(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154330
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
G05B 19/409 20060101AFI20221005BHJP
G05B 19/18 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
G05B19/409 C
G05B19/18 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057311
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】荒 和正
【テーマコード(参考)】
3C269
【Fターム(参考)】
3C269AB09
3C269AB11
3C269BB07
3C269KK08
3C269MN27
3C269PP08
3C269QB01
3C269QC01
3C269QC02
3C269QD02
(57)【要約】
【課題】操作の度に操作権限の取得を要求する煩雑さを抑制する。
【解決手段】工作機械1は、材料の加工を行う工作機械本体10と、工作機械本体10に設けられて工作機械本体10を操作する本体操作端末12と、工作機械本体10を遠隔で操作することができる外部操作端末3と通信を行う通信部18と、外部操作端末3からの操作権限の取得要求に応じて本体操作端末12に加えて外部操作端末3にも工作機械本体10を操作する操作権限を付与する演算部13を備えている。演算部13は、本体操作端末12及び外部操作端末3の双方に操作権限を付与している状態において本体操作端末12からの操作を受け付けた場合には、外部操作端末3からの操作を無効な操作として扱うとともに、本体操作端末12からの操作を有効な操作として扱う機械操作優先処理を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料の加工を行う工作機械本体と、
前記工作機械本体に設けられ、前記工作機械本体を操作する本体操作端末と、
前記工作機械本体を遠隔で操作することができる外部操作端末と通信を行う通信部と、
前記本体操作端末に前記工作機械本体を操作する操作権限を付与するとともに、前記外部操作端末からの操作権限の取得要求に応じて、前記本体操作端末に加えて前記外部操作端末にも前記工作機械本体を操作する操作権限を付与する演算部と、を備え、
前記演算部は、
前記本体操作端末及び前記外部操作端末の双方に操作権限を付与している状態において前記本体操作端末から前記工作機械本体に対する操作を受け付けた場合には、前記外部操作端末からの前記工作機械本体に対する操作を無効な操作として扱うとともに、前記本体操作端末からの前記工作機械本体に対する操作を有効な操作として扱う機械操作優先処理を行う
工作機械。
【請求項2】
前記演算部は、
前記本体操作端末に対する最終操作からの経過時間が所定の上限時間に到達したことを判断すると前記機械操作優先処理を終了する
請求項1記載の工作機械。
【請求項3】
前記本体操作端末は、
前記工作機械本体を操作する操作画面を表示する第1表示部と、
前記第1表示部に表示される前記操作画面に対する操作を受け付ける第1操作部と、を含み、
前記外部操作端末は、
前記操作画面を表示する第2表示部と、
前記第2表示部に表示される前記操作画面に対する操作を受け付ける第2操作部と、を含み、
前記第1表示部と前記第2表示部とは、相互に共有された前記操作画面を表示する
請求項1又は2記載の工作機械。
【請求項4】
前記操作画面は、前記工作機械本体を操作する操作項目として、前記工作機械本体の機械動作を伴う特定操作項目を含み、
前記演算部は、
前記外部操作端末に操作権限を付与している場合であっても、前記外部操作端末からの前記特定操作項目についての操作を無効な操作として扱う
請求項3記載の工作機械。
【請求項5】
前記演算部は、
前記機械操作優先処理を行っている場合であっても、前記本体操作端末からの前記特定操作項目についての操作を無効な操作として扱う
請求項4記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
材料の加工を行う工作機械においては、複数の操作端末によってそれぞれ操作可能とした構成が知られている。複数の操作端末からの操作を同時に受け付けると、工作機械が意図しない動作を行う可能性がある。そのため、複数の操作端末から同時に操作を受け付けることができないような対策を行うことが通常である。
【0003】
特許文献1には、制御対象である対象装置と、対象装置に対しネットワークを介して接続された複数の制御装置(操作端末)と、を有する制御システムが開示されている。この制御システムでは、複数の操作端末のいずれかに発行した発行済みの制御権のうち、一つの制御権のみが有効となり、他の制御権は無効となるように、制御権が管理されている。すなわち、制御権が有効となる操作端末のみが対象装置を排他的に制御することができる。また、特許文献2から5にも、排他的な制御を行う内容が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-086901号公報
【特許文献2】特開2019-179513号公報
【特許文献3】特開2014-085782号公報
【特許文献4】特開平9-259083号公報
【特許文献5】特許第3846666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、異なる操作端末間で交代しながら操作を行うような場面では、工作機械を操作しようとする度に操作権限の取得要求を行う必要があり、煩雑な操作が必要になるという不都合があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の工作機械は、材料の加工を行う工作機械本体と、工作機械本体に設けられ、工作機械本体を操作する本体操作端末と、工作機械本体を遠隔で操作することができる外部操作端末と通信を行う通信部と、本体操作端末に工作機械本体を操作する操作権限を付与するとともに、外部操作端末からの操作権限の取得要求に応じて、本体操作端末に加えて外部操作端末にも工作機械本体を操作する操作権限を付与する演算部と、を備え、演算部は、本体操作端末及び外部操作端末の双方に操作権限を付与している状態において本体操作端末から工作機械本体に対する操作を受け付けた場合には、外部操作端末からの工作機械本体に対する操作を無効な操作として扱うとともに、本体操作端末からの工作機械本体に対する操作を有効な操作として扱う機械操作優先処理を行う。
【0007】
本発明の一態様の工作機械によれば、本体操作端末及び外部操作端末の双方に操作権限が付与されている状態であっても、本体操作端末の操作をトリガーとして、外部操作端末からの操作が無効な操作として扱われ、本体操作端末からの操作が有効な操作として扱われる。これにより、本体操作端末及び外部操作端末による操作の混合を抑制することができる。加えて、本体操作端末では、工作機械本体を操作しようとする度に操作権限の取得要求を行う必要がない。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、工作機械を操作しようとする度に操作権限の取得要求を行うといった煩雑な操作を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る工作機械の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る工作機械の操作の流れを示すシーケンスチャートである。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る工作機械の操作の流れを示すシーケンスチャートである。
【
図4】
図4は、本体操作端末の操作表示部に表示される操作画面の一例を示す説明図である。
【
図5】
図5は、外部操作端末の操作表示部に表示される操作画面の一例を示す説明図である。
【
図6】
図6は、本体操作端末及び外部操作端末の操作表示部に表示される操作画面の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照し、本実施形態に係る工作機械について説明する。
【0011】
図1は、本実施形態に係る工作機械の構成を示すブロック図である。本実施形態に係る工作機械1は、材料の加工を行う工作機械本体10と、工作機械本体10に設けられ、工作機械本体10を操作する本体操作端末12と、工作機械本体10を遠隔で操作することができる外部操作端末3と通信を行う通信部18と、本体操作端末12に工作機械本体10を操作する操作権限を付与するとともに、外部操作端末3からの操作権限の取得要求に応じて、本体操作端末12に加えて外部操作端末3にも工作機械本体10を操作する操作権限を付与する演算部13と、を備える。演算部13は、本体操作端末12及び外部操作端末3の双方に操作権限を付与している状態において本体操作端末12から工作機械本体10に対する操作を受けた場合には、外部操作端末3からの工作機械本体10に対する操作を無効な操作として扱うとともに、本体操作端末12からの工作機械本体10に対する操作を有効な操作として扱う機械操作優先処理を行う。
【0012】
つぎに、工作機械1の構成を詳細に説明する。工作機械1は、工作機械本体10と、制御部11と、演算部13と、本体操作端末12と、通信部18とを備えている。工作機械1は、工作機械本体10を用いて材料の加工を行う装置である。工作機械1は、ネットワーク5を介して、外部操作端末3と通信可能に構成されている。ネットワーク5は、例えばLAN(Local Area Network)が挙げられる。ネットワーク5は、インターネットを利用するものであってもよいし、4G/LTE、又は5Gなどのモバイル通信を利用するものであってもよい。
【0013】
工作機械本体10は、材料の加工を行う加工機である。工作機械本体10は、例えば、レーザによって金属の材料(例えば板材)を切断するレーザ加工機である。しかしながら、工作機械本体10は、レーザ加工機の他、レーザ溶接機、パンチングマシン、ベンディングマシン、バンドソーマシンなどの加工機であってもよく、異なる種類の加工を複合的に行う複合加工機であってもよい。
【0014】
制御部11は、加工プログラムに基づいて工作機械本体10を制御する制御装置であり、例えばNC装置(数値制御装置)である。制御部11は、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサと、メモリと、各種のインターフェースとを有するコンピュータによって構成されている。メモリ、各種のインターフェースは、バスを介してハードウェアプロセッサに接続されている。ハードウェアプロセッサによってメモリに格納されたプログラムを実行させることにより、制御部11が備える種々の機能が実現される。制御部11は、工作機械本体10及び演算部13と通信可能に接続され、本体操作端末12と電気的に接続されている。
【0015】
本体操作端末12は、工作機械本体10を操作する操作端末である。本体操作端末12は、工作機械本体10の近傍、例えば工作機械本体10の本体フレームに設けられている。本体操作端末12によれば、工作機械本体10を視認しながら、工作機械本体10を操作することができる。本体操作端末12は、工作機械本体10を用いて加工を行うオペレータによって利用される。
【0016】
本体操作端末12は、演算部13と、操作表示部14と、スイッチ17とを備えている。なお、演算部13は、本体操作端末12の外部に設けられていてもよく、本体操作端末12は、少なくとも操作表示部14と、スイッチ17とを備えていればよい。
【0017】
演算部13は、本体操作端末12及び通信部18を制御する制御装置である。演算部13は、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサと、メモリと、各種のインターフェースとを有するコンピュータによって構成されている。メモリ、各種のインターフェースは、バスを介してハードウェアプロセッサに接続されている。ハードウェアプロセッサによってメモリに格納されたプログラムを実行させることにより、演算部13が備える種々の機能が実現される。演算部13は、制御部11、操作表示部14、及び通信部18と電気的に接続されている。演算部13の構成の詳細については後述する。
【0018】
操作表示部14は、操作部15と、表示部16とを備えている。操作部15は、オペレータによって操作されることで、オペレータの操作に応じた操作データを演算部13に出力する。表示部16は、オペレータに対して視認可能な情報を表示する。表示部16に表示される情報は、演算部13によって制御される。
【0019】
表示部16は、例えば液晶パネルであり、操作部15は、表示部16に装着されるタッチパネルである。操作表示部14は、工作機械本体10を操作する操作項目を含む操作画面を表示部16に表示させ、この操作画面に対する操作を操作部15で受け付けるように構成されている。操作項目には、工作機械本体10を動作させたり、工作機械本体10の動作を設定したりする所定の機能が割り当てられている。
【0020】
スイッチ17は、操作部15とは独立して存在する操作部材であり、押しボタンスイッチなどの適宜のハードウェアスイッチである。スイッチ17には、工作機械本体10を動作させたり、工作機械本体10の動作を設定したりする所定の機能が割り当てられている。スイッチ17は、オペレータによって操作されることで、オペレータの操作に応じたスイッチ信号を出力する。スイッチ17から出力されるスイッチ信号は、制御部11に対して直接入力される。なお、スイッチ17に対して割り当てられる機能は、操作表示部14に表示される操作画面への操作を通じて変更することもできる。
【0021】
通信部18は、1つ以上の有線又は無線の通信インターフェースを含む。通信部18は、工作機械1(具体的には本体操作端末12)と外部操作端末3との間で所定の情報を含むデータの送受信を可能にする。有線の通信インターフェースとしては、例えば有線LAN(Local Area Network)が使用される。無線の通信インターフェースとしては、例えば無線LANなどが使用される。通信部18は、工作機械1と外部操作端末3との間で、ネットワーク5により規定される通信プロトコルに従いデータ伝送を行う。通信部18は、本体操作端末12に対して搭載されてもよい。
【0022】
外部操作端末3は、工作機械本体10を遠隔で操作することができる操作端末である。したがって、外部操作端末3によれば、工作機械本体10の設置場所とは異なる場所において、工作機械本体10を操作することができる。外部操作端末3は、典型的には、工作機械1を保守又は管理する管理者によって利用されるが、オペレータ及び管理者以外の第3者によって利用されてもよい。
図1では、1つの外部操作端末3を示しているが、外部操作端末3は2つ以上であってもよい。
【0023】
外部操作端末3は、例えばスマートフォン、タブレット端末、ウェアラブル端末などである。外部操作端末3は、汎用コンピュータであってもよい。外部操作端末3には、工作機械本体10を遠隔で操作するためのクライアントプログラム(アプリケーション)がインストールされており、管理者は、このクライアントプログラムを利用して工作機械本体10を遠隔で操作する。
【0024】
外部操作端末3は、制御部30と、操作表示部31と、通信部34とを備えている。
【0025】
制御部30は、外部操作端末3を制御する制御装置である。制御部30は、CPUなどのハードウェアプロセッサと、メモリと、各種のインターフェースとを有するマイクロコンピュータによって構成されている。メモリ、各種のインターフェースは、バスを介してハードウェアプロセッサに接続されている。メモリに格納されたアプリケーションプログラムを実行させることにより、制御部30が備える種々の機能が実現される。制御部30は、操作表示部31及び通信部34と電気的に接続されている。
【0026】
操作表示部31は、操作部32と、表示部33とを備えている。操作部32は、管理者によって操作されることで、管理者の操作に応じた操作データを制御部30に出力する。表示部33は、管理者に対して視認可能に情報を表示する。表示部33に表示される情報は、制御部30によって制御される。
【0027】
表示部33は、例えば液晶パネルであり、操作部32は、表示部33に装着されるタッチパネルである。操作表示部31は、工作機械本体10を操作する操作項目を含む操作画面を表示部33に表示させ、この操作画面に対する操作を操作部32で受け付けるように構成されている。この表示部33に表示される操作画面は、工作機械1から受信する画面データに基づいて制御部30により表示される。これにより、表示部33は、本体操作端末12の表示部16に表示される操作画面が共有して表示する。換言すれば、本体操作端末12の表示部16と、外部操作端末3の表示部33とは、相互に共有された操作画面を表示する。
【0028】
通信部34は、1つ以上の有線又は無線の通信インターフェースを含む。通信部34は、工作機械1と外部操作端末3との間で、所定の情報を含むデータの送受信を可能にする。有線の通信インターフェースとしては、例えば有線LANが使用される。無線の通信インターフェースとしては、例えば無線LANなどが使用される。通信部34は、工作機械1と外部操作端末3との間で、ネットワーク5により規定される通信プロトコルに従いデータ伝送を行う。
【0029】
このような構成の工作機械1において、本実施形態の特徴の1つである演算部13は、制御部11との間で情報の授受を行ったり、本体操作端末12の各部及び通信部18を制御したりする。
【0030】
演算部13は、操作画面を表示部16に表示する。操作画面は、工作機械本体10を動作させたり、工作機械本体10の動作を設定したりする操作項目を含む。また、演算部13は、制御部11から出力される情報に基づいて、工作機械本体10に関する各種の情報を表示部16に表示することができる。
【0031】
また、演算部13は、操作部15から出力される操作データに応じて、各種の処理を行う。演算部13は、操作部15であるタッチパネルへの操作座標と、表示部16に表示される操作画面の操作項目の座標とに基づいて、どの操作項目が操作されたのかを判断し、これにより、工作機械本体10に対する操作を受け付ける。演算部13は、本体操作端末12に行われた工作機械本体10に対する操作の情報を、制御部11に対して出力する。制御部11は、本体操作端末12による工作機械本体10の操作に応じて、工作機械本体10を制御する。
【0032】
本体操作端末12への操作は、工作機械本体10を操作するものに限られない。本体操作端末12の操作には、表示部16に表示される操作画面の遷移、拡大又は縮小などの画面操作などが含まれる。
【0033】
演算部13は、外部操作端末3が工作機械1に対して接続されている場合には、表示部16に表示している操作画面の画面データを、通信部18を介して外部操作端末3へと送信する。これにより、外部操作端末3の表示部33は、本体操作端末12の表示部16に表示される操作画面を共有する。加えて、演算部13は、管理者の操作に応じて外部操作端末3の操作部32から出力された操作データを、通信部18を介して受信する。演算部13は、本体操作端末12の操作部15から出力される操作データと同様、外部操作端末3の操作部32から出力される操作データに応じて、各種の処理を行う。演算部13は、外部操作端末3に行われた工作機械本体10に対する操作の情報を、制御部11に対して出力する。これにより、制御部11は、外部操作端末3による工作機械本体10に対する操作に応じて、工作機械本体10を制御する。
【0034】
本実施形態との関係において、演算部13は、本体操作端末12に対して、工作機械本体10を操作する操作権限を付与する。この場合、演算部13は、操作権限を付与した本体操作端末12からの工作機械本体10に対する操作を有効な操作として扱う。一方、演算部13は、操作権限を付与していない外部操作端末3からの工作機械本体10に対する操作を無効な操作として扱う。一方、演算部13は、外部操作端末3から操作権限の取得要求を受け付けると、この取得要求に応じて、本体操作端末12に加えて外部操作端末3にも工作機械本体10を操作する操作権限を付与する。
【0035】
演算部13は、本体操作端末12及び外部操作端末3の双方に操作権限を付与している状態において本体操作端末12から工作機械本体10に対する操作を受けた場合には、機械操作優先処理を行う。機械操作優先処理は、外部操作端末3からの工作機械本体10に対する操作を無効な操作として扱うとともに、本体操作端末12からの工作機械本体10に対する操作を有効な操作として扱う処理である。
【0036】
図2及び
図3は、本実施形態に係る工作機械の操作の流れを示すシーケンスチャートである。以下、本実施形態に係る工作機械の操作の流れを説明する。まず、初期状態において、演算部13は、本体操作端末12に工作機械本体10を操作する操作権限を付与しているものとする。演算部13は、本体操作端末12からの操作(操作権限の取得要求)に応じて、本体操作端末12へ操作権限を付与してもよいし、初期設定として、本体操作端末12へ操作権限を付与するものであってもよい。
【0037】
演算部13は、外部操作端末3からの接続の受け入れを開始する(ステップS10)。
【0038】
外部操作端末3の制御部30は、管理者から操作に応じて工作機械1に対して接続要求指令を送信し、これにより、工作機械1との接続を行う(ステップS12)。例えば、接続要求指令の送信は、外部操作端末3においてクライアントプログラムを起動することによって実行される。
【0039】
演算部13は、外部操作端末3が接続されると、外部操作端末3に対して操作画面(画面データ)の送信を開始する(ステップS14)。一方、外部操作端末3の制御部30は、操作画面の受信を開始する(ステップS16)。操作画面の受信を開始すると、制御部30は、受信した操作画面を表示部33に表示する。これにより、外部操作端末3の表示部33と、本体操作端末12の表示部16とで操作画面が共有される。操作画面が共有されている場合、本体操作端末12及び外部操作端末3の一方で操作画面の遷移などの画面操作が行われると、その画面操作は、外部操作端末3の表示部33と、本体操作端末12の表示部16とにそれぞれ反映される。
【0040】
つぎに、外部操作端末3の制御部30が、工作機械1に対して要求指令を送信することで、操作権限の取得を要求する(ステップS18)。演算部13は、操作権限の取得要求を受け付けると、本体操作端末12に加えて、操作権限の取得を要求した外部操作端末3にも操作権限を付与する(ステップS20)。そして、演算部13は、外部操作端末3による工作機械本体10に対する操作(外部操作)の受け付けを開始する(ステップS22)。
【0041】
本体操作端末12及び外部操作端末3の双方に操作権限を付与した以降、演算部13は、本体操作端末12からの工作機械本体10に対する操作(本体操作)、及び操作権限が付与された外部操作端末3からの外部操作を有効な操作として扱う。もっとも、演算部13は、操作権限が付与された外部操作端末3から外部操作を受け付けた場合であっても、後述する機械操作優先処理の実行中においては、例外的に、この操作を無効な操作として扱う(詳細については後述する)。また、演算部13は、操作権限が付与されていない他の外部操作端末(図示せず)から外部操作を受け付けたとしても、この操作を無効な操作として扱う。
【0042】
図4は、本体操作端末の操作表示部に表示される操作画面の一例を示す説明図である。このようにして、外部操作端末3に操作権限を付与し、外部操作の受け付けを開始した以降、演算部13は、本体操作端末12の操作表示部14(表示部16)に、外部操作端末3によって操作されていることを示す情報を表示する。
図4に示す例では、外部操作端末3によって操作されていることを示す「共有中」、及び、外部操作端末3を識別する情報、例えば外部操作端末3を操作する管理者の識別子を示す「管理者A」を含む情報14aが表示される。このような画面表示は、本体操作端末12の表示部16のみで行われてもよいし、外部操作端末3の表示部33で共有されてもよい。
【0043】
図2を参照するに、演算部13は、本体操作端末12及び外部操作端末3の双方に操作権限を付与している状態で受け付けた操作が、本体操作端末12からの本体操作であることを判断すると(ステップS24:Yes)、機械操作優先処理を開始する(ステップS26)。
【0044】
図3に示すように、機械操作優先処理が開始されると、演算部13は、本体操作に応じた処理を行う(ステップS28)。したがって、演算部13は、本体操作に応じて工作機械本体10が動作するように、本体操作の情報を制御部11に出力する。これにより、本体操作は有効として扱われる。
【0045】
一方、機械操作優先処理を開始した後、操作権限が付与された外部操作端末3から外部操作が行われたとする(ステップS30)。演算部13は、通信部18を介して、外部操作端末3から外部操作に対応する操作データを受信するものの(ステップS32)、この操作が操作権限が付与された外部操作端末3からものであることを判断すると、この操作を無視する(ステップS34)。したがって、演算部13は、外部操作の情報を制御部11に出力しない。これにより、外部操作端末3からの操作は無効として扱われる。すなわち、演算部13は、機械操作優先処理の実行中においては、操作権限が付与された外部操作端末3からの外部操作であっても、例外的に、この操作を無効な操作として扱う。また、操作権限を付与していない他の外部操作端末(図示せず)からの外部操作があったとしても、演算部13は、当然にこれを無効なものとして扱う。
【0046】
操作権限が付与された外部操作端末3からの操作のうち、無効として扱われる操作は、工作機械本体10に対する操作に関するものに限られる。したがって、演算部13は、工作機械本体10に対する操作以外の操作、例えば画面遷移、拡大及び縮小などの画面操作、スイッチ17に対して割り付ける機能の変更操作などについては有効な操作として扱う。ただし、演算部13は、工作機械本体10に対する操作に限らず、操作権限が付与された外部操作端末3からの全ての操作を無効な操作として扱ってもよい。
【0047】
図5は、外部操作端末の操作表示部に表示される操作画面の一例を示す説明図である。このようにして、機械操作優先処理が開始されると、演算部13は、外部操作端末3の操作表示部31(表示部33)に、機械操作優先処理が行われていることを示す情報を表示する。
図5(a)に示す例では、操作表示部31に、機械操作優先処理が行われていることを示す「機械操作優先中」という情報31aが表示される。また、外部操作を無効として扱った場合、演算部13は、外部操作端末3の操作表示部31に、外部操作を無効として扱った旨の情報を表示する。
図5(b)に示す例では、操作表示部31に、外部操作を無効として扱ったことを示す「操作は無効です」という情報31aが表示される。
【0048】
図3に示すように、演算部13は、本体操作端末12の最終操作からの経過時間が所定の上限時間に到達したことを判断すると(ステップS36:Yes)、機械操作優先処理を終了する(ステップS38)。経過時間が所定の上限時間に到達していない場合には、ステップS28の処理に戻る。
【0049】
一方、
図2に示すように、外部操作端末3に操作権限を付与した以降であっても、本体操作が行われない限り(ステップS24:Yes)、演算部13は、機械操作優先処理を開始しない。
図3に示すように、操作権限が付与された外部操作端末3により外部操作が行われると(ステップS30)、演算部13は、通信部18を介して、外部操作に対応する操作データを受信する(ステップS40)。そして、演算部13は、操作権限が付与された外部操作端末3からの操作であることを判断すると、外部操作に応じた処理を行う(ステップS42)。したがって、演算部13は、外部操作に応じて工作機械本体10が動作するように、外部操作の情報を制御部11に出力する。これにより、操作権限が付与された外部操作端末3からの外部操作は有効として扱われる。
【0050】
外部操作端末3で操作権限を終了する終了操作が行われると(ステップS44)、演算部13は、終了操作の受信をトリガーとして(ステップS46:Yes)、本処理を終了する(ステップS48)。一方、演算部13は、終了操作を判断しない場合には(ステップS46:No)、ステップS24の処理に戻る。
【0051】
以上説明したように、本実施形態に係る工作機械1によれば、本体操作端末12及び外部操作端末3の双方に操作権限を付与している状態において本体操作端末12からの操作を受けた場合には、機械操作優先処理を行う。機械操作優先処理が行われることにより、本体操作端末12及び外部操作端末3の双方に操作権限を付与している状態であっても、外部操作端末3からの操作が無効な操作として扱われ、本体操作端末12からの操作が有効な操作として扱われる。これにより、本体操作端末12及び外部操作端末3による操作の混合を抑制することができる。加えて、本体操作端末12では、工作機械本体10を操作しようとする度に操作権限の取得要求を行う必要がない。これにより、本体操作端末12のオペレータにとって煩雑な操作を抑制することができるので、オペレータの利便性の向上を図ることができる。
【0052】
本実施形態に係る工作機械1によれば、演算部13は、上限時間が経過したことをトリガーとして、機械操作優先処理を終了している。これにより、外部操作端末3に操作権限が付与されているにも係わらず、外部操作端末3の操作が無効として扱われるという状態が長期に亘って継続することを制限することができる。外部操作端末3の管理者が操作に対して過度な制約を受けることを抑制することができる。また、機械操作優先処理が終了すれば、操作権限が付与された外部操作端末3からの外部操作は有効として扱われるので、外部操作端末3側で操作権限の取得要求を再度行うといった操作も必要がない。これにより、外部操作端末3の管理者にとって煩雑な操作が不要となるので、管理者の利便性の向上を図ることができる。
【0053】
本実施形態に係る工作機械1によれば、本体操作端末12と外部操作端末3とで互いに操作画面を共有している。これにより、操作画面を共有しながら、本体操作端末12と外部操作端末3とで交互に工作機械本体10を操作するような使い方をすることができる。また、操作の主体が交互に代わるような状況であっても、本体操作端末12では、工作機械本体10を操作しようとする度に操作権限の取得要求を行う必要がない。これにより、本体操作端末12のオペレータにとって煩雑な操作が不要となるので、オペレータの利便性の向上を図ることができる。
【0054】
図6は、操作画面の一例を示す説明図である。
図6(a)に示すように、本体操作端末12の操作表示部14(表示部16)に表示される操作画面は、工作機械本体10を操作する操作項目として、工作機械本体10の機械動作を伴う特定操作項目14bを含んでいる。
図6(b)に示すように、特定操作項目14bの表示は、外部操作端末3の操作表示部31(表示部33)にも同様に表示される。
【0055】
本体操作端末12に加えて外部操作端末3に操作権限を付与している場合であっても、演算部13は、外部操作端末3の操作表示部31からの特定操作項目31cについての操作を無効な操作として扱ってもよい。なお、
図6(b)に示すように、特定操作項目31cについての操作を無効な操作として扱う場合には、特定操作項目31cの表示形態を通常の表示形態と相違させることが好ましい。
【0056】
本実施形態に係る工作機械1によれば、外部操作端末3により、工作機械本体10を遠隔操作することができる。そのため、外部操作端末3の管理者は、工作機械本体10及び本体操作端末12を現に視認しない状況で、外部操作端末3を操作することになる。そこで、外部操作端末3からの特定操作項目31cに対する操作を無効とすることで、本体操作端末12のオペレータにとって工作機械本体10が不意に動作するといった状況を抑制することができる。
【0057】
また、操作権限が付与された外部操作端末3の操作を通じて、オペレータが気付いていない状況でスイッチ17へ割り当てられる機能が変更されているような状況が起こり得る。このような場合、本体操作端末12のオペレータがスイッチ17を操作した際に、工作機械本体10がオペレータの意図した機能の動作とは異なる機能の動作を実行することとなる。そこで、外部操作端末3に操作権限を付与している場合には、制御部11は、スイッチ17の操作を無効な操作として扱ってもよい。これにより、オペレータにとって工作機械本体10が不意に動作するといった状況を抑制することができる。
【0058】
さらに、演算部13は、機械操作優先処理を行っている場合であっても、本体操作端末12からの特定操作項目14bについての操作を無効な操作として扱ってもよい。
【0059】
本実施形態に係る工作機械1によれば、機械操作優先処理を行っている場合、操作権限が付与された外部操作端末3からの工作機械本体10に対する操作は無効となる。一方で、機械操作優先処理を行っている場合であっても、工作機械本体10の操作に係わらない、操作画面の遷移などの画面操作は、外部操作端末3からも可能となる。そのため、外部操作端末3からの操作を受けて、オペレータが気付いていない状況で操作画面が遷移していることがある。操作画面を共有している状況であれば、操作画面の遷移は、双方の表示部16、33に反映される。オペレータが、工作機械本体10を注視しつつ、本体操作端末12を視野に入れることなく本体操作端末12を操作するような場合に操作画面が発生すると、オペレータが意図せずに特定操作項目14bを操作してしまうことが起こり得る。この場合、オペレータにとって工作機械本体10が不意に動作するといった状況が発生する。しかしながら、本実施形態に係る工作機械1によれば、機械操作優先処理を行っている場合には、特定操作項目14bについての操作が無効な操作として扱われる。これにより、オペレータにとって工作機械本体10が不意に動作するといった状況を抑制することができる。
【0060】
なお、上述した実施形態では、演算部13は、外部操作端末3からの操作データを受信した上で、外部操作を無視することで、外部操作を無効な操作として扱っている。しかしながら、外部操作を無効な操作として扱う方法は、これに限らない。例えば、演算部13は、機械操作優先処理を行っている間は、外部操作端末3からの操作データを通信部18で受信しないとしてもよい。また、演算部13は、機械操作優先処理を行っている間、通信部34から操作データを送信することを禁止させる指令、又は操作部32に対する操作を無効化する指令を、外部操作端末3の制御部30に対して出力してもよい。外部操作を無効な操作として扱う方法は、種々の手法を適用することができる。
【0061】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0062】
1 工作機械
10 工作機械本体
11 制御部
12 本体操作端末
13 演算部
14 操作表示部
15 操作部(第1操作部)
16 表示部(第1表示部)
17 スイッチ
18 通信部
3 外部操作端末
30 制御部
31 操作表示部
32 操作部(第2操作部)
33 表示部(第2表示部)
34 通信部