(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154344
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】車両の車体構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/20 20060101AFI20221005BHJP
【FI】
B62D25/20 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057334
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】氷室 雄也
(72)【発明者】
【氏名】小橋 正信
(72)【発明者】
【氏名】本田 正徳
(72)【発明者】
【氏名】中川 興也
(72)【発明者】
【氏名】河村 力
(72)【発明者】
【氏名】奥山 智仁
(72)【発明者】
【氏名】西田 健二
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BB06
3D203BB08
3D203BB59
3D203CA25
3D203CA53
3D203CB04
3D203CB07
3D203CB09
3D203CB24
(57)【要約】
【課題】車体重量を抑制しながら振動減衰性能を向上させることが可能な車両の車体構造を提供する。
【解決手段】車体構造は、車体1に固定される車体固定部5c、および当該車体固定部5cと異なる位置に第1平面5dを有する第1部材である下板5と、第1平面5dに対向する第2平面6cを有し、第1平面5dに第2平面6cを重ね合わせた状態で配置された第2部材である上板6と、第1平面5dと第2平面6cとの間に設けられた接着性を有する振動減衰部材9とを備える。下板5は、上板6よりも曲げ剛性またはねじり剛性が低く設定されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車体構造であって、
車体に固定される車体固定部、および当該車体固定部と異なる位置に第1平面を有する第1部材と、
前記第1平面に対向する第2平面を有し、前記第1平面に前記第2平面を重ね合わせた状態で配置された第2部材と、
前記第1平面と前記第2平面との間に設けられた接着性を有する振動減衰部材と、
を備え、
前記第1部材は、前記第2部材よりも曲げ剛性またはねじり剛性が低く設定されている、
ことを特徴とする車両の車体構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の車体構造において、
前記第2部材は、前記第1部材のみに固定されている、
ことを特徴とする車両の車体構造。
【請求項3】
請求項1に記載の車両の車体構造において、
前記第2部材は、前記第1部材に対して前記振動減衰部材のみで固定される、
ことを特徴とする車両の車体構造。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の車両の車体構造において、
前記車体は、当該車体の床部を構成するフロアパネルと、
前記フロアパネルから車室内に突出するフロアトンネルと、
を備え、
前記第1部材および前記第2部材のいずれか一方は、前記フロアトンネルの下端に配置された下板で構成され、
前記第1部材および前記第2部材の他方は、当該下板の上方に位置する上板で構成されている、
ことを特徴とする車両の車体構造。
【請求項5】
請求項4に記載の車両の車体構造において、
前記下板および前記上板のうちの少なくとも一方は、車幅方向に延びる凸部および凹部のうちの少なくとも一方を有する、
ことを特徴とする車両の車体構造。
【請求項6】
請求項5に記載の車両の車体構造において、
前記下板および前記上板のうちの少なくとも一方は、前記凸部および前記凹部を両方有し、
前記凸部および前記凹部は、車両前後方向に交互に並ぶように配置されている、
ことを特徴とする車両の車体構造。
【請求項7】
請求項5に記載の車両の車体構造において、
前記下板および前記上板のうちの少なくとも一方は、一対の前記凸部または一対の前記凹部を有し、
前記一対の凸部または前記一対の凹部は、凸部同士または凹部同士が車両平面視において互いに交差するように配置されている、
ことを特徴とする車両の車体構造。
【請求項8】
請求項4~6のいずれか1項に記載の車両の車体構造において、
前記第1平面および前記第2平面は、前記凸部または前記凹部の周辺に形成された平面によって構成されている、
ことを特徴とする車両の車体構造。
【請求項9】
請求項1~2および請求項4~7のいずれか1項に記載の車両の車体構造において、
前記第2部材の長手方向における中央の領域を前記第1部材に固定する中央固定部をさらに備えている、
ことを特徴とする車両の車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の乗り心地向上などの観点から車体の振動抑制の要求が近年ますます高くなっている。そのため、車体の車室周辺などの部位における振動抑制構造が種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載されている下部車体構造では、フロアパネルから車室内に突出するトンネル部と、トンネル部をまたいで車幅方向に延びる一対のクロスメンバとを備えた構造において、クロスメンバと車両前後方向において対応する位置、すなわち、一対のクロスメンバの間の位置に、複数のトンネルメンバとして、第1トンネルメンバおよび第2トンネルメンバが配置されている。
【0004】
第1トンネルメンバは、トンネル部の下端においてトンネル部を車幅方向に横断するように配置されている。第2トンネルメンバは、トンネル部の内周面に沿って配置されている。これら第1トンネルメンバおよび第2トンネルメンバによって、フロアパネルの振動抑制およびトンネル部の変形抑制を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記の構造では、車体の所望の部位の振動抑制効果を向上させるために、当該部位に配設される上記第1~第2トンネルメンバなどの複数の補強用のメンバの剛性を向上させる必要がある。複数の補強用のメンバの剛性を向上させるためには、各メンバの板厚等の寸法を大きくする必要があり、車体重量の増大を抑制することが困難である。したがって、複数の補強用のメンバを備えた構造では、振動低減と車体重量抑制とがトレードオフの関係になるために、これら振動低減および車体重量抑制の両立が難しい。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、車体重量を抑制しながら振動減衰性能を向上させることが可能な車両の車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の車両の車体構造は、車体に固定される車体固定部、および当該車体固定部と異なる位置に第1平面を有する第1部材と、前記第1平面に対向する第2平面を有し、前記第1平面に前記第2平面を重ね合わせた状態で配置された第2部材と、前記第1平面と前記第2平面との間に設けられた接着性を有する振動減衰部材と、を備え、前記第1部材は、前記第2部材よりも曲げ剛性またはねじり剛性が低く設定されていることを特徴とする。
【0009】
かかる構成によれば、第1部材は、車体固定部の部位で車体に固定されるとともに、第2部材よりも曲げ剛性またはねじり剛性が低く設定されている。このため、車両走行時に車体から第1部材へ振動が伝達されたときに、第1部材は、第2部材と比較して相対的に曲げやねじりの変形が大きくなり、第1部材の歪みと第2部材の歪みの間で大きな差が生じる。このため、第1部材の第1平面と第2部材の第2平面との相対的な変位が大きくなる。その結果、第1平面と第2平面との間に設けられた接着性を有する振動減衰部材に歪みエネルギーを多く蓄積することが可能になり、車体の振動減衰性能を向上することが可能になる。また、この構成では、第1部材の曲げ剛性またはねじり剛性が低く設定されているので、第1部材の重量を抑制することが可能になる。以上の構成により、車体重量を抑制しながら振動減衰性能を向上させることが可能になる。
【0010】
上記の車両の車体構造において、前記第2部材は、前記第1部材のみに固定されているのが好ましい。
【0011】
かかる構成によれば、第2部材への振動伝達経路は第1部材のみであり、第2部材は車体に拘束されていないため、第1部材の第1平面と第2部材の第2平面との相対的な変位が最も大きくなる。このため、第1平面と第2平面との間の振動減衰部材への歪みエネルギーの蓄積を最大化することが可能である。
【0012】
上記の車両の車体構造において、前記第2部材は、前記第1部材に対して前記振動減衰部材のみで固定されるのが好ましい。
【0013】
かかる構成によれば、第2部材は第1部材に対して振動減衰部材のみで固定され、振動減衰部材以外の締結部材などによって固定されていないので、第1部材から第2部材への振動伝達経路は振動減衰部材のみになる。そのため、振動減衰部材への歪みエネルギーの蓄積を最大化することが可能である。
【0014】
上記の車両の車体構造において、前記車体は、当該車体の床部を構成するフロアパネルと、前記フロアパネルから車室内に突出するフロアトンネルと、を備え、前記第1部材および前記第2部材のいずれか一方は、前記フロアトンネルの下端に配置された下板で構成され、前記第1部材および前記第2部材の他方は、当該下板の上方に位置する上板で構成されているのが好ましい。
【0015】
かかる構成によれば、第1部材および第2部材がフロアトンネルの下端に配置された下板および上板で構成されているので、フロアトンネルおよびその周辺部において振動減衰性能を向上することが可能である。
【0016】
上記の車両の車体構造において、前記下板および前記上板のうちの少なくとも一方は、車幅方向に延びる凸部および凹部のうちの少なくとも一方を有するのが好ましい。
【0017】
かかる構成によれば、下板および上板のうちの少なくとも一方は、車幅方向に延びる凸部および凹部のうちの少なくとも一方を有するので車幅方向の剛性が向上する。そのため、車両走行時における捩じれによる振動減衰機能と車両側突時における車幅方向の荷重伝達機能とを両立することが可能である。
【0018】
上記の車両の車体構造において、前記下板および前記上板のうちの少なくとも一方は、前記凸部および前記凹部を両方有し、前記凸部および前記凹部は、車両前後方向に交互に並ぶように配置されているのが好ましい。
【0019】
かかる構成によれば、下板および上板のうちの少なくとも一方は、凸部および凹部が車両前後方向に交互に並ぶ構造によって車幅方向の剛性がより向上するので、捩じれによる振動減衰機能および車幅方向の荷重伝達機能の両方をさらに向上させることが可能である。
【0020】
上記の車両の車体構造において、前記下板および前記上板のうちの少なくとも一方は、一対の前記凸部または一対の前記凹部を有し、前記一対の凸部または前記一対の凹部は、凸部同士または凹部同士が車両平面視において互いに交差するように配置されているのが好ましい。
【0021】
かかる構成によれば、下板および上板のうちの少なくとも一方は、凸部同士または凹部同士が車両平面視において互いに交差する構造を有しているので、捩じれによる振動減衰機能および車幅方向の荷重伝達機能の両方をさらに向上させることが可能である。
【0022】
上記の車両の車体構造において、前記第1平面および前記第2平面は、前記凸部または前記凹部の周辺に形成された平面によって構成されているのが好ましい。
【0023】
かかる構成によれば、第1平面および第2平面は、凸部または凹部の周辺に形成された平面によって構成されている。これにより、凸部または凹部の部位に沿って伝達される振動を、凸部または凹部の周辺の第1平面と第2平面との間に配置された振動減衰部材に効果的に伝達することが可能になる。したがって、振動減衰部材が配置される領域が狭くても効果的に振動減衰を行うことが可能である。
【0024】
上記の車両の車体構造において、前記第2部材の長手方向における中央の領域を前記第1部材に固定する中央固定部をさらに備えているのが好ましい。
【0025】
かかる構成によれば、第2部材は、中央固定部によって、当該第2部材の長手方向における中央の領域で第1部材に固定される。この構成では、振動モードによっては、第2部材の長手方向における中央の領域では第1部材と第2部材との相対的な変位が小さい場合でも、第2部材の長手方向の両端部は、中央固定部によって拘束されていないので、第1部材と第2部材との相対的な変位を大きくすることが可能である。そのため、第1平面と第2平面との間に設けられた振動減衰部材への歪みエネルギーの蓄積が可能になる。その結果、中央固定部によって第2部材を第1部材へ固定しながら振動減衰性能を確保することが可能になる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の車両の車体構造によれば、車体重量を抑制しながら振動減衰性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両の車体構造であって車体を前側左下方から見た斜視図である。
【
図3】
図1のトンネルメンバおよびその周辺の底面図である。
【
図4】
図3のトンネルメンバの下板を取り除いた状態を示す底面図である。
【
図5】
図3のトンネルメンバをすべて取り除いてトンネルレインが見えている状態を示す底面図である。
【
図10】本発明の実施例および比較例1~3のトンネルメンバの構造を概略的に示す説明図である。
【
図11】本発明の実施例および比較例1~3の振動レベルの周波数特性を示すグラフである。
【
図12】本発明の変形例に係る車両の車体構造であって、X字状に交差した一対の下方突出部が下板に形成されたトンネルメンバおよびその周辺の底面図である。
【
図13】
図12のトンネルメンバの下板を取り除いた状態を示す底面図である。
【
図17】本発明の他の変形例に係る車両の車体構造であって、ルーフパネルおよびルーフレインの間に振動減衰部材が配置された構造の概略斜視図である。
【
図18】本発明のさらに他の変形例に係る車両の車体構造であって、棚ガセットとリアピラーインナおよびリアダンパートップとの間に振動減衰部材が配置された構造の概略斜視図である。
【
図19】本発明のさらに他の変形例に係る車両の車体構造であって、フロアパネルとクロスメンバとの間に振動減衰部材が配置された構造の概略斜視図である。
【
図20】本発明のさらに他の変形例に係る車両の車体構造であって、フロアパネルと追加の金属板との間に振動減衰部材が配置された構造の概略斜視図である。
【
図21】
図20のフロアパネル、振動減衰部材、および金属板の積層状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の一形態について詳述する。
【0029】
図1に示される本実施形態の車両の車体構造は、車体1の床部を構成するフロアパネル2と、フロアパネル2から車室内に突出するフロアトンネル3と、フロアトンネル3の下方に配置されたトンネルメンバ4と、トンネルメンバ4を構成する後述の下板5および上板6の間に配置された接着性を有する振動減衰部材9(
図2参照)とを備える。
【0030】
フロアトンネル3は、
図3~8に示されるように、車体1の車幅方向Yの中央において、車両前後方向Xに延びる半円筒形状の部材であり、上方Z1に膨出して車両前後方向Xに延びる空間部3b(
図6~8参照)を形成する。空間部3bは、車体1の下方Z2に開放され、図示しない駆動軸や排気管を収容可能である。また、フロアトンネル3は、空間部3bの車幅方向Y両側において車両前後方向Xに延びる一対のボルト取付部3a(
図3~4参照)を有する。
【0031】
トンネルメンバ4は、
図1~3に示されるように、車幅方向Yに延びる平坦な部材であり、フロアトンネル3を横断するように配置され、当該フロアトンネル3の下端の一対のボルト取付部3a(
図3および
図6参照)にボルト7で固定される。トンネルメンバ4がフロアトンネル3の下端に固定された構造は、フロアトンネル3および車体1の車両前後方向Xの中央部の剛性の向上に寄与している。トンネルメンバ4の車両前後方向Xの位置については本発明ではとくに限定しないが、例えば、トンネルメンバ4は、フロアトンネル3をまたいで車幅方向Yに延びる一対のクロスメンバ(図示せず)と車両前後方向Xにおいて対応する位置に配置される。
【0032】
図2~4および
図6~9に示されるように、トンネルメンバ4は、フロアトンネル3の下端に配置された下板5と、当該下板5の上方に位置する上板6とを備える。本実施形態では、下板5が本発明の第1部材に対応し、上板6が第2部材に対応する。
【0033】
下板5は、車幅方向Yに延びる複数の平板部5aと、車幅方向Yに延びる複数の下方突出部5bとを有する。各下方突出部5bは、2つの平板部5aの間から下方Z2に突出している。したがって、下板5を
図8に示される車両前後方向Xに切断した断面で見た場合、上方Z1に突出する凸部となる平板部5aと下方Z2に突出する凹部となる下方突出部5bとが車両前後方向Xに交互に並んだ配置(すなわち、蛇腹構造)になっている。
【0034】
各平板部5aは、
図2および
図6に示されるように、車体1に固定される一対の車体固定部5cと、第1平面5dとを有する。
【0035】
一対の車体固定部5cは、平板部5aの車幅方向Yの両端部に配置されている。車体固定部5cには、上記のボルト7が通る貫通孔5eが形成されている。なお、貫通孔5eは、
図9に示されるように、平板部5aの車幅方向Yの縁から外方に開いたスリットであってもよい。
【0036】
第1平面5dは、車体固定部5cと異なる位置、具体的には、一対の車体固定部5cに挟まれた領域に形成されている。第1平面5dは、平板部5aの上面によって構成されている。言い換えれば、第1平面5dは、下方突出部5bの周辺に形成された平面によって構成されている。
【0037】
上板6は、
図2、
図4、および
図6~8に示されるように、車幅方向Yに延びる複数の平板部6aと、車幅方向Yに延びる複数の上方突出部6bとを有する。各上方突出部6bは、2つの平板部6aの間から上方Z1に突出している。したがって、上板6を
図8に示される車両前後方向Xに切断した断面で見た場合、下方Z2に突出する凹部となる平板部6aと上方Z1に突出する凸部となる上方突出部6bとが車両前後方向Xに交互に並んだ配置(すなわち、蛇腹構造)になっている。
【0038】
各平板部6aは、第1平面5dに対向する第2平面6cを有する。第2平面6cは、平板部6aの下面によって構成されている。言い換えれば、第2平面6cは、上方突出部6bの周辺に形成された平面によって構成されている。
【0039】
上板6の車幅方向Yの長さは、上記第1平面5dの車幅方向Yの長さとほぼ同じに設定されている。上板6は、第1平面5dに第2平面6cを重ね合わせた状態で下板5の上面側に配置されている。この状態では、下板5の車体固定部5cは、上板6の車幅方向Yの両側にはみ出ている。これにより、
図2および
図6~8に示されるように、トンネルメンバ4の下板5および上板6が重なり合った状態で、一対の車体固定部5cをフロアトンネル3の一対のボルト取付部3aに当接させ、車体固定部5cの貫通孔5eにボルト7を通すことにより、トンネルメンバ4をフロアトンネル3の下端にボルト7で固定することが可能である。
【0040】
下板5および上板6の剛性を見た場合、下板5は、上板6よりも曲げ剛性またはねじり剛性が低く設定されている。例えば、下板5の板厚を上板6の板厚よりも薄く設定したり、または、下板5の材料を上板6の材料よりも低剛性の材料を用いたりするなどの手法によって、下板5を上板6よりも曲げ剛性またはねじり剛性が低く設定することが可能である。
【0041】
上板6は、下板5のみに固定されている。すなわち、本実施形態では、上板6は、下板5に対して振動減衰部材9および中央固定部10によって固定されている。
【0042】
具体的には、
図2、
図6および
図8に示されるように、下板5の第1平面5dと上板6の第2平面6cとの間に接着性を有する振動減衰部材9が塗布されることにより、下板5と上板6とが接着される。
【0043】
それとともに、
図3~4に示されるように、下板5および上板6の長手方向(
図3~4では車幅方向Y)の中央の領域において、中央固定部10によって下板5と上板6とが固定される。中央固定部10は、例えば、スポット溶接、リベット締め、ボルト締結などの締結部によって構成される。本実施形態では、中央固定部10は、下板5および上板6の長手方向(車幅方向Y)における中間位置および当該中間位置の車幅方向Yの両側の位置に3か所に設けられているが、当該長手方向の中央の領域であれば、1か所または4か所以上に設けられてもよい。
【0044】
また、振動減衰部材9の接着力が十分にあれば、上板6は、下板5に対して振動減衰部材9のみで固定されてもよい。
【0045】
振動減衰部材9は、下板5(第1部材)の第1平面5dと上板6(第2部材)の第2平面6cとの間に設けられている。振動減衰部材9は、接着性を有する性質を有し、例えば、ADシーラなどの減衰接着剤などが適用される。
【0046】
振動減衰部材9は、振動減衰効果を確実に生じさせるために、粘弾性を有しているのが好ましい。このような粘弾性を有する振動減衰部材9は、例えば、エポキシ系、ウレタン系またはアクリル系などの接着剤と、当該接着剤に添加される添加剤(例えば、硬化剤、無機または有機フィラー、または吸湿材など)とから構成されている。
【0047】
なお、振動減衰部材は、ペースト状接着剤の形態のみではなく、接着性および粘弾性を有するものであれば材質や形態は問わない。
【0048】
また、振動減衰部材9は、20℃および60Hzの条件下において、損失係数0.2以上で、かつ、貯蔵弾性率100MPa以上であれば、構造用接着剤と比較して顕著な振動減衰効果を得ることが可能である。また、より好ましくは、損失係数0.3~0.4で、かつ、貯蔵弾性率1000MPa以上であれば、より顕著な振動減衰効果を得ることが可能である。
【0049】
本実施形態の車体1では、
図5および
図6~8に示されるように、フロアトンネル3の内周面のうち、車両前後方向Xにおいてトンネルメンバ4と同じ位置には、トンネルレイン8が配置されている。トンネルレイン8は、フロアトンネル3の内周面に沿って周方向に延びるように固定されることにより、フロアトンネル3を補強している。トンネルレイン8は、フロアトンネル3の内面に沿ってフロアトンネル3の幅方向(すなわち車幅方向Y)に延び、上方に突出するように湾曲した形状を有する。
【0050】
(本実施形態の特徴)
(1)
本実施形態の車両の車体構造は、車体1に固定される車体固定部5c、および当該車体固定部5cと異なる位置に第1平面5dとを有する第1部材としての下板5と、第1平面5dに対向する第2平面6cを有し、第1平面5dに第2平面6cを重ね合わせた状態で配置された第2部材としての上板6と、第1平面5dと第2平面6cとの間に設けられた接着性を有する振動減衰部材9とを備える。下板5は、上板6よりも曲げ剛性またはねじり剛性が低く設定されている。
【0051】
かかる構成によれば、下板5は、車体固定部5cの部位で車体1に固定されるとともに、上板6よりも曲げ剛性またはねじり剛性が低く設定されている。このため、車両走行時に車体から下板5へ振動が伝達されたときに、下板5は、上板6と比較して相対的に曲げやねじりの変形が大きくなり、下板5の歪みと上板6の歪みの間で大きな差が生じる。このため、下板5の第1平面5dと上板6の第2平面6cとの相対的な変位が大きくなる。その結果、第1平面5dと第2平面6cとの間に設けられた接着性を有する振動減衰部材9に歪みエネルギーを多く蓄積することが可能になり、車体1の振動減衰性能を向上することが可能になる。また、この構成では、下板5の曲げ剛性またはねじり剛性が低く設定されているので、下板5の重量を抑制することが可能になる。以上の構成により、車体重量を抑制しながら振動減衰性能を向上させることが可能になる。これにより、車両の操縦安定性および乗り心地が向上する。
【0052】
(2)
本実施形態の車両の車体構造では、上板6は、下板5のみに固定されている。かかる構成によれば、上板6への振動伝達経路は下板5のみであり、上板6は車体1に拘束されていないため、下板5の第1平面5dと上板6の第2平面6cとの相対的な変位が最も大きくなる。このため、第1平面5dと第2平面6cとの間の振動減衰部材9への歪みエネルギーの蓄積を最大化することが可能である。
【0053】
(3)
本実施形態の車両の車体構造では、車体1は、当該車体1の床部を構成するフロアパネル2と、フロアパネル2から車室内に突出するフロアトンネル3とを備える。第1部材および第2部材のいずれか一方(本実施形態では、第1部材)は、フロアトンネル3の下端に配置された下板5で構成されている。第1部材および第2部材の他方(本実施形態では、第2部材)は、当該下板5の上方に位置する上板6で構成されている。
【0054】
かかる構成によれば、第1部材および第2部材がフロアトンネル3の下端に配置された下板5および上板6で構成されているので、フロアトンネル3およびその周辺部において振動減衰性能を向上することが可能である。
【0055】
なお、本発明では、第1部材および第2部材のいずれか一方は、フロアトンネル3の下端に配置された下板5で構成され、他方は、当該下板5の上方に位置する上板6で構成されていればよい。したがって、上記実施形態と逆の構成であってもよく、具体的には、下板5が本発明の第2部材に対応し、上板6が第1部材に対応してもよい。
【0056】
(4)
本実施形態の車両の車体構造では、下板5および上板6のうちの少なくとも一方(本実施形態では両方)は、車幅方向Yに延びる凸部および凹部のうちの少なくとも一方(本実施形態では両方)を有する。
【0057】
具体的には、
図2および
図8に示されるように、下板5は、それぞれ車幅方向Yに延びる凸部およぶ凹部として、上方Z1に突出する凸部となる平板部5aと、下方Z2に突出する凹部となる下方突出部5bとを有する。また、上板6は、それぞれ車幅方向Yに延びる凸部およぶ凹部として、下方Z2に突出する凹部となる平板部6aと、上方Z1に突出する凸部となる上方突出部6bとを有する。
【0058】
かかる構成によれば、下板5および上板6のうちの少なくとも一方は、車幅方向Yに延びる凸部および凹部のうちの少なくとも一方を有する。このため、車幅方向Yの剛性が向上する。その結果、車両走行時における捩じれによる振動減衰機能と車両側突時における車幅方向Yの荷重伝達機能とを両立することが可能である。
【0059】
なお、下板5および上板6のうちのいずれか一方が車幅方向Yに延びる凸部および凹部のうちのいずれか一方を有していても上記の作用効果を奏することは可能である。
【0060】
(5)
本実施形態の車両の車体構造では、下板5および上板6のうちの少なくとも一方(本実施形態では両方)が凸部および凹部を両方有し、凸部および凹部が車両前後方向Xに交互に並ぶように配置されている。具体的には、
図2および
図8に示されるように、下板5は、凸部となる平板部5aと凹部となる下方突出部5bとが車両前後方向Xに交互に並んだ配置(すなわち、蛇腹構造)になっている。上板6は、凹部となる平板部6aと凸部となる上方突出部6bとが車両前後方向Xに交互に並んだ配置(すなわち、蛇腹構造)になっている。
【0061】
かかる構成によれば、下板5および上板6のうちの少なくとも一方は、凸部および凹部が車両前後方向Xに交互に並ぶ構造によって車幅方向Yの剛性がより向上するので、捩じれによる振動減衰機能および車幅方向Yの荷重伝達機能の両方をさらに向上させることが可能である。
【0062】
なお、下板5および上板6のうちのいずれか一方が凸部および凹部が車両前後方向Xに交互に並ぶ構造を有していても上記の作用効果を奏することは可能である。
【0063】
(6)
本実施形態の車両の車体構造では、第1平面5dおよび第2平面6cは、凸部または凹部の周辺に形成された平面によって構成されている。具体的には、第1平面5dは、凹部となる下方突出部5bの周辺に形成された平面によって構成されている。第2平面6cは、凸部となる上方突出部6bの周辺に形成された平面によって構成されている。
【0064】
上記のように、第1平面5dおよび第2平面6cは、凸部または凹部の周辺に形成された平面によって構成されているので、凸部または凹部の部位に沿って伝達される振動を、凸部または凹部の周辺の第1平面5dと第2平面6cとの間に配置された振動減衰部材9に効果的に伝達することが可能になる。したがって、振動減衰部材9が配置される領域が狭くても効果的に振動減衰を行うことが可能である。
【0065】
(7)
本実施形態の車両の車体構造は、
図3に示されるように、上板6を下板5に固定する中央固定部10をさらに備える。中央固定部10は、上板6の長手方向における中央の領域を下板5に固定する。
【0066】
かかる構成によれば、上板6は、中央固定部10によって、当該上板6の長手方向における中央の領域でのみ下板5に固定されており、上板6の長手方向の両端部が自由端となる。この構成では、振動モードによっては、上板6の長手方向における中央の領域では下板5と上板6との相対的な変位が小さい場合でも、上板6の長手方向の両端部は、中央固定部10によって拘束されていないので、下板5と上板6との相対的な変位を大きくすることが可能である。そのため、第1平面5dと第2平面6cとの間に設けられた振動減衰部材9への歪みエネルギーの蓄積が可能になる。その結果、中央固定部10によって上板6を下板5へ固定しながら振動減衰性能を確保することが可能になる。
【0067】
例えば、車体1に振動が入力されたときのフロア膜モード(フロアパネル2が膜振動するモード)を対象とした場合、トンネルメンバ4の変形モードは1次の曲げとなるため、歪みエネルギーが小さくなるトンネルメンバ4の中央部付近を中央固定部10によって溶接または機械接合しても、振動減衰部材9による振動減衰効果を阻害しない。
【0068】
(実施例)
つぎに、
図10~11を参照しながら、本発明の実施例および比較例1~3のトンネルメンバの減衰特性を比較検討する。
【0069】
図10に示されるように、比較例1~3のトンネルメンバ74は、いずれも、車幅方向に延びる凹部と凸部とが並ぶ蛇腹構造の下板75および上板76を重ね合わせた構造である点では、実施例のトンネルメンバ4の下板5および上板6を重ね合わせた構造と共通している。しかし、比較例1~3のトンネルメンバ74は、下板75および上板76の両方をフロアトンネル3の下端にボルト7で締結している点で、実施例のように下板5のみをフロアトンネル3の下端にボルト7で締結している構造と大きく異なる。
【0070】
また、比較例1(
図10のI:ベース(SW))のトンネルメンバ74は、下板75の平板部75aと上板76の平板部76aとをスポット溶接(スポット溶接部80参照)している。
【0071】
比較例2(
図10のII:SW+減衰部材)のトンネルメンバ74は、下板75の平板部75aと上板76の平板部76aとを減衰接着剤79で接着するとともにスポット溶接(スポット溶接部80参照)している。
【0072】
比較例3(
図10のIII:減衰部材)のトンネルメンバ74は、下板75の平板部75aと上板76の平板部76aとを減衰接着剤79で接着しているが、スポット溶接されていない。
【0073】
実施例(
図10のIV:減衰部材)のトンネルメンバ74は、下板5の平板部5aと上板6の平板部6aとを上記実施形態のように接着性を有する振動減衰部材9で接着している。実施例の振動減衰部材9および比較例2~3の減衰接着剤79としては、ADシーラなどの共通の減衰接着剤が用いられる。
【0074】
上記のような実施例のトンネルメンバ4および比較例1~3のトンネルメンバ74をそれぞれ備えた車体に対して振動を与えた場合の振動レベルの周波数特性は、
図11のグラフに示される。
【0075】
図11のグラフによれば、入力振動の周波数が40Hz付近のねじりモードM2(車体1が車両前後方向Xに延びる中心軸を回転軸としてねじられる変形モード)では、比較例1~3(
図11の曲線I~III)と実施例(
図11の曲線IV)では、ほとんど同じ振動レベルになっている。しかし、入力振動の周波数が70Hz付近のフロア膜モード(フロアパネル2が膜振動するモード)では、比較例1~3(曲線I~III)は、同程度の振動レベルにもかかわらず、実施例(曲線IV)のみがこれら比較例1~3よりも低い振動レベルになっており、振動減衰機能が向上していることが分かる。
【0076】
上記の
図11のグラフの結果を見れば、実施例のトンネルメンバ4では、下板5のみをフロアトンネル3の下端にボルト7で締結し、下板5がフロアトンネル3に拘束されていない構造であるので、下板5と上板6との相対変位の増大に伴って振動減衰部材9に吸収される歪みエネルギーも増大し、振動減衰機能が向上していることが明らかになっている。一方、比較例1~3では、下板75および上板76の両方がフロアトンネル3の下端にボルト7で締結された構造では、下板75と上板76との相対変位がほとんど変わらないので、下板75および上板76の間に減衰接着剤79に吸収される歪みエネルギーの吸収も小さく、振動減衰機能が実施例ほど向上していないことが分かる。
【0077】
(変形例)
(A)
上記実施形態の車両の車体構造では、上板6は、下板5に対して振動減衰部材9(
図2、
図6、
図8~9参照)および中央固定部10(
図3参照)の両方で固定されているが、上板6は、下板5に対して振動減衰部材9のみで固定されていてもよい。
【0078】
かかる構成によれば、上板6は下板5に対して振動減衰部材9のみで固定され、振動減衰部材9以外の締結部材などによって固定されていないので、下板5から上板6への振動伝達経路は振動減衰部材9のみになる。そのため、振動減衰部材9への歪みエネルギーの蓄積を最大化することが可能である。
【0079】
(B)
上記実施形態の車両の車体構造では、下板5が車体1のフロアトンネル3の下端に取り付けられているが、本発明はこれに限定されるものではなく、逆の構造であってもよい。すなわち、上板6が車体1のフロアトンネル3の下端に取り付けられ、下板5が上板6のみに固定(例えば、振動減衰部材9のみで固定、または振動減衰部材9および中央固定部10の両方で固定)されていてもよい。すなわち、上板6が本発明の第1部材に対応し、下板5が第2部材に対応するようにしてもよい。この場合も、上記実施形態の(1)~(7)と同様の作用効果を奏することが可能である。
【0080】
(C)
また、本発明の車体構造は、第1部材が車体に固定され、第2部材が第1部材に重ね合わされて配置され、第1部材の第1平面と第2部材の第2平面との間に接着性を有する振動減衰部材が配置され、第1部材が第2部材よりも曲げ剛性またはねじり剛性が低く設定されていればよい。したがって、本発明は、第2部材が第1部材のみに固定されている構造(すなわち、上記実施形態のように上板6が下板5のみに固定されている構造)に限定されるものではなく、第1平面と第2平面との間の相対変位を確保できるのであれば、第2部材が第1部材とは別の部位および別の固定手段で車体の任意の部位に固定されていてもよい。例えば、第1部材である下板5がフロアトンネル3の下端にボルト7で締結されている一方で、第2部材である上板6がフロアトンネル3の内面に弾性を有する部材で弱く連結されていてもよい。
【0081】
(D)
上記実施形態の車体構造では、
図2および
図8に示されるように、下板5および上板6が凸部と凹部とが車両前後方向Xに交互に並んだ蛇腹構造になっているが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0082】
本発明の変形例として、下板5および上板6のうちの少なくとも一方は、一対の凸部または一対の凹部を有し、一対の凸部または一対の凹部は、凸部同士または凹部同士が車両平面視において互いに交差するように配置されていてもよい。
【0083】
具体的には、本発明の変形例である
図12に示されるトンネルメンバ24は、車体底面から見て略X字形状の下板25(
図12および
図15~16参照)と、当該下板25に対応する形状の上板26(
図13~15参照)とを備えている。下板25が本発明の第1部材に対応し、上板26が第2部材に対応する。
【0084】
下板25は、車幅方向Yに延びる一対の下方突出部25bであって車両平面視において互いに交差する一対の下方突出部25bと、当該下方突出部25bの車両前後方向Xの両側に配置された平板部25aとを有する。下方突出部25bは、平板部25aの間で下方Z2に突出する凸部である。平板部25aは、車幅方向Yの両端部に配置された4か所の車体固定部25cと、4か所の車体固定部25c以外の領域に配置された第1平面25dとを有する。4か所の車体固定部25cは、フロアトンネル3のボルト取付部3aにボルト7で固定される。
【0085】
上板26は、車体底面から見て略X字形状の下板25全体を覆うことが可能な略X字状または四辺の一部が切り欠かれた矩形形状の平板部26aを有する部材である。平板部26aは、下板25の第1平面25dに対向する第2平面26cを有する。
【0086】
振動減衰部材9は、上記実施形態と同様に、第1平面25dと第2平面26cとの間に配置されている。
【0087】
図12~16に示される変形例の車体構造では、下板25および上板26のうちの少なくとも一方(この変形例では下板25)は、凸部同士または凹部同士(この変形例では凸部である下方突出部25b同士)が車両平面視において互いに交差する構造を有している。これにより、捩じれによる振動減衰機能および車幅方向Yの荷重伝達機能の両方をさらに向上させることが可能である。
【0088】
また、この変形例においても、上板26は、振動減衰部材9によって下板25に接着されるとともに、中央固定部30(
図12参照)によって当該上板26の長手方向(
図12では車幅方向Y)における中央の領域でのみ下板25に固定されている。その結果、中央固定部30によって上板26を下板25へ固定しながら振動減衰性能を確保することが可能になる。
【0089】
(E)
上記実施形態および変形例では、本発明の車両の車体構造の一例として、第1部材である下板5、25および上板6、26を有するトンネルメンバ4、24がフロアトンネル3の下端に配置された構造を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0090】
本発明の車体構造は、
図17~21に示されるように、トンネルメンバ以外の種々の部位にも適用することが可能であり、その場合も車体重量を抑制しながら振動減衰性能を向上させることが可能になる。
【0091】
例えば、
図17に示される変形例では、以下のように、車室の屋根部分を構成するルーフメンバ31(第1部材)と、ルーフメンバ31の下面において車幅方向Yに延びるように配置された複数のルーフレイン32(第2部材)とを有する構造に本発明を適用することが可能である。この構成では、ルーフメンバ31の周縁は車体のフレームに固定されている。各ルーフレイン32に設けられた一対のフランジ部32aは、ルーフメンバ31の下面に対向している。ルーフメンバ31の下面(第1平面)とフランジ部32aの上面(第2平面)との間にADシーラなどの接着性を有する振動減衰部材33が配置されている。ルーフメンバ31は、ルーフレイン32よりも曲げ剛性またはねじり剛性が低く設定されている。この
図17の構成では、ルーフレイン32が振動減衰部材33のみによってルーフメンバ31に接着されている。これにより、振動入力時にルーフレイン32とルーフメンバ31との相対変位が大きくなるので、車体重量を抑制しながら振動減衰性能を向上させることが可能になる。
【0092】
(F)
また、
図18に示される変形例では、車体後部の内側面における構造であって、リアピラーインナ41(第1部材)と、リアピラーインナ41の後方側に配置されたリアダンパートップ42(第1部材)と、当該リアピラーインナ41とリアダンパートップ42とを連結する補強部材である棚ガセット43(第2部材)とを有する構造にも本発明を適用することが可能である。この構成では、リアピラーインナ41およびリアダンパートップ42は車体のフレームに固定されている。棚ガセット43に設けられた一対のフランジ部43aは、リアピラーインナ41およびリアダンパートップ42の内側面に対向している。リアピラーインナ41およびリアダンパートップ42の内側面(第1平面)と当該内側面に対向する一対のフランジ部43aの面(第2平面)との間にADシーラなどの接着性を有する振動減衰部材44が配置されている。リアピラーインナ41およびリアダンパートップ42は、棚ガセット43よりも曲げ剛性またはねじり剛性が低く設定されている。この
図18の構成では、棚ガセット43が振動減衰部材44のみによってリアピラーインナ41およびリアダンパートップ42に接着されている。これにより、振動入力時に棚ガセット43とリアピラーインナ41およびリアダンパートップ42との相対変位が大きくなるので、車体重量を抑制しながら振動減衰性能を向上させることが可能になる。
【0093】
(G)
さらに、
図19に示される変形例では、車室の床部分を構成するフロアパネル51(第1部材)と、フロアパネル51の上面において車幅方向Yに延びるように配置された一対のクロスメンバ52(第2部材)とを有する構造に本発明を適用することが可能である。この構成では、フロアパネル51の周縁は車体のフレームに固定されている。各クロスメンバ52に設けられた一対のフランジ部52aは、フロアパネル51の上面に対向している。フロアパネル51の上面(第1平面)とクロスメンバ52のフランジ部52aの下面(第2平面)との間にADシーラなどの接着性を有する振動減衰部材53が配置されている。フロアパネル51は、クロスメンバ52よりも曲げ剛性またはねじり剛性が低く設定されている。この
図19の構成では、クロスメンバ52が振動減衰部材53のみによってフロアパネル51に接着されている。これにより、振動入力時にクロスメンバ52とフロアパネル51との相対変位が大きくなるので、車体重量を抑制しながら振動減衰性能を向上させることが可能になる。
【0094】
また、クロスメンバ52とクロスメンバ52の内部のパッチとの間も振動減衰部材53で接着することによって、振動減衰性能をさらに向上させてもよい。
【0095】
(H)
さらに、
図20~21に示される変形例では、車室の床部分を構成するフロアパネル61(第1部材)と、フロアパネル61の上面側に配置された追加の金属板62(第2部材)とを有する構造に本発明を適用することが可能である。この構成では、フロアパネル61の周縁は車体のフレームに固定されている。フロアパネル61の上面(第1平面)と追加の金属板62の下面(第2平面)との間にADシーラなどの接着性を有する振動減衰部材63が配置されている。フロアパネル61は、追加の金属板62よりも曲げ剛性またはねじり剛性が低く設定されている。
【0096】
この
図20~21の構成では追加の金属板62が振動減衰部材63のみによってフロアパネル61に接着されている。これにより、振動入力時に追加の金属板62とフロアパネル61との相対変位が大きくなるので、車体重量を抑制しながら振動減衰性能を向上させることが可能になる。
【符号の説明】
【0097】
1 車体
2 フロアパネル
3 フロアトンネル
4 トンネルメンバ
5、25 下板(第1部材)
5a 平板部(凸部)
5b、25b 下方突出部(凹部)
5c 車体固定部
5d、25d 第1平面
6、26 上板(第2部材)
6a、26a 平板部(凹部)
6b 上方突出部(凸部)
6c、26c 第2平面
7 ボルト
9 振動減衰部材
10、30 中央固定部