(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154232
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】ソケット
(51)【国際特許分類】
H01R 33/76 20060101AFI20221005BHJP
H01R 12/71 20110101ALI20221005BHJP
H01R 13/24 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
H01R33/76 503A
H01R12/71
H01R13/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057153
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】長岡 秀明
(72)【発明者】
【氏名】古山 昌治
(72)【発明者】
【氏名】星野 雄基
(72)【発明者】
【氏名】福園 健治
【テーマコード(参考)】
5E024
5E223
【Fターム(参考)】
5E024CA01
5E024CB04
5E223AB03
5E223AB08
5E223AC31
5E223BA07
5E223BA20
5E223BB01
5E223BB12
5E223CA19
5E223CB22
5E223CB31
5E223DA05
5E223DB08
5E223DB11
5E223DB25
5E223EC10
(57)【要約】
【課題】コンタクトピンの頂部のワイピング量を小さく抑えること。
【解決手段】複数のコンタクトピンと、前記複数のコンタクトピンを保持する保持部と、前記保持部の第1面から上方に突出した第1突起部と、を備え、前記複数のコンタクトピンは、前記保持部を前記第1面から第2面に貫通した起立部と、前記保持部の前記第1面側における前記起立部の端から前記第1面に対して斜め上方に延びた傾斜部と、電子部品の端子に接触する頂部を有し、前記傾斜部の前記起立部とは反対の端から前記頂部まで前記起立部の中心軸に向かって前記保持部の前記第1面に対して斜め上方に延びた延在部と、を備え、前記第1突起部は、前記傾斜部と前記保持部の前記第1面との間に設けられている、ソケット。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコンタクトピンと、
前記複数のコンタクトピンを保持する保持部と、
前記保持部の第1面から上方に突出した第1突起部と、を備え、
前記複数のコンタクトピンは、前記保持部を前記第1面から第2面に貫通した起立部と、前記保持部の前記第1面側における前記起立部の端から前記第1面に対して斜め上方に延びた傾斜部と、電子部品の端子に接触する頂部を有し、前記傾斜部の前記起立部とは反対の端から前記頂部まで前記起立部の中心軸に向かって前記保持部の前記第1面に対して斜め上方に延びた延在部と、を備え、
前記第1突起部は、前記傾斜部と前記保持部の前記第1面との間に設けられている、ソケット。
【請求項2】
前記頂部は、前記起立部の中心軸よりも前記第1突起部側に位置する、請求項1に記載のソケット。
【請求項3】
前記第1突起部は、少なくとも一部が前記傾斜部の前記端と前記保持部の前記第1面との間に位置する、請求項1または2に記載のソケット。
【請求項4】
前記第1突起部の上面と前記傾斜部との間に空隙が形成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載のソケット。
【請求項5】
前記第1突起部の上面は、前記起立部に近い側が低い傾斜面を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のソケット。
【請求項6】
前記第1突起部の前記傾斜面は、前記傾斜部と平行である、請求項5に記載のソケット。
【請求項7】
前記保持部の前記第1面から上方に突出した第2突起部を備え、
前記保持部の前記第1面から、前記第1突起部の上面、前記第2突起部の上面、前記頂部の順に離れている、請求項1から6のいずれか一項に記載のソケット。
【請求項8】
前記複数のコンタクトピンは、金または銅により形成されている、請求項1から7のいずれか一項に記載のソケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソケットに関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品と回路基板とを電気的に接続するためのソケットが知られている。例えば、コンタクトピンの曲げ頂部の両側に一対の接点を設けることで、電子部品の接続方向に垂直な方向への接点の変位を抑制し、かつ、電子部品との間の接触力を強くすることが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
接触性を向上させて電気抵抗を安定にするために、コンタクトピンの頂部を電子部品の端子でワイピングさせることが行われている。しかしながら、電子部品の高機能化に伴ってコンタクトピン数の増加およびコンタクトピンの狭ピッチ化が進んでいるため、コンタクトピンの頂部をワイピングさせることが可能な領域が小さくなっている。
【0005】
1つの側面では、コンタクトピンの頂部のワイピング量を小さく抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの態様では、複数のコンタクトピンと、前記複数のコンタクトピンを保持する保持部と、前記保持部の第1面から上方に突出した第1突起部と、を備え、前記複数のコンタクトピンは、前記保持部を前記第1面から第2面に貫通した起立部と、前記保持部の前記第1面側における前記起立部の端から前記第1面に対して斜め上方に延びた傾斜部と、電子部品の端子に接触する頂部を有し、前記傾斜部の前記起立部とは反対の端から前記頂部まで前記起立部の中心軸に向かって前記保持部の前記第1面に対して斜め上方に延びた延在部と、を備え、前記第1突起部は、前記傾斜部と前記保持部の前記第1面との間に設けられている、ソケットである。
【発明の効果】
【0007】
1つの側面として、コンタクトピンの頂部のワイピング量を小さく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1(a)は、実施例1に係るソケットの断面図、
図1(b)は、
図1(a)の領域Aの拡大図である。
【
図2】
図2は、実施例1に係るソケットを用いて回路基板と電子部品とを電気的に接続させる場合を示す断面図である。
【
図3】
図3(a)は、比較例1に係るソケットの断面図、
図3(b)は、
図3(a)の領域Aの拡大図である。
【
図4】
図4(a)および
図4(b)は、比較例1におけるコンタクトピンのワイピングについて示す断面図である。
【
図5】
図5(a)は、比較例2に係るソケットの断面図、
図5(b)は、
図5(a)の領域Aの拡大図である。
【
図6】
図6(a)および
図6(b)は、比較例2におけるコンタクトピンのワイピングについて示す断面図である。
【
図7】
図7(a)から
図7(c)は、実施例1におけるコンタクトピンのワイピングについて示す断面図である。
【
図8】
図8(a)は、シミュレーションをした比較例2に相当するモデルの断面、
図8(b)は、シミュレーションをした実施例1に相当するモデルの断面である。
【
図9】
図9(a)は、比較例2に相当するモデルのシミュレーション結果であり、
図9(b)は、実施例1に相当するモデルのシミュレーション結果である。
【
図10】
図10(a)から
図10(c)は、突起部の位置を異ならせた場合における曲げ頂部のワイピングについて検証したシミュレーション結果である。
【
図12】
図12(a)から
図12(c)は、実施例2におけるコンタクトピンのワイピングについて示す断面図である
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【実施例0010】
図1(a)は、実施例1に係るソケット100の断面図、
図1(b)は、
図1(a)の領域Aの拡大図である。
図1(a)のように、ソケット100は、複数のコンタクトピン10と、複数のコンタクトピン10を束ねて保持する保持部30と、保持部30の上面32から突出する突起部40と、を備える。
【0011】
図1(b)のように、コンタクトピン10は、起立部12と、起立部12の一端から延びた傾斜部14と、傾斜部14の一端から延びた延在部16と、起立部12の他端から延びた接合部18と、を含んで形成されている。起立部12は、保持部30を上面32から下面34にかけて貫通し、直線状に真っ直ぐ延びている。起立部12は、例えば、保持部30の上面32と下面34が対向する方向に延び、上面32および下面34に直交している。傾斜部14は、保持部30の上面32側における起立部12の端13aから、上面32に対して斜め上方に直線状に真っ直ぐ延びている。延在部16は、傾斜部14の起立部12とは反対の端15から起立部12の中心軸22に向かって保持部30の上面32に対して斜め上方に延び、かつ、曲げ頂部17を境に斜め下方に延びている。曲げ頂部17は、電子部品の端子に接触する接点となる部分である。中心軸22は、起立部12が保持部30を上面32から下面34にかけて貫通して延びた方向に平行で、起立部12の中心を通る中心線である。接合部18は、保持部30の下面34側における起立部12の端13bから、下面34に平行に延びている。接合部18は、回路基板等の端子に例えばはんだ等によって接合される。
【0012】
このように、コンタクトピン10は、起立部12と傾斜部14の間で屈曲し、傾斜部14と延在部16の間で屈曲している。
【0013】
突起部40は、コンタクトピン10の傾斜部14と保持部30の上面32との間に位置している。すなわち、突起部40と傾斜部14は平面視にて重ねっている。突起部40は、少なくとも一部が傾斜部14の端15と保持部30の上面32との間に位置することが好ましい。突起部40と傾斜部14の間には空隙が形成されている。
【0014】
突起部40の上面42は、少なくとも起立部12の中心軸22側において、中心軸22に近い側が低く、遠い側に向かって徐々に高くなる傾斜面44となっている場合が好ましい。突起部40の上面42の全面が傾斜面44となっていてもよい。傾斜面44は、コンタクトピン10の傾斜部14と平行になっている場合が好ましい。
【0015】
コンタクトピン10の曲げ頂部17は、起立部12の中心軸22よりも突起部40側に位置し、側面視にて起立部12の中心軸22と突起部40との間の領域を中心軸22に平行な方向に伸ばした領域24内に位置している。例えば、曲げ頂部17は、起立部12の中心軸22と突起部40の起立部12の中心軸22側の側面との中間の中間線26よりも起立部12の中心軸22に寄って位置している。
【0016】
コンタクトピン10は、銅または金などの金属により形成される。保持部30は、樹脂(例えばポリエーテルサルフォン樹脂(PES樹脂)、ポリエーテルイミド樹脂(PEI樹脂)、ポリアミドイミド樹脂(PAI樹脂))等の絶縁材により形成される。突起部40は、例えば保持部30の上面32を突起状に加工することで形成されているが、保持部30の上面32に絶縁材を接着することで形成されてもよい。
【0017】
図2は、実施例1に係るソケット100を用いて回路基板70と電子部品80とを電気的に接続させる場合を示す断面図である。
図2のように、保持部30に保持された複数のコンタクトピン10の接合部18が、回路基板70の端子72にはんだ60によって接合される。この状態で、半導体装置等の電子部品80の端子82がコンタクトピン10の曲げ頂部17に接するように電子部品80を上方から押し付け、ネジなどの固定部材62で回路基板70に固定する。これにより、回路基板70と電子部品80がコンタクトピン10を介して電気的に接続する。
【0018】
[比較例1]
図3(a)は、比較例1に係るソケット500の断面図、
図3(b)は、
図3(a)の領域Aの拡大図である。
図3(a)および
図3(b)のように、比較例1のソケット500におけるコンタクトピン110は、起立部112と、延在部116と、接合部118と、を備える。起立部112は、保持部130を上面132から下面134にかけて貫通し、直線状に真っ直ぐ延びている。延在部116は、保持部130の上面132側における起立部112の端113aから斜め上方に延び、電子部品の端子に接触する曲げ頂部117を境に斜め下方に延びている。したがって、曲げ頂部117は、起立部112の中心軸122からずれている。接合部118は、保持部130の下面134側における起立部112の端113bから、下面134に平行に延びている。
【0019】
図4(a)および
図4(b)は、比較例1におけるコンタクトピン110のワイピングについて示す断面図である。
図4(a)は、ワイピングが行われる前の状態を示し、
図4(b)は、ワイピングが行われた後の状態を示している。
図4(a)のように、コンタクトピン110の接合部118がはんだ60によって回路基板70の端子72に接合された状態で、電子部品80の端子82がコンタクトピン110の曲げ頂部117に接触し始める。曲げ頂部117は起立部112の中心軸122からずれて位置しているため、電子部品80の端子82が曲げ頂部117を押していくと、
図4(b)のように、曲げ頂部117は電子部品80の端子82上をワイピング(矢印参照)する。これにより、コンタクトピン110と電子部品80の端子82との接触性が向上して、電気抵抗を安定させることができる。
【0020】
電子部品80の高機能化に伴って、コンタクトピン110の数が増加し、コンタクトピン110のピッチ間隔が狭くなっている。このため、ワイピングができる領域が小さくなっている。例えば、ワイピングが所定の領域を超えて行われると、コンタクトピン110の曲げ頂部117が電子部品80の端子82から外れて位置して電気的導通が取れなくなる場合がある。また、隣接するコンタクトピン110同士が接触してしまう場合もある。
【0021】
比較例1におけるコンタクトピン110では、ワイピング量が大きくなってしまい、ワイピング可能な所定の領域を超えてワイピングが行われてしまうことがある。
【0022】
[比較例2]
図5(a)は、比較例2に係るソケット600の断面図、
図5(b)は、
図5(a)の領域Aの拡大図である。
図5(a)および
図5(b)のように、比較例2に係るソケット600におけるコンタクトピン110aは、実施例1に係るソケット100おけるコンタクトピン10と同様の形状をしている。すなわち、コンタクトピン110aは、起立部112と、傾斜部114と、電子部品の端子と接触する曲げ頂部117を有する延在部116と、回路基板等の端子に接合される接合部118と、を有する。しかしながら、比較例2に係るソケット600では、コンタクトピン110aの傾斜部114と保持部130の上面132との間に突起部は設けられていない。
【0023】
図6(a)および
図6(b)は、比較例2におけるコンタクトピン110aのワイピングについて示す断面図である。
図6(a)は、ワイピングが行われる前の状態を示し、
図6(b)は、ワイピングが行われた後の状態を示している。
図6(a)および
図6(b)のように、コンタクトピン110aの曲げ頂部117が起立部112の中心軸122からずれて位置しているため、電子部品80の端子82が曲げ頂部117を押していくと、曲げ頂部117は電子部品80の端子82上をワイピング(矢印参照)する。これにより、コンタクトピン110aと電子部品80の端子82との接触性が向上して、電気抵抗を安定させることができる。
【0024】
比較例2におけるコンタクトピン110aは、比較例1におけるコンタクトピン110に比べて、屈曲箇所が増えている。すなわち、コンタクトピン110では起立部112と延在部116の間の1カ所で屈曲していたのに対し、コンタクトピン110aでは起立部112と傾斜部114の間および傾斜部114と延在部116の間の2カ所で屈曲している。屈曲数が増えることで、屈曲変形によってワイピング量が抑えられることが期待されたが、コンタクトピン110aにおいても、ワイピング量が大きくなって、ワイピング可能な所定の領域を超えてワイピングが行われてしまうことがある。
【0025】
ワイピングする前の状態で曲げ頂部117が起立部112の中心軸122から離れているほどワイピング量が大きくなり易いことから、ワイピング量を抑えるために、曲げ頂部117を中心軸122の近くに持ってくることが考えられる。しかしながら、コンタクトピン110aの製造誤差や、電子部品80および/または回路基板70の反り等のために、起立部112の中心軸122に対する曲げ頂部117の位置を制御することで、ワイピング量を小さく抑えることは難しい。
【0026】
[実施例1の効果の説明]
図7(a)から
図7(c)は、実施例1におけるコンタクトピン10のワイピングについて示す断面図である。
図7(a)は、ワイピングが行われる前の状態を示し、
図7(b)および
図7(c)は、ワイピングが行われた後の状態を示している。
図7(a)のように、コンタクトピン10の接合部18がはんだ60によって回路基板70の端子72に接合された状態で、電子部品80の端子82がコンタクトピン10の曲げ頂部17に接触し始める。
【0027】
曲げ頂部17が起立部12の中心軸22からずれて位置しているため、電子部品80の端子82が曲げ頂部17を押していくと、
図7(b)のように、曲げ頂部17は電子部品80の端子82上を起立部12の中心軸22から離れる方向にワイピング(矢印参照)する。傾斜部14と保持部30の上面32との間に突起部40があるため、電子部品80の端子82が曲げ頂部17を押していくと、傾斜部14が突起部40の上面に形成された傾斜面44に当接するようになる。
【0028】
図7(c)のように、電子部品80の端子82が曲げ頂部17を更に押していくと、傾斜部14が突起部40に当接しているため、延在部16が傾斜部14に対して変形する。これにより、曲げ頂部17は、これまでとは反対方向となる起立部12の中心軸22に向かってワイピング(矢印参照)する。これにより、最終的なワイピング量を小さく抑えることができる。
【0029】
[シミュレーション1]
図8(a)は、シミュレーションをした比較例2に相当するモデルの断面、
図8(b)は、シミュレーションをした実施例1に相当するモデルの断面である。
図8(a)および
図8(b)において、保持部230と剛体280が対向する方向をY軸方向とし、Y軸方向に直交しかつ起立部212に対して傾斜部214が折れ曲がる方向をX軸方向とする。シミュレーションは、保持部230に底部が固定されたコンタクトピン210を剛体280により4MPaの圧力で上から押したときのコンタクトピン210のX軸方向の変位量を測定した。コンタクトピン210は銅で形成され、保持部230はPES樹脂で形成され、剛体280は変形しない部材であるとした。
【0030】
コンタクトピン210の形状は以下とした。なお、コンタクトピン210の各寸法を示す符号(L1等)は、
図8(a)にのみ図示し、図の明瞭化のために、
図8(b)では図示を省略している。
起立部212のY軸方向の長さL1:0.28mm
起立部212から傾斜部214の端までのX軸方向の長さL2:0.22mm
傾斜部214から曲げ頂部217の頂点までのY軸方向の長さL3:0.31mm
曲げ頂部217の頂点から延在部216の先端までのX軸方向の長さL4:0.12mm
コンタクトピン210の幅W1:0.05mm
コンタクトピン210の紙面奥行き方向(X軸とY軸に直交する方向)の長さ:0.2mm
起立部212と傾斜部214の間の角度α:110°
傾斜部214と延在部216の間の角度β:98°
延在部216の曲げ頂部217での角度γ:90°
【0031】
また、
図8(b)の実施例1に相当するモデルにおいて、傾斜部214と保持部230との間の突起部240は、保持部230と同じPES樹脂で形成され、上面全面が傾斜面であるとし、形状を以下とした。
突起部240と起立部212との間の空隙の幅W2:0.02mm
突起部240のX軸方向の幅W3:0.2mm
突起部240のY軸方向における最短部の長さL5:0.24mm
突起部240のY軸方向における最長部の長さL6:0.3mm
【0032】
図9(a)は、比較例2に相当するモデルのシミュレーション結果であり、
図9(b)は、実施例1に相当するモデルのシミュレーション結果である。
図9(a)および
図9(b)において、コンタクトピン210が剛体280に押される前の初期状態における曲げ頂部217の位置を一点鎖線で示している。X軸方向の変位量はこの初期状態からの変位量であり、ハッチングが濃い領域ほどX軸方向の変位量が大きくなっている。
【0033】
図9(a)および
図9(b)のように、実施例1に相当するモデルは、比較例2に相当するモデルに比べて、曲げ頂部217近傍のX軸方向の変位量が小さい結果となった。これは、上述した理由によるものと考えられる。すなわち、剛体280がコンタクトピン210を押していくと、曲げ頂部217は+X方向にワイピングする。実施例1に相当するモデルでは、傾斜部214と保持部230の間に突起部240があるため、剛体280がコンタクトピン210を押していくと、傾斜部214は突起部240に当接して支えられるようになる。これにより、曲げ頂部217はこれまでのワイピング方向とは反対の-X方向にワイピングするようになり、その結果、実施例1に相当するモデルでは、曲げ頂部217のX軸方向の変位量が小さい結果になったと考えられる。
【0034】
以上説明したように、実施例1によれば、
図1(b)のように、コンタクトピン10は、起立部12と傾斜部14と延在部16とを備える。起立部12は、保持部30を上面32(第1面)から下面34(第2面)に貫通して延びている。傾斜部14は、保持部30の上面32側における起立部12の端13aから上面32に対して斜め上方に延びている。延在部16は、電子部品80の端子82に接触する曲げ頂部17を有し、傾斜部14の起立部12とは反対の端15から曲げ頂部17まで起立部12の中心軸22に向かって保持部30の上面32に対して斜め上方に延びている。そして、傾斜部14と保持部30の上面32との間に突起部40(第1突起部)が設けられている。これにより、
図7(a)から
図7(c)のように、曲げ頂部17が電子部品80の端子82に押されると、傾斜部14が突起部40に当接して、曲げ頂部17のワイピング方向が今までとは反対の方向に反転するようになる。よって、曲げ頂部17の最終的なワイピング量を小さく抑えることができる。また、曲げ頂部17が電子部品80の端子82上をワイピングするため、曲げ頂部17と電子部品80の端子82との接触性が向上して、電気抵抗を安定させることができる。
【0035】
また、実施例1では、
図1(b)のように、曲げ頂部17は、起立部12の中心軸22よりも突起部40側に位置している。これにより、曲げ頂部17を起立部12の中心軸22から離れる方向にワイピングさせた後、傾斜部14が突起部40に当接することで中心軸22の方向にワイピングさせることをより確実に行わせることができる。
【0036】
[シミュレーション2]
図10(a)から
図10(c)は、突起部240の位置を異ならせた場合における曲げ頂部217のワイピングについて検証したシミュレーション結果である。
図10(a)から
図10(c)の上図は、コンタクトピン210が剛体280に押されてワイピングし始めてから突起部240に接触した瞬間の状態を示している。
図10(a)から10(c)の下図は、上図の状態から剛体280がコンタクトピン210を更に押していったときの状態を示している。各図において、曲げ頂部217と剛体280が接触している位置を一点鎖線で示し、
図10(b)および
図10(c)の下図においては、上図のときに接触していた位置を破線で示している。
【0037】
シミュレーション2においても、コンタクトピン210は上記シミュレーション1と同じ形状とし、剛体280は上記シミュレーション1と同じくコンタクトピン210を4MPaの圧力で押したとした。
【0038】
図10(a)では、突起部240をコンタクトピン210の起立部212に寄せて配置し、形状を以下とした。
突起部240と起立部212との間の空隙の幅W2:0.01mm
突起部240のX軸方向の幅W3:0.1mm
突起部240のY軸方向における最短部の長さL5:0.24mm
突起部240のY軸方向における最長部の長さL6:0.27mm
【0039】
図10(b)では、突起部240を傾斜部214の起立部212とは反対側の端215に寄せて配置し、形状を以下とした。
突起部240と起立部212との間の空隙の幅W2:0.11mm
突起部240のX軸方向の幅W3:0.1mm
突起部240のY軸方向における最短部の長さL5:0.27mm
突起部240のY軸方向における最長部の長さL6:0.3mm
【0040】
図10(c)では、
図10(b)と同様に突起部240を傾斜部214の起立部212とは反対側の端215に寄せて配置し、形状を以下とした。
突起部240と起立部212との間の空隙の幅W2:0.17mm
突起部240のX軸方向の幅W3:0.05mm
突起部240のY軸方向における最短部の長さL5:0.29mm
突起部240のY軸方向における最長部の長さL6:0.3mm
【0041】
図10(a)のように、突起部240が傾斜部214の端215と保持部230との間に位置していない場合では、剛体280が曲げ頂部217を押していったときに、曲げ頂部217が-X方向にワイピングし難い結果となった。一方、
図10(b)および
図10(c)のように、突起部240の少なくとも一部が傾斜部214の端215と保持部230との間に位置することで、剛体280が曲げ頂部217を押していったときに、傾斜部214の端215が突起部240によって支えられる。このため、曲げ頂部217が-X方向にワイピングし易くなる結果となった。
【0042】
この結果から、曲げ頂部217のワイピング方向を反転させてワイピング量を少なく抑えるには、突起部240の少なくとも一部を傾斜部214の端215と保持部230との間に配置することが好ましいことが分かる。
【0043】
実施例1では、
図1(b)のように、突起部40は、少なくとも一部が傾斜部14の端15と保持部30の上面32との間に位置している。これにより、曲げ頂部17が電子部品80の端子82に押されて傾斜部14が突起部40に当接したときに、傾斜部14の端15が突起部40に支えられるため、曲げ頂部17のワイピング方向が反転し易くなる。よって、曲げ頂部17の最終的なワイピング量を小さく抑えることができる。
【0044】
また、実施例1では、
図1(b)のように、突起部40の傾斜面44と傾斜部14との間に空隙が形成されている。これにより、
図7(a)から
図7(c)のように、電子部品80の端子82が曲げ頂部17を押したときに、曲げ頂部17は起立部12の中心軸22から離れる方向に最初移動した後に、中心軸22に近づく方向に移動し易くなる。このため、曲げ頂部17の最終的なワイピング量を小さく抑えることができる。
【0045】
また、実施例1では、
図1(b)のように、突起部40の上面42は、起立部12に近い側が低い傾斜面44を有する。これにより、曲げ頂部17が電子部品80の端子82に押されて、傾斜部14が突起部40に当接したときに、傾斜部14は傾斜面44に当接するようになる。このため、傾斜部14が突起部40に当接することにより受けるダメージを低減することができる。傾斜部14が受けるダメージを低減する点から、突起部40の傾斜面44は、傾斜部14に平行である場合が好ましい。平行とは、完全に平行な場合に限られず、製造誤差程度に平行から外れている場合も含む。
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。