(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154370
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】飲料製造装置
(51)【国際特許分類】
A47J 31/20 20060101AFI20221005BHJP
A47J 31/00 20060101ALI20221005BHJP
A23F 3/16 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
A47J31/20
A47J31/00 201
A23F3/16
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057383
(22)【出願日】2021-03-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】518356545
【氏名又は名称】sPods株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】西村 勉
(72)【発明者】
【氏名】今川 孝仁
(72)【発明者】
【氏名】小川 容司
【テーマコード(参考)】
4B027
4B104
【Fターム(参考)】
4B027FB13
4B027FC02
4B027FC10
4B027FP73
4B027FR03
4B027FR20
4B104AA09
4B104AA30
4B104BA53
4B104BA75
4B104CA10
4B104CA29
4B104DA47
4B104EA25
(57)【要約】
【課題】従来の製法による飲料よりもおいしく、さらに、お湯を用いた高温抽出と同様に短時間で飲料を製造することが可能な、飲料製造装置を提供すること。
【解決手段】茶葉10、水及び氷が少なくとも収容されるボトル2と、前記ボトルと配管4を介して接続されるとともに前記ボトル内の気圧を減圧することが可能な減圧機3と、を有し、制御部34は、前記ボトル内の気圧を所定の気圧まで減圧する減圧ステップと、前記所定の気圧を所定時間保持する減圧保持ステップと、前記所定の気圧を常圧へと大気開放する開放ステップと、該開放ステップの後に常圧の状態を所定時間保持する常圧保持ステップと、から成る減圧サイクルを実行することが可能である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
茶葉、水及び氷が少なくとも収容されるボトルと、
前記ボトルと配管を介して接続されるとともに前記ボトル内の気圧を減圧することが可能な減圧機と、を有し、
前記ボトルは、前記配管が接続されるとともに該ボトルを密閉することが可能な蓋を備え、
前記減圧機は、真空ポンプと、電磁弁と、圧力センサと、該圧力センサの検知結果に基づいて前記真空ポンプと前記電磁弁を制御することが可能な制御部と、を備え、
前記制御部は、前記ボトル内の気圧を所定の気圧まで減圧する減圧ステップと、前記所定の気圧を所定時間保持する減圧保持ステップと、前記所定の気圧を常圧へと大気開放する開放ステップと、該開放ステップの後に常圧の状態を所定時間保持する常圧保持ステップと、から成る減圧サイクルを実行することが可能である
ことを特徴とする飲料製造装置。
【請求項2】
前記制御部は、減圧サイクルの実行回数を選択して設定することが可能な選択設定手段を備え、
前記選択設定手段に対する選択操作に基づいて前記減圧サイクルが選択された実行回数で実行される
請求項1に記載の飲料製造装置。
【請求項3】
前記制御部は、茶葉の種類に応じた制御情報をそれぞれ記憶することが可能な記憶手段と、前記茶葉の種類を選択可能な茶葉選択手段と、を備え、
前記茶葉選択手段で選択された前記茶葉の種類に応じて、前記制御情報に基づく前記減圧サイクルが実行される
請求項1又は2に記載の飲料製造装置。
【請求項4】
前記ボトルは、前記茶葉に超音波を当てることが可能な超音波発生手段を備えている
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の飲料製造装置。
【請求項5】
前記ボトルは、該ボトル内の水温を4℃以下に維持することが可能な冷却手段を備えている
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の飲料製造装置。
【請求項6】
前記減圧保持ステップでは、1分間前記所定の気圧で前記ボトル内の気圧が保持され、前記常圧保持ステップでは、30秒間常圧で前記ボトル内の気圧が保持される
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の飲料製造装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記減圧サイクルを8回実行する制御を行う
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の飲料製造装置。
【請求項8】
前記ボトルは、該ボトルの下部に開閉可能な下蓋を備えている
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の飲料製造装置。
【請求項9】
前記ボトルは、外容器と、該外容器の内部に取り出し可能に収容される内容器とから構成されている
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の飲料製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料を製造することが可能な、飲料製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、お茶やコーヒーなどの飲料を作る場合、茶葉や挽いたコーヒー豆にお湯を注いで温かいお茶やコーヒーを作っていた。また、水を入れた容器に茶葉や挽いたコーヒー豆を入れ、数時間浸して水出しのお茶やコーヒーを作ることも行われていた。加えて、短時間で効率的に飲料成分を抽出する方法として、茶葉や挽いたコーヒー豆を水に浸し、減圧する方法が一部で知られている。
【0003】
例えば、引用文献1には、容器の内部空間に液体である水と、茶葉又はコーヒー豆を入れ、減圧状態と常圧状態とを繰り返してお茶又はコーヒーの成分を抽出し、水出し茶又は水出しコーヒーを作る方法が開示されている。また、引用文献2及び引用文献3には、収容容器内にコーヒー粉末と常温水とを投入し、コーヒー粉末と常温水との混合液を減圧環境下に晒してコーヒー粉末への常温水の浸透を促進させる水出しコーヒーの製造装置が開示されている。
【0004】
さらに、引用文献4には、コーヒー豆(挽いたコーヒー豆)と水を抽出袋体に入れ、抽出袋体内の空気を0mmHg近くまで減圧し、その後、所定時間(6~8秒間)大気開放して水出しコーヒーを作る飲料抽出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6449387号公報
【特許文献2】特許第6207335号公報
【特許文献3】特開平06-078678号公報
【特許文献4】特許第4004657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した従来の抽出方法及び飲料の製造装置においては、減圧抽出によって得られた抽出成分について何ら分析がされておらず、また抽出方法に関しても詳細な検討に基づく抽出方法が確立されていないため、従来から行われていた長時間水に浸して常圧で抽出する水出しの飲料の方が旨さで勝るという状況にあった。
【0007】
そこで、上記した問題に鑑み、本発明は従来の製法による飲料よりもおいしく、さらに、お湯を用いた高温抽出と同様に短時間で飲料を製造することが可能な、飲料製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)茶葉、水及び氷が少なくとも収容されるボトルと、前記ボトルと配管を介して接続されるとともに前記ボトル内の気圧を減圧することが可能な減圧機と、を有し、前記ボトルは、前記配管が接続されるとともに該ボトルを密閉することが可能な蓋を備え、前記減圧機は、真空ポンプと、電磁弁と、圧力センサと、該圧力センサの検知結果に基づいて前記真空ポンプと前記電磁弁を制御することが可能な制御部と、を備え、前記制御部は、前記ボトル内の気圧を所定の気圧まで減圧する減圧ステップと、前記所定の気圧を所定時間保持する減圧保持ステップと、前記所定の気圧を常圧へと大気開放する開放ステップと、該開放ステップの後に常圧の状態を所定時間保持する常圧保持ステップと、から成る減圧サイクルを実行することが可能であることを特徴とする飲料製造装置である。
【0009】
(2)前記制御部は、減圧サイクルの実行回数を選択して設定することが可能な選択設定手段を備え、前記選択設定手段に対する選択操作に基づいて前記減圧サイクルが選択された実行回数で実行される上記(1)に記載の飲料製造装置である。
【0010】
(3)前記制御部は、茶葉の種類に応じた制御情報をそれぞれ記憶することが可能な記憶手段と、前記茶葉の種類を選択可能な茶葉選択手段と、を備え、前記茶葉選択手段で選択された前記茶葉の種類に応じて、前記制御情報に基づく前記減圧サイクルが実行される上記(1)又は(2)に記載の飲料製造装置である。
【0011】
(4)前記ボトルは、前記茶葉に超音波を当てることが可能な超音波発生手段を備えている上記(1)乃至(3)のいずれか1項に記載の飲料製造装置である。
【0012】
(5)前記ボトルは、該ボトル内の水温を4℃以下に維持することが可能な冷却手段を備えている(1)乃至(4)のいずれか1項に記載の飲料製造装置である。
【0013】
(6)前記減圧保持ステップでは、1分間前記所定の気圧で前記ボトル内の気圧が保持され、前記常圧保持ステップでは、30秒間常圧で前記ボトル内の気圧が保持される上記(1)乃至(5)のいずれか1項に記載の飲料製造装置である。
【0014】
(7)前記制御部は、前記減圧サイクルを8回実行する制御を行う上記(1)乃至(6)のいずれか1項に記載の飲料製造装置である。
【0015】
(8)前記ボトルは、該ボトルの下部に開閉可能な下蓋を備えている上記(1)乃至(7)のいずれか1項に記載の飲料製造装置である。
【0016】
(9)前記ボトルは、外容器と、該外容器の内部に取り出し可能に収容される内容器とから構成されている上記(1)乃至(7)のいずれか1項に記載の飲料製造装置である。
【発明の効果】
【0017】
上記(1)に係る発明によれば、ボトル内に茶葉、水及び氷を入れ、ボトル内の気圧を所定の気圧まで減圧する減圧ステップ、所定の気圧を所定時間保持する減圧保持ステップ、所定の気圧を常圧へと大気開放する開放ステップ、該開放ステップの後に常圧の状態を所定時間保持する常圧保持ステップと、から成る減圧サイクルを低温下で実行するので、茶葉の苦味や渋味成分の抽出量を抑制しつつ、より多くの旨味成分を短時間で抽出することが可能となる。
【0018】
加えて、上記(2)に係る発明によれば、減圧サイクルの実行回数を選択して設定することが可能となるので、特に茶葉の種類に応じた最も適した製造方法で水出し茶を製造することが可能となる。
【0019】
加えて、上記(3)に係る発明によれば、茶葉の種類に応じた制御情報をそれぞれ記憶することが可能な記憶手段と、茶葉の種類を選択可能な茶葉選択手段とを備えることで、茶葉の種類に応じて最適な抽出条件が設定可能となり、茶葉本来の旨味を最大限に抽出することが可能となる。
【0020】
加えて、上記(4)に係る発明によれば、茶葉に超音波を当てることが可能な超音波発生手段を備えることにより、茶葉成分の抽出を促進させることが可能となり、より短時間で、カテキン類の抽出量を抑えつつ、テアニンを多く含む水出し茶を作ることができる。
【0021】
加えて、上記(5)に係る発明によれば、ボトル内の水温を4℃以下に維持することが可能な冷却手段を備えることで、ボトル内の水温の上昇を抑え、苦味成分となるカテキン類の抽出を抑制しつつ、旨味成分であるテアニンを効率的に、より多く抽出させることが可能となる。
【0022】
加えて、上記(6)に係る発明によれば、減圧保持ステップを1分間、常圧保持ステップを30秒間として減圧サイクルを実行することで、渋味や苦味を抑えつつ、短時間で旨味のある水出し茶を製造することが可能となる。
【0023】
加えて、上記(7)に係る発明によれば、減圧サイクルを8回実行することで、渋味や苦味を抑えつつ、短時間で旨味成分の非常に高い水出し茶を製造することが可能となる。
【0024】
加えて、上記(8)に係る発明によれば、ボトルの下部に開閉可能な下蓋を備えることにより、成分の抽出が終了した残った茶葉を、容易に取り出して廃棄することが可能となる。
【0025】
加えて、上記(9)に係る発明によれば、ボトルを、外容器と、当該該外容器の内部に取り出し可能に収容される内容器とから構成したので、水出し茶の取り出しから、残った茶葉の廃棄、ボトルの清掃などの時間的なロスを大幅に削減することが可能となり、あらかじめ準備しておいた水と氷、茶葉を入れた別の内容器を入れ替えることによって短時間で連続して水出し茶を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施形態における飲料製造装置の装置構成を示した図である。
【
図2】本発明の実施形態における減圧抽出方法を説明するための模式図である。
【
図3】本発明の実施形態における減圧抽出方法を説明するタイムチャートの一例である。
【
図4】製造方法別の成分分析結果を示した表である。
【
図5】(a)は製造方法別のテアニンの抽出量を比較したグラフであり、(b)は製造方法別のカテキン類の抽出量を比較したグラフである。
【
図6】製造方法別のカテキン類の抽出量の推移を表したグラフである。
【
図7】製造方法別の味覚センサによる測定結果を示した表である。
【
図8】超音波振動による水の温度変化を示すグラフである。
【
図9】本発明の実施形態におけるボトルの模式断面図であり、(a)は外容器の中に内容器を設置した態様が、(b)は内容器を外容器から取り出した態様が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の飲料製造装置の一実施形態について、図面に基づいて説明する。
図1には、本実施形態における飲料製造装置1の概略装置構成が図示されており、主に、製造される飲料を収容可能なボトル2と、当該ボトル2内を減圧することが可能な減圧機3とが、チューブ等から成る配管4によって接続されている。
【0028】
減圧機3は、少なくとも真空ポンプ31と、電磁弁32と、圧力センサ33と、制御部34と、電源部35とを備えており、圧力センサ33の検知結果に基づいて、真空ポンプと電磁弁を制御することが可能な制御部34の制御プログラムによって、ボトル2内の減圧制御が可能となっている。ボトル2は、減圧下において変形等が生じない容器であり、例えば、透明樹脂、ガラス、陶器、金属などを容器の素材として適宜選択することができる。加えて、ボトル2は密閉可能に構成されており、ボトル上部には開閉可能な蓋21を備え、ボトル下部には開閉可能な下蓋22を備えている。また、蓋21には、ボトル2内と連通するとともに配管4を着脱することができる不図示の接続部が設けられている。
【0029】
また、減圧機3には不図示の表示手段と、操作ボタンなどから成る操作設定手段が設けられており、操作設定手段に対する設定操作に基づいて、後述する減圧サイクルを1回又は複数回実行するように構成されている。
【0030】
(飲料の製造方法)
次に、本実施形態の飲料製造装置1による水出し茶の製造方法について説明する。まず、ボトル2の下蓋22を閉じ、蓋21を開けて当該ボトル2内に所定量の水、氷、茶葉10を投入して蓋21を閉じる。そして、減圧機3の電磁弁32から延びる配管4を、蓋21の接続部に接続する。続いて、減圧機3の電源投入後、不図示の操作設定手段によって後述する減圧サイクル(
図3参照)の実行回数を設定し、不図示の動作開始ボタンを押圧操作することで設定された所定回数の減圧サイクルが実行される。
【0031】
所定回数の減圧サイクルが実行された後、蓋21の接続部から配管4を取り外す。このような一連の動作によってボトル2内に茶葉10の成分を抽出させた水出し茶が製造される。なお、お茶の苦味成分となる「カテキン類」は高温で抽出されやすく、旨味成分である「テアニン」は全ての温度域で抽出される。このような性質から、前述したようにボトル2内に所定量の氷を投入することで水温を低下させ、苦味成分となる「カテキン類」の抽出を抑制しつつ、旨味成分である「テアニン」を効率的に抽出できるようにしている。
【0032】
次に、前述した減圧サイクルについて、
図2及び
図3に基づいて詳細に説明する。減圧サイクルの実行前の段階では、
図2(A)及び
図3中の(A)に示されるように、ボトル2内に所定量の水、氷、茶葉10が投入されており、ボトル2内の気圧は常圧(1atm)となっている。その後、減圧機3の動作開始にともない減圧サイクルの実行が開始される。なお、一般に水は水温が4℃のときに最も重くなり、ボトル2の下方に滞留して、4℃よりも低い水温の水は軽いために上方に滞留する。したがって、、ボトル2内の水温は4℃以下となる。
【0033】
図2(B)及び
図3中の(B)に示されるように、ボトル2内は徐々に減圧され、概ね0.2atm程度まで減圧される。これにより、茶葉10が膨らみ、膨らんだ茶葉10の細胞内に水分を効果的に取り込むことができる。十分に細胞内に水分を取り込むために、所定時間、本実施形態では減圧保持時間として1分間、減圧状態が保持される。
【0034】
所定時間、減圧状態を保持した後、
図2(C)及び
図3中の(C)に示されるように、減圧機3の制御によって減圧状態を解除し、大気開放することでボトル2内の気圧を常圧に戻す。そして所定時間、本実施形態では常圧保持時間として30秒間、常圧状態が保持される。これにより、膨らんだ茶葉10が元に戻り、減圧時に細胞内に取り込んだ水分とともに、茶葉10に含まれる各種成分が抽出される。所定回数の減圧サイクルが実行された後は、
図2(D)に示されるようにボトル2内の茶葉10をプレスし、水出し茶をボトル2から取り出す。
【0035】
なお、水出し茶をボトル2から取り出していくと、ボトル2内の底部には茶葉10と少量の液体が残り、特に茶葉10が含む液体には旨味成分であるテアニンが多く含まれている。残った茶葉10をプレスしながら茶葉10が含む液体を取り出すことによって、旨味の強い液体を最後に取り出すことができる。残った茶葉10は、
図2(E)に示されるように、下蓋22を開けて廃棄する。本実施形態では、ボトル下部に開閉可能な下蓋22を備えているので、容易に残った茶葉10を廃棄することができる。
【0036】
図3には、本実施形態における減圧サイクルのタイムチャートが示されているが、前述したように、減圧サイクルは、制御部34の制御によって、ボトル2内の気圧を所定の気圧まで減圧する減圧ステップ、所定の気圧を所定時間保持する減圧保持ステップ、所定の気圧を常圧へと大気開放する開放ステップ、当該開放ステップの後に常圧の状態を所定時間保持する常圧保持ステップへと遷移するように構成されている。
【0037】
(飲料の成分分析結果)
図4には、本実施形態の飲料製造装置1によって製造された水出し茶の成分分析結果が示されている。すなわち、通常に行われる2分程度のお湯出し(70℃)によって取り出したお茶と、4時間程度茶葉10を水浸して取り出した水出し茶と、本実施形態の飲料製造装置1によって、2~8回の減圧サイクルを実行して取り出したお茶とを、抽出成分ごとに比較したものである。なお、表中に記載されるように、減圧サイクルが2サイクルの場合は約3分、3サイクルの場合は約5分、5サイクルの場合は約8分、8サイクルの場合は約13分が、減圧抽出によって水出し茶を作る際に必要な全体時間となる。
【0038】
図4の表中に示された「テアニン」はアミノ酸の一種であり、旨味のもとになるものである。特に茶葉10に多く含まれるものであり、上級茶葉ほど、より多くのテアニンが含まれている。また、表中の「エピカテキン」、「エピガロカテキン」、「エピガロカテキンガレート」、「エピカテキンガレート」などのカテキン類は、ポリフェノールの一種であり、苦味成分となるものである。
【0039】
図5には、従来製法により取り出した水出し茶と、本実施形態の飲料製造装置1によって8回の減圧サイクル(8サイクル)を実行して取り出した水出し茶との成分比較結果が図示されている。
図5(a)に示されるように、本実施形態の飲料製造装置1によって、約13分という短時間で、4時間かけて従来製法により製造した水出し茶と同等のテアニンを抽出することができる。
【0040】
一方、苦味成分となるカテキン類は、
図5(b)に示されるように、本実施形態の飲料製造装置1によって水出し茶を製造することにより、従来製法による水出し茶の約半分にまで抽出を抑えることができる。
【0041】
また、
図6に示されるように、減圧サイクルの実行回数が多いほど、カテキン類が多く抽出される傾向にあるが、従来のお湯出しによるものや、従来製法による水出し茶と比較して、大幅に苦味成分であるカテキン類の抽出を抑制できることが判る。また、カテキン類の中でも、エステル型カテキンである「エピガロカテキンガレート」は特に苦味や渋味が強い成分であるが、本実施形態の飲料製造装置1によって、これを最も大幅に抑制することが可能となる。
【0042】
図7には、公知の味覚センサによる評価結果が示されている。「渋味刺激」及び「渋味」の各評価指標から、本実施形態の飲料製造装置1を使用することによって、従来製法による水出し茶よりも渋味刺激及び渋味が抑えられていることが判る。さらに、「旨味コク」の評価指標を見ても、本実施形態の飲料製造装置1によって取り出した水出し茶の方が、非常に高い値を示している。
【0043】
前述した分析結果等から、本実施形態の飲料製造装置1によれば、渋味や苦味を抑えつつ、旨味とコクのある水出し茶を非常に短時間で製造することが確認できる。
【0044】
(その他の実施形態)
以上、本発明の飲料製造装置の一実施形態について説明したが、本発明は必ずしも上記したような構成に限定されるものではなく、以下のような種々の変更が可能となっている。
【0045】
例えば、前述した1分間の減圧保持時間や、30秒間の常圧保持時間は任意に設定することが可能であり、茶葉10の状態や品質、種類に応じて、適切な時間を設定することが可能である。具体的には、茶葉10の状態や品質、種類ごとに最適な減圧保持時間や常圧保持時間を調査し、操作設定手段を操作して減圧保持時間や常圧保持時間を設定できるように構成することができる。また別の方法として、制御部34に不図示の茶葉選択手段を設け、当該茶葉選択手段を操作して茶葉10の種類などを入力することによって、茶葉10の種類に適した減圧保持時間や常圧保持時間が設定・制御されるように構成することができる。
【0046】
前述した実施形態では、減圧状態における圧力を概ね0.2atm程度としたが、実証実験の結果、圧力を0.2atm以下にすることで、短時間で、カテキン類の抽出量を抑えつつテアニンを多く含む水出し茶が作られることが確認されている。しかしながら、最も抽出に適した圧力は、茶葉10の状態や品質、種類によって異なるため、予め茶葉10の種類ごとにテストランを実施し、茶葉10の種類等に応じた最適な圧力を求めておくことがより好ましい。
【0047】
また、前述の実施形態では、操作設定手段によって減圧サイクルの実行回数を設定するように構成したが、必ずしもこのような態様に限定されるものではなく、茶葉10の状態や品質、種類を操作設定できるように構成し、制御プログラムによって茶葉10の種類などに適した減圧サイクルの実行回数が設定されるようにしてもよい。このような構成とすることで、どのような茶葉10であっても、誰でも簡単に美味しい水出し茶を作ることが可能となる。
【0048】
また、茶葉10の種類によって、テアニンの含有量や、効率的にテアニンが抽出される最適な水温などが異なる。したがって、減圧サイクルの実行回数や抽出時の水温、各サイクルにおける減圧保持時間、常圧保持時間等は、茶葉10の種類ごとに最適な抽出条件を調査し、その調査結果に基づいて設定されることが好ましい。例えば、制御部34の不図示の記憶手段に、茶葉10の種類に応じた飲料製造装置の制御情報をそれぞれ記憶させ、制御部34の茶葉選択手段に茶葉の種類を選択設定することで、選択された茶葉10に最適な抽出条件で水出し茶を作ることが可能となる。このような構成とすることで、茶葉本来の旨味を最大限に抽出することが可能となる。
【0049】
また、ボトル2に超音波発生手段を取り付け、超音波をボトル2に当てて茶葉成分の抽出を促進させることも可能である。具体的には、ボトル2に超音波振動子を接触させ、キャビテーションという微小気泡の破壊衝撃波を茶葉10に当てることができる。これにより、より短時間で、カテキン類の抽出量を抑えつつ、テアニンを多く含む水出し茶を作ることが可能となる。
【0050】
なお、超音波をボトル2に当てることにより、超音波振動による液体の温度上昇が懸念される。
図8には、200ccの水に超音波を当てて、超音波振動による水の温度変化を調査した結果が示されているが、超音波振動の影響によって、水温が毎分0.78℃上昇し、18分程度超音波振動を当てることで14℃も水温が上昇してしまうことが判る。しかし、本発明の飲料製造装置は前述したように、ボトル2内に所定量の氷を投入しているので、超音波振動による水温の上昇を抑制することが可能となり、カテキン類の抽出量を抑えることができる。
【0051】
また、前述したように、苦味成分となるカテキン類は高温で抽出されやすく、特に超音波をボトル2に当てた場合には、カテキン類が多く抽出されるおそれがある。このような状況に対処するために、ペルチェ式やコンプレッサー式などによる冷却装置及び温度計測手段をボトル2に設け、ボトル2内の水温を低温状態(例えば、4℃以下)に維持することも可能である。これにより、苦味成分となるカテキン類の抽出を抑制しつつ、旨味成分であるテアニンを効率的に、より多く抽出させることが可能となる。
【0052】
また、別実施形態として、
図9に示されるようにボトル2を二重構造とすることが可能である。より詳細に説明すると、前述した実施形態では、水出し茶をボトル2から取り出した後、次の水出し茶の製造を行うためには、ボトル2内に残った茶葉10を廃棄し、さらにボトル2内を洗浄し、再び水と氷、茶葉10を投入する必要がある。そこで、
図9(a)に示されるように、ボトル2を外容器23と内容器24とからなる二重構造とし、
図9(b)に示されるように、外容器23から内容器24を取り出して、抽出後の水出し茶の取り出しや、残った茶葉10を廃棄できるように構成している。
【0053】
したがって、次の水出し茶を製造する際、あらかじめ準備しておいた水と氷、茶葉10を入れた別の内容器24を外容器23内に入れ替え、ただちに次の水出し茶の製造を開始することが可能となる。このような構成により、水出し茶の取り出しから、残った茶葉の廃棄、ボトル2の清掃などの時間的なロスを大幅に削減することが可能となり、内容器24を入れ替えることによって短時間で連続して水出し茶を製造することが可能となる。
【0054】
なお、
図9(a)に示された別実施形態では、蓋21と外容器23との間に密閉用のパッキン211を設けているが、必ずしもこのような態様に限定されるものではない。例えば、蓋21と内容器24との間に密閉用のパッキンを設けてもよいし、その両方にパッキンを設けることも可能である。
【0055】
以上、本発明の飲料製造装置の一実施形態について図面等に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。また、上記実施形態に記載された具体的な材質、寸法形状等は本発明の課題を解決する範囲において変更が可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 飲料製造装置
2 ボトル
3 減圧機
4 配管
10 茶葉
21 蓋
22 下蓋
31 真空ポンプ
32 電磁弁
33 圧力センサ
34 制御部
35 電源部
211 パッキン