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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154424
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】身体温冷装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 7/00 20060101AFI20221005BHJP
   F25B 21/02 20060101ALI20221005BHJP
   H01L 35/30 20060101ALN20221005BHJP
【FI】
A61F7/00 310J
F25B21/02 F
H01L35/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057456
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 友一
【テーマコード(参考)】
4C099
【Fターム(参考)】
4C099AA02
4C099CA01
4C099GA02
4C099JA02
4C099NA01
4C099PA02
4C099PA04
(57)【要約】
【課題】熱電素子の温度を高精度に検出することができる身体温冷装置を提供すること。
【解決手段】実施形態に係る身体温冷装置は、本体部と、電流センサと、制御部とを備える。本体部は、利用者に接する熱電素子への通電により利用者を冷却する。電流センサは、熱電素子に流れる電流値を検出する。制御部は、電流センサによって検出される電流値に基づいて熱電素子の温度を推定する。
【選択図】図24
【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者に接する熱電素子への通電により前記利用者を冷却する本体部と、
前記熱電素子に流れる電流値を検出する電流センサと、
前記電流センサによって検出される前記電流値に基づいて前記熱電素子の温度を推定する制御部と
を備える身体温冷装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記電流値の変化を検出し、前記電流値が所定の基準値を下回った場合に、前記熱電素子の温度異常を検出する
請求項1に記載の身体温冷装置。
【請求項3】
外気温を検出する外気温センサをさらに備え、
前記制御部は、
前記外気温センサによって検出された前記外気温に基づいて前記熱電素子の設定温度を算出し、前記設定温度に応じた前記基準値を設定する
請求項2に記載の身体温冷装置。
【請求項4】
前記熱電素子における前記利用者との接触面の温度を検出する温度センサをさらに備え、
前記制御部は、
前記接触面の温度が前記設定温度を所定値以上超えた場合に、前記熱電素子の温度異常を検出する
請求項3に記載の身体温冷装置。
【請求項5】
前記電流センサは、
前記熱電素子への過電流を検出するための電流センサを兼ねる
請求項1~4のいずれか1つに記載の身体温冷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体温冷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ペルティエ素子を用いて利用者の頸動脈を流れる血液を冷却または加熱することにより、利用者の体温を調節する身体温冷装置が知られている。この種の身体温冷装置としては、ペルティエ素子を有する温調部と、ペルティエ素子を冷却した水等の熱媒体の放熱を行う熱交換部と、温調部および熱交換部の間でチューブ部材を介して水を循環させるポンプ部と、を備えた装置がある(特許文献1、2)。また、ペルティエ素子の冷却能力が限界を超えることでペルティエ素子の温度が上昇する現象であるオーバヒートを検出するために、ペルティエ素子の冷却面(人体との接触面)に温度センサを設ける場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-83498号公報
【特許文献2】特開2015-100489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、かかる温度センサでは、人体の温度変化によりオーバヒートを誤検出するおそれがあり、ペルティエ素子等の熱電素子の温度を高精度に検出する点で改善の余地があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、熱電素子の温度を高精度に検出することができる身体温冷装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の身体温冷装置は、本体部と、電流センサと、制御部とを備える。前記本体部は、利用者に接する熱電素子への通電により前記利用者を冷却する。前記電流センサは、前記熱電素子に流れる電流値を検出する。前記制御部は、前記電流センサによって検出される前記電流値に基づいて前記熱電素子の温度を推定する。
【発明の効果】
【0007】
本願の開示する身体温冷装置の一態様によれば、熱電素子の温度を高精度に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施例の身体温冷装置を利用者が装着した状態を示す図である。
図2図2は、首本体部を利用者が装着した状態を示す正面図である。
図3図3は、首本体部を利用者が装着した状態を示す側面図である。
図4図4は、首本体部を正面側から示す斜視図である。
図5図5は、第1プレートの形状を説明するための図である。
図6図6は、首本体部の背面図である。
図7図7は、首本体部の上面模式図である。
図8図8は、首本体部を正面側から示す斜視図である。
図9図9は、首本体部の上面図である。
図10図10は、弾性部材周辺の拡大図である。
図11図11は、ヒンジ部材および弾性部材を示す斜視図である。
図12図12は、バンド部材を説明するための図である。
図13図13は、バンド部材を説明するための図である。
図14図14は、バンド部材を説明するための図である。
図15図15は、バンド部材を説明するための図である。
図16図16は、第1プレートの固定方法を示す図である。
図17図17は、ケーブル部材の断面図である。
図18図18は、熱交換部および電源部の斜視図である。
図19図19は、熱交換部および電源部の正面図である。
図20図20は、身体温冷装置の冷却システムを示す図である。
図21図21は、ペルティエ素子の通常時およびオーバヒート時の温度変化を示す図である。
図22図22は、ペルティエ素子の通常時およびオーバヒート時の電流値の変化を示す図である。
図23図23は、実施形態に係る身体温冷装置の配線接続例を示す図である。
図24図24は、実施形態に係るコントローラの機能構成例を示すブロック図である。
図25図25は、制御部によって実行される処理の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本願の開示する身体温冷装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例によって、本願の開示する身体温冷装置が限定されるものではない。
【0010】
図1は、実施例の身体温冷装置を利用者が装着した状態を示す図である。また、本実施例では、利用者の前方を身体温冷装置1(首本体部2)の正面側とし、利用者の後方を身体温冷装置1(首本体部2)の背面側とする。
【0011】
図1に示すように、身体温冷装置1は、首本体部2(本体部の一例)と、ケーブル部材3と、熱交換部4と、電源部5とを備える。
【0012】
首本体部2は、利用者の首に装着され、熱交換部4からケーブル部材3を介して供給される熱媒体を利用して利用者の首を冷却または加熱する。首本体部2は、本体部の一例である。なお、首本体部2の詳細な構成については後述する。
【0013】
ケーブル部材3は、例えば、水やオイル等の熱媒体が循環する流路と、首本体部2へ電力を供給する電源コードとが一体成形された部材である。なお、ケーブル部材3の詳細な構成については後述する。
【0014】
熱交換部4は、例えば、ラジエータであり、身体温冷装置の第1プレートを冷却する運転の場合には、熱媒体を冷却するとともに、冷却した熱媒体をケーブル部材3の流路を介して首本体部2へ供給する。具体的には、熱交換部4は、図示しないが、冷却した熱媒体を送るポンプと、熱媒体を冷却するための送風ファンと、空気の吸込み口および吹き出し口とを有する。
【0015】
電源部5は、例えば、充電型バッテリであり、接続コードを介して熱交換部4と接続されることで、熱交換部4へ電力を供給する。また、電源部5は、ケーブル部材3における電源コードと接続されており、電源コードを介して首本体部2へ電力を供給する。なお、熱交換部4および電源部5の詳細な構成については後述する。
【0016】
(首本体部の構成)
図2は、首本体部2を利用者が装着した状態を示す正面図である。図3は、利用者が首本体部2を装着した状態を示す側面図である。
【0017】
図2および図3に示すように、首本体部2は、利用者の右側頸部および左側頸部から後頸部にわたって装着されることで、利用者の右側頸部および左側頸部における各頸動脈を流れる血液および後頸部を冷却または加熱する。
【0018】
具体的には、首本体部2は、一対の第1プレート22により利用者の右側頸部および左側頸部における各頸動脈を流れる血液を冷却または加熱し、第2プレート24により利用者の後頸部を冷却または加熱する。
【0019】
図4は、首本体部2を正面側から示す斜視図である。図4に示すように、首本体部2は、首掛け部材21と、一対の第1プレート22と、一対の第1ペルティエ素子23と、第2プレート24と、第2ペルティエ素子25とを有する。第1ペルティエ素子23は、第1熱電素子の一例であり、第2ペルティエ素子25は、第2熱電素子の一例である。
【0020】
首掛け部材21は、上面視でU字状に湾曲した部材であり、利用者の首回りに沿って配置される。首掛け部材21は、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリカABS(PC+ABS)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)等の樹脂材料によって形成されている。
【0021】
一対の第1プレート22は、例えば、アルミニウム等の金属材料によって形成されている。一対の第1プレート22それぞれは、首掛け部材21の正面側に延びる両端部に配置される。つまり、一対の第1プレート22は、利用者の右側頸部および左側頸部の各頸動脈に対応する(接する)位置に設けられる。
【0022】
一対の第1ペルティエ素子23は、首掛け部材21の正面側に延びる両端部の内部に配置されるとともに、一対の第1プレート22それぞれに接触して設けられる。一対の第1ペルティエ素子23は、一対の第1プレート22の各々を冷却または加熱する。
【0023】
ここで、図5を用いて、第1プレート22の形状について説明する。図5は、第1プレート22の形状を説明するための図である。図5に示すように、第1プレート22は、主面22aと、上側面22bと、下側面22cとを有する。主面22aは、利用者の首に向かい合うとともに、人に接する面であり、利用者の右側頸部および左側頸部の各頸動脈に向かい合う面である。主面22aは、利用者の首に向かい合うため平らな形状を有する。上側面22bは、主面22aの上側に繋がる面である。上側面22bは、主面22aの上側から上方(利用者の頭部側)に行くに従って利用者の首から遠ざかるように、主面22aに対して鈍角に傾いている。また上側面22bは利用者の首に向かって突出するように湾曲する曲面形状を有する。下側面22cは、主面22aの下側に繋がる面である。下側面22cは、主面22aの下側から下方(利用者の肩側)に行くに従って利用者の首から遠ざかるように、主面22aに対して鈍角に傾いている。また下側面22cは利用者の首に向かって突出するように湾曲する曲面形状を有する。また、図示しないが、第1プレート22は、主面22aから主面22aの前側に繋がる前側面22f(図4参照)を有してもよい。
【0024】
ここで、従来技術において、加熱または冷却プレートが側面を有しない場合には、利用者が首を傾けたときに、樹脂で構成される外装部材(本開示の首掛け部材に相当)に首が当たるため、利用者が冷却感(または温感)を感じ難くなる。一方、本実施例では第1プレート22が主面22aおよび側面(上側面22b、下側面22cおよび前側面22f)を有することで、利用者が首を傾けた場合であっても、首が第1プレート22の側面に当たるため、従来のように側面が無い場合に比べて冷却感(または温感)を向上させることができる。また、上側面22bは主面22aに対して鈍角に傾いているため、利用者が首を少しだけ傾けたときにも首が第1プレート22の側面に当たることができる。従って、首の傾斜に対して第1プレート22の追従性が高くなる。また、上側面22bが湾曲するため、利用者が首を大きく傾けたときでも第1プレート22が利用者の首の動きを妨げずに冷却感(または温感)を向上させることができる。下側面22cも同様である。なお、本実施例の身体温冷装置は上側面22b、下側面22cをいずれも備えているが、いずれか一方の側面だけを備えるようにしてもよい。
【0025】
第2プレート24は、例えば、アルミニウム等の金属材料によって形成されている。第2プレート24は、首掛け部材21の背面側で湾曲した中央部の内側(利用者の首側)に配置される。つまり、第2プレート24は、利用者の後頸部に対応する(接する)位置に設けられる。
【0026】
第2ペルティエ素子25は、首掛け部材21の背面側で湾曲した中央部の内部に配置されるとともに、第2プレート24に接触して設けられる。第2ペルティエ素子25は、第2プレート24を冷却または加熱する。
【0027】
また、第1ペルティエ素子23および第2ペルティエ素子25は、互いに不図示のチューブ部材によって接続されている。具体的には、チューブ部材は、第2ペルティエ素子25から一対の第1ペルティエ素子23それぞれへ熱媒体を送る第1経路と、一対の第1ペルティエ素子23それぞれから第2ペルティエ素子25へ熱媒体を送る第2経路とを有する。
【0028】
また、チューブ部材は、首掛け部材21の内部に配置される。具体的には、チューブ部材における第1経路および第2経路は、首掛け部材21の内部において並べて配置される。つまり、熱媒体が循環するチューブ部材が首掛け部材21にまとめて配置される。
【0029】
このように、チューブ部材が首掛け部材21にまとめて配置されることで、チューブ部材が利用者の体表に直接触れることなく首掛け部材21に接続されるため、チューブ部材の中を流通する熱媒体の熱が利用者に伝わって熱を感じることを抑制することができる。
【0030】
また、一対の第1ペルティエ素子23および第2ペルティエ素子25それぞれには、温度センサとして機能する不図示のサーミスタが設けられる。これにより、一対の第1ペルティエ素子23および第2ペルティエ素子25の温度が異なる場合であっても、それぞれの温度センサの検知結果に基づいて独立して温度制御を行うことができる。このように、一対の第1ペルティエ素子23および第2ペルティエ素子25の温度制御をそれぞれ独立して行うことができるため、一対の第1プレート22および第2プレート24のうちの1つの温度が他の温度に比べて低かく(あるいは高く)なることで温度がバラつくことを抑えることができる。
【0031】
(電源スイッチ)
図6は、首本体部2の背面図である。図6に示すように、首本体部2は、ケーブル部材3と接続される接続部26と、電源スイッチ27とをさらに備える。接続部26は、首掛け部材21における外側の面のうち、利用者の後頸部に対応した位置に設けられる。具体的には、接続部26は、利用者の後頸部の真後ろに配置される。
【0032】
より具体的には、接続部26は、首本体部2の下端から所定の高さ位置に配置される。所定の高さは、例えば、作業着等の襟付きシャツの襟C(図3参照)の高さに応じた高さである。これにより、接続部26は、利用者が襟付きシャツを着ていた場合であっても、襟に引っ掛かることを回避できる。
【0033】
電源スイッチ27は、身体温冷装置1の電源をオンおよびオフする押下型スイッチである。電源スイッチ27は、首掛け部材21における外側の面のうち、利用者の後頸部に対応した位置に設けられる。具体的には、電源スイッチ27は、接続部26と並べて配置される。より具体的には、電源スイッチ27は、利用者の首回り方向(以下、左右方向ともいう)に並べて配置される。また、電源スイッチ27は、接続部26を介して引き回される電源ケーブル33に電気的に接続される。電源スイッチ27がオンされると身体温冷装置1が起動する。より具体的には、電源スイッチ27がオンされると、電源ケーブル33を介して電源部5から熱交換部4と首本体部2に電力が供給される。なお電源ケーブル33とは別に、電源スイッチ27の信号を伝達する信号ケーブルを設けても良い。
【0034】
このように、首掛け部材21に電源スイッチ27を配置することで、例えば、電源スイッチ27が熱交換部4や電源部5に配置される場合に比べて衣服等で電源スイッチ27が隠れないため、操作性を向上させることができる。また、電源スイッチ27が接続部26に対して左右方向に並べて配置することで、接続部26と同様に電源スイッチ27が襟で隠れることを回避できる。また、電源スイッチ27が接続部26と並べて近づけることで、電源スイッチ27を首本体部2に設けつつ、接続部26から電源スイッチ27までの電源ケーブル33の配線距離(首本体部2内の配線距離)を短くすることができる。
【0035】
(第1プレートおよび第2プレートの位置関係)
図7は、首本体部2の上面模式図である。図7に示すように、第1プレート22および第2プレート24は、首掛け部材21よりも利用者の首に近い位置に配置される。換言すれば、首掛け部材21は、第1プレート22および第2プレート24よりも利用者の首から離れた位置に設けられる。
【0036】
これにより、首掛け部材21が利用者の首に触れないため、首掛け部材21に内蔵されたチューブ部材の熱媒体の熱が利用者に伝わり難くなるとともに、第1プレート22および第2プレート24のみが利用者に接するため、冷却感(または温感)を高められる。
【0037】
(第1プレートの高さ)
図8は、首本体部2を正面側から示す斜視図である。図8に示すように、第1プレート22は、高さhが所定の長さ未満であることが好ましい。具体的には、高さhは、一般的な人の首の縦方向への長さの2/3の長さであり、例えば、40mm未満であることが好ましい。
【0038】
このように、第1プレート22の高さhを所定の長さ未満に抑えることで、第1プレート22が利用者の喉仏や顎下に当たることを回避することができるとともに、首を動かす際の自由度を高めることができる。
【0039】
(首本体部の3分割構成)
図9は、首本体部2の上面図である。図10は、弾性部材28周辺の拡大図である。図11は、ヒンジ部材29および弾性部材28を示す斜視図である。図9に示すように、首本体部2は、首掛け部材21における後方側の後方部材2aと、首掛け部材21における右側および左側の一対の先端部材2bとに分割可能である。
【0040】
後方部材2aは、第2ペルティエ素子25が内蔵されるとともに、外側のうち人体側に第2プレート24が設けられる。一対の先端部材2bは、それぞれに第1ペルティエ素子23が内蔵されるとともに、それぞれの外側のうち人体側に第1プレート22が設けられる。
【0041】
このように、首本体部2が後方部材2aおよび一対の先端部材2bに分割可能とすることで、後方部材2aの長さを変更するだけで首本体部2のサイズを異ならせることができる。また、後方部材2aの変更だけで異なるサイズ展開が可能であるため、量産性を向上させることができる。
【0042】
また、図9に示すように、一対の第1プレート22および第2プレート24は、利用者の首との当接部が上面視で略三角形となるように配置される。このように、当接部が略三角形の配置となるように首本体部2を設計することで、様々な首の形状に対応することができる。具体的には、利用者の頸動脈と一対の第1プレート22の当接部を結ぶ直線(三角形の底辺)を基準として、利用者の首と第2プレート24の当接部(三角形の頂点)までの距離を変えることで、様々な首の形状に対応することができる。
【0043】
また、図11に示すように、後方部材2aと、一対の先端部材2bとは、ヒンジ部材29によって連結されることで、先端部材2bが後方部材2aに対して折り曲げ可能となる。具体的には、ヒンジ部材29は、利用者の首回りに沿って湾曲した形状の板状部材であり、延伸方向(首回り方向)の両端に先端部材2bおよび後方部材2aが連結される。また、ヒンジ部材29は、首本体部2が利用者に装着された場合に、ヒンジ部材29の高さ方向が、利用者の肩から首に向かう方向(首が伸びている方向)と並行となるように配置される。そして、ヒンジ部材29は、先端部材2bが、延伸方向(首回り方向)を回転軸として後方部材2aに対して回転しようとすると、ヒンジ部材29が捻じれるように変形する。このように、ヒンジ部材29が延伸方向(首回り方向)を回転軸として捻じれることで、先端部材2bが、後方部材2aに対して柔軟に動くことを可能とする。これにより、利用者の首の動きに追従して先端部材2bが折り曲がるため、利用者の圧迫感の低減およびフィット性の向上を実現することができる。
【0044】
このように、捻じれや曲げなどの変形が可能なヒンジ部材29を用いることで、先端部材2bが首の動きに追従して柔軟に動くことが可能となる。特に先端部材2bが後方部材2aに対して回転するように折り曲がるため、首を曲げた際に先端部材2bから受ける圧力を低減することができる。また、板状のヒンジ部材29により先端部材2bおよび後方部材2aを連結することで、製造時における首掛け部材21の組立を容易に行うことができ、量産性を向上させることができる。
【0045】
また、図11に示すように、ヒンジ部材29は、弾性部材28によって覆われている。つまり、弾性部材28は、ヒンジ部材29のカバー部として機能する。具体的には、弾性部材28は、ヒンジ部材29のうち、捻じれや曲げを生じる部位(以下、変形部位ともいう)を覆う。また、図11に示すように、弾性部材28は、ヒンジ部材29の内側(装着時の利用者との間)において、捻じれや曲げを生じる変形部位に対して延伸方向に延伸する部位(以下、延伸部位ともいう)を有する。また、図10に示すように、弾性部材28は、ヒンジ部材29の捻じれや曲げを生じる変形部位に対して両側の延伸方向に延伸する延伸部位が先端部材2bおよび後方部材2aによって覆われる。これにより、図10に示すように、弾性部材28のうち、ヒンジ部材29の捻じれや曲げを生じる変形部位に対応する箇所が後方部材2aおよび先端部材2b(右先端部材または左先端部材)の間に設けられる。また、弾性部材28に延伸部位が設けられることにより、捻じれや曲げを生じたヒンジ部材29が元の形状(利用者の首回りに沿って湾曲した形状)に戻ろうとする力を、弾性部材28を介して後方部材2aおよび先端部材2bに伝達することができる。また、弾性部材28は、ヒンジ部材29の内側だけに延伸部位が設けられるため、弾性部材28にヒンジ部材29を挿入する組み立て作業が容易に行える。
【0046】
また、図10に示すように、弾性部材28は、スリット28aを有する。具体的には、スリット28aは、弾性部材28の外周にわたって設けられる。
【0047】
このように、スリット28aが設けられることで、例えば、先端部材2bが動いた場合に弾性部材28に生じるシワの発生を低減することができる。また、スリット28aにより後方部材2aおよび先端部材2bの連結箇所の段差を目立ちにくくすることができる。また、弾性部材28の外周が先端部材2bおよび後方部材2aの間に設けられていることで、装着時に先端部材2bおよび後方部材2aが直接首に当たることを防ぐことができる。これにより、段差を目立ちにくくするという意匠上の効果だけでなく、硬い部品が首に当たるのを防ぐことができる。また、弾性部材28に延伸部位が設けられることで、捻じれや曲げを生じたヒンジ部材29が元の形状に戻ろうとする力を、弾性部材28と後方部材2aと先端部材2bに伝達することができる。また、弾性部材28の延伸部位がヒンジ部材29の内側だけに設けられるため、弾性部材28にヒンジ部材29を挿入する組み立て作業が容易に行える。
【0048】
(バンド部材)
図12図15は、バンド部材を説明するための図である。図12に示すように、首本体部2は、首掛け部材21に設けられたバンド部材60をさらに備える。具体的には、バンド部材60は、首掛け部材21における先端部材2bの外周部材210に設けられる。
【0049】
より具体的には、バンド部材60は、右側および左側の先端部材2bのいずれか一方に磁石部材61(第1固定部材)で固定される。また、図13に示すように、バンド部材60は、磁石部材61とは反対側に複数の孔部62(第2固定部材)を有する。
【0050】
バンド部材60は、複数の孔部62が外周部材210に設けられた不図示のピン部材に嵌る。つまり、バンド部材60は、他方の先端部材2bにピン部材で固定されることで、右側および左側の先端部材2bを挟持する。
【0051】
これにより、右側および左側の先端部材2bが所定の距離を維持した状態で固定されるため、首本体部2のフィット性を向上させることができる。このように、バンド部材60により利用者の首の周囲全体を囲むことができるため、首本体部2の意図しない落下を減らすことができる。
【0052】
また、バンド部材60の一方が磁石部材61の磁力によって固定される。従って、首本体部2に利用者が想定しない外力が加わる不測の事態(例えば、第三者から首本体部2を強く引っ張られるような事態)が発生しても、磁石部材61の磁力を超える外力であれば磁石部材61が外れるため、首本体部2によって利用者の首が締まることを防ぐことができる。このようにして、利用者の安全性を高めることができる。
【0053】
また、バンド部材60は、複数の孔部62のうち、ピン部材が挿入される孔部62の位置により右側および左側の先端部材2bの間の距離を調節可能である。つまり、バンド部材60は、複数の孔部62およびピン部材により構成される調節機構を有する。
【0054】
これにより、利用者の首回りの長さに応じた位置の孔部62にピン部材を挿して首本体部2の長さを調整できるため、様々な利用者に対して首本体部2のフィット性を向上させることができる。
【0055】
なお、本実施形態では、第1固定部材が磁石部材61であり、第2固定部材が孔部62である場合を示したが、第1固定部材および第2固定部材ともに、磁石部材61であってもよい。あるいは、第1固定部材および第2固定部材の少なくともいずれか一方が、例えば、接着材等の他の固定部材であってもよい。
【0056】
また、図14に示すように、バンド部材60は、外周部材210の下部に設けられた段差210aに沿って配置される。具体的には、バンド部材60は、外周部材210の下段となる段差210aに収容されるように配置される。ここで、段差210aは段差を形成する段差面210a1と、この段差面210a1によって囲われた下段面210a2とを有する。
【0057】
本実施例ではバンド部材60の一方が磁石部材61の磁力によって下段面210a2に固定される。上述したように、下段面210a2は段差面210a1で囲われている。これにより、バンド部材60が段差面210a2によって移動が規制されるため、バンド部材60が上側(利用者の顔側)にずれることを抑えることができる。ここでは段差210aがバンド部材60の上側に設けた例を説明したが、第1固定部材が上下に移動することを防止するため、バンド部材60の下側にも段差が設けられていても良い。また、バンド部材60は利用者の首回りの長さに応じた位置で磁石部材61が下段面210a2に磁力で固定されるが、わずかな外力で第1固定部材が首回り方向(以下、左右方向ともいう)に簡単にずれることを防止するため、外周部材210の下段面210a2の表面に突起を設け、第1固定部材との静止摩擦係数が大きくなるようにしても良い。
【0058】
また、図12に示すように、バンド部材60は、外周部材210の上下方向における中心に対して下側に設けられる。
【0059】
これにより、図15に示すように、首上部の間隔が首下部の間隔よりも広くなる(いわゆる逆ハの字になる)ため、首上部の可動範囲が広くなるとともに、首を動かした際に先端部材2bが首に接触することを抑制することができる。より具体的には、先端部材2bの上側が広がっていることで、首を動かした際に、首の上側が先端部材2bに接触して圧迫されることを抑えることができる。
【0060】
また、図12に示すように、バンド部材60は、例えば、光を透過させる透過性を有する。これにより、首本体部2の正面側が透けるため、意匠性を向上させ、まるで首輪を付けているような印象を低減することができる。
【0061】
また、図13に示すように、バンド部材60は、長手方向に沿って緩やかに曲がる湾曲形状である。これにより、バンド部材60が首本体部2の周囲に沿うように配置されるため、バンド部材60が首本体部2の周囲から飛び出して引っ掛かることを低減することができる。
【0062】
(第1プレートの固定方法)
図16は、第1プレート22の固定方法を示す図である。図16に示すように、第1プレート22は、外周部材210に固定される。具体的には、第1プレート22は、爪部22eと、凹部22dとを有する。また、外周部材210は、爪部210cと、凹部210bとを有する。
【0063】
第1プレート22の爪部22eは、外周部材210の凹部210bに嵌るとともに、外周部材210の爪部210cが第1プレート22の凹部22dに嵌る。これにより、第1プレート22が外周部材210に固定される。
【0064】
これにより、第1プレート22の製造時における首本体部2の組立の難易度が下がり、量産性を向上させることができる。
【0065】
(ケーブル部材の構成)
図17は、ケーブル部材3の断面図である。図17に示すように、ケーブル部材3は、チューブ部材31,32と、電源ケーブル33と、断熱部材34とが一体となるように被覆35で覆われるように形成された部材である。ここで断熱部材34は、チューブ部材31,32よりも熱抵抗値の大きい材料であればよい。また被覆35は、シリコンやPPなどの柔軟性がある材料であればよい。
【0066】
チューブ部材31,32は、熱媒体が循環する流路を有する。具体的には、2つのチューブ部材31,32のうち、一方のチューブ部材31が、熱交換部4から首本体部2へ熱媒体を送り、他方のチューブ部材32が、首本体部2から熱交換部4へ熱媒体を送る。
【0067】
電源ケーブル33は、熱交換部4を介して電源部5に接続される。電源ケーブル33は、電源部5から首本体部2へ電力を供給する給電経路となる。電源ケーブル33は少なくとも一対の第1ペルティエ素子23と第2ペルティエ素子25に電力を供給する。第1ペルティエ素子23と第2ペルティエ素子25には、電源ケーブル33の他にグランドラインも接続される。
【0068】
断熱部材34は、チューブ部材31,32の周囲を覆うように配置される。被覆35はチューブ部材31,32と、電源ケーブル33と、断熱部材34とを覆う。ケーブル部材3をこのように構成することで、外部(例えば太陽光線や利用者の周囲の外気など)からチューブ部材31,32に熱が伝達することを遮断する。また、チューブ部材31,32から外部へ熱が伝達することも遮断する。なお、本実施例では、図17に示すようにチューブ部材31,32は、断熱部材34によって一部が覆われているが、断熱の必要性に応じて断熱部材34により覆う範囲を適宜変更できる。また、図17に示すようにチューブ部材31,32は、被覆35によって全周が覆われている。また、図1に示すように、チューブ部材31,32は被覆35によって全長(首本体部2から熱交換部4に亘る全長)が覆われている。しかし、チューブ部材31,32は必ずしも被覆35によって全周、全長が覆われている必要はない。
【0069】
また、図17に示すように、被覆35とチューブ部材31,32の間に形成される空間に、前記電源ケーブル33が配置される。これにより、被覆35とチューブ部材31,32との間に空間が形成されて、チューブ部材31,32と外部との断熱性を高めることができる。なお、本実施例では、一対の第1ペルティエ素子23、第2ペルティエ素子25、および電源スイッチ27のそれぞれに接続される電源ケーブル33が設けられる。
【0070】
これにより、ケーブル部材3はチューブ部材31,32が受ける太陽光線や外気の影響を低減することができる。また、電源ケーブル33およびチューブ部材31,32を被覆35で覆って一纏めにすることで、意匠性を向上させることができるとともに、電源ケーブル33およびチューブ部材31,32が外部と引っ掛かることを減らすことができる。なお、被覆35は電源ケーブル33およびチューブ部材31,32と一体に成形されても良く、別体に成形されてもよい。
【0071】
(熱交換部および電源部)
図18は、熱交換部4および電源部5の斜視図である。図19は、熱交換部4および電源部5の正面図である。図18および図19に示すように、熱交換部4および電源部5は、利用者の腰部においてそれぞれ独立して装着される。
【0072】
これにより、熱交換部4および電源部5が一体構成となる場合に比べて重量を分散できるため、利用者が装着位置を変えるなどして、装着した際のバランスの調整をすることができる。また、熱交換部4および電源部5が分離(独立)して装着されることで、利用者の体の動きへの追従性を向上させることができる。また、熱交換部4および電源部5が分離(独立)して装着されることで、熱交換部4および電源部5それぞれの人体に対する重量バランスの調整を容易に行うことができる。
【0073】
具体的には、熱交換部4および電源部5は、利用者の腰部において利用者の腰回り方向(以下、左右方向ともいう)に並べて配置される。これにより、熱交換部4および電源部5の全体構成が横長状となるため、腰を曲げた際(座った際)に熱交換部4および電源部5が邪魔になることを抑制できる。
【0074】
また、熱交換部4は、ケーブル部材3との接続部41が筐体40の上面に配置される。これにより、熱交換部4および首本体部2の間を繋ぐケーブル部材3の長さを極力短くすることができるため、身体温冷装置を装着する装着作業時等にケーブル部材3が邪魔になることを抑えることができる。
【0075】
また、熱交換部4は、筐体40の下面に配置された接続部42を有する。また、電源部5は、筐体50の下面に配置された接続部51を有する。熱交換部4の接続部42および電源部5の接続部51が不図示の接続コードによって接続される。これにより、電源部5から熱交換部4へ電力が供給される。なお、熱交換部4は、電源部5から供給される電力によって放熱用のファン(不図示)等を駆動させる。
【0076】
また、熱交換部4は、筐体40の表面に凹凸形状410を有する。これにより、利用者が視認することなく触感により熱交換部4および電源部5を識別することができる。
【0077】
なおケーブル部材3は本実施例に限らず、電源コードとチューブ部材31,32を束ねて、その周りにメッシュチューブ(編組)を被せる構造となっていても良い。
【0078】
次に、図20図25を用いて、身体温冷装置1におけるペルティエ素子(第1ペルティエ素子23および第2ペルティエ素子25)の温度検出およびオーバヒート検出について説明する。まず、図20を用いて、身体温冷装置1の冷却システムについて説明する。図20は、身体温冷装置1の冷却システムを示す図である。なお、オーバヒートは温度異常の一例である。
【0079】
図20に示す冷却システムでは、まず、後述のコントローラ100の制御によって電源部5から第1ペルティエ素子23(あるいは第2ペルティエ素子25)へ電流が供給される。これにより、第1ペルティエ素子23の冷却面23a(あるいは第2ペルティエ素子25の冷却面25a)が冷えることで、プレート(第1プレート22または第2プレート24)を介して冷却面23aに接した人体を冷却できる。
【0080】
また、第1ペルティエ素子23への通電による冷却動作に伴って熱が発生し、発生した熱は第1ペルティエ素子23の加熱面23b(あるいは第2ペルティエ素子25の加熱面25b)から放熱板300へ伝達される。なお、加熱面23bとは、冷却面23aの裏側にある面である。放熱板300は、例えば、チューブ部材31、32の外周を覆うようにして設けられてもよく(つまり、チューブ部材31、32と別体構成)、チューブ部材31、32と一体的に構成され、熱媒体に直接触れる構成であってもよい。このようにして、第1ペルティエ素子23で発生した熱(あるいは人体が吸熱した熱も含む)を熱媒体へ放熱する。すなわち、熱媒体は、第1ペルティエ素子23の冷却に用いられる。
【0081】
つづいて、第1ペルティエ素子23の熱を吸収した熱媒体は、チューブ部材32を通って熱交換部4の水タンク(熱媒体タンク)420に運ばれる。水タンク420では、空冷型のラジエータ430およびファン440により水タンク420に貯留されている熱媒体の熱を放熱する。つまり、熱交換部4は、熱媒体の放熱を空気との熱交換により行う。そして、熱交換部4は、放熱後の熱媒体をチューブ部材31を介して首本体部2へ輸送する。
【0082】
ここで、ペルティエ素子の冷却能力が限界を超えた場合、通電しているにも関わらずペルティエ素子の温度が上昇する現象、いわゆるオーバヒートが発生することとなる。なお、ペルティエ素子の冷却能力が限界を超えるとは、例えば、高温環境下等において、熱交換部4における熱媒体の放熱が追い付かず、高い温度の熱媒体がペルティエ素子に供給されることでペルティエ素子の加熱面から熱媒体へ熱を伝達できなくなることである。
【0083】
このようなオーバヒートを検出する方法として、ペルティエ素子の冷却面に温度センサを配置する方法が考えられる。しかしながら、この方法では、利用者の体温上昇に伴って温度センサで検出される温度も上昇することで、オーバヒートを誤検出するおそれがあるため、ペルティエ素子の温度を高精度に検出する点で改善の余地があった。
【0084】
図21は、ペルティエ素子の通常時(オーバヒート無し)およびオーバヒート時の温度変化を示す図である。図21に示すように、オーバヒート時には、時間経過に伴ってペルティエ素子の温度が上昇していることがわかる。なお、図21における時刻のゼロは、身体温冷装置1の電源がオン(ペルティエ素子への通電が開始)されたタイミングである。
【0085】
一方、通常時には、ペルティエ素子の温度は、一定値(図21では17℃付近)で安定しているとともに、通電後の身体温冷装置1の装着時には一時的に温度が上昇している(時刻が40秒~50秒の間)ことがわかる。つまり、温度センサによりペルティエ素子の冷却面の温度を検出する方法では、かかる一時的な温度の上昇をオーバヒートとして誤検出するおそれがあった。なお、かかる一定値は、ペルティエ素子の設定温度に対応している。
【0086】
そこで、実施形態に係る身体温冷装置1では、ペルティエ素子に流れる電流値を検出し、検出した電流値に基づいてペルティエ素子の温度を推定する。
【0087】
図22は、ペルティエ素子の通常時(オーバヒート無し)およびオーバヒート時の電流値の変化を示す図である。なお、図22における時間のゼロは、身体温冷装置1の電源がオンされたタイミングである。また、図22における時間は、図21における時間に対応している。すなわち、時刻が40秒~50秒の期間で利用者が身体温冷装置1を装着している。
【0088】
図22に示すように、通常時には、ペルティエ素子の電流値は、一定値(図22では1.2A付近)で安定していることがわかる。なお、かかる一定値は、ペルティエ素子の設定温度(図21の17℃付近)に応じた値である。また、身体温冷装置1の装着時には、電流値が一時的に上昇している。これは、図21において一時的に温度が上昇したことに起因している。
【0089】
一方、オーバヒート時には、時間経過に伴ってペルティエ素子の電流値が徐々に低下していることがわかる。換言すれば、ペルティエ素子の温度が上昇しているにも関わらず、電流値が低下している。これは、ペルティエ素子の冷却面と加熱面との温度差が大きくなることで抵抗値が上がることにより電流値が低下するという特性によるものである。
【0090】
すなわち、実施形態に係る身体温冷装置1は、かかる特性に着目したものであり、ペルティエ素子に流れる電流値を検出することで、ペルティエ素子が設定温度で安定しているか、もしくは、ペルティエ素子がオーバヒートにより温度上昇しているかを高精度に検出することができる。このように、実施形態に係る身体温冷装置1によれば、熱電素子の電流値に基づいて、熱電素子の温度を高精度に検出することができる。
【0091】
さらに、図21および図22に示すように、身体温冷装置1の装着時に一時的に温度が上昇する場合には、電流値も上昇する。このように、身体温冷装置1は、ペルティエ素子の電流値を観測すれば、身体温冷装置1の装着時等のような一時的な温度上昇によるオーバヒートの誤検出を減らすことができる。
【0092】
次に、図23を用いて、実施形態に係る身体温冷装置1の配線接続例について説明する。図23は、実施形態に係る身体温冷装置1の配線接続例を示す図である。図23では、首本体部2と、熱交換部4と、電源部5と、コントローラ100との間における配線接続例を示している。
【0093】
図23に示すように、首本体部2は、チューブ部材31、32を介して熱交換部4に接続される。また、電源部5は、電力供給ライン18aを介して熱交換部4と接続され、電力供給ライン18bを介してコントローラ100と接続される。
【0094】
コントローラ100は、制御ライン19aを介して熱交換部4と接続され、熱交換部4のポンプの流量、送風ファンの回転数等を制御する。また、コントローラ100は、電力供給ライン18cを介して、首本体部2のペルティエ素子(第1ペルティエ素子23および第2ペルティエ素子25)と接続され、例えば、第1ペルティエ素子23および第2ペルティエ素子25に供給される電力を制御する。
【0095】
また、コントローラ100は、制御ライン19bを介して首本体部2のペルティエ素子や温度センサ105(図24参照)に接続され、ペルティエ素子に制御信号を伝送し、また、温度センサ105で検出されたペルティエ素子の温度を示す信号を受信する。
【0096】
次に、図24を用いて、身体温冷装置1が有するコントローラ100の機能構成例について説明する。図24は、実施形態に係るコントローラ100の機能構成例を示すブロック図である。図24に示すように、コントローラ100は、制御部101と、記憶部102とを備える。また、コントローラ100は、ペルティエ素子(第1ペルティエ素子23および第2ペルティエ素子25)と、温度センサ105とに接続される。
【0097】
温度センサ105は、ペルティエ素子の温度を検出するセンサである。具体的には、温度センサ105は、ペルティエ素子の冷却面23a(25a)の温度を検出する。なお、冷却面は、利用者との接触面の一例である。なお、接触面は、冷却面が接するプレート(第1プレート22および第2プレート24)の人体が接する面であってもよい。温度センサ105は、検出した温度をコントローラ100へ出力する。
【0098】
なお、温度センサ105は、ペルティエ素子の冷却面に配置される場合に限らず、利用者との非接触面である加熱面23b(25b)に配置されてもよい。あるいは、ペルティエ素子の電流値から温度検出が可能であるため、温度センサ105そのものが省略されてもよい。
【0099】
制御部101は、ハードウェアとして、例えばプロセッサにより実現される。プロセッサの一例として、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、MCU(Micro Controller Unit)等が挙げられる。なお、制御部101が行う制御例については後述する。
【0100】
記憶部102は、制御部101の処理に用いられる情報や、制御部101の処理結果の情報等を記憶する。記憶部102は、ハードウェアとして、例えば、メモリにより実現される。メモリの一例として、SDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)等のRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等が挙げられる。
【0101】
次に、制御部101の動作例について説明する。図24に示すように、制御部101は、駆動部111と、電流検出部121と、素子温度検出部131と、外気温検出部141と、外気温センサ151と、OH検出部161とを備える。
【0102】
駆動部111は、ペルティエ素子へ電流を供給することで、ペルティエ素子を駆動する。具体的には、駆動部111は、設定温度に応じた電流値をペルティエ素子へ供給することで、ペルティエ素子を設定温度まで冷却させる。
【0103】
また、詳細は後述するが、駆動部111は、OH検出部161からペルティエ素子のオーバヒートが検出されたことを示す情報を取得した場合には、ペルティエ素子へ供給する電流値を抑制(あるいは停止)する制御を行う。
【0104】
電流検出部121は、電流センサを有し、かかる電流センサによって駆動部111からペルティエ素子へ流れる電流値を検出する。電流検出部121は、検出した電流値をOH検出部161へ出力する。なお、電流センサは、ペルティエ素子への過電流を検出するための電流センサを兼ねてもよい。これにより、電流センサを別途設ける必要がないため、製品コストを抑えることができる。
【0105】
素子温度検出部131は、温度センサ105から受信した信号に基づいて、ペルティエ素子の温度を検出する。素子温度検出部131は、検出したペルティエ素子の温度をOH検出部161へ出力する。
【0106】
外気温検出部141は、外気温センサ151から受信した信号に基づいて、コントローラ100周辺の温度(以下、外気温と記載)を検出する。外気温検出部141は、検出した外気温をOH検出部161へ出力する。外気温センサ151は、コントローラ100周辺の外気温を検出するセンサであり、検出した外気温を示す信号を外気温検出部141へ出力する。
【0107】
OH検出部161は、素子温度検出部131からペルティエ素子の温度、及び電流検出部121からペルティエ素子へ流れる電流値を取得する。具体的には、OH検出部161は、ペルティエ素子への通電を開始してから不図示のタイマーが所定時間後(図22では20秒後)のペルティエ素子の温度が設定温度(図21では17℃付近)、温度電流値が所定の基準値(図22に示す1.2A付近)である場合正常運転であると推定する。
【0108】
また、OH検出部161は、時間経過に伴う電流値の変化を検出し、電流値が所定の基準値を下回った場合に、ペルティエ素子のオーバヒートを検出する。具体的には、OH検出部161は、電流値が所定時間に亘って漸減し、基準値を下回った場合に、オーバヒートを検出する。なお、所定時間は、例えば、数十秒であり、実験等によって定めることが可能である。すなわち、OH検出部161は、オーバヒートによりペルティエ素子の温度が徐々に上昇することで電流値が徐々に減少する特性を利用してオーバヒートを検出する。これにより、ペルティエ素子のオーバヒートを高精度に検出することができる。
【0109】
なお、上記した基準値は、ペルティエ素子の設定温度に応じた値である。また、設定温度は、例えば、ペルティエ素子の冷却限界温度であり、外気温に基づいて算出される。具体的には、設定温度は、外気温に所定の係数(ペルティエ素子に依存)を乗じた値を外気温から減算して得られた値である。また、基準値は、算出した設定温度に対してペルティエ素子の通電開始時の電流値に応じた係数を乗じた値である。
【0110】
つまり、OH検出部161は、外気温に基づいてペルティエ素子の設定温度を算出し、設定温度に応じた基準値を設定する。これにより、外気温の変化に合わせた基準値を設定できるため、オーバヒートを高精度に検出することができる。
【0111】
また、OH検出部161は、温度センサ105で検出したペルティエ素子の冷却面の温度を加味してオーバヒートを検出してもよい。具体的には、OH検出部161は、電流値が所定の基準値を下回り、かつ、冷却面の温度が設定温度を所定の温度閾値以上超えた場合に、ペルティエ素子のオーバヒートを検出する。なお、温度閾値は、例えば、人体に接することで一時的に上昇する温度よりも高い値であり、実験等によって定めることが可能である。これにより、実際の冷却面の温度も考慮できるためより高精度にオーバヒートを検出することができる。
【0112】
なお、OH検出部161は、外気温センサ151の構成が省略される場合には、身体温冷装置1の電源オン後における通電前のペルティエ素子の冷却面の温度を外気温として用いてもよい。
【0113】
そして、OH検出部161は、オーバヒートを検出した場合、駆動部111に対してオーバヒートを検出したことを示す情報を通知する。
【0114】
次に、図25を用いて、実施形態に係る身体温冷装置1の制御部101によって実行される処理の処理手順について説明する。図25は、制御部101によって実行される処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0115】
図25に示すように、まず、制御部101は、外気温センサ151の検出結果に基づいて外気温を検出する(ステップS101)。
【0116】
つづいて、制御部101は、身体温冷装置1の電源オン後における通電前のペルティエ素子の温度を検出する(ステップS102)。
【0117】
つづいて、制御部101は、ペルティエ素子への通電を開始する(ステップS103)。
【0118】
つづいて、制御部101は、通電開始時にペルティエ素子に流れる電流値を検出する(ステップS104)。
【0119】
つづいて、制御部101は、ステップS101~ステップS104で得られた情報に基づいて、設定温度を算出し、設定温度に基づいて基準値を算出する(ステップS105)。
【0120】
つづいて、制御部101は、駆動中のペルティエ素子の温度を検出する(ステップS106)。
【0121】
つづいて、制御部101は、駆動中のペルティエ素子に流れる電流値を検出する(ステップS107)。
【0122】
つづいて、制御部101は、電流値が基準値を下回ったか否かを判定する(ステップS108)。
【0123】
制御部101は、電流値が基準値を下回った場合(ステップS108:Yes)、ペルティエ素子の温度が設定温度を所定値以上超えたか否かを判定する(ステップS109)。
【0124】
制御部101は、ペルティエ素子の温度が設定温度を所定値以上超えた場合(ステップS109:Yes)、オーバヒート運転モード(電流値を低下させるモード)を開始し(ステップS110)、処理を終了する。
【0125】
一方、ステップS108において、制御部101は、電流値が基準値を下回っていない場合(ステップS108:No)、ステップS106へ移行する。
【0126】
また、ステップS109において、制御部101は、ペルティエ素子の温度が設定温度を所定値以上超えていない場合(ステップS109:No)、ステップS106へ移行する。
【0127】
上述してきたように、実施形態に係る身体温冷装置1は、本体部(首本体部2)と、電流センサ(電流検出部121)と、制御部101とを備える。本体部は、利用者に接する熱電素子(ペルティエ素子)への通電により利用者を冷却する。電流センサは、熱電素子に流れる電流値を検出する。制御部101は、電流センサによって検出される電流値に基づいて熱電素子の温度を推定する。これにより、熱電素子(ペルティエ素子)の温度を高精度に検出することができる。
【0128】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0129】
1 身体温冷装置
2 首本体部
2a 後方部材
2b 先端部材
3 ケーブル部材
4 熱交換部
5 電源部
5b 先端部材
21 首掛け部材
22 第1プレート
22a 主面
22b 上側面
22c 下側面
22d 凹部
22e 爪部
23 第1ペルティエ素子
24 第2プレート
25 第2ペルティエ素子
26 接続部
27 電源スイッチ
28 弾性部材
28a スリット
29 ヒンジ部材
31、32 チューブ部材
33 電源ケーブル
34 断熱部材
35 被覆
40 筐体
41、42、51 接続部
50 筐体
60 バンド部材
61 磁石部材
62 孔部
100 コントローラ
101 制御部
102 記憶部
105 温度センサ
111 駆動部
121 電流検出部
131 素子温度検出部
141 外気温検出部
151 外気温センサ
161 OH検出部
210 外周部材
210a 段差
210b 凹部
210c 爪部
図1
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