(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154339
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】足場資材計数システム、情報処理装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06M 9/00 20060101AFI20221005BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20221005BHJP
E04G 1/00 20060101ALI20221005BHJP
G06Q 50/08 20120101ALI20221005BHJP
G16Y 10/30 20200101ALI20221005BHJP
【FI】
G06M9/00 Z
G01B11/00 H
E04G1/00 ESW
G06Q50/08
G16Y10/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057327
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】502231096
【氏名又は名称】株式会社サムシング
(74)【代理人】
【識別番号】110002103
【氏名又は名称】特許業務法人にじいろ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 なつみ
(72)【発明者】
【氏名】東 剛史
【テーマコード(参考)】
2F065
5L049
【Fターム(参考)】
2F065AA04
2F065AA06
2F065FF04
2F065FF11
2F065JJ03
2F065JJ26
2F065MM06
2F065PP22
2F065QQ31
2F065RR08
2F065SS13
2F065UU05
5L049CC07
(57)【要約】
【課題】 目的は、返却された足場資材の個数を高精度に計数すること、しかもその作業負担で抑えることにある。
【解決手段】 積み重ねられた建設用の足場資材の個数を計数する足場資材計数システムは、光学画像を撮影する光学カメラ35と、光学画像の視野を少なくとも含む視野で距離画像を取得する距離センサ36とを有する携帯型情報処理端末3と、携帯型情報処理端末に対してインターネット回線7を介して接続され、足場資材の個数を推定するための情報処理装置1とを具備する。携帯型情報処理端末は、ユーザ操作に従って入力された距離に基づいて距離画像を用いて光学画像から足場資材より遠方の背景を消去した背景消去画像を生成する。情報処理装置は、携帯型情報処理端末から受信した背景消去画像に基づいて足場資材の個数を資材毎に推定する手段とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積み重ねられた建設用の足場資材の個数を計数する足場資材計数システムにおいて、
光学画像を撮影するカメラと、前記光学画像の視野を少なくとも含む視野で距離画像を取得する距離センサとを有する携帯型情報処理端末と、
前記携帯型情報処理端末に対してインターネット回線を介して接続され、前記足場資材の個数を推定するための情報処理装置とを具備し、
前記携帯型情報処理端末は、ユーザ操作に従って入力された距離に基づいて前記距離画像を用いて前記光学画像から前記足場資材より遠方の背景を消去した背景消去画像を生成する手段を有し、
前記情報処理装置は、前記携帯型情報処理端末から受信した前記背景消去画像に基づいて前記足場資材の個数を資材毎に推定する手段とを有する、足場資材計数システム。
【請求項2】
前記足場資材の個数を資材毎に推定する手段は、前記背景消去画像を入力データ、前記個数と資材コードとを出力データとして構築された学習済みの畳み込みニューラルネットワーク回路から構成される、請求項1記載の足場資材計数システム。
【請求項3】
前記畳み込みニューラルネットワーク回路は、前記背景消去画像とともに前記足場資材の寸法を入力データとするように構築される、請求項2記載の足場資材計数システム。
【請求項4】
前記情報処理装置は、前記距離画像の中央領域の距離に基づいて前記足場資材の寸法を換算する寸法換算処理部を前記畳み込みニューラルネットワーク回路の前処理部として有する、請求項3記載の足場資材計数システム。
【請求項5】
前記情報処理装置は、
前記推定された足場資材の資材毎の個数に関するデータを、前記携帯型情報処理端末に送信する手段と、
前記携帯型情報処理端末から、前記推定された足場資材の資材毎の個数の正誤及び前記推定された足場資材の個数が誤りであった場合に前記足場資材の修正個数に関するデータを受信する手段と、
前記受信された前記足場資材の修正個数と前記背景消去画像とを教師データとして前記畳み込みニューラルネットワーク回路を学習させる手段とをさらに備える、請求項2記載の足場資材計数システム。
【請求項6】
前記情報処理装置から前記携帯型情報処理端末に対して、前記推定された足場資材の資材毎の個数に関するデータとともに、出荷数に関するデータが送信される、請求項5記載の足場資材計数システム。
【請求項7】
前記携帯型情報処理端末における前記推定された足場資材の資材毎の個数の表示態様は、前記出荷数に一致するときと前記出荷数に一致しないときとで相違する、請求項6記載の足場資材計数システム。
【請求項8】
前記畳み込みニューラルネットワーク回路は、前記足場資材の種類毎に構築される、請求項2記載の足場資材計数システム。
【請求項9】
前記情報処理装置は、前記背景消去画像を入力データとして前記足場資材の種類を出力データとして構築された学習済みの他の畳み込みニューラルネットワーク回路を有し、
前記畳み込みニューラルネットワーク回路は、前記推定された足場資材の種類に従って選択される、請求項8記載の足場資材計数システム。
【請求項10】
携帯型情報処理端末に対してインターネット回線を介して接続され、積み重ねられた建設用の足場資材の個数を推定するための情報処理装置において、
前記携帯型情報処理端末から、光学画像から生成された前記足場資材より遠方の背景を消去した背景消去画像のデータを受信する手段と、
前記携帯型情報処理端末から受信した前記背景消去画像に基づいて前記足場資材の個数を資材毎に推定する手段とを具備する、情報処理装置。
【請求項11】
携帯型情報処理端末に対してインターネット回線を介して接続され、積み重ねられた建設用の足場資材の個数を推定するためのコンピュータを、
前記携帯型情報処理端末から、積み重ねられた建設用の足場資材に関する前記足場資材より遠方の背景を消去した背景消去画像のデータを受信する手段と、
前記携帯型情報処理端末から受信した前記背景消去画像に基づいて前記足場資材の個数を資材毎に推定する手段として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、積み重ねられた建設用の足場資材の個数を計数する足場資材計数システム、情報処理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ビル又は住宅等の建設現場では、その周囲に足場を組み立てられる。足場により建設作業が効率化され得る。
【0003】
通常、足場資材はそれ専門のリース業者から提供を受ける。足場リース業者は、倉庫等の資材置き場から足場資材を建設現場に出荷して、建設現場で足場を組み立てるとともに、施工完了後には足場を分解して足場資材を当該資材置き場に返却させる。足場リース業者は、資材の出荷数と返却数(入庫数)とを管理する必要がある。
【0004】
出荷時には、注文を受けた時点で出荷伝票を作成する。その出荷伝票を元に部材を梱包し、発送する。現場で使用終えた部材から順に返却され、それを順次検収していく。返却時は1現場に出荷された部材が複数のトラックに分かれて積載されることが多い。トラックは数日にまたがって返却されることも多い。返却された部材は、フォークリフトで荷卸しされ、その時に返却された証拠として写真撮影を行う。
【0005】
出荷伝票に従って出荷作業が行われることから、出荷数は厳密に管理されている。
【0006】
一方、足場資材の返却時には、上記の通り複数のトラックに分かれて、また数日にまたがって返却され、さらに足場資材は資材ごとではあるが不定の数で乱雑に積み重ねられた状態で倉庫に運び込まれることが多いので、それらを作業員が目視で計数していた。
【0007】
従って、作業員が返却された資材を計数する作業にかかる負担としては多大であり、計数作業にかかる時間も膨大であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
目的は、返却された足場資材の個数を高精度に計数すること、しかもその作業負担を抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施形態は、積み重ねられた建設用の足場資材の個数を計数する足場資材計数システムに係り、光学画像を撮影するカメラと、光学画像の視野を少なくとも含む視野で距離画像を取得する距離センサとを有する携帯型情報処理端末と、携帯型情報処理端末に対してインターネット回線を介して接続され、足場資材の個数を推定するための情報処理装置とを具備する。携帯型情報処理端末は、ユーザ操作に従って入力された距離に基づいて距離画像を用いて光学画像から足場資材より遠方の背景を消去した背景消去画像を生成する。情報処理装置は、携帯型情報処理端末から受信した背景消去画像に基づいて足場資材の個数を資材毎に推定する手段とを有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る足場資材計数システムの構成図である。
【
図2】
図2は、
図1の携帯型情報処理端末のブロック図である。
【
図3】
図3は、
図1の足場資材個数推定用の情報処理装置のブロック図である。
【
図4】
図4は、
図3の記憶部に記憶される足場資材属性表データの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、
図1の足場資材管理用の情報処理装置で管理される出荷/入庫管理表の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、本実施形態における足場資材計数システムの動作手順を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、
図6の工程S7における携帯型情報処理端末の表示画面例を示す図である。
【
図8】
図8は、
図6の工程S11及びS13における光学画像及び背景消去画像の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、
図6の工程S12における背景消去の距離調整用の携帯型情報処理端末の表示画面例を示す図である。
【
図10】
図10は、
図3の資材個数推定処理部を実現する具体的構成(CNN)及びその処理手順を示す図である。
【
図11】
図11は、
図6の工程S22における携帯型情報処理端末の表示画面例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。本実施形態に係る足場資材計数システムとしては、建設現場に貸し出されていた足場資材が、建設現場からトラックに積載されて、倉庫等の資材置き場に返却され、フォークリフトで荷卸しされた時に、当該荷下ろしされた足場資材を計数するために用いられる。
【0012】
図1に示すように、本実施形態に係る足場資材計数システムは、資材置き場で作業員が携帯し、荷下ろしされた建設用の足場資材を撮影する複数の携帯型情報処理端末3と、携帯型情報処理端末3に対して公衆通信回線網(インターネット回線)7を介して接続され、携帯型情報処理端末3により撮影された画像から足場資材の個数とその資材コードとを典型的には畳み込みニューラルネットワーク回路(CNN)により推定するとともに携帯型情報処理端末3を介して作業員の確認を取得した上で足場資材の個数を最終的に確定するための足場資材個数推定用の情報処理装置1とからなる。足場資材個数推定用の情報処理装置1には、インターネット回線7を介して、足場資材の出荷数/入庫数(返却数)/在庫数等を統括して管理するための情報処理装置2が接続される。
【0013】
図2に示すように携帯型情報処理端末3は、典型的にはスマートフォンであり、制御部31に対して制御/データバス30を介して背景消去画像生成部32、記憶部33、表示部34、光学カメラ35、距離センサ36、操作入力部37、通信部38とから構成される。制御部31はCPU(Central Processing Unit)、及びGPU(Graphics Processing Unit)により構成されるプロセッサで実装され、記憶部33はRAM、ROM、フラッシュメモリで実装され、操作入力部37はタッチパネル等のポインティングデバイスで実装され、表示部34はLCD(Liquid Crystal Display)等のディスプレイで実装される。ROMに記憶された各種プログラムは、ROMからRAMにロードされ、プロセッサにより実行されることにより背景消去画像生成部32及びその他の手段が機能される。
【0014】
光学カメラ35は、被写体表面から到来する光束を結像するレンズと、レンズが結像した光束を電気信号に変換し光学画像データを発生させる撮像素子とからなる。距離センサ36は、典型的にはLiDAR(Light Detection and Ranging)が実装され、被写体にレーザを照射してその反射光を受光素子で受光し、送受光の時間差から対象までの距離を測定するとともに、垂直・水平走査により距離画像データ(点群データ)を発生する。距離センサ36の視野は、光学カメラ35の視野と同一又はそれを少なくとも含んでいる。距離センサ36の視野中心は光学カメラ35のそれに対して固定されており、距離画像上の位置を光学画像上の位置に対して対応付けることが可能である。
【0015】
操作入力部37に対するユーザ操作により距離が入力される。背景消去画像生成部32は、距離画像から入力距離より長い距離を画素値とする領域を同定し、光学画像における当該領域内の画素の値を特定値(マスク値)に置き換え(マスクし)、当該領域外の画素の値を元値のまま維持する。当該距離を光学カメラ35から目的対象としての足場資材の表面までの距離又はその近似値に調整することにより、足場資材より遠方の背景が消去され、足場資材の像が抽出された背景消去画像が生成される。背景消去画像のデータは距離画像のデータと共に通信部38を介して足場資材個数推定用の情報処理装置1に送信される。
【0016】
図3に示すように足場資材個数推定用の情報処理装置1は、制御部11に対して制御/データバス10を介して記憶部12、資材寸法換算処理部13、資材種類推定処理部14、資材個数推定処理部15、表示部16、操作入力部17、通信部18、機械学習処理部19とから構成される。制御部11はCPU及びGPUにより構成されるプロセッサで実装され、記憶部12はRAM、ROM、フラッシュメモリで実装され、表示部16はLCD(Liquid Crystal Display)等のディスプレイで実装され、操作入力部17はタッチパネル等のポインティングデバイスで実装される。ROMに記憶された各種プログラムは、ROMからRAMにロードされ、プロセッサにより実行されることにより、資材寸法換算処理部13、資材種類推定処理部14、資材個数推定処理部15及びその他の手段が機能される。
【0017】
資材寸法換算処理部13は、距離画像の中央領域の距離に基づいて、資材それぞれの寸法(幅、長さ、厚さ)を、光学カメラ35から資材表面までの距離に従って換算する。
【0018】
寸法として、長さL、幅W、厚さT、光学カメラ35の水平視野角(水平画角)θh、光学カメラ35の垂直視野角(垂直画角)θv、光学カメラ35から資材表面までの距離に等価な距離画像の中央領域の距離(中心距離、平均距離、最短距離等)dとすると、
換算寸法(長さ)L’=L/(2・d・tan(θh/2))
換算寸法(幅)W’=W/(2・d・tan(θh/2))
換算寸法(厚さ)T’=T/(2・d・tan(θv/2))
で与えられる。
【0019】
資材種類推定処理部14は、背景消去画像に基づいて足場資材の種類を推定する処理を実行する処理部であり、背景消去画像を入力データ、足場資材の種類(パイプ、ブレス、建枠、パネル等)を出力データとして構築された学習済みの畳み込みニューラルネットワーク回路から構成される。
【0020】
資材個数推定処理部15は、換算された資材寸法(幅、厚さ、長さ)と、背景消去画像とに基づいて、足場資材の個数と資材を特定するコードとを推定する処理を実行する処理部であり、換算された資材寸法(幅、厚さ、長さ)と、背景消去画像とを入力データ、足場資材の個数と資材を特定するコードとを出力データとして、足場資材の種類毎に構築された学習済みの畳み込みニューラルネットワーク回路から構成される。畳み込みニューラルネットワーク回路は、推定された資材種類に従って選択される。
【0021】
推定された足場資材の種類、足場資材の個数、資材を特定するコードは、情報処理装置1から携帯型情報処理端末3に送信され、ユーザ(作業員、撮影者)により確認される。確認後に、携帯型情報処理端末3から、推定された足場資材の種類、個数、資材コードぞれぞれの正誤、さらに推定された足場資材の種類、個数、資材コードが誤りであった場合に足場資材の修正された種類、修正された個数、修正された資材コードが情報処理装置1に送信される。
【0022】
機械学習処理部19は、推定された足場資材の種類が誤りであった場合、足場資材の修正された種類と背景消去画像とを教師データとして、資材種類推定処理部14を構成する畳み込みニューラルネットワーク回路に対して学習処理を実行する。
【0023】
また、機械学習処理部19は、推定された足場資材の個数、資材コードが誤りであった場合、足場資材の修正された個数、修正された資材コード、背景消去画像、換算寸法を教師データとして、資材個数推定処理部15を構成する畳み込みニューラルネットワーク回路に対して学習処理を実行する。
【0024】
記憶部33には、
図4に例示する足場資材属性表に関するデータが予め記憶されている。足場資材属性表には、当該足場資材リース会社が取り扱う全ての足場資材を対象として、足場資材各々を特定する資材コードに対して、資材種類、寸法(長さL、幅W、厚さT)、質量が対応付けられている。なお、ブレス(筋交)においては、長さLはC値、幅WはB値、厚さTはA値にそれぞれ対応する。パイプにおいては、幅Wと厚さTは外径に対応する。
【0025】
図5には、足場資材管理用の情報処理装置2で管理される出荷/入庫管理表を例示している。足場資材を出荷した全ての現場各々に対して、現場名、住所、出荷した足場資材の資材コード、資材種類、出荷数、既に入庫した資材の数を示す既入庫数、返却完了フラグが対応付けられている。例えば返却完了フラグ“0”は返却未完了の現場を示し、“1”返却完了の現場を示している。
【0026】
足場資材管理用の情報処理装置2は足場資材個数推定用の情報処理装置1からの要求に呼応して、出荷/入庫管理表から返却完了フラグが“0”の現場(返却未完了現場という)を抽出し、返却未完了現場に関する現場名、住所、資材コード、資材種類、出荷数、入庫数に関するデータを足場資材個数推定用の情報処理装置1に送信する。足場資材個数推定用の情報処理装置1は、個数推定要求のあった携帯型情報処理端末3に対して、足場資材の個数の推定処理後に、未返却現場に関する現場名、住所、資材コード、資材種類、出荷数、推定個数(AI計数)に関するデータを送信する。
【0027】
図6には、本実施形態における足場資材計数システムの動作手順を示している。まず工程S1において、携帯型情報処理端末3において資材計数アプリケーションが起動される。起動に伴って、携帯型情報処理端末3から個数推定用の情報処理装置1にログイン要求が送信される(S2)。足場資材個数推定用の情報処理装置1においては、例えば携帯型情報処理端末3の端末IDにより認証処理を実行する(S3)。足場資材個数推定用の情報処理装置1では、認証完了後に、携帯型情報処理端末3に認証完了を通知すると共に(図示しない)、足場資材管理用の情報処理装置2に対して、返却未完了現場に関する現場名、住所、資材コード、資材種類、出荷数、既入庫数に関するデータの提供を要求する(S4)。足場資材管理用の情報処理装置2は携帯型情報処理端末3に対して、返却未完了の現場を特定する情報として現場名及び住所に関する情報を送信する(S5)。足場資材個数推定用の情報処理装置1は携帯型情報処理端末3に、返却未完了の現場に関する現場名、住所を、返却未完了の現場を特定する現場IDとともに送信する(S6)。
【0028】
図7に示すように、携帯型情報処理端末3の画面には、返却未完了の現場に関する現場名及び住所が一覧表示される。その返却未完了現場の一覧から、ユーザが、返却現場を選択すると(S7)、選択した現場を特定する現場IDデータが携帯型情報処理端末3から足場資材個数推定用の情報処理装置1に送信される(S8)。
【0029】
現場選択後、携帯型情報処理端末3において光学カメラ35及び距離センサ36が起動され、光学画像及び距離画像が発生される(S9)。ユーザは光学カメラ35から対象資材までの距離を手動により調整する(S10)。調整された距離に従って、背景消去画像生成部32により背景消去画像が生成される(S11)。
【0030】
図8(a)に例示するように、トラックにより倉庫に返却され、フォークリフトでトラックから下ろされ、積み重ねられた足場資材がその端面及び側面から撮影される。
図8(b)、
図8(c)に示すように、光学画像(端面)と距離画像(端面)とから背景消去画像(端面)が生成され、光学画像(側面)と距離画像(側面)とから背景消去画像(側面)が生成される。距離画像から、操作入力部37を介してユーザ操作により入力された距離より長い距離を画素値とする領域が同定される。同定された範囲を対象として、光学画像の画素値が特定値(マスク値)に置き換えられる。当該距離を光学カメラ35から目的対象としての足場資材の表面までの距離又はその近似値に調整することにより、足場資材より遠方の背景が消去され(マスクされ)、足場資材の像が抽出された背景消去画像が生成される。
【0031】
図9(a)に示すように、初期的には数メートル等の所定距離又は無限距離が設定され、従って表示部34には光学画像がその全領域にわたって元値が保持されそのまま表示される。距離調整操作には、例えばスライダが設けられる。ユーザはスライダをタップしてそのままバーに沿って移動することにより、任意の距離を入力することができる。
図9(b)に示すように、入力された距離より遠方の対象、つまり距離画像において当該入力距離より長い距離を画素値とする画素と同じ光学画像上の画素の画素値がマスク値に置き換えられ、当該入力距離と同じ又は短い距離を画素値とする画素と同じ光学画像上の画素の画素値が元の画素値に維持される。ユーザは画像を視認しながら距離を適当に調整することにより、足場資材より遠方の背景が消去され(マスクされ)、足場資材の端面又は側面のみが残留された背景消去画像を生成することができる。端面、側面に対してそれぞれ距離が適当に調整され、そにより、背景消去画像(端面)と背景消去画像(側面)が生成される。生成された背景消去画像(端面)のデータと背景消去画像(側面)のデータはそれぞれの距離画像(端面)のデータと距離画像(側面)のデータと共に携帯型情報処理端末3から足場資材個数推定用の情報処理装置1に送信される(S12)。
【0032】
足場資材個数推定用の情報処理装置1において、背景消去画像(端面)、(側面)のデータ、距離画像(端面)、(側面)のデータを受信後に、資材寸法換算処理部13は記憶部12から、足場資材属性表の特に資材寸法のデータをロードする(S13)。資材寸法換算処理部13は距離画像(端面)からその画像のフレーム中心領域の特徴値として最短距離を同定する(S14)。なお、特徴値としてはフレーム中心領域の平均距離、最長距離、距離分布の中央値等の他の値であっても良いし、特徴値に限定されることはなく典型的には画像のフレーム中心位置の距離であってもよい。資材寸法換算処理部13は全ての足場資材を対象としてそれら資材寸法を、同定した最短距離に従って個々に換算する(S15)。換算方法は上述した通りである。
【0033】
図10には資材種類推定処理部14による畳み込みニューラルネットワーク処理の概念を示している。資材種類推定処理部14の畳み込みニューラルネットワーク回路(CNN)は、背景消去画像(端面)と背景消去画像(側面)とを入力する入力層とともに、多層化された畳み込み層及びプーリング層、結合層を備え、資材種類(パイプ、ブレス、建枠、パネル等)毎の確率を出力するように事前に教師データに基づいて学習されている。つまり資材種類推定処理部14は背景消去画像(端面)と背景消去画像(側面)とに基づいて撮影対象の資材種類を推定する(S16)。
【0034】
工程S17において、選択部151は、資材種類推定処理部14で計算された資材種類ごとの確率を入力し、そのうちの最大確率の資材種類に従って、資材種類毎に構築され、事前に学習された資材個数推定処理部15における複数の個数推定用畳み込みニューラルネットワーク回路15-1、15-2、・・・15-nの一を選択する。選択された個数推定用畳み込みニューラルネットワーク回路-1、15-2、・・・15-nのいずれかは、背景消去画像(端面)、背景消去画像(側面)とともに、資材寸法換算処理部13で換算された資材寸法(長さ、幅、厚さ)を入力する入力層とともに、多層化された畳み込み層及びプーリング層、結合層を備え、資材コード毎の確率とその資材個数毎の確率とを出力するように事前に教師データに基づいて学習されている。つまり、資材個数推定処理部15は、背景消去画像(端面)、背景消去画像(側面)とともに、資材種類、換算された資材寸法に基づいて撮影対象の資材コード、個数を推定する(S18)。
【0035】
資材種類ごとに畳み込みニューラルネットワーク回路を構築し、選択された畳み込みニューラルネットワーク回路において背景消去画像(端面)、背景消去画像(側面)とともに、換算された資材寸法を入力データとして活用することにより、背景消去画像(端面)と背景消去画像(側面)との一方を用いる場合、資材寸法、さらに換算された資材寸法を入力しない場合に比して、その推定確率は向上する。
【0036】
また、ユーザ操作を伴って光学画像から生成した、足場資材より遠方の背景が消去され、足場資材の像が抽出された背景消去画像に基づいて資材種類、さらに資材コード、個数を推定するので、背景が消去されていない光学画像から直接的に資材コード、個数を推定する場合に比して、その推定確率は向上する。
【0037】
また背景消去画像を視認しながらユーザにより距離を調整するので、対象の足場資材を画角に好適に捉えた画像の撮影を促すことができ、しかも足場資材より遠方の背景が好適に消去され、足場資材の像が最適に抽出された背景消去画像を発生できる。
【0038】
工程S19において、推定された資材コード、推定された個数(AI計数)のデータは、その現場の名称、出荷数、既入庫数のデータとともに携帯型情報処理端末3に送信される(S19)。さらに
図11(a)に例示するように今回推定された個数とそれ以前に入庫された入庫数(既入庫数)との合計数(入庫総数)が、出荷数に一致する場合、それを表す文字列「出荷数と入庫総数が一致しています」等のメッセージデータが送信され、一方、入庫総数が出荷数に一致しない場合には、
図11(b)に例示するように、それを表す文字列「出荷数と入庫総数に差分が生じています」等のメッセージデータが送信される。入庫総数が出荷数に一致しない場合には、
図11(b)にハッチングにより例示するように、推定された資材個数(AI計数)の表示態様が、入庫総数が出荷数に一致する資材の資材個数の表示態様と相違させるための表示コードが送信される。
【0039】
ユーザは、推定された資材個数(AI計数)が正しい場合には、完了ボタンをクリックし、推定された資材個数(AI計数)が誤りである場合には、修正数を入力した上で修正ボタンをクリックする(S20)。この完了又は修正個数のデータは携帯型情報処理端末3から足場資材個数推定用の情報処理装置1に送信される(S23)。
【0040】
足場資材個数推定用の情報処理装置1は、携帯型情報処理端末3から完了指示を受信したときには、足場資材管理用の情報処理装置2に対して、推定された資材個数(AI計数)を資材コード、現場IDとともに送信し、修正指示を受信したときには、修正された資材個数を資材コード、現場IDとともに送信する(S22)。足場資材管理用の情報処理装置2は、受信した資材個数と資材コード、さらに現場IDに従って管理表を更新する(S23)。足場資材管理用の情報処理装置2を視認した管理者は、同一現場(トラックが複数台あれば全て)の写真撮影が終了した段階で全ての計数分を合算し、出荷伝票と突合し、入庫完了フラグを適宜入力する。足場資材管理用の情報処理装置2では、出荷数と返却数で差がある場合、アラートが出力される。アラートを受信した管理者は、出荷数と返却数が一致しない原因を追求する作業を実施する。
【0041】
このように本実施形態によれば、資材個数をCNNにより自動計数し、その確定にユーザ操作を介在させることにより、返却された足場資材の個数を高精度に計数することができ、しかもユーザは資材を目視しながら数える必要が無く、自動計数結果を確認し、誤りである場合にのみ計数するので、その作業負担で軽減することができる。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0043】
1…足場資材個数推定用の情報処理装置、2…足場資材管理用の情報処理装置、3…携帯型情報処理端末。