を参照して、インナーシース4及びアウターシース5を屈曲させる操作機構15について説明する。
図8は、内側操作線用ボビン30及び外側操作線用ボビン31を備える操作機構15を示す模式図である。
【0074】
搬送装置1は、インナーシース4に対してアウターシース5を近位側に引いて留置具(ステントグラフト2)を展開する際に使用者に操作される操作部(操作ハンドル20)を更に備える。
操作ハンドル20は、アウターシース5に取り付けられ、インナーシース4に対して軸方向に摺動可能に取り付けられている。
操作ハンドル20には、内側操作線70に対して巻回及び引き出し可能な内側操作線用ボビン30と、外側操作線71に対して巻回及び引き出し可能な外側操作線用ボビン31と、が設けられている。
【0075】
つまり、操作ハンドル20は、アウターシース5を近位側に移動する際と、インナーシース4及びアウターシース5を屈曲させる際とに用いられる兼用のものである。操作ハンドル20の内部には、内側操作線70及び外側操作線71のそれぞれが通されて、内側操作線用ボビン30及び外側操作線用ボビン31に巻回されている。
【0076】
上記構成によれば、内側操作線用ボビン30が操作ハンドル20に設けられていることにより、インナーシース4に対してアウターシース5を近位側に引いてステントグラフト2を展開する操作とともに、あるいは連続的に内側操作線70を内側操作線用ボビン30に巻き取ることができる。
また、外側操作線用ボビン31が操作ハンドル20に設けられていることにより、インナーシース4に対してアウターシース5を近位側に引く際に、アウターシース5の牽引力を維持することができる。
【0077】
使用者がアウターシース5を近位側に後退させて、ステントグラフト2を放出する際には、内側操作線70のうち、内側操作線用ボビン30に予め巻回されている分を引き出して追従させる。内側操作線用ボビン30から引き出された内側操作線70はアウターシース5とプッシャー11間に配設される。
【0078】
なお、本実施形態に係る操作ハンドル20においては、外側操作線71と外側操作線用ボビン31とが一組のみ設けられている構成を説明している。しかしながら、本発明に係る操作ハンドル20は、このような構成に限定されず、外側操作線71とは径方向逆側に設けられた外側操作線72と、これに対して巻回及び引き出し可能な外側操作線用ボビン31とを更に備える構成であってもよい。
【0079】
<第1変形例>
図8に示す構成、つまり、内側操作線70が内側操作線用ボビン30から遠位側に引き出されている場合には、ステントグラフト2を展開するために操作ハンドル20を近位側に移動させたときに、内側操作線用ボビン30から内側操作線70を引っ張る力が生じないようにして、インナーシース4の角度が変わることを防止する必要がある。このため、初期状態において内側操作線用ボビン30に内側操作線70を巻回しておき、内側操作線用ボビン30から内側操作線70を引き出し可能な状態にしておく必要があった。
次に、
図9を参照して、第1変形例に係る操作機構16について説明する。
図9は、第1変形例に係る折返しボビン32を備える操作機構16を示す模式図である。
【0080】
搬送装置1は、内側操作線70を摺動可能に支持する折返し部(折返しボビン32)を更に備える。
折返しボビン32は、内側操作線用ボビン30よりも近位側に配設されている。
内側操作線70は、内側操作線用ボビン30から近位側に引き出され、折返しボビン32により折り返されて、
図4(a)に示すように内側操作線70の先端部70aがインナーシース4(操作線用ルーメン部41)の遠位端部41dに固定されている。
【0081】
本実施形態に係る折返し部としての折返しボビン32は、円筒状に形成されて、プッシャー11の外周に固定されたベース33に回転可能に取り付けられている。本発明に係る折返し部としては、円筒状の折返しボビン32に限定されず、断面多角形状であってもよい。更に、折返し部における内側操作線70と接触する部位にはローレット状の滑り止め加工がされていてもよい。
【0082】
上記構成によれば、折返し部(折返しボビン32)が設けられていることによって、内側操作線70を内側操作線用ボビン30から近位側に延在させることができるため、ステントグラフト2を展開するために操作ハンドル20を近位側に移動する際に、操作ハンドル20をスムーズに移動させることができる。
【0083】
本実施形態に係る構成によれば、折返しボビン32によって内側操作線70が近位側から折り返されて内側操作線用ボビン30に接続されているため、操作ハンドル20を近位側に移動させたときでも、内側操作線用ボビン30から内側操作線70を引っ張る力が生じない。このため、初期状態において内側操作線用ボビン30に内側操作線70を巻回しておく必要がなくなり、装置の組み立てが容易となる。
【0084】
なお、操作ハンドル20を近位側に移動すると、折返しボビン32と内側操作線用ボビン30との間で内側操作線70が弛むことになる。このため、使用者は、ステントグラフト2を展開、放出した後に、内側操作線用ボビン30を回転させて、内側操作線70を巻き取るようにすればよい。
【0085】
<第2変形例>
次に、
図10から
図12を参照して、第2変形例に係る操作機構17について説明する。
図10(a)は、第2変形例に係る歯車状の内側操作線用ボビン34及び外側操作線用ボビン35を備える操作機構17を示す模式図、
図10(b)は、
図10(a)に記載のXB部を拡大して示す図である。
図11は、第2変形例に係る操作機構17を底面から見た模式図であり、内側操作線用ボビン34と外側操作線用ボビン35が噛合している状態を示す図である。
図12は、第2変形例に係る操作機構17を底面から見た模式図であり、内側操作線用ボビン34と外側操作線用ボビン35が離間している状態を示す図である。
【0086】
搬送装置1は、操作部(操作ハンドル20)の近位側への移動位置に応じて、内側操作線用ボビン30に対して内側操作線70を巻回し及び引き出す弛み調整機構8を備える。
弛み調整機構8は、ラック部11bと内側操作線用ボビン34と、によって構成されるものであり、詳細については後述する。
上記構成によれば、弛み調整機構8により、操作ハンドル20を近位側に移動したときに、内側操作線70が弛むことを抑制できる。
【0087】
搬送装置1は、留置具(ステントグラフト2)が近位方向に移動することを制限する押さえ部材(プッシャー11)を更に備える。
内側操作線用ボビン34は、外周部に歯34aを有して歯車状に形成されている。
プッシャー11は、径方向において、インナーシース4と操作部(操作ハンドル20)との間に少なくとも一部が配設されている。
プッシャー11は、遠近方向に延在するラック部11bを有する。
ラック部11bと内側操作線用ボビン34が噛合していることにより、弛み調整機構8として機能する。
【0088】
上記構成によれば、ステントグラフト2を展開するために操作ハンドル20を近位側に移動させる際に、内側操作線用ボビン34(の歯34a)が噛合するラック部11bに回動させられることによって、内側操作線70を内側操作線用ボビン34に自動的に巻回することができる。
なお、弛み調整機構8としては、内側操作線用ボビン34とラック部11bとによって構成されるものに限定されず、内側操作線用ボビン34に対して内側操作線70を巻回又は引き出し可能な構成であればよい。たとえば、ゼンマイのようなドラムと板バネによって構成されるもので、ゼンマイの弾性復元力を利用して内側操作線70を牽引したり牽引を解除したりするものであってもよい。
【0089】
図11に示すように、押さえ部材(プッシャー11)には、径方向において、インナーシース4の外側の空間と操作部(操作ハンドル20)の内側の空間とを連通させる貫通孔11cが形成されていてもよい。貫通孔11cに、内側操作線70が通されている。具体的には、貫通孔11cは、プッシャー11における内側操作線70に対向する側に形成されており、プッシャー11の延在方向に沿って長尺に形成されている。
【0090】
図10に示すように、プッシャー11のラック部11bと内側操作線用ボビン34の歯34aとが噛合していれば、アウターシース5を伴って操作ハンドル20を近位側に移動させる際に、ラック部11bによって内側操作線用ボビン34が
図10における反時計回りに回転する。このため、内側操作線70を内側操作線用ボビン34に自動で巻回させることが可能である。
【0091】
一方で、このような、ラック部11bと内側操作線用ボビン34の歯34aとが噛合していない構成では、操作ハンドル20を近位側に移動させるときに、内側操作線用ボビン34と折返しボビン32との間で内側操作線70が弛み、インナーシース4及びプッシャー11がその配置を阻害することが問題となる。
そこで、
図11に示して上記したプッシャー11に貫通孔11cが形成されていることで、インナーシース4から出されて操作ハンドル20に取り付けられる内側操作線70が弛むことを貫通孔11cが許容し、内側操作線70がインナーシース4及びプッシャー11が阻害することを抑制できる。
【0092】
内側操作線用ボビン34及び外側操作線用ボビン35のそれぞれは、外周部に歯34a、35aを有して歯車状に形成されている。
内側操作線用ボビン34と外側操作線用ボビン35とが噛合可能に配設されている。
上記構成によれば、内側操作線用ボビン34又は外側操作線用ボビン35の一方を操作することのみで、双方の操作線(内側操作線70及び外側操作線71)を牽引及び弛緩することができる。
【0093】
本実施形態においては、
図11に示すように、内側操作線用ボビン34は、連結部材34cを介して、操作ハンドル20から外部に突出する操作レバー34bを備える。
【0094】
図12に示すように、内側操作線用ボビン34と外側操作線用ボビン35とは、噛合位置から噛合解除位置に移動可能に配設されている。
具体的には、
図11及び
図12に示すように、外側操作線用ボビン35は、操作ハンドル20の外に設けられた操作レバー34bに、棒状の連結部材34cを介して接続されている。特に、連結部材34cは、内側操作線用ボビン34と操作レバー34bとに固定されており、回転トルクを伝達可能に構成されている。
【0095】
使用者が操作レバー34bを操作ハンドル20から離間する方向に引くことによって、内側操作線用ボビン34を
図12の二点鎖線に示す噛合位置から実線で示す噛合解除位置に移動させて、外側操作線用ボビン35との噛合を解除できるように構成されている。
上記構成によれば、内側操作線用ボビン34と外側操作線用ボビン35の噛合解除することによって、内側操作線用ボビン34と外側操作線用ボビン35とを個別に操作することが可能となる。
【0096】
本実施形態においては、ステントグラフト2の展開前であって、ラック部11bに内側操作線用ボビン34が噛合していない位置に内側操作線用ボビン34がある状態で、外側操作線用ボビン35に噛合している(
図11参照)。
【0097】
このため、ステントグラフト2の展開前において、アウターシース5の遠位端部5aを可動させることで、アウターシース5の内部に設けられたステントグラフト2の位置を調整することができる。操作レバー34bを、
図10において反時計回り(内側操作線用ボビン34の巻取り方向)に回転させると、アウターシース5の外側操作線71が外側操作線用ボビン35に巻き取られ、インナーシース4の内側操作線70が内側操作線用ボビン34に巻き取られる。これにより、内側操作線70と外側操作線71の双方に張力が発生することで、ステントグラフト2をスムーズに可動させることができる。
【0098】
そして、操作レバー34bを、
図10において時計回り(内側操作線用ボビン34の引き出し方向)に回転させると、アウターシース5の外側操作線71が外側操作線用ボビン35から、インナーシース4の内側操作線70が内側操作線用ボビン34から引き出される。これにより、内側操作線70と外側操作線71の双方の張力が弱められることで、ステントグラフト2を元の位置に戻すことができる。
【0099】
ステントグラフト2を展開させる際、つまりアウターシース5をインナーシース4に対して牽引する際には、
図12に示すように、操作レバー34bを操作ハンドル20から引き出して、内側操作線用ボビン34と外側操作線用ボビン35との噛合を解除する。このとき、
図10に示すように、内側操作線用ボビン34の歯34aがラック部11bに噛合する。
このようにすれば、上記のように、内側操作線用ボビン34を備える操作ハンドル20を近位側に移動させることで、ラック部11bにより内側操作線用ボビン34が反時計回り(巻回方向)に回転し、内側操作線70を内側操作線用ボビン34に自動で巻回させることが可能となる。
【0100】
図12に示す内側操作線用ボビン34と外側操作線用ボビン35との噛合を解除した状態で、使用者は、操作レバー34bを時計回り又は反時計回りに回転させることで、インナーシース4の遠位端部4bの屈曲度合いを調整することができる。この操作は、ステントグラフト2の放出後を含むステントグラフト2の展開以降で行われることになる。
なお、ステントグラフト2の放出は、不図示のトリガーワイヤを牽引することにより、ステントグラフト2のインナーシース4への結び目を解くことにより行われる。
【0101】
また、ステントグラフト2を放出した後、使用者は、操作ハンドル20をプッシャー11に対して相対的に遠位側に移動するようにして、操作ハンドル20に接続されたアウターシース5を先端チップ12に当接する位置まで戻してインナーシース4を収容する。この際には、操作レバー34bを操作して、内側操作線用ボビン34の歯34aとプッシャー11のラック部11bとが噛合する位置にすればよい。このようにすれば、操作ハンドル20の遠位側への移動に伴って、内側操作線用ボビン34が
図10における時計回り(引き出し方向)に回転することで、内側操作線70に張力が生じないように内側操作線用ボビン34から引き出すことができる。
【0102】
<第3変形例>
次に、第3変形例に係る操作機構18について、
図13を主に参照して説明する。
図13は、第3変形例に係るケーブルガイド36を備える操作機構18を示す模式図である。
【0103】
図13に示すように、搬送装置1は、内側操作線70における近位側の一部の径方向外側を覆って、長尺に延在する操作線誘導部(ケーブルガイド36)を更に備える。
ケーブルガイド36は、アウターシース5及びインナーシース4の外側に配置されている。本実施形態係るケーブルガイド36は、アウターシース5よりも近位側、且つインナーシース4よりも径方向外側にあり、プッシャー11に設けられている。
【0104】
本実施形態に係るケーブルガイド36は、内側操作線用ボビン30と折返しボビン32とを結び、内側操作線70が通る経路を形成し、且つ、内側操作線70が径方向外側に撓むことを制限するものである。本実施形態においては、ケーブルガイド36は、当該経路を形成するように複数並んだ円筒状のリング36aで形成されている。このリング36aは、プッシャー11の側面に取り付けられている。
上記構成によれば、ケーブルガイド36が設けられていることで、内側操作線70が径方向外側に撓むことを規制できる。
【0105】
また、本発明に係る操作線誘導部は、内側操作線70の径方向外側への撓みを制限できればよく、管状に形成されていてもよく、プッシャー11に設けられたルーメンであってもよい。特に管状に形成されている場合には、例えばベローズのように、軸方向に伸縮可能なものであると操作ハンドル20の遠近方向の移動に追従して変形できるため、操作ハンドル20の移動を阻害しないため好ましい。
【0106】
<第4変形例>
次に、第4変形例に係る操作機構19について、
図14を参照して説明する。
図14は、第4変形例に係るインナーシース操作ハンドル21とアウターシース操作ハンドル22とを備える操作機構19を示す模式図である。
【0107】
図14に示すように、搬送装置1は、インナーシース4に対してアウターシース5を近位側に引いて留置具(ステントグラフト2)を展開する際に使用者に操作されるアウターシース操作部(アウターシース操作ハンドル22)と、アウターシース操作ハンドル22とは別個に設けられ、インナーシースに直接的又は間接的に取り付けられたインナーシース操作部(インナーシース操作ハンドル21)と、を更に備える。
インナーシース操作ハンドル21には、内側操作線70に対して巻回及び引き出し可能な内側操作線用ボビン30が設けられている。
【0108】
本実施形態に係るインナーシース操作ハンドル21は、プッシャー11を介して間接的にインナーシース4に取り付けられているが、このような構成に限定されず、インナーシース4に直接取り付けられていてもよい。
【0109】
上記構成によれば、インナーシース操作ハンドル21とアウターシース操作ハンドル22が別個に設けられていることで、アウターシース操作ハンドル22を近位側に引くときに、インナーシース操作ハンドル21による内側操作線70の牽引に影響が生じない。
【0110】
なお、本発明に係る各種構成要素は、個々に独立した存在である必要はない。複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
【0111】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)
留置具を体内にデリバリーするための医療用留置具搬送装置であって、
前記留置具の搬送時に前記留置具が周囲に配設される長尺のインナーシースと、
該インナーシースの径方向外側を覆い、前記インナーシースに対して軸方向に摺動可能に構成されており、前記留置具の搬送時に前記留置具の外周を覆い、前記インナーシースに対して軸方向の近位側に摺動することで前記留置具を露出させるアウターシースと、
前記インナーシースの遠位端部に先端部を接続されて前記インナーシースの軸方向に配設され、近位側に牽引されることで、前記インナーシースを屈曲させる内側操作線と、
前記アウターシースの遠位端部に先端部を接続されて前記アウターシースの軸方向に配設され、近位側に牽引されることで、前記アウターシースを屈曲させる外側操作線と、
を備えることを特徴とする医療用留置具搬送装置。
(2)
前記外側操作線は、前記アウターシース内において、前記アウターシースの軸心を通る仮想平面上に少なくとも一対設けられており、
前記内側操作線は、前記インナーシース内において、前記仮想平面上に一本配設されている(1)に記載の医療用留置具搬送装置。
(3)
前記インナーシースの遠位端部及び前記アウターシースの遠位端部は、自然状態において屈曲状態となるように所定の屈曲方向にそれぞれ賦形されており、前記インナーシースの遠位端部及び前記アウターシースの遠位端部の前記屈曲方向が共通している(1)又は(2)に記載の医療用留置具搬送装置。
(4)
前記インナーシースに対して前記アウターシースを近位側に引いて前記留置具を展開する際に使用者に操作される操作部を更に備え、
該操作部は、前記アウターシースに取り付けられ、前記インナーシースに対して軸方向に摺動可能に取り付けられており、
前記操作部には、前記内側操作線に対して巻回及び引き出し可能な内側操作線用ボビンが設けられている(1)から(3)のいずれか一項に記載の医療用留置具搬送装置。
(5)
前記内側操作線を摺動可能に支持する折返し部を更に備え、
該折返し部は、前記内側操作線用ボビンよりも近位側に配設されており、
前記内側操作線は、前記内側操作線用ボビンから近位側に引き出され、前記折返し部により折り返されて、前記内側操作線の前記先端部が前記インナーシースの前記遠位端部に固定されている(4)に記載の医療用留置具搬送装置。
(6)
前記操作部の近位側への移動位置に応じて、前記内側操作線用ボビンに対して前記内側操作線を巻回し及び引き出す弛み調整機構を備える(4)又は(5)に記載の医療用留置具搬送装置。
(7)
前記留置具が近位方向に移動することを制限する押さえ部材を更に備え、
前記内側操作線用ボビンは、外周部に歯を有して歯車状に形成されており、
前記押さえ部材は、遠近方向に延在するラック部を有し、
該ラック部と前記内側操作線用ボビンが噛合していることにより、前記弛み調整機構として機能する(6)に記載の医療用留置具搬送装置。
(8)
前記留置具が近位方向に移動することを制限する押さえ部材を更に備え、
該押さえ部材は、径方向において、前記インナーシースと前記操作部との間に少なくとも一部が配設されており、
前記押さえ部材には、径方向において、前記インナーシースの外側の空間と前記操作部の内側の空間とを連通させる貫通孔が形成されており、
前記貫通孔に、前記内側操作線が通されている(4)から(7)のいずれか一項に記載の医療用留置具搬送装置。
(9)
前記インナーシースに対して前記アウターシースを近位側に引いて前記留置具を展開する際に使用者に操作される操作部を更に備え、
該操作部は、前記アウターシースに取り付けられ、前記インナーシースに対して軸方向に摺動可能に取り付けられており、
前記操作部には、前記外側操作線に対して巻回及び引き出し可能な外側操作線用ボビンが設けられている(1)から(8)のいずれか一項に記載の医療用留置具搬送装置。
(10)
前記内側操作線用ボビン及び前記外側操作線用ボビンのそれぞれは、外周部に歯を有して歯車状に形成されており、
前記内側操作線用ボビンと前記外側操作線用ボビンとが噛合可能に配設されている(4を引用する(9)に記載の医療用留置具搬送装置。
(11)
前記内側操作線用ボビンと前記外側操作線用ボビンとは、噛合位置から噛合解除位置に移動可能に配設されている(10)に記載の医療用留置具搬送装置。
(12)
前記内側操作線における近位側の一部の径方向外側を覆って、長尺に延在する操作線誘導部を更に備え、
該操作線誘導部は、前記アウターシース及び前記インナーシースの外側に配置されている(1)から(11)のいずれか一項に記載の医療用留置具搬送装置。
(13)
前記インナーシースに対して前記アウターシースを近位側に引いて前記留置具を展開する際に使用者に操作されるアウターシース操作部と、
該アウターシース操作部とは別個に設けられ、前記インナーシースに直接的又は間接的に取り付けられたインナーシース操作部と、を更に備え、
前記インナーシース操作部には、前記内側操作線に対して巻回及び引き出し可能な内側操作線用ボビンが設けられている(1)から(3)のいずれか一項に記載の医療用留置具搬送装置。
(14)
前記留置具がステントグラフトであり、前記ステントグラフトを大動脈弓に留置するための医療用留置具搬送装置であって、
前記内側操作線の牽引力は、引張長さが5mmのときに、8N以上20N以下である(1)から(13)のいずれか一項に記載の医療用留置具搬送装置。
(15)
(1)から(14)のいずれか一項に記載の医療用留置具搬送装置と、
前記インナーシースに取り付けられた前記留置具と、を備える留置具付き医療用留置具搬送装置。
【符号の説明】
【0112】
1S ステントグラフト付き搬送装置(留置具付き医療用留置具搬送装置)
1 搬送装置(医療用留置具搬送装置)
2 ステントグラフト(留置具)
2a ステント部
2b グラフト部
2c 近位端部
2d 遠位端部
3 シース
4 インナーシース
4a 屈曲開始位置
4b 遠位端部
5 アウターシース
5a 遠位端部
5b 固定リング
8 弛み調整機構
11 プッシャー(押さえ部材)
11a 接続部
11b ラック部
11c 貫通孔
12 先端チップ
15、16、17、18、19 操作機構
20 操作ハンドル(操作部)
21 インナーシース操作ハンドル(インナーシース操作部)
22 アウターシース操作ハンドル(アウターシース操作部)
30 内側操作線用ボビン
31 外側操作線用ボビン
32 折返しボビン(折返し部)
33 ベース
34 内側操作線用ボビン
34a 歯
34b 操作レバー
34c 連結部材
35 外側操作線用ボビン
35a 歯
36 ケーブルガイド(操作線誘導部)
36a リング
40 ガイドワイヤルーメン部(剛性部)
41 操作線用ルーメン部
41a、41b 管状部(高剛性領域)
41c 空間(低剛性領域)
41d 遠位端部
41e 近位端
41f 固定チップ
50 大動脈弓(体管)
50a 内壁
50b 軸線
51 下行大動脈(体管)
55 大動脈瘤
70 内側操作線
70a 先端部
71、72 外側操作線
71a、72a 先端部
400 インナーシース
500 アウターシース