(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154423
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】補助冷却装置および身体温冷装置
(51)【国際特許分類】
A61F 7/00 20060101AFI20221005BHJP
F25B 21/02 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
A61F7/00 310J
F25B21/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057455
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 喬之
(72)【発明者】
【氏名】眞砂 秀基
【テーマコード(参考)】
4C099
【Fターム(参考)】
4C099AA02
4C099CA03
4C099GA19
4C099JA02
4C099LA07
4C099NA02
4C099PA04
(57)【要約】
【課題】熱媒体の冷却能力を向上させることができる補助冷却装置および身体温冷装置を提供すること。
【解決手段】実施形態に係る補助冷却装置は、第2熱交換部を備える。第2熱交換部は、利用者に接することで利用者を冷却する熱電素子と、熱電素子の冷却に用いられる熱媒体の放熱を空気との熱交換により行う第1熱交換部とを有する身体温冷装置に対して、熱媒体を輸送するチューブ部材を介して接続される。第2熱交換部は、第1熱交換部の下流側において、第1熱交換部と熱電素子との間に接続され、第1熱交換部から輸送される熱媒体の熱を放熱して熱電素子へ供給する。
【選択図】
図22
【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者に接することで前記利用者を冷却する熱電素子と、前記熱電素子の冷却に用いられる熱媒体の放熱を空気との熱交換により行う第1熱交換部とを有する身体温冷装置に対して、前記熱媒体を輸送するチューブ部材を介して接続される第2熱交換部を備え、
前記第2熱交換部は、
前記第1熱交換部の下流側において、前記第1熱交換部と前記熱電素子との間に接続され、前記第1熱交換部から輸送される前記熱媒体の熱を放熱して前記熱電素子へ供給する、
補助冷却装置。
【請求項2】
前記第2熱交換部は、
前記第1熱交換部から輸送される前記熱媒体の媒体温度を検出する媒体温度センサを有し、前記媒体温度センサによって検出される前記媒体温度に応じた放熱動作を行う
請求項1に記載の補助冷却装置。
【請求項3】
前記第2熱交換部は、
前記媒体温度センサによって所定の閾値未満の前記媒体温度が所定時間以上継続して検出された場合には、放熱動作を停止する
請求項2に記載の補助冷却装置。
【請求項4】
前記第2熱交換部は、
ペルティエ素子を有し、前記ペルティエ素子により前記熱媒体を冷却することで放熱を行う
請求項1~3のいずれか1つに記載の補助冷却装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載の補助冷却装置を備える
身体温冷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補助冷却装置および身体温冷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ペルティエ素子を用いて利用者の頸動脈を流れる血液を冷却または加熱することにより、利用者の体温を調節する身体温冷装置が知られている。この種の身体温冷装置としては、ペルティエ素子を有する温調部と、ペルティエ素子を冷却した水等の熱媒体の放熱を行う熱交換部と、温調部および熱交換部の間でチューブ部材を介して水を循環させるポンプ部と、を備えた装置がある(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-83498号公報
【特許文献2】特開2015-100489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、熱交換部での熱媒体の放熱を十分に行えないおそれがあり、かかる場合、ペルティエ素子の冷却が十分に行えず、人に与える冷感が低下するおそれがあった。このように、従来は、熱媒体の冷却能力を向上させる点でさらなる改善の余地があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、熱媒体の冷却能力を向上させることができる補助冷却装置および身体温冷装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の補助冷却装置は、第2熱交換部を備える。前記第2熱交換部は、利用者に接することで前記利用者を冷却する熱電素子と、前記熱電素子の冷却に用いられる熱媒体の放熱を空気との熱交換により行う第1熱交換部とを有する身体温冷装置に対して、前記熱媒体を輸送するチューブ部材を介して接続される。前記第2熱交換部は、前記第1熱交換部の下流側において、前記第1熱交換部と前記熱電素子との間に接続され、前記第1熱交換部から輸送される前記熱媒体の熱を放熱して前記熱電素子へ供給する。
【発明の効果】
【0007】
本願の開示する補助冷却装置および身体温冷装置の一態様によれば、熱媒体の冷却能力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施例の身体温冷装置を利用者が装着した状態を示す図である。
【
図2】
図2は、首本体部を利用者が装着した状態を示す正面図である。
【
図3】
図3は、首本体部を利用者が装着した状態を示す側面図である。
【
図4】
図4は、首本体部を正面側から示す斜視図である。
【
図5】
図5は、第1プレートの形状を説明するための図である。
【
図8】
図8は、首本体部を正面側から示す斜視図である。
【
図11】
図11は、ヒンジ部材および弾性部材を示す斜視図である。
【
図20】
図20は、補助冷却装置が接続されない状態の身体温冷装置の冷却システムを示す図である。
【
図21】
図21は、実施形態に係る補助冷却装置の接続方法を示す図である。
【
図22】
図22は、実施形態に係る補助冷却装置の機能構成例を示すブロック図である。
【
図23】
図23は、制御部によって実行される処理の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本願の開示する補助冷却装置および身体温冷装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例によって、本願の開示する補助冷却装置および身体温冷装置が限定されるものではない。
【0010】
補助冷却装置は、後述する身体温冷装置に接続され、身体温冷装置を循環する熱媒体を冷却するための装置である。まず、補助冷却装置が接続される身体温冷装置について説明する。
図1は、実施例の身体温冷装置を利用者が装着した状態を示す図である。また、本実施例では、利用者の前方を身体温冷装置1(首本体部2)の正面側とし、利用者の後方を身体温冷装置1(首本体部2)の背面側とする。
【0011】
図1に示すように、身体温冷装置1は、首本体部2と、ケーブル部材3と、熱交換部4と、電源部5とを備える。
【0012】
首本体部2は、利用者の首に装着され、熱交換部4からケーブル部材3を介して供給される熱媒体を利用して利用者の首を冷却または加熱する。なお、首本体部2の詳細な構成については後述する。
【0013】
ケーブル部材3は、例えば、水やオイル等の熱媒体が循環する流路と、首本体部2へ電力を供給する電源コードとが一体成形された部材である。なお、ケーブル部材3の詳細な構成については後述する。
【0014】
熱交換部4は、例えば、ラジエータであり、身体温冷装置の第1プレートを冷却する運転の場合には、熱媒体を冷却するとともに、冷却した熱媒体をケーブル部材3の流路を介して首本体部2へ供給する。具体的には、熱交換部4は、図示しないが、冷却した熱媒体を送るポンプと、熱媒体を冷却するための送風ファンと、空気の吸込み口および吹き出し口とを有する。なお、熱交換部4は、第1熱交換部であり、補助冷却装置が接続されるが、かかる点の詳細については
図20以降で後述する。
【0015】
電源部5は、例えば、充電型バッテリであり、接続コードを介して熱交換部4と接続されることで、熱交換部4へ電力を供給する。また、電源部5は、ケーブル部材3における電源コードと接続されており、電源コードを介して首本体部2へ電力を供給する。なお、熱交換部4および電源部5の詳細な構成については後述する。
【0016】
(首本体部の構成)
図2は、首本体部2を利用者が装着した状態を示す正面図である。
図3は、利用者が首本体部2を装着した状態を示す側面図である。
【0017】
図2および
図3に示すように、首本体部2は、利用者の右側頸部および左側頸部から後頸部にわたって装着されることで、利用者の右側頸部および左側頸部における各頸動脈を流れる血液および後頸部を冷却または加熱する。
【0018】
具体的には、首本体部2は、一対の第1プレート22により利用者の右側頸部および左側頸部における各頸動脈を流れる血液を冷却または加熱し、第2プレート24により利用者の後頸部を冷却または加熱する。
【0019】
図4は、首本体部2を正面側から示す斜視図である。
図4に示すように、首本体部2は、首掛け部材21と、一対の第1プレート22と、一対の第1ペルティエ素子23と、第2プレート24と、第2ペルティエ素子25とを有する。第1ペルティエ素子23は、第1熱電素子の一例であり、第2ペルティエ素子25は、第2熱電素子の一例である。
【0020】
首掛け部材21は、上面視でU字状に湾曲した部材であり、利用者の首回りに沿って配置される。首掛け部材21は、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリカABS(PC+ABS)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)等の樹脂材料によって形成されている。
【0021】
一対の第1プレート22は、例えば、アルミニウム等の金属材料によって形成されている。一対の第1プレート22それぞれは、首掛け部材21の正面側に延びる両端部に配置される。つまり、一対の第1プレート22は、利用者の右側頸部および左側頸部の各頸動脈に対応する(接する)位置に設けられる。
【0022】
一対の第1ペルティエ素子23は、首掛け部材21の正面側に延びる両端部の内部に配置されるとともに、一対の第1プレート22それぞれに接触して設けられる。一対の第1ペルティエ素子23は、一対の第1プレート22の各々を冷却または加熱する。
【0023】
ここで、
図5を用いて、第1プレート22の形状について説明する。
図5は、第1プレート22の形状を説明するための図である。
図5に示すように、第1プレート22は、主面22aと、上側面22bと、下側面22cとを有する。主面22aは、利用者の首に向かい合うとともに、人に接する面であり、利用者の右側頸部および左側頸部の各頸動脈に向かい合う面である。主面22aは、利用者の首に向かい合うため平らな形状を有する。上側面22bは、主面22aの上側に繋がる面である。上側面22bは、主面22aの上側から上方(利用者の頭部側)に行くに従って利用者の首から遠ざかるように、主面22aに対して鈍角に傾いている。また上側面22bは利用者の首に向かって突出するように湾曲する曲面形状を有する。下側面22cは、主面22aの下側に繋がる面である。下側面22cは、主面22aの下側から下方(利用者の肩側)に行くに従って利用者の首から遠ざかるように、主面22aに対して鈍角に傾いている。また下側面22cは利用者の首に向かって突出するように湾曲する曲面形状を有する。また、図示しないが、第1プレート22は、主面22aから主面22aの前側に繋がる前側面22f(
図4参照)を有してもよい。
【0024】
ここで、従来技術において、加熱または冷却プレートが側面を有しない場合には、利用者が首を傾けたときに、樹脂で構成される外装部材(本開示の首掛け部材に相当)に首が当たるため、利用者が冷却感(または温感)を感じ難くなる。一方、本実施例では第1プレート22が主面22aおよび側面(上側面22b、下側面22cおよび前側面22f)を有することで、利用者が首を傾けた場合であっても、首が第1プレート22の側面に当たるため、従来のように側面が無い場合に比べて冷却感(または温感)を向上させることができる。また、上側面22bは主面22aに対して鈍角に傾いているため、利用者が首を少しだけ傾けたときにも首が第1プレート22の側面に当たることができる。従って、首の傾斜に対して第1プレート22の追従性が高くなる。また、上側面22bが湾曲するため、利用者が首を大きく傾けたときでも第1プレート22が利用者の首の動きを妨げずに冷却感(または温感)を向上させることができる。下側面22cも同様である。なお、本実施例の身体温冷装置は上側面22b、下側面22cをいずれも備えているが、いずれか一方の側面だけを備えるようにしてもよい。
【0025】
第2プレート24は、例えば、アルミニウム等の金属材料によって形成されている。第2プレート24は、首掛け部材21の背面側で湾曲した中央部の内側(利用者の首側)に配置される。つまり、第2プレート24は、利用者の後頸部に対応する(接する)位置に設けられる。
【0026】
第2ペルティエ素子25は、首掛け部材21の背面側で湾曲した中央部の内部に配置されるとともに、第2プレート24に接触して設けられる。第2ペルティエ素子25は、第2プレート24を冷却または加熱する。
【0027】
また、第1ペルティエ素子23および第2ペルティエ素子25は、互いに不図示のチューブ部材によって接続されている。具体的には、チューブ部材は、第2ペルティエ素子25から一対の第1ペルティエ素子23それぞれへ熱媒体を送る第1経路と、一対の第1ペルティエ素子23それぞれから第2ペルティエ素子25へ熱媒体を送る第2経路とを有する。
【0028】
また、チューブ部材は、首掛け部材21の内部に配置される。具体的には、チューブ部材における第1経路および第2経路は、首掛け部材21の内部において並べて配置される。つまり、熱媒体が循環するチューブ部材が首掛け部材21にまとめて配置される。
【0029】
このように、チューブ部材が首掛け部材21にまとめて配置されることで、チューブ部材が利用者の体表に直接触れることなく首掛け部材21に接続されるため、チューブ部材の中を流通する熱媒体の熱が利用者に伝わって熱を感じることを抑制することができる。
【0030】
また、一対の第1ペルティエ素子23および第2ペルティエ素子25それぞれには、温度センサとして機能する不図示のサーミスタが設けられる。これにより、一対の第1ペルティエ素子23および第2ペルティエ素子25の温度が異なる場合であっても、それぞれの温度センサの検知結果に基づいて独立して温度制御を行うことができる。このように、一対の第1ペルティエ素子23および第2ペルティエ素子25の温度制御をそれぞれ独立して行うことができるため、一対の第1プレート22および第2プレート24のうちの1つの温度が他の温度に比べて低かく(あるいは高く)なることで温度がバラつくことを抑えることができる。
【0031】
(電源スイッチ)
図6は、首本体部2の背面図である。
図6に示すように、首本体部2は、ケーブル部材3と接続される接続部26と、電源スイッチ27とをさらに備える。接続部26は、首掛け部材21における外側の面のうち、利用者の後頸部に対応した位置に設けられる。具体的には、接続部26は、利用者の後頸部の真後ろに配置される。
【0032】
より具体的には、接続部26は、首本体部2の下端から所定の高さ位置に配置される。所定の高さは、例えば、作業着等の襟付きシャツの襟C(
図3参照)の高さに応じた高さである。これにより、接続部26は、利用者が襟付きシャツを着ていた場合であっても、襟に引っ掛かることを回避できる。
【0033】
電源スイッチ27は、身体温冷装置1の電源をオンおよびオフする押下型スイッチである。電源スイッチ27は、首掛け部材21における外側の面のうち、利用者の後頸部に対応した位置に設けられる。具体的には、電源スイッチ27は、接続部26と並べて配置される。より具体的には、電源スイッチ27は、利用者の首回り方向(以下、左右方向ともいう)に並べて配置される。また、電源スイッチ27は、接続部26を介して引き回される電源ケーブル33に電気的に接続される。電源スイッチ27がオンされると身体温冷装置1が起動する。より具体的には、電源スイッチ27がオンされると、電源ケーブル33を介して電源部5から熱交換部4と首本体部2に電力が供給される。なお電源ケーブル33とは別に、電源スイッチ27の信号を伝達する信号ケーブルを設けても良い。
【0034】
このように、首掛け部材21に電源スイッチ27を配置することで、例えば、電源スイッチ27が熱交換部4や電源部5に配置される場合に比べて衣服等で電源スイッチ27が隠れないため、操作性を向上させることができる。また、電源スイッチ27が接続部26に対して左右方向に並べて配置することで、接続部26と同様に電源スイッチ27が襟で隠れることを回避できる。また、電源スイッチ27が接続部26と並べて近づけることで、電源スイッチ27を首本体部2に設けつつ、接続部26から電源スイッチ27までの電源ケーブル33の配線距離(首本体部2内の配線距離)を短くすることができる。
【0035】
(第1プレートおよび第2プレートの位置関係)
図7は、首本体部2の上面模式図である。
図7に示すように、第1プレート22および第2プレート24は、首掛け部材21よりも利用者の首に近い位置に配置される。換言すれば、首掛け部材21は、第1プレート22および第2プレート24よりも利用者の首から離れた位置に設けられる。
【0036】
これにより、首掛け部材21が利用者の首に触れないため、首掛け部材21に内蔵されたチューブ部材の熱媒体の熱が利用者に伝わり難くなるとともに、第1プレート22および第2プレート24のみが利用者に接するため、冷却感(または温感)を高められる。
【0037】
(第1プレートの高さ)
図8は、首本体部2を正面側から示す斜視図である。
図8に示すように、第1プレート22は、高さhが所定の長さ未満であることが好ましい。具体的には、高さhは、一般的な人の首の縦方向への長さの2/3の長さであり、例えば、40mm未満であることが好ましい。
【0038】
このように、第1プレート22の高さhを所定の長さ未満に抑えることで、第1プレート22が利用者の喉仏や顎下に当たることを回避することができるとともに、首を動かす際の自由度を高めることができる。
【0039】
(首本体部の3分割構成)
図9は、首本体部2の上面図である。
図10は、弾性部材28周辺の拡大図である。
図11は、ヒンジ部材29および弾性部材28を示す斜視図である。
図9に示すように、首本体部2は、首掛け部材21における後方側の後方部材2aと、首掛け部材21における右側および左側の一対の先端部材2bとに分割可能である。
【0040】
後方部材2aは、第2ペルティエ素子25が内蔵されるとともに、外側のうち人体側に第2プレート24が設けられる。一対の先端部材2bは、それぞれに第1ペルティエ素子23が内蔵されるとともに、それぞれの外側のうち人体側に第1プレート22が設けられる。
【0041】
このように、首本体部2が後方部材2aおよび一対の先端部材2bに分割可能とすることで、後方部材2aの長さを変更するだけで首本体部2のサイズを異ならせることができる。また、後方部材2aの変更だけで異なるサイズ展開が可能であるため、量産性を向上させることができる。
【0042】
また、
図9に示すように、一対の第1プレート22および第2プレート24は、利用者の首との当接部が上面視で略三角形となるように配置される。このように、当接部が略三角形の配置となるように首本体部2を設計することで、様々な首の形状に対応することができる。具体的には、利用者の頸動脈と一対の第1プレート22の当接部を結ぶ直線(三角形の底辺)を基準として、利用者の首と第2プレート24の当接部(三角形の頂点)までの距離を変えることで、様々な首の形状に対応することができる。
【0043】
また、
図11に示すように、後方部材2aと、一対の先端部材2bとは、ヒンジ部材29によって連結されることで、先端部材2bが後方部材2aに対して折り曲げ可能となる。具体的には、ヒンジ部材29は、利用者の首回りに沿って湾曲した形状の板状部材であり、延伸方向(首回り方向)の両端に先端部材2bおよび後方部材2aが連結される。また、ヒンジ部材29は、首本体部2が利用者に装着された場合に、ヒンジ部材29の高さ方向が、利用者の肩から首に向かう方向(首が伸びている方向)と並行となるように配置される。そして、ヒンジ部材29は、先端部材2bが、延伸方向(首回り方向)を回転軸として後方部材2aに対して回転しようとすると、ヒンジ部材29が捻じれるように変形する。このように、ヒンジ部材29が延伸方向(首回り方向)を回転軸として捻じれることで、先端部材2bが、後方部材2aに対して柔軟に動くことを可能とする。これにより、利用者の首の動きに追従して先端部材2bが折り曲がるため、利用者の圧迫感の低減およびフィット性の向上を実現することができる。
【0044】
このように、捻じれや曲げなどの変形が可能なヒンジ部材29を用いることで、先端部材2bが首の動きに追従して柔軟に動くことが可能となる。特に先端部材2bが後方部材2aに対して回転するように折り曲がるため、首を曲げた際に先端部材2bから受ける圧力を低減することができる。また、板状のヒンジ部材29により先端部材2bおよび後方部材2aを連結することで、製造時における首掛け部材21の組立を容易に行うことができ、量産性を向上させることができる。
【0045】
また、
図11に示すように、ヒンジ部材29は、弾性部材28によって覆われている。つまり、弾性部材28は、ヒンジ部材29のカバー部として機能する。具体的には、弾性部材28は、ヒンジ部材29のうち、捻じれや曲げを生じる部位(以下、変形部位ともいう)を覆う。また、
図11に示すように、弾性部材28は、ヒンジ部材29の内側(装着時の利用者との間)において、捻じれや曲げを生じる変形部位に対して延伸方向に延伸する部位(以下、延伸部位ともいう)を有する。また、
図10に示すように、弾性部材28は、ヒンジ部材29の捻じれや曲げを生じる変形部位に対して両側の延伸方向に延伸する延伸部位が先端部材2bおよび後方部材2aによって覆われる。これにより、
図10に示すように、弾性部材28のうち、ヒンジ部材29の捻じれや曲げを生じる変形部位に対応する箇所が後方部材2aおよび先端部材2b(右先端部材または左先端部材)の間に設けられる。また、弾性部材28に延伸部位が設けられることにより、捻じれや曲げを生じたヒンジ部材29が元の形状(利用者の首回りに沿って湾曲した形状)に戻ろうとする力を、弾性部材28を介して後方部材2aおよび先端部材2bに伝達することができる。また、弾性部材28は、ヒンジ部材29の内側だけに延伸部位が設けられるため、弾性部材28にヒンジ部材29を挿入する組み立て作業が容易に行える。
【0046】
また、
図10に示すように、弾性部材28は、スリット28aを有する。具体的には、スリット28aは、弾性部材28の外周にわたって設けられる。
【0047】
このように、スリット28aが設けられることで、例えば、先端部材2bが動いた場合に弾性部材28に生じるシワの発生を低減することができる。また、スリット28aにより後方部材2aおよび先端部材2bの連結箇所の段差を目立ちにくくすることができる。また、弾性部材28の外周が先端部材2bおよび後方部材2aの間に設けられていることで、装着時に先端部材2bおよび後方部材2aが直接首に当たることを防ぐことができる。これにより、段差を目立ちにくくするという意匠上の効果だけでなく、硬い部品が首に当たるのを防ぐことができる。また、弾性部材28に延伸部位が設けられることで、捻じれや曲げを生じたヒンジ部材29が元の形状に戻ろうとする力を、弾性部材28と後方部材2aと先端部材2bに伝達することができる。また、弾性部材28の延伸部位がヒンジ部材29の内側だけに設けられるため、弾性部材28にヒンジ部材29を挿入する組み立て作業が容易に行える。
【0048】
(バンド部材)
図12~
図15は、バンド部材を説明するための図である。
図12に示すように、首本体部2は、首掛け部材21に設けられたバンド部材60をさらに備える。具体的には、バンド部材60は、首掛け部材21における先端部材2bの外周部材210に設けられる。
【0049】
より具体的には、バンド部材60は、右側および左側の先端部材2bのいずれか一方に磁石部材61(第1固定部材)で固定される。また、
図13に示すように、バンド部材60は、磁石部材61とは反対側に複数の孔部62(第2固定部材)を有する。
【0050】
バンド部材60は、複数の孔部62が外周部材210に設けられた不図示のピン部材に嵌る。つまり、バンド部材60は、他方の先端部材2bにピン部材で固定されることで、右側および左側の先端部材2bを挟持する。
【0051】
これにより、右側および左側の先端部材2bが所定の距離を維持した状態で固定されるため、首本体部2のフィット性を向上させることができる。このように、バンド部材60により利用者の首の周囲全体を囲むことができるため、首本体部2の意図しない落下を減らすことができる。
【0052】
また、バンド部材60の一方が磁石部材61の磁力によって固定される。従って、首本体部2に利用者が想定しない外力が加わる不測の事態(例えば、第三者から首本体部2を強く引っ張られるような事態)が発生しても、磁石部材61の磁力を超える外力であれば磁石部材61が外れるため、首本体部2によって利用者の首が締まることを防ぐことができる。このようにして、利用者の安全性を高めることができる。
【0053】
また、バンド部材60は、複数の孔部62のうち、ピン部材が挿入される孔部62の位置により右側および左側の先端部材2bの間の距離を調節可能である。つまり、バンド部材60は、複数の孔部62およびピン部材により構成される調節機構を有する。
【0054】
これにより、利用者の首回りの長さに応じた位置の孔部62にピン部材を挿して首本体部2の長さを調整できるため、様々な利用者に対して首本体部2のフィット性を向上させることができる。
【0055】
なお、本実施形態では、第1固定部材が磁石部材61であり、第2固定部材が孔部62である場合を示したが、第1固定部材および第2固定部材ともに、磁石部材61であってもよい。あるいは、第1固定部材および第2固定部材の少なくともいずれか一方が、例えば、接着材等の他の固定部材であってもよい。
【0056】
また、
図14に示すように、バンド部材60は、外周部材210の下部に設けられた段差210aに沿って配置される。具体的には、バンド部材60は、外周部材210の下段となる段差210aに収容されるように配置される。ここで、段差210aは段差を形成する段差面210a1と、この段差面210a1によって囲われた下段面210a2とを有する。
【0057】
本実施例ではバンド部材60の一方が磁石部材61の磁力によって下段面210a2に固定される。上述したように、下段面210a2は段差面210a1で囲われている。これにより、バンド部材60が段差面210a2によって移動が規制されるため、バンド部材60が上側(利用者の顔側)にずれることを抑えることができる。ここでは段差210aがバンド部材60の上側に設けた例を説明したが、第1固定部材が上下に移動することを防止するため、バンド部材60の下側にも段差が設けられていても良い。また、バンド部材60は利用者の首回りの長さに応じた位置で磁石部材61が下段面210a2に磁力で固定されるが、わずかな外力で第1固定部材が首回り方向(以下、左右方向ともいう)に簡単にずれることを防止するため、外周部材210の下段面210a2の表面に突起を設け、第1固定部材との静止摩擦係数が大きくなるようにしても良い。
【0058】
また、
図12に示すように、バンド部材60は、外周部材210の上下方向における中心に対して下側に設けられる。
【0059】
これにより、
図15に示すように、首上部の間隔が首下部の間隔よりも広くなる(いわゆる逆ハの字になる)ため、首上部の可動範囲が広くなるとともに、首を動かした際に先端部材2bが首に接触することを抑制することができる。より具体的には、先端部材2bの上側が広がっていることで、首を動かした際に、首の上側が先端部材2bに接触して圧迫されることを抑えることができる。
【0060】
また、
図12に示すように、バンド部材60は、例えば、光を透過させる透過性を有する。これにより、首本体部2の正面側が透けるため、意匠性を向上させ、まるで首輪を付けているような印象を低減することができる。
【0061】
また、
図13に示すように、バンド部材60は、長手方向に沿って緩やかに曲がる湾曲形状である。これにより、バンド部材60が首本体部2の周囲に沿うように配置されるため、バンド部材60が首本体部2の周囲から飛び出して引っ掛かることを低減することができる。
【0062】
(第1プレートの固定方法)
図16は、第1プレート22の固定方法を示す図である。
図16に示すように、第1プレート22は、外周部材210に固定される。具体的には、第1プレート22は、爪部22eと、凹部22dとを有する。また、外周部材210は、爪部210cと、凹部210bとを有する。
【0063】
第1プレート22の爪部22eは、外周部材210の凹部210bに嵌るとともに、外周部材210の爪部210cが第1プレート22の凹部22dに嵌る。これにより、第1プレート22が外周部材210に固定される。
【0064】
これにより、第1プレート22の製造時における首本体部2の組立の難易度が下がり、量産性を向上させることができる。
【0065】
(ケーブル部材の構成)
図17は、ケーブル部材3の断面図である。
図17に示すように、ケーブル部材3は、チューブ部材31,32と、電源ケーブル33と、断熱部材34とが一体となるように被覆35で覆われるように形成された部材である。ここで断熱部材34は、チューブ部材31,32よりも熱抵抗値の大きい材料であればよい。また被覆35は、シリコンやPPなどの柔軟性がある材料であればよい。
【0066】
チューブ部材31,32は、熱媒体が循環する流路を有する。具体的には、2つのチューブ部材31,32のうち、一方のチューブ部材31が、熱交換部4から首本体部2へ熱媒体を送り、他方のチューブ部材32が、首本体部2から熱交換部4へ熱媒体を送る。
【0067】
電源ケーブル33は、熱交換部4を介して電源部5に接続される。電源ケーブル33は、電源部5から首本体部2へ電力を供給する給電経路となる。電源ケーブル33は少なくとも一対の第1ペルティエ素子23と第2ペルティエ素子25に電力を供給する。第1ペルティエ素子23と第2ペルティエ素子25には、電源ケーブル33の他にグランドラインも接続される。
【0068】
断熱部材34は、チューブ部材31,32の周囲を覆うように配置される。被覆35はチューブ部材31,32と、電源ケーブル33と、断熱部材34とを覆う。ケーブル部材3をこのように構成することで、外部(例えば太陽光線や利用者の周囲の外気など)からチューブ部材31,32に熱が伝達することを遮断する。また、チューブ部材31,32から外部へ熱が伝達することも遮断する。なお、本実施例では、
図17に示すようにチューブ部材31,32は、断熱部材34によって一部が覆われているが、断熱の必要性に応じて断熱部材34により覆う範囲を適宜変更できる。また、
図17に示すようにチューブ部材31,32は、被覆35によって全周が覆われている。また、
図1に示すように、チューブ部材31,32は被覆35によって全長(首本体部2から熱交換部4に亘る全長)が覆われている。しかし、チューブ部材31,32は必ずしも被覆35によって全周、全長が覆われている必要はない。
【0069】
また、
図17に示すように、被覆35とチューブ部材31,32の間に形成される空間に、前記電源ケーブル33が配置される。これにより、被覆35とチューブ部材31,32との間に空間が形成されて、チューブ部材31,32と外部との断熱性を高めることができる。なお、本実施例では、一対の第1ペルティエ素子23、第2ペルティエ素子25、および電源スイッチ27のそれぞれに接続される電源ケーブル33が設けられる。
【0070】
これにより、ケーブル部材3はチューブ部材31,32が受ける太陽光線や外気の影響を低減することができる。また、電源ケーブル33およびチューブ部材31,32を被覆35で覆って一纏めにすることで、意匠性を向上させることができるとともに、電源ケーブル33およびチューブ部材31,32が外部と引っ掛かることを減らすことができる。なお、被覆35は電源ケーブル33およびチューブ部材31,32と一体に成形されても良く、別体に成形されてもよい。
【0071】
(熱交換部および電源部)
図18は、熱交換部4および電源部5の斜視図である。
図19は、熱交換部4および電源部5の正面図である。
図18および
図19に示すように、熱交換部4および電源部5は、利用者の腰部においてそれぞれ独立して装着される。
【0072】
これにより、熱交換部4および電源部5が一体構成となる場合に比べて重量を分散できるため、利用者が装着位置を変えるなどして、装着した際のバランスの調整をすることができる。また、熱交換部4および電源部5が分離(独立)して装着されることで、利用者の体の動きへの追従性を向上させることができる。また、熱交換部4および電源部5が分離(独立)して装着されることで、熱交換部4および電源部5それぞれの人体に対する重量バランスの調整を容易に行うことができる。
【0073】
具体的には、熱交換部4および電源部5は、利用者の腰部において利用者の腰回り方向(以下、左右方向ともいう)に並べて配置される。これにより、熱交換部4および電源部5の全体構成が横長状となるため、腰を曲げた際(座った際)に熱交換部4および電源部5が邪魔になることを抑制できる。
【0074】
また、熱交換部4は、ケーブル部材3との接続部41が筐体40の上面に配置される。これにより、熱交換部4および首本体部2の間を繋ぐケーブル部材3の長さを極力短くすることができるため、身体温冷装置を装着する装着作業時等にケーブル部材3が邪魔になることを抑えることができる。
【0075】
また、熱交換部4は、筐体40の下面に配置された接続部42を有する。また、電源部5は、筐体50の下面に配置された接続部51を有する。熱交換部4の接続部42および電源部5の接続部51が不図示の接続コードによって接続される。これにより、電源部5から熱交換部4へ電力が供給される。なお、熱交換部4は、電源部5から供給される電力によって放熱用のファン(不図示)等を駆動させる。
【0076】
また、熱交換部4は、筐体40の表面に凹凸形状410を有する。これにより、利用者が視認することなく触感により熱交換部4および電源部5を識別することができる。
【0077】
なおケーブル部材3は本実施例に限らず、電源コードとチューブ部材31,32を束ねて、その周りにメッシュチューブ(編組)を被せる構造となっていても良い。
【0078】
次に、
図20~
図23を用いて、身体温冷装置1に接続される補助冷却装置について説明する。まず、
図20を用いて、補助冷却装置が接続されない状態の身体温冷装置1の冷却システムについて説明する。
図20は、補助冷却装置が接続されない状態の身体温冷装置1の冷却システムを示す図である。
【0079】
図20に示す冷却システムでは、まず、不図示のコントローラの制御によって電源部5から第1ペルティエ素子23(あるいは第2ペルティエ素子25)へ電流が供給される。これにより、第1ペルティエ素子23の冷却面23a(あるいは第2ペルティエ素子25の冷却面25a)が冷えることで、プレート(第1プレート22または第2プレート24)を介して冷却面23aに接した人体を冷却できる。
【0080】
また、第1ペルティエ素子23への通電による冷却動作に伴って熱が発生し、発生した熱は第1ペルティエ素子23の加熱面23b(あるいは第2ペルティエ素子25の加熱面25b)から放熱板300へ伝達される。なお、加熱面23bとは、冷却面23aの裏側にある面である。放熱板300は、例えば、チューブ部材31、32の外周を覆うようにして設けられてもよく(つまり、チューブ部材31、32と別体構成)、チューブ部材31、32と一体的に構成され、熱媒体に直接触れる構成であってもよい。このようにして、第1ペルティエ素子23で発生した熱(あるいは人体が吸熱した熱も含む)を熱媒体へ放熱する。すなわち、熱媒体は、第1ペルティエ素子23の冷却に用いられる。
【0081】
つづいて、第1ペルティエ素子23の熱を吸収した熱媒体は、チューブ部材32を通って熱交換部4(以下、第1熱交換部4と記載)の水タンク(熱媒体タンク)420に運ばれる。水タンク420では、空冷型のラジエータ430およびファン440により水タンク420に貯留されている熱媒体の熱を放熱する。つまり、第1熱交換部4は、熱媒体の放熱を空気との熱交換により行う。そして、第1熱交換部4は、放熱後の熱媒体をチューブ部材31を介して首本体部2へ輸送する。
【0082】
図20に示す冷却システムでは、1つのラジエータ430およびファン440による熱媒体の冷却能力に限界があるため、例えば、高温環境下等のような熱媒体の媒体温度が高い環境下では、熱媒体を十分に冷却できないおそれがあるため、熱媒体の冷却能力を向上させる点でさらなる改善の余地があった。
【0083】
そこで、本開示では、第1熱交換部4で放熱された熱媒体をさらに冷却するための補助冷却装置100を身体温冷装置1へ接続することで、熱媒体の冷却能力を向上させる。
【0084】
まず、
図21を用いて、身体温冷装置1への補助冷却装置100の接続方法について説明する。
図21は、実施形態に係る補助冷却装置100の接続方法を示す図である。
【0085】
図21に示すように、補助冷却装置100は、身体温冷装置1に対して着脱可能に構成される。なお、補助冷却装置100は、身体温冷装置1に対して一体的に組み込まれてもよい(つまり、着脱可能に構成されなくてもよい)。
【0086】
具体的には、補助冷却装置100は、第1接続チューブ110と、第2接続チューブ120に接続された第2熱交換部109(
図22参照)を有する。なお、第2熱交換部109の詳細については
図22で後述する。また、第1接続チューブ110および第2接続チューブ120は、補助冷却装置100の装置内で互いに連通している。また、第1接続チューブ110の先端には着脱コネクタ110aが設けられる。
【0087】
補助冷却装置100(第2熱交換部109)を身体温冷装置1に接続する場合、まず、水タンク420の出口とチューブ部材31とを接続する着脱コネクタ420aを取り外す。つづいて、取り外した着脱コネクタ420aを第2接続チューブ120へ取り付ける。つづいて、補助冷却装置100の着脱コネクタ110aを水タンク420の出口へ取り付ける。これにより、
図21の右図に示すように、身体温冷装置1に補助冷却装置100(第2熱交換部109)が接続される。
【0088】
すなわち、第2熱交換部109は、第1熱交換部4の下流側(水タンク420の出口側)において、第1熱交換部4と第1ペルティエ素子23との間に接続される。
【0089】
そして、補助冷却装置100は、第1熱交換部4から輸送される熱媒体の熱を放熱して第1ペルティエ素子23へ供給する。具体的には、補助冷却装置100の第2熱交換部109は、第1熱交換部4の水タンク420で放熱した熱媒体をさらに放熱させて第1ペルティエ素子23へ供給する。これにより、第1熱交換部4で放熱し切れない場合であっても、第2熱交換部109で規定の温度まで放熱(冷却)させることができる。すなわち、実施形態に係る補助冷却装置100によれば、熱媒体の冷却能力を向上させることができる。
【0090】
次に、
図22を用いて、補助冷却装置100の機能構成例について説明する。
図22は、実施形態に係る補助冷却装置100の機能構成例を示すブロック図である。
図22に示すように、補助冷却装置100は、制御部101と、記憶部102と、媒体温度センサ103と、外気温センサ104と、バッテリ105と、電源スイッチ106と、強制スイッチ107と、タイマー108と、第2熱交換部109とを備える。
【0091】
制御部101は、ハードウェアとして、例えばプロセッサにより実現される。プロセッサの一例として、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、MCU(Micro Controller Unit)等が挙げられる。なお、制御部101が行う制御例については後述する。
【0092】
記憶部102は、制御部101の処理に用いられる情報や、制御部101の処理結果の情報等を記憶する。記憶部102は、ハードウェアとして、例えば、メモリにより実現される。メモリの一例として、SDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)等のRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等が挙げられる。
【0093】
媒体温度センサ103は、第1熱交換部4から輸送される熱媒体の温度(以下、媒体温度と記載)を検出する温度センサである。例えば、媒体温度センサ103は、第1接続チューブ110に設けられ、第2熱交換部109による放熱前の媒体温度を検出する。なお、媒体温度センサ103は、第2接続チューブ120に設けられ、第2熱交換部109による放熱後の媒体温度を検出してもよい。媒体温度センサ103は、検出した媒体温度の情報を制御部101へ出力する。
【0094】
外気温センサ104は、補助冷却装置100あるいは第2熱交換部109の周囲の温度(以下、外気温と記載)を検出する。外気温センサ104は、検出した外気温の情報を制御部101へ出力する。
【0095】
バッテリ105は、例えば、リチウムイオンバッテリ等の充電して繰り返し使用可能な2次電池である。バッテリ105は、蓄積した電力を制御部101の駆動電力として供給する。また、制御部101は、バッテリ105から供給された駆動電力が不図示の変圧装置によって変圧(降圧または昇圧)された電力を、媒体温度センサ103と、外気温センサ104と、電源スイッチ106と、強制スイッチ107と、タイマー108と、第2熱交換部109とへ駆動電力として供給する。
【0096】
すなわち、補助冷却装置100は、バッテリ105により自律的に駆動できるように構成される。これにより、身体温冷装置1は、補助冷却装置100へ電力供給を行う必要がない。従って、電源部5の電力をすべて身体温冷装置1の駆動に用いることができるため、身体温冷装置1の駆動時間の低下を回避できる。
【0097】
電源スイッチ106は、利用者から操作を受け付けることで、補助冷却装置100の電源をオンまたはオフするためのスイッチである。電源スイッチ106は、利用者から受け付けた操作に応じて、電源をオンするオン信号、または、電源をオフするオフ信号を制御部101へ出力する。制御部101は、オン信号を受信した場合、媒体温度センサ103と、外気温センサ104と、強制スイッチ107と、タイマー108と、第2熱交換部109と駆動可能な状態に制御する。なお、電源スイッチ106は、例えば、メカニカルスイッチを用いることができる。
【0098】
強制スイッチ107は、利用者から操作を受け付けることで、補助冷却装置100(第2熱交換部109)の冷却動作を強制的にオンするスイッチである。強制スイッチ107は、利用者から受け付けた操作に応じて、強制的に冷却動作を行う強制モードをオンするオン信号、または、強制モードをオフするオフ信号を制御部101へ出力する。なお、強制スイッチ107は、例えば、メカニカルスイッチを用いることができる。
【0099】
タイマー108は、制御部101の制御に従って時間を計測する機器である。タイマー108は、カウントアップ方式であってもよく、あるいは、予め決められた時間(例えば、3分)からカウントダウンする方式であってもよい。
【0100】
第2熱交換部109は、第1熱交換部4から輸送される熱媒体の熱を放熱する。第2熱交換部109は、例えば、熱電素子であるペルティエ素子を有し、バッテリ105から供給される電流によりペルティエ素子を冷却し、冷却されたペルティエ素子により熱媒体を冷却(放熱)する。このように、第2熱交換部109は、ペルティエ素子を用いることで、放熱後の媒体温度を自在に設定できるとともに、外気温未満の温度まで熱媒体を冷却することができる。なお、第2熱交換部109は、ペルティエ素子で構成される場合に限らず、空冷型や水冷型のラジエータで構成されてもよい。
【0101】
次に、制御部101の動作例について説明する。
【0102】
まず、制御部101は、電源スイッチ106からオン信号を受信した場合に、補助冷却装置100の電源をオンする。つまり、補助冷却装置100は、電源スイッチ106からオン信号を受信した場合に、媒体温度センサ103と、外気温センサ104と、強制スイッチ107と、タイマー108と、第2熱交換部109に電力供給を行うことで第2熱交換部109による冷却動作が可能な状態になる。
【0103】
そして、制御部101は、強制スイッチ107からオン信号を受信した場合、第2熱交換部109による冷却動作(放熱動作の一例)を開始する。具体的には、制御部101は、第2熱交換部109のペルティエ素子へ電流を供給することで、熱媒体の冷却を開始する。
【0104】
あるいは、制御部101は、熱媒体の媒体温度に応じた冷却動作(放熱動作の一例)を行ってもよい。具体的には、制御部101は、熱媒体の媒体温度が外気温以上となった場合に、第2熱交換部109による冷却動作を行う。つまり、制御部101は、第1熱交換部4によって外気温未満まで冷却できない場合に、自動で冷却動作を開始する。なお、制御部101は、第1熱交換部4から輸送される熱媒体の媒体温度が外気温未満に戻った場合には、自動で冷却動作を終了する。このように、制御部101は、第1熱交換部4で熱媒体の熱を放熱し切れない場合に限定して第2熱交換部109による冷却動作を行うことで、バッテリ105の消費電力を抑えることができる。
【0105】
また、制御部101は、媒体温度と外気温との温度差に応じて第2熱交換部109のペルティエ素子の設定温度を変更してもよい。なお、設定温度は、利用者によって設定可能である。例えば、制御部101は、温度差が大きい程(媒体温度が高い程)、設定温度を低くしてもよい。すなわち、制御部101は、温度差が大きい程、ペルティエ素子の設定温度を低くすることで、温度差が異なっても冷却後の媒体温度を一定に保つようにする。これにより、第2熱交換部109による冷却後の媒体温度が上記の温度差に応じてばらつくことを低減できる。
【0106】
そして、制御部101は、冷却動作をしている場合に、媒体温度が第1閾値(例えば、25℃)未満となったタイミングで、タイマー108のカウントを開始する。そして、制御部101は、タイマー108の時間が所定値(例えば、3分)を超えたタイミングでの媒体温度が第1閾値未満、且つ、第1閾値よりも低い第2閾値(例えば、20℃)以上の場合には、第2熱交換部109の冷却動作を停止させる(電源スイッチ106はオンのまま維持)。
【0107】
一方、制御部101は、タイマー108の時間が所定値を超えたタイミングでの媒体温度が第2閾値未満の場合には、過冷却の回数を示す過冷却カウントをアップさせ、過冷却カウントが所定値以上の場合には、過冷却によるエラーを検出し電源スイッチ106を強制的にオフする。
【0108】
つまり、第2熱交換部109は、第2閾値未満の媒体温度が所定時間(過冷却カウントに応じた時間)以上継続して検出された場合には、電源スイッチ106が強制的にオフされることで冷却動作を停止する。これにより、熱媒体の過冷却により人体が過度に冷却されることを防ぐことができる。
【0109】
次に、
図23を用いて、実施形態に係る補助冷却装置100の制御部101によって実行される処理の処理手順について説明する。
図23は、制御部101によって実行される処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0110】
図23に示すように、制御部101は、まず、電源スイッチ106からオン信号を受信した場合(ステップS101)、電源をオンする(ステップS102)。なお、
図23に示すように、ステップS102では、冷却動作を自動で行う自動運転モードはオフの状態である。なお、自動運転モードとは、媒体温度センサ103や、外気温センサ104で検出される温度に応じて冷却動作(ペルティエ素子への通電)を自動で行うモードである。
【0111】
つづいて、制御部101は、強制スイッチ107がオンされたか否かを判定する(ステップS103)。制御部101は、強制スイッチ107がオンされた場合(ステップS103:Yes)、自動運転モードをオン(ステップS104)することで、第2熱交換部109による冷却動作を開始する。
【0112】
つづいて、制御部101は、媒体温度が第1閾値以上であるか否かを判定し(ステップS105)、第1閾値以上である場合(ステップS105:Yes)、ステップS105を繰り返し実行する。
【0113】
制御部101は、媒体温度が第1閾値未満である場合(ステップS105:No)、タイマー108のカウントを開始する(ステップS106)。
【0114】
つづいて、制御部101は、タイマーのカウント時間が所定値以内であるか否かを判定し(ステップS107)、所定値以内である場合(ステップS107:Yes)、ステップS107を繰り返し実行する。
【0115】
制御部101は、タイマーの時間が所定値を超えた場合(ステップS107:No)、媒体温度が第2閾値未満であるか否かを判定する(ステップS108)。
【0116】
制御部101は、媒体温度が第2閾値未満である場合(ステップS108:Yes)、過冷却カウントを1アップさせ(ステップS109)、アップ後の過冷却カウントが所定値以上であるか否かを判定する(ステップS110)。ここで第1閾値と第2閾値は、強制スイッチがオンされた場合とそうでない場合とで、自動運転の際に予め定められる閾値と異なる値とされていても良い。
【0117】
制御部101は、過冷却カウントが所定値以上である場合(ステップS110:Yes)、過冷却のエラーを検出し(ステップS111)、電源スイッチ106をオフし(ステップS112)、処理を終了する。なおステップS112で電源スイッチをオフせず、ペルティエ素子への通電を停止してエラー表示をするようにしても良い。
【0118】
一方、ステップS103において、制御部101は、強制スイッチ107がオフである場合(ステップS103:No)、媒体温度が外気温以上であるか否かを判定する(ステップS113)。
【0119】
制御部101は、媒体温度が外気温以上である場合(ステップS113:Yes)、合ステップS104へ移行し、媒体温度が外気温未満である場合(ステップS113:No)、ステップS102へ移行する。
【0120】
また、ステップS108において、制御部101は、媒体温度が第2閾値以上である場合(ステップS108:No)、ステップS102へ移行する。
【0121】
また、ステップS110において、制御部101は、過冷却カウントが所定値未満である場合(ステップS110:No)、ステップS102へ移行する。
【0122】
上述してきたように、実施形態に係る補助冷却装置100は、第2熱交換部109を備える。第2熱交換部109は、利用者に接することで利用者を冷却する熱電素子(第1ペルティエ素子23および/または第2ペルティエ素子25)と、熱電素子の冷却に用いられる熱媒体の放熱を空気との熱交換により行う第1熱交換部4とを有する身体温冷装置1に対して、熱媒体を輸送するチューブ部材31を介して接続される。第2熱交換部109は、第1熱交換部4の下流側において、第1熱交換部4と熱電素子との間に接続され、第1熱交換部4から輸送される熱媒体の熱を放熱して熱電素子へ供給する。これにより、熱媒体の冷却能力を向上させることができる。
【0123】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0124】
1 身体温冷装置
2 首本体部
2a 後方部材
2b 先端部材
3 ケーブル部材
4 熱交換部(第1熱交換部)
5 電源部
5b 先端部材
21 首掛け部材
22 第1プレート
22a 主面
22b 上側面
22c 下側面
22d 凹部
22e 爪部
23 第1ペルティエ素子
24 第2プレート
25 第2ペルティエ素子
26 接続部
27 電源スイッチ
28 弾性部材
28a スリット
29 ヒンジ部材
31、32 チューブ部材
33 電源ケーブル
34 断熱部材
35 被覆
40 筐体
41、42、51 接続部
50 筐体
60 バンド部材
61 磁石部材
62 孔部
100 補助冷却装置
101 制御部
102 記憶部
103 媒体温度センサ
104 外気温センサ
105 バッテリ
106 電源スイッチ
107 強制スイッチ
108 タイマー
109 第2熱交換部
210 外周部材
210a 段差
210b 凹部
210c 爪部