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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154241
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】電動ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04C 15/00 20060101AFI20221005BHJP
   F04C 2/10 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
F04C15/00 Z
F04C2/10 341Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057165
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】日本電産トーソク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】片岡 慈裕
(72)【発明者】
【氏名】小林 喜幸
(72)【発明者】
【氏名】永井 友三
【テーマコード(参考)】
3H041
3H044
【Fターム(参考)】
3H041AA01
3H041BB03
3H041CC10
3H041CC15
3H041DD01
3H041DD34
3H044AA01
3H044BB03
3H044CC10
3H044CC14
3H044DD24
(57)【要約】      (修正有)
【課題】発熱部品に不具合が生じることを抑制できる構造を有する電動ポンプを提供する。
【解決手段】本発明の電動ポンプ100の一つの態様は、軸方向に延びる中心軸を中心として回転可能なロータを有するモータと、ロータに連結されたポンプ機構と、モータの径方向外側に位置する回路基板40と、モータ、ポンプ機構、および回路基板を内部に収容するハウジング10と、ハウジングの径方向外側に固定され、回路基板を収容する開口部を塞ぐカバー14と、回路基板の板面のうちカバーに対向する第1面に取り付けられた発熱部品と、発熱部品とカバーとの間に挟まれる第1放熱材44と、ハウジングと、回路基板の板面のうち第1面と反対を向く第2面と、の間に挟まれる第2放熱材45と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びる中心軸を中心として回転可能なロータを有するモータと、
前記ロータに連結されたポンプ機構と、
前記モータの径方向外側に位置する回路基板と、
前記モータ、前記ポンプ機構、および前記回路基板を内部に収容するハウジングと、
前記ハウジングの前記径方向外側に固定され、前記回路基板を収容する基板収容凹部を塞ぐ基板カバーと、
前記回路基板の板面のうち前記基板カバーに対向する第1面に取り付けられた発熱部品と、
前記発熱部品と前記基板カバーとの間に挟まれる第1放熱材と、
前記ハウジングと、前記回路基板の前記板面のうち前記第1面と反対を向く第2面と、の間に挟まれる第2放熱材と、を備える、電動ポンプ。
【請求項2】
前記基板カバーは、前記発熱部品に対応する位置に配置され、前記回路基板側に窪む凹部を有し、
前記第1放熱材は、前記凹部と前記発熱部品との間に挟まれている、請求項1に記載の電動ポンプ。
【請求項3】
前記凹部は、少なくとも前記第1放熱材に接触する部分が平坦である、請求項2に記載の電動ポンプ。
【請求項4】
前記基板カバーは金属板で構成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の電動ポンプ。
【請求項5】
前記基板カバーは、前記第1放熱材に対する接触領域と異なる領域の少なくとも一部に設けられた、凹凸形状部を有する、請求項4に記載の電動ポンプ。
【請求項6】
前記発熱部品は、複数の発熱素子を有する発熱素子群を含み、
前記回路基板の前記第1面と直交する方向に見て、前記第1放熱材は前記発熱素子群を覆っている、請求項1から5のいずれか一項に記載の電動ポンプ。
【請求項7】
前記回路基板は、前記ハウジングに固定された複数の固定部を有し、
前記複数の固定部は、前記回路基板の前記第1面または前記第2面と直交する方向に見て、前記第1放熱材および前記第2放熱材の周囲に配置される、請求項1から5のいずれか一項に記載の電動ポンプ。
【請求項8】
軸方向に延びる中心軸を中心として回転可能なロータを有するモータと、
前記ロータに連結されたポンプ機構と、
前記モータの軸方向一方側に配置された回路基板と、
前記モータ、前記ポンプ機構、および前記回路基板を内部に収容するハウジングと、
前記ハウジングの前記軸方向一方側に固定され、前記回路基板を収容する基板収容凹部を塞ぐ基板カバーと、
前記回路基板の板面のうち前記基板カバーに対向する第1面に取り付けられた発熱部品と、
前記発熱部品と前記基板カバーとの間に挟まれる第1放熱材と、
前記ハウジングと、前記回路基板の前記板面のうち前記第1面と反対を向く第2面と、の間に挟まれる第2放熱材と、を備え、
前記基板カバーは、前記発熱部品に対応する位置に設けられ、前記回路基板側に窪む凹部を有し、
前記第1放熱材は、前記凹部と前記発熱部品との間に挟まれており、
前記凹部は、少なくとも前記第1放熱材に接触する部分が平坦である、電動ポンプ。
【請求項9】
前記基板カバーは金属板で構成されており、
前記基板カバーは、前記凹部が設けられた領域と異なる領域の少なくとも一部に設けられた、凹凸形状部を有する、請求項8に記載の電動ポンプ。
【請求項10】
前記回路基板の前記第2面のうち、前記第2放熱材と異なる領域に設けられた、電子部品をさらに備える、請求項1から9のいずれか一項に記載の電動ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
所定対象に取り付けられる電動ポンプが知られている。例えば、特許文献1には、自動車の自動変速機に搭載される電動オイルポンプが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-203389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような電動ポンプでは、回路基板に取り付けられた電子部品等の発熱部品の熱を放熱シートで放熱させるようにしている。しかしながら、電動ポンプが取り付けられる所定対象が、自動車の自動変速機などのように振動が生じる対象であると、所定対象から伝わる振動によって、電動ポンプにおける発熱部品に、損傷するなどの不具合が生じる恐れがあった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、発熱部品に不具合が生じることを抑制できる構造を有する電動ポンプを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電動ポンプの一つの態様は、軸方向に延びる中心軸を中心として回転可能なロータを有するモータと、前記ロータに連結されたポンプ機構と、前記モータの径方向外側に位置する回路基板と、前記モータ、前記ポンプ機構、および前記回路基板を内部に収容するハウジングと、前記ハウジングの前記径方向外側に固定され、前記回路基板を収容する開口部を塞ぐカバーと、前記回路基板の板面のうち前記カバーに対向する第1面に取り付けられた発熱部品と、前記発熱部品と前記カバーとの間に挟まれる第1放熱材と、前記ハウジングと、前記回路基板の前記板面のうち前記第1面と反対を向く第2面と、の間に挟まれる第2放熱材と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの態様によれば、電動ポンプにおいて、発熱部品に不具合が生じることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態の電動ポンプの一部を示す断面図である。
図2図2は、第1実施形態の電動ポンプの一部を示す部分断面斜視図である。
図3図3は、第1実施形態の電動ポンプの内部構成を示す分解斜視図である。
図4図4は、第2実施形態の電動ポンプの一部を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
図1および図2に示す本実施形態の電動ポンプ100は、車両に搭載される機器Mに取り付けられる電動ポンプである。つまり、機器Mは、電動ポンプ100が取り付けられる所定対象に相当する。機器Mは、特に限定されず、自動変速機であってもよいし、車両の車軸を駆動する駆動装置であってもよい。電動ポンプ100は、例えば、機器Mに対してオイルを供給する電動オイルポンプである。
【0010】
本実施形態において電動ポンプ100は、機器Mに対して鉛直方向と直交する方向に取り付けられる。機器Mに対して電動ポンプ100が取り付けられる方向は、電動ポンプ100の後述するモータ20の中心軸Jが延びる方向と直交する。図1図2、および図3に示す中心軸Jは、鉛直方向と直交する方向に延びる仮想線である。
【0011】
各図において、鉛直方向は、Z軸と平行な方向である。鉛直方向のうちZ軸の矢印が向く側(+Z側)は、上側である。鉛直方向のうちZ軸の矢印が向く側と逆側(-Z側)は、下側である。各図において、機器Mに対して電動ポンプ100が取り付けられる方向は、Z軸と直交するY軸と平行な方向である。以下の説明においては、Y軸と平行な方向を「取付方向」と呼ぶ。取付方向のうちY軸の矢印が向く側(+Y側)を「取付方向一方側」と呼ぶ。取付方向のうちY軸の矢印が向く側と逆側(-Y側)を「取付方向他方側」と呼ぶ。
【0012】
各図において、中心軸Jが延びる方向は、Z軸およびY軸の両方と直交するX軸と平行な方向である。以下の説明においては、中心軸Jが延びる方向、つまりX軸と平行な方向を「軸方向」と呼ぶ。中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼ぶ。中心軸Jを中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。軸方向のうちX軸の矢印が向く側(+X側)を「フロント側」と呼ぶ。軸方向のうちX軸の矢印が向く側と逆側(-X側)を「リア側」と呼ぶ。
【0013】
図1に示すように、電動ポンプ100は、ハウジング10と、モータ20と、ポンプ機構30と、回路基板40と、バスバーアッシー50と、基板カバー14と、を備える。ハウジング10は、モータ20、ポンプ機構30、回路基板40、およびバスバーアッシー50を内部に収容している。
【0014】
ハウジング10は、ハウジング本体11と、モータカバー12と、ポンプカバー13と、を有する。ハウジング本体11とモータカバー12とポンプカバー13とは、互いに別部材である。モータカバー12は、ハウジング本体11のリア側(-X側)に取り付けられている。ポンプカバー13は、ハウジング本体11のフロント側(+X側)に取り付けられている。
【0015】
図2に示すように、ハウジング本体11は、モータハウジング15と、ポンプハウジング16と、基板ハウジング17と、取付部18と、を有する。本実施形態において、モータハウジング15とポンプハウジング16と基板ハウジング17と取付部18とは、互いに同一の単一部材の一部である。
【0016】
本実施形態においてモータハウジング15は、軸方向に延びる円筒状である。図1に示すように、モータハウジング15は、リア側(-X側)に開口する凹部からなるモータ収容凹部11aを有する。モータ収容凹部11aのリア側の開口は、モータカバー12によって塞がれている。
【0017】
ポンプハウジング16は、モータハウジング15のフロント側(+X側)に繋がっている。ポンプハウジング16は、フロント側に開口する凹部からなるポンプ収容凹部11bを有する。ポンプ収容凹部11bのフロント側の開口は、ポンプカバー13によって塞がれている。
【0018】
基板ハウジング17は、モータハウジング15およびポンプハウジング16の下側に位置する。基板ハウジング17は、軸方向に延びている。基板ハウジング17のフロント側(+X側)の端部は、ポンプハウジング16およびポンプカバー13よりもフロント側に突出している。基板ハウジング17は、下側に開口する凹部からなる基板収容凹部11cを有する。
【0019】
ハウジング10のフロント側には、コネクタ部8が設けられる。コネクタ部8は、基板ハウジング17の径方向外側面に設けられる。コネクタ部8は、基板ハウジング17から、フロント側に突出する。コネクタ部8は回路基板40に接続され、例えば、外部電源が接続される。これにより、回路基板40は、コネクタ部8から供給された電力をステータ23に電力を供給する。
【0020】
基板カバー14は、ハウジング10の径方向外側に固定される。基板カバー14は、基板収容凹部11cの下側の開口を塞ぐようにハウジング本体11の下側に取り付けられている。基板収容凹部11cの内部には、例えば、回路基板40の後述する第1面40aに取り付けられた電子部品の少なくとも一部が収容されている。
【0021】
図2に示すように、取付部18は、モータハウジング15およびポンプハウジング16の取付方向一方側(+Y側)に位置する。取付部18は、軸方向に延びている。取付部18は、モータハウジング15およびモータカバー12よりもリア側(-X側)に突出している。取付部18は、ポンプハウジング16およびポンプカバー13よりもフロント側(+X側)に突出している。
【0022】
取付部18は、取付部18を取付方向に貫通する貫通孔18a,18b,18cを有する。貫通孔18aは、取付部18のうちモータハウジング15およびモータカバー12よりもリア側(-X側)に突出する部分に設けられている。貫通孔18bおよび貫通孔18cは、取付部18のうちポンプハウジング16およびポンプカバー13よりもフロント側(+X側)に突出する部分に設けられている。貫通孔18bと貫通孔18cとは、鉛直方向に間隔を空けて並んで配置されている。各貫通孔18a,18b,18cには、機器Mに設けられた図示しないネジ穴に締め込まれるボルトBが、取付方向他方側(-Y側)から通される。本実施形態において取付部18は、3つのボルトBによって機器Mに取り付けられる。これにより、電動ポンプ100が機器Mに取り付けられる。電動ポンプ100は、機器Mに片持ち支持された状態で取り付けられる。
【0023】
取付部18の取付方向一方側(+Y側)の面は、機器Mに取り付けられる取付面19である。つまり、ハウジング10は、所定対象としての機器Mに取り付けられる取付面19を有する。取付面19は、ハウジング10の取付方向一方側の面である。取付面19は、径方向外側を向く面である。取付面19は、取付方向と直交している。本実施形態において取付面19は、鉛直方向および軸方向の両方と平行である。図3および図4に示すように、本実施形態において取付面19は、軸方向に延びている。図4に示すように、取付面19は、機器Mと接触する。より詳細には、取付面19は、機器Mの被取付面Maと接触する。被取付面Maは、取付方向他方側(-Y側)を向く面である。被取付面Maには、ボルトBが締め込まれる図示しないネジ穴が設けられている。
【0024】
図1に示すように、ハウジング本体11は、モータ収容凹部11aの内部とポンプ収容凹部11bの内部とを軸方向に繋ぐ第1貫通孔11dを有する。第1貫通孔11d内には、第1貫通孔11dの内周面と後述するシャフト21の外周面との間をシールするオイルシール24が保持されている。ハウジング本体11は、モータ収容凹部11aの内部と基板収容凹部11cの内部とを径方向に繋ぐ第2貫通孔11eを有する。
【0025】
モータ20は、モータ収容凹部11a内に収容されている。モータ20は、シャフト21を有するロータ22と、ステータ23と、第1ベアリング27および第2ベアリング28と、を有する。ロータ22は、軸方向に延びる中心軸Jを中心として回転可能である。シャフト21は、中心軸Jを中心として軸方向に延びる円柱状である。シャフト21は、第1ベアリング27および第2ベアリング28によって中心軸J回りに回転可能に支持されている。本実施形態において第1ベアリング27および第2ベアリング28は、転がり軸受である。第1ベアリング27は、モータカバー12に保持されている。第2ベアリング28は、第1貫通孔11d内に保持されている。シャフト21のフロント側(+X側)の端部は、第1貫通孔11dを介してポンプ収容凹部11b内に突出し、ポンプ機構30に連結されている。ステータ23は、ロータ22の径方向外側に位置する。ステータ23は、モータ収容凹部11aの内周面に固定されている。ステータ23は、コイル23cを有する。
【0026】
ポンプ機構30は、ポンプ収容凹部11b内に収容されている。ポンプ機構30は、インナーロータ31と、アウターロータ32と、を有する。インナーロータ31は、シャフト21のうちポンプ収容凹部11b内に突出した部分に連結されている。これにより、ポンプ機構30は、ロータ22に連結されている。アウターロータ32は、インナーロータ31を囲む環状である。インナーロータ31とアウターロータ32とは、互いに噛み合っている。シャフト21によってインナーロータ31が回転させられることで、アウターロータ32も回転する。
【0027】
バスバーアッシー50は、モータ収容凹部11a内においてステータ23のリア側(-X側)に位置する。バスバーアッシー50は、バスバー51と、バスバーホルダ52と、を含む。バスバーホルダ52は、ステータ23のリア側に位置する。バスバー51は、バスバーホルダ52に保持されている。バスバー51の一部は、図示されない領域において、ステータ23のコイル23cに電気的に接続されている。バスバー51の一部は、第2貫通孔11eを通って、回路基板40まで延びており、回路基板40に電気的に接続されている。これにより、ステータ23は、バスバーを介して、回路基板40に電気的に接続されている。
【0028】
回路基板40は、モータ20の径方向外側に位置する。本実施形態において回路基板40は、モータ20の下側に位置する。回路基板40は、基板ハウジング17と基板カバー14との鉛直方向の間に位置する。回路基板40は、板面が径方向を向く板状である。回路基板40の板面は、下側を向く第1面40aと、上側を向く第2面40bと、を含む。
図3に示すように、第1面40aおよび第2面40bは、取付面19と交差する方向に沿って配置されている。本実施形態において第1面40aおよび第2面40bは、取付面19と直交する取付方向に沿って配置されている。より詳細には、第1面40aおよび第2面40bは、取付方向および軸方向に広がっている。第1面40aと第2面40bとは、鉛直方向と直交する。図示は省略するが、第1面40aおよび第2面40bには、配線パターンが設けられている。
【0029】
図3に示すように、回路基板40は、軸方向に延びる矩形板状である。本実施形態において回路基板40は、鉛直方向に見て、軸方向に沿った長辺と取付方向に沿った短辺とを有する角丸の長方形状である。
【0030】
本実施形態の電動ポンプ100は、インバータ部41と、マイコン42と、トランジスタ43と、電子部品49と、第1放熱材44と、第2放熱材45と、を備える。インバータ部41、マイコン42、およびトランジスタ43は、回路基板40の板面のうち基板カバー14に対向する第1面40aに取り付けられる。
【0031】
インバータ部41は、複数のトランジスタ41aを含む。本実施形態のインバータ部41は、トランジスタ41aを6つ有している。トランジスタ41aは、例えば、電界効果トランジスタである。インバータ部41は、回路基板40に接続されたバスバー51を介して、ステータ23と電気的に接続される。マイコン42は、インバータ部41と電気的に接続される。マイコン42は、インバータ部41への通電を制御する。トランジスタ43は、例えば、逆接防止用の回路を構成するための電界効果トランジスタである。
【0032】
本実施形態において、インバータ部41およびトランジスタ43は、電動ポンプ100の駆動時において、発熱する発熱部品である。つまり、インバータ部41を構成する各トランジスタ41aは発熱素子であり、インバータ部41は複数の発熱素子を含む発熱素子群に相当する。
【0033】
第1放熱材44は、回路基板40に対して上側に設けられる。第1放熱材44は、軸方向に直交するXY平面に沿うシート状で、回路基板40の一部を覆う。本実施形態において、第1放熱材44は、例えば、アルミニウム系材料、銅系材料等の高い熱伝導率を有した材料を含む。第1放熱材44は、発熱部品であるインバータ部41およびトランジスタ43と基板カバー14における後述の凹部62との間に挟まれる。インバータ部41およびトランジスタ43の熱は第1放熱材44を介して基板カバー14へと伝達され、基板カバー14から効率良く放出される。また、第1放熱材44は、後述のように回路基板40に生じる振動を抑制する振動抑制部材として機能する。
【0034】
第1放熱材44は、インバータ部41と基板カバー14との間に挟まれる放熱シート44aと、トランジスタ43と基板カバー14との間に挟まれる放熱シート44bと、を含む。
放熱シート44aは、回路基板40の第2面40bと直交する鉛直方向に見て、長方形状を有する。放熱シート44aは、鉛直方向に見て、インバータ部41を覆っている。放熱シート44bは、鉛直方向に見て、放熱シート44aよりも小さい正方形状を有する。放熱シート44bは、鉛直方向に見て、トランジスタ43を覆っている。
【0035】
第2放熱材45は、回路基板40に対して下側に設けられる。第2放熱材45は、軸方向に直交するXY平面に沿うシート状で、回路基板40の一部を覆う。本実施形態において、第2放熱材45は、第1放熱材44と同様、例えば、アルミニウム系材料、銅系材料等の高い熱伝導率を有した材料を含む。第2放熱材45は、ハウジング10(基板ハウジング17)と、回路基板40の板面のうち第1面40aと反対を向く第2面40bと、の間に挟まれる。インバータ部41およびトランジスタ43の熱は第1放熱材44を介して基板カバー14へと伝達され、基板カバー14から効率良く放出される。また、第2放熱材45は、後述のように回路基板40に生じる振動を抑制する振動抑制部材として機能する。
【0036】
第2放熱材45は、放熱シート45aと、放熱シート45bと、を含む。
放熱シート45aは、基板ハウジング17の内部に設けられたシート受け部17cに保持される。放熱シート45aは、第1放熱材44の放熱シート44aと同様の形状を有する。放熱シート45aの外形は、鉛直方向に見て、放熱シート44aの外形と重なるように配置されている。このように放熱シート45aおよび放熱シート44aは、回路基板40の両面を挟んで設けられる。
【0037】
放熱シート45bは、基板ハウジング17の内部に設けられたシート受け部17dに保持される。放熱シート45bは、第1放熱材44の放熱シート44bと同様の形状を有する。放熱シート45bの外形は、鉛直方向に見て、放熱シート44bの外形と重なるように配置されている。このように放熱シート45bおよび放熱シート44bは、回路基板40の両面を挟んで設けられる。
【0038】
本実施形態において、基板カバー14は、基板ハウジング17の下側の端部に位置する取付面48に固定される。取付面48は、鉛直方向に見て、基板収容凹部11cの周囲を囲むように連続する環状である。
【0039】
図1図2図3に示すように、基板カバー14は、金属板をプレス加工によって以下に示すような所定形状に折り曲げ加工することで構成される。基板カバー14は、カバー固定部61と、凹部62と、凹凸形状部63と、を有する。基板カバー14は、鉛直方向に見て、ハウジング本体11(基板ハウジング17)の下側の端部に合わせた外形形状を有する。
【0040】
カバー固定部61は、基板カバー14の外周縁部に周方向に連続して設けられる。カバー固定部61は、基板ハウジング17の取付面48に、複数本のネジ68によって固定される。
【0041】
凹部62は、カバー固定部61の内側に位置する。凹部62は、カバー固定部61に対して回路基板40側(+Z側)に窪む。凹部62は、発熱部品であるインバータ部41およびトランジスタ43に対応する位置に配置されている。本実施形態の基板カバー14は、2つの凹部62を有する。2つの凹部62は、第1凹部62aと第2凹部62bとを含む。
【0042】
第1凹部62aは、インバータ部41に対応する位置に設けられている。放熱シート44aは、第1凹部62aとインバータ部41との間に挟まれている。第1凹部62aは、少なくとも一部が放熱シート44aに接触する。第1凹部62aは、少なくとも放熱シート44aに接触する部分が平坦である。本実施形態の場合、第1凹部62aは、底面62a1の全体が平坦面となっているため、放熱シート44aとの接触面積を大きくできる。
【0043】
また、第2凹部62bは、トランジスタ43に対応する位置に設けられている。放熱シート44bは、第2凹部62bとトランジスタ43との間に挟まれている。第2凹部62bは、少なくとも一部が放熱シート44bに接触する。第2凹部62bは、少なくとも放熱シート44bに接触する部分が平坦である。本実施形態の場合、第2凹部62bは、底面62b1の全体が平坦面となっているため、放熱シート44bとの接触面積を大きくできる。
【0044】
凹凸形状部63は、基板カバー14における、第1放熱材44に対する接触領域と異なる領域の少なくとも一部に設けられる。凹凸形状部63は、基板カバー14の板面に、ストライプ状に複数の窪み63aを設けることで構成される。複数の窪み63aは、長方形状の基板カバー14における長辺方向に並ぶ。
【0045】
回路基板40は、基板ハウジング17(ハウジング10)に固定された複数の固定部47を有する。各固定部47は、回路基板40の外周縁部に設けられている。本実施形態において固定部47は、6つ設けられている。各固定部47は、回路基板40を鉛直方向に貫通する貫通孔47aを有する。本実施形態において貫通孔47aは、円形状の孔である。図3に示すように、貫通孔47aには、下側からネジ46が通されている。ネジ46は、貫通孔47aに下側から通されて、ハウジング10に設けられたネジ穴17bに締め込まれている。これにより、固定部47は、ネジ46によってハウジング10に固定されている。本実施形態においてネジ穴17bは、基板ハウジング17に設けられたボス部17aの下端部に設けられている。ボス部17aは、下側に突出する円柱状である。ネジ穴17bは、ボス部17aの下側の面から上側に窪んでいる。ボス部17aは、6つ設けられている。
【0046】
6つの固定部47は、長方形板状の回路基板40のうち取付方向一方側(+Y側)の2つの角部にそれぞれ設けられた固定部47c,47dと、回路基板40のうち取付方向他方側(-Y側)の2つの角部にそれぞれ設けられた固定部47e,47fと、固定部47cと固定部47dとの軸方向の間における中央部に設けられた固定部47gと、固定部47eと固定部47fとの軸方向の間における中央部に設けられた固定部47hと、を含む。固定部47cは、固定部47dよりもフロント側(+X側)に位置する。固定部47eは、固定部47fよりもフロント側に位置する。
【0047】
各固定部47は、回路基板40の第2面40bまたは第1面40aと直交する鉛直方向に見て、第1放熱材44および第2放熱材45の周囲に配置されている。本実施形態の場合、回路基板40のリア側に設けられた、放熱シート44aおよび放熱シート45aは、4つの固定部47d、47f、47g、47hで囲まれた領域の略中央に位置する。また、回路基板40のフロント側に設けられた、放熱シート44bおよび放熱シート45bは、4つの固定部47c、47e、47g、47hで囲まれた領域の中央よりに位置する。
【0048】
本実施形態において、電子部品49は、複数設けられている。本実施形態の電子部品49は、例えば、電解コンデンサを含む。電子部品49は、回路基板40の第2面40bに取り付けられる。電子部品49は、回路基板40の第2面40bのうち、第2放熱材45と異なる領域に設けられる。すなわち、電子部品49は第2放熱材45と回路基板40との間に挟まれない。
【0049】
電動ポンプ100は、機器Mから伝わる振動によって、取付面19を支点として、取付方向と直交する方向に振動する場合がある。このとき、機器Mの振動によって回路基板40も振動するようになる。
【0050】
本実施形態によれば、回路基板40の第1面40a側が第1放熱材44を介して基板カバー14に保持され、回路基板40の第2面40b側が第2放熱材45を介してハウジング10に保持される。回路基板40の板面を両側から挟む第1放熱材44および第2放熱材45は回路基板40の振動を抑制する振動抑制部材として機能する。そのため、回路基板40に生じる振動の振幅を小さく抑制することができる。これにより、インバータ部41およびトランジスタ43に加えられる振動を小さくしやすい。したがって、インバータ部41およびトランジスタ43に、損傷するなどの不具合が生じることを抑制できる。
また、本実施形態では、発熱部品としてのインバータ部41およびトランジスタ43が第1放熱材44および第2放熱材45で挟まれるため、インバータ部41およびトランジスタ43から効率良く放熱させることができる。
【0051】
本実施形態の場合、比較的振動によって損傷しやすい電解コンデンサを含む電子部品49が回路基板40に設けられている。本実施形態によれば、回路基板40に生じる振動の振幅を小さく抑制することで、電子部品49に加えられる振動を小さくできる。これにより、電子部品49に、損傷するなどの不具合が生じることを抑制できる。
そのため、上述したように本実施形態によれば、回路基板40に生じる振動を抑制することで、インバータ部41、トランジスタ43および電子部品49に不具合が生じることを抑制できることで、電動ポンプ100の信頼性を向上できる。
【0052】
また、本実施形態によれば、基板カバー14がインバータ部41およびトランジスタ43に対応して設けられた凹部62を有しているまた、凹部62とインバータ部41およびトランジスタ43との間に第1放熱材44が挟まれている。これにより、凹部62を介して基板カバー14側に第1放熱材44の熱を放出することができる。よって、インバータ部41およびトランジスタ43を効率良く冷却することができる。
【0053】
また、本実施形態によれば、凹部62における、少なくとも第1放熱材44に接触する部分が平坦となっているため、凹部62と第1放熱材44との密着性が向上する。これにより、第1放熱材44の基板カバー14側への放熱性が向上するので、インバータ部41およびトランジスタ43をより効率良く冷却できる。
【0054】
また、本実施形態によれば、金属板をプレス成型した基板カバー14を用いることで、部品の軽量化および低コスト化を図ることができる。このような金属板からなる基板カバー14に凹部62を設けることで、基板カバー14が単なる平板状である場合に比較し、基板カバー14の強度が高められる。さらに、凹部62は、第1放熱材44に接触する機能を兼ね備えるため、この点においても、部品の簡素化および軽量化に繋がる。
【0055】
また、本実施形態によれば、基板カバー14に凹凸形状部63を設けることで、基板カバー14の剛性を高めることができる。また、凹凸形状部63によって基板カバー14の表面積が拡がるので、基板カバー14の放熱性を向上させることができる。
【0056】
また、本実施形態によれば、複数のトランジスタ41aを含むインバータ部41を1枚の放熱シート44aで覆うことができるので、部品の簡素化および軽量化に繋がる。
【0057】
また、本実施形態によれば、複数の固定部47は、回路基板40の板面と直交する方向に見て、第1放熱材44および第2放熱材45の周囲に配置される。回路基板40のうち固定部47の周囲においては、回路基板40に生じる振動の振幅がより小さくなりやすい。そのため、複数の固定部47で囲まれた領域の内側を、第1放熱材44および第2放熱材45を介して支持することで、回路基板40に生じる振動の振幅が小さくなりやすい。これにより、第1放熱材44および第2放熱材45に挟まれたインバータ部41およびトランジスタ43に加えられる振動をより小さくしやすい。また、回路基板40上に設けられた電子部品49に加えられる振動をより小さくしやすい。よって、インバータ部41およびトランジスタ43並びに電子部品49に不具合が生じることをより抑制できる。
【0058】
(第2実施形態)
続いて、第2実施形態の電動ポンプについて説明する。なお、第1実施形態と共通の構成については同じ符号を付し、詳細については説明を省略する。
本実施形態の電動ポンプ101は、例えば、機器に対して鉛直方向に取り付けられる。本実施形態において、鉛直方向はモータ20の中心軸Jが延びる方向である。
図4において、モータ20の中心軸Jが延びるZ軸と平行な方向を「軸方向」と呼ぶ。軸方向のうちZ軸の矢印が向く側(+Z側)を「軸方向一方側」と呼ぶ。軸方向のうちZ軸の矢印が向く側と逆側(-Z側)を「軸方向他方側」と呼ぶ。
【0059】
図4に示すように、本実施形態の電動ポンプ101は、ハウジング110と、モータ20と、ポンプ機構30と、回路基板140と、基板カバー114と、第1放熱材44と、第2放熱材45と、を備える。本実施形態において、回路基板140は、モータ20の軸方向一方側に配置されている。基板カバー114は、ハウジング110の軸方向一方側に配置されている。
【0060】
本実施形態において、回路基板140は、基板カバー114に対向する第1面140aに取り付けられたインバータ部41およびトランジスタ43と、第1面140aと反対を向く第2面140bに取り付けられた電子部品49と、を含む。
基板カバー114は、凹部162と、凹凸形状部163と、を含む。基板カバー114は、ハウジング110の基板ハウジング117の取付面148に、複数本のネジ68によって固定される。基板カバー114は、回路基板を収容する基板収容凹部111cを塞ぐ。
【0061】
凹部162は、発熱部品であるインバータ部41およびトランジスタ43に対応する位置に配置されている。第1放熱材44は、凹部162とインバータ部41およびトランジスタ43との間に挟まれている。本実施形態において、凹部162は、少なくとも第1放熱材44に接触する部分が平坦である。
【0062】
凹凸形状部163は、基板カバー114における、第1放熱材44に対する接触領域と異なる領域の少なくとも一部に設けられる。凹凸形状部163は、基板カバー114の板面に、ストライプ状に複数の窪み163aを設けることで構成される。
【0063】
本実施形態によれば、回路基板40がモータ20の軸方向一方側に配置された電動ポンプ101において、回路基板40の板面を両側から挟む第1放熱材44および第2放熱材45が回路基板40の振動を抑制する振動抑制部材として機能する。そのため、回路基板40に生じる振動の振幅を小さく抑制することができる。これにより、インバータ部41およびトランジスタ43に加えられる振動を小さくしやすい。したがって、インバータ部41およびトランジスタ43に、損傷するなどの不具合が生じることを抑制できる。
また、本実施形態では、発熱部品としてのインバータ部41およびトランジスタ43が第1放熱材44および第2放熱材45で挟まれるため、インバータ部41およびトランジスタ43から効率良く放熱させることができる。
【0064】
本実施形態の場合、比較的振動によって損傷しやすい電解コンデンサを含む電子部品49が回路基板40の第2面140bに設けられている。本実施形態によれば、回路基板40に生じる振動の振幅を小さく抑制することで、電子部品49に加えられる振動を小さくできる。これにより、電子部品49に、損傷するなどの不具合が生じることを抑制できる。
そのため、上述したように本実施形態によれば、回路基板40に生じる振動を抑制することで、インバータ部41、トランジスタ43および電子部品49に不具合が生じることを抑制できることで、電動ポンプ101の信頼性を向上できる。
【0065】
本発明は上述の実施形態に限られず、本発明の技術的思想の範囲内において、他の構成および他の方法を採用することもできる。回路基板は、モータの径方向外側に位置し、板面が径方向を向き、かつ、板面が取付面と交差する方向に沿って配置されるならば、どのように配置されてもよい。回路基板の板面は、取付面と直交する方向に対して傾いていてもよい。回路基板の板面は、鉛直方向と直交しなくてもよい。回路基板における固定部の数および位置は、特に限定されない。固定部が複数設けられる場合、複数の固定部は、回路基板の板面と直交する方向に見て電解コンデンサの少なくとも一部を挟む一対の固定部を含まなくてもよい。
【0066】
マイコン42と基板カバー14との間に第1放熱材を配置してもよい。これにより、マイコン42の熱を放出するとともに、回路基板40に生じる振動をより小さくすることができる。電子部品49は、電解コンデンサ以外の部品を含んでもよい。電子部品49の数は時に限定されない。
【0067】
本発明が適用される電動ポンプの用途は、特に限定されない。電動ポンプによって送られる流体の種類は、特に限定されず、水などであってもよい。電動ポンプが取り付けられる所定対象は、どのような対象であってもよい。電動ポンプは、車両以外の機器に搭載されてもよい。電動ポンプは、鉛直方向に対して、どのように配置されていてもよい。電動ポンプのモータにおける中心軸は、鉛直方向と直交せずに鉛直方向に対して傾いた方向に延びてもよいし、鉛直方向と平行に延びてもよい。なお、本明細書において説明した各構成および各方法は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0068】
10,110…ハウジング、11c,111c…基板収容凹部、14,114…基板カバー、20…モータ、22…ロータ、30…ポンプ機構、40,140…回路基板、40a,140a…第1面、40b,140b…第2面、44…第1放熱材、45…第2放熱材、47…固定部、49…電子部品、62,162…凹部、63,163…凹凸形状部、100,101…電動ポンプ、J…中心軸。
図1
図2
図3
図4