IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイシン高丘株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-触媒装置 図1
  • 特開-触媒装置 図2
  • 特開-触媒装置 図3
  • 特開-触媒装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154322
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】触媒装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/24 20060101AFI20221005BHJP
   F01N 3/20 20060101ALI20221005BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
F01N3/24 L
F01N3/20 K
B01D53/94
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057289
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000100805
【氏名又は名称】アイシン高丘株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(72)【発明者】
【氏名】中村 祐一郎
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
【Fターム(参考)】
3G091AA02
3G091AA14
3G091AB01
3G091BA03
3G091BA04
3G091CA10
3G091GA06
3G091GB01X
3G091GB01Z
3G091GB10Z
3G091GB17X
3G091GB20Z
4D148CC21
4D148CC43
4D148CC53
(57)【要約】      (修正有)
【課題】内燃機関の停止状態から運転状態に切り替えられた際の触媒の活性化を好適に行うことが可能な触媒装置を提供する。
【解決手段】触媒装置は、触媒11と、触媒11が収容される収容ケース12とを備える。触媒11の外周側には、触媒11を周方向に囲むようにして円筒状の化学蓄熱部15が設けられ、さらに、その外側には、化学蓄熱部15を周方向に囲むようにして円筒状の凝縮水発生部16が設けられる。エンジンの運転状態から停止状態に切り替えられた場合に、凝縮水発生部16にて結露が発生し、凝縮水が生成される。その凝縮水と化学蓄熱部15が反応することで放熱し、その熱により触媒11が加温される。その結果、エンジンの停止状態において触媒温度が高く保たれる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容ケース内に触媒が収容され、内燃機関からの排気が前記触媒を通過することにより前記排気が浄化される触媒装置であって、
脱水反応により蓄熱し且つ水和反応により放熱する化学蓄熱部を備え、
前記収容ケース内の前記排気が流通する位置において前記触媒の周囲部に前記化学蓄熱部が配置され、前記収容ケース内の結露による凝縮水と前記化学蓄熱部とが反応して発せられる熱により前記触媒が加温される、触媒装置。
【請求項2】
前記収容ケース内において前記化学蓄熱部に隣接して配置され、前記結露による凝縮水を前記化学蓄熱部に接する状態で保持する水保持部を備えている、請求項1に記載の触媒装置。
【請求項3】
前記収容ケース内において前記化学蓄熱部に隣接して配置され、前記内燃機関の運転が停止された場合に前記結露による凝縮水を発生させる凝縮水発生部を備え、
前記凝縮水発生部は、前記収容ケースの熱伝導率以上の熱伝導率を有する材質の熱伝導部材である、請求項1又は請求項2に記載の触媒装置。
【請求項4】
前記凝縮水発生部は、前記収容ケースと前記化学蓄熱部との間に配置されている、請求項3に記載の触媒装置。
【請求項5】
前記熱伝導部材には、少なくとも前記化学蓄熱部側に開口し、前記結露による凝縮水が貯留される空間部が形成されている、請求項3又は請求項4に記載の触媒装置。
【請求項6】
前記凝縮水発生部と前記触媒との間に前記化学蓄熱部が配置されている、請求項3~請求項5のいずれか1項に記載の触媒装置。
【請求項7】
当該触媒装置は、前記内燃機関と電動機とを動力源として備え、前記内燃機関の動力により走行する状態と前記電動機の動力により走行する状態とが切替制御される車両に用いられるものである、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の触媒装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等における内燃機関(エンジン)の排気系には触媒装置が設けられる。触媒装置では、内燃機関から排出される排ガス(燃焼ガス)を触媒に通過させることで当該ガスの浄化が行われる。内燃機関の運転中は高温の排ガスにより触媒が加熱されて触媒温度が活性温度域に保たれるが、内燃機関の始動開始当初は触媒が冷えているため、昇温に時間を要する懸念がある。
【0003】
そこで、例えば特許文献1には、水和反応により放熱する化学蓄熱材を利用して触媒を昇温させる触媒装置が提案されている。この触媒装置は、貯水部に貯留された水を内燃機関からの排ガスにより加熱して蒸気を発生させるとともに、化学蓄熱材をその蒸気と反応させて放熱させ、その熱により触媒を昇温させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-106355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
動力源として内燃機関と電動機(モータ)とを備えるハイブリッド車では、バッテリ残量等に基づいてEVモードとHVモードとが切り替えられ、それら各モードが交互に繰り返される。この際、内燃機関が停止状態とされるEVモードでは触媒が冷えるため、内燃機関が運転状態とされ、排ガスの浄化が求められるHVモードに切り替えられた際に触媒温度が不足する懸念がある。また、HVモードでもモータ走行が長期間に亘ることがあり、そのような場合にも同様の現象が生じ得る。
【0006】
このような内燃機関の停止状態での触媒温度の低下に対し、特許文献1に記載された従来の触媒装置を適用することが考えられる。しかしながら、内燃機関の停止状態では高温の排ガスが触媒装置に導入されず、蒸気を発生させることができないため、触媒を良好に昇温させることができないおそれがある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、内燃機関の運転状態と停止状態とが繰り返される場合において、内燃機関の停止状態から運転状態に切り替えられた際の触媒の活性化を好適に行うことが可能な触媒装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく、第1の発明は、収容ケース内に触媒が収容され、内燃機関からの排気が前記触媒を通過することにより前記排気が浄化される触媒装置であって、
脱水反応により蓄熱し且つ水和反応により放熱する化学蓄熱部を備え、
前記収容ケース内の前記排気が流通する位置において前記触媒の周囲部に前記化学蓄熱部が配置され、前記収容ケース内の結露による凝縮水と前記化学蓄熱部とが反応して発せられる熱により前記触媒が加温されることを特徴とする。
【0009】
第2の発明では、上記第1の発明において、前記収容ケース内において前記化学蓄熱部に隣接して配置され、前記結露による凝縮水を前記化学蓄熱部に接する状態で保持する水保持部を備えていることを特徴とする。
【0010】
第3の発明では、上記第1の発明又は第2の発明において、前記収容ケース内において前記化学蓄熱部に隣接して配置され、前記内燃機関の運転が停止された場合に前記結露による凝縮水を発生させる凝縮水発生部を備え、
前記凝縮水発生部は、前記収容ケースの熱伝導率以上の熱伝導率を有する材質の熱伝導部材であることを特徴とする。
【0011】
第4の発明では、上記第3の発明において、前記凝縮水発生部は、前記収容ケースと前記化学蓄熱部との間に配置されていることを特徴とする。
【0012】
第5の発明では、上記第3の発明又は第4の発明において、前記熱伝導部材には、少なくとも前記化学蓄熱部側に開口し、前記結露による凝縮水が貯留される空間部が形成されていることを特徴とする。
【0013】
第6の発明では、上記第3の発明~第5の発明のいずれかにおいて、前記凝縮水発生部と前記触媒との間に前記化学蓄熱部が配置されていることを特徴とする。
【0014】
第7の発明では、当該触媒装置は、前記内燃機関と電動機とを動力源として備え、前記内燃機関の動力により走行する状態と前記電動機の動力により走行する状態とが切替制御される車両に用いられるものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明によれば、収容ケース内において内燃機関の排気が流通する位置に、脱水反応により蓄熱し且つ水和反応により放熱する化学蓄熱部が配置されるため、内燃機関の運転状態では、内燃機関からの排気により化学蓄熱部に蓄熱させることができるとともに、水分が含まれる気体を化学蓄熱部の周辺部に存在させることができる。よって、内燃機関の停止状態に切り替えられて収容ケース内の温度が低下した際に、化学蓄熱部の周辺部に存在する水分を凝縮させて凝縮水を生成し、その凝縮水と化学蓄熱部とを反応させて放熱させることができる。
【0016】
その際、化学蓄熱部が触媒の周囲部に配置されていることで、化学蓄熱部から発せられる熱により触媒を加温することができる。これにより、内燃機関が停止されて触媒装置に高温排気が導入されない期間において、触媒温度を高く保つことができる。よって、内燃機関の運転状態への再切り替えが行われた際に活性温度との温度差を小さく抑えて活性温度域までの昇温時間を短縮したり、停止状態において触媒温度を活性温度域に保持したりすることができ、運転状態に切り替えられた際の触媒の活性化を好適に行うことが可能になる。
【0017】
第2の発明によれば、収容ケース内で結露により生成される凝縮水を化学蓄熱部に効率よく接触させることができる。これにより、水和反応を良好に生じさせることができ、内燃機関の停止状態において触媒を好適に加温することが可能になる。
【0018】
第3の発明によれば、化学蓄熱部のすぐ近くで凝縮水を発生させることができ、化学蓄熱部と凝縮水との接触を良好に果たすことができる。これにより、水和反応が促進され、触媒を好適に加温することが可能になる。また、収容ケースの熱伝導率以上の熱伝導率を有する材質の熱伝導部材を用いることで、当該部材のみにより凝縮水発生部を形成することができ、化学蓄熱部の近傍で凝縮水を効率よく生成する機能を簡単な構成により担保することが可能になる。
【0019】
第4の発明によれば、凝縮水発生部が触媒装置の外周側に寄せて配置されるため、内燃機関の停止状態に切り替えられた場合に凝縮水発生部を冷えやすくすることができ、結露の発生を好適に促進することが可能になる。
【0020】
第5の発明によれば、結露を促進して凝縮水を効率よく生成する機能と、その生成した凝縮水を化学蓄熱部に接する状態で保持する機能とを一の部材(熱伝導部材)により両立することができる。よって、内燃機関の停止時における化学蓄熱部の水和反応を促進して触媒を好適に加温できる触媒装置を簡単な構成により実現することができる。
【0021】
第6の発明によれば、凝縮水発生部及び触媒の双方が化学蓄熱部と近くなるため、結露による凝縮水が化学蓄熱部に接触しやすいだけでなく、化学蓄熱部の熱が触媒に伝わりやすい構成とすることができる。よって、化学蓄熱部での水和反応の促進と触媒の効率的な昇温とを好適に両立させることができる。
【0022】
第7の発明によれば、内燃機関による走行状態と電動機による走行状態とが切替制御される車両において、電動機による走行状態において、結露による凝縮水と化学蓄熱部とを反応させて放熱させ、触媒温度を高く保つことができる。よって、その後、内燃機関による走行状態に切り替えられた場合に触媒を好適に活性させ、排気の浄化を良好に行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】触媒装置を示す断面図。
図2図1のA部の拡大図。
図3】凝縮水発生部の斜視図。
図4】触媒装置の動作を説明するための説明図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しながら説明する。本実施の形態は、プラグインハイブリッド車に対して本発明の触媒装置を適用したものである。
【0025】
図1に示すように、プラグインハイブリッド車は、動力源としてエンジン(内燃機関)21及びモータ(電動機)22を備えるとともに、モータ22を駆動するための電力が蓄電されるバッテリ23と、エンジン21及びモータ22の駆動状態を制御するコントロールユニット(C/U)24とを備えている。コントロールユニット24は、バッテリ23の充電率等の運転状況に応じて、エンジン21の動力により車両を走行させる状態と、モータ22の動力により車両を走行させる状態とを切り替え制御する。
【0026】
エンジン21の下流側には触媒装置10が配置され、触媒装置10には、エンジン21から排出された排ガスが導入されるように構成されている。触媒装置10は、排ガスを浄化するための触媒11と、触媒11が収容される収容ケース12とを備えている。
【0027】
触媒11は、円柱状をなすように形成されたセラミック製又は金属製の触媒担体に、排ガス中の一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)及び窒素酸化物(NOx)等を浄化する触媒成分が担持されたものである。触媒担体は、その中心軸線方向に排ガスが流通する多数の排ガス通路がハニカム状に配置されたハニカム構造を有している。
【0028】
収容ケース12は、高耐熱性を有するステンレス鋼等の金属を素材とする板金製であり、円筒状をなすように継ぎ目なく一体に形成されている。収容ケース12の長さ方向の両端は開口しており、上流側の開口端である上流開口端部121には、筒状の導入管部13が接続されている。
【0029】
導入管部13は、エンジン21からの排ガスが導入されるものであり、導入管部13に導入された排ガスは上流開口端部121を通じて収容ケース12内に流入する。収容ケース12における上流開口端部121の開口径は、導入管部13における導入口131の開口径よりも大きく、導入管部13は、導入口131側から収容ケース12側にかけて通路断面積が大きくなるように形成されている。
【0030】
一方、収容ケース12における下流側の開口端である下流開口端部122には、筒状の導出管部14が接続されている。導出管部14は、触媒11を通過して浄化された排ガスを触媒装置10の下流側に導出するためのものである。導出管部14における導出口141の開口径は、収容ケース12における下流開口端部122の開口径よりも小さく、導出管部14は、収容ケース12側から導出口141側にかけて通路断面積が小さくなるように形成されている。
【0031】
図1及び図2に示すように、収容ケース12内において触媒11の周囲部には化学蓄熱部15が配置されている。化学蓄熱部15は、触媒11の外径よりも大きい内径を有する円筒状に形成されており、触媒11の全周を周方向に囲むようにして配置されている。化学蓄熱部15の長さは触媒11の長さと略同寸となっている。
【0032】
化学蓄熱部15は、脱水反応に伴い酸化され、水和反応により水酸化される水和反応系の化学蓄熱材から形成される。化学蓄熱部15では、化学蓄熱材の水和反応により放熱が行われ、脱水反応(逆水和反応)により蓄熱が行われる。
【0033】
化学蓄熱材としては酸化マグネシウム(MgO)や酸化カルシウム(CaO)等を用いることができる。例えば酸化マグネシウムを用いた場合は、下記の式により水和反応及び脱水反応を表すことができる。
MgO+H2O→Mg(OH)2+Q・・・(水和反応)
Mg(OH)2+Q→MgO+H2O・・・(脱水反応)
これらの反応式で表される水和反応及び脱水反応が可逆的に生じることで、放熱と蓄熱が繰り返し行われる。なお、上記反応式においてQは放熱量及び蓄熱量である。
【0034】
図1に示すように、収容ケース12内において化学蓄熱部15の外側には、凝縮水発生部16が配置されている。凝縮水発生部16は、運転状態のエンジン21から排出される高温の排ガスにより収容ケース12内が加熱及び保温状態とされた後、エンジン21が停止されて加熱及び保温状態が解除された場合に、結露の発生を促進して凝縮水を積極的に発生させるものである。
【0035】
凝縮水発生部16は、収容ケース12を形成する材質(ステンレス鋼等)と同等の熱伝導率又はそれよりも高い熱伝導率を有する材質により形成される。その場合の熱伝導率としては、25~430W/mKであることが好ましく、230~430W/mKであることがさらに好ましい。また、凝縮水発生部16を構成する材質としては、凝縮水による錆の発生を抑制するために耐食性が高いものであることが好ましく、さらには、高温の排ガスに晒されても溶融や変形が抑制されるように、例えば600℃以上の融点を有するものが好ましい。これらの条件を満たす材質としては、フェライト系ステンレス、白金、アルミニウム、金、銀等があり、これらの中でも熱伝導率や耐食性の程度、材料コストの観点からアルミニウムが好ましい。
【0036】
凝縮水発生部16は円筒状をなしており、化学蓄熱部15の全周を周方向に囲むようにして配置されている。凝縮水発生部16の内径は化学蓄熱部15の外径と略同寸に設定されており、凝縮水発生部16は、その内周部16aが化学蓄熱部15の外周部15aに当接する状態で配置されている(図2参照)。
【0037】
図3に示すように、凝縮水発生部16の周壁部には、当該周壁部を厚み方向に貫通する貫通孔161が複数形成されている。これら各貫通孔161の形状は特に限定されるものではないが、例えば円状をなしている。本実施の形態では、各貫通孔161の形状及び大きさが等しくされるとともに、凝縮水発生部16の長さ方向及び周方向のそれぞれにおいて各貫通孔161が等間隔で配列されるように構成されている。
【0038】
上記のように凝縮水発生部16に貫通孔161が設けられていることで、図2に示すように、組み付け状態において化学蓄熱部15の外側に複数の空間部162が形成された状態となる。これら各空間部162は化学蓄熱部15の外周部15aに隣接する状態で形成される。空間部162を区画する貫通孔161の周縁部161aには結露による凝縮水が付着するため、空間部162にはその凝縮水が貯留される。すなわち、上記凝縮水が化学蓄熱部15の外周部15a(外周表面)に接する状態で空間部162内に保持されるものとなる。これにより、化学蓄熱部15(化学蓄熱材)と凝縮水とが好適に接触し、化学蓄熱部15での水和反応が促進される。
【0039】
また、触媒11の外周部11aと化学蓄熱部15の内周部15bとの間には、円筒状のマット17が配置される。マット17は、触媒装置10の幅方向(長さ方向と交差する方向)において触媒11と収容ケース12との間に介在し、熱膨張することで、触媒11を保持したり、触媒11への振動伝達を抑制する緩衝材としての役割を果たしたりするものである。マット17は、アルミナ繊維等の耐熱性繊維によって形成されている。
【0040】
なお、本実施の形態では、凝縮水発生部16の外周部16bが収容ケース12の内周部12aに当接しており、これにより、凝縮水発生部16が収容ケース12内で保持される。但し、凝縮水発生部16が収容ケース12に接していることは必須の構成ではなく、例えば、凝縮水発生部16における長さ方向の両端部に外側に張り出すフランジ部を設け、このフランジ部が収容ケース12の内周部12aに当接するものであってもよい。すなわち、凝縮水発生部16の外周部16bと収容ケース12の内周部12aとの間に隙間が形成される状態で凝縮水発生部16が収容ケース12内に保持される構成であってもよい。
【0041】
次に、エンジン21の運転状態と停止状態との切り替えが繰り返される場合の触媒装置10の動作について図2及び図4を参照しながら説明する。
【0042】
プラグインハイブリッド車では、通常、バッテリ23の充電率(SOC)が高い場合は、エンジン21を停止させ、モータ22のみによって車両を走行させるEVモードとなる。これに対し、バッテリ23の充電率が低い場合は、エンジン21の動力を電気エネルギに変換してバッテリ23を充電する処理等がなされるHVモードとなる。
【0043】
商用電源による充電がなされてバッテリ23が略満充電の状態とされた状態にあるとすると、この状態で車両のイグニッションスイッチがオンされた場合、車両の走行モードはEVモードとなる。このEVモードはバッテリ23の残量が低下して充電率がEV下限充電率S1となるまで継続される。この間、エンジン21の廃熱がなく、触媒11が加熱されないため、触媒温度は外気温と略同一の温度となる。この際、収容ケース12内の化学蓄熱部15では脱水反応及び水和反応のいずれも生じない。なお、化学蓄熱部15(化学蓄熱材)の初期状態は水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)となっている。
【0044】
タイミングt1において充電率がEV下限充電率S1に達すると、車両の走行モードがEVモードからHVモードに切り替えられる。これにより、バッテリ23が充電されて充電率が上昇する。
【0045】
また、エンジン21が運転状態(駆動状態)とされるHVモードへの切り替えが行われた場合は、エンジン21からの排ガスが触媒装置10に導入され、その排ガスにより触媒11が加熱される。そして、触媒温度の上昇が進んで活性温度Ythに達すると、触媒11が活性化され、排ガスの浄化が好適に行われる。
【0046】
ここで、収容ケース12の長さ方向における化学蓄熱部15、凝縮水発生部16及びマット17の各端面は露出していることに加え、マット17は繊維状となっている。また、化学蓄熱部15及び凝縮水発生部16の境界部においては、化学蓄熱部15の外周部15aと凝縮水発生部16の内周部16aとが当接しているとはいえ、シール処理までは施されておらず、気密性が保たれているわけではない。このため、収容ケース12内に導入された排ガスは、露出状態の端面やマット17、化学蓄熱部15と凝縮水発生部16の境界部を通じて化学蓄熱部15にも及び、その高温排ガスにより化学蓄熱部15が加熱される。
【0047】
そして、化学蓄熱部15の温度が反応温度(約350℃)に達すると、脱水反応が引き起こされる。その結果、導入された熱量が化学蓄熱部15に蓄熱されつつ、酸化マグネシウム(MgO)と水蒸気(H2O)が生成される。生成された水蒸気は、排ガスの圧力により下流側に押し出され、収容ケース12と凝縮水発生部16の間やマット17内を通り抜けて導出口141から排出されるほか、一部が収容ケース12内に残留して水分として滞留する。
【0048】
また、エンジン21から排出される排ガスには水分が含まれるところ、この排ガスは上記露出状態の端面や上記境界部を通じて凝縮水発生部16にも導入される。よって、凝縮水発生部16の空間部162には、水分を含む気体が存在することになる。
【0049】
HVモードの継続によりバッテリ23が充電され、タイミングt2において充電率がHV上限充電率S2まで上昇すると、車両の走行モードがHVモードからEVモードに切り替えられる。当該切り替えに伴うエンジン停止状態への移行により、触媒装置10への排ガスの導入が停止される。また、EVモードでは、吸気系により外部から取り込まれた空気がそのままエンジン21を通過して触媒装置10に導入される。つまり、触媒11の加熱及び保温状態が解除されるとともに、エンジン21からの通気により触媒装置10内が冷やされ、触媒11及び触媒装置10内の温度が低下し始める。
【0050】
なお、外部から取り込まれる通気には水分が含まれるところ、この通気は上記露出状態の端面や上記境界部を通じて凝縮水発生部16にも導入される。すなわち、凝縮水発生部16の空間部162には、HVモード中の排ガスだけでなく、EVモード中の通気によっても、水分を含む気体が供給されることになる。
【0051】
そして、タイミングt3において凝縮水発生部16(空間部162)の温度が露点温度を下回ると、結露が発生して空間部162内の水分が凝縮される。これにより、化学蓄熱部15(化学蓄熱材)の水和反応が引き起こされ、化学蓄熱部15にて放熱が行われる。
【0052】
触媒装置10内では中心側で温度が高く、外周側で温度が低くなるところ、本実施の形態では、熱伝導率の高い凝縮水発生部16が収容ケース12(触媒装置10の外周側)に寄せて配置されている。このため、凝縮水発生部16やその周辺領域にて温度低下が進みやすく、露点温度を下回りやすくなる。これにより、結露の発生が促進され、凝縮水が良好に生成される。
【0053】
また、空間部162内で凝縮された水分は、空間部162の周縁部161aに付着することで、空間部162内に貯留される。その結果、凝縮水が化学蓄熱部15に接する状態で保持され、凝縮水と化学蓄熱部15(化学蓄熱材)との接触が良好に果たされる。
【0054】
このようにして化学蓄熱部15が水和反応して放熱すると、その熱により触媒11が加温される。その結果、触媒温度が化学蓄熱部15の反応温度付近まで上昇し、その後、EVモードの継続期間において触媒11が保温される。
【0055】
タイミングt4においてバッテリ23の充電率がEV下限充電率S1まで低下すると、車両の走行モードが再びHVモードに切り替えられる。この切り替えにより、エンジン21からの排ガスが触媒装置10に再び導入され、当該排ガスにより触媒11が昇温される。
【0056】
その際、HVモードに切り替えられる直前のEVモードでは、化学蓄熱部15から発せられる熱により触媒11が加温され、その温度が化学蓄熱部15の反応温度付近に保たれている。このため、HVモードへの切り替え時における触媒温度と活性温度Ythとの温度差ΔYが小さく抑えられ、活性温度Ythまでの昇温時間が短縮される。これにより、触媒11を速やかに活性させることができ、EVモードからHVモードに切り替えられた際の排ガスの浄化を好適に行うことが可能になる。
【0057】
また、化学蓄熱部15では、触媒装置10に排ガスが導入されることにより、脱水反応が引き起こされ、再び蓄熱が行われる。この蓄熱された熱量は、その後、バッテリ23の充電率がHV上限充電率S2まで上昇し、EVモードに切り替えられた場合に、水和反応による放熱量として取り出される。この熱により触媒11が加温され、反応温度付近の温度に保たれる。すなわち、上記と同様のサイクルが繰り返される。
【0058】
なお、上記では、EVモードからHVモードに切り替えられ、その後、EVモードに再び切り替えられる場合を例にとって触媒装置10の動作を説明したが、HVモードにおいてエンジン21の運転状態と停止状態とが繰り返される場合にも同様に動作する。
【0059】
以上、詳述した本実施の形態によれば、以下の優れた効果を奏する。
【0060】
(1)脱水反応により蓄熱し且つ水和反応により放熱する化学蓄熱部15を備え、この化学蓄熱部15が収容ケース12内の排ガスが流通する位置において触媒11の周囲部に配置され、収容ケース12内の結露による凝縮水と化学蓄熱部15とが反応して発せられる熱により触媒11が加温される構成とした。
【0061】
この構成によれば、収容ケース12内の排ガスが及ぶ領域に化学蓄熱部15が配置されるため、エンジン21の運転状態では、エンジン21からの排ガスにより化学蓄熱部15に蓄熱させることができるとともに、水分が含まれる気体を化学蓄熱部15の周辺部に存在させることができる。よって、エンジン21の停止状態に切り替えられて収容ケース12内の温度が低下した際に、化学蓄熱部15の周辺部に存在する水分を凝縮させて凝縮水を生成し、その凝縮水と化学蓄熱部15とを反応させて放熱させることができる。
【0062】
その際、化学蓄熱部15が触媒11の周囲部に配置されていることで、化学蓄熱部15から発せられる熱により触媒11を加温することができる。これにより、エンジン21が停止されて触媒装置10に排ガスが導入されない期間において、触媒温度が高く保たれるものとなり、その後、エンジン21が再び運転状態とされた場合に、切り替え時点での触媒温度と活性温度Ythとの温度差ΔYを小さく抑えることができる。よって、エンジン21の再始動により排ガスが導入されて触媒11が昇温された際、速やかに活性温度域に到達させることができ、迅速に触媒11を活性させて排ガスの浄化を好適に行うことが可能になる。
【0063】
(2)収容ケース12内において化学蓄熱部15に隣接して空間部162を形成し、当該空間部162において結露による凝縮水が貯留される構成とした。
【0064】
この構成によれば、結露により生じた凝縮水が空間部162に集約されるとともに、その集約された凝縮水が化学蓄熱部15に接する状態で保持されるため、収容ケース12内で生成される凝縮水を化学蓄熱部15に効率よく接触させることができる。これにより、水和反応を良好に生じさせることができ、触媒11を好適に加温することが可能になる。
【0065】
(3)エンジン21が運転状態から停止状態に切り替えられた場合に結露による凝縮水を発生させる凝縮水発生部16を化学蓄熱部15に隣接して配置するとともに、この凝縮水発生部16を収容ケース12の熱伝導率と同等又はそれよりも高い熱伝導率を有する材質の熱伝導部材により形成する構成とした。
【0066】
この構成によれば、化学蓄熱部15のすぐ近くで凝縮水を発生させることができ、化学蓄熱部15と凝縮水との接触を良好に果たすことができる。これにより、水和反応が促進され、触媒11を好適に加温することが可能になる。また、収容ケース12の熱伝導率以上の熱伝導率を有する材質の熱伝導部材を用いることで、当該部材のみにより凝縮水発生部16を形成することができ、化学蓄熱部15の近傍で凝縮水を効率よく生成する機能を簡単な構成により担保することが可能になる。
【0067】
(4)凝縮水発生部16を収容ケース12の周壁部(側壁部)と化学蓄熱部15との間に配置する構成とした。この構成によれば、凝縮水発生部16が触媒装置10の外周側に寄せて配置されるため、エンジン21の停止状態に切り替えられた場合に凝縮水発生部16を冷えやすくすることができ、結露の発生を好適に促進することが可能になる。
【0068】
(5)凝縮水発生部16に複数の貫通孔161を備え、組み付け状態において貫通孔161により空間部162が形成される構成とした。
【0069】
この構成によれば、結露を促進して凝縮水を効率よく生成する機能と、その生成した凝縮水を化学蓄熱部15に接する状態で保持する機能とを一の部材(熱伝導部材)により両立することができる。よって、エンジン21の停止時における化学蓄熱部15の水和反応を促進して触媒11を好適に加温できる触媒装置を簡単な構成により実現することができる。
【0070】
(6)凝縮水発生部16と触媒11との間に化学蓄熱部15を配置する構成とした。この構成によれば、凝縮水発生部16及び触媒11の双方が化学蓄熱部15と近くなるため、結露による凝縮水が化学蓄熱部15に接触しやすいだけでなく、化学蓄熱部15の熱が触媒11に伝わりやすい構成とすることができる。よって、化学蓄熱部15での水和反応の促進と触媒11の効率的な昇温とを好適に両立させることができる。
【0071】
<その他の実施の形態>
本発明は、上述した実施の形態に係る触媒装置10に限られるものではなく、例えば次のような構成を採用してもよい。
【0072】
(a)上記実施の形態に係る触媒装置10を、バッテリからの電力供給により触媒11を加熱する電気ヒータ(触媒ヒータ)が設けられた電気加熱触媒装置に適用してもよい。電気加熱触媒装置では、エンジン21の停止状態から運転状態への切り替えに際して電気ヒータに通電して触媒を加熱することで、停止状態中に冷えた触媒を昇温させるが、例えば、冬季など、ヒータ通電の開始時における触媒温度が非常に低くなる状況では、ヒータ出力を高めて目標温度(活性温度)まで急激に高める必要があり、触媒への負荷が高くなることが想定される。
【0073】
この点、エンジン21の停止状態にて化学蓄熱部15の水和反応により触媒を加温し、触媒温度を高く保っておくことで、ヒータ通電の開始時における目標温度との温度差を小さく抑えることができ、触媒への負荷を軽減することが可能となる。さらに、ヒータ出力を低く抑えたり、通電期間を短縮したりすることができるため、電力消費量を低減することが可能になる。加えて、従来の電気加熱触媒装置では、電気ヒータによる加熱時の熱エネルギーが、触媒の昇温だけでなく、触媒装置内に自然発生した結露(凝縮水)の加熱にも用いられてしまうが、触媒装置10を適用した場合には、水和反応によって凝縮水を化学蓄熱部15に吸収することができ、さらには、電気ヒータによる熱エネルギーを化学蓄熱部15の脱水反応時の蓄熱量として利用することができるため、無駄な電力消費を抑制することが可能になる。
【0074】
なお、電気ヒータへの通電に使用されるバッテリは、モータ22を駆動するためのバッテリ23であってもよいし、それとは別に搭載されるバッテリであってもよい。
【0075】
(b)上記実施の形態では、化学蓄熱部15の放熱により昇温される触媒温度が活性温度よりも低い温度に留まる構成としたが、活性温度以上の温度に昇温される構成としてもよい。この構成によれば、エンジン21の停止状態において触媒温度が活性温度以上に保たれるため、触媒が活性化された状態で運転状態への切り替えを行うことができる。このような構成は、化学蓄熱部15を構成する化学蓄熱材として、その反応温度が活性温度よりも高いものを用いることで実現することができる。
【0076】
(c)上記実施の形態では、化学蓄熱部15を円筒状に形成し、化学蓄熱部15が触媒11(マット17)の全周を覆う構成としたが、化学蓄熱部15を円弧状断面の曲面状に形成し、触媒11の周方向において化学蓄熱部15が触媒11の一部を覆う構成としてもよい。また、凝縮水発生部16についても、必ずしも化学蓄熱部15の全周を覆う必要はなく、触媒11の周方向において凝縮水発生部16が化学蓄熱部15の一部を覆う構成としてもよい。
【0077】
(d)上記実施の形態では、熱伝導率が高い部材(凝縮水発生部16)に貫通孔161を設けて空間部162を形成する構成としたが、収容ケース12よりも低い熱伝導率の材質により形成された部材に貫通孔を設けて空間部を形成する構成としてもよい。この場合でも、自然発生の結露による凝縮水を化学蓄熱部15に接する状態で保持することができ、そのような空間部が存在しない場合よりも効率的に凝縮水と化学蓄熱部15を接触させることが可能になる。
【0078】
(e)上記実施の形態では、凝縮水発生部16に貫通孔161を形成し、組み付け状態において収容ケース12側と化学蓄熱部15側との両方に開口する空間部162が設けられる構成としたが、空間部は少なくとも化学蓄熱部15側に開口するものであればよい。すなわち、貫通孔161に代えて、凝縮水発生部16の内周側にのみ開口する凹部を設けてもよい。このような場合でも、結露による凝縮水を化学蓄熱部15に接する状態で保持することができる。
【0079】
但し、化学蓄熱部15の脱水反応により生じた水蒸気を収容ケース12と凝縮水発生部16の間を通して逃がせるようにする上では、空間部は収容ケース12側にも開口する構成であることが好ましい。また、貫通孔161により空間部を形成する場合は、凝縮水発生部16の厚みが空間部の深さとなり、空間部の容量を等しくして比較した場合に、上記凹部により空間部を形成する場合よりも凝縮水発生部16の厚みを小さくすることができ、凝縮水発生部16の薄型化に貢献できるという利点もある。
【0080】
また、上記実施の形態では、貫通孔161を円形状としたが、貫通孔161の形状はこれに限定されるものではなく、矩形状としたり、凝縮水発生部16の長さ方向に延びる長孔状としたりするなど、他の形状であってもよい。また、各貫通孔161の形状は同一である必要はなく、異なる形状に形成される構成であってもよい。また、各貫通孔161の大きさも同一である必要はなく、異なる大きさに形成される構成であってもよい。
【0081】
(f)上記実施の形態では、触媒11の外周側にマット17を配置し、そのマット17の外周側に化学蓄熱部15及び凝縮水発生部16を配置する構成としたが、触媒11の外周側に化学蓄熱部15及び凝縮水発生部16を配置し、凝縮水発生部16の外周側にマット17を配置する構成としてもよい。すなわち、マット17により、触媒11、化学蓄熱部15及び凝縮水発生部16が保持される構成としてもよい。
【0082】
(g)上記実施の形態では、触媒装置10をプラグインハイブリッド車に適用したが、ハイブリッド車に適用することもできる。また、アイドリングストップ機能を搭載した車両に適用してもよい。特に、粒子状物資(PM)を燃焼除去する必要があるディーゼル車用の触媒装置では高い触媒温度が求められるため、エンジン停止時において触媒温度を高く保てることで、有効に機能させることができる。
【符号の説明】
【0083】
10…触媒装置、11…触媒、12…収容ケース、15…化学蓄熱部、16…凝縮水発生部(熱伝導部材)、21…エンジン(内燃機関)、22…モータ(電動機)、162…空間部(水保持部)。
図1
図2
図3
図4