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特開2022-154299水処理カートリッジ及びシャワーヘッド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154299
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】水処理カートリッジ及びシャワーヘッド
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/70 20060101AFI20221005BHJP
   C02F 1/42 20060101ALI20221005BHJP
   C02F 1/28 20060101ALI20221005BHJP
   A47K 3/28 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
C02F1/70 Z
C02F1/42 A
C02F1/28 G
A47K3/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057256
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】504346204
【氏名又は名称】三菱ケミカル・クリンスイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】端谷 祐人
(72)【発明者】
【氏名】河合 由修
(72)【発明者】
【氏名】竹田 はつ美
【テーマコード(参考)】
2D132
4D025
4D050
4D624
【Fターム(参考)】
2D132FA12
2D132FC04
2D132FJ04
2D132FJ15
4D025AA01
4D025AB07
4D025BA09
4D025BA10
4D025BA17
4D025BA23
4D025BA24
4D025BB14
4D025BB15
4D025DA03
4D025DA10
4D050AA04
4D050AB45
4D050BA06
4D050BA12
4D050BD03
4D050CA06
4D050CA08
4D624AA02
4D624AB11
4D624BA02
4D624BB01
4D624BC01
4D624CA04
4D624CA13
4D624DB19
4D624DB22
(57)【要約】
【課題】浄化材の充填量を高めても通水量を確保して圧力損失を低減でき、浄化性能に優れた水処理カートリッジ及びシャワーヘッドを提供することを目的とする。
【解決手段】シャワーヘッド内に収納されるカートリッジ本体102内に筒状のスペーサー部材104が収納され、カートリッジ本体102内のスペーサー部材の内側が第1流路160、外側が第2流路162とされ、袋体108内に収納された状態で浄化材106が第1流路160に充填される水処理カートリッジ100において、スペーサー部材104は周壁部150に開口部156が形成され、周壁部150の外面150bから突出する複数の流路保持部152と、下流側に配置される端部に浄化材抑え部154が設けられている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャワーヘッド内に収納されるカートリッジ本体と、前記カートリッジ本体内に収納された筒状のスペーサー部材と、浄化材と、を備え、
前記カートリッジ本体内の前記スペーサー部材の内側が第1流路、外側が第2流路とされ、
前記浄化材は袋体内に収納された状態で前記スペーサー部材の内側の前記第1流路に充填され、
前記スペーサー部材の周壁部には開口部が形成され、
前記スペーサー部材は、前記周壁部の前記開口部以外の部分の外面から突出する複数の流路保持部と、前記周壁部の下流側に配置される端部に設けられ、前記浄化材の動きを抑える浄化材抑え部と、を備えている、水処理カートリッジ。
【請求項2】
前記複数の流路保持部のそれぞれが、柱状の凸部、又は凸条である、請求項1に記載の水処理カートリッジ。
【請求項3】
前記複数の流路保持部が前記周壁部の周方向に等間隔に配置されている、請求項1又は2に記載の水処理カートリッジ。
【請求項4】
前記周壁部の下流側に配置される端部から突出する前記浄化材抑え部が前記周壁部の周方向に互いに離間して設けられている、請求項1~3のいずれか一項に記載の水処理カートリッジ。
【請求項5】
前記周壁部に複数の前記開口部が前記周壁部の周方向及び中心軸方向に均等に形成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の水処理カートリッジ。
【請求項6】
前記周壁部の外面に占める前記開口部の開口率が40~70%である、請求項1~5のいずれか一項に記載の水処理カートリッジ。
【請求項7】
前記第2流路側から前記周壁部を見たときに前記袋体が少なくとも下流側に配置される前記開口部を覆っており、かつ前記開口部の開口面積の合計に対する前記開口部の前記袋体で覆われている面積の合計の割合が80%以上である、請求項1~6のいずれか一項に記載の水処理カートリッジ。
【請求項8】
前記スペーサー部材が円筒状又は八角筒状である、請求項1~7のいずれか一項に記載の水処理カートリッジ。
【請求項9】
前記カートリッジ本体の下流側に向けられる部分に複数の通水孔が形成されており、前記カートリッジ本体の下流側に向けられる部分の内面を前記スペーサー部材の中心軸方向から見たとき、すべての前記通水孔の開口面積の合計に対する、前記周壁部の内側に位置する前記通水孔の開口面積の合計の割合が4~25%である、請求項1~8のいずれか一項に記載の水処理カートリッジ。
【請求項10】
前記周壁部の内周に対する、前記袋体における前記周壁部の内面の周方向に沿う方向の外周の比率が1.0~1.1倍である、請求項1~9のいずれか一項に記載の水処理カートリッジ。
【請求項11】
前記浄化材が亜硫酸カルシウムを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の水処理カートリッジ。
【請求項12】
前記亜硫酸カルシウムは、粒度分布におけるピークトップ径が100~500μmであり、粒径1~1000μmの粒子の割合が粒子全体に対して90質量%以上であり、40Wの超音波を5分照射したときの粒度分布のピークトップの頻度が超音波照射前の頻度に対して70%以下であり、かつ比重が0.80~1.20g/mLである、請求項11に記載の水処理カートリッジ。
【請求項13】
前記袋体が不織布からなる、請求項1~12のいずれか一項に記載の水処理カートリッジ。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の水処理カートリッジが収納されたシャワーヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理カートリッジ及びシャワーヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
シャワーに供給される水道水には残留塩素が多く含まれているため、頻繁に頭髪や体を洗浄すると、変色や肌荒れが生じたりすることがある。解決策として、脱塩素機能を有する亜硫酸カルシウム等の浄化材が充填された水処理カートリッジを備えるシャワーヘッドが知られている。
【0003】
シャワーヘッドに収納した水処理カートリッジに水道水すべてが流入するようにすると、浄化材が圧密して通水困難になりやすい。そこで、シャワーヘッド内において水処理カートリッジの外側にバイパス流路が設けられたシャワーヘッドが知られている。しかし、カートリッジ外にバイパス流路を形成しようとすると、水処理カートリッジの外形が制限されてデザイン性が低下し、また専用のシャワーヘッドとなるため汎用性が低下する。この解決策として、カートリッジ本体内にスペーサー部材を収納し、スペーサー部材の内側に浄化材が充填された流路を形成し、スペーサー部材の外側にバイパス流路を形成することが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-130686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のような水処理カートリッジでは、浄化性能の向上や長寿命化のために浄化材の充填量を増やすと、圧力損失が上昇して浄化材を充填した流路に水が流れにくくなり、バイパス流路を流れる水量が増えて逆に浄化性能が低下することがある。また浄化材の充填量増加により、スペーサー部材の膨張や浄化材のはみ出しが生じてバイパス流路が閉塞され、通水量が落ちて破損が生じる虞もある。
【0006】
本発明は、浄化材の充填量を高めても通水量を確保して圧力損失を低減でき、浄化性能に優れた水処理カートリッジ及びシャワーヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]シャワーヘッド内に収納されるカートリッジ本体と、前記カートリッジ本体内に収納された筒状のスペーサー部材と、浄化材と、を備え、前記カートリッジ本体内の前記スペーサー部材の内側が第1流路、外側が第2流路とされ、前記浄化材は袋体内に収納された状態で前記スペーサー部材の内側の前記第1流路に充填され、前記スペーサー部材の周壁部には開口部が形成され、前記スペーサー部材は、前記周壁部の前記開口部以外の部分の外面から突出する複数の流路保持部と、前記周壁部の下流側に配置される端部に設けられ、前記浄化材の動きを抑える浄化材抑え部と、を備えている、水処理カートリッジ。
[2]前記複数の流路保持部のそれぞれが、柱状の凸部、又は凸条である、[1]に記載の水処理カートリッジ。
[3]前記複数の流路保持部が前記周壁部の周方向に等間隔に配置されている、[1]又は[2]に記載の水処理カートリッジ。
[4]前記周壁部の下流側に配置される端部から突出する前記浄化材抑え部が前記周壁部の周方向に互いに離間して設けられている、[1]~[3]のいずれかに記載の水処理カートリッジ。
[5]前記周壁部に複数の前記開口部が前記周壁部の周方向及び中心軸方向に均等に形成されている、[1]~[4]のいずれかに記載の水処理カートリッジ。
[6]前記周壁部の外面に占める前記開口部の開口率が40~70%である、[1]~[5]のいずれかに記載の水処理カートリッジ。
[7]前記第2流路側から前記周壁部を見たときに前記袋体が少なくとも下流側に配置される前記開口部を覆っており、かつ前記開口部の開口面積の合計に対する前記開口部の前記袋体で覆われている面積の合計の割合が80%以上である、[1]~[6]のいずれかに記載の水処理カートリッジ。
[8]前記周壁部が円筒状又は八角筒状である、[1]~[7]のいずれかに記載の水処理カートリッジ。
[9]前記カートリッジ本体の下流側に向けられる部分に複数の通水孔が形成されており、前記カートリッジ本体の下流側に向けられる部分の内面を前記スペーサー部材の中心軸方向から見たとき、すべての前記通水孔の開口面積の合計に対する、前記周壁部の内側に位置する前記通水孔の開口面積の合計の割合が4~25%である、[1]~[8]のいずれかに記載の水処理カートリッジ。
[10]前記周壁部の内周に対する、前記袋体における前記周壁部の内面の周方向に沿う方向の外周の比率が1.0~1.1倍である、[1]~[9]のいずれかに記載の水処理カートリッジ。
[11]前記浄化材が亜硫酸カルシウムを含む、[1]~[10]のいずれかに記載の水処理カートリッジ。
[12]前記亜硫酸カルシウムは、粒度分布におけるピークトップ径が100~500μmであり、粒径1~1000μmの粒子の割合が粒子全体に対して90質量%以上であり、40Wの超音波を5分照射したときの粒度分布のピークトップの頻度が超音波照射前の頻度に対して70%以下であり、かつ比重が0.80~1.20g/mLである、[11]に記載の水処理カートリッジ。
[13]前記袋体が不織布からなる、[1]~[12]のいずれかに記載の水処理カートリッジ。
[14][1]~[13]のいずれかに記載の水処理カートリッジが収納されたシャワーヘッド。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、浄化材の充填量を高めても通水量を確保して圧力損失を低減でき、浄化性能に優れた水処理カートリッジ及びシャワーヘッドを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態の水処理カートリッジの一例を示した側面図である。
図2図1の水処理カートリッジの平面図である。
図3図2の水処理カートリッジのA-A断面図である。
図4図3の水処理カートリッジにおけるスペーサー部材の斜視図である。
図5図4のスペーサー部材を下流側から見た底面図である。
図6】他の実施形態のスペーサー部材の斜視図である。
図7】他の実施形態のスペーサー部材の斜視図である。
図8】実施形態のシャワーヘッドを示した断面図である。
図9】比較例1で用いたスペーサー部材の斜視図である。
図10】比較例2で用いたスペーサー部材の斜視図である。
図11】実施例及び比較例で用いた亜硫酸カルシウムの超音波照射の前後の粒度分布である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の水処理カートリッジ及びシャワーヘッドの一例を示して説明する。なお、以下の説明において例示される図の寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0011】
[水処理カートリッジ]
図1~3に示すように、本実施形態の水処理カートリッジ100は、カートリッジ本体102と、カートリッジ本体102内に収納されたスペーサー部材104と、浄化材106と、を備えている。水処理カートリッジ100は、シャワーヘッドにおけるヘッド部内に収納される。
【0012】
図1及び図2に示すように、カートリッジ本体102は、円筒状の胴部110と、胴部110の一方の開口端を閉じるように設けられた平面視形状が円板状の第1板部112と、胴部110の他方の開口端を閉じるように設けられた底面視形状が円板状の第2板部114と、を備えている。水処理カートリッジ100がシャワーヘッドのヘッド部内に収納された状態では、第1板部112が上流側(一次側)を向き、第2板部114が下流側(二次側)に向いていてもよく、第1板部112が下流側(二次側)を向き、第2板部114が上流側(一次側)に向いていてもよい。
【0013】
第1板部112及び第2板部114は中央部が外部側に突き出るように湾曲した形状になっている。第1板部112及び第2板部114をこのように湾曲させることで、水処理カートリッジをコンパクト化しつつ、充分な量の浄化材を充填することが容易になる。
【0014】
第1板部112には、第1板部112を外部側から正面視したときの中央部に円形状の窪部115が形成され、その周りに複数の通水孔116が形成されている。第2板部114には、第2板部114を外部側から正面視したときの中央部に円形状の窪部117が形成され、その周りに複数の通水孔118が形成されている。シャワーヘッドのヘッド部内で第1板部112が一次側を向き、第2板部114が二次側に向く場合、第1板部112に形成された通水孔116が入水孔となり、第2板部114に形成された通水孔118が吐水孔となる。一方、第2板部114が一次側を向き、第1板部112が二次側に向く場合、第2板部114に形成された通水孔118が入水孔となり、第1板部112に形成された通水孔116が吐水孔となる。
【0015】
この例の通水孔116及び通水孔118の正面視形状は、円形状である。なお、第1板部及び第2板部に形成される通水孔の正面視形状は、円形状には限定されず、例えば、楕円状、矩形状等であってもよい。通水孔116及び通水孔118の数及び配置は、特に限定されず、水の流入又は流出がスムーズに行えるように適宜設定すればよい。通水孔116及び通水孔118の正面視形状、数及び配置は、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0016】
第1板部112の内面112aには全ての通水孔116を覆うようにフィルタを取り付けてもよい。同様に、第2板部114の内面114aには全ての通水孔118を覆うようにフィルタを取り付けてもよい。これにより浄化材の微粉漏れを抑制することができるとともに、流量が低い場合でも水処理カートリッジ内を原水で満たすことができ、より浄水効果を安定させることができる。
【0017】
第1板部112の外面112bにおける外周縁部には、全周にわたって円環状の凹条からなる段差127が形成されている。同様に、第2板部114の外面114bにおける外周縁部には、全周にわたって円環状の凹条からなる段差128が形成されている。これらの段差127,128は、シャワーヘッド内に収納した際の水処理カートリッジ100を安定させるために利用される。
【0018】
この例のカートリッジ本体102は、第1部材130と第2部材132に分割できるようになっている。第1部材130は、第1板部112と、胴部110の第1板部112側の部分を形成する周壁部134とで形成された部材である。第2部材132は、第2板部114と、胴部110の第2板部114側の部分を形成する周壁部136とで形成された部材である。第2部材132の周壁部136の先端部分に設けられた凸条138と、第1部材130の周壁部134の先端部分の内側に設けられた凹条140とを互いに嵌合させて第1部材130を第2部材132に装着することで、カートリッジ本体102が形成される。
【0019】
カートリッジ本体102の材質としては、特に限定されず、シャワーヘッドに収納される水処理カートリッジに用いられる公知の材料を採用できる。具体的には、例えば、ポリプロピレン、ポリフェニレンエーテル、ポリオキシメチレン、ポリカーボネート、ABS、ASA、PMP等の耐熱性の樹脂等が挙げられる。カートリッジ本体102の製造方法は、特に限定されず、射出成形等の公知の成形方法等を採用できる。
【0020】
カートリッジ本体102内には、円筒状のスペーサー部材104が設けられている。スペーサー部材104は、図3図5に示すように、円筒状の周壁部150と、複数の流路保持部152と、複数の浄化材抑え部154と、を備えている。スペーサー部材104は、カートリッジ本体102内において周壁部150の中心軸O1方向が第1板部112から第2板部114に向かう方向に沿うように設けられている。この例では、スペーサー部材104の周壁部150の中心軸O1が第1板部112の中央部の窪部115と第2板部114の中央部の窪部117を通っている。カートリッジ本体102内にスペーサー部材104が収納されることで、カートリッジ本体102内にはスペーサー部材104の内側の第1流路160と、スペーサー部材104の外側の第2流路162が形成されている。
【0021】
スペーサー部材104の周壁部150の内側には浄化材106が袋体108内に収納された状態で充填されている。つまり、スペーサー部材104の内側の第1流路160には袋体108内に収納された状態で浄化材106が充填されている。カートリッジ本体102内におけるスペーサー部材104の外側の第2流路162には浄化材106は充填されておらず、バイパス流路となっている。例えば、各々の通水孔116からカートリッジ本体102内に流入した水は第1流路160と第2流路162に分かれる。第1流路160を流れる水は浄化材106と接触して浄化され、スペーサー部材104の下流側で第2流路162を流れてきた水と合流して各々の通水孔118から吐出される。
【0022】
第1流路160の断面積と第2流路162の断面積との合計に対する、第1流路160の断面積の割合は、60~95%が好ましい。前記第1流路160の断面積の割合が前記範囲内であれば、圧力損失を低減しつつ優れた浄化性能を得ることが容易になる。前記第1流路160の断面積の割合の下限は、65%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましい。前記第1流路160の断面積の割合の上限は、90%以下がより好ましく、85%以下がさらに好ましい。なお、第1流路160の断面積とは、周壁部150の内側の中心軸O1に垂直な断面の面積を意味する。第2流路162の断面積とは、カートリッジ本体102内における周壁部150の外側の中心軸O1に垂直な断面の面積を意味する。
【0023】
周壁部150の形状は、カートリッジ本体102内に第1流路160と第2流路162を形成でき、周壁部150の内側に浄化材106を充填できる範囲であれば円筒状には限定されない。周壁部150の形状は、例えば、四角筒状、六角筒状、八角筒状等の多角筒状や楕円筒状であってもよく、それらの一面が外側に膨出するように湾曲している形状であってもよい。なかでも、周壁部150の形状は、カートリッジ本体102内の周壁部150の外側に全周にわたって流路断面積が均一な第2流路162を形成しやすい点から、円筒状、八角筒状が好ましい。
スペーサー部材104の周壁部150の寸法は、カートリッジ本体102の大きさ、及び浄化材106の充填量等に応じて適宜設定すればよい。
【0024】
スペーサー部材104の周壁部150には開口部156が形成されており、スペーサー部材104の内側の第1流路160と外側の第2流路162が開口部156によって繋がっている。これにより、第1流路160と第2流路162を流れる水は開口部156を通じて互いにスペーサー部材104の径方向にも移動できるようになる。そのため、浄化材106の周辺の水の流れがより複雑となって浄化材106と水との接触効率が高まり、浄化性能が向上する。また、カートリッジ本体102内の流路が分散されるために圧力損失が低減される。
【0025】
この例のスペーサー部材104では、周壁部150に複数の略矩形状の開口部156が周方向及び中心軸O1方向に均等に配置され、周壁部150が格子状になっている。開口部156の正面視形状は、特に限定されず、この例では略矩形状であるが、円形状等であってもよい。周壁部150に形成される開口部156の数は、周壁部150の寸法等に応じて適宜設定できる。スペーサー部材104では、このように複数の開口部156が周壁部150の周方向及び中心軸O1方向に均等に形成されていることが好ましい。これにより、スペーサー部材104の周辺における水の流れ方向に偏りがなくなるため、水の流れによって浄化材106が特定の方向に押しやられて偏在することが抑制される。そのため、浄化材106と水との接触効率がさらに高まり、浄化性能がさらに向上する。
【0026】
スペーサー部材104の周壁部150の外面150bに占める開口部156の開口率は、40~70%であることが好ましい。開口率が40%以上であれば、浄化材106と水との接触効率の向上効果や、圧力損失の低減効果が得られやすい。開口率が70%以下であれば、浄化材106と接触せずにカートリッジ本体102外に吐出される水の量が低減されるために浄化性能を確保しやすく、またスペーサー部材104の強度を確保しやすい。開口率の下限は51%以上であることがより好ましく、上限は63%以下であることがより好ましい。
なお、前記開口率は、周壁部150に開口部156が形成されていないと仮定したときの周壁部150の外面150bの総面積に占める開口部156の開口面積の合計の比率を意味する。
【0027】
第2流路162側からスペーサー部材104の周壁部150を見たときには、少なくとも下流側の開口部156が袋体108で覆われるように、浄化材106を収納した袋体108が周壁部150の内側に充填される。これにより、浄化材106と接触せずにカートリッジ本体102内を通過する水の量を少なくすることができ、浄化性能が向上する。
開口部156の開口面積の合計に対する、第2流路162側から見て開口部156の袋体108で覆われている面積の合計の割合(以下、「割合A」ともいう。)は、80%以上である。割合Aが80%以上であれば、浄化材106と接触せずにカートリッジ本体102内を通過する水の量を少なくすることができ、浄化性能が向上する。割合Aは、90%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましく、100%に近いほど良い。
【0028】
スペーサー部材104には、周壁部150の開口部156以外の部分の外面150bから突出する複数の流路保持部152が設けられている。この例では4つの柱状の流路保持部152が周壁部150の外面150bから径方向の外側に突出するように設けられている。これにより、浄化材106の充填量を多くした場合に周壁部150が径方向の外側に膨張しようとしても、流路保持部152の先端がカートリッジ本体102の内面に当接することで周壁部150を支持することができる。このように、流路保持部152によって周壁部150がカートリッジ本体102の内面に到達するまで膨らむことが抑制されるため、浄化材106の充填量を多くしても第2流路162が閉塞せず、充分な通水量を維持することができる。
【0029】
スペーサー部材104の4つの流路保持部152は、周壁部150の周方向において等間隔、すなわち中心軸O1周りに90°間隔で配置されている。この例のように複数の流路保持部152は周壁部150の周方向において等間隔、すなわち中心軸O1周りに等角度間隔で配置されていることが好ましい。これにより、中心軸O1周りの全方向にわたって周壁部150を支持して径方向の膨張を抑制することができるため、第2流路162を保持しやすく、通水量を確保する効果が得られやすくなる。
【0030】
周壁部150の周方向に設けられる流路保持部152の数は、第2流路162の水の流れを過度に妨げない範囲で周壁部150を充分に支持できるように設定すればよく、例えば、2~12個とすることができる。
【0031】
スペーサー部材104の周壁部150の中心軸O1方向における流路保持部152の数は、1個でもよく、2個以上でもよい。中心軸O1方向の流路保持部152の数が1個の場合、流路保持部152は周壁部150の中心軸O1方向の中央に配置することが好ましい。中心軸O1方向の流路保持部152の数が偶数の場合、周壁部150の中心軸O1方向の中央に対して対称となる位置に配置することが好ましい。中心軸O1方向の流路保持部152の数が3以上の奇数の場合、周壁部150の中心軸O1方向の中央に1個の流路保持部152を配置し、残りの流路保持部152を前記中央に対して対称となる位置に配置することが好ましい。
【0032】
流路保持部152の形態は、特に限定されず、例えば、柱状の凸部、凸条を例示できる。カートリッジ本体102の内面102aに当接したときに周壁部150を支持しやすいように、流路保持部152の先端形状は平坦であることが好ましい。流路保持部152が柱状の凸部の場合、例えば、円柱状や、四角柱状、六角柱状等の多角柱状、角錐台状、円錐台状を例示できる。この例の流路保持部152は四角錐台状である。
【0033】
流路保持部152が凸条の場合、凸条の長さ方向に垂直な断面形状としては、例えば、矩形状、台形状、半円状を例示できる。流路保持部152が凸条の場合、凸条は周壁部150の外面150bの周方向に延在していてもよく、中心軸O1方向に延在していてもよい。複数の流路保持部152としては、柱状の凸部と凸条を混在させてもよい。
【0034】
流路保持部152の周壁部150の外面150bからの高さは、第2流路162の流路断面を保持できる範囲で適宜設定すればよい。各々の流路保持部152は初めから先端がカートリッジ本体102の内面102aに当接していてもよく、スペーサー部材104の周壁部150が径方向に膨張したときに先端がカートリッジ本体102の内面102aに当接するようにしてもよい。
【0035】
水処理カートリッジ100がシャワーヘッドに収納された状態で、スペーサー部材104の周壁部150における中心軸O1方向の下流側に配置される端部には、浄化材106の動きを抑える浄化材抑え部154が設けられている。これにより、浄化材106が収納された袋体108が第1流路160を流れる水によって第2流路162側へと押し出されることが抑制される。そのため、第2流路162の水の流れが妨げられにくくなり、通水量が確保される。
【0036】
例えば、シャワーヘッドのヘッド部内でカートリッジ本体102の第1板部112を上流側に向け、第2板部114を下流側に向ける場合について説明する。この場合、スペーサー部材104では、周壁部150における中心軸O1方向の下流側に配置される第2端部150dに、複数の浄化材抑え部154が中心軸O1方向に突出するように、かつ周壁部150の周方向に互いに離間するように設けられている。これにより、第2流路162を流れてきた水が隣り合う浄化材抑え部154の間から吐水孔となる通水孔118へと流れやすくなる。そのため、浄化材106が第2流路162側にはみ出すことを抑制しつつ、第2流路162から吐水孔への流れをスムーズにして通水量を確保することができる。周壁部150の下流側に配置される第2端部150dに設ける浄化材抑え部154は、周壁部150の周方向において等間隔に配置されていることが好ましい。これにより、中心軸O1周りの全方向にわたって浄化材106が第2流路162側にはみ出すことを抑制しやすくなる。
【0037】
浄化材抑え部154の形態は、第2流路162から吐水孔までの水の流れを妨げずに浄化材106の第2流路162側への動きを規制できる範囲であれば特に限定されない。この例では半円形の板状であるが、矩形状、台形状等の板状であってもよい。浄化材抑え部154のサイズは、カートリッジ本体102内にスペーサー部材104を収納でき、かつ第2流路162から吐水孔となる通水孔118までの流れを過度に妨げずに浄化材106のはみ出しを抑制できる範囲で適宜設定すればよい。例えば、第2流路162側から見て浄化材抑え部154における第2端部150d側の基端の周方向の長さを5~15mm、浄化材抑え部154の第2端部150dから中心軸O1方向の先端までの高さを1~5mmとすることができる。
【0038】
周壁部150の下流側に配置される第2端部150dに設ける浄化材抑え部154の数は、この例では6個であるが、6個には限定されず、例えば、2~12個とすることができる。
【0039】
この例ではスペーサー部材104の周壁部150における中心軸O1方向の第1端部150cと第2端部150dの両方に同様の態様で浄化材抑え部154が設けられている。このような態様では、水処理カートリッジ100をシャワーヘッド内に収納する際に第1板部112と第2板部114のどちらを上流側(一次側)に向けても、周壁部150の下流側に配置される端部に浄化材抑え部154が設けられた状態となる。これにより、シャワーヘッドに設置する際の水処理カートリッジ100の向きに左右されずに通水量を確保することができる。そのため、シャワーヘッドに取り付ける際に水処理カートリッジ100の向きを確認する必要がなく取り扱いが容易であり、カートリッジ外観のデザインの制限も低減される。
【0040】
カートリッジ本体102の下流側に向けられる部分の内面、例えば第2板部114を下流側に向ける場合の第2板部114の内面114aをスペーサー部材104の中心軸O1方向から見たとき、すべての通水孔118の開口面積の合計に対する、スペーサー部材104の周壁部150の内側に位置する通水孔118の開口面積の合計の割合(以下、「割合B」ともいう。)は、4~25%である。割合Bが4%以上であれば、第2流路162を流れて吐水孔(通水孔118)から吐出される水の流量が充分に多くなり、圧力損失を低減しやすい。割合Bが25%以下であれば、水と浄化材106との接触効率が充分に高くなりやすく、優れた浄化性能が得られやすい。
【0041】
第1板部112の内面112aをスペーサー部材104の中心軸O1方向から見たとき、すべての通水孔116の開口面積の合計に対する、スペーサー部材104の周壁部150の内側に位置する通水孔116の開口面積の合計の割合も、割合Bと同様の範囲になっていることが好ましい。これにより、カートリッジ本体102の第1板部112と第2板部114のどちらを下流側に向けた場合でも同様の効果を得ることができる。
【0042】
スペーサー部材104では、周壁部150の内面150aから径方向の内側に突出する複数の内側突起部158が設けられていてもよい。この例では周壁部150の内面150aの周方向において、6個の内側突起部158が等間隔に設けられている。また、周壁部150の内面150aの中心軸O1方向においては、3個の内側突起部158が等間隔に設けられている。このように、この例のスペーサー部材104では周壁部150の内面150aから突出する18個の内側突起部158が設けられている。これにより、浄化材106を収納した袋体108が水の流れによって下流側に動くことが抑制されるため、各通水孔が塞がりにくく水が吐出されやすくなる。なお、周方向及び中心軸O1方向における内側突起部158の配置は等間隔でなくてもよい。
【0043】
内側突起部158の形態は、特に限定されず、例えば、柱状の凸部、凸条を例示できる。内側突起部158が柱状の凸部の場合、例えば、円柱状や、四角柱状、六角柱状等の多角柱状、角錐台状、円錐台状を例示できる。内側突起部158が凸条の場合、凸条の長さ方向に垂直な断面形状としては、例えば、矩形状、台形状、半円状を例示できる。内側突起部158が凸条の場合、凸条は周壁部150の内面150aの周方向に延びるように設けられていることが好ましい。
【0044】
内側突起部158の周壁部150の内面150aからの高さは、適宜設定でき、例えば、1~2mmとすることができる。
内側突起部158の数は、第1流路160の水の流れを過度に妨げずに浄化材106を収納した袋体108の動きを抑制できる範囲で設定すればよく、例えば、2~32個とすることができる。
【0045】
スペーサー部材104の材質としては、特に限定されず、カートリッジ本体102で例示したものと同じものを例示できる。スペーサー部材104の製造方法は、特に限定されず、射出成形等の公知の成形方法等を採用できる。
【0046】
浄化材106は袋体108内に収納された状態でスペーサー部材104の内側に充填されている。これにより、浄化材106が第1流路160から過度に流出したり、第1流路160内で偏在したりすることを抑制しやすい。袋体108としては、浄化材106を収納できるものであれば特に限定されず、例えば、不織布、メッシュ等からなる袋体を例示できる。なかでも、浄化材の保持性、通水性、柔軟性の観点から、不織布からなる袋体が好ましい。袋体108を形成する材質としては、特に限定されず、水処理カートリッジに通常使用されるものを使用でき、例えば、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィン等が挙げられる。袋体108の材質は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0047】
スペーサー部材104の周壁部150の内周に対する、袋体108における周壁部150の内面150aの周方向に沿う方向の外周の比率は、1.0~1.1倍であることが好ましい。これにより、スペーサー部材104の内側に充分な量の浄化材106を充填することが容易になる。なお、袋体108におけるスペーサー部材104の中心軸O1方向に沿う方向を長さ方向、周方向に沿う方向を幅方向としたとき、扁平状態における袋体108の外寸幅を2倍した値を、袋体108における周壁部150の内面150aの周方向に沿う方向の外周と見なす。
【0048】
浄化材106としては、脱塩素剤が好ましい。脱塩素剤としては、特に限定されず、例えば、亜硫酸カルシウム、アスコルビン酸、活性炭等が挙げられる。浄化材106は、脱塩素剤には限定されず、例えば、軟水化処理材であってもよい。軟水化処理剤としては、イオン交換樹脂、イオン交換繊維、キレート繊維等が挙げられる。陽イオン交換樹脂としては、例えば、スルホン酸基等の強酸基を有する強酸性陽イオン交換樹脂、カルボキシ基等の弱酸基を有する弱酸性陽イオン交換樹脂等が挙げられる。浄化材106としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
浄化材106としては、塩素除去性能及び取扱い性の点から、亜硫酸カルシウムを含むことがより好ましく、以下の条件(1)~(4)を満たす亜硫酸カルシウムを含むことが特に好ましい。
(1)粒度分布におけるピークトップ径が100~500μmである。
(2)粒径1~1000μmの粒子の割合が粒子全体に対して90質量%以上である。
(3)40Wの超音波を5分照射したときの粒度分布のピークトップの頻度が超音波照射前の頻度に対して70%以下である。
(4)比重が0.80~1.20g/mLである。
【0050】
亜硫酸カルシウムが条件(3)を満たすと、通水時に崩壊によって細かい粒子が徐々に生成されやすく、圧力損失が低減されるとともに浄化材106と水との接触効率を高く保つことが容易になる。亜硫酸カルシウムの比重が0.80以上であれば、充填可能な重量が大きく比表面積が大きくなることから接触効率が向上する。亜硫酸カルシウムの比重が1.20以下であれば圧力損失が大きくなることを抑制しやすい。
【0051】
浄化材には、公知の機能付加材を含有させてもよい。機能付加材としては、例えば、臭気除去剤(ジビニルベンセン系ポリマー等)、保湿剤(植物エキス、ヒアルロン酸、コラーゲン等)、清涼剤(メントール、ミョウバン等)、芳香剤(ローズウッド、ジャスミン、ラベンダー等)等が挙げられる。機能付加材としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
水処理カートリッジ100内の浄化材106の充填量は、浄化性能、水処理カートリッジ100のコンパクト化等を考慮して適宜設定すればよく、例えば、10~20gとすることができる。
【0053】
以上説明したように、水処理カートリッジ100においては、カートリッジ本体102内のスペーサー部材104の内側が第1流路160、外側が第2流路162となり、スペーサー部材104の内側の第1流路160に浄化材106が袋体108内に収納された状態で充填されている。そして、スペーサー部材104の周壁部150に開口部156が形成されていることで、スペーサー部材104周辺の水が径方向にも流動し得るため、水と浄化材106との接触効率が高くなり、浄化性能が向上する。また、スペーサー部材104の周壁部150の外面150bに複数の流路保持部152が設けられていることで、スペーサー部材104が径方向に膨張して第2流路162が閉塞されることが抑制される。さらに周壁部150の下流側に配置される端部に浄化材抑え部154が設けられていることで、浄化材106を収納した袋体108が第2流路162にはみ出すことが抑制される。これらのことから、浄化材106の充填量を多くしても充分な通水量を確保し、圧力損失を低減することができる。
【0054】
なお、本発明の水処理カートリッジは、前記した水処理カートリッジ100には限定されない。例えば、カートリッジ本体の胴部は、円筒状には限定されず、シャワーヘッドにおける水処理カートリッジの収納部の形状に応じて適宜設定すればよく、四角筒状等であってもよい。またスペーサー部材の形状はカートリッジ本体の形状に合わせて設計すればよい。
【0055】
本発明の水処理カートリッジが備えるスペーサー部材は、図6に例示した八角筒状のスペーサー部材104Aであってもよく、図7に例示した略楕円筒状のスペーサー部材104Bであってもよい。図6及び図7における図4と同じ部分には同符号を付して説明を省略する。スペーサー部材104Aは周壁部150が八角筒状である以外はスペーサー部材104と同様の態様である。スペーサー部材104Bは、周壁部150が略楕円筒状であり、周壁部150の楕円の長辺方向に延びる部分の中央部に流路保持部152が設けられ、流路保持部152の長辺方向の両側に開口部156が形成され、周壁部150の楕円の長辺方向に延びる部分の中心軸方向の両側の端部に浄化材抑え部154が設けられている。
【0056】
[シャワーヘッド]
本発明のシャワーヘッドは、本発明の水処理カートリッジが収納されたシャワーヘッドである。本発明のシャワーヘッドは、本発明の水処理カートリッジが収納されている以外は、公知の態様を採用できる。以下、本発明のシャワーヘッドの一例として、前記した水処理カートリッジ100が収納されたシャワーヘッドを示して説明する。
【0057】
本実施形態のシャワーヘッド1は、図8に示すように、シャワーヘッド本体10と、シャワーキャップ12と、水処理カートリッジ100と、を備えている。シャワーヘッド本体10は、グリップ18と、グリップ18の先端に設けられたヘッド部20とを備えている。ヘッド部20の内部には、グリップ18内の流路18aと連通する空洞部分からなる、水処理カートリッジ100を収納する収納部22が形成されている。
【0058】
シャワーキャップ12は、円筒状の周壁部40と、周壁部40の先端開口部を閉じるように設けられた円板状の散水板42とを備えている。散水板42には、複数の散水孔42aが形成されている。
【0059】
シャワーヘッド本体10及びシャワーキャップ12の材質としては、特に限定されず、シャワーヘッドに用いられる公知の材質を採用できる。具体的には、例えば、ポリプロピレン、ポリフェニレンエーテル、ポリオキシメチレン、ポリカーボネート、ABS、ASA、PMP等の軟化点が80℃以上の耐熱性の樹脂や、ステンレス等の金属等が挙げられる。シャワーヘッド本体10及びシャワーキャップ12の製造方法は、特に限定されず、公知の成形方法等を採用できる。
【0060】
この例では、ヘッド部20内の収納部22に、第1板部112が上流側(一次側)に向くように水処理カートリッジ100が収納されている。パッキン16は環状であり、ヘッド部20内における水処理カートリッジ100の一次側と二次側を水密に隔離するように設けられている。
【0061】
シャワーヘッド1においては、グリップ18の流路18aを通じてヘッド部20内まで流入してきた原水の全量が水処理カートリッジ100内に流入する。第1板部112に形成された通水孔(入水孔)116からカートリッジ本体102内に流入した原水は、カートリッジ本体102内において第1流路160と第2流路162に分かれる。第1流路160においては浄化材106で原水が浄化される。またスペーサー部材104の周辺では第1流路160と第2流路162を流れる水が開口部156を通じて径方向にも流れる。第1流路160と第2流路162を流れてきた水は第2板部114に形成された通水孔(吐水孔)118から水処理カートリッジ100の外側に流出し、散水板42の散水孔42aからシャワー状に散水される。
【0062】
シャワーヘッド1においては、水処理カートリッジ100がシャワーヘッド本体10のヘッド部20内に収納されているため、シャワーキャップ12を取り外すことでカートリッジ交換やメンテナンスを容易に行うことができる。
【実施例0063】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
【0064】
[通水試験]
各例の水処理カートリッジをシャワーヘッド内に収納し、流量を7.5L/分に一定にして通水を行い、遊離残留塩素除去率を測定した。遊離残留塩素除去率は、HACH DR300 ポケット残留塩素計を用い、通水後の水中に含まれる遊離残留塩素濃度をDPD吸光光度法にて測定して算出した。そして、通過水中の遊離残留塩素が0.5mg/Lを超えるまでの積算流量を求めた。また、小型圧力センサ(横河電機社製、FPシリーズ)によって通水中の最大圧力を測定した。原水としては、遊離残留塩素濃度1±0.1mg/L、水温40±3℃に調整した水を用いた。
積算流量及び最大圧力は、各例について同じ試験を合計3回行って平均値を算出した。
【0065】
[実施例1]
図1~5に例示した円筒状のスペーサー部材104(内周:98.1mm)を備える水処理カートリッジ100を用いて通水試験を行った。不織布からなる袋体108の扁平状態の外寸幅は50mmとし、袋体108内に浄化材106として亜硫酸カルシウム(タテホ化学工業社製、比重:0.96g/mL)19gを充填した。
使用した亜硫酸カルシウムについて、粒度分布計(日機装社製、MT3300EXII)を用い、40Wの超音波を5分照射した前後の粒度分布を測定した。測定した粒度分布を図11に示す。超音波照射前のピークトップ径は323μm、頻度は10.0%であり、超音波照射後のピークトップ径は249μm、頻度は5.5%であった。超音波照射前のピークトップの頻度に対する超音波照射後のピークトップの頻度の比率は36.9%であった。
【0066】
[実施例2]
スペーサー部材104を図6に例示した八角筒状のスペーサー部材104A(内周:98.0mm)に変更した以外は水処理カートリッジ100と同様の態様の水処理カートリッジを用いて、実施例1と同様にして通水試験を行った。
【0067】
[実施例3]
スペーサー部材104を図7に例示した略楕円筒状のスペーサー部材104B(内周:107.6mm)に変更した以外は水処理カートリッジ100と同様の態様の水処理カートリッジを用いて、実施例1と同様にして通水試験を行った。
【0068】
[比較例1]
スペーサー部材104を図9に例示したスペーサー部材200(内周:104.6mm)に変更した以外は水処理カートリッジ100と同様の態様の水処理カートリッジを用い、亜硫酸カルシウムの充填量を12gに変更し、それ以外は実施例1と同様にして通水試験を行った。
スペーサー部材200は、一対の平面部202と、一対の湾曲部204とを備えた筒状の部材であり、中心軸方向から見た形状は長方形の一対の短辺が外側に円弧状に膨らんだ形状になっている。
【0069】
[比較例2]
スペーサー部材104を図10に例示したスペーサー部材200A(内周:108.1mm)に変更した以外は水処理カートリッジ100と同様の態様の水処理カートリッジを用い、それ以外は実施例1と同様にして通水試験を行った。
スペーサー部材200Aは、一対の平面部202の外面の中央部から突出する流路保持部206と、一対の平面部202の中心軸方向の両側の端部から中心軸方向に突出する半円形の板状の浄化材抑え部208とが設けられている以外は、スペーサー部材200と同様の態様である。
【0070】
各例のスペーサー部材の形態と通水試験の結果を表1に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
周壁部に開口部が形成され、流路保持部と浄化材抑え部が設けられたスペーサー部材を備える水処理カートリッジを用いた実施例1~3は、浄化材の充填量を19gと多いにもかかわらず、充填量が12gである比較例1と同程度の最大圧力に抑えられていた。また、実施例1~3では積算流量が比較例1に比べて大きく、浄化性能が優れていた。
流路保持部と浄化材抑え部が設けられているものの、周壁部に開口部が形成されていないスペーサー部材を用いた比較例2では、積算流量が小さく浄化性能が劣っていた。
【符号の説明】
【0073】
1…シャワーヘッド、100…水処理カートリッジ、102…カートリッジ本体、104,104A,104B…スペーサー部材、106…浄化材、108…袋体、112…第1板部、114…第2板部、116,118…通水孔、150…周壁部、152…流路保持部、154…浄化材抑え部、O1…中心軸、160…第1流路、162…第2流路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11