(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154251
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】非水電解液二次電池、および非水電解液二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0587 20100101AFI20221005BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20221005BHJP
H01M 10/05 20100101ALI20221005BHJP
H01M 50/449 20210101ALI20221005BHJP
H01M 50/103 20210101ALI20221005BHJP
H01M 50/15 20210101ALI20221005BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20221005BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20221005BHJP
H01M 50/538 20210101ALI20221005BHJP
【FI】
H01M10/0587
H01M10/44 A
H01M10/05
H01M50/449
H01M50/103
H01M50/15
H01M4/13
H01M10/0566
H01M50/538
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057179
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】西出 太祐
(72)【発明者】
【氏名】仲西 梓
(72)【発明者】
【氏名】佐野 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 直利
【テーマコード(参考)】
5H011
5H021
5H029
5H030
5H043
5H050
【Fターム(参考)】
5H011AA01
5H011CC06
5H011FF02
5H011KK01
5H021CC04
5H021EE04
5H029AJ11
5H029AK03
5H029AL07
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM05
5H029AM07
5H029BJ02
5H029BJ14
5H029CJ03
5H029CJ16
5H029HJ04
5H029HJ15
5H029HJ18
5H030AA09
5H030BB12
5H043AA01
5H043BA17
5H043CA04
5H043CA12
5H043EA06
5H050AA14
5H050BA15
5H050CA08
5H050CB08
5H050FA05
(57)【要約】
【課題】初期充電時の拘束による電池ケースの塑性変形を抑制する技術を提供する。
【解決手段】ここで開示される製造方法は、捲回電極体と、非水電解液と、電池ケースと、を備える非水電解液二次電池の製造方法である。この製造方法は、捲回電極体と非水電解液とを電池ケースに収容して二次電池組立体を構築する組立工程;および、二次電池組立体に対して初期充電を行う初期充電工程、を有している。ここで、初期充電工程では、二次電池組立体を捲回電極体の厚み方向に拘束した状態または拘束しない状態で、初期充放電を開始し、かつ、二次電池組立体の負極電位が0.6Vに達した時に、該負極電位が0.6Vに到達する前よりも大きな拘束力P1を二次電池組立体に対して付与し、該拘束力P1が上記二次電池組立体に付与された状態を少なくとも負極電位が0.3Vに到達するまで維持する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の正極板および帯状の負極板が、帯状のセパレータを介在させつつ捲回された扁平形状の捲回電極体と、
非水電解液と、
前記捲回電極体および前記非水電解液を収容する電池ケースと、
を備える非水電解液二次電池の製造方法であって、
前記捲回電極体と前記非水電解液とを前記電池ケースに収容して二次電池組立体を構築する組立工程;および
前記二次電池組立体に対して初期充電を行う初期充電工程、
を有しており、
ここで、前記初期充電工程では、
前記二次電池組立体を前記捲回電極体の厚み方向に拘束した状態または拘束しない状態で、前記初期充放電を開始し、かつ、
前記二次電池組立体の負極電位がリチウム金属基準(vs.Li/Li+)に対して、0.6Vに達した時に、該負極電位が0.6Vに到達する前よりも大きな拘束力P1を前記二次電池組立体に対して付与し、該拘束力P1が前記二次電池組立体に付与された状態を少なくとも前記負極電位がリチウム金属基準(vs.Li/Li+)に対して、0.3Vに到達するまで維持する、製造方法。
【請求項2】
前記拘束力P1は3kN以上15kN以下である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記初期充電工程は、前記負極電位がリチウム金属基準(vs.Li/Li+)に対して、0.3Vに達した時に、前記二次電池組立体に対して拘束力P2を付与することを含んでおり、
前記拘束力P1と前記拘束力P2との比(P2/P1)が0.8以上1.2以下である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記捲回電極体の前記厚み方向の両端は幅広な平坦部で構成されており、
前記平坦部は、前記捲回電極体の捲回軸方向の中心線を含む中央部と、同方向において該中央部を挟む2つの端部とを有しており、
前記初期充電工程では、前記中央部に対して拘束力を付与し、かつ、前記2つの端部に対して拘束力を付与しない、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記負極板は、負極芯体と、該負極芯体上に形成された負極活物質層とを有しており、
前記捲回電極体の捲回軸方向における前記負極活物質層の長さが少なくとも20cmである、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記セパレータの少なくとも一の表面には接着層が設けられており、該接着層が前記正極板または前記負極板に接着している、請求項1~5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記電池ケースは、開口および該開口に対向する底部を含む外装体と、前記開口を封口する封口板と、を備えており、
前記捲回電極体は、前記捲回軸が前記底部と平行になる向きで前記外装体内に配置されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記外装体は、一対の対向する大面積側壁と、該大面積側壁の面積よりも小さい面積を有する、一対の対向する小面積側壁とを有しており、
前記一対の大面積側壁の間の距離は少なくとも3cmであり、
前記外装体内には、複数個の前記捲回電極体が収容されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記非水電解液二次電池は、
前記捲回電極体に電気的に接続された正極集電体および負極集電体と、
前記捲回電極体の前記捲回軸方向の一方の端部に突出した複数のタブを含む正極タブ群と、同方向の他方の端部に突出した複数のタブを含む負極タブ群と、
を備えており、
前記正極集電体と前記正極タブ群とが接続され、前記負極集電体と前記負極タブ群とが接続されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
帯状の正極板および帯状の負極板が、帯状のセパレータを介在させつつ捲回された扁平形状の捲回電極体と、
非水電解液と、
前記捲回電極体および前記非水電解液を収容する電池ケースと、
を備える非水電解液二次電池であって、
前記負極板は、負極芯体と、該負極芯体上に形成された負極活物質層とを有しており、
前記捲回電極体の捲回軸方向における前記負極活物質層の長さは少なくとも20cmであり、
ここで、前記負極板は、前記捲回軸方向の一の端部に突出した複数のタブを備えており、
前記負極板における巻き始め端部に最も近い前記タブにおいて、
前記捲回軸に直交する方向における該タブの根元の一の端部を端部Bとし、
前記根元の前記端部Bと異なる他方の端部を端部Cとし、
前記端部Bと前記端部Cとを結ぶ線分BCの中点を中点Eとし、
前記中点Eを通過し、かつ、前記捲回軸に沿う直線を直線Aとしたとき、
前記直線A上における以下の(1)~(3)の3点:
(1)前記負極活物質層の前記捲回軸方向の中心;
(2)前記中心から前記タブ側に5mm以上15mm以下離れた点;および、
(3)前記中心から前記タブと反対側に5mm以上15mm以下離れた点、
から採取した前記負極活物質層に含まれるリン(P)をレーザアブレーションICP質量分析で検出したとき、(1)におけるリン(P)の強度が、(2)におけるリン(P)の強度以下であり、かつ、(3)におけるリン(P)の強度以下である、非水電解液二次電池。
【請求項11】
前記(1)におけるリン(P)の強度をI1、前記(2)におけるリン(P)の強度をI2、前記(3)におけるリン(P)の強度をI3とすると、前記I1と前記I2との比(I2/I1)、および前記I1と前記I3との比(I3/I1)は、いずれも1以上2.5以下であることを特徴とする、請求項10に記載の非水電解液二次電池。
【請求項12】
帯状の正極板および帯状の負極板が、帯状のセパレータを介在させつつ捲回された扁平形状の捲回電極体と、
非水電解液と、
前記捲回電極体および前記非水電解液を収容する電池ケースと、
を備える非水電解液二次電池であって、
前記負極板は、負極芯体と、該負極芯体上に形成された負極活物質層とを有しており、
前記捲回電極体の捲回軸方向における前記負極活物質層の長さは少なくとも20cmであり、
ここで、前記負極板は、前記捲回軸方向の一の端部に突出した複数のタブを備えており、
前記負極板における巻き始め端部に最も近い前記タブにおいて、
前記捲回軸に直交する方向における該タブの根元の一の端部を端部Bとし、
前記根元の前記端部Bと異なる他方の端部を端部Cとし、
前記端部Bと前記端部Cとを結ぶ線分BCの中点を中点Eとし、
前記中点Eを通過し、かつ、前記捲回軸に沿う直線を直線Aとしたとき、
前記直線A上における以下の(1)、(4)および(5)の3点:
(1)前記負極活物質層の前記捲回軸方向の中心;
(4)前記中心から前記タブ側に10mm以上20mm以下離れた点;および、
(5)前記中心から前記タブと反対側に10mm以上20mm以下離れた点、
から採取した前記負極活物質層に含まれるリン(P)をレーザアブレーションICP質量分析で検出したとき、(1)におけるリン(P)の強度が、(4)におけるリン(P)の強度以下であり、かつ、(5)におけるリン(P)の強度以下である、非水電解液二次電池。
【請求項13】
前記(4)におけるリン(P)の強度をI4、前記(5)におけるリン(P)の強度をI5とすると、前記I1と前記I4との比(I4/I1)、および前記I1と前記I5との比(I5/I1)は、いずれも1以上2.7以下であることを特徴とする、請求項12に記載の非水電解液二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解液二次電池、および非水電解液二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、リチウムイオン二次電池等の二次電池は、車両や携帯端末等の様々な分野において広く使用されている。この種の二次電池の典型例として、正極板および負極板を有する電極体と、非水電解液と、該電極体および該非水電解液を収容する電池ケースと、を備える非水電解液二次電池が挙げられる。
【0003】
非水電解液二次電池の製造において、一般的に、電極体と非水電解液とが電池ケースに収容された状態の二次電池組立体を初期充電する。初期充電を行うことによって、負極板の表面に、いわゆるSEI被膜を形成することができる。一方で、初期充電時には、二次電池組立体に含まれる成分に由来するガスが、電極体内で発生し得る。これに関して、特許文献1では、二次電池前駆体が鉛直方向で最上位に開口部を有するように立設され、発生するガスを該開口部から逃がしながら初期充電を行うことを含む、二次電池の製造方法が提案されている。
【0004】
また、上記のような非水電解液二次電池が備える電極体として、帯状の正極板および帯状の負極板が、帯状のセパレータを介在させつつ捲回された扁平形状の捲回電極体が採用されることがある。これに関して、特許文献2では、一対の幅広面を有する直方体形状の電池ケース内に上記のような捲回電極体を入れて、上記一対の幅広面の両側から電池ケースを押圧した状態で充電工程やエージング工程等を実行することが提案されている。これによって、ガス発生による影響を防止できると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2019/044560
【特許文献2】特開2010-21104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、扁平形状の捲回電極体を備える二次電池組立体について、電極体内のガス滞留を抑制するために、初期充電時に二次電池組立体を拘束すると、電池ケースが塑性変形する虞がある。そのため、初期充電時の拘束には、電池ケースの塑性変形を抑制する工夫がまだまだ必要であった。
【0007】
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、初期充電時の拘束による電池ケースの塑性変形を抑制する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、初期充電時のガス発生による捲回電極体の膨張と、該膨張にともなう電池ケース内の隙間(捲回電極体とケース内壁との間の隙間)の減少と、に着目した。即ち、初期充電開始前では捲回電極体は膨張していないため、電池ケース内には隙間がある。この状態で二次電池組立体を拘束すると、電池ケースの拘束面(例えば一対の幅広面)が内側にへこみやすく、電池ケースの非拘束面(例えば底面や他の側面)は膨らみやすい。一方、ガス発生によって捲回電極体が膨張して上記隙間が小さくなると、拘束による電池ケースの塑性変形が起きにくくなる。そして、本発明者らは、初期充電時の捲回電極体内でのガス発生状況に応じて、二次電池組立体に付与する拘束力を変化させることを考えた。そして、本発明者らの鋭意検討の結果、負極電位が所定の範囲内であるときにガスが発生することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
ここで開示される製造方法は、帯状の正極板および帯状の負極板が、帯状のセパレータを介在させつつ捲回された扁平形状の捲回電極体と、非水電解液と、上記捲回電極体および上記非水電解液を収容する電池ケースと、を備える非水電解液二次電池の製造方法である。この製造方法は、上記捲回電極体と上記非水電解液とを上記電池ケースに収容して二次電池組立体を構築する組立工程;および、上記二次電池組立体に対して初期充電を行う初期充電工程、を有している。ここで、上記初期充電工程では、上記二次電池組立体を上記捲回電極体の厚み方向に拘束した状態または拘束しない状態で、上記初期充放電を開始し、かつ、上記二次電池組立体の負極電位が0.6Vに達した時に、該負極電位が0.6Vに到達する前よりも大きな拘束力P1を上記二次電池組立体に対して付与し、該拘束力P1が上記二次電池組立体に付与された状態を少なくとも上記負極電位が0.3Vに到達するまで維持する。
ここで、上記負極電位とは、リチウム金属基準(vs.Li/Li+)に対する負極電位をいう。
【0010】
上記構成の製造方法では、負極電位が所定の範囲内であるとき(即ち、捲回電極体内でガスが発生する期間)に、二次電池組立体により大きな拘束力を付与することによって、電池ケースの塑性変形を抑制することができる。また、拘束によって、捲回電極体内のガス滞留を抑制することができる。
【0011】
ここで開示される製造方法の好適な一態様では、上記拘束力P1は3kN以上15kN以下である。拘束力P1が上記範囲であると、ここで開示される技術の効果を適切に発揮することができる。
【0012】
ここで開示される製造方法の好適な他の一態様では、上記初期充電工程は、上記負極電位が0.3Vに達した時に、上記二次電池組立体に対して拘束力P2を付与することを含んでいる。上記拘束力P1と上記拘束力P2との比(P2/P1)が0.8以上1.2以下である。本発明者らの検討の結果、負極電位が0.3Vに達すると、ガス発生が少なくなり、ガス発生による捲回電極体の膨張度合いは小さくなる。そのため、上記範囲を満たす拘束力P2を付与することによって、初期充電時の電池ケースの塑性変形を抑制しつつ、捲回電極体内のガス滞留を抑制することができる。
【0013】
ここで開示される製造方法の好適な他の一態様では、上記捲回電極体の上記厚み方向の両端は幅広な平坦部で構成されている。上記平坦部は、上記捲回電極体の捲回軸方向の中心線を含む中央部と、同方向において該中央部を挟む2つの端部とを有している。上記初期充電工程では、上記中央部に対して拘束力を付与し、かつ、上記2つの端部に対して拘束力を付与しない。ガスは、捲回電極体の中央部に滞留しやすい。そのため、当該部分に対して、選択的に拘束力を付与することによって、ガス滞留をよりよく抑制することができる。
【0014】
ここで開示される製造方法の好適な他の一態様では、上記負極板は、負極芯体と、該負極芯体上に形成された負極活物質層とを有している。上記捲回電極体の捲回軸方向における上記負極活物質層の長さが少なくとも20cmである。ここで開示される技術は、このような捲回電極体を有する非水電解液二次電池を製造するのに好適に用いられる。
【0015】
ここで開示される製造方法の好適な他の一態様では、上記セパレータの少なくとも一の表面には接着層が設けられており、該接着層が上記正極板または上記負極板に接着している。接着層を有するセパレータを使用すると、正極板と負極板との間の極間距離を小さくすることができる。そのため、初期充電時の拘束力を小さくすることができ、電池ケースの塑性変形をよりよく抑制することができる。
【0016】
ここで開示される製造方法の好適な他の一態様では、上記電池ケースは、開口および該開口に対向する底部を含む外装体と、上記開口を封口する封口板と、を備えている。上記捲回電極体は、上記捲回軸が上記底部と平行になる向きで上記外装体内に配置されている。かかる構成によると、ガスが捲回電極体外に出やすくなるため、捲回電極体内のガス滞留をよりよく抑制することができる。
【0017】
ここで開示される製造方法の好適な他の一態様では、上記外装体は、一対の対向する大面積側壁と、該大面積側壁の面積よりも小さい面積を有する、一対の対向する小面積側壁とを有している。上記一対の大面積側壁の間の距離は少なくとも3cmである。上記外装体内には、複数個の上記捲回電極体が収容されている。かかる構成によると、ここで開示される技術の効果をよりよく実現することができる。これに加えて、非水電解液二次電池が複数個の捲回電極体を有すると、該二次電池からより効率よくエネルギーを得ることができる。
【0018】
ここで開示される製造方法を用いると、以下の構成の非水電解液二次電池を製造できる。当該非水電解液二次電池は、上記捲回電極体に電気的に接続された正極集電体および負極集電体と、上記捲回電極体の上記捲回軸方向の一方の端部に突出した複数のタブを含む正極タブ群と、同方向の他方の端部に突出した複数のタブを含む負極タブ群と、を備えている。上記正極集電体と上記正極タブ群とが接続され、上記負極集電体と上記負極タブ群とが接続されている。
【0019】
ここで開示される技術によると、帯状の正極板および帯状の負極板が、帯状のセパレータを介在させつつ捲回された扁平形状の捲回電極体と、非水電解液と、上記捲回電極体および上記非水電解液を収容する電池ケースと、を備える非水電解液二次電池が提供される。上記負極板は、負極芯体と、上記負極芯体上に形成された負極活物質層とを有している。上記捲回電極体の捲回軸方向における上記負極活物質層の長さが少なくとも20cmである。ここで、上記負極板は、上記捲回軸方向の一の端部に突出した複数のタブを備えている。上記負極板における巻き始め端部に最も近い上記タブにおいて、上記捲回軸に直交する方向における該タブの根元の一の端部を端部Bとし、上記根元の上記端部Bと異なる他方の端部を端部Cとし、上記端部Bと上記端部Cとを結ぶ線分BCの中点を中点Eとし、上記中点Eを通過し、かつ、上記捲回軸に沿う直線を直線Aとしたとき、上記直線A上における以下の(1)~(3)の3点:(1)上記負極活物質層の上記捲回軸方向の中心;(2)上記中心から上記タブ側に5mm以上15mm以下離れた点;および、(3)上記中心から上記タブと反対側に5mm以上15mm以下離れた点、から採取した上記負極活物質層に含まれるリン(P)をレーザアブレーションICP質量分析で検出したとき、(1)におけるリン(P)の強度が、(2)におけるリン(P)の強度以下であり、かつ、(3)におけるリン(P)の強度以下である。
【0020】
上記構成の非水電解液二次電池では、電池ケースの塑性変形が抑制されている。これに加えて、負極板における被膜形成ムラの発生が抑制されている。そのため、電池性能の低下が抑制されている。
【0021】
ここで開示される非水電解液二次電池の好ましい一態様では、上記(1)におけるリン(P)の強度をI1、上記(2)におけるリン(P)の強度をI2、上記(3)におけるリン(P)の強度をI3とすると、上記I1と上記I2との比(I2/I1)、および上記I1と上記I3との比(I3/I1)は、いずれも1以上2.5以下であることを特徴とする。上記非水電界二次電池では、(1)~(3)におけるリン(P)の強度について、比(I2/I1)および比(I3/I1)が上記範囲を満たすことが実現されている。
【0022】
また、ここで開示される技術によると、帯状の正極板および帯状の負極板が、帯状のセパレータを介在させつつ捲回された扁平形状の捲回電極体と、非水電解液と、上記捲回電極体および上記非水電解液を収容する電池ケースと、を備える非水電解液二次電池が提供される。上記負極板は、負極芯体と、該負極芯体上に形成された負極活物質層とを有している。上記捲回電極体の捲回軸方向における上記負極活物質層の長さは少なくとも20cmである。ここで、上記負極板は、上記捲回軸方向の一の端部に突出した複数のタブを備えている。上記負極板における巻き始め端部に最も近い上記タブにおいて、上記捲回軸に直交する方向における該タブの根元の一の端部を端部Bとし、上記根元の上記端部Bと異なる他方の端部を端部Cとし、上記端部Bと上記端部Cとを結ぶ線分BCの中点を中点Eとし、上記中点Eを通過し、かつ、上記捲回軸に沿う直線を直線Aとしたとき、上記直線A上における以下の(1)、(4)および(5)の3点:
(1)上記負極活物質層の上記捲回軸方向の中心;
(4)上記中心から上記タブ側に10mm以上20mm以下離れた点;および、
(5)上記中心から上記タブと反対側に10mm以上20mm以下離れた点、
から採取した上記負極活物質層に含まれるリン(P)をレーザアブレーションICP質量分析で検出したとき、(1)におけるリン(P)の強度が、(4)におけるリン(P)の強度以下であり、かつ、(5)におけるリン(P)の強度以下である。
【0023】
上記構成の非水電解液二次電池では、電池ケースの塑性変形が抑制されている。これに加えて、負極板における被膜形成ムラの発生が抑制されている。そのため、電池性能の低下が抑制されている。
【0024】
ここで開示される非水電解液二次電池の好ましい一態様では、上記(4)におけるリン(P)の強度をI4、上記(5)におけるリン(P)の強度をI5とすると、上記I1と上記I4との比(I4/I1)、および上記I1と上記I5との比(I5/I1)は、いずれも1以上2.7以下であることを特徴とする。上記非水電界二次電池では、(1)、(4)および(5)におけるリン(P)の強度について、比(I4/I1)および比(I5/I1)が上記範囲を満たすことが実現されている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】第1実施形態に係る製造方法で製造される非水電解液二次電池を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図1のII-II線に沿う模式的な横断面図である。
【
図3】第1実施形態に係る製造方法で用いられる捲回電極体を模式的に示す斜視図である。
【
図4】第1実施形態に係る製造方法で用いられる捲回電極体の構成を示す模式図である。
【
図5】第1実施形態に係る製造方法の工程図である。
【
図6】第1実施形態に係る製造方法における初期充電工程の制御を説明するブロック図である。
【
図7】第1実施形態に係る製造方法における二次電池組立体の拘束状態を説明する斜視図である。
【
図8】第1実施形態に係る製造方法における初期充電工程の制御フロー図である。
【
図10】第1実施形態に係る製造方法を用いて製造した非水電解液二次電池の負極板を示す部分平面図である。
【
図11】第2実施形態に係る製造方法における二次電池組立体の拘束状態を説明する斜視図である。
【
図12】第3実施形態に係る製造方法における二次電池組立体の拘束状態を説明する上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら、ここで開示される技術のいくつかの好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、ここで開示される技術を特徴付けない二次電池の一般的な構成および製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここで開示される技術は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0027】
本明細書において「二次電池」とは、繰り返し充放電が可能な蓄電デバイス全般を指す用語であって、リチウムイオン二次電池等のいわゆる蓄電池(化学電池)と、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ(物理電池)と、を包含する概念である。本明細書において「活物質」とは、電荷担体(例えばリチウムイオン)を可逆的に吸蔵・放出できる材料をいう。本明細書において「充電深度」とは、二次電池組立体(非水電解液二次電池)の満充電の状態を100%とした充電率(初期状態からの充電量/二次電池組立体の電池容量×100)をいい、SOC(state of charge)とも称する。
【0028】
本明細書において参照する各図における符号Xは「奥行方向」を示し、符号Yは「幅方向」を示し、符号Zは「高さ方向」を示す。また、奥行方向XにおけるFは「前」を示し、Rrは「後」を示す。幅方向YにおけるLは「左」を示し、Rは「右」を示す。そして、高さ方向ZにおけるUは「上」を示し、Dは「下」を示す。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、二次電池の設置形態を何ら限定するものではない。また、本明細書において数値範囲を示す「A~B」の表記は、「A以上B以下」という意味と共に、「Aを上回り、かつ、Bを下回る」という意味も包含する。
【0029】
<第1実施形態>
ここで開示される製造方法において製造される非水電解液二次電池の一例を、
図1,2に示す。非水電解液二次電池100は、捲回電極体20、および図示されない非水電解液と、該捲回電極体、および該非水電解液を収容する電池ケース10と、を備えている。非水電解液二次電池100は、ここではリチウムイオン二次電池である。
【0030】
非水電解液は、非水溶媒と支持塩とを含み得る。非水溶媒としては、一般的なリチウムイオン二次電池に用いられる各種のカーボネート類等の有機溶媒を、特に制限なく用いることができる。具体例として、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)等の鎖状カーボネート;エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、メチルエチレンカーボネート、エチルエチレンカーボネート等の環状カーボネート;メチル2,2,2-トリフルオロエチルカーボネート(MTFEC)等のフッ素化鎖状カーボネート;モノフルオロエチレンカーボネート(FEC)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)等のフッ素化環状カーボネート;が挙げられる。このような非水溶媒は、1種を単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。非水溶媒は、環状カーボネートであることが好ましい。なかでも、エチレンカーボネート(EC)を好ましく用いることができる。
【0031】
支持塩としては、LiPF6等が挙げられる。非水電解液中の支持塩の濃度は、0.7mol/L~1.3mol/Lの範囲で設定するとよい。非水電解液は、上述した成分以外の成分として、例えば、ホウ素(B)原子および/またはリン(P)原子を含むオキサラト錯体化合物(例えば、リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB))、ビニレンカーボネート(VC)、ジフルオロリン酸リチウム等の被膜形成剤;ビフェニル(BP)、シクロヘキシルベンゼン(CHB)等のガス発生剤;を含み得る。また、ここで開示される技術の効果を著しく損なわない限り、増粘剤;分散剤;等の従来公知の添加剤を含み得る。被膜形成剤は、オキサラト錯体化合物やジフルオロリン酸リチウムであることが好ましい。
【0032】
電池ケース10は、開口を有する外装体12と、該開口を封口する封口板(蓋体)14と、を備えている。電池ケース10は、外装体12の開口の周縁に封口板14が接合されることによって、一体化されて気密に封止(密閉)されている。外装体12は、上記開口と、該開口に対向する矩形状の底部12aと、底部12aの長辺から立ち上がった一対の大面積側壁12bと、底部12aの短辺から立ち上がった一対の小面積側壁12cとを含む、有底角筒状の角形外装体である。小面積側壁12cは、大面積側壁12bの面積よりも小さい面積を有する。封口板14には、非水電解液の注液孔15と、ガス排出弁17と、正極端子30と、負極端子40と、が設けられている。注液孔15は、封止部材16で封止されている。正極端子30および負極端子40は、電池ケース10内に収容された捲回電極体20と電気的に接続されている。電池ケース10は、例えば金属製である。電池ケース10を構成する金属材料としては、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金等が挙げられる。
【0033】
電池ケース10のサイズは、特に限定されない。後述のように、いくつかの態様において外装体12内に複数の捲回電極体20が収容される場合、一対の大面積側壁12bの間の距離は、収容される捲回電極体20の数やサイズ等に応じて適宜設定され得る。上記距離は、例えば、少なくとも3cmあるとよく、3cm以上であってよく、4cm以上であってよく、また、5cm以上であってよい。また、上記距離は、例えば、10cm以下であってよく、8cm以下であってよく、また、6cm以下であってよい。
【0034】
捲回電極体20は、非水電解液二次電池100の発電要素であり、正極板、負極板、およびセパレータを備えている。本実施形態では、
図2に示すように、電池ケース10(外装体12)内に、複数個(例えば、2個以上、3個以上、あるいは4個以上。
図2では3個)の捲回電極体20が奥行方向Xに配列された状態で収容されている。
図1~4に示すように、捲回電極体20は、捲回軸WLが底部12aと平行になる向きで、外装体12の内部に配置されている。捲回電極体20は、電極体ホルダ70内に収容された状態で、電池ケース10に収容されている。なお、捲回電極体20を構成する各部材(正極板、負極板およびセパレータ等)の構成材料は、一般的な非水電解液二次電池で使用され得る材料を特に制限なく使用でき、ここで開示される技術を限定するものではないため詳細な説明を省略することがある。
【0035】
捲回電極体20の捲回軸WL方向の長さL1は、少なくとも20cmであり、例えば20cm以上、25cm以上、あるいは30cm以上に設定され得る。また、上記長さL1は、例えば60cm以下、50cm以下、あるいは40cm以下であり得る。なお、上記長さL1には、後述の正極タブ22tの長さおよび負極タブ24tの長さのいずれも含まれない。
【0036】
図4に示すように、捲回電極体20は、正極板22および負極板24を有する。捲回電極体20は、ここでは、長尺な帯状の正極板22と長尺な帯状の負極板24とが長尺な帯状のセパレータ26を介在させつつ長手方向に直交する捲回軸WLを中心として捲回された、扁平形状の捲回電極体である。
図3に示すように、捲回電極体20の幅方向Yの両端は、正極板22、負極板24、およびセパレータ26の積層面20bで構成されている。積層面20bは、捲回電極体20外に開放されている。
【0037】
捲回電極体20の厚み方向(奥行方向X)の両端は幅広な平坦部20aで構成されている。平坦部20aは、捲回電極体20の捲回軸方向における平坦部20aの中心線Cを含む中央部201と、同方向において中央部201を挟みこむ2つの端部202および端部203と、を有する。捲回電極体20内で発生したガスは、積層面20bを介して捲回電極体外に放出されるため、中央部201に滞留しやすい。捲回軸方向における平坦部20aの長さL1と中央部201の長さL2との比(L2/L1)は、例えば、1/6以上、1/4以上、また、1/2以下、1/3以下であり得る。「中心線Cを含む」とは、中央部201の中に中心線Cを含んでいればよく、例えば、中央部201の中心線と中心線Cとの距離が1/4L2以下である。端部202、203の捲回軸方向の長さは、上記長さL2に応じて適宜設定され得る。
【0038】
正極板22は、長尺な帯状の正極芯体22cと、正極芯体22c(例えば、アルミニウム箔やアルミニウム合金箔等)の少なくとも一方の表面上(好ましくは両面)に固着された、正極活物質(例えばリチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物(NCM)等)を含む正極活物質層22aとを有する。特に限定するものではないが、正極板22の幅方向Yにおける一方の側縁部には、必要に応じて、正極保護層22pが設けられてもよい。正極芯体22cの幅方向Yの一方の端部(
図4の左端部)には、複数の正極タブ22tが設けられている。複数の正極タブ22tは、それぞれ幅方向Yの一方側(
図4の左側)に向かって突出している。複数の正極タブ22tは、正極板22の長手方向に沿って間隔を置いて(間欠的に)設けられている。正極タブ22tは、正極芯体22cの一部であり、正極芯体22cの正極活物質層22aおよび正極保護層22pが形成されていない部分(芯体露出部)である。複数の正極タブ22tは幅方向Yの一方の端部(
図4の左端部)で積層され、複数の正極タブ22tを含む正極タブ群23を構成している。正極タブ群23に、正極集電体50が接合されている(
図2~4参照)。
【0039】
正極板22のサイズは、捲回電極体20の上記長さL1を実現するように設定され得る。捲回軸WL方向における正極板22の長さは、例えば20cm以上、25cm以上、あるいは30cm以上に設定され得る。また、当該長さは、例えば60cm以下、50cm以下、あるいは40cm以下であり得る。なお、上記長さには、正極タブ22tの長さは含まれない。
【0040】
負極板24は、長尺な帯状の負極芯体24c(例えば、銅箔や銅合金箔等)と、負極芯体24cの少なくとも一方の表面上(好ましくは両面)に固着された、負極活物質(例えば黒鉛等)を含む負極活物質層24aと、を有する。負極芯体24cの幅方向Yの一方の端部(
図4の右端部)には、複数の負極タブ24tが設けられている。複数の負極タブ24tは、幅方向Yの一方側(
図4の右側)に向かって突出している。複数の負極タブ24tは、負極板24の長手方向に沿って間隔を置いて(間欠的に)設けられている。負極タブ24tは、ここでは負極芯体24cの一部であり、負極芯体24cの負極活物質層24aが形成されていない部分(芯体露出部)である。複数の負極タブ24tは幅方向Yの一方の端部(
図4の右端部)で積層され、複数の負極タブ24tを含む負極タブ群25を構成している。負極タブ群25に、負極集電体60が接合されている(
図2~4参照)。
【0041】
負極板24のサイズは、捲回電極体20の上記長さL1を実現するように設定され得る。捲回軸WL方向における負極板24の長さ(例えば負極活物質層24aの長さ)は、少なくとも20cmであり、例えば20cm以上、25cm以上、あるいは30cm以上に設定され得る。また、当該長さは、例えば60cm以下、50cm以下、あるいは40cm以下であり得る。なお、上記長さには、負極タブ24tの長さは含まれない。
【0042】
セパレータ26としては、従来公知の微多孔質シートからなるセパレータを特に制限なく使用することができる。例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂からなる多孔質シート(フィルム、不織布等)が挙げられる。セパレータ26の少なくとも一の表面には接着層が設けられてよい。接着層を設けることによって、正極板22と負極板24とをセパレータ26に密着させることができる。そのため、正極板22と負極板24との間の極間距離を小さくするとともに、これらの位置ズレを防止することができる。接着層の構成材料は、適度な接着性を有する樹脂材料であれば特に限定されないが、例えばフッ素系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂等の樹脂材料であり得る。
【0043】
ここで開示される製造方法は、
図5に示すように、組立工程S1と、初期充電工程S2と、高温エージング工程S3と、を有する。組立工程S1では、捲回電極体と非水電解液とを電池ケースに収容して二次電池組立体を構築する。まず、捲回電極体20を、上記の材料を用いて従来公知の方法で作製する。次いで、捲回電極体20の正極タブ群23に正極集電体50を取り付け、さらに負極タブ群25に負極集電体60を取り付けて、捲回電極体と電極集電体との合体物(第1合体物)を用意する(
図3参照)。本実施形態では、3個の第1合体物を用意する。
【0044】
次いで、3個の第1合体物と封口板14とを一体化して、第2合体物を用意する。具体的には、例えば、封口板14に予め取り付けられた正極端子30と、第1合体物の正極集電体50とを接合する。同様に、封口板14に予め取り付けられた負極端子40と、第1合体物の負極集電体60とを接合する。接合手段としては、例えば、超音波接合、抵抗溶接、レーザ溶接等を用いることができる。
【0045】
次いで、第2合体物を、外装体12に収容する。具体的には、例えば、絶縁性の樹脂シート(例えばポリエチレン(PE)等のポリオレフィン製)を、袋状または箱状に折り曲げて作製した電極体ホルダ70に3個の捲回電極体20を収容する。そして、電極体ホルダ70で覆われた捲回電極体20を、外装体12に挿入する。この状態で、外装体12の開口部に封口板14を重ね合わせて、外装体12と封口板14とを溶接し、外装体12を封口する。そして、従来公知の方法にて注液孔15を介して、電池ケース10に非水電解液を注液する。注液した非水電解液を捲回電極体20に含浸させる。このようにして、捲回電極体20と非水電解液とが電池ケース10に収容された二次電池組立体を構築する。
【0046】
初期充電工程S2では、二次電池組立体に対して初期充電を行う。本工程は、二次電池組立体の拘束を所定の態様に制御することを含む。
図6に示すように、拘束治具800による二次電池組立体101の拘束は、制御装置500によって制御される。拘束治具800の種類は特に限定されず、例えば、
図7に示すような一対の拘束用平板80、および拘束部材(例えば、バネ、ボルト、ベルト等)(図示なし)を有する拘束治具800を使用することができる。特に限定するものではないが、例えば拘束用平板80にバネ等の弾性体を装着し、該弾性体の弾性力によって、一対の拘束用平板80の間の距離を変化させて、二次電池組立体101に拘束力を付与することができる。あるいは、一対の拘束用平板80の間をベルト等で架橋してもよい。拘束は、複数個の拘束体180を奥行方向Xに配列した状態で行ってよい。
【0047】
制御装置500は、二次電池組立体101の充電状態を評価し、かつ、これに基づいて拘束治具800による二次電池組立体101の拘束を制御するように構成されている。制御装置500は、処理プログラムを実行するCPUと、該処理プログラムを記憶するROMと、データを一時的に記憶するRAMと、入出力ポートおよび通信ポートと、各種センサとを備えている。制御装置500の各構成および処理は、コンピュータによって具現化されるデータを予め定められた形式で記憶するデータベース、データ構造、予め定められたプログラムに従って所定の演算処理を行う処理モジュール等として、または、それらの一部として具現化され得る。制御装置500の処理は、このような外部のコンピュータと協働で行われてもよい。例えば、制御装置500に記憶される情報または一部の情報を、外部のコンピュータが記憶してもよいし、制御装置500が実行する処理または処理の一部を、外部のコンピュータが実行してもよい。
【0048】
制御装置500は、二次電池組立体101の充電状態を評価し、かつ、これに基づいて拘束治具800による二次電池組立体101の拘束を制御するための機能ブロックとして、例えば検知部、マップ情報記憶部、記憶部、電池情報取得部、負極電位推定部、および制御部を備える。
【0049】
検知部は、二次電池組立体101の電流値(Ib)および電圧値(Vb)を検知できるように構成されており、電流検知部501および電圧検知部502を備え得る。電流検知部501は、二次電池組立体101と直列に接続される電流計(図示なし)と接続されており、電流値(Ib)を検知する。電圧検知部502は、二次電池組立体101と並列に接続される電圧計(図示なし)と接続されており、電圧値(Vb)を検知する。
【0050】
マップ情報記憶部503は、二次電池組立体101の電圧値(Vb)に基づいて、負極電位を推定できるように構成された負極電位推定マップを記憶している。負極電位推定マップには、二次電池組立体101の電池電圧と負極電位との相関関係が記録されている。本明細書において「負極電位」とは、リチウム金属基準(vs.Li/Li+)の負極電位をいう。マップ情報記憶部503は、複数の負極電位推定マップを備えているとよい。複数の負極電位推定マップは、二次電池組立体101の種類(例えば該二次電池組立体に含まれる正負極活物質の種類)に応じて用意されるとよい。負極電位推定マップは、予め定められた試験に基づいて作成することができる。例えば、まず、異なる電池電圧値に調整した、複数個の試験用二次電池を用意する。次いで、各電池電圧値に調整した各々の試験用二次電池を解体して、負極板を取り出す。各々の負極板とリチウム金属からなる対向極とを用いて、各々の負極電位を測定する。この測定結果より、電池電圧と負極電位との相関関係を取得し、負極電位推定マップを作成することができる。
【0051】
記憶部は、例えば、二次電池組立体101の基本情報を記憶する基本情報記憶部504と、初期充電中の二次電池組立体101の電圧(Vb)を一時的に記憶する電圧記憶部505と、を含み得る。上記基本情報としては、例えば、二次電池組立体101に含まれる正負極活物質の種類や捲回電極体のサイズ等が挙げられる。
【0052】
負極電位推定部506は、マップ情報記憶部503に記憶された負極電位推定マップを参照し、初期充電中の二次電池組立体101における負極電位を推定するように構成されている。この際、負極電位推定部506は、電圧検知部502で検知された二次電池組立体101の電圧(Vb)を参照する。
【0053】
制御部507は、電圧検知部502、マップ情報記憶部503、基本情報記憶部504、電圧記憶部505、および負極電位推定部506と連携して、拘束治具800による二次電池組立体101の拘束を制御するように構成されている。また、制御部507は、初期充電工程S2およびその他の工程における二次電池組立体101の一連の充放電を制御するように構成されている。制御部507は、図示されない充放電手段および拘束力制御手段と接続されている。充放電手段は、ここで開示される製造方法において二次電池組立体101の一連の充放電を行う、従来公知の充放電手段である。
【0054】
拘束力制御手段は、さらに拘束治具800とも接続されており、後述のように二次電池組立体101の負極電位が0.6Vおよび0.3Vに到達した時に、その情報を取得できるように構成されている。拘束力制御手段は、上記情報に基づいて拘束治具800から二次電池組立体101に付与される拘束力の制御を行う。一例として、拘束力制御手段は、油圧供給管である。
【0055】
以下に、制御部507による拘束制御を説明する。二次電池組立体101の初期充電の開始に際して、制御装置500に、二次電池組立体101の上記基本情報を入力し、参照する負極電位推定マップを選択する。また、
図7に示すように、二次電池組立体101と拘束治具800とから構成される拘束体180を構築する。具体的には、拘束用平板80を二次電池組立体101の電池ケース10(外装体12)の大面積側壁12b(
図1参照)の全体に対向するように配置して、電池ケース10を一対の拘束用平板80で挟み込む。そして、一対の拘束用平板80の間の距離を調整して、二次電池組立体101に拘束力P0を付与する。拘束力P0の大きさは、0kN以上12kN以下に設定される。即ち、二次電池組立体101を捲回電極体20の厚み方向(奥行方向Y)に拘束した状態(拘束力P0>0kN)、または拘束しない状態(拘束力P0=0kN)で、初期充放電を開始する。初期充電のための充電レートは特に限定されず、適宜設定し得るが、例えば1C以下とすることができる。
【0056】
図8に示すように、初期充放電の開始(START)後、まず、電圧検知部502が電圧(Vb)を検知する(ステップS11)し、電圧記憶部505がこれを記憶する。次いで、負極電位推定部506が、マップ情報記憶部503の負極電位推定マップと電圧記憶部505に記憶された電圧(Vb)とを参照して、二次電池組立体101の負極電位を推定する(ステップS12)。ここで、制御部507は、負極電位が0.6Vに到達しているかを判定する(ステップS13)。到達していないと判定した場合(No)、ステップS11に戻る。
【0057】
到達したと判定した場合(Yes)、拘束力制御手段は、拘束力P0を拘束力P1に切り替えて、二次電池組立体101に拘束力P1を付与する(ステップS14)。拘束力P1は、負極電位が0.6Vに到達する前の拘束力P0よりも大きく、1kN以上15kN以下(好ましくは3kN~15kN、より好ましくは6kN~10kN)の範囲で適宜設定され得る。拘束力P0と拘束力P1との比(P0/P1)は、例えば0.3以上であり、0.5以上でもよく、0.8以上でもよい。上記比の上限は、例えば0.9以下とすることができる。
【0058】
次いで、制御部507は、負極電位が0.3Vに到達しているかを判定する(ステップS15)。到達していないと判定した場合(No)、ステップS14に戻る。到達したと判定した場合(Yes)、拘束力制御手段は、拘束力P1を拘束力P2に切り替えて、二次電池組立体101に拘束力P2を付与する(ステップS16)。即ち、拘束力P1が二次電池組立体101に付与された状態を少なくとも負極電位が0.3Vに到達するまで維持する。電池ケース10の塑性変形を抑制する観点から、拘束力P1と拘束力P2との比(P2/P1)は、0.8以上1.2以下であることが好ましく、0.9以上1.1以下であることがより好ましく、1.0以上1.1以下であることがさらに好ましい。なお、後述の試験例において示されるように、負極電位が0.3Vに到達した後はガスの発生量が小さくなる。そのため、ステップS16における拘束力P2への切り替えは、必須ではない。あるいは、ステップS16において、二次電池組立体101の拘束を解除してもよい。
【0059】
初期充電の温度条件は、45℃以下であることが好ましく、15℃~35℃であることがより好ましく、20℃~30℃であることがさらに好ましい。また、初期充電後の二次電池組立体101の充電深度は、5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、15%以上であることがさらに好ましい。上記充電深度は、50%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましく、30%以下であることがさらに好ましい。なお、特に限定するものではないが、初期充電によって発生したガスを放出するため、初期充電工程S2は、注液孔15を開放した状態(即ち、電池ケース10を開放した状態)で行うことが好ましい。
【0060】
特に限定するものではないが、初期充電工程S2の後、下記高温エージングの前に、必要に応じて二次電池組立体を所定時間放置してよい。これによって、初期充電工程S2後の捲回電極体20内のガス滞留をよりよく抑制することができる。上記所定の時間は、24時間以上336時間以下の範囲で適宜設定され得る。この時の温度条件は、例えば5℃以上45℃以下の範囲で適宜設定され得る。なお、特に限定するものではないが、注液孔15を開放した状態(即ち、電池ケース10を開放した状態)で二次電池組立体101を放置してよい。また、上記放置の際、二次電池組立体を拘束していてよく、拘束していなくてもよい。
【0061】
図5に示すように、初期充電工程S2の後、高温エージング工程S3を実施する。まず、上記充放電手段を用いて、二次電池組立体の充電深度が例えば5%以上50%以下(好ましくは、15%以上40%以下)となるように充電する。この時の温度条件は、例えば45℃以下(好ましくは20℃以上30℃以下)に設定するとよい。この時の充電レートは特に限定されず、適宜設定し得るが、例えば1C以下とすることができる。なお、二次電池組立体を拘束している場合は、本工程の充電開始時に解除しておくとよい。
【0062】
次いで、二次電池組立体を、その充電深度のまま高温環境に配置し、高温エージングを開始する。この時の温度条件は、特に限定されず、例えば50℃以上70℃以下(例えば60℃程度)とするとよい。また、高温エージングの時間は、例えば5時間以上20時間以下とするとよい。上述のとおり、ここで開示される製造方法を実施することによって、使用可能状態の非水電解液二次電池を製造することができる。
【0063】
[試験例]
以下、本発明に関する試験例を説明する。なお、以下に記載する試験例の内容は、本発明者らが本発明の着想に至った経緯を説明するためのものであり、本発明を限定することを意図したものではない。
【0064】
―二次電池組立体の構築-
正極活物質としてのリチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物(NCM)と、バインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)と、導電材としてのアセチレンブラック(AB)とを、質量比がNCM:PVdF:AB=98:1:1となるように秤量し、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)中で混合して、正極スラリーを調製した。この正極スラリーを、長尺な帯状の正極芯体(アルミニウム箔、厚み18μm)の両面に塗布し、乾燥させた。これを所定のサイズに切り取り、ロールプレスで圧延することにより、正極芯体の両面に正極活物質層を備えた正極板を得た。なお、正極活物質層の密度は3.4g/cm3であり、厚みは片面110μmであった。また、正極板の長手方向の長さは72mであり、幅方向の長さは242mmであった。
【0065】
負極活物質としての黒鉛粉末(C)と、バインダとしてのスチレンブタジエンラバー(SBR)と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)とを、質量比がC:SBR:CMC=98:1:1となるように秤量し、水中で混合して、負極スラリーを調製した。この負極スラリーを長尺な帯状の負極芯体(銅箔、12μm)の両面に塗布し、乾燥させた。これを所定のサイズに切り取り、ロールプレスで圧延することにより、負極芯体の両面に負極活物質層を備えた負極板を得た。なお、負極活物質層の密度は1.4g/cm3であり、厚みは片面200μmであった。また、正極板の長手方向の長さは80mであり、幅方向の長さは252mmであった。
【0066】
次に、上記作製した正極板と負極板とを、セパレータ(セパレータシート)を介して対向させて積層した。これをシート長手方向に捲回することにより、
図4に示すような捲回電極体を作製した。なお、上記セパレータは、ポリオレフィン製の多孔質層からなる基材と、アルミナおよび樹脂バインダを含む耐熱層を備えていた。上記基材の厚みは16μmであり、上記耐熱層の厚みは4μmであった。また、耐熱層は、上記正極板側の面に形成されていた。また、セパレータの長手方向の長さは82mであり、幅方向の長さは260mmであった。
【0067】
上記のとおり作製した捲回電極体の寸法関係については、以下のとおり:
W:8mm;
L1:260mm;および、
H:82mm、
であった。なお、各符号は、
図3に記載のとおりである。具体的には、Wは、捲回電極体20の厚みである。L1は、捲回電極体20の幅である。Hは、捲回電極体20の高さである。
【0068】
次いで、正極集電体および負極集電体を介して、捲回電極体と電池ケースの蓋体とを接続した。これをケース本体に挿入し、該ケース本体と蓋体とを溶接した。次いで、電池ケース(封口板)の注液孔から非水電解液を注入した。非水電解液には、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とジメチルカーボネート(DMC)とをEC:EMC:DMC=30:40:30の体積比(25℃、1atm)で含む混合溶媒に、支持塩としてのLiPF6を1mol/L、および添加剤(被膜形成剤)としてのビニレンカーボネート(VC)を0.3重量%の濃度で溶解させたものを用いた。このようにして、試験用二次電池組立体を構築した。
【0069】
-捲回電極体内のガス残り量の測定-
上記のように構築した試験用二次電池組立体に対して、さらに非水電解液を注液して電池ケース内を非水電解液で満たした。この状態で、電池ケースの注液孔に漏斗を挿入した。次いで、一対の拘束用平板で試験用二次電池組立体を厚み方向両側から拘束した(
図7参照)。この時の拘束力は、0kN(拘束なし)、6kN、または10kNであった。次いで、25℃、窒素雰囲気、および1atmの環境下、0.5Cの電流で充電を開始した。充電開始時から、試験用二次電池組立体の規定容量に対して充電深度(SOC)が12%となるまで、上記漏斗内の液面を観察した。そして、液面が上昇した容積を測定し、捲回電極体内のガス残り量とした。結果を
図9に示す。
【0070】
図9に示すように、拘束力が0kN、6kN、および10kNのいずれの場合であっても、試験用二次電池組立体の充電深度が少なくとも2%~4%の間で、捲回電極体内でガスが発生することがわかった。この試験用二次電池組立体では、充電深度が2%~4%の時、負極電位が0.6V~0.3Vであった。このことから、負極電位が0.6Vに到達した時に、二次電池組立体に対して負極電位が0.6Vとなる前よりも大きな拘束力を付与し、この状態を少なくとも負極電位が0.3Vに到達するまで維持することによって、電池ケースの塑性変形をよりよく抑制できるとわかった。なお、
図9に示すように、捲回電極体内のガス残り量は、拘束力の大きさに依存して少なくなった。
【0071】
ここで開示される技術によって、二次電池組立体の初期充電において、負極電位が0.6Vに達した時に、該負極電位が0.6Vに達する前よりも大きな拘束力P1を二次電池組立体に対して付与し、該拘束力P1が二次電池組立体に付与された状態を少なくとも負極電位が0.3Vに達するまで維持することによって、電池ケースの塑性変形を抑制することができる。
【0072】
上記方法で製造した非水電解液二次電池100(
図1参照)は、電池ケースの塑性変形が抑制されている。即ち、非水電解液二次電池100では、外装体12の底部12aの膨らみ量D1が、外装体12の高さ方向Zの長さの0.3%以下である。ここで、膨らみ量D1とは、底部12aの周縁部を基準(ゼロ)とした、高さ方向Zの下側Dへの底部12aの最大変形量をいう。また、大面積側壁12bのへこみ量D2は、外装体12の奥行方向Xの長さの5%以下である。ここで、へこみ量D2とは、大面積側壁12bの周縁部を基準(ゼロ)とした、奥行方向Xにおける大面積側壁12bの外装体12内方への最大変形量をいう。また、小面積側壁12cの膨らみ量D3は、外装体12の幅方向Xの長さの0.1%以下である。ここで、膨らみ量D3とは、小面積側壁12cの周縁部を基準(ゼロ)とした、幅方向Yにおける小面積側壁12cの外装体12外方への最大変形量をいう。
【0073】
ところで、本発明者らの検討によると、捲回電極体20の捲回軸方向における負極活物質層24aの長さが少なくとも20cmある態様において、捲回電極体20の中央部201におけるガスの滞留がより顕著であり、これによって初期充電時の被膜の形成にムラが生じやすいことがわかった。初期充電では、の負極活物質層24aの表面に良質な被膜(SEI被膜)が形成される。しかし、負極活物質層24aとセパレータ26との間にガスが存在すると、この部分では充電反応が生じにくく、被膜の形成が妨げられる。ガスは、その後の高温エージング等によって、捲回電極体20外に放出される。ガスが抜けた部分(被膜形成が不十分な部分)では、例えば非水電解液成分(例えば支持塩としてのLiPF6)と負極活物質とが高温によって急速に反応する。そうすると、上記被膜とは性質の異なる非良質な被膜が過形成される。
【0074】
上記製造方法では、初期充電時に所定の拘束によってガス滞留を抑制できるため、非良質被膜の過形成を抑制することができる。その効果は、高温エージング後の負極板のレーザアブレーションICP質量分析(LA-ICP-MS)を行うことによって評価することができる。具体的には、例えば、まず高温エージング後の非水電解液二次電池を0.5C程度の電流で、充電深度100%まで充電(満充電)する。次いで、0.5C程度の電流で、充電深度0%まで放電する。次いで、非水電解液二次電池を解体して、負極板を洗浄液(例えば、100vol%のジメチルカーボネート(DMC))で洗浄し、乾燥させる。
【0075】
乾燥後の負極板について、
図10に示す直線A上をLA-ICP-MSにてリン(P)のライン分析を行う。
図10に示すように、負極板24における巻き始め端部24sに最も近い負極タブ24tにおいて、捲回軸(
図4参照)に直交する方向における該タブの根元の一の端部を端部Bとする。端部Bと異なる他方の端部を端部Cとする。端部Bと端部Cとを結ぶ線分BCの中点を中点Eとする。中点Eを通過し、かつ、捲回軸に沿う直線を直線Aとする。なお、LA-ICP-MS装置は、特に限定されない。例えば、ESI社のNWR213(LA)と、Agilent technologies社の7900(ICP-MS)とを組み合わせて使用することができる。
【0076】
そして、直線A上の以下の3点:
(1)負極活物質層24aの捲回軸方向の中心P;
(2)中心Pから負極タブ24t側に5mm以上15mm以下(例えば10mm程度)離れた点Q;および、
(3)中心Pから負極タブ24tと反対側に5mm以上15mm以下(例えば10mm程度)離れた点R、
から採取した負極活物質層24aに含まれるリン(P)をLA-ICP-MSで検出する。ここで開示される方法によって製造した非水電解液二次電池100は、(1)におけるリン(P)の強度I1が、(2)におけるリン(P)の強度I2以下であり(I1≦I2)、かつ、(3)におけるリン(P)の強度I3以下である(I1≦I3)。I1とI2との比(I2/I1)、およびI1とI3との比(I3/I1)は、いずれも1以上(1.0以上)2.5以下であることが好ましく、1以上(1.0以上)2.0以下であることがより好ましい。なお、中心Pは、直線Aと、捲回軸方向における負極活物質層24aの中央線Lとの交点である。
【0077】
また、さらに直線A上における以下の2点:
(4)中心Pから負極タブ24t側に10mm以上20mm以下(例えば15mm程度)離れた点S(ただし、点Sは点Qよりも負極板24の外側);および、
(5)中心Pから負極タブ24tと反対側に10mm以上20mm以下(例えば15mm程度)離れた点T(ただし、点Tは点Rよりも負極板24の外側)、
から採取した負極活物質層24aに含まれるリン(P)をLA-ICP-MSで検出するとよい。このとき、(4)におけるリン(P)の強度I4、および(5)におけるリン(P)の強度I5について、I1とI4との比(I4/I1)、およびI1とI5との比(I5/I1)は、いずれも1以上(1.0以上)2.7以下であることが好ましく、1以上(1.0以上)2.0以下であることがより好ましい。なお、点(2)~(5)の位置は、負極板24のサイズに応じて、上記範囲内で適宜設定できる。
【0078】
以上、ここに開示される技術の一実施形態について説明した。なお、上述した第1実施 形態は、ここに開示される技術が適用された製造方法および非水電解液二次電池の一例を示すものであり、ここに開示される技術を限定することを意図したものではない。以下、ここに開示される技術の他の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、特に言及している点以外は、上記第1実施形態に係る製造方法と略同等の構成を採用することができる。
【0079】
<第2実施形態>
上記第1実施形態では、
図7に示すように、一対の拘束用平板80を、電池ケース10(外装体12)の一対の大面積側壁12b(
図1参照)の全体に対向するように配置している。しかし、ここで開示される技術の効果が実現される限り、拘束治具の形状、寸法等は限定されない。例えば、
図11に示すような拘束用平板82を備える拘束治具820を使用してよい。
図11に示すように、二次電池組立体101を、電池ケース10の奥行方向Xにおいて、捲回電極体20の中央部201に所定の拘束力を付与できるように、一対の拘束用平板82で挟み込むとよい(拘束体280)。拘束治具820を用いると、捲回電極体20の中央部201に所定の拘束力を付与するが、端部202および端部203に拘束力を付与しない。中央部201に対して選択的に拘束力を付与することによって、中央部201におけるガス滞留をよりよく抑制することができる。なお、第2実施形態に係る製造方法は、拘束治具820を使用する点を除いて、第1実施形態に係る製造方法と同様であってよい。
【0080】
<第3実施形態>
あるいは、
図12に示すような拘束用平板83を備える拘束治具830を使用してよい。
図12に示すように、二次電池組立体101を、電池ケース10の奥行方向Xにおいて、一対の拘束用平板83で挟み込むとよい(拘束体380)。拘束用平板83は、平坦な幅広面83aと、幅広面83aに対向する湾曲面83bとを有している。湾曲面83bは、電池ケース10の大面積側壁12bに対向しており、大面積側壁12bに向かって湾曲している。湾曲面83bの湾曲頂点83tを含む拘束部831は、大面積側壁12bと接している。湾曲頂点83tの位置および拘束部831の幅方向Yにおける長さは特に限定されず、拘束によって捲回電極体20の中央部201に所定の拘束力が付与されるように適宜設定することができる。湾曲面83bにおける、拘束部831を除く他の部分は、大面積側壁12bと接していない。拘束治具830を用いると、捲回電極体20の中央部201に所定の拘束力を付与するが、端部202および端部203に拘束力を付与しない。中央部201に対して選択的に拘束力を付与することによって、中央部201におけるガス滞留をよりよく抑制することができる。なお、第3実施形態に係る製造方法は、拘束治具830を使用する点を除いて、第1実施形態に係る製造方法と同様であってよい。
【0081】
以上、ここで開示される技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。ここで開示される技術には上記の具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0082】
10 電池ケース
12 外装体
14 封口板(蓋体)
15 注液孔
16 封止部材
17 ガス排出弁
20 捲回電極体
22 正極板
23 正極タブ群
24 負極板
25 負極タブ群
26 セパレータ
30 正極端子
40 負極端子
50 正極集電体
60 負極集電体
70 電極体ホルダ
500 制御装置
800、820、830 拘束治具
100 非水電解液二次電池
101 二次電池組立体