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特開2022-154253心壁ポートおよび心臓インプラントアッセンブリ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154253
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】心壁ポートおよび心臓インプラントアッセンブリ
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20221005BHJP
【FI】
A61F2/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057181
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】519442140
【氏名又は名称】株式会社マイトラペックス
(74)【代理人】
【識別番号】100179970
【弁理士】
【氏名又は名称】桐山 大
(74)【代理人】
【識別番号】100071205
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 陽一
(72)【発明者】
【氏名】田端 実
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA27
4C097BB01
4C097BB04
4C097CC01
4C097CC05
4C097CC13
4C097DD01
4C097DD09
4C097MM09
4C097SB02
4C097SB09
4C097SB10
(57)【要約】
【課題】低侵襲な埋込手術を高い利便性で実施する。
【解決手段】
心臓インプラントアッセンブリ100は、心壁ポート20と心臓インプラント1とを備える。心壁ポート20と分離した個別部品の形態で心臓内に送り込まれた心臓インプラント1が、心臓内で、心壁ポート20に対して合体させられる。心壁ポート20は、ポート側結合手段21と心壁アンカー22とを有する。ポート側結合手段21は、心壁アンカー22が心臓と結合した状態で、心臓の内側へ露出配置される。心壁アンカー22は、ポート側結合手段21を心腔内に露出させつつ配置するように、心臓と結合する。本体側結合手段18とポート側結合手段21は、互いに対となるように任意の結合構造で構築することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓インプラントの本体側結合手段と結合自在に構築され、前記心臓インプラントが心臓内に送り込まれたときに前記本体側結合手段との結合を受け入れるポート側結合手段と、
前記ポート側結合手段を心腔内に露出させるように心臓と結合する心壁アンカーと、
を備え、
前記心臓インプラントと分離した個別部品の形態で前記心臓に留置されるべき心壁ポート。
【請求項2】
複数の前記ポート側結合手段を備え、前記複数の前記ポート側結合手段の各々を前記心腔内に露出させる請求項1に記載の心壁ポート。
【請求項3】
前記各々のポート側結合手段の構造が互いに異なる請求項2に記載の心壁ポート。
【請求項4】
前記ポート側結合手段がオス側結合手段であり、前記本体側結合手段がメス側結合手段であり、前記オス側結合手段の先端部が丸みを帯びた形状または先細りテーパを帯びた形状に構築された請求項1~3のいずれか1項に記載の心壁ポート。
【請求項5】
前記ポート側結合手段が、前記本体側結合手段と引っ掛かることで結合を得るためのフック構造またはリングである請求項1~3のいずれか1項に記載の心壁ポート。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の心壁ポートと、
当該心壁ポートと合体すべき前記心臓インプラントと、
を備え、
前記心臓インプラントは、ラインナップされる複数の心臓インプラントのなかから任意に一つ以上が選択され、
前記ラインナップされる前記複数の心臓インプラント各々が、心臓内で心臓の機能を補助するためのインプラント本体と前記本体側結合手段とを有し、各々の前記インプラント本体が互いに異なる仕様を持つとともに、各々の前記本体側結合手段が一つの前記心壁ポートにおける前記ポート側結合手段に対して結合自在に構築された心臓インプラントアッセンブリ。
【請求項7】
請求項2または3に記載の心壁ポートと、
前記心壁ポートが持つ前記複数の前記ポート側結合手段の各々との結合によって各々が前記心壁ポートと合体すべき複数の前記心臓インプラントと、
を備え、
前記複数の前記心臓インプラントの各々が人工腱索としての機能を持つ心臓インプラントアッセンブリ。
【請求項8】
請求項2または3に記載の心壁ポートと、
前記心壁ポートが持つ前記複数の前記ポート側結合手段の各々との結合によって各々が前記心壁ポートと合体すべき複数の前記心臓インプラントと、
を備え、
前記複数の前記心臓インプラントの各々が人工心臓弁である心臓インプラントアッセンブリ。
【請求項9】
請求項2または3に記載の心壁ポートと、
前記心壁ポートが持つ前記複数の前記ポート側結合手段の各々との結合によって各々が前記心壁ポートと合体すべき複数の前記心臓インプラントと、
を備え、
前記複数の前記心臓インプラントは互いに機能が異なる心臓インプラントアッセンブリ。
【請求項10】
前記心臓インプラントと前記心壁ポートとのうち少なくとも一方が薬剤溶出構造を持つ請求項6~9のいずれか1項に記載の心臓インプラントアッセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、心壁ポートおよび心臓インプラントアッセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特開2018-153669公報に記載されているように、人工心臓弁が知られている。人工心臓弁などの心臓インプラントでは、アンカーでインプラント本体を心腔内に留置する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-153669公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者が鋭意研究を進めたところ、低侵襲埋込手術の利便性を高める観点から、更なる改善の余地が見いだされた。
【0005】
本開示は、低侵襲な埋込手術を高い利便性で実施できる心壁ポートおよび心臓インプラントアッセンブリを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
心壁ポートの一態様は、心臓インプラントの本体側結合手段と結合自在に構築され、前記心臓インプラントが心臓内に送り込まれたときに前記本体側結合手段との結合を受け入れるポート側結合手段と、前記ポート側結合手段を心腔内に露出させるように心臓と結合する心壁アンカーと、を備え、前記心臓インプラントと分離した個別部品の形態で前記心臓に留置されるべきものである。
【0007】
心臓インプラントアッセンブリの一態様は、前記心壁ポートと、当該心壁ポートと合体すべき前記心臓インプラントと、を備える。
【0008】
第一の例として、前記心臓インプラントは、ラインナップされる複数の心臓インプラントのなかから任意に一つ以上が選択され、前記ラインナップされる前記複数の心臓インプラント各々が、心臓内で心臓の機能を補助するためのインプラント本体と前記本体側結合手段とを有し、各々の前記インプラント本体が互いに異なる仕様を持つとともに、各々の前記本体側結合手段が一つの前記心壁ポートにおける前記ポート側結合手段に対して結合自在に構築されてもよい。
【0009】
第二の例として、前記心壁ポートが、複数の前記ポート側結合手段を備え、前記複数の前記ポート側結合手段の各々を前記心腔内に露出させてもよい。この場合において、当該心壁ポートと合体すべき複数の前記心臓インプラントが提供されてもよい。この場合の一例として、前記複数の前記心臓インプラントの各々が人工腱索としての機能を持ってもよい。あるいは、他の例として、前記複数の前記心臓インプラントの各々が人工心臓弁であってもよい。更に他の例として、前記複数の前記心臓インプラントは互いに機能が異なるものでもよい。
【発明の効果】
【0010】
心壁ポートの上記一態様によれば、個別部品として心臓に留置される心壁ポートが、任意のタイミングで、心臓インプラントを受け入れることができる。これにより、高い利便性を持つ新規なアプローチの低侵襲埋込技術が提供される。
【0011】
心臓インプラントアッセンブリの上記一態様は、低侵襲な埋込手術を高い利便性で実施できる。上記一態様における上記第一の例によれば、心壁ポートが様々な心臓インプラントを共通に受け入れるので、高い利便性を持つ新規なアプローチの低侵襲埋込技術が提供される。上記一態様における上記第二の例によれば、カテーテルアプローチによる低侵襲なインプラント埋込技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】心壁ポートおよびこれを含む心臓インプラントアッセンブリの構成を表す図である。
図2】心臓インプラントアッセンブリの設置方法を示す図である。
図3】心臓インプラントアッセンブリの他の例である。
図4】他の心臓インプラントアッセンブリの設置方法を示す図である。
図5】変形例にかかる本体側結合手段と、変形例にかかるポート側結合手段およびこれを持つ心壁ポートとを示す図である。
図6】他の変形例にかかる本体側結合手段と、他の変形例にかかるポート側結合手段およびこれを持つ心壁ポートとを示す図である。
図7】変形例にかかる心壁ポートを示す図である。
図8】変形例にかかる心壁ポートを示す図であって、心壁ポートが複数の心臓インプラントを受け入れ可能な様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、心壁ポート20およびこれを含む心臓インプラントアッセンブリ100の構成を表す図である。実施の形態の心臓インプラントアッセンブリ100は、心壁ポート20と心臓インプラント1とを備える。心壁ポート20と分離した別部品の形態で心臓内に送り込まれた心臓インプラント1が、心臓内で、心壁ポート20に対して合体させられる。実施の形態において、「合体」は、ドッキング、組み立て、あるいは一体化などの用語で言い表されることがある。心壁ポート20と心臓インプラント1とを合体させる時期および方法にはいくつかのバリエーションがあり、詳細は後ほど説明する。
【0014】
心壁ポート20は、ポート側結合手段21と心壁アンカー22とを有する。ポート側結合手段21は、心壁アンカー22が心臓と結合した状態で、心臓の内側へ露出配置される(図2参照)。ポート側結合手段21は、一例として球状の空間を呈する球状凹部21である。心壁ポート20の筒状本体における上面中央を開口させるように、球状凹部21が形成されている。
【0015】
心壁アンカー22は、ポート側結合手段21を心腔内に露出させつつ配置するように、心臓と結合する。心壁アンカー22が心臓と結合するための具体的構造に限定はない。一例として、心壁アンカー22は、心腔内において、心腔内壁または乳頭筋との結合を得てもよい。心腔内壁は、たとえば左心室または右心室の内壁でもよい。心腔内壁は、具体的には、左心室と右心室とにおける各心尖部の内壁でもよい。
【0016】
心臓インプラント1は、インプラント本体1aと本体側結合手段18とを有する。インプラント本体1aは、心臓インプラント1の主機能を担う。インプラント本体1aの任意の位置に、任意の個数で、本体側結合手段18を設けることができる。一例として、本体側結合手段18は、その先端に球頭部19を含んでいる。この球頭部19がボールジョイント結合構造の役割を担う。
【0017】
本体側結合手段18とポート側結合手段21は、互いに対となるように、コネクタあるいはジョイントなどの任意の結合構造で構築することができる。図1には結合中心軸線CLが図示されている。結合中心軸線CLは、心壁ポート20の本体(筒状胴体)の中心を通る軸線と一致している。球頭部19の中心とポート側結合手段(球状凹部)21の中心とが結合中心軸線CLを通るように、両者が構築されている。
【0018】
インプラント本体1aを詳しく説明する。図1では、一例として、インプラント本体1aが人工心臓弁葉である。インプラント本体1aは、弁葉固定部3と、少なくとも一つの弁葉とを含む。少なくとも一つの弁葉は、一例として、上部接続部11で互いに接続された第一弁葉5および第二弁葉7の結合構造体である。第一弁葉5および第二弁葉7は、インプラント本体1aの上部において弁葉固定部3と接続される。弁葉固定部3は、一例としてリング3である。第一弁葉5および第二弁葉7は、一例として、下方に進むほど幅が狭くなる部位を有する。リング3は折りたたむことができ、左心房内又は右心房内で展開できる。リング3、第一弁葉5、および第二弁葉7のいずれかが、左心房壁または右心房壁と係止するための係止部13を有してもよい。
【0019】
インプラント本体1aは、人工僧帽弁又は人工三尖弁として使用できる。人工心臓弁葉であるインプラント本体1aは、心臓内にひろがることで、三尖弁または僧帽弁の機能を補助する。人工心臓弁葉の一例として、弁葉(図1では第一弁葉5および第二弁葉7の結合構造体)が下端へ向かって先細りの形状を持つ先細り弁膜であってもよい。弁葉固定部3(図1ではリング3)が、この先細り弁膜の上端においてひろがった拡径部を構築してもよい。先細り弁膜の長さは、右心室の心尖部から三尖弁に達する程度の長さでもよい。あるいは、先細り弁膜の長さは、左心室の心尖部から僧帽弁に達する程度の長さであってもよい。先細り弁膜の下端に、本体側結合手段18が設けられてもよい。
【0020】
心壁ポート20および心臓インプラント1それぞれを心臓内(心腔内)に送り込む方法に限定はなく、任意の血管を通じてカテーテルアプローチにより心腔内に送り込んでもよい。少なくとも上大静脈と下大静脈と肺動脈と肺静脈と大動脈とのうち任意の血管を介して、左心室または右心室に心壁ポート20および心臓インプラント1を設置してもよい。他の例として、血管以外に、左心房または右心房に直接カテーテルを入れて心室内への設置を行ってもよい。
【0021】
図2は、心臓インプラントアッセンブリの設置方法を示す図である。図2では一例として、左心室に心壁ポート20を設置する。図2では一例として、左心室における心尖部53の内壁に心壁アンカー22が結合する。右心室への設置も同様の手順で行われてもよい。図2には僧帽弁51と左心房57も図示される。
【0022】
心壁ポート20を図2(a)に例示するように心臓に留置する方法に限定はない。一例として、心壁ポート20は、カテーテル(図示せず)の先端に接続されて、血管を通して左心室付近まで運ばれてもよい。他の例として、全身麻酔下に左小開胸アプローチを行って、左室心尖部53を突き抜けることで左心室内に心壁ポート20を運んでもよい。このときシースの使用、不使用は問わない。あるいは、心尖部の外表面にカテーテルにより取り付けてもよい。あるいは、心臓手術時に、心内腔側または心外膜側から外科的に心壁ポート20を留置してもよい。例えば開心術時に、「心内膜側」から心壁ポート20を留置してもよい。例えば開心術時に「心外膜側」から心壁ポート20を留置してもよい。
【0023】
次に、図2(b)に例示するように、任意のタイミングで、ニーズに応じて任意に選択した心臓インプラント1を、心壁ポート20とは分離した個別部品の形態で心臓内に送り込む。
【0024】
ここで、心臓インプラント1を送り込むタイミングや、心壁ポート20と心臓インプラント1とを合体させるタイミングに限定はない。一例として、初回治療(手術)のときに付随的に心壁ポート20を埋め込むものの、心臓インプラント1とは合体させずにそのまま留置しておいてもよい。事後的に、必要に応じて、追加治療で心臓インプラント1を送り込んで合体させてもよい。これにより初回治療後に病変が再発した場合も二度目以降の追加治療が容易になるという利点がある。他の例として、同時期(つまり同じ手術)において、心臓インプラント1を心壁ポート20に心腔内で合体させてもよい。これによりカテーテル手術の低侵襲性を高めるという利点がある。
【0025】
一例として、人工心臓弁である心臓インプラント1は、折り畳まれた状態でシース(収容部)61に収容され、血管を通して左心室付近まで伝搬される。左心房を通り、僧帽弁前尖・後尖の間を通過させ、左心房内に到達させる。
【0026】
心臓インプラント1が送り込まれたら、心臓内で心壁ポート20に対して心臓インプラント1を合体させる。合体後に、シース61を後退させる。すると、左心房内でリングが展開する。その後、エコーガイドを用いて患者の僧帽弁と人工心臓弁のアライメントをとり、係止部(鉤)13を左心房壁に固定する。固定後の状態が図2(c)に例示される。
【0027】
ここで、例えばカテーテルでインプラント本体1aの端部を左心房側へ向かって引っ張ったり、或いは左室心尖部53の外に出したりしつつ、エコーでインプラント本体1aの接合を見ながら人工心臓弁葉の長さを調整してもよい。長さを所望値に決定したら、インプラント本体1aを左室心尖部53に固定することができる。
【0028】
図2に示されるように弁葉固定部2が折り畳まれた状態の心臓インプラント1を、任意の血管(大腿静脈、頸静脈、上大静脈、又は下大静脈)を経由して、左心房を経て、左心室へと移動させてもよい。このようにして、心臓インプラント1を、左心室および左心房における僧帽弁の機能を補助する位置に、人工僧帽弁として配置できる。
【0029】
実施の形態では、心壁ポート20があるので、心臓インプラント1の下端を左室心尖部と縫い合わせなくとも簡単に接続を確保できる利点がある。同様の作業を人工三尖弁についても行うことができ、人工三尖弁を三尖弁の機能を補助する位置(右心室および右心房)に配置できる。
【0030】
実施の形態の心臓インプラントアッセンブリ100は、カテーテルアプローチ(例えば経心尖アプローチと経静脈アプローチ)のほか、外科的手術を用いた施術に用いられてもよい。人工心臓弁が僧帽弁の場合、経心尖アプローチと経静脈アプローチといったカテーテルアプローチや外科的手術によるアプローチのいずれでも使用することができる。人工心臓弁が三尖弁の場合も、経心尖アプローチと経静脈アプローチといったカテーテルアプローチや外科的手術によるアプローチのいずれでも使用することができる。弁葉固定部3は、第一弁葉5と第二弁葉7とが心臓弁の上方(心房内)に位置し続けることができるように、第一弁葉5および第二弁葉7と固定されるものである。また、弁葉固定部2は、心房壁と接続されることにより、心房内に安定に配置され続けるものであってもよい。
【0031】
インプラント本体1aとして用いる人工心臓弁葉の具体的形状に限定はない。インプラント本体1aの仕様は、心臓内で心臓の機能を補助するための各種公知のインプラントから任意に採用できる。少なくとも国際公開WO2018/151247号(国際出願PCT/JP2018/005444)に記載された人工心臓弁葉を任意に適用してもよい。
【0032】
図3は、心臓インプラントアッセンブリの他の例である。図3には、三種類の心臓インプラントアッセンブリ101~103が例示されている。
【0033】
心臓インプラントアッセンブリ101、102それぞれにおけるインプラント本体1a1、1a2それぞれは、図1の構造とは異なる他の人工心臓弁葉である。インプラント本体1a1、1a2それぞれにおいて、弁葉固定部2が半円リング2であり、一つの弁葉4のみが設けられる。インプラント本体1a1は、紐状構造物71を介して間接的に本体側結合手段18と結合している。この紐状構造物71のぶんだけ弁葉4が短くされている。
【0034】
心臓インプラントアッセンブリ103では、インプラント本体1a3が人工腱索である。インプラント本体1a3は、複数の紐状体1a31を含む。一例として、インプラント本体1a3の一端に本体側結合手段18が設けられていて、この本体側結合手段18に複数の紐状体1a31の先端が合流してもよい。人工腱索の他端に、三尖弁または僧帽弁の弁尖との接続を得るための「弁接続手段」が設けられてもよい。インプラント本体1a3の弁接続手段は、図3(c)では一例として係止片1a32を模式的に図示している。ただし、弁接続手段の具体的構造に限定はなく、係止片1a32のような対象物に刺さることで接続するタイプのものに限定されない。弁接続手段の変形例として、J字やU字に屈曲したフックなどでもよく、対象物を挟むクリップ等の挟持部などでもよい。人工腱索であるインプラント本体1a3の具体的構造、形状、太さ、本数、および材質などに限定はない。
【0035】
図4は、他の心臓インプラントアッセンブリの設置方法を示す図である。心壁ポート20の設置と、カテーテルによる心臓インプラント1の配送と、心壁ポート20と心臓インプラント1との合体とは、図2の例と同様に実施することができる。
【0036】
人工腱索の端部を例えば左室心尖部53の外に出したり或いはカテーテルで左心房側へ引っ張ったりしつつ、エコーで人工腱索の接合を見てもよい。これにより人工腱索の長さを調整してもよい。
【0037】
実施の形態によれば、図4に例示されたように、開胸することなくカテーテルアプローチのみによって人工腱索の埋め込みを実施させることができる。
【0038】
また、実施の形態では、一例として、心壁ポート20は、心室壁または乳頭筋に結合され且つインプラント本体1aよりも小さな部品とされる。心壁ポート20の小型化により、心腔内におけるポート設置範囲を小さくできる。
【0039】
実施の形態には、次に述べる各種の変形(モディフィケーション)が適用されてもよい。下記に列挙される変形は、単独で適用しても、複数種類を互いに組み合わせてもよい。
【0040】
ポート側結合手段21と本体側結合手段18との結合方式に限定はない。「嵌合」、「圧入」、「係止」、「突刺」、および「溶着」などの任意の結合原理に基づく結合構造を用いてもよい。図5は、変形例にかかる本体側結合手段18a~18hと、変形例にかかるポート側結合手段21a~21hおよびこれを持つ心壁ポート20a~20hとを示す図である。
【0041】
結合構造の一例は、実施の形態のポート側結合手段21あるいは図5(a)に一例を示すように、ボールジョイントでもよい。ボールジョイントは、一方に設けた球頭部19、21aを、もう一方に設けた球状凹部19a、21にはめ込むものである(図1図5(a)参照)。図5(a)の例では、本体側結合手段18aの先端部が一例として球状体とされていて、この球状先端部の中に球状凹部19aが設けられる。
【0042】
結合構造の他の例は、図5(b)に一例を示すように、ネジ止め構造でもよい。ネジ止め構造は、心壁ポート20の中心軸線まわりの回転によって、本体側結合手段18bの雄ねじ部19bが心壁ポート20bのポート側結合手段21b(雌ねじ部21b)にネジ止めされるものでもよい。なお、雌ねじ部21bの縁にテーパ面21b1を設けて、内側へ雄ねじ部19bを導きやすくしてもよい。
【0043】
結合構造の更に他の例は、図5(c)に一例を示すように、「圧入」でもよい。本体側結合手段18cの先端に設けた圧入ピン19cが、心壁ポート20cのポート側結合手段21c(つまり受手側ピン穴21c)に押し込まれる。圧入ピン19cは平面視が円形または楕円形などの薄板状リング体であり、受手側ピン穴21cへの押し込みに応じて塑性変形する。押し込まれた圧入ピン19cが受手側ピン穴21cとの摩擦力を発揮することで抜けにくくなり、両者が結合される。圧入は「プレスフィット」とも称される。
【0044】
結合構造の更に他の例は、図5(d)に一例を示すように、「嵌合」でもよい。本体側結合手段18dの嵌合ピン19dが、ポート側結合手段21dとしての嵌合穴21dにはめ込まれる。嵌合ピン19dが、これよりも僅かに小径に構築された嵌合穴21dへとある程度の力をもって押し込まれることで、きつめの嵌合結合が構築される。
【0045】
結合構造の更に他の例は、図5(e)または図5(f)に一例を示すように、「スナップフィット」でもよい。スナップフィットとは、金属やプラスチックなどの結合に用いられる機械的接合法の一種で、材料の弾性を利用してはめ込むことにより固定する方式のことをいう。本体側結合手段18e、18fにおける複数の内向ツメ19e、19fが、ポート側結合手段21e(筒状出張部21e)またはポート側結合手段21f(球体21f)にはめ込まれる。
【0046】
図5(h)はスナップフィットの他の例を示す。図5(h)に示すように、本体側結合手段18hは弾性ピン19hを持つ。弾性ピン19hは、金属その他の弾性材料からなる弾性リング体である。心壁ポート20hのポート側結合手段21hは、弾性ピン19hの幅よりも狭い入口を持つ狭口径穴部21hである。弾性ピン19hを狭口径穴部21hに弾性変形を利用して挿し込む。これにより両者を結合させてもよい。弾性ピン19hは円形リングに限らず多角形リング、例えばひし形リングなどでもよい。
【0047】
図1図5(a)~(f)の結合構造におけるオス/メスの割り当ては任意である。ポート側結合手段21がオス構造であり本体側結合手段18がメス構造であってもよく、或いはその逆でもよい。オス構造は、凸部、突部、外向ツメあるいはプラグを含む。メス構造は、凹部、窪み、内向ツメあるいはジャックを含む。
【0048】
実施の形態において、いくつかの構造では、結合手段に「位置ズレ許容機能」が付与されている。位置ズレは、角度ズレと中心ズレとのうち少なくとも一方を含む。心臓内での結合作業中に、ポート側結合手段21の中心軸線に対して本体側結合手段18の中心軸線が傾くことや(角度ズレ)、各々の中心軸線が一致しないこと(中心ズレ)がありうる。この点に関し、実施の形態のいくつかの構造では、オス側結合手段の先端部が、丸みを帯びた形状または先細りテーパを帯びた形状に構築される。
【0049】
具体的には、上述したいくつかの構造(図1~4、図5(a)、(f)、(g))では、ポート側結合手段21と本体側結合手段18とのうち一方が球体のオス側結合手段とされ、他方が凹部または内向ツメを持つメス側結合手段とされている。球体のオス側結合手段は、結合時にある程度の角度ズレや位置ズレが生じても球体の丸みによってそれらを許容できるので、メス側結合手段と結合しやすい利点がある。結合させるときの許容範囲がひろがるので、心臓内での心臓インプラント1と心壁ポート20との結合作業が容易になる利点がある。
【0050】
同様の位置ズレ許容機能を発揮する変形例として、オス側結合手段は、球体に限らず、半球体でもよく球体をその中心を通らない任意の位置でカットした曲面体でもよく、錐体でもよい。「球体」は真球体と楕円球体とを含み、「半球体」は半真球体と半楕円球体とを含む。錐体は、円錐状(いわゆるキノコ状)または角錐状であって、頭頂点が丸みを帯びたものでもよい。
【0051】
位置ズレ許容機能は、図5(h)で例示したような構造でも発揮される。図5(h)において結合中心軸線CLをZ軸とした球座標系を考えると、角度θの角度許容度が発揮されるとともに、結合中心軸線CLまわりの回転座標Φでも角度ズレ許容機能が発揮されることがわかる。弾性ピン19hの端部に丸みや先細りテーパをもたせることで、位置ズレ許容機能も付与される。
【0052】
位置ズレ許容機能を発揮するうえで、上記各構造の「丸み」は、なめらかな曲線や曲面に限定されず、多数の直線や平面を連結させた近似曲線または近似曲面でもよい。これらの形状でも、ある程度の位置ずれ許容機能が得られる利点がある。
【0053】
結合構造の更に他の例は、図示しないが、本体側結合手段18~18h等の先端部19~19h等に電気抵抗体を内蔵させ、先端部19~19h等を熱軟化材料(熱可塑性脂等でもよく、生体組織材料等でもよい)で構築し、この電気抵抗体に通じる電線を設け、この電線にカテーテルに設けた電極で通電することにより電気抵抗体を発熱させ、この熱を使って溶着を得る結合構造であってもよい。電気抵抗体の発熱によってその周囲に設けた材料(熱可塑性脂等でもよく、生体組織材料等でもよい)を溶かして溶着結合を得てもよい。このような熱溶着の場合には、先端部は単なる平面とされてもよい。
【0054】
上記列挙した結合構造のいくつかにおいて、心臓稼働時の安定結合を満足する限りにおいて、ポート側結合手段21と本体側結合手段18とが、可逆的に着脱できる着脱自在な結合構造とされてもよい。心臓インプラント1を心壁ポート20から取り外して、新たな心臓インプラント1に交換したい場合に、心壁ポート20を流用できる利点がある。
【0055】
心壁ポート20の具体的な形状・構造に限定はない。心壁ポート20の形状は、微小筒状に限定されず、例えば平面体、球体、楕円球体、任意断面の筒、あるいは屈曲棒体などの形状でもよい。線状部材でもよく、渦巻線状部材などでもよい。カテーテルアプローチにおける、収納性や取扱性などを重視して設計されてもよい。
【0056】
図5(g)に、変形例の一つである結合誘導手段30を示す。心臓インプラントアッセンブリ100~103それぞれにおいて、心壁ポート20が、カテーテルアプローチの最中に互いの結合を誘導するための結合誘導手段30を含んでもよい。結合誘導手段30が、光信号、電磁波、あるいは音波などの任意信号を発信する位置発信手段を含んでもよい。
【0057】
自動追尾手段が、心臓インプラントアッセンブリ100~103それぞれとカテーテル装置との協働で実現されてもよい。カテーテル装置が、カテーテルと、カテーテルを手動または自動で変位させる制御機構と、結合誘導手段30の発する任意信号をセンサで受信するポート位置検知部と、ポート位置検知部で検知した位置情報に基づいてカテーテル動作を制御するカテーテル制御部と、を備えてもよい。カテーテル動作は、心臓インプラント1を適切な合体位置に導くためにカテーテルを変位させる任意の動作を含み、例えば進退、回転、揺動あるいはそれらの組み合わせを含む。
【0058】
図6は、他の変形例にかかる本体側結合手段18i1、18i2と、他の変形例にかかるポート側結合手段21iおよびこれを持つ心壁ポート20iとを示す図である。結合構造の一例は、図6に示すように、リング状のポート側結合手段21iと、そのリングに結合するフック構造の本体側結合手段18i1、18i2との組み合わせでもよい。本開示の「フック構造」は、例えば屈曲または円弧状湾曲した引掛けフックでもよく、スプリングフックでもよく、あるいはピンフック(ピンを屈曲させてつくった閉ループ体であって、ピン端部に力を加えるとその閉ループ体の一部が開くように構築したもの)でもよい。図6(a)の本体側結合手段18i1は、先端部19i1を備える。先端部19i1は、一例としてスプリングフック19i1である。スプリングフック19i1をポート側結合手段21iに当接させると、スプリングフック19i1の一端が内側へ押し込まれることで、ポート側結合手段21iの内側に本体側結合手段18i1を入り込ませることができる。図6(b)の本体側結合手段18i2は、先端部19i2を備える。先端部19i2は、一例として引掛けフック19i2である。引掛けフック19i2は、一例として円弧状湾曲して根元に受け入れ用の間隙を持つ。引掛けフック19i2をポート側結合手段21iに引っ掛けることで、結合を得ることができる。変形例として、ポート側結合手段21iと本体側結合手段18i1、18i2とで構造を逆転(交換)してもよく、この場合には、ポート側結合手段21iがフック構造となり、本体側結合手段18i1、18i2がリングとなってもよい。変形例として、ポート側結合手段21iと本体側結合手段18i1、18i2とを両方ともフック構造としてもよい。
【0059】
図7は、変形例にかかる心壁ポート20jを示す図である。心壁ポート20jは、図8で追加的に例示するように、フランジ状の心壁アンカー22jを備える。心壁アンカー22jの上面部22j1が心臓の外表面(心外壁)に結合する。心臓の内外を貫通する貫通軸22jsを介してポート側結合手段21が心腔内に露出配置される。このように、本開示における心壁アンカーは任意の構造を採用でき、本変形例の心壁アンカー22jのように心臓の外表面(心外壁)に結合させる結合方法でもよく、実施の形態で例示した心壁アンカー22のごとく心腔内壁に結合させる結合方法でもよい。心壁ポート20jを用いる場合も、ポート側結合手段21およびこれと結合する側の本体側結合手段18の構造は、前述した図1図6の各結合構成の中から任意に選択してもよい。
【0060】
心壁アンカー22、22jは例示であり、本開示の心壁アンカーの構造に限定はない。上記実施の形態およびその変形例にかかる心壁ポート20に、下記列挙する任意の一つの心壁アンカー構造を適用してもよい。心壁アンカー22は、一本あるいは複数本の針状体でもよく、これが心臓の結合対象部位に突き刺さることでアンカリングが実現されてもよい。心壁アンカー22は、対象部位に係合する棘状体でもよく、これが心臓の結合対象部位に噛み込むことでアンカリングが実現されてもよい。
【0061】
心臓インプラント1および心壁ポート20それぞれの材質に限定はない。上記実施の形態およびその変形例にかかる心臓インプラント1および心壁ポート20に、下記列挙する材質を任意に使用してもよい。使用材質は、例えば、金属、ゴム、合成樹脂、天然樹脂、セラミックス、および生体組織材料その他の公知の材質であってもよい。心臓内に設ける各種インプラントの材質として公知の材質、好ましくは使用実績の高い材質を、任意に選択することができる。剛性材料でもよいが、柔軟性材料、弾性材料、あるいは塑性材料など任意の材料を用いてもよい。本体側結合手段18とポート側結合手段21とのそれぞれに対して、その結合構造に必要な物性を持つ材料を適宜に選択してもよい。本体側結合手段18とポート側結合手段21とのうち、一方を相対的に高い剛性の材料とし、他方を相対的に剛性の低い(つまり柔軟性の高い)材料としてもよい。なお、超音波エコーで位置確認がしやすい材質または形状で、心壁ポート20~20jが構築されてもよい。
【0062】
一つの心壁ポート20と一つの心臓インプラント1それぞれとが一対一で合体させられてもよいが、本開示はこれに限定されない。心臓インプラント1それぞれは、複数の本体側結合手段18を備えてもよく、これにより複数の心壁ポート20と合体させてもよい。
【0063】
図8は、変形例にかかる心壁ポート20kを示す図であって、心壁ポート20kが複数の心臓インプラント1を受け入れ可能な様子を示す図である。一つの心壁ポート20kが複数のポート側結合手段21kを備えてもよく、これにより一つの心壁ポート20kと複数の心臓インプラント1とを合体させてもよい。一例として、図8(a)では、3つの心臓インプラント1が、それぞれ一本の人工腱索を持つインプラント本体1a3である場合を例示する。心壁ポート20kは3つのポート側結合手段21kを持ち、ポート側結合手段21kそれぞれは一例として球状凹部である。この場合に、図示しないカテーテルを用いて、各々の心臓インプラント1の球頭部19がポート側結合手段21kそれぞれに挿入される。他の例として、図8(b)では、種類の異なる複数の心臓インプラント1が、心壁ポート20kと合体する。一例として、種類の異なる複数の心臓インプラント1のうち、一つの心臓インプラント1は一本の人工腱索を持つインプラント本体1a3を持ち、他の一つの心臓インプラント1は人工心臓弁1a2を持つ。なお、図8の変形例では複数のポート側結合手段21kが一例として球状凹部とされているが、本開示はこれに限定されるものではない。ポート側結合手段21kの形状構造は様々に変形可能であり、図5図6で例示した複数種類の結合構造から任意の一つを適用してもよい。各々のポート側結合手段21kおよびこれと結合する本体側結合手段18の構造は、前述した図1図6の各結合構成の中から任意に選択してもよい。
【0064】
変形例として、心壁ポート20kが持つ各々のポート側結合手段の構造が互いに異なってもよい。複数のポート側結合手段のうち、第一のポート側結合手段がポート側結合手段21a~21kのうち特定の一つの構造であり、第二のポート側結合手段がポート側結合手段21a~21kのうち他の構造であってもよい。また、心壁ポート20kに設ける複数のポート側結合手段が、いずれもポート側結合手段21a~21kのなかの同種の構造ではあるものの、その大きさ(サイズ)が相違してもよい。例えば、心壁ポート20kに設けたポート側結合手段21kはいずれも球状凹部であるが、各々の開口径や深さに違いがあってもよい。
【0065】
人工腱索であるインプラント本体1a3の変形例として、複数の紐状体1a31が任意の位置で束ねられ、各々の第一先端が係止片1a32に連結し、その反対側で各々の第二他端それぞれに複数の本体側結合手段18が設けられてもよい。
【0066】
なお、実施の形態にかかる心臓インプラントアッセンブリ103等(図3図8参照)は、インプラント本体1aを人工腱索とした構造例である。この心臓インプラントアッセンブリ103は、それ単独でも新規な技術(カテーテルアプローチによる低侵襲な人工腱索埋込技術)を提供するものであり、格別の利点を提供することができる。心臓インプラントアッセンブリ103は、必ずしも複数種類の心臓インプラントとともにラインナップされていなくともよく、そのような技術的思想とは独立して単独で実施されてもよい。
【0067】
変形例として、心臓インプラント1と心壁ポート20とのうち少なくとも一方が薬剤溶出構造を持ってもよい。公知の各種の薬剤溶出構造(ドラッグイルーティング構造)を適用してもよく、その具体的構造に限定はない。一例として表面コーティング構造で薬剤を溶出させてもよい。心臓インプラント1と心壁ポート20との両方が薬剤溶出機能を持つ場合、心臓インプラント1および心壁ポート20の各々が、異なる薬剤を溶出するように構築されてもよい。異なる薬剤が心臓内で混合することで一定の機能を発揮するように構築されてもよい。基本形状が同じ心臓インプラント1であっても異なる薬剤を溶出させる複数の心臓インプラント1がラインナップされてもよい。
【0068】
心臓インプラントアッセンブリ100~103は右心室に設けられもよい。つまり「右心室インプラントアッセンブリ」が提供されてもよい。この場合、肺機能を治療するための薬剤溶出構造が、心臓インプラント1および心壁ポート20の少なくとも一方に設けられてもよい。肺機能治療のための薬剤は、例えば、血管拡張薬、抗線維化薬、抗炎症薬、あるいは幹細胞薬などでもよい。右心室に心臓インプラントアッセンブリ100~103を設ける際に、これと併せて肺治療用の薬剤を溶出させることで、極めて効果的且つ効率的な治療が可能となる。三尖弁治療の一環として理にかなうという利点がある。
【0069】
なお、心臓インプラントアッセンブリ100~103に上記薬剤溶出技術を適用する技術的思想は、必ずしも複数種類の心臓インプラントをラインナップする技術的思想と併用されなくともよく、これとは独立して単独で実施されてもよい。
【0070】
心壁ポート20が単体で流通、販売されてもよい。互いに異なる仕様の複数の心臓インプラント1それぞれが単体で流通、販売されてもよい。これらを互いに結合させるインタフェース仕様が統一されていれば、実施の形態の使用方法を実現できるからである。なお、実施の形態では心臓インプラントアッセンブリ100~103を用いた低侵襲埋込方法が図2および図4を用いて説明されたが、この方法が「心臓インプラント埋込方法」として提供されてもよい。
【0071】
以上説明した実施の形態および各種変形例によれば、個別部品として心臓に留置される心壁ポート20、20a~20kが、任意のタイミングで、様々な心臓インプラント1を受け入れることができる。これにより、高い利便性を持つ新規なアプローチの低侵襲埋込技術が提供される。
【0072】
すなわち、心壁ポート20、20a~20kが高い利便性を提供することで、これまでにない新規なアプローチでインプラント埋込を実施できる。一例として、開胸術あるいは開心術による手術時に付随的に留置しておいてもよい。留置した心壁ポート20、20a~20kを利用すれば、再発時にカテーテルで容易に追加手術ができるという利点がある。術後の再発の可能性を考慮して、事後的に任意の心臓インプラント1を追加しやすくできるので、これにより追加治療が容易となる利点がある。他の例として、カテーテル手術のときに心壁ポート20、20a~20kを入れておいてもよく、新たな病変が見つかったときに追加手術に利用できる利点を活用してもよい。あるいは、他の例として、一回のカテーテル手術で心壁ポート20、20a~20kと心臓インプラント1とを心腔内で合体させてもよく、これにより低侵襲埋込手術を実施してもよい。
【0073】
また、実施の形態の変形例において、心壁ポート20kが複数のポート側結合手段21kを備え、複数のポート側結合手段21kの各々を心腔内に露出させる。これにより、術後に再発の可能性があるとしても、事後的に、複数のポート側結合手段21kで任意の個数の心臓インプラントを追加しやすい利点がある。
【0074】
また、上記変形例の心壁ポート20kにおいて、各々のポート側結合手段21kの構造を互いに異ならしめることで、次の利点も得られる。構造の異なる複数のポート側結合手段を設ければ、心壁ポート20kで受け入れる心臓インプラント1の形状バリエーションを拡張しやすい利点がある。心臓インプラント1の本体側結合手段18、18a~18h、18i1、18i2のバリエーション化がしやすい利点や、様々な形状の心臓インプラント1の受け入れが可能という利点もある。
【0075】
また、実施の形態および各種変形例によれば、図1図3とに例示されるように、互いに異なる仕様の複数の心臓インプラント1を製品ラインナップとして提供できる。その製品ラインナップのなかから、ユーザが任意の心臓インプラント1を選択できる仕組みを提供することができる。この仕組みによって、「マルチポート型心臓インプラントシステム」という新規な低侵襲埋込技術が提供される利点がある。
【0076】
上記の仕組みにおいては、心臓インプラントアッセンブリ100~103それぞれは、心壁ポート20と、複数の心臓インプラント1から任意に選択され心壁ポート20に結合されるべき任意の一つの心臓インプラントと、を備える。このため、複数の心臓インプラント1の各々が、インプラント本体1a、1a1~1a3のいずれか1つと、本体側結合手段18と、を有している。各々のインプラント本体1a、1a1~1a3が互いに異なる仕様を持つとともに、各々の本体側結合手段18が一つの心壁ポート20のポート側結合手段21に対して結合自在に構築される。心壁ポート20が、共通ポート(いわばマルチポート)として用いられるので、共通の埋込作業工程によって、多種多様な心臓インプラント1を簡単に設置することができる。これにより、多種多様なニーズを共通の埋込作業によって満たすことができ、利便性および自由度が向上する。
【0077】
同一の基本形状でも異なる仕様を持つ複数の心臓インプラント1が製品ラインナップとして提供されてもよい。「異なる仕様」とは、例えば、形状と構造と大きさと材質とコーティングと機能とのうち少なくとも一つを互いに相違させたものを含む。例えば、人工心臓弁葉であるインプラント本体1a、1a1、1a2それぞれにおいて、外形形状と面内構造(穴やスリットの有無など)と弁膜厚さと材質と寸法(外形寸法や各部寸法)とのうち少なくとも一つを互いに相違させた複数の仕様がラインナップされてもよい。例えば、人工腱索であるインプラント本体1a3において、人工腱索の太さと本数と材質と長さとのうち少なくとも一つを互いに相違させた複数の仕様の製品がラインナップされてもよい。ラインナップされた複数の心臓インプラント1それぞれの本体側結合手段18は、心壁ポート20のポート側結合手段21と共通に接続される。ポート側結合手段21はいわば共通インタフェースである。
【0078】
実施の形態の変形例(図8参照)で、複数のポート側結合手段21kを備える心壁ポート20kが例示されている。この変形例では、心壁ポート20kに対してどのような心臓インプラント1を合体させるかについて、更にいくつかのバリエーションが提供されうる。一例として、心壁ポート20kに対して合体させるべき複数の心臓インプラント1の各々が、人工腱索としての機能を持ってもよい。人工腱索としての機能を持つ心臓インプラント1は、図3(c)の心臓インプラント1(複数の紐状体1a31を持つインプラント本体1a3)でもよく、図8(a)の心臓インプラント1(一本の紐状体からなるインプラント本体1a3)でもよい。
【0079】
あるいは、他の例として、心壁ポート20kに対して合体させるべき複数の心臓インプラント1の各々が人工心臓弁であってもよい。各々の人工心臓弁は、例えばインプラント本体1a、1a1~1a2から任意に選択されてもよい。
【0080】
更に他の例として、心壁ポート20kに対して合体させるべき複数の心臓インプラント1は、互いに機能が異なるものでもよい。例えば図8(b)のように第一の心臓インプラント1のインプラント本体1a3が人工腱索としての機能を持ち、第二の心臓インプラント1のインプラント本体1a2が人工心臓弁であってもよい。なお、人工腱索および人工心臓弁とは機能や構造が異なる「更に他の心臓インプラント」が少なくとも一つ提供されてもよい。この「更に他の心臓インプラント」が、本体側結合手段18、18a~18h、18i1、18i2を備えた形態で提供されるとともに、本開示の心壁ポート20、20a~20kに合体させられてもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 心臓インプラント、1a、1a1~1a2 インプラント本体(人工心臓弁)、1a3 インプラント本体(人工腱索)、1a31 紐状体、1a32 弁接続手段(係止片)、2 弁葉固定部(半円リング)、3 弁葉固定部(リング)、4 弁葉、5 第一弁葉、7 第二弁葉、11 上部接続部、13 係止部(鉤)、18、18a~18h、18i1、18i2 本体側結合手段、19 先端部(球頭部)、19a 先端部(球状凹部)、19b 先端部(雄ねじ部)、19c 先端部(圧入ピン)、19d 先端部(嵌合ピン)、19e、19f 先端部(内向ツメ)、19h 先端部(弾性ピン)、19i1 先端部(スプリングフック)、19i2 先端部(引掛けフック)、20、20a~20k 心壁ポート、21、21k ポート側結合手段(球状凹部)、21a ポート側結合手段(球頭部)、21b ポート側結合手段(雌ねじ部)、21b1 テーパ面、21c ポート側結合手段(受手側ピン穴)、21d ポート側結合手段(嵌合穴)、21e ポート側結合手段(筒状出張部)、21f ポート側結合手段(球体)、21h ポート側結合手段(狭口径穴部)、21i ポート側結合手段(リング)、22、22j 心壁アンカー、22j1 上面部、30 結合誘導手段、53 左室心尖部、61 シース(収容部)、71 紐状構造物、100~103 心臓インプラントアッセンブリ、CL 結合中心軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8