(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154380
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 1/27 20220101AFI20221005BHJP
【FI】
H02K1/27 501L
H02K1/27 501H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057398
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】日本電産コパル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】高橋 安信
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622CA01
5H622CA07
5H622PP03
5H622PP18
(57)【要約】 (修正有)
【課題】簡便な構成により回転時に発生する振動を低減することができるモータを提供する。
【解決手段】モータ1は、シャフト11により中心軸を中心として回転可能に軸支されたロータ10と、ロータに取り付けられたバランサ20と、を備える。バランサは、シャフトを囲む環状の保持部材と、保持部材に保持されたバランスウェイトと、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトにより中心軸を中心として回転可能に軸支されたロータと、
前記ロータに取り付けられたバランサと、を備え、
前記バランサは、
前記シャフトを囲む環状の保持部材と、
前記保持部材に保持されたバランスウェイトと、
を有する、モータ。
【請求項2】
前記保持部材は、
軸方向を向き、前記シャフトを囲む環状面を有する底部と、
前記環状面から前記軸方向に突出し、前記シャフトを囲む周壁部と、を有し、
前記バランスウェイトは、前記環状面に保持されている、
請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記ロータは、マグネットを含むロータ本体を有し、
前記ロータ本体の軸方向の両端側には、一対の前記バランサが設けられている、
請求項1または2に記載のモータ。
【請求項4】
前記ロータは、前記シャフトと、
前記シャフトの外周面に固定された筒状の前記マグネットと、を有し、
一対の前記バランサは、前記マグネットの軸方向両側の端部にそれぞれ固定されている、
請求項3に記載のモータ。
【請求項5】
前記バランスウェイトは、硬化性樹脂と前記硬化性樹脂に混入された金属粉とにより構成されている、
請求項1から4のうちいずれか1項に記載のモータ。
【請求項6】
前記保持部材を構成する材料は、非磁性体である、
請求項1から5のうちいずれか1項に記載のモータ。
【請求項7】
スロットレスモータである、請求項1から6のうちいずれか1項に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に示すように、従来、ブラシレスモータに発生するコギングトルクに基づくトルク変動の発生を抑制することができるスロットレス又はコアレスのブラシレスモータが知られている。このブラシレスモータは、ハウジングと、ハウジング内に回転可能に軸支されたシャフトとマグネットとを有するロータと、ハウジング内に設けられロータの周囲に配置されたコアレスコイルとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ブラシレスモータのロータは、回転数が上昇するに従って軸回りのアンバランスさにより振動が発生するため、回転バランスを調整する必要がある。特許文献1に記載された技術によればロータの回転バランスの調整については提案されていなかった。
【0005】
本発明は、簡便な構成により回転時に発生する振動を低減することができるモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様のモータは、シャフトにより中心軸を中心として回転可能に軸支されたロータと、前記ロータに取り付けられたバランサと、を備える。前記バランサは、前記シャフトを囲む環状の保持部材と、前記保持部材に保持されたバランスウェイトと、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、簡便な構成によりモータの振動を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るモータの構成を示す側面側の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
各図には、モータ1の中心軸Lが延びる方向をX軸で示している。X軸と直交する一方向をY軸で示している。X軸及びY軸の両方と直交する方向をZ軸で示している。以下の説明においては、中心軸Lと平行な方向を「軸方向」と呼ぶ場合があり、中心軸Lを中心とする径方向を単に「径方向」と呼ぶ場合があり、中心軸Lを中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ場合がある。
【0010】
図1に示されるように、モータ1は、例えば、スロットレスのブラシレスモータである。モータ1は、例えば、円筒形のハウジング2と、ハウジング2内に設けられたロータ10と、ロータ10に設けられたバランサ20と、ハウジング2内においてロータ10の周囲に設けられたコイルアセンブリ14と、コイルアセンブリ14の周囲に設けられたヨーク40とを備える。
【0011】
ハウジング2は、円筒状の円筒部2Aを有する。円筒部2Aにおいて、ロータ10の中心軸L方向に沿った一端側には、円形の開口を閉塞する円板状の蓋部3が設けられている。円筒部2Aと蓋部3とに囲まれた空間領域は、ハウジング2の内部空間Sである。蓋部3と円筒部2Aとは、例えば、同一の単一部材の一部である。蓋部3の中心には、ベアリングB1を固定するための保持部4が設けられている。
【0012】
保持部4は、蓋部3の中心軸L方向に沿ってハウジング2の外部方向に突出している。保持部4の内部空間S側には、ベアリングB1の外形と略同一に凹んだベアリング収容空間4Sが設けられている。ベアリング収容空間4Sには、ベアリングB1が嵌め込まれている。
【0013】
円筒部2Aにおいて、ロータ10の中心軸L方向に沿った他端側には、円形の開口を閉塞するベアリング保持部材5が取り付けられている。ベアリング保持部材5の内部空間S側の中心部には、ベアリングB2の外形と略同一に凹んだ保持部6が設けられている。保持部6には、ベアリングB2が嵌め込まれている。
【0014】
円筒部2Aの内部空間S側には、内壁に沿って円筒状のヨーク40が嵌め込まれている。ヨーク40の材質は、例えば、鉄である。ヨーク40の内部空間S側には、内壁に沿って円筒状のコイルアセンブリ14が嵌め込まれている。コイルアセンブリ14は、複数のワイヤが平面状に巻回された複数のコイルが周方向に沿って配置されて構成されている。
【0015】
ハウジング2の内部空間Sには、ロータ10が収容されている。ロータ10は、例えば、円柱状のシャフト11と、マグネット12を含むロータ本体10Aを有している。マグネット12は、シャフト11の外周面に固定された筒状であり、シャフト11が通される貫通孔12Hを有する。マグネット12は、例えば、中心軸Lに沿って2分割されている。マグネット12は、一体成形されていてもよい。ロータ10は、シャフト11により中心軸Lを中心として回転可能に軸支されている。
【0016】
シャフト11の一端11A側は、ベアリングB1により回転可能に軸支されている。シャフト11の一端11A側において、ベアリングB1とロータ本体10Aとの間には、複数のワッシャWがシャフト11に挿通され、ギャップが調整されている。シャフト11の他端11B側は、ベアリングB2により回転可能に軸支されている。シャフト11の他端11B側において、ベアリングB2とロータ本体10Aとの間には、複数のワッシャWがシャフト11に挿通され、ギャップが調整される。ロータ10には、一対のバランサ20が取り付けられている。ロータ本体10Aの軸方向の両端側には、一対のバランサ20が設けられている。一対のバランサ20は、マグネット12の軸方向両側の端部にそれぞれ固定されている。
【0017】
図2及び
図3に示されるように、バランサ20は、シャフト11を囲む環状の保持部材21と、保持部材21に保持されたバランスウェイト25とを備える。保持部材21を構成する材料は、例えば、真鍮等の非磁性体である。そのため、モータ1に生じる磁気回路に、保持部材21が影響を与えることがない。保持部材21を構成する材料は、他の非磁性体の金属、樹脂であってもよい。保持部材21は、例えば、マグネット12に対して接着されている。保持部材21は、シャフト11に嵌め込まれて、シャフト11に固定されていてもよい。
【0018】
保持部材21は、中心軸L方向を向きシャフトを囲む環状面22Aを有する底部22と、環状面22Aから軸方向に突出し、シャフト11の周囲を囲む周壁部23と、を有する。環状面22Aは、マグネット12と反対側に面している。周壁部23は、マグネット12から遠ざかる方向に突出している。底部22は、例えば、中心軸L方向に沿った方向に見て円板状である。底部22は、中心軸Lに対して回転バランスが安定していれば多角形等の他の形状であってもよい。周壁部23は、例えば、中心軸L方向に沿った方向に見て円環状である。周壁部23は、中心軸Lに対して回転バランスが安定していれば多角形等の他の形状であってもよい。
【0019】
バランスウェイト25は、底部22の環状面22Aに固定されている。バランスウェイト25は、例えば、エポキシ樹脂等の硬化性樹脂と、硬化性樹脂に混入された金属粉とにより構成されている。バランスウェイト25は、環状面22Aにおいてシャフト11の中心軸Lに対して偏在して固定され、ロータ本体10Aの回転バランスを調整する。バランスウェイト25は、中心軸Lに対するロータ本体10Aの質量分布の不揃いにより生じるアンバランス質量を回転偶力により打ち消す位置に固定される。即ち、バランスウェイト25は、中心軸Lとロータ10の回転中心軸とを一致させる。
【0020】
バランスウェイト25は、例えば、周壁部23の内周面23Aに接して固定されている。バランスウェイト25には、ロータ10の回転時に保持部材21の径方向において外方に向かう遠心力が生じる。ロータ10の回転時において、バランスウェイト25は、環状面22Aとの間の接着力と内周面23Aに加わるバランスウェイト25の遠心力の反力により保持される。
【0021】
周壁部23が設けられていることにより、ロータ10の回転時にバランスウェイト25に遠心力が加わった際に、バランスウェイト25が環状面22Aから剥離することが抑制される。なお、周壁部23が設けられていない場合、ロータ10の回転時においてバランスウェイト25は、環状面22Aとの間の接着力に依存して保持されるため、環状面22Aから剥離する虞がある。
【0022】
バランスウェイト25は、計測されたロータ本体10Aの不釣り合いの種類、ロータ本体10Aの質量の偏心度合いに応じて分量及び塗布される箇所の数が調整される。ロータ本体10Aの回転バランスの調整は、保持部材21の所定位置において必要な質量分のバランスウェイト25を追加して行われる。バランスウェイト25は、硬化前のペースト状の状態において環状面22Aに塗布される。
【0023】
ペースト状のバランスウェイト25は、所定時間経過後に硬化性樹脂が硬化し固形化すると共に、環状面22Aに接着される。バランスウェイト25を用いたバランス調整を行うと、ドリル等を用いてロータ本体10Aの一部を切削して回転バランスの調整を行う等の工程を省略できロータ本体10Aのバランス調整が容易となると共に、切削粉の発生が防止され作業性が向上する。
【0024】
バランスウェイト25は、硬化性樹脂により構成されているため、施工時のペーストの塗布量が過剰である場合に簡便に取り除くことができ、また、硬化後でもカッタ等により容易に切削して質量を調整可能であり、必要であれば剥離して再施工することもできる。また、バランスウェイト25が過少である場合には、簡単に追加することができる。
【0025】
上述したように、モータ1によれば、ロータ本体10Aにバランサ20を有することにより、ロータ本体10Aの回転時に生じる不釣り合いに基づく振動を低減することができる。モータ1によれば、バランスウェイト25は、保持部材21に追加されるものであるので、マグネット12を切削して回転バランスを調整する必要が無くマグネット12の磁気特性に影響を及ぼすことが抑制される、従って、バランサ20によれば、特にスロットレスモータに適用されることで、マグネット12の磁気特性に変化を与えずにロータ10のバランス調整を行うことができる。
【0026】
モータ1によれば、シャフト11に設けられた保持部材21にバランスウェイト25を追加するだけでロータ本体10Aの回転バランスの調整を行うことができる。また、保持部材21によってバランスウェイト25を保持できるため、バランスウェイト25が環状面22Aから剥離することを抑制できる。また、保持部材21がシャフト11を囲む環状であるため、保持部材21がロータ10から剥離しても、保持部材21がシャフト11に径方向に引っ掛かる。そのため、保持部材21がロータ10から外れることを抑制できる。
【0027】
モータ1によれば、保持部材21に周壁部23が設けられていることにより、ロータ本体10Aの回転時にバランスウェイト25に生じる遠心力が周壁部23に支持され、バランスウェイト25が保持部材21の環状面22Aから剥離することがより好適に抑制される。
【0028】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、モータ1は、スロットレスモータ、ブラシレスモータを例示しているが、これに限らずブラシモータであってもよい。モータ1は、スロットレス以外のブラシレスモータであってもよい。バランサ20は、ハウジング2内に設けられているものを例示したが、ハウジング2外に突出したシャフト11に外付けされてもよい。
【0029】
バランサ20は、ロータ10の片側だけに設けられていてもよい。バランサ20には、複数のバランスウェイト25が設けられていてもよい。バランスウェイト25は、硬化性樹脂だけでなく、質量が調整可能であれば他の材料を用いて構成されてもよい。保持部材21は、マグネット12と一体成型されていてもよい。保持部材21は、バランスウェイト25を保持できればどのような形状であってもよい。ロータ10は、ロータコアを有していてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1…モータ、10…ロータ、10A…ロータ本体、11…シャフト、12…マグネット、20…バランサ、21…保持部材、22…底部、22A…環状面、23…周壁部、25…バランスウェイト、L…中心軸