(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154236
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】OCT装置
(51)【国際特許分類】
A61B 3/10 20060101AFI20221005BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
A61B3/10 100
G01N21/17 630
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057158
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】余語 宏文
【テーマコード(参考)】
2G059
4C316
【Fターム(参考)】
2G059AA06
2G059BB08
2G059BB12
2G059EE02
2G059EE09
2G059FF02
2G059GG01
2G059GG09
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2G059JJ17
2G059JJ22
2G059KK01
2G059MM09
2G059MM10
2G059MM14
4C316AB03
4C316AB04
4C316FA09
4C316FB29
4C316FY01
4C316FY05
4C316FY06
4C316FY10
4C316FZ02
4C316FZ03
(57)【要約】
【課題】 OCTデータを好適に取得できるOCT装置を提供する。
【解決手段】 掃引周波数を変更可能な波長掃引光源と、測定光と参照光とのスペクトル干渉信号を検出する第1の検出器と、を備えるOCT光学系と、スペクトル干渉信号からOCTデータを取得する画像処理器と、第1のFPNと、第1のFPNに対してゼロディレイ位置から離れた位置に第2のFPNを生成可能なFPN生成光学系と、第1のFPNと第2のFPNとを検出する第2の検出器と、掃引周波数が第1の掃引周波数である場合にスペクトル干渉信号への演算処理へ適用される第1の補正情報を、第1の掃引周波数の場合に検出される第1のFPNに基づいて取得し、掃引周波数が第2の掃引周波数である場合にスペクトル干渉信号への演算処理へ適用される第2の補正情報を、掃引周波数が第2の掃引周波数の場合に生じる第2のFPNに基づいて取得する、演算制御器と、を備えるOCT装置。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
掃引周波数を第1の掃引周波数と、第2の掃引周波数と、の間で変更可能な波長掃引光源と、
前記波長掃引光源からの光を測定光と参照光とに分割する光分割器と、
被検眼の組織に導かれた前記測定光と前記参照光とのスペクトル干渉信号を検出する第1の検出器と、を備えるOCT光学系と、
前記スペクトル干渉信号を演算処理して被検眼のOCTデータを取得する画像処理器と、
前記第1の掃引周波数である場合に第1のFPNを発生させ、前記第2の掃引周波数である場合に第1のFPNに対してゼロディレイ位置から離れた位置に第2のFPNを発生させる、少なくとも1つの光学部材、を有するFPN生成光学系と、
前記第1のFPNと前記第2のFPNとを含むFPNを検出する第2の検出器と、
各波数成分のマッピング状態を補正するための補正情報を取得する演算制御器であって、前記掃引周波数が第1の掃引周波数である場合に得られる前記スペクトル干渉信号への前記演算処理へ適用される第1の補正情報を、前記第1の掃引周波数の場合に検出される前記第1のFPNに少なくとも基づいて取得し、前記掃引周波数が前記第1の掃引周波数よりも低い前記第2の掃引周波数である場合に得られる前記スペクトル干渉信号への演算処理へ適用される第2の補正情報を、前記掃引周波数が第2の掃引周波数の場合に生じる前記第2のFPNに少なくとも基づいて取得する、演算制御器と、
を備えるOCT装置。
【請求項2】
前記ゼロディレイ位置に対応する位置と前記光学部材の位置との光学的距離を、前記第1のFPNが前記光学部材によって発生する第1の距離と、前記第2のFPNが前記光学部材によって発生する第2の距離と、の間で変更する駆動部を、更に備える、請求項1記載のOCT装置。
【請求項3】
前記駆動部は、前記光学部材を移動させることで前記光学的距離を変更するか、又はFPN生成光学系の光路長を変更することで前記光学的距離を変更する、請求項2記載のOCT装置。
【請求項4】
前記駆動部は、前記参照光の光路長を変更することで前記光学的距離を変更する、請求項2記載のOCT装置。
【請求項5】
前記FPN生成光学系は、前記第1のFPNを発生させる前記光学部材として第1の光学部材を有し、更に、前記第2のFPNを発生させる前記光学部材として、前記第1の光学部材とは別体であり、前記ゼロディレイ位置に対応する位置からの光学的距離が、前記第1の光学部材の位置よりも離れて配置されている第2の光学部材を有する、請求項1記載のOCT装置。
【請求項6】
前記FPN生成光学系は、前記第1のFPNとはゼロディレイ位置からの距離が異なる第3のFPNと、前記第2のFPNとはゼロディレイ位置からの距離が異なる第4のFPNと、を更に発生させ、
前記演算制御器は、前記第1の補正情報を、前記第1の掃引周波数の場合にそれぞれ検出される前記第1のFPNおよび前記第3のFPNに基づいて取得し、
前記第2の補正情報を、前記第2の掃引周波数の場合にそれぞれ検出される前記第2のFPNおよび前記第4のFPNに基づいて取得する、請求項1から5のいずれかに記載のOCT装置。
【請求項7】
前記演算制御器は、前記第1補正情報を、前記第1のFPNに基づく各波数成分のマッピング情報と前記第3のFPNに基づく各波数成分のマッピング情報との間の差分情報に基づいて取得し、更に、前記第2補正情報を、前記第2のFPNに基づく各波数成分のマッピング情報と、前記第4のFPNに基づく各波数成分のマッピング情報との間の差分情報に基づいて取得する、請求項6記載のOCT装置。
【請求項8】
被検眼に対する前記測定光の照射を遮断する遮断部材を備え、
前記演算制御器は、前記遮断部材が被検眼に対する前記測定光の照射を遮断した状態で前記第2の検出器によって検出される第1のFPNおよび前記第2のFPNに基づいて、前記第1補正情報および前記第2補正情報を取得する、請求項1~7のいずれかのOCT装置。
【請求項9】
OCT装置において、被検眼の所定の範囲を撮影するための第1の撮影モードと、前記所定の範囲とは異なる範囲を撮影するための第2の撮影モードと、のいずれかが実行され、
前記第1の撮影モードが実行される場合において、前記波長掃引光源は前記第1の掃引周波数で波長を掃引し、
前記第2の撮影モードが実行される場合において、前記波長掃引光源は前記第2の掃引周波数で波長を掃引することを特徴とする、請求項1~8いずれかのOCT装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被検眼のOCTデータを得るOCT装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、眼科分野では、SS-OCT(Swept Source OCT)が活用されつつある。SS-OCTは、波長掃引光源をOCT光源として備え、被検眼の組織に導かれた測定光と参照光とのスペクトル干渉信号を、高速にサンプリングし、更に処理することによって、OCTデータを取得する。
【0003】
このような装置では、サンプリングで得られるスペクトル干渉信号と波数空間とのマッピング状態が、装置の経時変化や環境変化の影響を受け当初の状態から変異してしまう。これに対し、適宜、キャリブレーションが行われている。例えば、特許文献1には、FPN(Fixed Pattern Noise)信号を発生させる光学部材を備えたFPN発生光学系を備え、FPN信号を利用して波数成分に関してキャリブレーションを行う装置が開示されている。
【0004】
また、SS-OCTの技術分野では、波長掃引光源における掃引周波数を変更可能な装置が提案されている。例えば、特許文献2では、掃引周波数が変更されることで、深さ方向の撮影範囲を、被検眼の局所部位(前眼部または眼底)を撮影できる程度から、全眼球(角膜から眼底まで)を撮影する程度まで、大幅に変更できる装置が開示されている。また、掃引周波数が変更されることで、感度、および、Aスキャンの撮像時間なども併せて変更されると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-124188号公報
【特許文献2】特開2012-75640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように、一定の掃引周波数でのキャリブレーションに適したFPN生成光学系が、掃引周波数を変更可能な装置へ適用された場合、適切なFPN信号を取得できない場合があった。例えば、ゼロディレイ位置に対応する位置とFPNを発生させる光学部材の位置との光学的距離を一定としつつ、掃引周波数を低減させた場合、FPN信号をフーリエ変換した際に形成されるピークのエンベロープが、ゼロディレイ領域に入ってしまう場合がある。このような場合に、良好なキャリブレーションデータを取得できなくなる。
【0007】
本開示は、上記従来技術の問題点を鑑み、OCTデータを好適に取得できるOCT装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の典型的な実施形態に係るOCT装置は、掃引周波数を第1の掃引周波数と、第2の掃引周波数と、の間で変更可能な波長掃引光源と、前記波長掃引光源からの光を測定光と参照光とに分割する光分割器と、被検眼の組織に導かれた前記測定光と前記参照光とのスペクトル干渉信号を検出する第1の検出器と、を備えるOCT光学系と、前記スペクトル干渉信号を演算処理して被検眼のOCTデータを取得する画像処理器と、前記第1の掃引周波数である場合に第1のFPNを発生させ、前記第2の掃引周波数である場合に第1のFPNに対してゼロディレイ位置から離れた位置に第2のFPNを発生させる、少なくとも1つの光学部材、を有するFPN生成光学系と、前記第1のFPNと前記第2のFPNとを含むFPNを検出する第2の検出器と、各波数成分のマッピング状態を補正するための補正情報を取得する演算制御器であって、前記掃引周波数が第1の掃引周波数である場合に得られる前記スペクトル干渉信号への前記演算処理へ適用される第1の補正情報を、前記第1の掃引周波数の場合に検出される前記第1のFPNに少なくとも基づいて取得し、前記掃引周波数が前記第1の掃引周波数よりも低い前記第2の掃引周波数である場合に得られる前記スペクトル干渉信号への演算処理へ適用される第2の補正情報を、前記掃引周波数が第2の掃引周波数の場合に生じる前記第2のFPNに少なくとも基づいて取得する、演算制御器と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施例に係るOCT装置の一例を示す図である。
【
図2】キャリブレーションとして制御部の行う制御のフローチャート図である。
【
図3】FPN信号に基づいて求められる各波数成分のマッピング情報の一例である。
【
図4】各波数成分の波数マッピング状態を、補正情報に基づいて補正することを説明する図である。
【
図5】補正情報の取得の際に制御部が行う制御のフローチャート図である。
【
図7】FPN生成光学系によって生成されるFPN信号について説明する図である。
【
図8】掃引周波数によってFPN信号が検出される信号周波数が変化することを説明する図である。
【
図9】波長掃引光源の掃引周波数が第2の掃引周波数である場合における、第2のFPN信号のフーリエ変換である。
【
図10】補正情報の較正として制御部が行う制御のフローチャート図である。
【
図11】較正された補正情報によって対応ズレが補正されることを説明する図である。
【
図12】較正された補正情報によって対応ズレが補正されることを説明する図である。
【
図13】較正光学系によって取得されるスペクトル干渉信号を説明する図である。
【
図14】較正光学系によって取得される較正用干渉信号を説明する図である。
【
図15】FPN生成光学系の変容例を示す図である。
【
図16】FPN生成光学系及び参照光学系の変容例を示す図である。
【
図17】FPN生成光学系の変容例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[概要]
本開示の実施形態を説明する。以下の<>にて分類された項目は、独立または関連して利用されうる。例えば、ある実施形態において、複数の項目を適宜組み合わせることができる。また、例えば、ある実施形態に関して記載された項目を、他の実施形態に対して適用できる。
【0011】
例えば、第1実施形態に記載の発明と、第2実施形態に記載の発明は、同時に実施されてもよい。また、第1実施形態に記載の発明と、第2実施形態に記載の発明は、いずれか一方が実施されてもよい。
【0012】
<第1実施形態>
第1実施形態に係るOCT装置は、掃引周波数を複数に変更可能な装置において、それぞれの掃引周波数に対応するキャリブレーションデータが適正に取得される。
【0013】
第1実施形態に係るOCT装置は、OCT光学系を備え、OCT光学系の第1の検出器から出力されるスペクトル干渉信号を画像処理器で演算処理してOCTデータを取得可能であってもよい。
【0014】
<OCT光学系>
OCT光学系は、例えば、フーリエドメインOCT光学系であってもよい。例えば、OCT装置は、波長掃引式OCT(SS-OCT:Swept Source OCT)であってもよい。
【0015】
OCT光学系は、波長掃引光源から出射される光を光分割器によって測定光と参照光に分割してもよい。また、OCT光学系は、被検眼からの測定光の反射光と、参照光とのスペクトル干渉信号を、第1の検出器によって検出してもよい。
【0016】
例えば、波長掃引光源は、掃引周波数を第1の掃引周波数と、第1の掃引周波数よりも低い第2の掃引周波数と、の間で変更可能な波長掃引光源であってもよい。本実施例において、掃引周波数とは単位時間あたりに掃引が行われる回数を示す。例えば、第1の掃引周波数と第2の掃引周波数との間で変更されることで、OCT装置の深さ方向に関する撮影範囲が変更されてもよい。例えば、第1の掃引周波数は、被検眼の眼底の断層画像を取得するための掃引周波数であり、第2の掃引周波数は、被検眼の全眼球の断層画像を取得するための掃引周波数であってもよい。また、掃引周波数が第1の掃引周波数と第2の掃引周波数との間で変更されることで、撮影時間や測定の感度が変更されてもよい。例えば、OCT装置は、第1の掃引周波数で撮影する第1の撮影モードと、第2の掃引周波数で撮影する第2の撮影モードとに選択的に設定されても良い。
【0017】
<FPN生成光学系>
OCT装置において、FPN生成光学系が備えられる。FPN生成光学系は、例えば、第1のFPNと第2のFPNと、を発生させるための光学部材と、第1のFPNの信号と第2のFPNの信号を検出可能な第2の検出器と、を備える光学系であってもよい。なお、第1実施形態において、掃引周波数が同条件の場合において、第2のFPNが発生する位置は、第1のFPNの位置よりもゼロディレイ位置から離れた位置である。なお本実施例において、ゼロディレイ位置とは、OCT画像における、測定光と参照光との光路長が一致する深さ位置である。
【0018】
また、FPN生成光学系とOCT光学系との間で一部の構成が兼用される。例えば、FPN生成光学系の第2の検出器は、OCT光学系の第1の検出器と兼用される。つまりFPN生成光学系は、光源からの光をFPN発生用の光学部材へ導くと共に、光学部材を介した光を第1の検出器に導く。
【0019】
OCT装置において、ゼロディレイ位置に対応する位置と、光学部材の位置と、の間の光学的距離を変更する駆動部が備えられてもよい。本実施例においてゼロディレイ位置に対応する位置は、光学部材を配置した場合に、光源から光学部材を介して検出器に入射するまでの光路長と、参照光路の光路長が一致する位置である。すなわち、ゼロディレイに対応する位置とは、光学部材を配置した場合に、ゼロディレイ位置にFPNが生成される位置である。なお、本実施例において、ゼロディレイ位置に対応する位置を原点位置と称する。
【0020】
例えば、駆動部は、FPN生成光学系の光路長、又は参照光路の光路長を変更することで光学的距離を変更する。例えば、駆動部は光学的距離を、第1のFPNが発生する第1の距離と、第2のFPNが発生する第2の距離と、の間で変更してもよい。例えば、駆動部は光学的距離を、波長掃引光源が第1の掃引周波数の場合に第1の距離に変更し、第2の掃引周波数の場合に第2の距離に変更してもよい。
【0021】
また、FPN生成光学系において、例えば、第1のFPNを発生させるための第1の光学部材が備えられている。また、FPN生成光学系において、例えば、第2のFPNを発生させるための第2の光学部材が備えられている。例えば、第1の光学部材と第2の光学部材は兼用される。
【0022】
例えば、第1の光学部材と第2の光学部材は別体であってもよい。その場合、原点位置から第1の光学部材までの光学的距離よりも、原点位置から第2の光学部材までの光学的距離が長くなるように、第1の光学部材と第2の光学部材は配置されてもよい。
【0023】
<マッピング状態の補正>
OCT装置において、各波数成分のマッピング状態を補正するための補正情報を得る演算制御器が備えられてもよい。演算制御器は、第1のFPNに基づいて第1の補正情報を取得しても良い。例えば、演算制御器は、第1の掃引周波数の場合において、第1の補正情報を用いて、スペクトル干渉信号に対して演算処理を行う。これにより、第1の掃引周波数の場合において、各波数成分のマッピング状態が補正される。例えば、サンプリングポイントと光の波数(2π/λ、λは光の波長)との対応関係が線形となるように、各波数成分のマッピング状態が補正される(
図4参照)。
【0024】
同様に、演算制御器は、第2のFPNに基づいて第2の補正情報を取得しても良い。また、演算制御器は、第2の掃引周波数の場合において、第2の補正情報を用いて、スペクトル干渉信号に対して演算処理を行う。これにより、第2の掃引周波数の場合において、各波数成分のマッピング状態が補正される。
【0025】
例えば、演算制御器は、被検眼のOCTデータを取得するよりも前に、補正情報を予め取得してもよい。
【0026】
更に、例えば、FPN生成光学系は、波長掃引光源が第1の掃引周波数の場合に、第3のFPNを生成してもよく、波長掃引光源が第2の掃引周波数の場合に第4のFPNを生成してもよい。例えば、掃引周波数を同条件として第1のFPNの位置と、第3のFPNの位置とを比較した時に、第1のFPNの位置と第3のFPNの位置が異なるように、第3のFPNは生成されてもよい。また、第2のFPNと第4のFPNの関係についても同様である。
【0027】
この場合、例えば、演算制御器は、第1の補正情報を第1のFPNに基づく各波数成分のマッピング情報と、第3のFPNに基づく各波数成分のマッピング情報と、の差分情報に基づいて取得してもよい。また、第2の補正情報を第2のFPNに基づく各波数成分のマッピング情報と、第4のFPNに基づく各波数成分のマッピング情報と、の差分情報に基づいて取得してもよい。これによれば、各波数成分のマッピング状態に含まれる分散成分を補正することができる(
図3参照)。
【0028】
また、演算制御器は、測定光が遮断された状態で補正情報を取得してもよい。この場合、例えば、OCT光学系には測定光を遮断するための遮断部材が挿脱可能に備えられてもよい。例えば、演算制御器は、遮断部材がOCT光学系に挿入された状態で、第2の検出器が検出した第1のFPNに基づいて、第1の補正情報を取得する。同様に、例えば、演算制御器は、遮断部材がOCT光学系に挿入された状態で、第2の検出器が検出した第2のFPNに基づいて、第2の補正情報を取得する。
【0029】
上記構成によれば、例えば、波長掃引光源が掃引周波数を変えた場合であっても、FPNが検出される信号周波数を変更することで、適正にFPN信号を取得することができる。例えば、本実施例において、検出器と演算制御器との間には、演算制御器の保護のためにDC成分をカットする電気的なフィルタが設けられている。本実施例では、この電気的なフィルタによってカットされる周波数の領域を、ゼロディレイ領域と称する。例えば、本実施例において、フーリエ変換した際に形成されるピークのエンベロープが、ゼロディレイ領域に入らないような信号周波数でFPNを生成することができる。
【0030】
このため、生成されたFPNを用いて良好に補正情報を取得することができる。よって、好適にOCTデータを取得できる。
【0031】
更に、例えばFPN生成光学系は光強度調節器を備えていてもよい。例えば、光強度調節器は、FPN生成光学系から出射される光の強度を、波長掃引光源の掃引周波数に基づいて調整する。例えば、光強度調節器はFPN信号が第1の検出器のダイナミックレンジ内に収まるように、光の強度を調整する。これによれば、掃引周波数が変更されて波長掃引光源からの光の強度が変化した場合でも、第1の検出器は適切にFPN信号を検出できる。
【0032】
<第2実施形態>
第2実施形態に係るOCT装置は、波長掃引光源が波長掃引するときの、時間と波数との対応ズレが適切に補正される。
【0033】
第2実施形態に係るOCT装置は、OCT光学系を備える。第1実施形態で説明したOCT光学系が、第2実施形態でも援用される。
【0034】
<演算制御器>
OCT装置は、検出したスペクトル干渉信号を演算処理して被検眼のOCTデータを取得する演算制御器を備えてもよい。また、演算制御器は、波長掃引光源から射出される光について、時間と波数との対応のズレ(以下、対応ズレ)を補正してもよい。例えば、対応ズレを補正することによって、各波数成分のマッピング状態のグラフの傾きが補正される(
図12(a)参照)。また、対応ズレを補正することによって、各波数成分のマッピング状態のグラフのシフト(平行移動)が補正される(
図12(b)参照)。
【0035】
<較正光学系>
OCT装置は、対応ズレを補正するための較正光学系が備えられてもよい。較正光学系は、波長掃引光源の掃引範囲に含まれる光のうち、所定の波長の光を抽出する、波長選択的な波長抽出部材を有する。例えば、較正光学系は、波長掃引光源が掃引する光から所定の波長の光を、波長抽出部材を介することで検出する。
【0036】
例えば、波長選択的な波長抽出部材は、較正光学系に挿脱可能に備えられていてもよい。例えば、本実施例において、波長抽出部材が較正光学系に挿入された状態で演算制御器によって検出されるスペクトル干渉信号を較正用干渉信号とする。演算制御器は、較正用干渉信号における所定の波長の検出タイミングに基づいて対応ズレを補正してもよい。
【0037】
なお、対応ズレを補正するために補正用干渉信号を取得するとき以外は、波長抽出部材は光軸に対して退避される。
【0038】
例えば、OCT装置は、測定光を被検眼へ導光する導光光学系が備えられてもよい。
【0039】
例えば、FPN生成光学系と、導光光学系と、の少なくとも一方と、較正光学系と、は光学系を一部兼用してもよい。その場合、FPN生成光学系と導光光学系の少なくとも一方には、波長抽出部材が備えられる。
【0040】
例えば、較正光学系は、対応ズレを補正するために用いる較正用干渉信号を取得する。例えば、較正用干渉信号は、波長掃引光源が掃引を開始してから終了するまで検出器によって取得される、波長抽出部材を介した波長掃引光源からの光と参照光とによる、スペクトル干渉信号である。例えば、較正用干渉信号において、波長掃引光源が所定の波長の光を出射したタイミングと対応するサンプリングポイントに、所定の波長の光と、参照光と、によるスペクトル干渉信号が生じる。なお、例えば、較正光学系とOCT光学系との部材は一部兼用されてもよい。例えば、較正光学系に備えられた検出器と、OCT光学系に備えられた検出器とが兼用されてもよい。その場合、較正光学系は、波長抽出部材を介した所定の波長の光を、OCT光学系の前記検出器へ導く。
【0041】
<対応ズレの除去(較正)>
本実施例では、較正用干渉信号における、所定の波長の光と、参照光とによるスペクトル干渉信号が検出されるサンプリングポイントを、検出タイミングと称する。例えば、演算制御器は、較正用干渉信号を処理して検出タイミングを取得する。例えば、演算制御器は、各波数成分のマッピング状態を補正するための補正情報を、検出タイミングに基づいて較正する。例えば、演算制御器は、較正された補正情報を用いて演算処理を行って各波数成分のマッピング状態を補正することで、各波数成分のマッピング状態に含まれる対応ズレを補正する。なお、本開示において、補正情報を較正するための演算処理を較正処理と称する。
【0042】
例えば、較正光学系に備えられた、所定の波長の光を抽出する波長抽出部材は、所定の第1の波長の光と、第1の波長とは異なる第2の波長の光と、を抽出できる波長抽出部材であってもよい。この場合、演算制御器は、第1の波長の光が検出された検出タイミングと、第2の波長の光が検出された検出タイミングと、を用いて、補正情報を較正してもよい。これによれば、各波数成分のマッピング状態の補正が行われる場合に、対応ズレが補正されるように補正情報を較正できる。
【0043】
なお、例えば、補正情報の較正は、被検眼のOCTデータを取得する前に行われてもよい。この場合、被検眼のOCTデータが取得されるよりも前に、FPNに基づく補正情報の取得と、検出タイミングに基づく補正情報の較正が行われてもよい。
【0044】
例えば、OCT装置は、測定光が通過する測定光路と、参照光が通過する参照光路と、の光路長差を所定の第1の光路長差と第2の光路長差との間で変更する変更手段を備えてもよい。
【0045】
例えば、変更手段はFPN生成光学系の光路長を変更してもよい。また、変更手段は、参照光学系の光路長を変更してもよい。例えば、変更手段は、FPN生成光学系の光路長と、参照光学系の光路長のうち、少なくとも一方の光路長を変更することで、光路長差を変更する。
【0046】
例えば、演算制御器は、光路長差が第1の光路長差の場合の所定の波長の検出タイミングと、光路長差が第2の光路長差の場合の所定の波長の検出タイミングと、に基づいて対応ズレを補正してもよい。例えば、演算制御器は、光路長差が第1の光路長差の場合において取得される干渉信号と、光路長差が第2の光路長差の場合において取得される干渉信号と、を加算する。これによれば、所定の波長の検出タイミングに生じるスペクトル干渉信号の信号強度が増加する。このため、演算制御器は、より正確に所定の波長の検出タイミングを取得できる。
【0047】
すなわち、演算制御器は、光路長差が第1光路長差のときに検出器が検出する較正用干渉信号と、光路長差が第2光路長差のときに検出器が検出する較正用干渉信号と、を用いて較正処理を行うことで、対応ズレを補正してもよい。
【0048】
上記構成によれば、例えば、波長掃引光源の光について、時間と波数との対応のズレを適切に補正することができるため、好適に被検眼のOCTデータを取得することができる。
【0049】
[実施例]
本開示の実施形態の一例について図面に基づいて説明する。
図1~
図13は第1および第2実施形態の実施例に係る図である。なお、以下の<>にて分類された項目は、独立または関連して利用され得る。
【0050】
<OCT光学系>
本実施例では、OCT装置1として、
図1に示される光コヒーレンストモグラフィー(OCT)装置が用いられる。本実施例に係るOCT装置1は、例えば、波長掃引式OCT(SS-OCT:SWEPT Source-OCT)を基本的構成とし、波長掃引光源102、OCT光学系100、演算制御器(演算制御部、以下制御部)70、を含む。その他、OCT装置1には、メモリ72、表示部75、図示無き正面像観察系及び固視標投影系が備えられる。制御部70は、波長掃引光源102、OCT光学系100、メモリ72、表示部75に接続されている。
【0051】
OCT光学系100は、導光光学系150によって測定光を被検眼Eに導く。OCT光学系100は、参照光学系110に参照光を導く。OCT光学系100は、被検眼Eによって反射された測定光と参照光との干渉、によって取得される干渉信号光を検出器(受光素子)120に受光させる。さらに、本実施例のOCT光学系100は、FPN生成光学系200を備える(詳細は後述する)。また、OCT光学系100は、較正光学系300を備える(詳細は後述する)。なお、本実施例において、FPN生成光学系200と較正光学系300は兼用される。なお、OCT光学系100は、図示無き筐体(装置本体)内に搭載され、ジョイスティック等の操作部材を介して周知のアライメント移動機構により被検眼Eに対して筐体を3次元的に移動させることによって被検眼Eに対するアライメントが行われてもよい。
【0052】
OCT光学系100には、SS-OCT方式が用いられ、波長掃引光源102として出射波長を時間的に高速で変化させる波長可変光源(波長走査型光源)が用いられる。波長掃引光源102は、例えば、レーザ媒体、共振器、及び波長選択フィルタによって構成される。そして、波長選択フィルタとして、例えば、回折格子とポリゴンミラーの組み合わせ、ファブリー・ペローエタロンを用いたフィルタが挙げられる。
【0053】
また、本実施例において、波長掃引光源102は、掃引周波数を変更できる。本実施例において、掃引周波数とは単位時間あたりに掃引が行われる回数を示す。例えば、波長掃引光源102は、所定の第1の掃引周波数H1(例えば、200kHz)と、所定の第2の掃引周波数H2(例えば、25kHz)との間で掃引周波数を変更できる。なお、変更可能な掃引周波数の数は2つに限定されない。
【0054】
例えば、波長掃引光源102の掃引周波数が変更されることで、OCT装置1の撮影範囲が深さ方向に関して変更される。
【0055】
カップラ(スプリッタ)104は、光分割器として用いられ、波長掃引光源102から出射された光を測定光路と参照光路に分割する。カップラ104は、例えば、波長掃引光源102からの光を測定光路側の光ファイバ105に導光すると共に、参照光路側の参照光学系110に導光する。
【0056】
カップラ(スプリッタ)130は、光ファイバ105からの光(測定光)を、導光光学系150の光路とFPN生成光学系200の光路に分割する。つまり、測定光路には、導光光学系150とFPN生成光学系200が備えられている。カップラ(スプリッタ)130は、ビームスプリッタであってもよいし、サーキュレータであってもよい。
【0057】
<導光光学系>
導光光学系150は、測定光を被検眼Eに導くために備えられる。導光光学系150には、例えば、光ファイバ152、カップラ153、コリメータレンズ154、光スキャナ156、及び対物レンズ系158が順次備えられてもよい。この場合、測定光は、光ファイバ152、カップラ153を介して、コリメータレンズ154によって平行ビームとなり、光スキャナ156に向かう。光スキャナ156を通過した光は、対物レンズ系158を介して、被検眼Eに照射される。測定光は、前眼部及び後眼部の両方に照射され、各組織にて散乱・反射される。
【0058】
光スキャナ156は、被検眼E上でXY方向(横断方向)に測定光を走査させてもよい。光スキャナ156は、例えば、2つのガルバノミラーであり、その反射角度が駆動機構によって任意に調整される。波長掃引光源102から出射された光束は、その反射(進行)方向が変化され、眼底上で任意の方向に走査される。光スキャナ156としては、例えば、反射ミラー(ガルバノミラー、ポリゴンミラー、レゾナントスキャナ)の他、光の進行(偏向)方向を変化させる音響光学素子(AOM)等が用いられてもよい。
【0059】
この場合、測定光による被検眼Eからの散乱光(反射光)は、対物レンズ系158、光スキャナ156、コリメータレンズ154、カップラ153、光ファイバ152~カップラ130、光ファイバ112を経て、カップラ350に達する。散乱光は、カップラ350にて参照光と合波されて干渉する。
【0060】
また、例えば、導光光学系150は、シャッター151が光軸に対して挿脱可能に備えられてもよい。例えば、シャッター151は、後述する補正情報が取得される際に光軸に対して挿入される。
【0061】
なお、シャッター151は、導光光学系150由来の光を遮断するための遮断部材の一例であり、これに限定されない。例えば、遮断手段として、光吸収部材が備えられていてもよい。その場合、例えば、制御部70が光スキャナ156を制御し、導光光学系150に入射した光(又は、被検眼からの戻り光)を光吸収部材に導くことで、導光光学系150由来の光を遮断できる。
【0062】
<参照光学系>
参照光学系110は、被検眼Eでの測定光の反射によって取得される反射光と合成される参照光を生成する。参照光学系110を経由した参照光は、カップラ350にて測定光路からの光と合波されて干渉する。参照光学系110は、マイケルソンタイプであってもよいし、マッハツェンダタイプであっても良い。
【0063】
なお、測定光路と参照光路の少なくともいずれかには、測定光と参照光との光路長差を調整するための光学部材が配置されてもよい。例えば、コリメータレンズ154とカップラ153とが一体的に移動されることで、測定光の光路長が調整され、結果として、測定光と参照光との光路長差が調整されてもよい。もちろん、参照光路に配置された光学部材が移動されることによって、結果として、測定光と参照光との光路長差が調整されてもよい。
【0064】
<検出器>
検出器120は、測定光路からの光と参照光路からの光による干渉を検出するために備えられている。検出器120としては、平衡検出を行ってもよい。この場合、検出器120は、複数の受光素子を備え、第1受光素子からの干渉信号と第2受光素子からの干渉信号との差分を得て、干渉信号に含まれる不要なノイズを削減する。各受光素子は、受光部が一つのみからなるポイントセンサであって、例えば、アバランシェ・フォト・ダイオードが用いられる。
【0065】
<FPN生成光学系>
FPN生成光学系200は、FPN信号を生成する。FPN信号は、各波数成分のマッピング情報を補正するために利用される。本実施例では、FPN生成光学系によって、第1のFPN信号、第2のFPN信号、第3のFPN信号及び第4のFPN信号が生成される。
【0066】
図1に示すように、本実施例において、FPN生成光学系200は、カップラ(スプリッタ)130から、導光光学系150と分岐した位置に配置されている。
【0067】
例えば、FPN生成光学系200は、FPNを発生させるためのFPN生成部材204と、FPN生成部材204の位置を光軸方向に移動させる駆動部205と、FPNを検出する検出器121とを備える。なお、FPN生成部材204は、FPNを発生させるための光学部材であり、例えば金ミラーである。また、FPNを検出する検出器121は、OCT光学系100に備えられた検出器120と兼用される。
【0068】
例えば、FPN生成光学系200に入射し、FPN生成部材204を経由した光が参照光と干渉することで、FPN信号が生成される。生成されたFPN信号は検出器120によって検出される。また、後述する制御部70(画像処理器を兼ねる)はFPN信号に基づいてOCT画像上にFPNを生成する。
【0069】
例えば、本実施例において、FPN生成光学系200は、OCT画像上においてFPNが生成される深さ方向の位置を変更することができる。
【0070】
例えば、駆動部205は、FPN生成部材204を光軸と平行方向に移動する。これにより、原点位置P0から、FPN生成部材204までの光学的距離が変更される。なお、原点位置P0とは、本実施例において、FPN生成部材204を配置した場合にOCT画像上におけるゼロディレイ位置にFPNが生成される、光学系上の位置のことである。
【0071】
駆動部205がFPN生成部材204の位置を変更することによって、FPN生成光学系200の光路長が変更されるため、参照光学系110とFPN生成光学200との光路長差が変更される。FPNがOCT画像上に生成される深さ方向の位置は、参照光路とFPN生成光学系の光路長差によって変化する。このことから、駆動部205は、FPN生成部材204の位置を変更することで、FPNが生成される深さ方向の位置を変更できる。
【0072】
なお、後述の[変容例](
図15参照)と比較して、FPN生成光学系200について、光路を分割せずに光路長を変更できることから、それぞれのFPN信号が強く、検出が容易である可能性がある。また、複数のFPN信号が同時にOCT画像上に生じないため、制御部70が行う演算処理が容易である可能性がある。
【0073】
例えば、本実施例においてFPN生成光学系200によって、少なくとも4つの異なる深さ位置にFPN信号を生成することができる。なお、FPN信号は、後述する各波数成分のマッピング状態を補正するための補正情報を取得する場合に用いられる。
【0074】
<較正光学系>
本実施例において、較正光学系300は、波長掃引光源102の波長と時間との対応のズレを補正するために用いられる。なお、本実施例において、波長掃引光源102の波数と時間との対応のズレを対応ズレと称する。
【0075】
図1に示すように、例えば、較正光学系300は、バンドパスフィルタ301及びノッチフィルタ302を光軸に対して挿脱可能に備える。なお、バンドパスフィルタ301及びノッチフィルタ302は、波長掃引光源102の掃引範囲に含まれる所定の波長の光を抽出する、波長選択的な波長抽出部材の一例である。
【0076】
例えば、バンドパスフィルタ301は、前述の所定の波長を含む波長帯域の光を通過させる。例えば、ノッチフィルタ302は、バンドパスフィルタ301が通過させる波長帯域のうちの一部の波長帯域の光を減衰させる。例えば、ノッチフィルタ302によって、バンドパスフィルタ301を通過した光のうち、所定の波長の光を除く波長の光が減衰される。よって、バンドパスフィルタ301とノッチフィルタ302を組み合わせて用いることにより、所定の波長の光が選択的に抽出される。
【0077】
また、バンドパスフィルタ301及びノッチフィルタ302は、所定の波長の光を抽出するための波長抽出部材の一例であり、これに限定されない。例えば、所定の波長の光を抽出するための波長抽出部材として、ファイバブラッググレーティングを用いることでも、同様の効果が得られる。なお、その場合、ファイバブラッググレーティングが備えられた光路と、備えられていない光路とが切り替えられることで、所定の波長の光が抽出されるか否かが切り替えられる。
【0078】
例えば、本実施例において、波長掃引光源102が掃引を行った場合に、バンドパスフィルタ301及びノッチフィルタ302によって、所定の第1の波長の光と、第1の波長の光とは異なる第2の波長の光と、が抽出される。
【0079】
例えば、本実施例において、FPN生成光学系200と較正光学系300は兼用される。これに代えて、較正光学系300は導光光学系150と兼用されてもよく、その場合、バンドパスフィルタ301及びノッチフィルタ302は導光光学系150に挿脱可能に備えられる。
【0080】
例えば、バンドパスフィルタ301及びノッチフィルタ302は、後述する較正用干渉信号を取得する際に光軸に対して挿入される。例えば、バンドパスフィルタ301及びノッチフィルタ302は、較正用干渉信号を取得する際以外は光軸に対して退避されている。
【0081】
なお、較正光学系300は、他の光学系と独立した光路に備えられてもよい。その場合、バンドパスフィルタ301及びノッチフィルタ302は必ずしも挿脱可能に備えられる必要はない。
【0082】
<制御部>
図1に示すように、制御部70は、CPU(プロセッサ)、RAM、ROM等を備えてもよい。例えば、制御部70のCPUは、OCT装置1の制御を司ってもよい。RAMは、各種情報を一時的に記憶する。制御部70のROMには、OCT装置1の動作を制御するための各種プログラム、初期値等が記憶されてもよい。
【0083】
制御部70には、不揮発性メモリ(以下、メモリに省略する)72、表示部75等が電気的に接続されてもよい。メモリ72には、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体が用いられてもよい。例えば、ハードディスクドライブ、フラッシュROM、および、OCT装置1に着脱可能に装着されるUSBメモリ等をメモリ72として使用することができる。メモリ72には、OCTデータの取得及びOCT画像の撮影を制御するための制御プログラムが記憶されてもよい。また、メモリ72には、OCTデータから生成されるOCT画像の他、撮影に関する各種情報が記憶されてもよい。表示部75は、OCTデータから生成されるOCT画像を表示してもよい。
【0084】
例えば、制御部70は、FPN生成光学系200に備えられた駆動部205を駆動し、FPN生成部材204の位置を制御してもよい。
【0085】
例えば、制御部70は、波長掃引光源102と接続されていてもよい。例えば、制御部70は、波長掃引光源102の掃引周波数を、第1の掃引周波数H1と、第2の掃引周波数H2との間で変更してもよい。
【0086】
例えば、掃引周波数が第1の掃引周波数H1のとき、被検眼Eの眼底の断層画像が撮影される。例えば、掃引周波数が第2の掃引周波数H2のとき、被検眼Eの全眼球の断層画像が撮影される。なお、掃引周波数に応じて深さ方向の撮影範囲を変更する方法については、特開2012-75640号公報に記載の方法を用いることができる。
【0087】
例えば、掃引周波数が第1の掃引周波数H1で撮影するモードを第1の撮影モード、掃引周波数が第2の掃引周波数H2で撮影するモードを第2の撮影モード、としてもよい。その場合、制御部70は撮影モードを選択する選択手段を兼ねてもよい。例えば、操作者が図示なき入力手段(例えば、スイッチ)を介して制御部70に入力した信号に基づいて、制御部70は撮影モードを選択してもよい。
【0088】
なお、撮影モードとは、掃引周波数ごとに撮影範囲が変更されるモードに限らない。例えば、波長掃引光源102の掃引周波数が変更されることで、撮影時間や、撮影の感度が変更される場合がある。例えば、撮影モードは、標準の感度で撮影を行う第1の撮影モードと、第1の撮影モードよりも高感度で撮影を行う第2の撮影モードであってもよい。例えば、撮影モードは、標準の時間で撮影を行う第1の撮影モードと、第1の撮影モードよりも短時間で撮影を行う第2の撮影モードであってもよい。
【0089】
また、制御部70は、シャッター151の挿脱を制御してもよい。さらにまた、制御部70は、バンドパスフィルタ301及びノッチフィルタ302の挿脱を制御してもよい。
【0090】
また、制御部70は、検出器120が検出するスペクトル干渉信号を演算処理して、OCTデータを取得し、OCT画像を生成する画像処理器として用いられてもよい。
【0091】
例えば制御部70は、OCTデータ上のFPN信号に基づいて補正情報を求める演算制御器を兼ねてもよい(詳細は[動作]で説明する)。その場合、メモリ72には、各波数成分のマッピング状態を補正するための補正情報を得る演算処理プログラムが記憶されてもよい。
【0092】
また、例えば、制御部70は、較正用干渉信号に基づいて、補正情報を較正する演算制御器を兼ねてもよい(詳細は[動作]で説明する)。その場合、メモリ72には、補正情報を較正するための較正処理プログラムが記憶されてもよい。
【0093】
[動作]
以上のような構成を備えるOCT装置1は、各波数成分のマッピング状態と、対応ズレとを補正するために、キャリブレーションを行う。例えば、キャリブレーションが行われる場合の制御部70の制御を、
図2を用いて説明する。なお、
図2はキャリブレーションが行われる場合における制御部70の行う制御のフローチャート図である。
【0094】
本実施例において、キャリブレーションとして、FPNを用いた補正情報の取得(ステップS110)と、較正用干渉信号を用いた補正情報の較正(ステップS120)が行われる。
【0095】
例えば、キャリブレーションは被検眼EのOCTデータが取得されるよりも前に実行される。その場合、キャリブレーションによって得られる後述の補正情報は、メモリ72に保持されてもよい。これによれば、撮影の際にキャリブレーションを行う時間を省くことができるため、より短時間で補正されたOCTデータを取得できる。
【0096】
以下に、本実施例におけるキャリブレーションの詳細について説明する。
【0097】
<S110:補正情報の取得>
本実施例において、制御部70は、各波数成分のマッピング状態を補正するための補正情報を、FPN生成光学系200によって生成されたFPNに基づいて取得する。例えば、キャリブレーション後に被検眼EのOCTデータを得る場合において、補正情報を用いて演算処理を行うことで、各波数成分のマッピング状態が補正されたOCTデータが取得される。
【0098】
なお、本実施例において、各波数成分のマッピング状態の補正とは、OCTデータにおいて、サンプリングポイントと光の波数(2π/λ)との対応関係が線形となるように補正することを含む。
【0099】
また、本実施例において、各波数成分のマッピング状態の補正とは、OCTデータに含まれる分散成分が除去されるように補正することを含む。
【0100】
図3は、FPN信号に基づいて求められる各波数成分のマッピング情報の一例である。
図3(a)は、第1のFPN信号に基づいて求められる各波数成分のマッピング情報である。
図3(b)は、第3のFPN信号に基づいて求められる各波数成分のマッピング情報である。
図4は、各波数成分の波数マッピング状態が、補正情報に基づいて補正されることを説明する図である。
【0101】
例えば、波長掃引光源102の掃引周波数が変化すると、各波数成分のマッピング状態及び信号成分に含まれる分散成分が変化する可能性がある。
【0102】
本実施例において、掃引周波数が変更された場合でも適切に各波数成分のマッピング状態を補正するために、制御部70は、掃引周波数ごとに補正情報を求める。例えば、制御部70は、掃引周波数が第1の掃引周波数H1の場合における各波数成分のマッピング状態を補正するために第1の補正情報を求め、掃引周波数が第2の掃引周波数H2の場合における各波数成分のマッピング状態を補正するために第2の補正情報を求める。
【0103】
第1の補正情報及び第2補正情報を取得する場合に制御部70が行う制御について、
図5のフローチャート図に基づいて説明する。
図5は、補正情報の取得(ステップS110)として制御部70が行う制御のフローチャート図である。
【0104】
<S111:第1の補正情報の取得>
例えば、制御部70は、FPN生成光学系200によって生成されるFPNのうち、少なくとも2つのFPNを用いて、補正情報を取得する。また、制御部70は、波長掃引光源102の掃引周波数ごと補正情報を取得する。本実施例において、波長掃引光源102の掃引周波数が第1の掃引周波数H1の場合において、制御部70は第1のFPN信号と、第3のFPN信号とに基づいて演算処理を行うことで、第1の補正情報を取得する。この場合におけるFPN生成光学系200と、生成されるFPN信号について、
図6、
図7を用いて説明する。
図6は、FPN生成光学系200のFPN生成部材204の配置を説明する図である。
図7は、FPN生成光学系200によって生成されるFPN信号を説明する図である。
【0105】
本実施例において、駆動部205がFPN生成部材204を光軸方向に移動させ、原点位置P0からFPN生成部材204までの光学的距離を変更する。例えば、FPN生成部材204が第1の距離D1に配置された場合、第1のFPN信号が生成される。同様に、FPN生成部材204が第2の距離D2に配置された場合は第2のFPN信号が、FPN生成部材204が第3の距離D3に配置された場合は第3のFPN信号が、FPN生成部材204が第4の距離D4に配置された場合は第4のFPN信号が生成される。
【0106】
なお、第1の距離D1、第2の距離D2、第3の距離D3、第4の距離D4は予め実験的に定められている位置である。
【0107】
まず、制御部70は、駆動部205を制御し、FPN生成部材204の位置を、原点位置P0からの距離が所定の第1の距離D1となるよう移動させる(
図6参照)。
【0108】
例えば、本実施例において第1のFPN信号の信号周波数を第1信号周波数f1とする。第1信号周波数f1は、例えば、第1のFPN信号をフーリエ変換した際に、ゼロディレイ位置に入らない程度で、かつ、より低周波であることが望ましい。これは、スペクトル干渉信号からFPN信号を検出する場合において、FPNの信号は低周波であるほど、ノイズが少なく精度よく解析できるためである。
【0109】
FPN生成部材204の位置が第1の距離D1に配置されると、波長掃引光源102から第1の掃引周波数H1で光が出射され、検出器120は第1のFPN信号を含むスペクトル干渉信号を検出する。
【0110】
制御部70は、生成されたOCT画像を解析することで、第1のFPNに対応する位置でのスペクトル干渉信号におけるφ(k)を求める。kは波数、φ(k)は、掃引波長(波数)に応じたスペクトル干渉信号の位相φの変化を示す。例えば、波数マッピング情報とは、kとφ(k)の対応を表す情報である。
【0111】
φ(k)は、横軸:波数k、縦軸:位相φである関数で表されてもよい。信号強度(振幅)の大きい波数k領域でのφ(k)に関して多項式フィッティングを行い、信号強度が小さい波数k領域でのφ(k)を外挿又は内挿によって求めてもよい。例えば、φ(k)は、FPNに対応する深さ位置におけるフーリエ変換値(強度値)Fの実数部RealFと虚数部ImagFの比のArc Tangent(逆正接)から求められてもよい。ここで、Arc Tangent処理によってフーリエ変換値の実数部と虚数部の比の逆正接が算出され、φ(k)が得られる。
【0112】
なお、FPNからφ(k)を求める方法、及びFPNから各波数成分のマッピング情報を求める方法としては、特開2013-156229号公報、特開2015-68775号公報に記載の方法が利用できる。
【0113】
例えば、本実施例では、制御部70は、第1のFPNを処理して第1の波数マッピング情報φ1(k)を求める(
図3(a)参照)。
【0114】
次いで、制御部70はFPN生成部材204を第3の距離D3に移動させる(
図6参照)。
【0115】
ここで、第3の距離D3におかれたFPN生成部材204によって生成される第3のFPN信号の信号周波数を、第3信号周波数f3とする。第3信号周波数f3は、第1信号周波数f1とは異なる信号周波数である。例えば、第3信号周波数f3による第3のFPNは、被検眼Eの断層画像よりも深さ方向に深い位置に生成される。このため、被検眼Eの断層画像と第3のFPNとが重ならず、精度よくFPN信号を取得できる。なお、第3信号周波数f3はこれに限られない。例えば、シャッター151によって導光光学系150からの戻り光が遮断されている場合、OCT画像上に被検眼Eの断層画像が生じない。このため、必ずしも被検眼Eの断層画像よりも深さ方向に深い位置にFPNを生じさせる必要はない。
【0116】
例えば、第3のFPNは、制御部70が各波数成分のマッピング情報を求める際に、第1のFPNと区別可能な位置に生成されればよい。例えば、第3のFPNは、第1のFPNから深さ方向に1mm以上離れた位置に生成される。
【0117】
FPN生成部材204が第3の距離D3に配置されると、波長掃引光源102から第1の掃引周波数H1で光が出射され、検出器120は第3のFPN信号を含むスペクトル干渉信号を取得する。その後、制御部70は第1のFPNと同様に第3のFPNを処理して、第3の波数マッピング情報φ3(k)を求める(
図3(b)参照)。
【0118】
次いで、制御部70は、第1の補正情報として、第1の波数マッピング情報φ1(k)と、第3の波数マッピング情報φ3(k)と、の間の差分情報Δφ1-3(k)を求める(
図4参照)。なお、差分情報は、各波数成分の位相差情報として求められてもよい。差分情報Δφ(k)を得る場合、第3のFPNの方が位相の進みが早いので、Δφ1-3(k)=φ3(k)-φ1(k)にて差分情報が得られてもよい。差分情報を求めることで、各波数成分のマッピング情報に含まれる分散成分をキャンセルできる。
【0119】
制御部70は、波長掃引光源102が第1の掃引周波数H1で波長を掃引する場合において、第1の補正情報に基づいて各波数成分のマッピング状態を補正する(
図4参照)。なお、波数成分のマッピング情報の差分情報から各波数成分のマッピング状態を補正する方法については、特開2018-124188号公報に記載の方法が利用できる。
【0120】
<S112:第2の補正情報の取得>
前述の通り、本実施例において、制御部70は、波長掃引光源102が第2の掃引周波数H2で波長を掃引する場合の各波数成分のマッピング状態を補正するために、第2の補正情報を求める。
【0121】
ここで、第2の掃引周波数H2で波長が掃引されると、第1のFPN信号が適切に取得できない場合がある。この理由について、
図8を用いて詳細に説明する。
図8は、FPN信号が検出される信号周波数が掃引周波数ごとに変化することを説明する図である。
図8(a)は、第1の掃引周波数H1の場合における、第1のFPN信号のフーリエ変換を示す。また、
図8(b)は、第2の掃引周波数H2の場合における、第1のFPN信号のフーリエ変換を示す。
【0122】
例えば、掃引周波数が変化するとFPNが検出される信号周波数も変化する。
【0123】
例えば、掃引周波数が第1の掃引周波数H1(説明のために、200kHzとする)の場合に、第1のFPN信号が100MHzの信号周波数の干渉信号として検出されるとする。
【0124】
ここで、例えば、掃引周波数が第2の掃引周波数H2(説明のために、25kHzとする)に変更されると、掃引周波数は25/200=1/8倍となる。このため、第2の掃引周波数H2の場合において、第1のFPN信号は、100MHz×1/8=12.5MHzの信号周波数の干渉信号として検出される。なお、計算に用いた数値は説明のために便宜的に用いた値であり、これに限定されない。
【0125】
上記の例のように、掃引周波数が第1の掃引周波数H1から、第1の掃引周波数H1より低周波な第2の掃引周波数H2に変更された場合、FPNが検出される信号周波数は低くなる。
【0126】
例えば、第1の掃引周波数H1において第1信号周波数f1で検出された第1のFPN信号は、第2の掃引周波数H2において、第1信号周波数f1をH2/H1倍した信号周波数で検出される(
図7参照)。また、同様に、第1の掃引周波数H1において第3信号周波数f3で検出された第3のFPN信号は、第2の掃引周波数H2において、第3信号周波数f3に対応する信号周波数をH2/H1倍した信号周波数で検出される。
【0127】
前述の通り、掃引周波数が第1の掃引周波数H1である場合において、第1信号周波数f1は低周波であるほど解析が容易である。その一方で、例えば、第1信号周波数f1が低周側であるほど、掃引周波数が第2の掃引周波数H2にされた場合に、第1のFPN信号のピークのエンベロープEV1はより低周波側に生じる。このため、第1のFPN信号のピークのエンベロープEV1がゼロディレイ領域に入る可能性が増加する(
図8(b)参照)。ゼロディレイ領域について、以下に説明する。
【0128】
本実施例において、検出器120と制御部70の間には、フィルタ71が備えられる。このフィルタ71は、制御部70の保護のために、電気的なDC成分を除去する。例えば、フィルタ71は、ゼロディレイから所定の周波数(例えば、10MHz)までの領域の信号を除去する。本実施例において、フィルタ71によって除去される領域を、ゼロディレイ領域と称する。
【0129】
例えば、本実施例において、第2の掃引周波数H2の場合に第1のFPN信号のピークのエンベロープEV1は、ゼロディレイ領域に入り、フィルタ71によってカットされる可能性がある。この場合、第1のFPN信号から適切な補正情報を求めることは難しい。
【0130】
以上説明したように、第2の補正情報を取得する場合において、第1のFPN信号が適切に取得できない場合がある。また、同様に、第2の補正情報を取得する場合において、第3のFPN信号が適切に取得できない場合がある。
【0131】
このため、本実施例において、波長掃引光源102の掃引周波数が第2の掃引周波数H2の場合において、制御部70は第2のFPN信号と、第4のFPN信号とに基づいて演算処理を行うことで、第2の補正情報を取得する。
【0132】
例えば、制御部70は、FPN生成部材204の位置を第2の距離D2に変更し、第2のFPN信号を生成する。本実施例において、第2のFPN信号は、掃引周波数が第2の掃引周波数H2にされた場合に、フィルタ71によってカットされない信号周波数である。
図9は、波長掃引光源102の掃引周波数が第2の掃引周波数H2である場合における、第2のFPN信号のフーリエ変換を示す。
【0133】
例えば、掃引周波数が第2の掃引周波数H2である場合において、第2のFPN信号が検出される信号周波数は、掃引周波数が第1の掃引周波数H1の場合に第1のFPN信号が検出される信号周波数(例えば、100MHz)である(
図7参照)。なお、第2のFPN信号が検出される信号周波数はこれに限定されず、第2のFPN信号をフーリエ変換した際に形成されるピークのエンベロープEV2が、ゼロディレイ領域よりも高周波側に存在すればよい。
【0134】
FPN生成部材204の位置が第2の距離D2に変更されると、波長掃引光源102から光が出射され、検出器120は第2のFPN信号を含むスペクトル干渉信号を取得する。その後、制御部70はステップS111と同様にして、第2のFPN信号を処理して、第2の波数マッピング情報φ2(k)を求める。
【0135】
次いで、制御部70は、第4のFPNが生じるように、駆動部205を駆動してFPN生成部材204を第4の距離D4に移動させる。例えば、掃引周波数が第2の掃引周波数H2である場合において、第4のFPN信号が検出される信号周波数は、掃引周波数が第1の掃引周波数H1の場合に第3のFPN信号が検出される信号周波数である(
図7参照)。なお、第4のFPN信号が検出される信号周波数はこれに限定されず、第4のFPN信号をフーリエ変換した際に形成されるピークのエンベロープが、ゼロディレイ領域よりも高周波側に存在すればよい。
【0136】
その後、制御部70はステップS111と同様にして、第4のFPN信号を処理して、第4の波数マッピング情報φ4(k)を求める。
【0137】
また、制御部70は、第2の補正情報として、第2の波数マッピング情報φ2(k)と、第4の波数マッピング情報φ4(k)と、の間の差分情報Δφ2-4(k)を求める。
【0138】
制御部70は、波長掃引光源102が第2の掃引周波数H2で波長を掃引する場合において、第2の補正情報に基づいて各波数成分のマッピング状態を補正する。
【0139】
以上のステップS111及びステップS112によれば、掃引周波数が第1の掃引周波数H1の場合に各波数成分のマッピング状態を補正するための第1の補正情報と、掃引周波数が第2の掃引周波数H2の場合に各波数成分のマッピング情報を補正するための第2の補正情報と、が取得される。
【0140】
制御部70は、OCTデータを取得する際に、第1の補正情報、又は第2の補正情報に基づいて演算処理を行うことで、各波数成分のマッピング状態について、各波数成分の非線形性と、分散成分と、が補正できる(
図4参照)。
【0141】
なお、補正情報を取得する場合において、制御部70は、導光光学系150にシャッター151を挿入してもよい。これによれば、導光光学系150由来の光が補正情報に影響を与えることを抑制できるため、好適に補正情報を取得できる。なお、導光光学系150由来の光とは、例えば、被検眼Eからの散乱光(戻り光)である。
【0142】
<S120:補正情報の較正>
次いで、制御部70は、較正光学系300を用いて対応ズレを補正する。なお、本実施例において対応ズレとは、前述の通り、波長掃引光源102の波長掃引時に出射される光についての時間と波数との対応のズレを指す。例えば、対応ズレは、経年変化や温度などの環境要因によって発生する可能性がある。
【0143】
例えば、ステップS110で取得された補正情報には、この対応ズレが存在する状態で取得されたFPNに基づいて求められている可能性がある。この場合、検出器120が取得するスペクトル干渉信号において、補正情報と波長(または波数)の値がズレてしまうため、適切に補正を行うことが難しい。
【0144】
例えば、本実施例において、制御部70は、補正情報に対して較正を行う。例えば、本実施例において被検眼のOCTデータを取得する際に、制御部70が、較正された補正情報を用いて演算処理を行う。これにより、各波数成分のマッピング状態に含まれる対応ズレが補正される。なお、本開示において、補正情報を較正するための演算処理を較正処理と称する。
【0145】
補正情報を較正するための制御部70の制御について、
図10、
図11及び
図12を用いて説明する。
図10は、補正情報の較正(ステップS120)として制御部70が行う制御のフローチャート図である。
図11は、較正された補正情報よって各波数成分のマッピング状態の対応ズレが補正されることを説明する図である。
図11には、較正前の補正情報を用いて演算処理を行った場合の各波数成分のマッピング情報と、較正後の補正情報を用いて演算処理を行った場合の各波数成分のマッピング情報と、が示されている。
図12は、較正を行うことによって波数マッピング状態に含まれる対応ズレが補正されることを説明する図である。
【0146】
なお、例えば、本実施例において対応ズレによって、
図12(a)に示す、較正前の補正情報に基づく各波数成分のマッピング情報のグラフと、較正後の補正情報に基づく各波数成分のマッピング情報のグラフとにおける、グラフの傾きの変化が生じる。例えば、本実施例において対応ズレによって、
図12(b)に示す、較正前の補正情報に基づく各波数成分のマッピング情報のグラフと、較正後の補正情報に基づく各波数成分のマッピング情報のグラフとにおける、グラフのシフト(平行移動)が生じる。
【0147】
<S121:バンドパスフィルタの挿入>
まず、制御部70は、バンドパスフィルタ301及びノッチフィルタ302を較正光学系300(FPN生成光学系200と兼用されている)の光軸に対して挿入する。
【0148】
本実施例において、バンドパスフィルタ301及びノッチフィルタ302によって、波長掃引光源102の掃引範囲に含まれる所定の第1の波長の光と、第1の波長とは異なる第2の波長の光と、が選択的に抽出される。
【0149】
<S122:較正用干渉信号の取得>
バンドパスフィルタ301及びノッチフィルタ302が較正光学系300に挿入されている状態で、波長掃引光源102が第1の掃引周波数H1で掃引を行うと、掃引された光は較正光学系300を通過し、第1の波長の光と、第2の波長の光が抽出される。
【0150】
抽出された光は、参照光とカップラ350で合波され、スペクトル干渉信号として検出器120により検出される。本実施例において、抽出された光と、参照光と、によるスペクトル干渉信号を較正用干渉信号と称する。例えば、波長掃引光源の掃引周波数が第1の掃引周波数H1で掃引した場合に抽出された光と、参照光と、によるスペクトル干渉信号を第1の較正用干渉信号と称する。例えば、第1の較正用干渉信号は、第1の波長の光と、参照光と、による較正用干渉信号G1と、第2の波長の光と、参照光と、による較正用干渉信号G2とが含まれる。
【0151】
なお、本実施例において、較正用干渉信号を取得する場合以外では、バンドパスフィルタ301及びノッチフィルタ302はFPN生成光学系200の光軸に対して退避される。
【0152】
較正用干渉信号について、
図13を用いて説明する。なお、
図13は第1の較正用干渉信号の一例を示す図である。
【0153】
第1の較正用干渉信号として、波長掃引光源102が第1の波長の光を出射したタイミングに対応したサンプリングポイント(第1の検出タイミング)T1に、第1の波長の光と、参照光とによる較正用干渉信号G1が検出される。
【0154】
例えば、バンドパスフィルタ301及びノッチフィルタ302によって、第1の波長の光のみを抽出することは技術的に難しい。このため、較正用干渉信号G1は、第1の波長の光と参照光とによる干渉信号の成分に加えて、第1の波長以外の光と、参照光と、による干渉信号の成分も含まれる。
【0155】
例えば、本実施例において、第1の波長に近い波長の光であるほど、バンドパスフィルタ301及びノッチフィルタ302を通過しやすい。このため、例えば、較正用干渉信号G1は、第1の波長の光と参照光とによる干渉信号をピークとする、山形の波形の干渉信号となる。
【0156】
同様に、波長掃引光源102が第2の波長の光を出射したタイミングに対応したサンプリングポイント(第2の検出タイミング)T2において、第2の波長の光と、参照光とによる較正用干渉信号G2が検出される。
【0157】
なお、第1の較正用干渉信号を取得する場合において、例えばFPN生成光学系200のFPN生成部材204は、第1の距離D1に配置されているとする。本実施例では、FPN生成部材204が第1の距離D1に配置されている場合の、較正光学系300の光路長と、参照光学系110の光路長と、の光路長差を第1の光路長差とする。また、なお、第1の距離D1はFPN生成部材204の位置の一例であり、これに限定されない。
【0158】
制御部70は、第1の較正用干渉信号を取得すると、次いで第2の較正用干渉信号を取得する。例えば、制御部70は、駆動部205を駆動させてFPN生成部材204を第1の距離D1から別の距離に移動させる。例えば、制御部70は、第2の距離D2にFPN生成部材204を移動させる。
【0159】
例えば、本実施例では、FPN生成部材204が第2の距離D2にある場合の較正光学系300の光路長と、参照光学系110の光路長と、の光路長差を第2の光路長差とする。なお、第2の距離D2はFPN生成部材204を配置する距離の一例であり、これに限定されない。
【0160】
例えば、本実施例において、駆動部205は、参照光路と測定光路との光路長差を変更する変更手段を兼ねる。
【0161】
FPN生成部材204の位置が第2の距離D2に移動されると、波長掃引光源102が、第1の掃引周波数H1で掃引を行う。これにより、検出器120は第1の較正用干渉信号と同様に、第2の較正用干渉信号を検出する。
【0162】
ここで、第2の較正用干渉信号を検出する場合において、第1の較正用干渉信号を得る場合と同じ第1の掃引周波数H1で波長を掃引しているため、第1の波長の光が出射されるタイミングも同じである。このため、第2の較正用干渉信号上には、第1の較正用干渉信号と同じ第1検出タイミングT1で、第1の較正用干渉信号とは異なる波形の、較正用干渉信号G1が生じる。同様に、第2の較正用干渉信号上には、第1の較正用干渉信号と同じ検出タイミングで、第1の較正用干渉信号とは異なる波形の、較正用干渉信号G2が生じる。
【0163】
なお、本実施例において、制御部70は、較正用干渉信号の取得を完了した場合にバンドパスフィルタ301及びノッチフィルタ302を較正光学系300から退避される。
【0164】
<S123:検出タイミングの取得>
検出タイミングを取得する方法について、
図14を用いて説明する。
図14は、較正用干渉信号G1の波形を示す図である。
【0165】
本実施例において、波長掃引光源102は、掃引を開始したタイミングで掃引開始信号を制御部70に対して出力している。例えば、制御部70は、掃引開始信号が波長掃引光源102から入力されたタイミングにおける、検出器120のサンプリングポイントを、掃引開始のサンプリングポイントT0として対応させる。
【0166】
本実施例において、例えば、第1検出タイミングT1と、第2検出タイミングT2は、掃引開始のサンプリングポイントT0を基準として求められる。
【0167】
例えば、制御部70は、第1の較正用干渉信号と、第2の較正用干渉信号と、に基づいて、較正用干渉信号G1が検出されるサンプリングポイント(第1検出タイミング)T1を求める。例えば、第1検出タイミングT1は、較正用干渉信号G1のピークが存在するサンプリングポイントである。例えば、第1検出タイミングT1は、第1の波長の光と参照光とによる干渉信号が存在するサンプリングポイントである。
【0168】
ここで、参照光路と測定光路との光路長差によっては、較正用干渉信号G1の信号強度が低い場合がある。例えば、この場合における較正用干渉信号G1を、較正用干渉信号G1.1とする(
図14参照)。例えば、第1の波長の光と参照光とによるスペクトル干渉信号の信号強度が低い場合、ピークの検出が難しい場合がある。この場合、ピークが適切に検出できないため、制御部70は第1検出タイミングT1を精度よく求められない可能性がある。
【0169】
このため、本実施例において、制御部70は複数の較正用干渉信号を処理することで、第1の波長の光と参照光とによるスペクトル干渉信号の信号強度を増加させる。
【0170】
例えば、本実施例では、第1の較正用干渉信号及び第2の較正用干渉信号について、絶対値をとり、その後平均化する。これによれば、較正用干渉信号G1の信号強度が累積加算される。よって、制御部70は精度よくピークを検出できる。よって、制御部70は第1検出タイミングT1を正確に取得できる。
【0171】
なお、較正処理に用いる較正用干渉信号は、第1の較正用干渉信号と、第2の較正用干渉信号に限定されない。例えば、較正処理に用いる較正用干渉信号の数が多いほど、第1の波長の光と参照光とによるスペクトル干渉信号の信号強度を増加させることができるため、よりピークの検出が容易になり、精度よく第1検出タイミングT1を求めることができる。
【0172】
例えば、第1検出タイミングT1を求める方法はこれに限定されない。例えば、干渉信号の信号強度が所定の値以上増加したときのサンプリングポイントを、第1検出タイミングT1としてもよい。すなわち、第1の較正用干渉信号における、ピークが立ち上がるサンプリングポイントを、第1検出タイミングT1としても良い。なお、干渉信号の信号強度が所定の値以上減少したときのサンプリングポイントであってもよい。すなわち、較正用干渉信号における、ピークが立ち下がるサンプリングポイントを、第1検出タイミングT1としても良い。
【0173】
また、第1検出タイミングT1と同様にして、制御部70は、較正用干渉信号G2が検出されるサンプリングポイント(第2検出タイミング)T2を検出する。
【0174】
<S124:対応ズレの取得>
制御部70は、対応ズレを検出し、第1検出タイミングT1と、第2検出タイミングT2と、の間に含まれるサンプリングポイントの数ΔT1-2を求める(
図13参照)。
【0175】
例えば、制御部70は、このΔT1-2の値と、予め求められていた値との変化量を求める。例えば、予め求められていた値とは、OCT装置1が工場出荷されるときに求められたΔT1-2の値である。なお、予め求められていた値としては、この例に限られず、このキャリブレーション以前に取得されていたΔT1-2の値であればよい。
【0176】
例えば、ΔT1-2の値が減少していた場合は、第1の波長の光が出射されてから、第2の波長の光が出射されるまでの時間が短くなっている。このため、波長掃引光源102の掃引周波数が、所期する掃引周波数から上昇していると考えられる。また、ΔT1-2の値が増加していた場合は、波長掃引光源102の掃引周波数が、所期する掃引周波数から低下していると考えられる。
【0177】
例えば、制御部70が、ΔT1-2の値について補正することで、波長掃引光源102の掃引周波数のズレを補正できる。図を用いて説明すると、各波数成分のマッピング状態のグラフの傾きが補正される(
図12(a)参照)。
【0178】
また、例えば、制御部70は、掃引周波数について補正を終えた後に、掃引が開始されたサンプリングポイントT0から、サンプリングポイントT1までの間のサンプリングポイント数ΔT0-1の値と、予め求められていた値との変化量を求める。これによれば、掃引周波数が補正された上で、所定の波数の光が検出されるタイミングの差が求められる。このため、波長掃引光源102が掃引を開始する波長(波数)の変化を求めることができる。
【0179】
例えば、掃引速度が補正された状態でΔT0-1の値が減少していた場合は、波長掃引開始時の波長が増加していると考えられる。例えば、掃引速度が補正された状態でΔT0-1の値が増加していた場合は、波長掃引開始時の波長(波数)が減少していると考えられる。
【0180】
例えば、制御部70が、ΔT0-1の変化量を補正することで、波長掃引光源102が掃引を開始する際の波長のズレを補正できる。図を用いて説明すると、各波数成分のマッピング状態のグラフのシフト(平行移動)が補正される(
図12(b)参照)。なお、ΔT0-1に限らず、サンプリングポイントT0からサンプリングポイントT2までの間のサンプリングポイント数ΔT0-2を用いて演算を行っても、同様に波長掃引光源102が掃引を開始する波長(波数)の変化を求めることができる。
【0181】
<S125:対応ズレの補正>
制御部70は、ΔT1-2の値と、予め求められていた値との変化量が補正されるように、第1の補正情報を補正する。これによれば、各波数成分のマッピング状態のグラフの傾きが補正される(
図12(a)参照)。
【0182】
また、制御部70は、ΔT0-1の値と、予め求められていた値との変化量が補正されるように、第1の補正情報を補正する。これによれば、各波数成分のマッピング状態のグラフのシフト(平行移動)が補正される。
【0183】
これにより、後述の撮影(S200)において、対応ズレが補正された各波数成分のマッピング状態が取得できる(
図11参照)。
【0184】
また、制御部70は、第2の補正情報についても、第1の掃引周波数H1を第2の掃引周波数H2に置き換えてステップS121からステップS125を実行することで、対応ズレを補正する。
【0185】
以上ステップS120により、各波数成分のマッピング状態について、対応ズレが補正される(
図11参照)。
【0186】
また、制御部70は、波長掃引光源102の波長掃引の経時変化を、OCT画像などを介さず直接的にスペクトル干渉信号を解析することで取得することができるため、精度よくズレを補正できる。
【0187】
以上説明したように、本実施例において、制御部70はステップS110及びステップS120を実行することで、キャリブレーションを行う。これによって、較正された補正情報が、掃引周波数ごとに取得される。制御部70は、この較正された補正情報を用いて演算処理を行うことで、被検眼のOCTデータを取得する。
【0188】
例えば、制御部70は、シャッター151を光軸に対して退避させた上で、被検眼Eの撮影を行う。例えば、[構成]で説明したように、波長掃引光源102の掃引周波数ごとに、撮影する範囲が変更される。例えば、波長掃引光源102から光が出射されると、参照光と被検眼Eからの戻り光とのスペクトル干渉信号が、検出器120によって検出される。
【0189】
例えば、第1の補正情報は、波長掃引光源102の掃引周波数が第1の掃引周波数H1である場合に得られるスペクトル干渉信号への演算処理に用いられる。また、第2の補正情報は、波長掃引光源102の掃引周波数が第2の掃引周波数H2である場合に得られるスペクトル干渉信号への演算処理に用いられる。
【0190】
具体的には、例えば、制御部70は、波長掃引光源102の掃引周波数が第1の掃引周波数H1である場合、ステップS110で求められ、また、ステップS120で較正された第1の補正情報に基づいてOCTデータを取得する。また、制御部70は、波長掃引光源102の掃引周波数が第2の掃引周波数H2である場合、ステップS110で求められ、また、ステップS120で較正された第2の補正情報に基づいてOCTデータを取得する。
【0191】
これにより、波長掃引光源102の掃引周波数に応じて、適切に各波数成分のマッピング状態を補正することができるため、好適にOCTデータを取得することができる。
【0192】
なお、スペクトル干渉信号への演算処理に補正情報を適用し、OCTデータを取得する方法については、特開2018-124188号公報に記載の方法を用いることができる。
【0193】
[変形例]
例えば、本実施例においてバンドパスフィルタ301及びノッチフィルタ302はFPN生成光学系200に備えられる場合を説明したが、例えば、バンドパスフィルタ301及びノッチフィルタ302は導光光学系150に備えられてもよい。この場合、較正光学系300は導光光学系150と兼用される。また、この構成で較正用干渉信号を求める場合において、検出器120は、較正光学系300(導光光学系150)由来の光と、FPN生成光学系200の光と、参照光と、に由来する干渉信号を検出する。このため、制御部70がFPN生成光学系200のFPN生成部材204の位置を変更することで、第1の較正用干渉信号と、第2の較正用干渉信号と、が取得できる。
【0194】
例えば、本実施例において、ステップS120で対応ズレを補正するために、第1の較正用干渉信号と第2の較正用干渉信号が用いられたが、対応ズレを補正するために用いられる干渉信号は、第1の較正用干渉信号のみであってもよい。これによれば、対応ズレを補正するために要する時間が短縮される。
【0195】
また、対応ズレを補正するために、第1の較正用干渉信号と、第2の較正用干渉信号とに加えてさらに較正用干渉信号が用いられてもよい。その場合、例えば、ステップS122において、制御部70は駆動部205を駆動させてFPN生成部材204の位置を変更した上で、波長掃引光源102によって波長が掃引されることで、較正用干渉信号が取得される。また、より多くの較正用干渉信号を用いることで、ステップS124において、より精度よくピークの位置を求めることができるため、精度よく対応ズレを補正すことができる。
【0196】
例えば、本実施例において、対応ズレを補正するために、較正用干渉信号に基づいて補正情報を較正したが、例えば、被検眼EのOCTデータについて較正を行うことで、対応ズレを補正してもよい。その場合、例えば、制御部70は、ステップS125で補正情報に対して行う較正処理と同様の処理を行う。被検眼EのOCTデータに対して行ってもよい。また、その場合、被検眼EのOCTデータが取得されてから、OCT画像が生成されるまでの間にキャリブレーションが行われてもよい。
【0197】
例えば、本実施例において、異なる位置にFPNを生成するために、駆動部205を駆動させることでFPN生成部材204の位置を変更する場合について説明したが、異なる位置にFPNを生成する方法はこれに限られない。
【0198】
例えば、
図15に示すように、FPN生成光学系200に、複数のFPN生成部材を備えることで、異なる位置にFPNを生成する構成であってもよい。例えば、4つのFPNを生成する場合、本実施例における第1の距離D1に対応する位置にFPN生成部材204aが、第2の距離D2に対応する位置にFPN生成部材204bが、第3の距離D3に対応する位置にFPN生成部材204cが、第4の距離D4に対応する位置にFPN生成部材204dが配置されてもよい。また、この場合において、FPN生成部材それぞれに対して光を導くために、光路分割部材(例えば、ビームスプリッタ)203a、203b、203cが備えられてもよい。
【0199】
また、例えば、参照光学系110の光路長を変更することで、FPNが生成される位置を変更してもよい。
図16は、参照光学系110に参照ミラー114が用いられる場合のOCT光学系である。この場合において、波長掃引光源102から出射された光は、カップラ(スプリッタ)104によって測定光路と参照光路とに分割される。参照光学系110に入射した光は、サーキュレータ113によって光ファイバ117に導かれ、参照ミラー114で反射して、カップラ351に入射する。また、測定光路に入射した光は、導光光学系150(及びFPN生成光学系200)、光ファイバ112を経て、カップラ351に入射する。参照光路由来の光と、測定光路由来の光は、カップラ351で合波され、検出器120で干渉が検出される。
【0200】
例えば、駆動部115によって参照ミラー114が光軸方向に移動され、参照光学系110の光路長が変更される。これにより、参照光学系の光路長とFPN生成光学系200の光路長との光路長差が変更され、FPNが生成される位置が変更される。なお、駆動部115は、前述の駆動部205と同様の構成であってもよい。
【0201】
例えば、この場合、原点位置P0とは、OCT画像のゼロディレイの位置にFPNが生じるような参照ミラーの位置である。
【0202】
また、例えば、駆動部115によって、原点位置P0から参照ミラー114までの光学的距離が、第1のFPN信号が生成される第1の距離D1、第2のFPN信号が生成される第2の距離D2、第3のFPN信号が生成される第3の距離D3、第4のFPN信号が生成される第4の距離D4との間で変更されてもよい。これによれば、参照光の光路長が変更される。
【0203】
なお、参照光路の光路長を変更する方法はこれに限られない。例えば、参照光路として長さの異なる複数の光ファイバが備えられ、通過する光ファイバの長さによって生成されるFPNが変更されるような構成であってもよい。
【0204】
本実施例ではステップS110において、第1の掃引周波数H1に対応する第1の補正情報と、第2の掃引周波数に対応する第2の補正情報が取得される場合を説明したが、例えば、第1の補正情報と第2の補正情報は必ずしも同じキャリブレーション時に求められなくてもよい。
【0205】
また、例えば、第1の掃引周波数で撮影を行う第1の撮影モードが行われる場合に第1の補正情報が取得され、第2の掃引周波数で撮影を行う第2の撮影モードが行われる場合に第2の補正情報が取得される構成であってもよい。
【0206】
また、本実施例において、キャリブレーションとして、掃引周波数ごとの補正情報の取得(ステップS110)と、補正情報の較正(ステップS120)と、が一連の流れとして行われる場合について説明したが、掃引周波数ごとの補正情報の取得と、補正情報の較正と、は必ずしも同じキャリブレーション時に行われなくてもよい。例えば、キャリブレーションとして補正情報の取得を行い、補正情報の較正が行われなくてもよい。同様に、キャリブレーションとして補正情報の較正が行われ、補正情報の取得は行われなくてもよい。この場合、制御部70は、補正情報の較正として、そのキャリブレーションが行われる前に取得されている補正情報(例えば、工場出荷時に取得される補正情報)を較正してもよい。
【0207】
また、例えば、OCT装置1が、掃引周波数ごとの補正情報の取得を行い、補正情報の較正を行わない構成である場合、較正光学系300(バンドパスフィルタ301及びノッチフィルタ302)が省略されてもよい。
【0208】
なお、補正情報を取得する場合において、制御部70は、導光光学系150にシャッター151を挿入してもよい。これによれば、導光光学系150由来の光が補正情報に影響を与えることを抑制できるため、好適に補正情報を取得できる。なお、導光光学系150由来の光とは、例えば、被検眼Eからの散乱光(戻り光)である。
【0209】
また、本実施例において、補正情報を取得する場合に、バンドパスフィルタ301及びノッチフィルタ302がFPN生成光学系200の光軸に対して退避される。これにより、バンドパスフィルタ301及びノッチフィルタ302の影響を受けずにFPN信号を取得できるため、補正情報を取得できる。
【0210】
波長掃引光源102から出射される光の強度は、掃引周波数に基づいて変化する。
【0211】
例えば、
図17に示すようにFPN生成光学系200に光強度調節器209が備えられてもよい。光強度調節器209は、FPN生成光学系200由来の光の強度を所定の範囲に含まれるように調整する。例えば、光強度調節器209は、FPN生成光学系200由来の光による干渉信号(すなわちFPN信号)が、検出器120が信号を検出できる信号強度の範囲(ダイナミックレンジ)に含まれるように、光の強度を調整する。
【0212】
これによれば、波長掃引光源102から出射される光の強度が、掃引周波数が変更された場合に変化しても、検出器120は適切にFPN信号を取得できる。
【0213】
例えば、光強度調節器209は、レンズと、レンズを光軸方向に駆動させる駆動部から構成される。例えば、光強度調節器209は、光を減衰させるフィルタと、フィルタを光軸に対して挿脱させる挿脱部と、から構成されてもよい。また、例えば、光強度調節器は、アッテネータであってもよい。
【0214】
例えば、光強度調節器209の動作は、掃引周波数ごとに予め定められている。また、光強度調節器209の動作は、検出器120が検出した信号の信号強度に基づいて制御されてもよい。
【0215】
本実施例において、バンドパスフィルタ301及びノッチフィルタ302が組み合わせられることで、第1の較正用干渉信号として、較正用干渉信号G1と、較正用干渉信号G2と、が含まれる干渉信号が取得される場合を説明した。
【0216】
例えば、較正光学系300には、バンドパスフィルタ301、ノッチフィルタ302の代わりに、較正用干渉信号G1を取得するための第1のバンドパスフィルタと、較正用干渉信号G2を取得するための第2のバンドパスフィルタが備えられていてもよい。なお、第1のバンドパスフィルタは、第1の波長の光を選択的に通過させる。第2のバンドパスフィルタは、第2の波長の光を選択的に通過させる。
【0217】
この場合、第1のバンドパスフィルタと、第2のバンドパスフィルタのいずれか一方が選択的に光軸に対して挿入された状態で波長が掃引され、較正用干渉信号が取得される。
【0218】
例えば、第1のバンドパスフィルタが光軸に対して挿入され、第2のバンドパスフィルタが光軸に対して脱離された状態で波長が掃引されると、第1の検出タイミングT1に、較正用干渉信号G1が生じた干渉信号Aが取得される。
【0219】
例えば、第2のバンドパスフィルタが光軸に対して挿入され、第1のバンドパスフィルタが光軸に対して脱離された状態で波長が掃引されると、第2の検出タイミングT2に、較正用干渉信号G2が生じた干渉信号Bが取得される。
【0220】
例えば、制御部70は、それぞれ取得された、干渉信号Aと、干渉信号Bとを重ね合わせることで、第1の較正用干渉信号を取得してもよい。
【0221】
もちろん、第2の較正用干渉信号についても、同様にして求めることができる。
【符号の説明】
【0222】
1 OCT装置
70 演算制御器
100 OCT光学系
102 波長掃引光源
110 参照光学系
120 検出器
150 導光光学系
200 FPN生成光学系
204 FPN生成部材
205 駆動部
300 較正光学系
301 バンドパスフィルタ
302 ノッチフィルタ