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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154384
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】電動圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/00 20060101AFI20221005BHJP
   H02K 11/33 20160101ALI20221005BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20221005BHJP
【FI】
F04B39/00 106Z
H02K11/33
H02M7/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057403
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】篠原 光毅
(72)【発明者】
【氏名】矢野 順也
(72)【発明者】
【氏名】木下 雄介
(72)【発明者】
【氏名】門間 健司
【テーマコード(参考)】
3H003
5H611
5H770
【Fターム(参考)】
3H003AA01
3H003AB05
3H003AC03
3H003AD01
3H003AD03
3H003BE00
3H003CD01
3H003CF01
5H611AA09
5H611BB01
5H611BB08
5H611TT01
5H770AA21
5H770BA01
5H770DA03
5H770PA22
5H770PA26
5H770PA42
5H770QA06
5H770QA08
5H770QA28
5H770QA31
5H770QA33
(57)【要約】
【課題】各スイッチング素子の絶縁性を確保しつつも、各スイッチング素子から生じる熱を効率良く放熱すること。
【解決手段】3相のスイッチング素子40のうち、両端に位置するスイッチング素子40は、ばね部材57によって、放熱面に向けて押圧されていなくても、ボルト60の締結力によって、ホルダ50を介して放熱面に向けて押し付けられ易い。よって、3相のスイッチング素子40のうち、両端に位置する2相は、ホルダ50のみによって放熱面に向けてそれぞれ押圧される。そして、3相のスイッチング素子40のうち、中央に位置するスイッチング素子40は、ばね部材57によって、放熱面に向けて押圧される。よって、3相のスイッチング素子40のうち、中央に位置する1相は、ホルダ50とばね部材57とによって放熱面に向けて押圧される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を圧縮する圧縮部と、
前記圧縮部を駆動する電動モータと、
前記電動モータを駆動するインバータと、
前記インバータを収容する金属製のハウジングと、を備え、
前記インバータは、スイッチング動作を行う3相のスイッチング素子と、前記3相のスイッチング素子を保持する樹脂製のホルダと、を有し、
前記ハウジングは、前記3相のスイッチング素子と熱的に結合する放熱面を有し、
前記ホルダは、前記スイッチング素子を前記放熱面に向けて押圧する金属製のばね部材を有し、
前記ホルダは、前記ハウジングに固定されている電動圧縮機であって、
前記ホルダは、一対の締結部材によって前記ハウジングに固定されており、
前記3相のスイッチング素子は、前記一対の締結部材に挟まれるよう配置され、
前記3相のスイッチング素子のうち、両端に位置する2相は、前記ホルダのみによって前記放熱面に向けてそれぞれ押圧され、中央に位置する1相は、前記ホルダと前記ばね部材とによって前記放熱面に向けて押圧されることを特徴とする電動圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
電動圧縮機は、流体を圧縮する圧縮部と、圧縮部を駆動する電動モータと、電動モータを駆動するインバータと、を備えている。また、電動圧縮機は、インバータを収容する金属製のハウジングを備えている。インバータは、スイッチング動作を行う3相のスイッチング素子を有している。また、インバータは、3相のスイッチング素子を保持する樹脂製のホルダを有している場合がある。ホルダは、ハウジングに固定されている。そして、例えば特許文献1に開示されているように、ホルダが、金属製のばね部材を有しており、各スイッチング素子が、ばね部材によって、ハウジングの放熱面に向けて押圧されることにより、各スイッチング素子から生じる熱が、放熱面にて効率良く放熱される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-26320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、全てのスイッチング素子を、ばね部材によって、ハウジングの放熱面に向けて押圧する構成では、例えば、1つのばね部材で全てのスイッチング素子を押圧する場合であると、各スイッチング素子同士がばね部材を介して短絡してしまう虞がある。また、各スイッチング素子に対してばね部材を1つずつ配置する場合であっても、各スイッチング素子同士の距離が近いほど、各スイッチング素子同士がばね部材を介して短絡してしまう虞がある。かといって、全てのばね部材を廃止してしまうと、各スイッチング素子をハウジングの放熱面に向けて押圧することができなくなってしまうため、各スイッチング素子から生じる熱を放熱面にて効率良く放熱することができなくなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する電動圧縮機は、流体を圧縮する圧縮部と、前記圧縮部を駆動する電動モータと、前記電動モータを駆動するインバータと、前記インバータを収容する金属製のハウジングと、を備え、前記インバータは、スイッチング動作を行う3相のスイッチング素子と、前記3相のスイッチング素子を保持する樹脂製のホルダと、を有し、前記ハウジングは、前記3相のスイッチング素子と熱的に結合する放熱面を有し、前記ホルダは、前記スイッチング素子を前記放熱面に向けて押圧する金属製のばね部材を有し、前記ホルダは、前記ハウジングに固定されている電動圧縮機であって、前記ホルダは、一対の締結部材によって前記ハウジングに固定されており、前記3相のスイッチング素子は、前記一対の締結部材に挟まれるよう配置され、前記3相のスイッチング素子のうち、両端に位置する2相は、前記ホルダのみによって前記放熱面に向けてそれぞれ押圧され、中央に位置する1相は、前記ホルダと前記ばね部材とによって前記放熱面に向けて押圧される。
【0006】
ここで、3相のスイッチング素子のうち、両端に位置するスイッチング素子は、一対の締結部材のうちの一方に近い位置に配置されていると言える。したがって、3相のスイッチング素子のうち、両端に位置するスイッチング素子は、ばね部材によって、ハウジングの放熱面に向けて押圧されていなくても、締結部材におけるホルダをハウジングに固定するための締結力によって、ホルダを介して放熱面に向けて押し付けられ易い。よって、3相のスイッチング素子のうち、両端に位置する2相は、ホルダのみによって放熱面に向けてそれぞれ押圧され、スイッチング素子から生じる熱を放熱面にて効率良く放熱することができる。
【0007】
一方で、3相のスイッチング素子のうち、中央に位置するスイッチング素子は、一対の締結部材のどちらからも遠い位置に配置されていると言える。したがって、3相のスイッチング素子のうち、中央に位置するスイッチング素子は、締結部材におけるホルダをハウジングに固定するための締結力によって、ホルダを介して放熱面に向けて押し付けられ難くなっている。そこで、3相のスイッチング素子のうち、中央に位置するスイッチング素子のみを、ばね部材によって、放熱面に向けて押圧するようにした。これによれば、3相のスイッチング素子のうち、締結部材におけるホルダをハウジングに固定するための締結力によって、ホルダを介して放熱面に向けて押し付けられ難いスイッチング素子を、ばね部材によって、放熱面に向けて押圧することができる。よって、3相のスイッチング素子のうち、中央に位置する1相は、ホルダとばね部材とによって放熱面に向けて押圧され、スイッチング素子から生じる熱を放熱面にて効率良く放熱することができる。
【0008】
したがって、全てのスイッチング素子を、ばね部材によって、ハウジングの放熱面に向けて押圧する必要が無い。よって、例えば、全てのスイッチング素子を、ばね部材によって、ハウジングの放熱面に向けて押圧する構成の場合に生じ得る各スイッチング素子同士におけるばね部材を介して短絡を回避することができる。以上により、各スイッチング素子の絶縁性を確保しつつも、各スイッチング素子から生じる熱を効率良く放熱することができる。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、各スイッチング素子の絶縁性を確保しつつも、各スイッチング素子から生じる熱を効率良く放熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態における電動圧縮機を一部破断して示す側断面図。
図2】電動圧縮機の一部分を拡大して示す断面図。
図3】電動圧縮機の一部分を拡大して示す断面図。
図4】ホルダ及びばね部材を示す平面図。
図5】各スイッチング素子がホルダによって保持された状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、電動圧縮機を具体化した一実施形態を図1図5にしたがって説明する。本実施形態の電動圧縮機は、例えば、車両空調装置に用いられる。
(電動圧縮機10の全体構成)
図1に示すように、電動圧縮機10は、ハウジング11を備えている。ハウジング11は、吐出ハウジング12と、モータハウジング13と、インバータケース14と、を有している。吐出ハウジング12、モータハウジング13、及びインバータケース14は金属材料製であり、例えば、アルミニウム製である。したがって、ハウジング11は、金属製である。吐出ハウジング12は、筒状である。モータハウジング13は、吐出ハウジング12に連結されている。モータハウジング13は、板状の端壁13aと、端壁13aの外周部から筒状に延びる周壁13bと、を有している。
【0012】
モータハウジング13内には、回転軸15が収容されている。また、モータハウジング13内には、回転軸15の回転によって駆動して流体としての冷媒を圧縮する圧縮部16と、回転軸15を回転させて圧縮部16を駆動する電動モータ17と、が収容されている。圧縮部16及び電動モータ17は、回転軸15の回転軸線が延びる方向である軸線方向に並んで配置されている。電動モータ17は、圧縮部16よりもモータハウジング13の端壁13a側に配置されている。そして、モータハウジング13内における圧縮部16と端壁13aとの間には、電動モータ17を収容するモータ室18が形成されている。
【0013】
圧縮部16は、例えば、モータハウジング13内に固定された図示しない固定スクロールと、固定スクロールに対向配置される図示しない可動スクロールとから構成されるスクロール式である。
【0014】
電動モータ17は、筒状のステータ19と、ステータ19の内側に配置されるロータ20と、を有している。ロータ20は、回転軸15と一体的に回転する。ステータ19は、ロータ20を取り囲んでいる。ロータ20は、回転軸15に止着されたロータコア20aと、ロータコア20aに設けられた図示しない複数の永久磁石と、を有している。ステータ19は、筒状のステータコア19aと、ステータコア19aに巻回されたモータコイル21と、を有している。
【0015】
周壁13bには、吸入口13hが形成されている。吸入口13hは、周壁13bにおける端壁13a側に位置する部分に形成されている。吸入口13hは、モータ室18に連通している。吸入口13hには、外部冷媒回路22の一端が接続されている。吐出ハウジング12には、吐出口12hが形成されている。吐出口12hには、外部冷媒回路22の他端が接続されている。
【0016】
外部冷媒回路22から吸入口13hを介してモータ室18内に吸入された冷媒は、圧縮部16の駆動により圧縮部16で圧縮されて、吐出口12hを介して外部冷媒回路22へ流出する。そして、外部冷媒回路22へ流出した冷媒は、外部冷媒回路22の熱交換器や膨張弁を経て、吸入口13hを介してモータ室18内に還流する。電動圧縮機10及び外部冷媒回路22は、車両空調装置23を構成している。
【0017】
インバータケース14は、モータハウジング13の端壁13aに取り付けられている。インバータケース14内には、インバータ30を収容するインバータ収容室14aが形成されている。したがって、ハウジング11は、インバータ収容室14aを有しており、内部にインバータ30を収容している。圧縮部16、電動モータ17、及びインバータ30は、この順序で、回転軸15の軸線方向に並んで配置されている。
【0018】
図2及び図3に示すように、インバータケース14は、ケース本体24と、蓋部材25と、を有している。ケース本体24は、ケース本体24は、板状のケース端壁24aと、ケース端壁24aの外周部から円筒状に延びるケース周壁24bと、を有している。蓋部材25は、板状である。蓋部材25は、ケース周壁24bの開口を閉塞した状態で、ケース本体24に連結されている。インバータ収容室14aは、ケース本体24及び蓋部材25によって区画されている。
【0019】
(インバータ30の構成)
インバータ30は、電動モータ17を駆動する。インバータ30は、回路基板31を有している。回路基板31は、インバータ収容室14a内に収容されている。また、インバータ30は、3相のスイッチング素子40を有している。3相のスイッチング素子40は、回路基板31に実装されている。各スイッチング素子40は、電動モータ17を駆動するためにスイッチング動作を行う。回路基板31には、U相、V相、及びW相それぞれの上アームを構成するスイッチング素子40と、U相、V相、及びW相それぞれの下アームを構成するスイッチング素子40とが実装されている。したがって、本実施形態において、回路基板31には、6つのスイッチング素子40が実装されている。
【0020】
また、インバータ30は、樹脂製のホルダ50を有している。ホルダ50は、3相のスイッチング素子40を保持する。ホルダ50は、インバータ収容室14a内に収容されている。したがって、ホルダ50は、ハウジング11に収容されている。なお、ホルダ50は、外部からの入力電流に含まれるノイズを低減するフィルタ素子である図示しないコンデンサや、コンデンサと共にフィルタ回路を構成する図示しないコイル等も保持している。
【0021】
(ホルダ50の構成)
ホルダ50は、板状のホルダ本体部51を有している。ホルダ本体部51は、平面視略四角形状である。ホルダ本体部51は、各スイッチング素子40をそれぞれ保持する保持凹部52を有している。したがって、ホルダ本体部51は、保持凹部52を6つ有している。各保持凹部52は、ホルダ本体部51の厚み方向の一方に位置する第1面511に形成されている。
【0022】
各保持凹部52の底面には、リード挿通孔52hがそれぞれ形成されている。各リード挿通孔52hは、ホルダ本体部51を厚み方向に貫通して、ホルダ本体部51の厚み方向の他方に位置する第2面512に開口している。
【0023】
図4及び図5に示すように、ホルダ本体部51の第1面511を平面視したときに、ホルダ本体部51の厚み方向に対して直交する方向を第1方向X1とする。また、ホルダ本体部51の第1面511を平面視したときに、ホルダ本体部51の厚み方向に対して直交し、且つ第1方向X1に対しても直交する方向を第2方向Y1とする。
【0024】
6つの保持凹部52のうちの3つは、ホルダ本体部51の第1面511における第2方向Y1の一方寄りで、第1方向X1に並んで配置されている。また、6つの保持凹部52のうちの残りの3つは、ホルダ本体部51の第1面511における第2方向Y1の他方寄りで、第1方向X1に並んで配置されている。
【0025】
なお、以下の説明では、6つの保持凹部52のうち、ホルダ本体部51の第1面511における第2方向Y1の一方寄りで、第1方向X1に並んで配置されている3つの保持凹部52をそれぞれ「第1保持凹部53a、第2保持凹部53b、及び第3保持凹部53c」と記載する場合もある。第1保持凹部53a、第2保持凹部53b、及び第3保持凹部53cは、第1方向X1においてこの順で配列されている。したがって、第2保持凹部53bは、第1方向X1において、第1保持凹部53a、第2保持凹部53b、及び第3保持凹部53cのうち、中央に配置された保持凹部52である。
【0026】
また、以下の説明において、6つの保持凹部52のうち、ホルダ本体部51の第1面511における第2方向Y1の他方寄りで、第1方向X1に並んで配置されている3つの保持凹部52をそれぞれ「第1保持凹部54a、第2保持凹部54b、及び第3保持凹部54c」と記載する場合もある。第1保持凹部54a、第2保持凹部54b、及び第3保持凹部54cは、第1方向X1においてこの順で配列されている。したがって、第2保持凹部54bは、第1方向X1において、第1保持凹部54a、第2保持凹部54b、及び第3保持凹部54cのうち、中央に配置された保持凹部52である。
【0027】
ホルダ本体部51の四隅には、ボルト挿通孔55がそれぞれ形成されている。4つのボルト挿通孔55のうちの2つのボルト挿通孔55は、第2方向Y1の一方寄りで、第1保持凹部53a、第2保持凹部53b、及び第3保持凹部53cを第1方向X1で挟む位置にそれぞれ配置されている。4つのボルト挿通孔55のうちの残りの2つのボルト挿通孔55は、第2方向Y1の他方寄りで、第1保持凹部54a、第2保持凹部54b、及び第3保持凹部54cを第1方向X1で挟む位置にそれぞれ配置されている。
【0028】
なお、以下の説明では、第1保持凹部53a、第2保持凹部53b、及び第3保持凹部53cを第1方向X1で挟む位置にそれぞれ配置された2つのボルト挿通孔55を「一対のボルト挿通孔55a」と記載する場合もある。また、第1保持凹部54a、第2保持凹部54b、及び第3保持凹部54cを第1方向X1で挟む位置にそれぞれ配置された2つのボルト挿通孔55を「一対のボルト挿通孔55b」と記載する場合もある。
【0029】
第2保持凹部53bは、第1保持凹部53a、第2保持凹部53b、及び第3保持凹部53cのうち、一対のボルト挿通孔55aのそれぞれとの距離の差が最も小さい。また、第2保持凹部54bは、第1保持凹部54a、第2保持凹部54b、及び第3保持凹部54cのうち、一対のボルト挿通孔55bのそれぞれとの距離の差が最も小さい。
【0030】
各第2保持凹部53b,54bの底面には、ばね収容凹部56が形成されている。各ばね収容凹部56には、金属製のばね部材57が収容されている。したがって、ホルダ50は、ばね部材57を有している。各ばね部材57は、板ばねである。各ばね部材57は、各ばね収容凹部56の底面にボルト57aにより取り付けられている。
【0031】
(各スイッチング素子40について)
図2及び図3に示すように、各保持凹部52には、スイッチング素子40がそれぞれ保持されている。各スイッチング素子40は、各スイッチング素子40のリード部40aが、各保持凹部52にそれぞれ形成された各リード挿通孔52hに挿通された状態で、各保持凹部52に保持されている。各リード部40aの先端部は、回路基板31に電気的に接続されている。各リード部40aの先端部は、例えば、回路基板31に半田付けされている。
【0032】
図5に示すように、以下の説明では、第1保持凹部53a、第2保持凹部53b、及び第3保持凹部53cそれぞれに保持される上アームを構成する3つのスイッチング素子40をそれぞれ「第1スイッチング素子41a、第2スイッチング素子41b、及び第3スイッチング素子41c」と記載する場合もある。また、以下の説明では、第1保持凹部54a、第2保持凹部54b、及び第3保持凹部54cそれぞれに保持される下アームを構成する3つのスイッチング素子40をそれぞれ「第1スイッチング素子42a、第2スイッチング素子42b、及び第3スイッチング素子42c」と記載する場合もある。なお、以下の説明では、上アームを構成する3つのスイッチング素子40及び下アームを構成する3つのスイッチング素子40をまとめて「3相のスイッチング素子40」と記載する場合もある。各第2スイッチング素子41b,42bは、各ばね部材57に接触した状態で、各第2保持凹部53b,54bにそれぞれ保持されている。
【0033】
図2に示すように、各ボルト挿通孔55には、円筒状のカラー部材58が圧入されている。各カラー部材58における軸方向の一方の端面は、ホルダ本体部51の第1面511から突出している。各カラー部材58における軸方向の他方の端面は、ホルダ本体部51の第2面512から突出している。各カラー部材58の内側には、締結部材としてのボルト60が挿通可能になっている。
【0034】
ホルダ50は、各カラー部材58がケース本体24のケース端壁24aの内面に接触した状態でケース端壁24aに対して配置されている。そして、回路基板31を貫通するとともに各カラー部材58の内側を通過する各ボルト60が、ケース端壁24aを貫通してモータハウジング13の端壁13aにねじ込まれる。これにより、ホルダ50、回路基板31、及びケース本体24がユニット化された状態で、モータハウジング13の端壁13aに取り付けられている。したがって、ホルダ50は、ボルト60によってハウジング11に固定されている。
【0035】
各スイッチング素子40は、絶縁シート59を介してケース本体24のケース端壁24aの内面に熱的に結合されている。したがって、ケース本体24のケース端壁24aの内面は、3相のスイッチング素子40と熱的に結合する放熱面24cになっている。よって、ハウジング11は、3相のスイッチング素子40と熱的に結合する放熱面24cを有している。図3に示すように、各第2保持凹部53b,54bに保持される各第2スイッチング素子41b,42bは、各ばね部材57と絶縁シート59との間で挟み込まれている。各ばね部材57は、ハウジング11に対して離間した状態でホルダ50に設けられている。
【0036】
図5に示すように、上アームを構成する3相のスイッチング素子40である第1スイッチング素子41a、第2スイッチング素子41b、及び第3スイッチング素子41cは、一対のボルト挿通孔55aの内側を通過する一対のボルト60に挟まれるよう配置されている。第2スイッチング素子41bは、上アームを構成する3相のスイッチング素子40のうち、中央に位置する1相である。第1スイッチング素子41a、第2スイッチング素子41b、及び第3スイッチング素子41cのうち、中央に位置する第2スイッチング素子41bは、一対のボルト60のどちらからも遠い位置に配置されていると言える。
【0037】
第1スイッチング素子41a及び第3スイッチング素子41cは、上アームを構成する3相のスイッチング素子40のうち、両端に位置する2相である。したがって、第1スイッチング素子41aは、第2スイッチング素子41bよりも一対のボルト60のうちの一方に近い位置に配置されていると言える。また、第3スイッチング素子41cは、第2スイッチング素子41bよりも一対のボルト60のうちの他方に近い位置に配置されていると言える。
【0038】
また、下アームを構成する3相のスイッチング素子40である第1スイッチング素子42a、第2スイッチング素子42b、及び第3スイッチング素子42cは、一対のボルト挿通孔55bの内側を通過する一対のボルト60に挟まれるよう配置されている。第2スイッチング素子42bは、下アームを構成する3相のスイッチング素子40のうち、中央に位置する1相である。第1スイッチング素子42a、第2スイッチング素子42b、及び第3スイッチング素子42cのうち、中央に位置する第2スイッチング素子42bは、一対のボルト60のどちらからも遠い位置に配置されていると言える。
【0039】
第1スイッチング素子42a及び第3スイッチング素子42cは、下アームを構成する3相のスイッチング素子40のうち、両端に位置する2相である。したがって、第1スイッチング素子42aは、第2スイッチング素子42bよりも一対のボルト60のうちの一方に近い位置に配置されていると言える。また、第3スイッチング素子42cは、第2スイッチング素子42bよりも一対のボルト60のうちの他方に近い位置に配置されていると言える。
【0040】
そして、各第2スイッチング素子41b,42bは、各ばね部材57によって放熱面24cに向けて押圧されている。したがって、各ばね部材57は、スイッチング素子40を放熱面24cに向けて押圧する。また、各第1スイッチング素子41a,42a及び各第3スイッチング素子41c,42cは、ホルダ50のみによって放熱面24cに向けてそれぞれ押圧されている。
【0041】
(作用)
次に、本実施形態の作用について説明する。
外部電源からの直流電圧が、各スイッチング素子40のスイッチング動作によって交流電圧に変換され、変換された交流電圧が駆動電圧として電動モータ17に供給される。これにより、電動モータ17が駆動し、電動モータ17の駆動に伴う回転軸15の回転によって、圧縮部16が駆動して冷媒が圧縮部16により圧縮される。
【0042】
ところで、ホルダ50には、各ボルト60におけるホルダ50をモータハウジング13の端壁13aに固定するための締結力によって、図2において二点鎖線L1で示すように、ホルダ本体部51における各ボルト60の周囲がモータハウジング13の端壁13aに近づくような反りが発生する。したがって、3相のスイッチング素子40のうち、両端に位置する各第1スイッチング素子41a,42a及び各第3スイッチング素子41c,42cは、ボルト60の締結力によって、ホルダ50を介して放熱面24cに向けて押し付けられている。よって、3相のスイッチング素子40のうち、両端に位置する各第1スイッチング素子41a,42a及び各第3スイッチング素子41c,42cは、ホルダ50のみによって放熱面24cに向けてそれぞれ押圧されている。このため、各第1スイッチング素子41a,42a及び各第3スイッチング素子41c,42cから生じる熱が放熱面24cにて効率良く放熱される。
【0043】
3相のスイッチング素子40のうち、中央に位置する各第2スイッチング素子41b,42bは、ボルト60におけるホルダ50をモータハウジング13の端壁13aに固定するための締結力によって、ホルダ50を介して放熱面24cに向けて押し付けられ難くなっている。そこで、各第2スイッチング素子41b,42bが、各ばね部材57によって、放熱面24cに向けて押圧されている。したがって、ボルト60におけるホルダ50をモータハウジング13の端壁13aに固定するための締結力によって、ホルダ50を介して放熱面24cに向けて押し付けられ難い各第2スイッチング素子41b,42bが、各ばね部材57によって、放熱面24cに向けて押圧される。よって、3相のスイッチング素子40のうち、中央に位置する各第2スイッチング素子41b,42bは、ホルダ50と各ばね部材57とによって放熱面24cに向けて押圧されている。このため、各第2スイッチング素子41b,42bから生じる熱が放熱面24cにて効率良く放熱される。
【0044】
(効果)
上記実施形態では以下の作用効果を得ることができる。
(1)3相のスイッチング素子40のうち、両端に位置する2相は、ホルダ50のみによって放熱面24cに向けてそれぞれ押圧され、中央に位置する1相は、ホルダ50とばね部材57とによって放熱面24cに向けて押圧される。
【0045】
ここで、3相のスイッチング素子40のうち、両端に位置するスイッチング素子40は、一対のボルト60のうちの一方に近い位置に配置されていると言える。したがって、3相のスイッチング素子40のうち、両端に位置するスイッチング素子40は、ばね部材57によって、放熱面24cに向けて押圧されていなくても、ボルト60の締結力によって、ホルダ50を介して放熱面24cに向けて押し付けられ易い。よって、3相のスイッチング素子40のうち、両端に位置する2相は、ホルダ50のみによって放熱面24cに向けてそれぞれ押圧され、スイッチング素子40から生じる熱を放熱面24cにて効率良く放熱することができる。
【0046】
一方で、3相のスイッチング素子40のうち、中央に位置するスイッチング素子40は、一対のボルト60のどちらからも遠い位置に配置されていると言える。したがって、3相のスイッチング素子40のうち、中央に位置するスイッチング素子40は、ボルト60におけるホルダ50をモータハウジング13に固定するための締結力によって、ホルダ50を介して放熱面24cに向けて押し付けられ難くなっている。そこで、3相のスイッチング素子40のうち、中央に位置するスイッチング素子40のみを、ばね部材57によって、放熱面24cに向けて押圧するようにした。これによれば、3相のスイッチング素子40のうち、ボルト60におけるホルダ50をモータハウジング13に固定するための締結力によって、ホルダ50を介して放熱面24cに向けて押し付けられ難いスイッチング素子40を、ばね部材57によって、放熱面24cに向けて押圧することができる。よって、3相のスイッチング素子40のうち、中央に位置する1相は、ホルダ50とばね部材57とによって放熱面24cに向けて押圧され、スイッチング素子40から生じる熱を放熱面にて効率良く放熱することができる。
【0047】
したがって、全てのスイッチング素子40を、ばね部材57によって、放熱面24cに向けて押圧する必要が無い。よって、例えば、全てのスイッチング素子40を、ばね部材57によって、放熱面24cに向けて押圧する構成の場合に生じ得る各スイッチング素子40同士におけるばね部材57を介して短絡を回避することができる。以上により、各スイッチング素子40の絶縁性を確保しつつも、各スイッチング素子40から生じる熱を効率良く放熱することができる。
【0048】
(2)全てのスイッチング素子40を放熱面24cに向けて押圧するために、全てのスイッチング素子40に対して、ばね部材57を1つずつ配置する必要が無いため、部品点数を削減することができる。
【0049】
(変更例)
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0050】
○ 実施形態において、各スイッチング素子40におけるホルダ50に対する並びは特に限定されるものではない。要は、ばね部材57が、3相のスイッチング素子40のうち、中央に位置するスイッチング素子40を放熱面24cに向けて押圧していればよい。
【0051】
○ 実施形態において、ホルダ50をハウジング11に固定するために用いられる一対の締結部材として、例えば、ハウジング11に圧入される圧入ピンを採用してもよい。要は、ホルダ50をハウジング11に固定するために用いられる締結部材は、ボルト60に限らない。
【0052】
○ 実施形態において、例えば、モータハウジング13の端壁13aにカバー部材が取り付けられることにより、モータハウジング13の端壁13a及びカバー部材によって、インバータ収容室14aが区画されている構成であってもよい。この場合、モータハウジング13の端壁13aにおけるインバータ収容室14a側の端面は、3相のスイッチング素子40と熱的に結合する放熱面として機能する。
【0053】
○ 実施形態において、電動圧縮機10は、例えば、インバータ30が、ハウジング11に対して回転軸15の径方向外側に配置されている構成であってもよい。要は、圧縮部16、電動モータ17、及びインバータ30が、この順で、回転軸15の軸線方向に並設されていなくてもよい。
【0054】
○ 実施形態において、圧縮部16は、スクロール式に限らず、例えば、ピストン式やベーン式等であってもよい。
○ 実施形態において、電動圧縮機10は、車両空調装置23を構成していたが、これに限らず、例えば、電動圧縮機10は、燃料電池車に搭載されており、燃料電池に供給される流体としての空気を圧縮部16により圧縮するものであってもよい。
【符号の説明】
【0055】
10…電動圧縮機、11…ハウジング、16…圧縮部、17…電動モータ、24c…放熱面、30…インバータ、40…スイッチング素子、41a,42a…スイッチング素子である第1スイッチング素子、41b,42b…スイッチング素子である第2スイッチング素子、41c,42c…スイッチング素子である第3スイッチング素子、50…ホルダ、57…ばね部材。
図1
図2
図3
図4
図5