(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154324
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】煙感知器
(51)【国際特許分類】
G08B 17/107 20060101AFI20221005BHJP
G08B 17/00 20060101ALI20221005BHJP
G01N 21/53 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
G08B17/107 A
G08B17/00 G
G01N21/53 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057291
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002169
【氏名又は名称】彩雲国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】足立 成紀
(72)【発明者】
【氏名】内田 真道
【テーマコード(参考)】
2G059
5C085
5G405
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB01
2G059BB09
2G059CC19
2G059DD02
2G059DD12
2G059DD13
2G059DD16
2G059DD18
2G059EE01
2G059GG02
2G059KK01
2G059NN01
2G059PP03
5C085AA03
5C085CA08
5C085FA40
5G405AA01
5G405AB02
5G405CA09
5G405FA30
(57)【要約】
【課題】湯気が検煙部内に流入することを防止し、誤検知を防止可能な煙感知器を提供する。
【解決手段】発光素子と、受光素子と、を有する検煙部4と、検煙部4へと煙を導入するための煙流路5と、を備え、検煙部4に導入された煙によって散乱した該発光素子の光を受光素子が受光することで煙検知を行う煙感知器1において、煙流路5を冷却及び加熱をするためのペルチェ素子7を更に備えており、ペルチェ素子7が冷却側に制御された際には、煙流路5に流入した湯気の水分を凝結又は凍結可能に、ペルチェ素子7が、加熱側に制御された際には、該凝結によって生じた水を蒸発若しくは該凍結によって生じた氷を融解又は融解後蒸発させて該煙流路より排出可能に構成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と、受光素子と、を有する検煙部と、
該検煙部へと煙を導入するための煙流路と、を備え、
該検煙部に導入された煙によって散乱した該発光素子の光を受光素子が受光することで煙検知を行う煙感知器において、
該煙流路を冷却及び加熱するためのペルチェ素子を更に備えており、
該ペルチェ素子が冷却側に制御された際には、該煙流路に流入した湯気の水分を凝結又は凍結可能に、該ペルチェ素子が、加熱側に制御された際には、該凝結によって生じた水を蒸発若しくは該凍結によって生じた氷を融解又は融解後蒸発させて該煙流路より排出可能に構成されていることを特徴とする煙感知器。
【請求項2】
前記煙流路には、傾斜部が設けられており、
前記ペルチェ素子は、該傾斜部に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の煙感知器。
【請求項3】
前記ペルチェ素子は、前記煙感知器の周囲温度が所定値を上回った際には、冷却側に制御され、該周囲温度が、該所定値を下回った際には、加熱側に制御されることを特徴とする請求項1又は2に記載の煙感知器。
【請求項4】
前記ペルチェ素子は、任意に加熱側に制御可能となっていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の煙感知器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、煙感知器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、煙感知器がある。煙感知器は、暗箱として設けられた検煙部と、該検煙部内に設けられた発光素子と受光素子とを有しており、検煙部内に流入した煙によって、発光素子の光が散乱されることにより生じた散乱光を受光素子が受光することによって、煙を感知するものとなっている。この様な煙感知器は、主に火災感知器として利用されており、火災で発生した煙を検知した際に、火災警報を発する様に構成されている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
煙感知器の誤検知の要因の1つとして、検煙部内への湯気の流入が挙げられる。湯気は、煙と同様にエアロゾルの一種であり、該湯気が、検煙部内に流入すると、煙と同様に発光素子の光を散乱させてしまい、それで生じた散乱光を受光素子が受光することによって、誤検知が生じることとなる。
【0005】
そこで、本発明では、湯気が検煙部内に流入することを防止し、誤検知を防止可能な煙感知器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、発光素子と、受光素子と、を有する検煙部と、該検煙部へと煙を導入するための煙流路と、を備え、該検煙部に導入された煙によって散乱した該発光素子の光を受光素子が受光することで煙検知を行う煙感知器において、該煙流路を冷却及び加熱するためのペルチェ素子を更に備えており、該ペルチェ素子が冷却側に制御された際には、該煙流路に流入した湯気の水分を凝結又は凍結可能に、該ペルチェ素子が、加熱側に制御された際には、該凝結によって生じた水を蒸発若しくは該凍結によって生じた氷を融解又は融解後蒸発させて該煙流路より排出可能に構成されていることを特徴とする煙感知器である。
【0007】
尚、本発明は、前記煙流路に、傾斜部を設け、前記ペルチェ素子を、該傾斜部に配設することも可能である。又、本発明は、前記ペルチェ素子を、前記煙感知器の周囲温度が所定値を上回った際には、冷却側に制御され、該周囲温度が、該所定値を下回った際には、加熱側に制御することが可能である。又、本発明は、前記ペルチェ素子を、任意に加熱側に制御可能とすることも可能である。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、煙流路を冷却及び加熱をするためのペルチェ素子を設け、該ペルチェ素子が冷却側に制御された際には、該煙流路に流入した湯気を凝結又は凍結可能に、該ペルチェ素子が、加熱側に制御された際には、該凝結によって生じた水を蒸発若しくは該凍結によって生じた氷を融解又は融解後蒸発させて該煙流路より排出可能に構成したので、湯気が検煙部内に流入することを防止し、誤検知を防止可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の第1実施形態を
図1に基づき説明する。煙感知器1は、筐体2を備えている。筐体2には、筐体2内に煙を取り入れるための開口部3が設けられており、筐体2内には、検煙部4及び検煙部4に該煙を導入するための煙流路5が設けられている。
【0011】
検煙部4は、公知の煙感知器と同様の構造を適宜採用可能であり、周縁部にラビリンスが形成された暗箱となっており、その内方に発光素子(図示せず)及び受光素子(図示せず)が設けられている。本実施形態において、該受光素子は、該発光素子の光を直接受光しない位置に配設されており、検煙部4内に導入された煙によって、該受光素子の光が散乱されることによって生じた散乱光を該受光素子が受光することによって、煙を感知できるものとなっている。例えば、該発光素子しては、発光ダイオードが、該受光素子としてはフォトダイオードが採用可能である。
【0012】
煙流路5は、内方に向かって前上がりに傾斜した傾斜部6を有しており、傾斜部6には、その天面にペルチェ素子7が配設されている。本実施形態においては、煙流路5は、更に、傾斜部6の先端側から検煙部4へと延在する折返部8を有しており、折返部8には、検煙部4に虫等の異物が侵入することを防止する防虫網9が取り付けられている。折返部8があることで、煙よりも重いエアロゾル、例えば、湯気等が、検煙部4へと流入することを防止していると共に傾斜部6に、湯気等が滞留する様になっている。
【0013】
開口部3と傾斜部6との間には、溝様に形成された水受部10が設けられている。水受部10は、湯気由来の水を回収し、煙感知器1の外に液体として漏れ出ない様にするために設けられており、本実施形態においては、底にヒータ11が設けられている。ヒータ11は、水受部10に回収された水を蒸発させて開口部3より水蒸気として放出するために設けられている。
【0014】
ペルチェ素子7は、煙流路5を冷却及び加熱するために設けられおり、そのため、流れる電流の極性を入れ替え可能に電源(図示せず)と接続されている。ペルチェ素子7は、冷却側で制御される際には、湯気中の水分を凍結可能程度の冷却性能を有しているものが採用される。本実施形態においては、ペルチェ素子7は、湯気中の水分が凍結する程度の冷却性能を有しているものが採用されている。
【0015】
ペルチェ素子7は、後述する通り、煙感知器1の周囲の温度に基づいて、冷却側と加熱側に制御されるものとなっている。該温度の検出は、ペルチェ素子7の起電力に基づいて、検出することが可能である。尚、煙感知器1にて周囲温度を測定している場合、煙感知器1の検出値に基づいて、該温度を検出することも可能である。
【0016】
煙感知器1の周囲温度が、所定値、例えば、シャワー等の温水の使用が疑われる温度、を上回った際に、ペルチェ素子7は、煙流路5側の面が吸熱する様に、即ち、煙流路5を冷却する様に、ペルチェ素子7に流れる電流の極性が制御される。この状態で、開口部3より煙流路5内に湯気が流入した場合、湯気は、ペルチェ素子7によって冷却され、水分が凝結し、凝結した水分はペルチェ素子7上に凍結される。凍結しきれなかった水があった場合には、傾斜部6を流れて水受部10へと溜まることとなる。
【0017】
この際、煙流路5に折返部8が設けられていることが好ましい。折返部8が設けられていることで、煙と比較して重い湯気は、傾斜部6に滞留することになり、より確実に湯気中の水分を凝結させ、ペルチェ素子7上に凍結させることが可能となる。
【0018】
尚、煙流路5に流入したのが煙だった場合には、煙は、湯気とは異なり煤等の固体成分を含んでいるため、ペルチェ素子7によって冷却されても少なくとも該固体成分は、煙流路5を通って、検煙部4へと流入することが可能であり、検煙部4に流入した該固体成分によって、前記発光素子の光が散乱されることとなるため、問題なく煙を検知することが可能となっている。
【0019】
煙感知器1の周囲温度が、前記所定値よりを下回っている場合、即ち、温水の使用がなく、湯気が発生していないと判断できる温度である場合は、ペルチェ素子7は、上記とは逆に、煙流路5側の面が発熱する様に、即ち、煙流路5を加熱する様に、ペルチェ素子7に流れる電流の極性が制御される。これによって、前記凍結によって、ペルチェ素子7の表面に付着している氷は、融解され、傾斜部6を流れて水受部10へと溜まる。水受部10に溜まった水は、ヒータ11によって加熱され、開口部3より煙感知器1外に放出されることになる。
【0020】
この際、煙感知器1は、ペルチェ素子7等による水の加熱によって、発生する湯気によって、誤検知が生じない様に、煙監視を休止させるか前記受光素子が前記散乱光を受光しても警報を出さない様になっている。又、必要に応じて、前記受光素子が前記散乱光を受光した際に注意報を出すようにすることは可能である。尚、この時に火災が発生した場合、周囲温度が上昇するので、ペルチェ素子7は冷却側に制御され、煙監視状態となる。
【0021】
従って、本実施形態においては、煙流路5に湯気が流入したとしてもペルチェ素子7によって、湯気中の水分は、凍結されることになるため、該湯気が、検煙部4へと流入することを防止することができ、煙感知器1が誤検知することを防止することが可能である。
【0022】
本発明の第2実施形態を
図2に基づいて説明する。本実施形態と第1実施形態との相違は、湯気の水分をペルチェ素子7上に凍結させるのではなく、凝集させて結露させることである。第1実施形態と同符号で示した構成は、同実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0023】
本実施形態において、煙流路5の傾斜部6には、その天面及び底面の各々にペルチェ素子7が配設されており、ペルチェ素子7は、少なくとも湯気中の水分を凝結可能な冷却性能を有すると共に凝結した水を蒸発可能な加熱性能を有しているものが採用されている。尚、本実施形態において、煙流路5に折返部8が設けられていない関係上、防虫網9は、開口部3に取り付けられている。
【0024】
本実施形態においては、前記周囲温度が、前記所定値を上回っている状態で、煙流路5内に湯気が流入した場合、該湯気は、冷却側に制御された上下のペルチェ素子7によって冷却され凝集し、ペルチェ素子7上に結露していく。該結露は、次第に傾斜部6を流れ落ち水受部10へと排水される。水受部10に排水された水は、自然蒸発等によって開口部3より煙感知器1外に放出される。
【0025】
逆に、前記周囲温度が、前記所定値を下回っている状態では、加熱側に制御されたペルチェ素子7によって、ペルチェ素子7上に残った水は、加熱されて蒸発し、開口部3より煙感知器1外に放出される様になっている。
【0026】
従って、本実施形態においては、煙流路5に湯気が流入したしてもペルチェ素子7によって、湯気中の水分は、凝結し、結露となるため。該湯気が、検煙部4へと流入することを防止することができ、煙感知器1が誤検知することを防止することが可能である。
【0027】
本発明を、上記実施形態に基づき説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【0028】
(1)上記第1実施形態において、ペルチェ素子7を加熱側に制御する際に、上記第2実施形態と同様にペルチェ素子7に付着した水を蒸発させて排出する様にしてもよい。
【0029】
(2)上記第2実施形態に、第1実施形態のヒータ11や折返部8を設けることも可能である。
【0030】
(3)上記実施形態において、ペルチェ素子7を煙感知器1の周囲温度により、冷却側と加熱側とに切り替えるものとしたが、任意のタイミングでペルチェ素子9を加熱側に制御できる様にすることも可能である。例えば、煙感知器1が、宿泊施設の客室に設置されている様な場合において、室内清掃等の該施設の管理者が室内にいるタイミングで、凝結した水を除去し、客室内に客がいる場合には、常時煙を監視する様にすることも可能となる。
【0031】
(4)煙感知器1の周囲の湿度に基づいて、ペルチェ素子7を冷却側と加熱側に切り替える様にすることも可能である。この場合、ペルチェ素子7は、周囲の湿度が上昇した場合に冷却側に、同湿度は、低下した場合に加熱側に制御される。
【0032】
(5)煙感知器1の周囲の温度を測定する温度計又は温湿度計を別途設けることも可能である。
【0033】
(6)上記実施形態において、ペルチェ素子7で直接的に煙流路5の冷却や加熱を行うものとしたが、煙流路5を構成する壁面を金属等の熱伝導性の高い素材で形成し、該壁面を冷却及び加熱することで、ペルチェ素子7により間接的に煙流路5の冷却や加熱を行うことも可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 煙感知器 2 筐体 3 開口部
4 検煙部 5 煙流路 6 傾斜部
7 ペルチェ素子 8 折返部 9 防虫網
10 水受部 11 ヒータ