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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154366
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】車両映像収集システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/01 20060101AFI20221005BHJP
   G08G 1/13 20060101ALI20221005BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20221005BHJP
   G16Y 40/20 20200101ALI20221005BHJP
【FI】
G08G1/01 A
G08G1/13
G16Y10/40
G16Y40/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057378
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】柴田 基夫
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB15
5H181CC04
5H181MC12
5H181MC19
5H181MC27
(57)【要約】
【課題】道路上を走行する車両において撮像された映像の内、発生したイベントの内容を撮像した管理者にとって有用な映像を厳選して車両から収集することを可能にした車両映像収集システムを提供する。
【解決手段】車両5の周辺においてイベントが発生したことを判定した場合に、イベントの発生位置から車両5までの距離に基づいて車両から収集する映像の長さを設定し、車両5の周辺においてイベントが発生したと判定されたタイミングを含む設定された長さの映像を車両5から収集するように構成する。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路上を走行するとともに車外の映像を撮像する撮像手段を備えた車両から、該車両で撮像された映像を収集する車両映像収集システムであって、
車両の周辺においてイベントが発生したことを判定するイベント発生判定手段と、
車両の周辺においてイベントが発生したと判定された場合にイベントの発生位置から車両までの距離を推定する距離推定手段と、
前記イベントの発生位置から車両までの距離に基づいて車両から収集する映像の長さを設定する映像時間設定手段と、
車両の周辺においてイベントが発生したと判定されたタイミングを含む前記設定された長さの映像を車両から収集する映像収集手段と、を有する車両映像収集システム。
【請求項2】
前記映像時間設定手段は、前記イベントの発生位置から車両までの距離が短い程、車両から収集する映像の長さを短く設定する請求項1に記載の車両映像収集システム。
【請求項3】
車両は車外において発生した音を入力する為のマイクロフォンを備え、
前記イベント発生判定手段は、前記マイクロフォンに入力された音の音圧が閾値以上となった場合に車両の周辺においてイベントが発生したと判定し、
前記距離推定手段は、前記マイクロフォンに入力された音の音圧の大きさに基づいて前記イベントの発生位置から車両までの距離を推定する請求項1又は請求項2に記載の車両映像収集システム。
【請求項4】
車両に生じた減速度を取得する減速度取得手段を備え、
前記イベント発生判定手段は、車両に閾値以上の減速度が生じた場合にイベントが発生したと判定し、
前記距離推定手段は、車両に生じた減速度の大きさに基づいて前記イベントの発生位置から車両までの距離を推定する請求項1又は請求項2に記載の車両映像収集システム。
【請求項5】
前記イベントは後方車両から行われたあおり運転であって、
車両から前記後方車両までの距離を取得する車間距離取得手段を備え、
前記イベント発生判定手段は、車両から前記後方車両までの距離が閾値未満の状態が一定時間以上継続した場合にイベントが発生したと判定し、
前記距離推定手段は、車両から前記後方車両までの距離を前記イベントの発生位置から車両までの距離と推定する請求項1に記載の車両映像収集システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両において撮像された映像を収集する車両映像収集システムに関する。
【背景技術】
【0002】
道路やその周辺において例えば事故、落下物、故障車等の何らかのイベントが発生した場合に、そのイベントの発生した位置の道路状況を管理者(例えば事故であれば警察、落下物であれば道路管理業者、故障車であればロードサービス業者)が確認、分析することは重要である。
【0003】
近年ではドライブレコーダ等の周囲の映像を撮像する手段を備えた車両が増えており、そこでそれらの車両で撮像された映像を用いて上記の道路状況の確認、分析を行うことが提案されている。例えば特開2012-98105号公報には、情報センタにおいて事故の発生が検出された場合に、事故が発生した発生時刻に事故の発生した場所の周囲に位置する車両に対して事故の情報を通知し、情報を受信した車両は事故の発生時刻とその前後において車両の周囲を撮像した映像を抽出して情報センタへと送信し、情報センタでは車両から収集した映像に基づいて事故の分析を行う技術について提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-98105号公報(第8-10頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1では情報センタが事故の発生時刻において事故が発生した場所の周囲に位置する全ての車両から、事故の発生時刻とその前後を含む固定長さ(例えば1分間)の映像を収集している。しかしながら、車両が通常の走行速度で道路を走行していると仮定すると、上記1分間の映像の内、事故と関連する映像箇所は事故が発生した場所を通過するタイミングで撮像されたごく一部の映像のみであり、その他の大半の映像は事故と全く関係のない映像となる。そのような大半が事故と関係のない映像を収集することは、通信の負担増を招く原因となっていた。
【0006】
本発明は前記従来における問題点を解消するためになされたものであり、道路上を走行する車両において撮像された映像の内、発生したイベントの内容を撮像した管理者にとって有用な映像を厳選して車両から収集することを可能にした車両映像収集システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため本発明に係る車両映像収集システムは、道路上を走行するとともに車外の映像を撮像する撮像手段を備えた車両から、該車両で撮像された映像を収集する車両映像収集システムであって、車両の周辺においてイベントが発生したことを判定するイベント発生判定手段と、車両の周辺においてイベントが発生したと判定された場合にイベントの発生位置から車両までの距離を推定する距離推定手段と、前記イベントの発生位置から車両までの距離に基づいて車両から収集する映像の長さを設定する映像時間設定手段と、車両の周辺においてイベントが発生したと判定されたタイミングを含む前記設定された長さの映像を車両から収集する映像収集手段と、を有する。
尚、「イベント」とは、道路上或いは道路周辺で生じるものであって、当事者以外の第3者によって何らかの監視、状況確認、分析が必要な事象とする。例えば、事故、故障車、危険車両、不審者、不審物、駐車禁止車両、タクシー乗り場待ち、渋滞、あおり運転の発生などが挙げられる。
【発明の効果】
【0008】
前記構成を有する本発明に係る車両映像収集システムによれば、イベントの発生位置から車両までの距離に基づいて車両から収集する映像の長さを設定するので、車両毎に収集する映像の長さを必要な長さに設定でき、発生したイベントの内容を撮像した管理者にとって有用な映像を厳選して車両から収集することが可能となる。その結果、映像の収集に係る通信量を削減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る車両映像収集システムを示した概略構成図である。
図2】本実施形態に係る車両映像収集システムの構成を示したブロック図である。
図3】プローブ情報DBに記憶されるプローブ情報の一例を示した図である。
図4】映像情報DBに記憶される映像情報の一例を示した図である。
図5】イベント登録情報DBに記憶されるイベント登録情報の一例を示した図である。
図6】本実施形態に係るナビゲーション装置の制御系を模式的に示すブロック図である。
図7】カメラらによって撮像された映像情報の格納態様を示した図である。
図8】本実施形態に係る映像収集処理プログラムのフローチャートである。
図9】マイクロフォンに入力された音の一例を示した図である。
図10】あおり運転が発生したと判定する為の閾値を示した図である。
図11】イベントの発生を検出した場合において収集対象となる映像を示した図である。
図12】映像時間設定処理のサブ処理プログラムのフローチャートである。
図13】マイクロフォンに入力された音の音圧と収集対象となる映像の長さの関係を示した図である。
図14】車両の減速度と収集対象となる映像の長さの関係を示した図である。
図15】あおり運転を行っていると予想される後方車両までの距離と収集対象となる映像の長さの関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る車両映像収集システムについて具体化した一実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。先ず、本実施形態に係る車両映像収集システム1の概略構成について図1及び図2を用いて説明する。図1は本実施形態に係る車両映像収集システム1を示した概略構成図である。図2は本実施形態に係る車両映像収集システム1の構成を示したブロック図である。
【0011】
図1に示すように、本実施形態に係る車両映像収集システム1は、情報管理センタ2が備えるサーバ装置(車両映像収集装置)3と、道路上を走行するとともに周囲を撮像する撮像手段としてのカメラ4を備えた車両5と、を基本的に有する。また、サーバ装置3と車両5は通信ネットワーク網6を介して互いに電子データを送受信可能に構成されている。尚、本実施形態では基本的に車両映像収集システム1に含まれる車両5は複数台あることを前提とするが、1台のみであっても実施は可能である。また、車両5は特定の車両(例えば公用車、タクシー)のみに限定しても良いし、広く一般車両まで含めても良い。
【0012】
ここで、本実施形態に係る車両映像収集システム1は所謂プローブカーシステムを構成する。ここで、プローブカーシステムとは、車両5をセンサとして情報を収集するシステムである。具体的には、車両5が速度データをはじめ、ステアリング操作やシフト位置等の各システムの作動状況をGPSの位置情報とともに予め車両5に搭載された通信装置を介して情報管理センタ2に送信し、センタ側でその収集データを様々な情報として再利用するシステムをいう。
【0013】
そして、情報管理センタ2が備えるサーバ装置3は、全国を走行する各車両5から現在時刻や現在位置等を含むプローブ情報(材料情報)を適宜収集して蓄積するとともに、蓄積されたプローブ情報から各種支援情報(例えば事故情報、渋滞情報、旅行時間等)を生成し、生成された支援情報をナビゲーション装置7に対して配信したり、支援情報を用いた各種処理を行う情報管理サーバである。更に本実施形態ではサーバ装置3は、事故等の特定のイベントが発生した場合において、イベントが発生した時刻と位置に対応してカメラ4で撮像された映像情報を車両5から収集することも行う。そして、収集した映像情報に基づきイベントが発生した道路の道路状況の確認や分析を行う。
【0014】
本実施形態では上記のようにサーバ装置3が車両から収集した映像情報を用いて特にイベントが発生した道路の道路状況の確認や分析を行うことを目的とすることから、情報管理センタ2としては例えば警察、道路管理業者、ロードサービス業者等が該当する。或いは、情報管理センタ2はそれらと異なる機関であって、警察、道路管理業者、ロードサービス業者等に対して道路状況の確認結果や分析結果を譲渡しても良い。
【0015】
一方、車両5は乗員が乗車した状態で道路上を走行する移動手段であって、周囲を撮像する撮像手段としてのカメラ4と、通信(案内)端末であるナビゲーション装置7と、を基本的に有する。車両5は自動運転による走行が可能な車両としても良い。
【0016】
カメラ4は、例えばCCD等の固体撮像素子を用いたカメラであって、車両5のドライブレコーダとして利用される。車両のルームミラーの裏側やフロントバンパ等に取り付けられ、走行中は基本的に車両の進行方向前方の周辺環境を常時撮像する。また、カメラ4によって撮像された映像情報は所定時間間隔(例えば30秒間隔)で区分され、更に撮像した地点と撮像した時刻を紐づけてメモリーカード8に記録され、必要時にはプローブ情報としてサーバ装置3に送信される。
【0017】
また、撮像した映像情報が記憶されるメモリーカード8はカメラ4に搭載されておりカメラ4で撮像された映像情報を順次格納して保存するが、保存したデータ量が予め決められた上限(例えば64GB)に到達した状態で新たな映像を撮像すると、古い映像情報から順に自動的に削除される。そして、削除によって生成された空き領域に新たな映像情報を記憶する。尚、カメラ4の映像情報を記憶する記憶媒体としてはメモリーカード8以外でも良く、例えばカメラ4に内蔵されたフラッシュメモリでも良いし、ナビゲーション装置7の記憶媒体(メモリやハードディスク)に記憶するようにしても良い。また、外部のサーバ(オンラインストレージ)に記憶するようにしても良い。
【0018】
一方、ナビゲーション装置7は、車両5に搭載され、格納する地図データに基づいて自車位置周辺の地図を表示したり、地図画像上において車両の現在位置を表示したり、設定された案内経路に沿った移動案内を行う車載機である。また、ナビゲーション装置7は通信ネットワーク網6に接続する為の通信手段を備え、GPSや各種センサを用いて車両の現在位置を特定し、所定時間間隔で現在時刻とともに現在位置を特定する情報をプローブ情報としてサーバ装置3へと送信する。尚、現在位置以外に進行方向、走行リンク、車速、ヨーレート等についても特定し、プローブ情報として送信しても良い。更に、車両5周辺において何らかのイベントが発生したことを検出した場合については、カメラ4で撮像されてメモリーカード8等に保管されている映像情報についてもプローブ情報としてサーバ装置3へと送信する。尚、上記プローブ情報の送信を実行する主体としては、ナビゲーション装置7の代わりに、例えば車両5が備える他の車載器や車両5を制御する車両制御ECUを用いても良い。
【0019】
また、通信ネットワーク網6は全国各地に配置された多数の基地局と、各基地局を管理及び制御する通信会社とを含み、基地局及び通信会社を有線(光ファイバー、ISDN等)又は無線で互いに接続することにより構成されている。ここで、基地局は車両5との通信をするトランシーバー(送受信機)とアンテナを有する。そして、基地局は通信会社の間で無線通信を行う一方、通信ネットワーク網6の末端となり、基地局の電波が届く範囲(セル)にある車両5の通信をサーバ装置3との間で中継する役割を持つ。
【0020】
続いて、車両映像収集システム1が有するサーバ装置3の構成について図2を用いてより詳細に説明する。
【0021】
サーバ装置3は、図2に示すようにサーバ制御部11と、サーバ制御部11に接続された情報記録手段としてのプローブ情報DB12と、映像情報DB13と、イベント登録情報DB14と、サーバ側地図DB15と、センタ通信装置16と、を基本的に有する。
【0022】
サーバ制御部11は、サーバ装置3の全体の制御を行う制御ユニット(MCU、MPU等)であり、演算装置及び制御装置としてのCPU21、並びにCPU21が各種の演算処理を行うにあたってワーキングメモリとして使用されるRAM22、制御用のプログラムのほか、後述の映像収集処理プログラム(図8)等が記録されたROM23、ROM23から読み出したプログラムを記憶するフラッシュメモリ24等の内部記憶装置を備えている。尚、サーバ制御部11は、後述のナビゲーション装置7の制御部とともに処理アルゴリズムとしての各種手段を有する。例えば、映像収集手段は、車両5の周辺においてイベントが発生したと判定されたタイミングを含む設定された長さの映像を車両5から収集する。
【0023】
また、プローブ情報DB12は、全国を走行する各車両5から収集したプローブ情報(但し映像情報は除く)を累積的に記憶する記憶手段である。尚、本実施形態においては、車両5から収集されるプローブ情報として、特に(a)日時とその日時における(b)車両5が走行する地域の地域コード、(c)車両5が走行するリンク、(d)車両5の進行方向(正方向又は逆方向)、(e)リンク始点(終点)からの走行距離、(f)車両5の車速、(g)車両5のヨーレート、が含まれる。
【0024】
尚、『リンク始点』と『リンク終点』は車両の進行方向に依存せずリンクの両端(ノード)に対して夫々設定された属性である。そして、車両の進行方向はリンク始点からリンクに進入してリンク終点から退出する方向を“正方向”、リンク終点からリンクに進入してリンク始点から退出する方向を“逆方向”と定義する。
【0025】
プローブ情報は、車両5が過去の走行中に位置した地点とその地点に車両が位置した時刻と、その地点における車両の挙動、即ち車両の走行履歴を示す。但し、プローブ情報としては上記(a)~(g)に関する情報を必ずしも全て含む必要はなく、また、(a)~(g)以外の情報(例えばブレーキ操作量、加速度、減速度、後方車両までの距離等)を含む構成としても良い。また、車両の位置を示す情報としてはリンク始点(終点)からの走行距離の代わりに、座標(緯度経度)を用いても良い。また、プローブ情報としては所定の条件を満たした場合にカメラ4で撮像された映像情報についても車両5から収集されるが、映像情報については後述の映像情報DB13に格納される。
【0026】
図3はプローブ情報DB12に記憶されるプローブ情報の一例を示した図である。図3に示すように、プローブ情報は、送信元の車両を識別する車両IDと、上記(a)~(g)に関する情報等が含まれる。例えば、図3に示すプローブ情報は、ID“A”の車両5が地域コード“11”内にあるID“100001”のリンクの正方向の走行中において、3月2日の9:00:00.80にリンク始点から40m離れた地点で停車したことが記憶されている。一方、ID“B”の車両5が地域コード“11”内にあるID“100002”のリンクの逆方向を55km前後で走行したことが記憶されている。同様にして、他のプローブ情報についても記憶されている。尚、図3に示す例では200msec間隔で車両からプローブ情報を収集しているが、プローブ情報の収集の間隔は200msec間隔より短く或いは長くしても良い。
【0027】
また、映像情報DB13は、全国を走行する各車両5から収集した映像情報を記憶する記憶手段である。尚、本実施形態においては、後述のように車両5が周辺において何らかのイベントが発生したことを検出した場合に、イベントの発生を検出した車両5からカメラ4で撮像された映像を収集する。また、収集対象とする映像の長さ(映像時間)は、イベントの発生位置から車両までの距離に基づいて設定される。例えば90秒、150秒、210秒の内から適宜選択される。車両5から収集されて映像情報DB13に記憶される映像情報は、発生したイベントの内容が撮像された可能性のある映像情報となる。
【0028】
図4は映像情報DB13に記憶される映像情報の一例を示した図である。図4に示すように映像情報は、映像を撮像した主体である車両5を識別する車両IDと、映像を撮像した日時と、映像を撮像した際の車両5が走行する地域の地域コードと、映像を撮像した際の車両5が走行するリンクと、映像を撮像した際の車両5の進行方向(正方向又は逆方向)とに紐づけられて映像情報DB13に格納される。
【0029】
例えば、図4に示す例ではID“D”の車両が、地域コード“11”内にあるID“100121”及びID“100122”のリンクの正方向の走行中において3月2日の10:11:30から10:13:00までの90秒間において撮像した映像情報が記憶されている。また、ID“G”の車両が、同じく地域コード“11”内にあるID“100121”及びID“100122”のリンクの正方向の走行中において3月2日の10:11:30から10:14:00までの150秒間において撮像した映像情報が記憶されている。同様にして他の映像情報についても記憶されている。そして、サーバ装置3の管理者は映像情報DB13に格納された映像情報に基づきイベントが発生した道路の道路状況の確認や分析を行う。
【0030】
一方で、イベント登録情報DB14は、道路或いは道路の周辺で発生しているイベントに関する情報が登録される記憶手段である。ここで、イベント登録情報DB14に登録されるイベントとしては、例えば事故、落下物、故障車の発生、危険車両の発生、渋滞の発生、あおり運転の発生などが挙げられ、イベントに関する情報はイベントの発生を検出した車両5から提供された情報に基づいて登録される。但し、イベントの発生を検出した車両5からの情報提供ではなく、管理者の操作に基づいて登録されるようにしても良い。
【0031】
図5はイベント登録情報DB14に記憶されるイベント登録情報の一例を示した図である。図5に示すようにイベント登録情報は、イベントの発生した日時を特定する情報と、イベントの発生した地域の地域コードと、イベントの発生したリンクと、イベントの発生した位置に対応する道路の進行方向(正方向に対応する車線で発生したか、逆方向に対応する車線で発生したか)と、イベントの発生した位置の座標(緯度経度)と、イベントの発生を検出した車両と、イベントの登録要因とを含む。ここで、後述のように車両5は、(a)車両5の備えるマイクロフォンに入力された音の所定周波数帯の音圧が閾値以上、(b)車両5に閾値以上の減速度が生じる、(c)車両5から後方車両までの距離が閾値未満の状態が一定時間以上継続する、のいずれかの条件を満たした場合において車両5の周辺にイベントが発生したと判定する。「イベントの登録要因」は上記(a)~(c)いずれの条件を満たして登録されたイベントであるか(複数の条件を満たす場合もある)について記憶される。
【0032】
但し、イベント登録情報DB14には上記全ての情報を登録する必要は無く、例えばイベントの発生した日時と位置の座標のみを登録しても良い。また、イベントの種類(例えば事故、落下物、故障車の発生)が特定できるのであればイベントの種類を特定する情報を含めても良い。
【0033】
例えば、図5に示す例では地域コード“11”内にあるID“100121”のリンクの正方向にある(x1、y1)の地点において3月2日の10:12:15に、ID“D”の車両が上記(a)と(b)の条件を満たして登録されたイベントがあることを示している。また、地域コード“21”内にあるID“200051”のリンクの逆方向にある(x2、y2)の地点において3月2日の22:45:13に、ID“H”の車両が上記(a)の条件を満たして登録されたイベントがあることを示している。また、地域コード“22”内にあるID“200102”のリンクの逆方向にある(x3、y3)の地点において3月3日の8:11:20に、ID“R”の車両が上記(c)の条件を満たして登録されたイベントがあることを示している。同様にして他のイベント登録情報についても記憶されている。そして、サーバ装置3ではイベント登録情報DB14に登録された情報に基づき、道路に発生しているイベントの管理を行う。
【0034】
一方、サーバ側地図DB15は、外部からの入力データや入力操作に基づいて登録された最新のバージョンの地図情報であるサーバ側地図情報が記憶される記憶手段である。ここで、サーバ側地図情報は、道路網を始めとして経路探索、経路案内及び地図表示に必要な各種情報から構成されている。例えば、道路網を示すノード及びリンクを含むネットワークデータ、道路(リンク)に関するリンクデータ、ノード点に関するノードデータ、各交差点に関する交差点データ、施設等の地点に関する地点データ、地図を表示するための地図表示データ、経路を探索するための探索データ、地点を検索するための検索データ等からなる。
【0035】
また、センタ通信装置16は、車両5やVICS(登録商標:Vehicle Information and Communication System)センタ等の外部の交通情報センタと通信ネットワーク網6を介して通信を行う為の通信装置である。本実施形態では、センタ通信装置16を介してプローブ情報や映像情報等を各車両5との間で送受信する。
【0036】
次に、車両5に搭載されたナビゲーション装置7の概略構成について図6を用いて説明する。図6は本実施形態に係るナビゲーション装置7を示したブロック図である。
【0037】
図6に示すように本実施形態に係るナビゲーション装置7は、ナビゲーション装置7が搭載された車両の現在位置を検出する現在位置検出部31と、各種のデータが記録されたデータ記録部32と、入力された情報に基づいて、各種の演算処理を行うナビゲーションECU33と、ユーザからの操作を受け付ける操作部34と、ユーザに対して車両周辺の地図や交通情報等を表示する液晶ディスプレイ35と、経路案内に関する音声ガイダンスを出力するスピーカ36と、記憶媒体であるDVDを読み取るDVDドライブ37と、情報管理センタ2やVICSセンタ等の情報センタとの間で通信を行う通信モジュール38と、を有する。また、ナビゲーション装置7はCAN等の車載ネットワークを介して、車両5に搭載された各種センサ、マイクロフォン42、カメラ4とも接続されている。尚、車両5に搭載されたセンサとしては、例えば車速センサ39、加速度センサ40、測距センサ41を含む。
【0038】
以下に、ナビゲーション装置7が有する各構成要素について順に説明する。
現在位置検出部31は、GPS43、ヨーレートセンサ44等を含み、現在の車両の位置、方位等を検出することが可能となっている。また、車速センサ39やその他の車両に設置された各種センサの検出結果についても取得することによって、より精度の高い現在の車両の位置、方位等の検出も可能である。
【0039】
また、データ記録部32は、外部記憶装置及び記録媒体としてのハードディスク(図示せず)と、ハードディスクに記録された地図情報DB45、走行履歴DB46、所定のプログラム等を読み出すとともにハードディスクに所定のデータを書き込む為のドライバである記録ヘッド(図示せず)とを備えている。尚、データ記録部32をハードディスクの代わりにフラッシュメモリやメモリーカードやCDやDVD等の光ディスクにより構成しても良い。また、地図情報DB45、走行履歴DB46は外部のサーバに格納させ、ナビゲーション装置7が通信により取得する構成としても良い。
【0040】
ここで、地図情報DB45は、例えば、道路(リンク)に関するリンクデータ、ノード点に関するノードデータ、経路の探索や変更に係る処理に用いられる探索データ、施設に関する施設データ、地図を表示するための地図表示データ、各交差点に関する交差点データ、地点を検索するための検索データ等が記憶された記憶手段である。
【0041】
また、走行履歴DB46は、車両5の走行情報(車両挙動)を累積して記憶した記憶手段である。尚、本実施形態では走行履歴DB46に記憶される走行情報として、特に車速センサ39、加速度センサ40、測距センサ41、GPS43、ヨーレートセンサ44等の各種センサの検出結果を含む。走行履歴DB46に記憶された走行情報はプローブ情報としてサーバ装置3へと随時送信される。
【0042】
一方、ナビゲーションECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)33は、ナビゲーション装置7の全体の制御を行う電子制御ユニットであり、演算装置及び制御装置としてのCPU51、並びにCPU51が各種の演算処理を行うにあたってワーキングメモリとして使用されるとともに、経路が探索されたときの経路データ等が記憶されるRAM52、制御用のプログラムのほか、後述の映像収集処理プログラム(図8)等が記録されたROM53、ROM53から読み出したプログラムを記憶するフラッシュメモリ54等の内部記憶装置を備えている。尚、ナビゲーションECU33は、前述のサーバ制御部11とともに処理アルゴリズムとしての各種手段を有する。例えば、イベント発生判定手段は、車両5の周辺においてイベントが発生したことを判定する。距離推定手段は、車両5の周辺においてイベントが発生したと判定された場合にイベントの発生位置から車両5までの距離を推定する。映像時間設定手段は、イベントの発生位置から車両5までの距離に基づいて車両5から収集する映像の長さを設定する。
【0043】
操作部34は、走行開始地点としての出発地及び走行終了地点としての目的地を入力する際等に操作され、各種のキー、ボタン等の複数の操作スイッチ(図示せず)から構成される。そして、ナビゲーションECU33は、各スイッチの押下等により出力されるスイッチ信号に基づき、対応する各種の動作を実行すべく制御を行う。尚、操作部34は液晶ディスプレイ35の前面に設けたタッチパネルによって構成することもできる。また、マイクと音声認識装置によって構成することもできる。
【0044】
また、液晶ディスプレイ35には、道路を含む地図画像、交通情報、操作案内、操作メニュー、キーの案内、案内経路(走行予定経路)に沿った案内情報、ニュース、天気予報、時刻、メール、テレビ番組等が表示される。尚、液晶ディスプレイ35の代わりに、HUDやHMDを用いても良い。
【0045】
また、スピーカ36は、ナビゲーションECU33からの指示に基づいて案内経路(走行予定経路)に沿った走行を案内する音声ガイダンスや、交通情報の案内を出力する。
【0046】
また、DVDドライブ37は、DVDやCD等の記録媒体に記録されたデータを読み取り可能なドライブである。そして、読み取ったデータに基づいて音楽や映像の再生、地図情報DB45の更新等が行われる。尚、DVDドライブ37に替えてメモリーカードを読み書きする為のカードスロットを設けても良い。
【0047】
また、通信モジュール38は、交通情報センタ、例えば、VICSセンタやその他の外部センタ等から送信された交通情報等を受信する為の通信装置であり、例えば携帯電話機やDCMが該当する。また、車車間で通信を行う車車間通信装置や路側機との間で通信を行う路車間通信装置も含む。また、プローブ情報や後述の映像の要求指示をサーバ装置3との間で送受信するのにも用いられる。
【0048】
また、車速センサ39は、車両の移動距離や車速を検出する為のセンサであり、車両の駆動輪の回転に応じてパルスを発生させ、パルス信号をナビゲーションECU33に出力する。そして、ナビゲーションECU33は発生するパルスを計数することにより車両の車速や移動距離を算出する。
【0049】
また、加速度センサ40は、車両の前後方向(車両の進行方向と平行方向)に生じる加速度を検出する為のセンサであり、例えば静電容量式のセンサが用いられる。また、車両の前後方向に加えて左右方向(車両の進行方向と交差する方向)に生じる加速度についても検出対象に含めても良い。特に本実施形態では加速度センサ40により車両に生じる減速度を計測することによって、車両5の周辺においてイベントが発生したことや、イベントの発生位置までの距離を検出する。
【0050】
また、測距センサ41は、例えば車両5の後方バンパ付近に取り付けられ、特に車両の後方の周囲環境を検出範囲とするように設定される。測距センサ41としては、例えば赤外線センサ、超音波センサ、深度カメラ、ステレオカメラなどの後方に位置する対象物までの距離や方位を検出することが可能な各種装置が用いられる。本実施形態では特に後方車両までの距離を検出するのに用いられる。
【0051】
また、マイクロフォン42は、車両5の車体外側面に対して配置され、車外において発生した音を入力する為のマイクロフォンである。特に本実施形態ではマイクロフォン42に入力された音の音圧(即ち音の大きさ)を計測することによって、車両5の周辺においてイベントが発生したことや、イベントの発生位置までの距離を検出する。
【0052】
一方でカメラ4は、前述したように例えばCCD等の固体撮像素子を用いたカメラであって、車両5のドライブレコーダとして利用される。また、カメラ4によって撮像された映像情報は図7に示すように所定時間間隔(例えば30秒間隔)で区分され、更に区分毎に撮像した地点と撮像した時刻の情報をナビゲーション装置7から取得し、それらを紐づけてメモリーカード8に格納される。例えば図7に示す例では『映像A』は、地域コード“11”内にあるID“100001”のリンクの始点から15.5m離れた地点からID“100002”のリンクの始点から33.4mまで離れた地点まで移動する間において撮像された映像であり、且つ撮像した日時は3月2日の9:00:30から9:00:59までの間であることが記憶されている。また、『映像B』は、地域コード“11”内にあるID“100002”のリンクの始点から35.5m離れた地点からID“100003”のリンクの始点から13.4mまで離れた地点まで移動する間において撮像された映像であり、且つ撮像した日時は3月2日の9:01:00から9:01:29までの間であることが記憶されている。同様にして他の映像情報についてもメモリーカード8に格納されている。
【0053】
メモリーカード8に記憶された上記映像情報は、車両5が周辺において何らかのイベントが発生したことを検出した場合に、イベントの発生を検出したタイミングを含む所定長さの映像情報が抽出されてプローブ情報としてナビゲーション装置7を介してサーバ装置3へと送信される。また、送信対象とする映像の長さ(映像時間)は、イベントの発生位置から車両までの距離に基づいて設定される。例えば90秒、150秒、210秒の内から適宜選択される。例えば90秒が選択された場合には連続する3つの3区分(30秒×3=90秒)の映像が送信される。また、メモリーカード8に保存したデータ量が予め決められた上限(例えば64GB)に到達した状態で新たな映像を撮像すると、古い映像情報から順に自動的に削除される。そして、削除によって生成された空き領域に新たな映像情報を記憶する。
【0054】
尚、図7に示す例ではカメラ4で撮像した映像情報を30秒間隔で区分して格納しているが、区分する間隔は30秒より長く或いは短くしても良い。また、映像情報は時間単位でなく走行距離単位(例えば300m単位)で区分しても良い。また、撮像した地点を示す情報としてはリンク始点(終点)からの走行距離の代わりに、座標(緯度経度)を用いても良い。
【0055】
続いて、前記構成を有する車両映像収集システム1を構成するサーバ装置3及びナビゲーション装置7において実行する映像収集処理プログラムについて図8に基づき説明する。図8は本実施形態に係る映像収集処理プログラムのフローチャートである。ここで、プ映像収集処理プログラムは車両のACC電源(accessory power supply)がONされた後に所定時間間隔(例えば200msec間隔)で繰り返し実行され、車両5の周辺でイベントが発生した場合に、カメラ4で撮像した映像情報をプローブ情報としてサーバ装置3が収集するプログラムである。尚、以下の図8及び図12にフローチャートで示されるプログラムは、サーバ装置3が備えているRAM22やROM23又はナビゲーション装置7が備えているRAM52やROM53等に記憶されており、CPU21又はCPU51により実行される。
【0056】
先ず、ナビゲーション装置7において実行される映像収集処理プログラムについて説明する。
ステップ(以下、Sと略記する)1においてCPU51は、CAN等を介して車速センサ39、加速度センサ40、測距センサ41等の各種センサの検出結果を取得する。また、マイクロフォン42に入力された車両外部の音について周波数[Hz]毎の音圧[dB]を測定した測定結果についても取得する。尚、前記S1の情報の取得についてはACC電源がONされている間において200msec間隔で繰り返し行われる。
【0057】
次に、S2においてCPU51は、前記S1で取得した各情報の内、マイクロフォン42に入力された音について、予め設定された特定周波数帯における最も高い音圧の値を特定し、特定された音圧の値が閾値以上か否かを判定する。尚、『特定周波数帯』は一般的に事故の際に生じる衝突音(車同士の衝突音、車と障害物との間の衝突音)に該当する周波数を含む範囲に設定し、更に『閾値』は車両の通常の走行時に生じる音(エンジン音やタイヤ音)よりも大きい値とする。例えば、図9に示すような音がマイクロフォン42に入力された場合には、特定周波数帯の中で最も高い音圧Wが閾値以上か否か判定する。尚、特定された音圧の値が閾値以上の場合には、事故或いはそれに準ずるイベントが車両5の周囲に発生したと推定される。
【0058】
続いて、S3においてCPU51は、前記S1で取得した各情報に基づいて、車両5に生じた減速度(後方への加速度)が閾値以上か否かを判定する。尚、減速度は現時点で生じている減速度としても良いし、過去一定期間(例えば5秒以内)内の平均減速度としても良いし、過去一定期間(例えば5秒以内)内の最大減速度としても良い。また、『閾値』は例えば通常の走行(例えば赤信号による停車や右左折など)では生じないレベルの減速度(例えば0.2G)に設定する。尚、車両に生じた減速度が閾値以上の場合には、事故、危険車両の発生、故障車の発生、落下物の発生、或いはそれに準ずるイベントが車両5の周囲に発生したと推定される。
【0059】
次に、S4においてCPU51は、前記S1で取得した各情報に基づいて、自車両から後方車両までの距離が閾値未満の状態が現時点まで一定時間以上継続しているか否かを判定する。尚、『閾値』は自車両の速度によって決定し、図10に示すように自車両の車速が速い程、より長い閾値が設定される。例えば車速[km]×1を閾値[m]とする。但し、自車両の車速が所定の下限速度v0(例えば20km/h)未満の場合についてはS4の判定は行わない(あおり運転は行われていないとみなす)。また、『一定時間』は適宜変更可能であるが、例えば30秒とする。尚、自車両から後方車両までの距離が閾値未満の状態が現時点まで一定時間以上継続している場合には、イベントとしてあおり運転が車両5の周囲に発生したと推定される。
【0060】
その後、S5においてCPU51は、前記S2~S4で行った判定処理において、少なくとも一以上の判定条件を満たしたか否か、即ち車両の周辺において何らかのイベントが発生したか否かを判定する。
【0061】
そして、前記S2~S4で行った判定処理において、少なくとも一以上の判定条件を満たしたと判定された場合(S5:YES)、即ち車両の周辺において何らかのイベントが発生したと判定された場合には、S6へと移行する。それに対して、いずれの判定条件も満たしていないと判定された場合(S5:NO)、即ち車両の周辺においてイベントが発生していないと判定された場合には、カメラ4で撮像した映像情報をサーバ装置3へ送信することなく終了する。
【0062】
S6においてCPU51は、後述の映像時間設定処理(図12)を行う。尚、映像時間設定処理は、イベントの発生位置から車両までの距離に基づいてサーバ装置3へと送信する映像時間(映像の長さ)を設定する処理である。例えば90秒、150秒、210秒の内から選択される。
【0063】
次にS7においてCPU51は、メモリーカード8に現時点で格納されている映像情報を読み出し、サーバ装置3へと送信する対象となる映像情報を抽出する。ここで、前記S7で抽出される映像情報は、イベントが発生したタイミングを含む前記S6で設定された長さの映像情報である。尚、イベントが発生したタイミングとは前記S2~S4のいずれかの判定条件を満たしたタイミングとする。
【0064】
ここで、前述したようにカメラ4によって撮像された映像情報は所定時間間隔(例えば30秒間隔)で区分されて、更に区分毎に撮像した地点と撮像した時刻を紐づけて格納されており(図7)、前記S7では該当する区分の映像情報のみが抽出される。例えば、図11に示すように地点a付近を走行する間に撮像された映像Aと、地点b付近を走行する間に撮像された映像Bと、地点c付近を走行する間に撮像された映像Cと、地点d付近を走行する間に撮像された映像Dと、地点e付近を走行する間に撮像された映像Eと、地点f付近を走行する間に撮像された映像Fと、地点g付近を走行する間に撮像された映像Gとがメモリーカード8に格納されている場合を例に挙げて説明する。このような映像が撮像されている状況において地点dでイベントの発生を検出し、映像時間が90秒に設定された場合には、先ずイベントが発生したタイミングを含む映像Dが抽出され、更に映像Dの前後に撮像された映像Cと映像Eとが抽出されることとなる。また、地点dでイベントの発生を検出し、映像時間が150秒に設定された場合には、先ずイベントが発生したタイミングを含む映像Dが抽出され、更に映像Dの前後に撮像された映像Bと映像Cと映像Eと映像Fとが抽出されることとなる。また、地点dでイベントの発生を検出し、映像時間が210秒に設定された場合には、先ずイベントが発生したタイミングを含む映像Dが抽出され、更に映像Dの前後に撮像された映像A~Cと映像E~Gとが抽出されることとなる。前記S7で抽出される映像情報は、イベントの内容が撮像された可能性のある映像情報となる。
【0065】
尚、図11に示す例ではイベントが発生したタイミングを中心にしてその前後の映像を抽出しているが、イベントが発生したタイミングを開始点或いは終了点として映像を抽出しても良い。
【0066】
その後、S8においてCPU51は、前記S7で抽出した映像情報について、送信元の車両を識別する“車両ID”とともにプローブ情報としてサーバ装置3へと送信する。また、映像を撮像した日時、映像を撮像した際の車両5が走行する地域の地域コード、映像を撮像した際の車両5が走行するリンク、映像を撮像した際の車両5の進行方向(正方向又は逆方向)についても映像情報と併せて送信する。
【0067】
更に前記S8においてCPU51は、前記S2~S5において検出したイベントに関するイベント情報についても併せてサーバ装置3へと送信する。イベント情報としては、イベントの発生した日時(前記S2~S4の条件を満たした日時)を特定する情報と、イベントの発生した地域の地域コードと、イベントの発生したリンクと、イベントの発生した位置に対応する道路の進行方向(正方向に対応する車線で発生したか、逆方向に対応する車線で発生したか)と、イベントの発生した位置の座標(緯度経度)と、イベントの登録要因(S2~S4のいずれの条件に該当したか)が含まれる。その後、当該映像収集処理プログラムを終了する。
【0068】
尚、本実施形態では上記S1~S8の処理はナビゲーション装置7が実行することとしているが、車両5が備える他の車載器や車両制御ECUが行っても良い。
【0069】
次に、サーバ装置3において実行される映像収集処理プログラムについて説明する。
先ず、S11においてCPU21は、全国を走行する各車両5から映像情報及びイベント情報の送信があるか否か判定する。尚、映像情報は上述したように周囲にイベントが発生したと判定された車両5から送信され、イベントの発生したタイミングを含む所定期間においてカメラ4により車両周囲を撮像した映像情報となる。
【0070】
そして、映像情報及びイベント情報の送信があると判定された場合(S11:YES)には、送信される映像情報及びイベント情報を受信する(S12)。そして、CPU21は受信した映像情報を映像情報DB13へと累積的に格納する(S13)。また、イベント情報についてはイベント登録情報DB14に格納し、イベントの登録を行う。
【0071】
尚、その後にサーバ装置3では、映像情報DB13に格納された映像情報やイベント登録情報DB14に格納されたイベント情報に基づきイベントが発生した道路の道路状況の確認や分析を行う。例えばイベントが事故であった場合については事故の現場が撮像された映像情報に基づいて、事故の状況の確認、事故によって通行止めにすべき車線の判定、事故の要因の分析、過失の認定等を行う。尚、これらの道路状況の確認や分析については映像情報を視認した管理者が行っても良いし、映像情報に対して画像処理を行うことによってサーバ装置3が判断するようにしても良い。
【0072】
上記道路状況の確認や分析を行うに際しては、サーバ装置3の備えるディスプレイにおいて車両から収集した映像情報を表示するようにしても良い。具体的には、ディスプレイに地図画像とともに登録されたイベントの地点にアイコンを表示し、管理者がアイコンを指定すると、ウインドウがディスプレイに表示される。ウインドウには管理者が指定したイベントに対応して現在までに車両から収集された映像の一覧が表示される。更に管理者が表示された映像を操作すると、映像の内容を視聴することが可能となる。
【0073】
一方、映像情報及びイベント情報の送信がないと判定された場合(S11:NO)には、当該映像収集処理プログラムを終了する。
【0074】
次に、前記S6において実行される映像時間設定処理のサブ処理について図12に基づき説明する。図12は映像時間設定処理のサブ処理プログラムのフローチャートである。
【0075】
先ず、S21においてCPU51は、前記S2の判定処理において条件を満たしたか否か、即ち特定周波数帯における最も高い音圧の値が閾値以上となったか否かを判定する。
【0076】
そして、前記S2の判定処理において条件を満たした、即ち特定周波数帯における最も高い音圧の値が閾値以上となったと判定された場合(S21:YES)には、S22へと移行する。それに対して、前記S2の判定処理において条件を満たさない、即ち特定周波数帯における最も高い音圧の値が閾値未満であると判定された場合(S21:NO)には、S25へと移行する。
【0077】
S22においてCPU51は、更に前記S3の判定処理においても条件を満たしたか否か、即ち車両5に生じた減速度(後方への加速度)が閾値以上か否かを判定する。
【0078】
そして、前記S3の判定処理において条件を満たした、即ち車両5に生じた減速度(後方への加速度)が閾値以上と判定された場合(S22:YES)には、S23へと移行する。それに対して、前記S3の判定処理において条件を満たさない、即ち車両5に生じた減速度(後方への加速度)が閾値未満であると判定された場合(S22:NO)には、S24へと移行する。
【0079】
S23においてCPU51は、“マイクロフォン42に入力された音の音圧に基づいて選択される映像時間”と、“車両に生じた減速度に基づいて選択される映像時間”の内、長い方をサーバ装置3へと送信する映像時間(映像の長さ)として設定する。
【0080】
ここで、“マイクロフォン42に入力された音の音圧に基づいて選択される映像時間”は、図13に示すように前記S2の判定対象となった特定周波数帯における最も高い音圧(以下、最大音圧という)の値に基づいて90秒、150秒、210秒の内から選択される。基本的に最大音圧の値が大きい程、短い映像時間が選択され、例えば最大音圧が閾値以上x1未満であれば210秒が選択される。最大音圧がx1以上x2未満であれば150秒が選択される。最大音圧がx2以上であれば90秒が選択される。ここで、最大音圧の値は、音の発生源となるイベントの発生位置から車両5までの距離を示唆するものであり、最大音圧によってイベントの発生位置から車両5までの距離について推定できる。そして、最大音圧の値が大きければ、イベントの発生位置から車両5までの距離が短いと予測されるので、サーバ装置3へ送信する映像時間を短くしたとしても送信する映像情報にイベントの内容を撮像した映像情報を含めることができる。一方で、最大音圧の値が小さい場合には、イベントの発生位置から車両5までの距離が遠いと予測されるので、サーバ装置3へ送信する映像時間を長くしなければ送信する映像情報にイベントの内容を撮像した映像情報を含めることができない。従って、本実施形態では図13に示すように最大音圧の値が大きい程、短い映像時間を選択する。
【0081】
一方で、“車両に生じた減速度に基づいて選択される映像時間”は、図14に示すように前記S3の判定対象となった車両の減速度の値に基づいて90秒、150秒、210秒の内から選択される。基本的に減速度の値が大きい程、短い映像時間が選択され、例えば減速度が閾値以上x3未満であれば210秒が選択される。減速度がx3以上x4未満であれば150秒が選択される。減速度がx4以上であれば90秒が選択される。ここで、減速度は、減速の要因となるイベントの発生位置から車両5までの距離を示唆するものであり、減速度によってイベントの発生位置から車両5までの距離について推定できる。そして、減速度が大きければ、イベントの発生位置から車両5までの距離が短いと予測されるので、サーバ装置3へ送信する映像時間を短くしたとしても送信する映像情報にイベントの内容を撮像した映像情報を含めることができる。一方で、減速度が小さい場合には、イベントの発生位置から車両5までの距離が遠いと予測されるので、サーバ装置3へ送信する映像時間を長くしなければ送信する映像情報にイベントの内容を撮像した映像情報を含めることができない。従って、本実施形態では図14に示すように減速度の値が大きい程、短い映像時間を選択する。
【0082】
一方、S24においてCPU51は、“マイクロフォン42に入力された音の音圧に基づいて選択される映像時間(図13参照)”を、サーバ装置3へと送信する映像時間(映像の長さ)として設定する。その後、S7へと移行する。
【0083】
また、S25においてCPU51は、前記S3の判定処理において条件を満たしたか否か、即ち車両5に生じた減速度(後方への加速度)が閾値以上か否かを判定する。
【0084】
そして、前記S3の判定処理において条件を満たした、即ち車両5に生じた減速度(後方への加速度)が閾値以上と判定された場合(S25:YES)には、S26へと移行する。それに対して、前記S3の判定処理において条件を満たさない、即ち車両5に生じた減速度(後方への加速度)が閾値未満であると判定された場合(S25:NO)には、S27へと移行する。
【0085】
S26においてCPU51は、“車両に生じた減速度に基づいて選択される映像時間(図14参照)”を、サーバ装置3へと送信する映像時間(映像の長さ)として設定する。その後、S7へと移行する。
【0086】
一方、S27においてCPU51は、前記S4の判定処理において条件を満たしたか否か、即ち自車両から後方車両までの距離が閾値未満の状態が現時点まで一定時間以上継続しているか否かを判定する。
【0087】
そして、前記S4の判定処理において条件を満たした、即ち自車両から後方車両までの距離が閾値未満の状態が現時点まで一定時間以上継続していると判定された場合(S27:YES)には、S28へと移行する。それに対して、前記S4の判定処理において条件を満たさない、即ち自車両から後方車両までの距離が閾値未満の状態が現時点まで一定時間以上継続していないと判定された場合(S27:NO)には、S29へと移行する。
【0088】
S28においてCPU51は、“自車両からあおり運転を行っていると推定される後方車両までの距離に基づいて選択される映像時間”を、サーバ装置3へと送信する映像時間(映像の長さ)として設定する。
【0089】
ここで、“自車両からあおり運転を行っていると推定される後方車両までの距離に基づいて選択される映像時間”は、図15に示すように前記S4において一定時間以上継続していると判定された自車両から後方車両までの距離の平均値或いは最小値(以下、判定距離という)に基づいて90秒、150秒、210秒の内から選択される。基本的に車速の速度が同じであれば判定距離が短い程、長い映像時間が選択される。具体的には判定距離を自車両の速度によって決定される第1距離、第2距離と比較し、判定距離が閾値未満第1距離以上であれば90秒が選択される。また、判定距離が第1距離未満第2距離以上であれば150秒が選択される。また、判定距離が第2距離未満であれば210秒が選択される。尚、第1距離は閾値より小さく、第2距離は第1距離より小さい値とし、例えば車速[km]×1を閾値[m]とすると、車速[km]×0.8を第1距離[m]とし、車速[km]×0.6を第2距離[m]とする。ここで、判定距離はイベントであるあおり運転の発生位置から車両5までの距離に相当する。そして、判定距離が短ければ、あおり運転の発生位置から車両5までの距離が短い、即ちより悪質なあおり運転が行われていると予測されるので、詳細な分析を行うためにサーバ装置3へ送信する映像時間を長くする。一方で判定距離が長かれば、あおり運転の発生位置から車両5までの距離が長い、即ちそれほど悪質性の高いあおり運転は行われていないと予測されるので、サーバ装置3へ送信する映像時間はできるかぎり短くする。従って、本実施形態では図15に示すように車速の速度が同じであれば判定距離が短い程、長い映像時間を選択する。
【0090】
一方、S29においてCPU51は、サーバ装置3へと送信する映像時間(映像の長さ)を標準の時間(例えば210秒)に設定する。その後、S7へと移行する。尚、本実施形態では前記S2~S4で行った判定処理において、少なくとも一以上の判定条件を満たしたと判定された場合(S5:YES)のみに車両の周辺にイベントが発生したと判定し、S6以降の処理を実行しているので基本的にS29の処理が行われることはないが、例えば前記S2~S4で行った判定処理以外の条件(例えばカメラの画像認識)でイベントの発生を判定する場合やイベントの発生有無に関わらずサーバ装置3からの要求に基づいて映像情報を送信する場合については、S29の処理は有効となる。
【0091】
以上詳細に説明した通り、本実施形態に係る車両映像収集システム1、サーバ装置3、ナビゲーション装置7及びサーバ装置3やナビゲーション装置7で実行されるコンピュータプログラムでは、車両5の周辺においてイベントが発生したことを判定した場合に(S2~S5)、イベントの発生位置から車両5までの距離に基づいて車両から収集する映像の長さを設定し(S23、S24、S26、S28)、車両の周辺においてイベントが発生したと判定されたタイミングを含む設定された長さの映像を車両から収集する(S12、S13)ので、車両毎に収集する映像の長さを必要な長さに設定でき、発生したイベントの内容を撮像した管理者にとって有用な映像を厳選して車両から収集することが可能となる。その結果、映像の収集に係る通信量を削減することが可能となる。
また、イベントの発生位置から車両5までの距離が短い程、車両5から収集する映像の長さを短く設定する(S23、S24、S26)ので、収集する映像の長さを短くしたとしてもイベントの内容を撮像した映像を含めることができる場合については、収集する映像の長さを短くすることによって映像の収集に係る通信量を削減することが可能となる。
また、車両5は車外において発生した音を入力する為のマイクロフォン42を備え、マイクロフォン42に入力された音の音圧が閾値以上となった場合に車両5の周辺においてイベントが発生したと判定し、マイクロフォン42に入力された音の音圧の大きさに基づいてイベントの発生位置から車両までの距離を推定する(S23、S24)ので、マイクロフォン42を用いてイベントの発生、並びにイベントの発生位置から車両までの距離を推定することが可能となる。
また、車両に生じた減速度を取得し(S1)、車両に閾値以上の減速度が生じた場合にイベントが発生したと判定し、車両に生じた減速度の大きさに基づいてイベントの発生位置から車両までの距離を推定する(S23、S26)ので、車両に生じた減速度を用いてイベントの発生、並びにイベントの発生位置から車両までの距離を推定することが可能となる。
また、車両から後方車両までの距離を取得し(S1)、車両から後方車両までの距離が閾値未満の状態が一定時間以上継続した場合にイベントが発生したと判定し、車両から後方車両までの距離をイベントの発生位置から車両までの距離と推定する(S28)ので、車両から後方車両までの距離を用いて特にイベントとしてあおり運転の発生、並びにあおり運転の発生位置から車両までの距離を推定することが可能となる。
【0092】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
例えば、本実施形態ではプローブ情報を用いるプローブカーシステムを用いて全国を走行する複数の車両から映像情報を収集しているが、プローブカーシステムは必須ではない。例えばイベントの発生を検出した一の車両から映像情報を収集することも可能となる。
【0093】
また、本実施形態では車両側でイベントの発生を検出しているが、サーバ装置3がイベントの発生を検出しても良い。その場合には、例えばサーバ装置3は各車両から各種センサの検出値を現在位置情報とともにプローブ情報として収集し、収集したプローブ情報に基づいてイベントの発生を検出する(S2~S5)ことが可能である。また、各車両から収集したプローブ情報に基づいて、車両毎に車両から収集する映像情報の長さの設定(S6)をサーバ装置3で行うことも可能である。
【0094】
また、イベントの発生をシステム側で自動で登録するのではなく、サーバ装置3の管理者が手動でイベントの登録を行っても良い。例えば事故の情報があった場合に事故の発生した地点と事故の発生した時刻を管理者が端末を使って入力し、入力した情報をイベント登録情報DB14に登録することが可能である。更に、その場合には登録されたイベントの発生位置の周辺に位置する車両に対してサーバ装置3から映像の要求信号を送信することが可能であり、映像の要求を受信した車両を対象としてS1以降の処理を行うようにしても良い。
【0095】
また、本実施形態ではイベントの発生位置から車両5までの距離が短い程、車両5から収集する映像の長さを短く設定している(S23、S24、S26)が、逆にイベントの発生位置から車両5までの距離が短い程、車両5から収集する映像の長さを長く設定しても良い。例えば、イベントの発生位置の近くにいる車両はカメラ4によってイベントの内容をより詳細に撮像できると推定できるので、そのような車両から長い映像を収集することによって、より正確なイベントの分析が可能となる。
【0096】
また、本実施形態では車両5から現在位置や現在時刻を含むプローブ情報の収集と、映像情報の収集は同じ一のサーバ装置で行っているが、車両5から現在位置や現在時刻を含むプローブ情報を収集するサーバ装置と映像情報を収集するサーバ装置とを異なるサーバ装置としても良い。
【符号の説明】
【0097】
1…車両映像収集システム、2…情報管理センタ、3…サーバ装置、4…カメラ、5…車両、7…ナビゲーション装置、11…サーバ制御部、12…プローブ情報DB、13…映像情報DB、14…イベント登録情報DB、33…ナビゲーションECU、39…車速センサ、40…加速度センサ、41…測距センサ、42…マイクロフォン
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