(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154329
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】クーラント吐出部材および刃先交換式切削工具
(51)【国際特許分類】
B23B 27/10 20060101AFI20221005BHJP
【FI】
B23B27/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057310
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】作山 徹
(72)【発明者】
【氏名】長野 倫大
【テーマコード(参考)】
3C046
【Fターム(参考)】
3C046BB07
(57)【要約】
【課題】切刃に効率よくクーラントを供給できるクーラント吐出部材、およびこれを備える刃先交換式切削工具を提供する。
【解決手段】中心軸Cに沿って上下方向に延びる取付筒11と、取付筒11の上側部分に接続され、中心軸Cと交差する吐出方向に延びるノズル部12と、取付筒11の内部およびノズル部12の内部にわたって延び、クーラントが流れる流路14と、を備え、流路14は、取付筒11の外面に開口するクーラント供給口と、ノズル部12の吐出方向の先端側を向く面に開口するクーラント吐出口19と、クーラント供給口とクーラント吐出口19とを連通する連通流路と、を有し、クーラント吐出口19は、吐出方向からクーラント吐出口19を正面に見て、上下方向と直交する左右方向に延びる下辺19aを有し、クーラント吐出口19のうち、下辺19aを含む下端部19dの左右方向の開口幅が、上端部19eの左右方向の開口幅よりも大きい。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クーラント供給路を有するホルダに取り付けられ、前記クーラント供給路から供給されるクーラントを切刃に向けて吐出するクーラント吐出部材であって、
前記クーラント供給路の開口部に挿入され、中心軸に沿って上下方向に延びる取付筒と、
前記取付筒の上側部分に接続され、前記中心軸と交差する吐出方向に延びるノズル部と、
前記取付筒の内部および前記ノズル部の内部にわたって延び、前記クーラントが流れる流路と、を備え、
前記流路は、
前記取付筒の外面に開口するクーラント供給口と、
前記ノズル部の前記吐出方向の先端側を向く面に開口するクーラント吐出口と、
前記クーラント供給口と前記クーラント吐出口とを連通する連通流路と、を有し、
前記クーラント吐出口は、前記吐出方向から前記クーラント吐出口を正面に見て、前記上下方向と直交する左右方向に延びる下辺を有し、
前記クーラント吐出口のうち、前記下辺を含む下端部の前記左右方向の開口幅が、上端部の前記左右方向の開口幅よりも大きい、
クーラント吐出部材。
【請求項2】
前記クーラント吐出口は、下側へ向かうに従い前記左右方向の開口幅が大きくなる部分を含む、
請求項1に記載のクーラント吐出部材。
【請求項3】
前記クーラント吐出口は、前記吐出方向から前記クーラント吐出口を正面に見て、半円形状である、
請求項1または2に記載のクーラント吐出部材。
【請求項4】
前記クーラント吐出口は、前記吐出方向から前記クーラント吐出口を正面に見て、三角形状である、
請求項1または2に記載のクーラント吐出部材。
【請求項5】
前記クーラント吐出口は、前記吐出方向から前記クーラント吐出口を正面に見て、台形状である、
請求項1または2に記載のクーラント吐出部材。
【請求項6】
前記クーラント吐出口は、前記左右方向の開口幅が前記上下方向において一定である部分を含む、
請求項1または2に記載のクーラント吐出部材。
【請求項7】
前記クーラント供給口は、円孔状である、
請求項1から6のいずれか1項に記載のクーラント吐出部材。
【請求項8】
前記クーラント吐出口の開口面積が、前記クーラント供給口の開口面積よりも小さい、
請求項1から7のいずれか1項に記載のクーラント吐出部材。
【請求項9】
前記連通流路は、前記クーラント供給口と前記クーラント吐出口とを滑らかに接続する湾曲部を有する、
請求項1から8のいずれか1項に記載のクーラント吐出部材。
【請求項10】
前記湾曲部は、
前記湾曲部の内面のうち前記吐出方向の先端側の壁部に位置し、前記中心軸に沿う断面視で凸曲線状をなす内コーナ部と、
前記湾曲部の内面のうち前記吐出方向の後端側の壁部に位置し、前記中心軸に沿う断面視で凹曲線状をなす外コーナ部と、を有する、
請求項9に記載のクーラント吐出部材。
【請求項11】
前記切刃を有する切削インサートと、
前記切削インサートが着脱可能に取り付けられるインサート取付座を有する前記ホルダと、
請求項1から10のいずれか1項に記載のクーラント吐出部材と、を備え、
前記クーラント吐出口の前記下辺を含む下端部の前記吐出方向の先端側に、前記吐出方向から見て前記左右方向に延びる前記切刃が配置される、
刃先交換式切削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クーラント吐出部材および刃先交換式切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載の切削工具が知られている。この切削工具は、ポケットを有するホルダと、ポケットに位置する切削インサートと、切削インサートをポケットに固定するクランプ部材と、流入口および流出口を有する流路と、を備える。クランプ部材は、ネジと、クランプと、を有する。クランプの先端部には、流出口として第1開口部が開口する。特許文献1では、クーラントを左右方向に広がった状態で第1開口部から流出させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の切削工具では、切刃に効率よくクーラントを供給する点に改善の余地があった。
【0005】
本発明は、切刃に効率よくクーラントを供給できるクーラント吐出部材、およびこれを備える刃先交換式切削工具を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの態様は、クーラント供給路を有するホルダに取り付けられ、前記クーラント供給路から供給されるクーラントを切刃に向けて吐出するクーラント吐出部材であって、前記クーラント供給路の開口部に挿入され、中心軸に沿って上下方向に延びる取付筒と、前記取付筒の上側部分に接続され、前記中心軸と交差する吐出方向に延びるノズル部と、前記取付筒の内部および前記ノズル部の内部にわたって延び、前記クーラントが流れる流路と、を備え、前記流路は、前記取付筒の外面に開口するクーラント供給口と、前記ノズル部の前記吐出方向の先端側を向く面に開口するクーラント吐出口と、前記クーラント供給口と前記クーラント吐出口とを連通する連通流路と、を有し、前記クーラント吐出口は、前記吐出方向から前記クーラント吐出口を正面に見て、前記上下方向と直交する左右方向に延びる下辺を有し、前記クーラント吐出口のうち、前記下辺を含む下端部の前記左右方向の開口幅が、上端部の前記左右方向の開口幅よりも大きい。
また、本発明の刃先交換式切削工具の一つの態様は、前記切刃を有する切削インサートと、前記切削インサートが着脱可能に取り付けられるインサート取付座を有する前記ホルダと、上述のクーラント吐出部材と、を備え、前記クーラント吐出口の前記下辺を含む下端部の前記吐出方向の先端側に、前記吐出方向から見て前記左右方向に延びる前記切刃が配置される。
【0007】
本発明のクーラント吐出部材および刃先交換式切削工具は、クーラント吐出口の上端部における左右方向の開口幅に比べて、下端部における左右方向の開口幅が大きい。またクーラント吐出口の下端部には、左右方向に延びる下辺が含まれる。このため、クーラント吐出口の下端部の吐出方向の先端側に、吐出方向から見て左右方向に延びる切刃を配置することで、切刃に効率よくクーラントを供給することができる。
【0008】
詳しくは、クーラント吐出口が同じ開口面積(流路断面積)である場合、例えば
図8(a)に2点鎖線で示す従来例のように、円形状のクーラント吐出口と比べて、本発明では、クーラント吐出口の上下方向の寸法を小さく抑えることができ、吐出後の上下方向へのクーラント拡散を抑制できる。このため本発明によれば、クーラントによって切刃を冷却する性能、切屑を分断する性能、および被削材の加工面を潤滑する性能等が安定して高められる。すなわち、クーラント吐出口から吐出されるクーラントを効率よく切削に利用できる。
【0009】
また、クーラント吐出口が同じ開口面積である場合、例えば
図8(b)に2点鎖線で示す従来例のように、左右方向に長い楕円形状のクーラント吐出口と比べて、本発明では、クーラント吐出口の左右方向の開口幅を小さく抑えられる分、ノズル部を左右方向に小型化しやすい。このため、切削部位からすくい面に沿うようにノズル部へ向かう切屑がノズル部に絡まるような不具合を、本発明によれば抑制しやすい。
【0010】
また、クーラント吐出口が同じ開口面積である場合、例えば
図8(c)に2点鎖線で示す従来例のように、複数の小径円孔を有するクーラント吐出口と比べて、本発明では、クーラント吐出口から吐出されるクーラントの吐出圧力および吐出量を安定して高めることができ、かつクーラントの吐出指向性にも優れる。このため、本発明によれば、クーラントによって切刃を冷却する性能、切屑を分断する性能、および被削材の加工面を潤滑する性能等が安定して高められる。
【0011】
上記クーラント吐出部材において、前記クーラント吐出口は、下側へ向かうに従い前記左右方向の開口幅が大きくなる部分を含むことが好ましい。
【0012】
この場合、吐出後のクーラントの断面が、下側へ向かうに従い徐々に左右方向に幅広となる。クーラント吐出口の下端部の吐出方向の先端側に切刃を配置したときに、切刃が延びる刃長方向(吐出方向から見て左右方向)に沿って、クーラントを安定して拡散しやすい。
【0013】
上記クーラント吐出部材において、前記クーラント吐出口は、前記吐出方向から前記クーラント吐出口を正面に見て、半円形状であることが好ましい。
【0014】
この場合、クーラント吐出口から吐出するクーラントの吐出圧力および吐出量が安定して高められ、かつクーラントの吐出指向性にも優れる。
【0015】
上記クーラント吐出部材において、前記クーラント吐出口は、前記吐出方向から前記クーラント吐出口を正面に見て、三角形状であることとしてもよい。
【0016】
上記クーラント吐出部材において、前記クーラント吐出口は、前記吐出方向から前記クーラント吐出口を正面に見て、台形状であることとしてもよい。
【0017】
上記クーラント吐出部材において、前記クーラント吐出口は、前記左右方向の開口幅が前記上下方向において一定である部分を含むことが好ましい。
【0018】
この場合、例えば、クーラント吐出口の下端部における左右方向の開口幅を上下方向に一定とすることで、切刃へのクーラント供給量を増大でき、上述の作用効果がより顕著となる。
【0019】
上記クーラント吐出部材において、前記クーラント供給口は、円孔状であることが好ましい。
【0020】
ホルダのクーラント供給路の開口部は、一般にドリルやエンドミル等により円穴状に形成されている。このため、クーラント供給口が円孔状であると、クーラント供給路からクーラント供給口に効率よくクーラントを流すことができる。また、例えば取付筒が円筒状である場合、取付筒の下面にクーラント供給口を開口させることで、クーラント供給口の開口面積を大きく確保しやすい。
【0021】
上記クーラント吐出部材において、前記クーラント吐出口の開口面積が、前記クーラント供給口の開口面積よりも小さいことが好ましい。
【0022】
この場合、クーラント吐出口から吐出されるクーラントの流速を高めることができる。クーラントを安定して切刃に到達させやすくなり、クーラントによって切刃を冷却する性能、切屑を分断する性能、および被削材の加工面を潤滑する性能等がより安定的に高められる。
【0023】
上記クーラント吐出部材において、前記連通流路は、前記クーラント供給口と前記クーラント吐出口とを滑らかに接続する湾曲部を有することが好ましい。
【0024】
この場合、互いに異なる向きに延びるクーラント供給口とクーラント吐出口とを、湾曲部によって滑らかに繋ぐことができる。流路内を流れるクーラントに対流や乱流などが生じることを抑制して、圧力損失を低減できる。このため、切刃へのクーラント供給効率がより高められる。
【0025】
上記クーラント吐出部材において、前記湾曲部は、前記湾曲部の内面のうち前記吐出方向の先端側の壁部に位置し、前記中心軸に沿う断面視で凸曲線状をなす内コーナ部と、前記湾曲部の内面のうち前記吐出方向の後端側の壁部に位置し、前記中心軸に沿う断面視で凹曲線状をなす外コーナ部と、を有することが好ましい。
【0026】
この場合、湾曲部のうち吐出方向の先端側の壁部に沿って上側へ流れるクーラントが吐出方向の先端側へ向きを変える際の対流や乱流等が、湾曲部の内コーナ部によって、安定して抑えられる。
また、湾曲部のうち吐出方向の後端側の壁部に沿って上側へ流れるクーラントが吐出方向の先端側へ向きを変える際の対流や乱流等が、湾曲部の外コーナ部によって、安定して抑えられる。
このため、流路を流れるクーラントの圧力損失が安定して低減される。
【発明の効果】
【0027】
本発明の一つの態様のクーラント吐出部材および刃先交換式切削工具によれば、切刃に効率よくクーラントを供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本実施形態の刃先交換式切削工具を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態の刃先交換式切削工具の一部を示す分解斜視図である。
【
図3】
図3は、本実施形態のクーラント吐出部材を示す上面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態のクーラント吐出部材を示す前面図である。
【
図5】
図5は、本実施形態のクーラント吐出部材を示す下面図である。
【
図6】
図6は、本実施形態のクーラント吐出部材を示す側面図である。
【
図7】
図7は、
図4のVII-VII断面を示す断面図(縦断面図)である。
【
図8】
図8(a)、(b)および(c)は、本実施形態のクーラント吐出口と、比較例のクーラント吐出口とを説明する前面図である。
【
図9】
図9は、本実施形態の第1変形例のクーラント吐出部材を示す上面図である。
【
図10】
図10は、本実施形態の第1変形例の刃先交換式切削工具の一部を示す斜視図である。
【
図11】
図11は、本実施形態の第2変形例のクーラント吐出部材を示す上面図である。
【
図12】
図12は、本実施形態の第2変形例の刃先交換式切削工具の一部を示す斜視図である。
【
図13】
図13は、本実施形態の第2変形例の刃先交換式切削工具の一部を示す斜視図である。
【
図14】
図14は、本実施形態の第3変形例のクーラント吐出部材のクーラント吐出口を示す前面図である。
【
図15】
図15は、本実施形態の第4変形例のクーラント吐出部材のクーラント吐出口を示す前面図である。
【
図16】
図16は、本実施形態の第5変形例のクーラント吐出部材のクーラント吐出口を示す前面図である。
【
図17】
図17は、本実施形態の第6変形例のクーラント吐出部材のクーラント吐出口を示す前面図である。
【
図18】
図18は、本実施形態の第7変形例のクーラント吐出部材のクーラント吐出口を示す前面図である。
【
図19】
図19は、本実施形態の第8変形例のクーラント吐出部材のクーラント吐出口を示す前面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の一実施形態のクーラント吐出部材10およびこれを備える刃先交換式切削工具1について、図面を参照して説明する。本実施形態の刃先交換式切削工具1は、旋削加工(ターニング)に用いられる刃先交換式バイトなどの刃先交換式旋削工具であり、図示しない旋盤などの工作機械の刃物台等に着脱可能に装着される。
【0030】
図1および
図2に示すように、刃先交換式切削工具1は、切刃3を有する切削インサート2と、切削インサート2が着脱可能に取り付けられるインサート取付座5を有するホルダ4と、切削インサート2をインサート取付座5に固定するインサート固定構造6と、クーラント吐出部材10と、クーラント吐出部材10をクランプするクランプ部材7と、を備える。
また
図3~
図7に示すように、クーラント吐出部材10は、中心軸Cを中心とする筒状の取付筒11と、取付筒11に接続されるノズル部12と、シール部材13(
図2参照)と、内部をクーラントが流れる流路14と、を備える。
【0031】
〔方向の定義〕
本実施形態では、取付筒11の中心軸Cが延びる方向を上下方向と呼ぶ。各図に示すXYZ直交座標系において、上下方向は、Z軸方向に相当する。上下方向のうち、上側は+Z側であり、下側は-Z側である。なお上下方向は、軸方向と言い換えてもよい。この場合、上側は軸方向一方側に相当し、下側は軸方向他方側に相当する。
中心軸Cと直交する方向を径方向と呼ぶ。径方向のうち、中心軸Cに近づく方向を径方向内側と呼び、中心軸Cから離れる方向を径方向外側と呼ぶ。
中心軸C回りに周回する方向を周方向と呼ぶ。
【0032】
ノズル部12は、中心軸Cと交差する方向に延びる。ノズル部12が延びる方向を、吐出方向と呼ぶ。つまりノズル部12は、吐出方向に延びる。本実施形態ではノズル部12が、中心軸Cと直交する方向に延びる。このため、吐出方向は、径方向のうちの一方向である。各図において、吐出方向は、Y軸方向に相当する。吐出方向のうち、先端側(ノズル先端側)は+Y側であり、後端側(ノズル後端側)は-Y側である。なお吐出方向は、前後方向と言い換えてもよい。この場合、吐出方向の先端側は前側に相当し、吐出方向の後端側は後側に相当する。
吐出方向から見て、上下方向と直交する方向を左右方向と呼ぶ。各図において、左右方向は、X軸方向に相当する。左右方向のうち、左側は+X側であり、右側は-X側である。
【0033】
また
図1において、ホルダ4の工具中心軸(図示省略)が延びる方向を、工具軸方向と呼ぶ。工具軸方向のうち、ホルダ4の第1端部4aから第2端部4bへ向かう方向を工具後端側と呼び、第2端部4bから第1端部4aへ向かう方向を工具先端側と呼ぶ。
工具軸方向および上下方向と直交する方向を、工具幅方向と呼ぶ。
【0034】
切削インサート2のインサート中心軸(図示省略)が延びる方向を、インサート軸方向と呼ぶ。本実施形態では、インサート軸方向と上下方向とが、略同じ方向である。すなわち、取付筒11の中心軸Cとインサート中心軸とは、略平行に延びる。
インサート中心軸と直交する方向をインサート径方向と呼ぶ。インサート径方向のうち、インサート中心軸に近づく方向をインサート径方向の内側と呼び、インサート中心軸から離れる方向をインサート径方向の外側と呼ぶ。
インサート中心軸回りに周回する方向をインサート周方向と呼ぶ。
【0035】
なお本実施形態において、上側、下側、前側、後側、左側および右側とは、単に各部の相対位置関係を説明するための名称であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係以外の配置関係等であってもよい。
【0036】
〔ホルダ〕
ホルダ4は、例えば鋼材等の金属製である。
図1および
図2に示すように、ホルダ4は、略角柱状であり、工具軸方向に延びる。インサート取付座5は、ホルダ4の工具軸方向の両端部のうち、第1端部4aに配置される。
【0037】
ホルダ4は、ホルダ4の外面に配置される頂面41、底面42、一対の横面43,44、および工具先端面45を有する。頂面41は、上側を向く。底面42は、下側を向く。一対の横面43,44は、工具幅方向を向く。一対の横面43,44は、工具幅方向において互いに反対側を向く。工具先端面45は、工具先端側を向く。
頂面41のうちホルダ4の第1端部4aに位置する部分は、第1端部4a以外の部分よりも、上側に突出する。一対の横面43,44のうち、一方の横面43は、ホルダ4の第1端部4aに位置する部分が、第1端部4a以外の部分よりも工具幅方向に突出する。
【0038】
ホルダ4は、切削インサート2が着脱可能に装着されるインサート取付座5と、クランプ部材7を保持する保持部46と、クーラント供給路47と、固定ネジ取付孔48と、図示しないレバー挿入孔と、を有する。
【0039】
インサート取付座5は、板状のシート部材51を有する。シート部材51は、インサート取付座5の一部(底面)を構成する。本実施形態ではシート部材51が、四角形板状である。シート部材51の一対の板面は、上下方向を向く。シート部材51は、シート部材51を上下方向に貫通するシート孔(図示省略)を有する。
【0040】
インサート取付座5は、ホルダ4の第1端部4aつまり工具先端部において、頂面41、一方の横面43および工具先端面45に開口する。インサート取付座5は、ホルダ4の頂面41、一方の横面43および工具先端面45から窪む凹状である。インサート取付座5は、切削インサート2を受け入れ可能な凹所である。本実施形態ではインサート取付座5が、略四角形凹状である。
【0041】
インサート取付座5は、切削インサート2の裏面22と接触する底壁5aと、切削インサート2の外周面23と接触する側壁5bと、ぬすみ部5cと、を有する。
底壁5aは、シート部材51の一対の板面のうち、上側を向く一方の板面(上面)により構成される。
【0042】
側壁5bは、複数設けられる。本実施形態ではインサート取付座5が、一対の側壁5bを有する。インサート軸方向から見て、一対の側壁5b間に形成される角度は、例えば、55°~90°であり、本実施形態では80°である。
ぬすみ部5cは、一対の側壁5b間に配置される。ぬすみ部5cは、一対の側壁5bよりもインサート径方向の外側に窪む凹状である。ぬすみ部5cは、頂面41に開口しインサート軸方向に延びる溝状である。
【0043】
保持部46は、頂面41つまりホルダ4の上面から、上側に突出する。保持部46は、頂面41のうち第1端部4aに配置される。本実施形態では、保持部46が板状をなす。保持部46の一対の板面は、径方向を向く。また保持部46は、上下方向から見て吐出方向に延びる。保持部46は、ノズル部12と径方向において対向する。具体的に、保持部46は、クーラント吐出部材10のノズル部12と径方向に隣接して配置され、保持部46の一対の板面のうち一方の板面は、ノズル部12の外周面に径方向外側から対向する。本実施形態では、保持部46が、左右方向においてノズル部12と対向する。保持部46は、頂面41から上側へ向かうに従い、径方向寸法すなわち板厚寸法が小さくなる。また保持部46は、頂面41から上側へ向かうに従い、吐出方向に沿う寸法が小さくなる。すなわち保持部46は、上側へ向かうに従い先細りとなる。
【0044】
保持部46は、雌ネジ孔46aを有する。雌ネジ孔46aは、保持部46を径方向(板厚方向)に貫通する。雌ネジ孔46aのネジ中心軸(図示省略)は、径方向内側へ向かうに従い下側に向けて延びる。すなわち、雌ネジ孔46aのネジ中心軸は、径方向に対して傾斜して延びる。雌ネジ孔46aには、本実施形態のクランプ部材7であるイモネジが螺着する。
【0045】
クーラント供給路47は、ホルダ4の内部を延びる。クーラント供給路47は、ホルダ4を貫通して設けられる。クーラント供給路47は、ホルダ4内を上下方向に延びる部分と、ホルダ4内を工具軸方向に延びる部分(図示省略)と、を含む。クーラント供給路47は、ホルダ4の上面つまり頂面41に開口する開口部47aと、配管接続口(図示省略)と、を有する。
【0046】
開口部47aは、中心軸Cを中心とする円穴状であり、上下方向に延びる。すなわち、開口部47aの中心軸は、取付筒11の中心軸Cと同軸に配置される。開口部47aは、頂面41のうち第1端部4aに位置する部分に開口する。開口部47aは、保持部46と隣接して配置される。開口部47aは、インサート取付座5と並んで配置される。開口部47aは、例えば、ドリルやエンドミル等でホルダ4の頂面41を穿設することにより形成される。開口部47aは、クーラント供給路47を流れるクーラントが流出する流出口とされる。
【0047】
特に図示しないが、配管接続口は、例えば、ホルダ4の下面つまり底面42に開口する。配管接続口は、クーラント供給路47にクーラントを受け入れる流入口とされる。配管接続口には、図示しない配管部材やチューブ部材等が接続される。なお配管接続口は、ホルダ4の工具後端側を向く後端面や横面43,44等に開口してもよい。配管接続口が横面43,44に開口する場合、クーラント供給路47は、ホルダ4内を工具幅方向に延びる部分を含む。
【0048】
固定ネジ取付孔48は、頂面41に開口し、上下方向に延びる。固定ネジ取付孔48は、頂面41のうち第1端部4aに位置する部分に開口する。固定ネジ取付孔48は、インサート取付座5と並んで配置される。特に図示しないが、固定ネジ取付孔48は、内周面に雌ネジ部を有する。
【0049】
特に図示しないが、レバー挿入孔は、ホルダ4の内部を延びる。レバー挿入孔は、ホルダ4の第1端部4aの内部に配置される。レバー挿入孔は、例えば、上下方向と交差する傾斜方向に延びる部分を含む。レバー挿入孔の両端部のうち一端部は、シート部材51のシート孔に向けて開口する。レバー挿入孔の両端部のうち他端部は、固定ネジ取付孔48に開口する。
【0050】
〔切削インサート〕
切削インサート2は、例えば、超硬合金製、PCD(多結晶ダイヤモンド)製、cBN(立方晶窒化ホウ素)製、サーメット製、セラミック製等である。切削インサート2は、ホルダ4よりも硬度が高い硬質焼結体である。本実施形態の切削インサート2は、インサート中心軸を中心とする四角形板状である。切削インサート2は、例えば、ISO規格に準ずる菱形インサート等である。切削インサート2は、複数のコーナ部を有する。本実施形態の切削インサート2は、表裏反転対称形状であり、いわゆる両面タイプである。ただしこれに限らず、切削インサート2は、いわゆる片面タイプであってもよい。
【0051】
切削インサート2は、インサート軸方向つまり上下方向を向く表面21および裏面22と、表面21と裏面22とに接続される外周面23と、少なくとも表面21と外周面23とが接続される稜線部に配置される切刃3と、貫通孔24と、を有する。
【0052】
表面21は、多角形状であり、本実施形態では四角形状である。表面21は、上側を向く。表面21は、すくい面21aを有する。すくい面21aは、表面21のうち少なくとも切刃3と隣接する部分に配置される。特に図示しないが、表面21には、切削用途等に応じてチップブレーカが適宜設けられる。切削用途とは、例えば、仕上げ加工用、軽切削用、中切削用、中・荒切削用、ステンレス用などである。
【0053】
裏面22は、多角形状であり、本実施形態では四角形状である。裏面22は、下側を向く。裏面22は、着座面を有する。着座面は、インサート取付座5の底壁5a、すなわちシート部材51の上側を向く板面(上面)と接触する。
【0054】
外周面23は、インサート径方向の外側を向き、インサート周方向に延びる。外周面23は、逃げ面23aを有する。逃げ面23aは、外周面23のうち少なくとも切刃3と隣接する部分に配置される。
【0055】
外周面23は、インサート周方向に並ぶ複数の平面部23bを有する。平面部23bは、インサート径方向の外側を向き、インサート周方向に延びる。平面部23bは、インサート周方向の寸法がインサート軸方向の寸法よりも大きい長方形状である。本実施形態では外周面23が、4つの平面部23bを有する。4つの平面部23bのうち、吐出方向の後端側(-Y側)を向く一対の平面部23bは、インサート取付座5の一対の側壁5bと接触する。
【0056】
切刃3は、切削インサート2のうち少なくとも吐出方向の先端側(+Y側)の端部に位置するコーナ部に配置される。切刃3は、工具先端面45よりも工具先端側に突出する。切刃3は、一方の横面43よりも工具幅方向に突出する。切刃3は、すくい面21aと逃げ面23aとが接続される稜線部に配置される。切刃3は、吐出方向の先端側に向けて突出する凸V字状である。切刃3は、凸曲線状のコーナ刃部と、コーナ刃部の両端部に接続され、それぞれ直線状に延びる一対の直線刃部と、を有する。インサート軸方向から見て、一対の直線刃部間に形成される角度は、例えば、55°~90°であり、本実施形態では80°である。また吐出方向から見て、切刃3は左右方向に延びる。
【0057】
貫通孔24は、切削インサート2をインサート軸方向に貫通する。貫通孔24は、切削インサート2の内部をインサート軸方向に延び、表面21と裏面22とに開口する。貫通孔24は、インサート中心軸を中心とする円孔状である。
【0058】
〔インサート固定構造〕
インサート固定構造6は、切削インサート2の貫通孔24、シート部材51のシート孔、レバー挿入孔および固定ネジ取付孔48にわたって延びるL字状のレバー61と、固定ネジ取付孔48に螺着される固定ネジ62と、を有する。本実施形態のインサート固定構造6は、いわゆるレバーロックタイプのインサートクランプ構造である。
【0059】
レバー61は、切削インサート2の貫通孔24、シート部材51のシート孔およびレバー挿入孔に挿入される。レバー61の両端部のうち一端部は、貫通孔24の内周面と接触する。本実施形態では、レバー61の一端部が、貫通孔24から上側に突出することなく貫通孔24内に収容される。特に図示しないが、レバー61の両端部のうち他端部は、レバー挿入孔から固定ネジ取付孔48内に突出する。
【0060】
固定ネジ62は、インサート軸方向に延びる。特に図示しないが、固定ネジ62は、外周面に雄ネジ部を有する。また固定ネジ62は、外周面のうち雄ネジ部とは異なる位置に、ネジ軸に沿って下側へ向かうに従い縮径するテーパ状の円錐面を有する。固定ネジ62の雄ネジ部は、固定ネジ取付孔48の雌ネジ部に螺着される。固定ネジ62を固定ネジ取付孔48にねじ込むことにより、固定ネジ62の円錐面が、レバー61の他端部を下側へ向けて押し込む。これによりレバー61の一端部が貫通孔24の内周面を押圧し、切削インサート2は吐出方向の後端側(-Y側)へ引き込まれる。切削インサート2の一対の平面部23bが、インサート取付座5の一対の側壁5bに押し付けられて、切削インサート2がインサート取付座5に固定される。
なお特に図示しないが、インサート固定構造6は、レバー61の一部を囲う半割り円筒状のシート止めピンを有していてもよい。この場合、シート止めピンは、弾性変形させられた状態で、シート部材51のシート孔およびレバー挿入孔にわたって挿入される。
【0061】
〔クーラント吐出部材〕
クーラント吐出部材10は、ホルダ4に取り付けられ、クーラント供給路47から供給されるクーラントを切刃3に向けて吐出する。クーラント吐出部材10は、ホルダ4の第1端部4aに着脱可能に装着される。クーラント吐出部材10は、ホルダ4の上面つまり頂面41から、上側に向けて突出する。クーラント吐出部材10は、上下方向から見て、切削インサート2と重ならない位置に配置される。またクーラント吐出部材10は、上下方向から見て、固定ネジ62と重ならない位置に配置される。
【0062】
クーラント吐出部材10のうち、取付筒11、ノズル部12および流路14は、例えば3Dプリンタ等による積層造形を用いて、金属材料や樹脂材料等により一体に形成される。クーラント吐出部材10のうちシール部材13は、取付筒11、ノズル部12および流路14とは別体とされて、例えば弾性材料等により形成される。
【0063】
図4~
図7に示すように、取付筒11は、中心軸Cに沿って上下方向に延びる。取付筒11は、中心軸Cを中心とする円筒状である。
図1および
図2に示すように、取付筒11は、クーラント供給路47の開口部47aに挿入される。取付筒11は、開口部47aに対して中心軸C回りに回転可能に、開口部47a内に嵌合する。本実施形態では取付筒11の全体が、開口部47a内に収容される。
【0064】
図4に示すように、取付筒11は、シール溝11aを有する。シール溝11aは、取付筒11の外周面から径方向内側に窪み、周方向に沿って延びる。シール溝11aは、中心軸Cを中心とする環状の溝である。
【0065】
図3~
図7に示すように、ノズル部12は、取付筒11の上側部分に接続される。本実施形態ではノズル部12が、取付筒11の上端部と接続される。ノズル部12は、吐出方向に延びる筒状である。
ノズル部12は、本体部15と、本体部15から吐出方向の先端側(+Y側)に突出する突出部16と、を有する。突出部16は、ノズル部12のうち少なくとも吐出方向の先端側の端部に配置される。本体部15は、ノズル部12のうち突出部16よりも吐出方向の後端側に位置する部分を構成する。
【0066】
本体部15は、中心軸Cを中心とし、上側に向けて凸となる略半球状である。本体部15は、取付筒11と同軸に配置され、取付筒11の直上に位置する。本体部15の直径(外径)は、取付筒11の直径よりも大きい。本体部15の下面15aは、中心軸Cと垂直な方向に拡がる円形リング状の平面である。本体部15の下面15aは、ホルダ4の頂面41と接触する。
【0067】
本体部15は、クランプ面17を有する。つまりノズル部12は、クランプ面17を有する。クランプ面17は、ノズル部12のうち吐出方向の先端側の端部以外の部分に配置され、本実施形態では本体部15に配置される。クランプ面17は、径方向の外側を向き、ホルダ4が保持するクランプ部材7に押圧される(
図1参照)。クランプ面17は、本体部15の外周面に配置される。具体的に、クランプ面17は、本体部15の外周面のうち径方向外側を向く部分に配置される。より詳しくは、クランプ面17は、本体部15の径方向外端部に配置される。
【0068】
図4に示すように、クランプ面17は、下側へ向かうに従い径方向外側に位置する傾斜面状である。すなわちクランプ面17は、中心軸Cに対して傾斜する。本実施形態ではクランプ面17が、円形の平面状である。クランプ面17は、
図4に示すように吐出方向(Y軸方向)から見て、左右方向を向く。
【0069】
図3に示すように、クランプ面17は、中心軸C回りの周方向に互いに間隔をあけて複数配置される。すなわち、クランプ面17は、周方向に並んで複数設けられる。複数のクランプ面17は、径方向において互いに反対側を向く一対のクランプ面17を含む。本実施形態では、本体部15にクランプ面17が一対設けられており、一対のクランプ面17のうち一方は左側(+X側)を向き、他方は右側(-X側)を向く。なおクランプ面17は、本体部15に周方向に互いに間隔をあけて3つ以上設けられてもよい。
【0070】
図3~
図7に示すように、突出部16は、本体部15から吐出方向の先端側(+Y側)へ向かうに従い、左右方向の寸法が小さくなる。また突出部16は、本体部15から吐出方向の先端側へ向かうに従い、上下方向の寸法が小さくなる。突出部16は、吐出方向の先端側へ向かうに従い先細りとなる。つまりノズル部12は、吐出方向の先端側へ向かうに従い先細りとなる。
【0071】
突出部16の下面16aは、中心軸Cと垂直な方向に拡がる平面状である。突出部16の下面16aは、ホルダ4の頂面41と接触する。突出部16の吐出方向の先端側を向く端面、すなわちノズル部12の先端面16cは、吐出方向と垂直な方向に拡がる環状の平面である。突出部16の外面のうち、下面16aおよび先端面16c以外の部分は、略凸曲面状をなす。また、突出部16の上面16bは、吐出方向の先端側へ向かうに従い下側に位置する。
【0072】
図1に示すように、突出部16の吐出方向の先端部は、上下方向から見て、ぬすみ部5cと重なって配置される。すなわち、ノズル部12の吐出方向の先端部は、上下方向から見て、ぬすみ部5cと重なる。
【0073】
図2に示すように、シール部材13は、中心軸Cを中心とする環状である。シール部材13は、例えばOリング等であり、弾性変形可能である。シール部材13は、取付筒11の外周部に嵌合する。具体的に、シール部材13は、取付筒11のシール溝11a内に配置される。シール部材13は、取付筒11と開口部47aとの間をシールする。
【0074】
図4、
図5および
図7に示すように、流路14は、取付筒11の内部およびノズル部12の内部にわたって延びる。流路14は、クーラント吐出部材10を貫通して設けられる。流路14は、クーラント供給口18と、クーラント吐出口19と、連通流路20と、を有する。
【0075】
クーラント供給口18は、取付筒11の外面に開口する。具体的に、クーラント供給口18は、取付筒11の下面11bに開口する。クーラント供給口18は、中心軸Cを中心とする円孔状であり、上下方向に延びる。
【0076】
クーラント吐出口19は、ノズル部12の吐出方向の先端側を向く面つまり先端面16cに開口する。クーラント吐出口19は、吐出方向に延びる。クーラント吐出口19は、
図4に示すように吐出方向からクーラント吐出口19を正面に見て、左右方向に延びる下辺19aを有する。本実施形態では、下辺19aが左右方向に沿って直線状に延びる。吐出方向から見て、クーラント吐出口19の周縁部のうち下辺19a以外の部分は、上側に向けて凸となる曲線状をなす。クーラント吐出口19のうち、下辺19aを含む下端部19dの左右方向の寸法つまり開口幅は、上端部19eの左右方向の開口幅よりも大きい。
図1および
図2に示すように、クーラント吐出口19の下辺19aを含む下端部19dの吐出方向の先端側には、切削インサート2のすくい面21aおよび切刃3が配置される。
【0077】
図4に示すように、クーラント吐出口19は、下側へ向かうに従い左右方向の開口幅が大きくなる部分19bを含む。本実施形態では、クーラント吐出口19が、吐出方向からクーラント吐出口19を正面に見て、上側に凸となる半円形状である。すなわち、本実施形態のクーラント吐出口19は、吐出方向と垂直な断面が半円形をなす半円孔状である。
クーラント吐出口19の開口面積(流路断面積)は、クーラント供給口18の開口面積よりも小さい。本実施形態では、クーラント吐出口19の左右方向の寸法(最大幅)が、クーラント供給口18の左右方向の寸法つまり直径(内径)と同じである。
【0078】
図7に示すように、連通流路20は、クーラント供給口18とクーラント吐出口19とを連通する。連通流路20は、流路14のうち上流側の端部に位置するクーラント供給口18と、下流側の端部に位置するクーラント吐出口19との間に配置されて、クーラント供給口18とクーラント吐出口19とを繋ぐ。
【0079】
連通流路20は、クーラント供給口18とクーラント吐出口19とを滑らかに接続する湾曲部20aを有する。湾曲部20aは、湾曲部20aの内面のうち吐出方向の先端側の壁部に位置し、
図7に示すように中心軸Cに沿う断面視で凸曲線状をなす内コーナ部20aaと、湾曲部20aの内面のうち吐出方向の後端側の壁部に位置し、上記断面視で凹曲線状をなす外コーナ部20abと、を有する。内コーナ部20aaは、凸曲面状であり、外コーナ部20abは、凹曲面状である。
本実施形態では
図7に示す断面視で、内コーナ部20aaの曲率半径と外コーナ部20abの曲率半径とが、互いに同じである。ただしこれに限らず、例えば、内コーナ部20aaの曲率半径が外コーナ部20abの曲率半径より大きくてもよい。
【0080】
〔クランプ部材〕
図1および
図2に示すように、クランプ部材7は、本実施形態では雄ネジ部材であり、具体的にはイモネジである。クランプ部材7は、外周面に雄ネジ部を有する。クランプ部材7の雄ネジ部は、保持部46の雌ネジ孔46aに螺着される。これによりクランプ部材7は、保持部46に保持される。クランプ部材7は、径方向内側へ向かうに従い下側に向けて延びる。クランプ部材7の径方向内端部つまりネジ先端部は、ノズル部12のクランプ面17に接触する。クランプ部材7を雌ネジ孔46aにねじ込むことにより、クランプ部材7はクランプ面17を径方向外側から押圧する。クランプ部材7に押圧されることにより、クーラント吐出部材10は、ホルダ4に固定される。
【0081】
〔本実施形態による作用効果〕
以上説明した本実施形態のクーラント吐出部材10をホルダ4に取り付けるには、クーラント供給路47の開口部47aに取付筒11を挿入し、クランプ部材7でノズル部12のクランプ面17を押圧する。クランプ面17は、径方向外側を向き、取付筒11の中心軸Cに対して傾斜させられた平面等により構成される。具体的に、クランプ面17は、下側へ向かうに従い径方向外側に位置する傾斜面状である。このため、クランプ部材7がクランプ面17を押圧することで、クーラント吐出部材10の上側への移動および中心軸C回りの周方向の回転移動が規制される。より詳しくは、クランプ面17が受ける押圧力によって、取付筒11がクーラント供給路47の開口部47aから上側に抜け出すことが抑えられる。また、ノズル部12が中心軸C回りの周方向に回転することが抑えられる。すなわち、クランプ部材7でクランプ面17を押圧するという簡素な構成かつ簡単な操作によって、クーラント吐出部材10を抜け止めし、かつ回り止めした状態で、ホルダ4に固定することができる。
【0082】
具体的に、本実施形態ではクランプ面17が、ノズル部12の外周面の一部に配置される平面により構成される。本実施形態と異なり、例えばノズル部を上下方向に貫通する複数の貫通孔に、それぞれ固定用ネジを挿通してホルダにネジ止めするような構成と比べて、本実施形態によれば、クーラント吐出部材10の外形を小さく抑えることができ、かつ構造を簡素化できる。
【0083】
より詳しくは、本実施形態では、ノズル部12に内部の流路14を避けて複数の貫通孔を設ける必要はなく、クランプ面17を設けるにあたって、流路14のレイアウトなどによる影響は受けにくい。また、クランプ面17への押圧力を確保しつつ、クランプ面17の表面積を小さく抑えることが容易である。このため、ノズル部12のコンパクト化を図りやすい。またこれにより、クーラント吐出部材10を構成する材料使用量を低減できる。
【0084】
そして、ノズル部12を小型化できるため、切削加工時において、切削部位から延びた切屑がノズル部12に絡まるような不具合を抑制でき、切屑処理性が良好に維持される。これにより、工作機械の切屑回収トラブル等を回避でき、絡まった切屑によって被削材の加工面が傷付くような不具合も抑制される。このため本実施形態によれば、被削材の加工面品位を安定して高めることができる。
【0085】
またクーラント吐出部材10の製造に関して、例えば本実施形態と異なり、ノズル部に貫通孔をあけて複数の固定用ネジでホルダにネジ止めするような複雑な構成と比べて、本実施形態によれば、部品点数を削減でき、組み立てが容易であり、製造コストを低減できる。
【0086】
また本実施形態では、クランプ面17が、ノズル部12のうち吐出方向の先端側の端部以外の部分に配置される。具体的に本実施形態では、クランプ面17が本体部15に配置される。
この場合、クランプ面17を押さえるクランプ部材7、および保持部46を、切削部位から離間させて配置しやすい。このため、クランプ部材7や保持部46に切屑が絡まるような不具合がより抑制される。
【0087】
また本実施形態では、クランプ面17が、吐出方向から見て左右方向を向く。
この場合、クランプ面17がクーラントの吐出方向とは異なる方向を向くため、クランプ面17をノズル部12にレイアウトしやすい。すなわち、ノズル部12の小型化を図り、かつ流路14のレイアウトへの影響を抑えつつ、傾斜面状のクランプ面17をノズル部12に設けやすい。
【0088】
また本実施形態では、クランプ面17が、中心軸C回りの周方向に並んで複数設けられる。
この場合、例えば、ホルダ4の形状、切刃3の形状および切削条件等に応じて、周方向に並ぶ複数のクランプ面17の中から最適なクランプ面17を適宜選択し、ノズル部12のクランプに用いることができる。これにより、切刃3へ向けて効率よくクーラントを吐出でき、工具寿命の向上を図ることができる。また、切屑を安定して分断でき、切屑処理性を良好に維持して、被削材の加工面品位を高めることができる。
【0089】
また本実施形態では、複数のクランプ面17が、径方向において互いに反対側を向く一対のクランプ面17を含む。
この場合、刃先交換式切削工具1(切削工具)が右勝手の場合および左勝手の場合のいずれにおいても、同一のクーラント吐出部材10を共通品として使用できる。すなわち、勝手違いの切削工具に対して、共通のクーラント吐出部材10を用いることができる。このため、クーラント吐出部材10の汎用性が高められ、かつ部材管理が容易である。
【0090】
また本実施形態では、ノズル部12が、吐出方向の先端側へ向かうに従い先細りとなる。
この場合、切削部位からノズル部12へ向かう切屑が、ノズル部12に対してより絡まりにくくなる。このため、切屑処理性を良好に維持でき、被削材の加工面品位がより安定して高められる。また、ノズル部12をさらにコンパクト化できるため、ノズル部12を構成する材料使用量をより低減できる。
【0091】
また本実施形態では、クーラント吐出部材10が、上下方向から見て、切削インサート2と重ならない位置に配置される。
この場合、クーラント吐出部材10が、切削インサート2をインサート取付座5に着脱する作業の邪魔になることが抑制される。すなわち、クーラント吐出部材10をホルダ4に取り付けた状態のままで、切削インサート2をインサート取付座5に着脱できる。このため、切削インサート2の着脱作業性がよい。
【0092】
また本実施形態では、クランプ部材7を保持する保持部46が、ホルダ4の上面つまり頂面41から上側に突出し、ノズル部12と径方向において対向する。
この場合、ホルダ4が、簡素な構造によってクランプ部材7を保持する。また、保持部46の外形を小さく抑えることができ、保持部46に対して切屑が絡まるような不具合を抑制しやすい。
【0093】
また本実施形態では、保持部46が、上側へ向かうに従い径方向寸法が小さくなり、かつ吐出方向の寸法が小さくなる。すなわち、保持部46は、上側へ向かうに従い先細りとなる。
この場合、保持部46に切屑が絡まるような不具合をより安定して抑制できる。
【0094】
また本実施形態では、ノズル部12の吐出方向の先端部が、上下方向から見て、ぬすみ部5cと重なる。
この場合、ぬすみ部5c上を通してクーラントが切刃3に吐出されるため、吐出されたクーラントにより、ぬすみ部5cに切屑が進入することを抑制できる。このため、ぬすみ部5cに切屑が絡まることが抑えられる。
【0095】
また本実施形態では、インサート固定構造6が、切削インサート2の表面21から上側に突出しない。具体的には、貫通孔24からレバー61が上側に突出しない。
この場合、クーラント吐出口19から切刃3およびすくい面21aへ向けて吐出されたクーラントが、インサート固定構造6に干渉することが抑えられ、安定して切刃3に到達させられる。このため、切削部位へのクーラント供給効率がより高められる。
【0096】
また本実施形態では、シール部材13が、取付筒11の外周部に嵌合する。
この場合、取付筒11の外周部を通してクーラントが切削工具の外部に漏れ出るようなことが抑制される。クーラントの供給効率がより安定して高められる。
【0097】
本実施形態のクーラント吐出部材10および刃先交換式切削工具1は、クーラント吐出口19の上端部19eにおける左右方向の開口幅に比べて、下端部19dにおける左右方向の開口幅が大きい。またクーラント吐出口19の下端部19dには、左右方向に延びる下辺19aが含まれる。このため、クーラント吐出口19の下端部19dの吐出方向の先端側に、吐出方向から見て左右方向に延びる切刃3を配置することで、切刃3に効率よくクーラントを供給することができる。
【0098】
詳しくは、クーラント吐出口19が同じ開口面積(流路断面積)である場合、例えば
図8(a)に2点鎖線で示す従来例のように、円形状のクーラント吐出口と比べて、本実施形態では、クーラント吐出口19の上下方向の寸法を、寸法Hだけ小さく抑えることができ、吐出後の上下方向へのクーラント拡散を抑制できる。このため本実施形態によれば、クーラントによって切刃3を冷却する性能、切屑を分断する性能、および被削材の加工面を潤滑する性能等が安定して高められる。すなわち、クーラント吐出口19から吐出されるクーラントを効率よく切削に利用できる。
【0099】
また、クーラント吐出口19が同じ開口面積である場合、例えば
図8(b)に2点鎖線で示す従来例のように、左右方向に長い楕円形状のクーラント吐出口と比べて、本実施形態では、クーラント吐出口19の左右方向の開口幅を小さく抑えられる分、ノズル部12を左右方向に小型化しやすい。このため、切削部位からすくい面21aに沿うようにノズル部12へ向かう切屑がノズル部12に絡まるような不具合を、本実施形態によれば抑制しやすい。
【0100】
また、クーラント吐出口19が同じ開口面積である場合、例えば
図8(c)に2点鎖線で示す従来例のように、複数の小径円孔を有するクーラント吐出口と比べて、本実施形態では、クーラント吐出口19から吐出されるクーラントの吐出圧力および吐出量を安定して高めることができ、かつクーラントの吐出指向性にも優れる。このため、本実施形態によれば、クーラントによって切刃3を冷却する性能、切屑を分断する性能、および被削材の加工面を潤滑する性能等が安定して高められる。
【0101】
また本実施形態では、
図4に示すようにクーラント吐出口19が、下側へ向かうに従い左右方向の開口幅が大きくなる部分19bを含む。
この場合、吐出後のクーラントの断面が、下側へ向かうに従い徐々に左右方向に幅広となる。クーラント吐出口19の下端部19dの吐出方向の先端側に切刃3を配置したときに、切刃3が延びる刃長方向(吐出方向から見て左右方向)に沿って、クーラントを安定して拡散しやすい。
【0102】
また本実施形態では、クーラント吐出口19が、吐出方向からクーラント吐出口19を正面に見て、半円形状である。
この場合、クーラント吐出口19から吐出するクーラントの吐出圧力および吐出量が安定して高められ、かつクーラントの吐出指向性にも優れる。
【0103】
また本実施形態では、クーラント供給口18が、円孔状である。
ホルダ4のクーラント供給路47の開口部47aは、一般にドリルやエンドミル等により円穴状に形成されている。このため、クーラント供給口18が円孔状であると、クーラント供給路47からクーラント供給口18に効率よくクーラントを流すことができる。また、本実施形態のように取付筒11が円筒状である場合、取付筒11の下面11bにクーラント供給口18を開口させることで、クーラント供給口18の開口面積を大きく確保しやすい。
【0104】
また本実施形態では、クーラント吐出口19の開口面積が、クーラント供給口18の開口面積よりも小さい。
この場合、クーラント吐出口19から吐出されるクーラントの流速を高めることができる。クーラントを安定して切刃3に到達させやすくなり、クーラントによって切刃3を冷却する性能、切屑を分断する性能、および被削材の加工面を潤滑する性能等がより安定的に高められる。
【0105】
また本実施形態では、連通流路20が、クーラント供給口18とクーラント吐出口19とを滑らかに接続する湾曲部20aを有する。
この場合、互いに異なる向きに延びるクーラント供給口18とクーラント吐出口19とを、湾曲部20aによって滑らかに繋ぐことができる。流路14内を流れるクーラントに対流や乱流などが生じることを抑制して、圧力損失を低減できる。このため、切刃3へのクーラント供給効率がより高められる。
【0106】
また本実施形態では、湾曲部20aが、中心軸Cに沿う断面視で凸曲線状をなす内コーナ部20aaと、中心軸Cに沿う断面視で凹曲線状をなす外コーナ部20abと、を有する。
この場合、湾曲部20aのうち吐出方向の先端側の壁部に沿って上側へ流れるクーラントが吐出方向の先端側へ向きを変える際の対流や乱流等が、湾曲部20aの内コーナ部20aaによって、安定して抑えられる。
また、湾曲部20aのうち吐出方向の後端側の壁部に沿って上側へ流れるクーラントが吐出方向の先端側へ向きを変える際の対流や乱流等が、湾曲部20aの外コーナ部20abによって、安定して抑えられる。
このため、流路14を流れるクーラントの圧力損失が安定して低減される。
【0107】
〔本発明に含まれるその他の構成〕
なお、本発明は前述の実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。なお、変形例の図示においては、前述の実施形態と同じ構成要素には同一の符号を付し、下記では主に異なる点について説明する。
【0108】
図9は、前述の実施形態の第1変形例のクーラント吐出部材10A(10)を示す上面図である。
図10は、前述の実施形態の第1変形例の刃先交換式切削工具1の一部を示す斜視図であり、この刃先交換式切削工具1は、クーラント吐出部材10Aを備える。
図9に示すように、第1変形例のクーラント吐出部材10Aは、ノズル部12がクランプ面17を複数有し、図示の例では5つ有する。複数のクランプ面17は、吐出方向の後端側(-Y側)を向くクランプ面17を含む。また、複数のクランプ面17は、周方向に互いに繋がって配置される。各クランプ面17は、平面状であり、周方向寸法が互いに略同じである。
また
図10に示すように、ホルダ4の保持部46は、上下方向から見て左右方向に延びる。この第1変形例では、保持部46が、ノズル部12の吐出方向の後端側に隣接して配置される。つまり保持部46は、吐出方向の後端側からノズル部12と対向する。
【0109】
この第1変形例では、少なくとも1つのクランプ面17が、吐出方向の後端側を向く。
この場合、クランプ面17、保持部46およびクランプ部材7を、切削部位からより離間させて配置できる。詳しくは、保持部46およびクランプ部材7をノズル部12の吐出方向の後端側つまりノズル背後に配置できるため、保持部46およびクランプ部材7に切屑が到達することがより抑えられる。このため、保持部46およびクランプ部材7に切屑が絡まるような不具合をより抑制しやすい。
【0110】
また、複数のクランプ面17が、周方向に互いに繋がって配置される。
第1変形例と異なり、例えばノズル部の貫通孔に固定用ネジを挿通してホルダにネジ止めするような構成の場合、複数の貫通孔同士が干渉しないよう間隔をあけてレイアウトする必要がある。これに対し、本発明では、複数のクランプ面17を周方向に連結して配置できる。このため、複数のクランプ面17を配置するための領域を小さく抑えて、ノズル部12をよりコンパクト化できる。
そして、例えば、ホルダ4の形状、切刃3の形状および切削条件等に応じて、周方向に並ぶ複数のクランプ面17の中から最適なクランプ面17を適宜選択し、ノズル部12のクランプに用いることができる。すなわち、複数のクランプ面17の中から1つを選択することにより、クーラントを吐出する中心軸C回りの吐出角度を、適宜調整可能である。これにより、切刃3へ向けて効率よくクーラントを吐出でき、工具寿命の向上を図ることができる。また、切屑を安定して分断でき、切屑処理性を良好に維持して、被削材の加工面品位を高めることができる。
また、例えば切削インサート2のサイズ、形状の違い等に応じて、ホルダ4の頂面41に保持部46をレイアウトする配置の自由度が増す。すなわち、複数のクランプ面17が設けられることで、ホルダ4への保持部46の配置可能領域が広がる(設計幅が広がる)。
【0111】
図11は、前述の実施形態の第2変形例のクーラント吐出部材10B(10)を示す上面図である。
図12および
図13は、前述の実施形態の第2変形例の刃先交換式切削工具1の一部を示す斜視図であり、この刃先交換式切削工具1は、クーラント吐出部材10Bを備える。
図11に示すように、第2変形例のクーラント吐出部材10Bは、ノズル部12がクランプ面17を複数有し、複数のクランプ面17は、周方向寸法が互いに異なる。具体的に、この第2変形例では、複数のクランプ面17が、第1クランプ面17Aと、第1クランプ面17Aよりも周方向寸法が小さい第2クランプ面17Bと、を含む。図示の例では、第1クランプ面17Aが、周方向に互いに離れて一対配置され、一対の第1クランプ面17A間に、複数(3つ)の第2クランプ面17Bが配置されている。
【0112】
この第2変形例によれば、例えば、周方向寸法が小さい第2クランプ面17Bによって、
図12および
図13に示すように、クーラントの吐出方向、具体的には中心軸C回りのクーラントの吐出角度を微調整したり、周方向寸法が大きい第1クランプ面17Aによって、クランプ部材7との接触面積を増やして押圧力を安定して高めたりすることができる。すなわち上記構成によれば、例えばホルダ4の形状、切刃3の形状および切削条件等に応じて、最適なクランプ面17A,17Bを適宜選択し用いることができる。
【0113】
また、下記に説明する第3変形例~第8変形例においても、前述の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
図14は、前述の実施形態の第3変形例のクーラント吐出部材10のクーラント吐出口19を示す前面図であり、詳しくは、吐出方向からクーラント吐出口19を正面に見た前面図である。この第3変形例では、クーラント吐出口19が、吐出方向からクーラント吐出口19を正面に見て、三角形状である。
【0114】
また
図15は、前述の実施形態の第4変形例のクーラント吐出部材10のクーラント吐出口19を示す前面図であり、詳しくは、吐出方向からクーラント吐出口19を正面に見た前面図である。この第4変形例では、クーラント吐出口19が、吐出方向からクーラント吐出口19を正面に見て、台形状である。
【0115】
また
図16は、前述の実施形態の第5変形例のクーラント吐出部材10のクーラント吐出口19を示す前面図であり、詳しくは、吐出方向からクーラント吐出口19を正面に見た前面図である。この第5変形例では、クーラント吐出口19の下辺19aが、左右方向に延びる曲線状である。なおこの第5変形例では、
図16に示すクーラント吐出口19の正面視で、下辺19aが下側に凸となるように膨らんでいる一例を挙げたが、これに限らず、下辺19aが上側に凹となるように窪んでもよい。
【0116】
また
図17は、前述の実施形態の第6変形例のクーラント吐出部材10のクーラント吐出口19を示す前面図であり、詳しくは、吐出方向からクーラント吐出口19を正面に見た前面図である。この第6変形例では、クーラント吐出口19が、下側へ向かうに従い左右方向の開口幅が大きくなる部分19bと、左右方向の開口幅が上下方向において一定である部分19cと、を含む。
この場合、例えば
図17に示すように、クーラント吐出口19の下端部19dに上記部分19cを配置し、下端部19dにおける左右方向の開口幅を上下方向に一定とすることで、切刃3へのクーラント供給量を増大でき、上述の作用効果がより顕著となる。
【0117】
また
図18は、前述の実施形態の第7変形例のクーラント吐出部材10のクーラント吐出口19を示す前面図であり、詳しくは、吐出方向からクーラント吐出口19を正面に見た前面図である。この第7変形例では、クーラント吐出口19のうち、下側へ向かうに従い左右方向の開口幅が大きくなる部分19bの辺部が、吐出方向から見て、クーラント吐出口19の内側に窪む凹曲線状をなす。
【0118】
また
図19は、前述の実施形態の第8変形例のクーラント吐出部材10のクーラント吐出口19を示す前面図であり、詳しくは、吐出方向からクーラント吐出口19を正面に見た前面図である。この第8変形例では、クーラント吐出口19のうち、下側へ向かうに従い左右方向の開口幅が大きくなる部分19bが、吐出方向から見て、直線状をなす第1辺部19baと、クーラント吐出口19の内側に窪む凹曲線状をなす第2辺部19bbと、を有する。
【0119】
また、前述の実施形態では、クランプ面17が平面状である例を挙げたが、これに限らない。クランプ面17は、平面状以外の例えば凹曲面状でもよい。この場合も、クランプ面17が平面状である場合と同様に、クランプ部材7によってクランプ面17を安定して押圧できる。
【0120】
前述の実施形態では、クランプ部材7が、ホルダ4の保持部46に螺着によって保持されるイモネジである例を挙げたが、これに限らない。特に図示しないが、クランプ部材は、例えば、ホルダ4に保持されてクランプ面17を押圧可能に構成された、くさび部材等であってもよい。
【0121】
前述の実施形態では、保持部46が、上側へ向かうに従い先細りとなる例を挙げたが、これに限らない。保持部46は、例えば、上下方向に沿って外形寸法が一定とされていてもよい。
また、ノズル部12の本体部15が、上側に向けて凸となる略半球状である例を挙げたが、これに限らない。本体部15は、例えば、多角柱状や円柱状等であってもよい。
【0122】
前述の実施形態では、クーラント吐出口19の左右方向の寸法が、クーラント供給口18の左右方向の寸法つまり直径と同じである例を挙げたが、これに限らない。クーラント吐出口19の左右方向の寸法は、クーラント供給口18の直径より小さくてもよい。また、クーラント吐出口19の左右方向の寸法は、クーラント供給口18の直径より大きくてもよい。ただしこの場合も、クーラント吐出口19の開口面積(流路断面積)は、クーラント供給口18の開口面積よりも小さいことが好ましい。
【0123】
前述の実施形態では、インサート固定構造6が、レバーロックタイプである例を挙げたが、これに限らない。特に図示しないが、インサート固定構造6は、例えば、切削インサート2の貫通孔24に挿入されてインサート取付座5の雌ネジ穴に螺着される皿ネジ等であってもよい。
【0124】
前述の実施形態では、切削インサート2が、四角形板状である例を挙げたが、これに限らない。切削インサート2は、例えば、四角形板状以外の多角形板状や円板状等であってもよい。
【0125】
特に図示しないが、ホルダ4は、工具軸方向に延びるシャンク部と、シャンク部の工具先端部に着脱可能に固定されるヘッド部材と、を有するヘッド交換タイプのホルダであってもよい。この場合、インサート取付座5、切削インサート2、インサート固定構造6、保持部46、開口部47a、クーラント吐出部材10およびクランプ部材7は、ヘッド部材に設けられる。
【0126】
前述の実施形態では、ノズル部12が中心軸Cと直交する方向に延び、このため吐出方向は、径方向のうちの一方向であるとしたが、これに限らない。すなわち、ノズル部12は、中心軸Cと交差する方向に延びていればよく、中心軸Cに対して傾斜する方向に延びていてもよい。この場合、前記傾斜する方向が吐出方向に相当する。具体的に、ノズル部12が延びる吐出方向には、例えば、中心軸Cから径方向外側へ向かうに従い下側へ向かう傾斜方向等が含まれる。
【0127】
本発明は、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態および変形例等で説明した各構成を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態等によって限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明のクーラント吐出部材および刃先交換式切削工具によれば、切刃に効率よくクーラントを供給できる。したがって、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0129】
1…刃先交換式切削工具
2…切削インサート
3…切刃
4…ホルダ
5…インサート取付座
10,10A,10B…クーラント吐出部材
11…取付筒
12…ノズル部
14…流路
18…クーラント供給口
19…クーラント吐出口
19a…下辺
19b…下側へ向かうに従い左右方向の開口幅が大きくなる部分
19c…左右方向の開口幅が上下方向において一定である部分
19d…下端部
19e…上端部
20…連通流路
20a…湾曲部
20aa…内コーナ部
20ab…外コーナ部
47…クーラント供給路
47a…開口部
C…中心軸