(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154257
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】鋳造金型
(51)【国際特許分類】
B22D 17/22 20060101AFI20221005BHJP
B22D 17/14 20060101ALI20221005BHJP
B22C 9/06 20060101ALI20221005BHJP
B22D 43/00 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
B22D17/22 C
B22D17/14
B22D17/22 G
B22D17/22 H
B22C9/06 P
B22C9/06 C
B22C9/06 A
B22D43/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057185
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】木村 哲
(72)【発明者】
【氏名】結城 研二
(72)【発明者】
【氏名】大西 亮
(72)【発明者】
【氏名】川内 伸郎
(72)【発明者】
【氏名】風間 岳
【テーマコード(参考)】
4E093
【Fターム(参考)】
4E093NA01
4E093NB01
4E093NB03
(57)【要約】
【課題】金型本体に対して中子を進退すること無く、中子の溝の奥をエアブロー可能な鋳造金型を提供する。
【解決手段】鋳造金型12は、第1金型14と、第1金型との間に鋳造品を作成するためのキャビティ部18を形成する第2金型16と、を備え、第2金型は、第2金型本体42と、第2金型本体から第1金型に向かう第1方向A1に突出し、鋳造品に空洞部を形成するための中子52と、を有し、中子には、第1方向に開口すると共に第1方向と逆方向の第2方向A2に凹む溝部Dが設けられており、第2金型には、溝部の底部D1に向けてブロー用エアを供給するためのエア供給流路60が設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1金型と、
前記第1金型に対して相対的に近接および離間可能であり、前記第1金型との間に鋳造品を作成するためのキャビティ部を形成する第2金型と、を備え、
前記第2金型は、第2金型本体と、前記第2金型本体から前記第1金型に向かう第1方向に突出し、前記鋳造品に空洞部を形成するための中子と、を有し、
前記中子には、前記第1方向に開口すると共に前記第1方向と逆方向の第2方向に凹む溝部が設けられており、
前記第2金型には、前記溝部の底部に向けてブロー用エアを供給するためのエア供給流路が設けられている、鋳造金型。
【請求項2】
請求項1記載の鋳造金型において、
前記中子は、第1中子と、前記第1中子の外周面の少なくとも一部を覆って前記第1中子との間に前記溝部を形成する第2中子と、を有し、
前記第2金型本体は、前記第1中子が挿通された中子用貫通孔を有し、
前記エア供給流路は、前記中子用貫通孔の内周面と前記第1中子の外周面との間に形成され前記溝部の前記底部と連通するエア導入路を有する、鋳造金型。
【請求項3】
請求項1または2記載の鋳造金型において、
前記鋳造金型は、前記キャビティ部から前記鋳造品を押し出すための押し出しピンを備え、
前記第2金型には、
前記キャビティ部に連通し、前記押し出しピンが挿通されたピン用挿通孔と、
前記ピン用挿通孔に連通し、前記ピン用挿通孔を介して前記キャビティ部を真空引きするための裏引き吸引路と、が設けられ、
前記裏引き吸引路の一部が前記エア供給流路の一部を兼ねている、鋳造金型。
【請求項4】
請求項1記載の鋳造金型において、
前記中子は、第1中子と、前記第1中子の外周面の少なくとも一部を覆って前記第1中子との間に前記溝部を形成する第2中子と、を有し、
前記第2金型本体は、前記第1中子が挿通された中子用貫通孔を有し、
前記エア供給流路は、前記中子用貫通孔の内周面と前記第1中子の外周面との間に形成され前記溝部の前記底部と連通するエア導入路を有し、
前記鋳造金型は、前記キャビティ部から前記鋳造品を押し出すための押し出しピンを備え、
前記第2金型には、
前記キャビティ部に連通し、前記押し出しピンが挿通されたピン用挿通孔と、
前記ピン用挿通孔に連通し、前記ピン用挿通孔を介して前記キャビティ部を真空引きするための裏引き吸引路と、が設けられ、
前記第2金型本体は、前記第1金型に対向する第1面と、前記第1面と反対側の第2面とを有し、
前記第2面に、前記エア供給流路と前記裏引き吸引路とを兼ねる共有流路と、前記共有流路から分岐すると共に前記エア導入路に連通するエア供給用分岐流路と、前記共有流路から分岐すると共に前記ピン用挿通孔に連通する吸引用分岐流路と、が設けられている、鋳造金型。
【請求項5】
請求項2または4記載の鋳造金型において、
前記第2金型は、前記第1中子を前記第2金型本体に固定するためのボルトを備え、
前記第2金型には、前記ボルトの頭部が収容される凹部が形成されており、
前記ボルトの前記頭部の外周面と前記凹部の内周面との間が、前記エア供給流路の一部を構成している、鋳造金型。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の鋳造金型において、
前記中子は、第1中子と、前記第1中子の外周面の少なくとも一部を覆って前記第1中子との間に前記溝部を形成する第2中子と、を有し、
前記鋳造品は、エンジンのシリンダブロックであり、
前記第1中子は、前記シリンダブロック内にシリンダボアを形成するためのボア形成用中子であり、
前記第2中子は、前記シリンダボアの外側に前記シリンダボアに沿って設けられるウォータジャケットを形成するためのジャケット形成用中子である、鋳造金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造品に空洞を形成するための中子を有する鋳造金型に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳造金型のキャビティ内に中子を突出させて、鋳造品に空洞を形成することがある。ここで、固化した溶湯のバリが中子に付着すると、その後の鋳造において、鋳造品がバリを巻き込み、鋳造品が不良となるおそれがある。このため、次の鋳造の前に、エアブロー等を行って、中子に付着したバリが除去される。しかし、中子が溝を有することがある。例えば、複数の中子が近接して配置されると、その間に狭い隙間(溝)が形成される。溝の奥にはエアが入り難いことから、溝、特に、その奥に付着したバリをエアブローによって除去することは容易ではない。
【0003】
特許文献1は、キヤビテイ内に突出する成形ピンが、金型本体に対して、移動可能とすることによって、成形ピンの外周と金型本体との間のエアブローを容易とする技術を開示する。成形ピンは、成形位置たる後退位置と、これよりもキヤビテイ内方へ突出した前進位置との間で移動し、前進位置において、エアブローされる。しかし、この技術では、成形ピンを前後に進退させるための機構が必要となり、鋳造金型の構成が複雑となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、金型本体に対して中子を進退すること無く、中子の溝の奥をエアブロー可能な鋳造金型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る鋳造金型は、第1金型と、前記第1金型に対して相対的に近接および離間可能であり、前記第1金型との間に鋳造品を作成するためのキャビティ部を形成する第2金型と、を備え、前記第2金型は、第2金型本体と、前記第2金型本体から前記第1金型に向かう第1方向に突出し、前記鋳造品に空洞部を形成するための中子と、を有し、前記中子には、前記第1方向に開口すると共に前記第1方向と逆方向の第2方向に凹む溝部が設けられており、前記第2金型には、前記溝部の底部に向けてブロー用エアを供給するためのエア供給流路が設けられている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、金型本体に対して中子を進退すること無く、中子の溝の奥をエアブロー可能な鋳造金型を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】鋳造金型の可動金型本体を拡大して表す図である。
【
図3】可動金型本体のキャビティ部側を表す図である。
【
図4】可動金型本体のキャビティ部と反対側を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係る鋳造装置10および鋳造金型12を説明する。
【0010】
図1に示す鋳造装置10は、鋳造金型12を備える。鋳造金型12は、図の左右方向(水平方向)に互いに対向して配置される固定金型14と可動金型16を有する。可動金型16は、固定金型14に対して、相対的に近接および離間可能に水平方向に移動する。固定金型14と可動金型16の互いに対向する合わせ面には、キャビティ部18を構成する凹部18a、18bがそれぞれ形成される。固定金型14に可動金型16を当接させることで、鋳造金型12は閉じられ、鋳造金型12の内部にキャビティ部18が形成される。
【0011】
鋳造金型12には、溶湯供給部20が接続されている。溶湯供給部20は、固定金型14側に設けられ、キャビティ部18内に溶湯を供給する。キャビティ部18に供給された溶湯は、キャビティ部18の内部で固化し、固化した溶湯は、鋳造品として、鋳造金型12から取り出される。
【0012】
鋳造金型12は、キャビティ部18から鋳造品を押し出すための押し出しピン22および押し出しプレート24を備える。可動金型16には、キャビティ部18と可動金型16の外部とを連通させるピン用挿通孔26が形成されている。押し出しピン22は、ピン用挿通孔26に挿通されている。押し出しピン22の一端は、押し出しプレート24に連結されている。押し出しプレート24を固定金型14に向かって押すことで、押し出しピン22の他端がキャビティ部18内に挿入され、キャビティ部18からの鋳造品の取り出しが容易となる。
【0013】
鋳造金型12は、遮断弁32、および吸引路34を有する。遮断弁32は、キャビティ部18と吸引路34の間に設けられ、吸引路34を遮断して、キャビティ部18から吸引路34への溶湯の侵入を防止する。
【0014】
吸引路34は、切替バルブ36を介して、真空引き部38に接続される。真空引き部38は、吸引路34を介して、キャビティ部18内を真空引きする。切替バルブ36には、真空引き部38と共に、エア供給部40が接続される。エア供給部40は、切替バルブ36、吸引路34を介して、開かれた状態の鋳造金型12内にブロー用のエアを流し(エアブロー)吸引路34、遮断弁32等をクリーニングする。切替バルブ36は、吸引路34に対する真空引き部38およびエア供給部40の接続を切り替える。
【0015】
以下、可動金型16の詳細を説明する。
図1に示すように、可動金型16は、可動金型本体42、支持部材44、および中子46を有する。可動金型16から固定金型14に向かう方向を第1方向A1、第1方向A1と逆の方向を第2方向A2とする。
【0016】
支持部材44は、ボルト等によって、可動金型本体42に固定され、可動金型本体42を支持する。支持部材44の内部に、ピン用挿通孔26と連通する内部空間48と、内部空間48と切替バルブ36とを接続する吸引路50と、が形成される。真空引き部38は、吸引路50および内部空間48を介して、ピン用挿通孔26内、さらにはキャビティ部18内を真空引きする。また、エア供給部40は、吸引路50および内部空間48を介して、ピン用挿通孔26内、さらにはキャビティ部18内にブロー用のエアを供給する。内部空間48より外部側のピン用挿通孔26には、筒状の封止材C1、例えば、ブッシュが挿入される。封止材C1は、支持部材44の外部側からキャビティ部18内への、ピン用挿通孔26を介する大気の流入を妨げる。
【0017】
図2は、鋳造金型12の可動金型本体42を拡大して表す図である。
図3は、可動金型本体42のキャビティ部18側を表す図である。
図4は、可動金型本体42のキャビティ部18と反対側を表す図である。以下、基本的には、
図2に基づいて、可動金型本体42および中子46の詳細を説明する。
【0018】
可動金型本体42は、固定金型14に対向する第1面42aと、第1面42aと反対側の第2面42bとを有する。可動金型本体42の第2面42bには、キャビティ部18と第2面42b側との間を連通させる中子用貫通孔42cが形成される。
【0019】
中子46は、第1方向A1に突出し、鋳造品(例えば、エンジンのシリンダブロック)に空洞部を形成するためのものであり、第1中子52と、第2中子54と、を有する。
【0020】
第1中子52は、例えば、シリンダブロック内にシリンダボアを形成するためのボア形成用中子であり、キャビティ部18側の頭部52a、キャビティ部18と反対側の底部52bを有する柱状をなす。中子用貫通孔42cの内周面と第1中子52の外周面との間には、隙間S0が形成される。隙間S0は、気体の通過を許容し、液体の通過を阻止する大きさの微小な空間である。従って、鋳造時に、キャビティ部18に導入された溶湯は、後述する溝部Dの底部D1までは流入(到達)するが、隙間S0には流入しない。
【0021】
第1中子52は、可動金型本体42の中子用貫通孔42cに挿通され、底部52bの端面が可動金型本体42の第2面42bから突出しないように(例えば、底部52bの端面が第2面42bと略面一となるように)、可動金型本体42に固定される。ここでは、第1中子52は、ボルトBによって、固定される。すなわち、第1中子52は、可動金型本体42に固定されたボルトBによって係止されることで、可動金型本体42から第2方向A2に抜けることが阻止されている。なお、第1中子52は、図示しない抜け止め部によって、可動金型本体42から第1方向A1に抜けることが阻止されている。ボルトBの頭部B1は、可動金型本体42と第1中子52に跨がって配置される。すなわち、中子用貫通孔42cの周縁において、可動金型16の第2面42bには、凹部R1が形成され、且つ、第1中子52の底部52bには、凹部R2が形成される。ボルトBの頭部B1は、可動金型本体42の第2面42bから突出しないように(例えば、ボルトBの頭部B1の端面が第2面42bと略面一となるように)、凹部R1および凹部R2内に収容される。なお、鋳造の前に、第1中子52の外周に、鋳造品に鋳込まれて鋳造品の耐摩耗性を向上するための筒状の耐摩耗性部材M(例えば、鉄製のスリーブ)が取り付けられてもよい。
【0022】
第2中子54は、例えば、ウォータジャケットを形成するためのジャケット形成用中子である。ウォータジャケットは、第1中子52によって形成されるシリンダボアの外側にシリンダボアに沿って設けられる。第2中子54は、第1中子52の外周に沿うように延在し、第1中子52を囲む形状を有する(
図3参照)。第2中子54は、第1中子52の外周面の少なくとも一部を覆って、第1中子52との間に溝部Dを形成する。溝部Dは、第1方向A1に開口すると共に第2方向A2に凹む。本実施形態では、溝部Dは、複数(ここでは、4つ)の第1中子52をそれぞれ囲む複数の筒が周方向に並んで連結された形状をなしている(
図3参照)。但し、溝部Dは、このように、第1中子52の回りを一周しなくともよく、第1中子52の外周面の少なくとも一部を囲んでいればよい。
【0023】
溝部Dは、底部D1を有する。底部D1よりも第2方向A2側において、第2中子54と第1中子52の外周面との間に、隙間D0が形成される。隙間D0は、溝部Dよりも狭く、隙間S0と同様、気体の通過を許容し、液体の通過を阻止する大きさの微小な空間である。従って、鋳造時に、キャビティ部18に導入された溶湯は、溝部Dの底部D1までは流入(到達)するが、隙間D0(さらには隙間S0)には流入しない。
【0024】
ここでは、第2中子54は、可動金型本体42のキャビティ部18側に取り付けられている。第2中子54は、複数のボルトBによって、第1中子52と共に、可動金型本体42に取り付けられている。第2中子54に設けられたねじ穴54a(雌ねじ)に、ボルトBの軸部B2(雄ねじ)が螺合している。ボルトBの軸部B2は、可動金型本体42に形成されたボルト挿通孔43に挿通されている。但し、第2中子54は、第1中子52と同様、可動金型本体42の第2面42b側に取り付けられてもよく、ボルトB以外の締結具によって、取り付けられてもよい。
【0025】
可動金型16には、溝部D(の底部D1)にブロー用のエアFを供給するための面上流路60が設けられる。
図4に示すように、面上流路60は、可動金型本体42の第2面42b上に形成され、周縁流路62、分岐流路64、連結流路66、および吸引路68を有する。また、可動金型16の内部に、吸引路68とピン用挿通孔26とを連通させる吸引路70が形成されている。
【0026】
周縁流路62は、第1中子52の底部52bの周囲に配置される。ここでは、周縁流路62は、複数(ここでは、4つ)の第1中子52の底部52bを囲むように一周するリング状の流路である。周縁流路62をリング状とすることで、周縁流路62内の圧力が均一化され、周縁流路62から供給されるエアFによる溝部D内のエアブローの均一性を向上することができる。但し、周縁流路62は、必ずしもリング状である必要はなく、第1中子52の底部52bの周囲に配置されればよい。
【0027】
分岐流路64は、支持部材44内の内部空間48に接続される一端と、周縁流路62に接続される他端とを有する。連結流路66の一端は、周縁流路62に接続される。連結流路66の他端は、中子用貫通孔42cの内周面と第1中子52の外周面との間に形成される隙間S0と連通する。すなわち、内部空間48から周縁流路62に流入したエアFは、周縁流路62および連結流路66を経由して、隙間S0に流入する。隙間S0は、隙間D0を介して、溝部D(の底部D1)と連通している(
図2参照)。従って、隙間S0および隙間D0は、連結流路66と溝部Dとを連通し、溝部D(の底部D1)にエアFを導入するエア導入路として機能する。
【0028】
ここで、
図4に示すように、ボルトBの頭部B1は、可動金型本体42と第1中子52に跨がって配置されている。
図5は、
図4の一部を拡大して表す図である。ここでは、
図5に示すように、可動金型16の第2面42b上の凹部R1の径をボルトBの頭部B1の径よりも大きくして、ボルトBの頭部B1の外周面と凹部R1の内周面との間に隙間S1を形成している。隙間S1は、隙間S0、および隙間D0を介して、溝部D(の底部D1)と周縁流路62とを連通する連結流路66の一部を構成する。これにより、ボルトBの頭部B1によってエアFの流れが阻害されることがなく、エアFを中子46の溝部Dへと好適に導くことができる。これに加えて、第1中子52の底部52bの端面上の凹部R2の径をボルトBの頭部B1の径よりも大きくして、ボルトBの頭部B1の外周面と凹部R2の内周面との間に隙間S2を形成して、連結流路66と隙間S0との間でのエアFの流れ易さをさらに向上してもよい。
【0029】
このように、エア供給部40からのエアFは、吸引路50を経由して、内部空間48に達し(
図1参照)、
図2に示すように、面上流路60(詳細には、
図4に示す分岐流路64、周縁流路62、および連結流路66)、隙間S0、および隙間D0を介して、溝部D内に供給される。溝部D内に供給されたエアFは、溝部D内を第1方向A1に向かって進み、溝部Dの開口からキャビティ部18内に吹き出し(エアブロー)、溝部D内、特に、溝部Dの底部D1に付着するバリを除去することができる。このように、分岐流路64、周縁流路62、および連結流路66は、溝部Dの底部D1に向けてブロー用のエアFを供給するためのエア供給流路として機能する。
【0030】
図4に示すように、吸引路68は、周縁流路62に接続される一端と、吸引路70を介して、ピン用挿通孔26に連通される他端と、を有する。ピン用挿通孔26はキャビティ部18に連通していることから(
図2参照)、吸引路68(面上流路60)の他端は、吸引路70およびピン用挿通孔26を介して、キャビティ部18と連通することになる。エア供給部40から内部空間48に達したエアFは、
図2に示すように、面上流路60(詳細には、
図4の分岐流路64、周縁流路62、および吸引路68)、吸引路70、およびピン用挿通孔26を介して、キャビティ部18内に吹き出す(エアブロー)。
【0031】
切替バルブ36の操作によって、エア供給部40に替えて、真空引き部38を吸引路50に接続した場合、エアFが供給されていた経路を介して、真空引きが行われる。すなわち、真空引き部38は、内部空間48、面上流路60(詳細には、分岐流路64、周縁流路62、および吸引路68)、吸引路70、およびピン用挿通孔26を介して、キャビティ部18内を真空引きできる。このように、分岐流路64、周縁流路62、および吸引路68は、ピン用挿通孔26を介してキャビティ部18内を真空引きするための裏引き吸引路として機能する。また、分岐流路64および周縁流路62、特に、周縁流路62は、裏引き吸引路以外に、既述のエア供給流路(分岐流路64、周縁流路62、および連結流路66)としても機能する、共有の流路(共有流路)である。
【0032】
以上のように、実施形態に係る鋳造金型12では、分岐流路64、周縁流路62、および連結流路66を介して、溝部D内をエアブローすることができる。ここで、溝部D内を効率的にエアブローするための条件を検討する。吸引路50から可動金型16内に流入するエアFの量をエア量Qとする。エア量Qは、キャビティ部18内に流入するエア量Qinとキャビティ部18外(可動金型16外)に流出するエア量Qoutに区分できる。さらにキャビティ部18内に流入するエア量Qinは、ピン用挿通孔26から流入するエア量Qin1と溝部Dから流入するエア量Qin2に区分される。
【0033】
キャビティ部18内にエアFを効率的に供給するためには、ピン用挿通孔26に封止材C1を挿入して、エア量Qoutを低減することが好ましい。この結果、キャビティ部18内に流入しないエア量Qoutが、ピン用挿通孔26からキャビティ部18に流入するエア量Qin1および溝部D内からキャビティ部18に流入するエア量Qin2のいずれをも上回らないようにすることができる(Qout≦Qin1、Qin2)。さらに、溝部D内のエアブローのためには、エア量Qin2は、エア量Qin1に対して、ある程度の大きさが確保されることが好ましい(例えば、Qin2/Qin1=0.4~1.0)。これは、面上流路60等のコンダクタンス(流路の幅、長さ等)を適宜に設定することで行える。
【0034】
〔実施形態から得られる発明〕
上記各実施形態から把握しうる発明について、以下に記載する。
【0035】
[1]鋳造金型(12)は、第1金型(固定金型14)と、前記第1金型に対して相対的に近接および離間可能であり、前記第1金型との間に鋳造品を作成するためのキャビティ部(18)を形成する第2金型(可動金型16)と、を備え、前記第2金型は、第2金型本体(可動金型本体42)と、前記第2金型本体から前記第1金型に向かう第1方向(A1)に突出し、前記鋳造品に空洞部を形成するための中子(46)と、を有し、前記中子には、前記第1方向に開口すると共に前記第1方向と逆方向の第2方向(A2)に凹む溝部(D)が設けられており、前記第2金型には、前記溝部の底部(D1)に向けてブロー用エアを供給するためのエア供給流路(面上流路60)が設けられている。これにより、エア供給流路から溝部の底部に向けてブロー用エアを供給することによって、中子の溝部を簡便、且つ確実にエアブローすることができる。
【0036】
[2]前記中子は、第1中子(52)と、前記第1中子の外周面の少なくとも一部を覆って前記第1中子との間に前記溝部を形成する第2中子(54)と、を有し、前記第2金型本体は、前記第1中子が挿通された中子用貫通孔(42c)を有し、前記エア供給流路は、前記中子用貫通孔の内周面と前記第1中子の外周面との間に形成され前記溝部の前記底部と連通するエア導入路(隙間S0)を有する。これにより、中子用貫通孔の内周面と第1中子の外周面との間に形成されるエア導入路を用いて、中子の溝部をエアブローすることができる。
【0037】
[3]前記鋳造金型は、前記キャビティ部から前記鋳造品を押し出すための押し出しピン(22)を備え、前記第2金型には、前記キャビティ部に連通し、前記押し出しピンが挿通されたピン用挿通孔(26)と、前記ピン用挿通孔に連通し、前記ピン用挿通孔を介して前記キャビティ部を真空引きするための裏引き吸引路(面上流路60)と、が設けられ、前記裏引き吸引路の一部(周縁流路62)が前記エア供給流路の一部を兼ねている。これにより、キャビティ部を真空引きするための裏引き吸引路の一部を用いて、中子の溝部をエアブローすることができる。
【0038】
[4]前記中子は、第1中子と、前記第1中子の外周面の少なくとも一部を覆って前記第1中子との間に前記溝部を形成する第2中子と、を有し、前記第2金型本体は、前記第1中子が挿通された中子用貫通孔を有し、前記エア供給流路は、前記中子用貫通孔の内周面と前記第1中子の外周面との間に形成され前記溝部の前記底部と連通するエア導入路(連結流路66)を有し、前記鋳造金型は、前記キャビティ部から前記鋳造品を押し出すための押し出しピン(22)を備え、前記第2金型には、前記キャビティ部に連通し、前記押し出しピンが挿通されたピン用挿通孔(26)と、前記ピン用挿通孔に連通し、前記ピン用挿通孔を介して前記キャビティ部を真空引きするための裏引き吸引路(面上流路60)と、が設けられ、前記第2金型本体は、前記第1金型に対向する第1面(42a)と、前記第1面と反対側の第2面(42b)とを有し、前記第2面に、前記エア供給流路と前記裏引き吸引路とを兼ねる共有流路(周縁流路62)と、前記共有流路から分岐すると共に前記エア導入路に連通するエア供給用分岐流路(連結流路66)と、前記共有流路から分岐すると共に前記ピン用挿通孔に連通する吸引用分岐流路(吸引路68)と、が設けられている。これにより、第2金型の第2面に形成された共有流路を中子の溝部のエアブローおよびキャビティ部の吸引の双方に用いることができる。
【0039】
[5]前記第2金型は、前記第1中子を前記第2金型本体に固定するためのボルト(B)を備え、前記第2金型には、前記ボルトの頭部(B1)が収容される凹部(R1)が形成されており、前記ボルトの前記頭部の外周面と前記凹部の内周面との間(隙間S1)が、前記エア供給流路の一部を構成している。これにより、第1中子を第2金型本体に固定するためのボルトが、ブロー用エアを供給する妨げとなることを回避できる。
【0040】
[6]前記中子は、第1中子と、前記第1中子の外周面の少なくとも一部を覆って前記第1中子との間に前記溝部を形成する第2中子と、を有し、前記鋳造品は、エンジンのシリンダブロックであり、前記第1中子は、前記シリンダブロック内にシリンダボアを形成するためのボア形成用中子であり、前記第2中子は、前記シリンダボアの外側に前記シリンダボアに沿って設けられるウォータジャケットを形成するためのジャケット形成用中子である。これにより、ボア形成用中子とジャケット形成用中子との間の溝部(隙間)をエアブローすることができる。
【符号の説明】
【0041】
10…鋳造装置 12…鋳造金型
14…固定金型 16…可動金型
18…キャビティ部 20…溶湯供給部
22…押し出しピン 26…ピン用挿通孔
34、50、68、70…吸引路 38…真空引き部
40…エア供給部 42…可動金型本体
42c…中子用貫通孔 44…支持部材
46…中子 48…内部空間
52…第1中子 52a…頭部
52b、D1…底部 54…第2中子
60…面上流路 62…周縁流路
64…分岐流路 66…連結流路
B…ボルト C1…封止材
D…溝部 D0、S0、S1、S2…隙間
R1、R2…凹部
【手続補正書】
【提出日】2021-09-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】