(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154427
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】ヘッドシステム、液体吐出装置、画像形成装置、及び液体供給方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20221005BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
B41J2/175 121
B41J2/175 503
B41J2/01 301
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057461
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【弁理士】
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154586
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 正広
(74)【代理人】
【識別番号】100179280
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 育郎
(72)【発明者】
【氏名】鳥飼 孝介
(72)【発明者】
【氏名】石▲崎▼ 裕稔
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EB16
2C056EB21
2C056EB30
2C056EC16
2C056EC20
2C056EC29
(57)【要約】
【課題】液体吐出ヘッドに供給する液体の温度調整を好適に行うことのできるヘッドシステムを提供する。
【解決手段】ヘッドシステムは、複数のヘッドと、前記複数のヘッドの各々に接続され且つ前記複数のヘッドの各々に液体を分配するサブタンクと、前記サブタンクに前記液体を供給する供給流路と、前記供給流路内の前記液体を加熱するヒータと、前記サブタンク、前記供給流路及び前記ヒータを収容する筐体とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のヘッドと、
前記複数のヘッドの各々に接続され且つ前記複数のヘッドの各々に液体を分配するサブタンクと、
前記サブタンクに前記液体を供給する供給流路と、
前記供給流路内の前記液体を加熱するヒータと、
前記サブタンク、前記供給流路及び前記ヒータを収容する筐体とを備えるヘッドシステム。
【請求項2】
前記供給流路はブロック状の流路部材の内部に画定されており、
前記供給流路の、該供給流路が延びる方向と直交する平面に沿った断面が長手形状を有し、
前記流路部材が前記ヒータに熱的に接続されている請求項1に記載のヘッドシステム。
【請求項3】
前記流路部材は長手方向を有する長尺の部材であり、
前記供給流路は、上流端が前記流路部材の長手方向の一端側に位置し且つ下流端が前記流路部材の前記長手方向の他端側に位置する第1部分と、上流端が前記流路部材の前記長手方向の他端側に位置し且つ下流端が前記流路部材の前記長手方向の一端側に位置する第2部分と、前記第1部分の前記下流端と前記第2部分の前記上流端を接続する第3部分とを含む請求項2に記載のヘッドシステム。
【請求項4】
前記供給流路が前記第1部分の前記上流端から前記第2部分の前記下流端に向かって次第に上昇している請求項3に記載のヘッドシステム。
【請求項5】
前記流路部材は長手形状を有し、
前記ヒータが、前記流路部材の長手方向の中央部を除く領域に設けられている請求項2~4のいずれか一項に記載のヘッドシステム。
【請求項6】
前記サブタンクは前記複数のヘッドの上方に配置されており、
複数の管路であって、各々が前記サブタンクと前記複数のヘッドの1つとを流体接続する複数の管路を更に備え、
前記流路部材が上下方向において前記サブタンクと前記複数のヘッドとの間に配置されている請求項2~5のいずれか一項に記載のヘッドシステム。
【請求項7】
前記流路部材の、前記ヒータと熱的に接続された面とは反対側の反対面が前記複数の管路と対向しており、
前記反対面に、前記流路部材の材料よりも輻射率の大きい高輻射率材料により形成された面状部材が設けられている請求項6に記載のヘッドシステム。
【請求項8】
前記ヒータの、前記流路部材と熱的に接続された面とは反対側の面に、前記ヒータに熱的に接続された放熱部材が設けられている請求項2~7のいずれか一項に記載のヘッドシステム。
【請求項9】
前記複数のヘッドは第1方向に沿って並び、
前記サブタンクは前記第1方向に延びる貯留部を有し、
前記貯留部内の前記液体を加熱するサブタンクヒータを更に備える請求項1~8のいずれか一項に記載のヘッドシステム。
【請求項10】
前記供給流路のうちの前記ヒータにより加熱される部分の流路長が前記貯留部の前記第1方向の長さよりも大きい請求項9に記載のヘッドシステム。
【請求項11】
前記供給流路のうちの前記ヒータにより加熱される部分の断面積が前記貯留部の前記第1方向に直交する断面の断面積よりも小さい請求項9又は10に記載のヘッドシステム。
【請求項12】
前記供給流路は金属により形成されており、
前記サブタンクは、該サブタンクの下部に配置されて前記貯留部の底を画定する金属板を有し、
前記金属板の下面に前記サブタンクヒータが熱的に接続されている請求項9~11のいずれか一項に記載のヘッドシステム。
【請求項13】
前記サブタンクは、前記貯留部の側壁を画定する本体部を更に有し、前記本体部の熱伝導率が前記金属板の熱伝導率よりも小さい請求項12に記載のヘッドシステム。
【請求項14】
前記サブタンクは、前記第1方向において互いに離間する複数の開口を有し、且つ該複数の開口の各々から前記複数のヘッドの1つに前記液体を供給するように構成されており、
前記供給流路の下流端が、前記サブタンクの前記第1方向の端部に接続されている請求項9~13のいずれか一項に記載のヘッドシステム。
【請求項15】
請求項9~14のいずれか一項に記載のヘッドシステムと、
前記ヘッドシステムを制御する制御部とを備える液体吐出装置であって、
前記制御部が、前記ヒータによる前記液体の温度の上昇量が前記サブタンクヒータによる前記液体の温度の上昇量よりも大きくなるように前記ヘッドシステムを制御する液体吐出装置。
【請求項16】
前記ヘッドシステムは、前記複数のヘッドの各々に設けられたヘッドヒータを更に備え、
前記制御部が、前記ヒータによる前記液体の温度の上昇量が前記ヘッドヒータによる前記液体の温度の上昇量よりも大きくなるように前記ヘッドシステムを制御する請求項15に記載の液体吐出装置。
【請求項17】
前記サブタンクに流入する前記液体の温度をT1、前記サブタンクから流出する前記液体の温度をT2、前記複数のヘッドから吐出される前記液体の温度をT3として、前記制御部がT3>T2、又はT3>T1となるように前記ヘッドシステムを制御する請求項16に記載の液体吐出装置。
【請求項18】
前記制御部が、T2>T1となるように前記ヘッドシステムを制御する請求項17に記載の液体吐出装置。
【請求項19】
前記制御部が、前記サブタンクから流出する前記液体の温度が目標温度よりも低い場合は前記ヒータの温度を前記目標温度以上とし、前記サブタンクから流出する前記液体の温度が前記目標温度以上となった後に前記ヒータの温度を前記目標温度以下に下げる請求項15~18のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項20】
請求項15~19のいずれか一項に記載の液体吐出装置と、
前記複数のヘッドに向けて媒体を搬送する搬送装置とを備える画像形成装置。
【請求項21】
ヘッドシステムにおいて複数のヘッドに液体を供給する液体供給方法であって、
前記液体を供給流路を介してサブタンクに送りながら、前記ヘッドシステムを制御する制御部により前記供給流路内の前記液体を加温するヒータを制御して前記液体の温度をΔT1℃上昇させることと、
次いで、前記制御部により前記サブタンク内の前記液体を加温するサブタンクヒータを制御して前記サブタンクにおいて前記液体の温度をΔT1℃よりも小さいΔT2℃上昇させることと、
次いで前記サブタンクの前記液体を前記複数のヘッドの各々に送ることとを含む液体供給方法。
【請求項22】
前記制御部により前記複数のヘッドの各々に設けられたヘッドヒータを制御して前記複数のヘッドの各々において前記液体の温度をΔT1℃よりも小さいΔT3℃上昇させることを更に含む請求項21に記載の液体供給方法。
【請求項23】
前記サブタンクに流入する前記液体の温度をT1、前記サブタンクから流出する前記液体の温度をT2、前記複数のヘッドから吐出される前記液体の温度をT3として、前記制御部により前記ヘッドヒータ及び前記サブタンクヒータを制御してT3>T2となるように前記液体の温度を上昇させ、又は前記制御部により前記ヘッドヒータ及び前記ヒータを制御してT3>T1となるように前記液体の温度を上昇させる請求項22に記載の液体供給方法。
【請求項24】
前記制御部により前記サブタンクヒータ及び前記ヒータを制御してT2>T1となるように前記液体の温度を上昇させる請求項23に記載の液体供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドシステム、液体吐出装置、画像形成装置、及び液体供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出ヘッドを介してインク等の液体を用紙等の媒体に吐出する画像記録装置が存在する。このような画像記録装置において、液体吐出ヘッドに供給する液体をヒータで温める構造が用いられている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、液体吐出ヘッドに供給する液体の温度調整を好適に行うことのできるヘッドシステム、液体吐出装置、画像形成装置、及び液体供給方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様に従えば、
複数のヘッドと、
前記複数のヘッドの各々に接続され且つ前記複数のヘッドの各々に液体を分配するサブタンクと、
前記サブタンクに前記液体を供給する供給流路と、
前記供給流路内の前記液体を加熱するヒータと、
前記サブタンク、前記供給流路及び前記ヒータを収容する筐体とを備えるヘッドシステムが提供される。
【0006】
本発明の第2の態様に従えば、
第1の態様のヘッドシステムと、
前記ヘッドシステムを制御する制御部とを備える液体吐出装置であって、
前記制御部が、前記ヒータによる前記液体の温度の上昇量が前記サブタンクヒータによる前記液体の温度の上昇量よりも大きくなるように前記ヘッドシステムを制御する液体吐出装置が提供される。
【0007】
本発明の第3の態様に従えば、
第2の態様の液体吐出装置と、
前記複数のヘッドに向けて媒体を搬送する搬送装置とを備える画像形成装置が提供される。
【0008】
本発明の第4の態様に従えば、
ヘッドシステムにおいて複数のヘッドに液体を供給する液体供給方法であって、
前記液体を供給流路を介してサブタンクに送りながら、前記ヘッドシステムを制御する制御部により前記供給流路内の前記液体を加温するヒータを制御して前記液体の温度をΔT1℃上昇させることと、
次いで、前記制御部により前記サブタンク内の前記液体を加温するサブタンクヒータを制御して前記サブタンクにおいて前記液体の温度をΔT1℃よりも小さいΔT2℃上昇させることと、
次いで前記サブタンクの前記液体を前記複数のヘッドの各々に送ることとを含む液体供給方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、液体吐出ヘッドに供給する液体の温度調整を好適に行うことのできるヘッドシステム、液体吐出装置、画像形成装置、及び液体供給方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態のプリンタの概略的な構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態のヘッドシステムの概略的な斜視図である。
【
図3】
図3は、筐体の第1部分の左壁を外側(左方)から見た平面図である。
【
図4】
図4(a)は、予熱流路の斜視図である。
図4(b)は、
図4(a)のB-B線に沿った断面図である。
図4(c)は、流路ブロック内のインク流路の配置を示す図である。
図4(d)は、流路ブロックを後方から見た側面図である。
【
図5】
図5は、サブタンクから天板を分離させた分解斜視図である。
【
図7】
図7は、サブタンクの各貯留部とインク流通口セットの各流通口との接続関係を示す説明図である。
【
図8】
図8は、サブタンクの本体部の部分底面斜視図であり、サブタンクの各貯留部とインク流通口セットの各流通口とを接続する分配流路の構造を示す。
【
図10】
図10は、ヘッド機構の流路ブロックの斜視図である。
【
図11】
図11は、ヘッド機構における、流路ブロックよりも下側の構成を示す分解斜視図である。囲み図は、伝熱部材を下側から見た斜視図である。
【
図12】
図12は、流路ユニットおよびアクチュエータの平面図である。
【
図14】
図14は、ヘッド機構の側面図である。
図14においては、配置の説明のため一部の構成を透視している。
【
図15】
図15は、筐体の底部における10個のヘッド機構の配置を示す平面図である。
【
図16】
図16は、インク管セットに含まれる各インク管の側面図である。
【
図18】
図18は、筐体内の構成の前後方向における配置を示す説明図である。
【
図19】
図19は、ヘッド機構の上方における、予熱流路、インク管セット、及び冷媒流通機構の配置を示す斜視図である。予熱流路20の流路ブロック21、冷媒流通機構の冷媒供給マニホールド51、冷媒排出マニホールド53は左右方向の一部分のみを示している。予熱流路20は、その奥に位置する構造の目視を妨げないように、点線により透明な構成として描いている。
【
図20】
図20は、ヘッドシステムにおける第1インクの流路の概略図である。
【
図21】
図21は、ヘッドシステムにおける第2インクの流路の概略図である。
【
図22】
図22は、変形例の予熱流路が備える流路ブロックの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施形態]
本発明の一実施形態であるヘッドシステム100、液体吐出装置900、及びプリンタ(印刷装置)1000について、
図1~
図22を参照して説明する。
【0012】
<プリンタ1000>
図1に示す通り、プリンタ1000は、4つのヘッドシステム100、プラテン200、搬送装置としての一対の搬送ローラ301、302、インクタンク400、リザーバ500、制御部600、及びこれらを収容する筐体700を主に備える。
【0013】
プリンタ1000に関しては、一対の搬送ローラ301、302が並ぶ方向、即ち画像形成時に媒体PMが搬送される方向を「媒体送り方向」と呼ぶ。また、水平面内に延び且つ媒体送り方向と直交する方向を「媒体幅方向」と呼ぶ。
【0014】
4つのヘッドシステム100の各々は、いわゆるラインタイプのヘッド(ヘッドバー)であり、媒体幅方向の両端部においてフレーム100aに支持されている。フレーム100aは、4つのヘッドシステム100の各々の前後方向(後述)をプリンタ1000の媒体送り方向(搬送方向)に一致させ、且つ4つのヘッドシステム100のノズル面40n(後述)をプラテン200の上面に対向させて支持する。
図1ではフレーム100aはヘッドシステム100ごとに設けられているが、4つのヘッドシステム100を単一のフレーム100aでまとめて支持してもよい。
【0015】
本実施形態では、4つのヘッドシステム100の各々が、互いに異なる4種類のインクの内の2種類を吐出するように構成されている。この4種類のインクは、一例としてシアンインク、マゼンタインク、イエローインク及びブラックインクである。ヘッドシステム100の具体的な構造、機能は後述する。インクは、紫外線硬化型のインク(UVインク)であってもよい。
【0016】
プラテン200は、ヘッドシステム100から媒体PMに向けてインクを吐出する際に、媒体PMをヘッドシステム100とは反対側(下方)から支持する板状部材である。したがって、プラテン200の上面は、媒体PMの搬送面に相当する。
【0017】
一対の搬送ローラ301、302は、プラテン200を媒体送り方向に挟んで配置されている。一対の搬送ローラ301、302は、ヘッドシステム100が媒体PMに画像を形成する際に、媒体PMを所定の態様で媒体送り方向に送る搬送装置として機能する。
【0018】
インクタンク400は、4色のインクを収容できるよう4つに区分されている。4色のインクは、管路410によりリザーバ500に送られる。リザーバ500も、4色のインクを収容できるよう4つに区分されている。リザーバ500に送られた各色のインクは、不図示の管路及びポンプを介して、リザーバ500とヘッドシステム100との間で循環される。
【0019】
制御部(コントローラ)600は、プリンタ1000の備える各部を全体的に制御することで、各部に媒体PMへの画像形成等を行わせる。制御部600は、FPGA(Field Programmable Gate Array)、EEPROM(Electrically Eracable Programmable Read-Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備える。なお、制御部600はCPU(Central Processing Unit)、又はASIC(Application Specific Integrated Curcuit)等を備えてもよい。制御部600は、PC等の外部装置(不図示)とデータ通信可能に接続されており、当該外部装置から送られた印刷データに基づいてプリンタ1000の各部を制御する。
【0020】
本実施形態の液体吐出装置900は、制御部600と、少なくとも1つのヘッドシステム100とを備える。
【0021】
<ヘッドシステム100>
図2に示す通り、4つのヘッドシステム100の各々は、筐体10と、筐体10に収容された2つの予熱流路20、サブタンク30、10個のヘッド機構40、サブタンク30と10個のヘッド機構40とを繋ぐ10セットのインク管セットITS、冷媒流通機構50、中継基板70、及び制御基板部80を主に備える。4つのヘッドシステムは互いに同一の構成を有するため、以下では4つの内の1つに着目して説明する。
【0022】
以下の説明においては、10個のヘッド機構40が千鳥状(ジグザグ状)に並ぶ方向をヘッドシステム100の幅方向(第1方向)と呼び、10個のヘッド機構40とサブタンク30とが並ぶ方向を上下方向と呼ぶ。また、幅方向及び上下方向に直交する方向をヘッドシステム100の前後方向(第2方向)と呼ぶ。
【0023】
前後方向については、
図2の紙面手前側、奥側を前後方向の前側、後側とする。幅方向については前後方向の前側から見た際の左側、右側を、幅方向の左側、右側とする。上下方向については、10個のヘッド機構40に対してサブタンク30が位置する側を上側、その反対側を下側とする。
【0024】
なお、ヘッドシステム100がプリンタ1000に搭載された状態においては、ヘッドシステム100の幅方向がプリンタ1000の媒体幅方向に一致し、ヘッドシステム100の前後方向がプリンタ1000の媒体送り方向に一致する。
【0025】
<筐体10>
筐体10は、例えば金属により形成し得る。筐体10は、第1部分11と、第1部分11に対して着脱可能な第2部分12とを含む。
【0026】
第1部分11は、天板11a及び底部11b、前壁11c(
図18。
図2においては第1部分11の内部が見えるよう図示を省略している)、後壁11d、左壁(側壁)11e、及び右壁11fを有する。天板11a及び底部11bは、平面視において、幅方向に長い矩形である。天板11aは、段部ST
11を有しており、左端近傍がその他の領域(左端近傍よりも右方の領域)よりも上方に位置している。前壁11c及び後壁11dは幅方向及び上下方向を含む面に沿って延びる平板であり、左壁11e及び右壁11fは前後方向及び上下方向を含む面に沿って延びる平板である。左壁11e及び右壁11fは前壁11c(内壁11cの後面)及び後壁11d(後壁11dの前面)と直交している。
【0027】
図3に示すように、左壁11eの上部には電気コネクタCNが設けられており、電気コネクタCNの下方には、4つの空気流通口AP
10が設けられている。4つの空気流通口AP
10の下方には、2つのインク供給口ISP
10及び2つのインク排出口IDP
10が設けられており、その下方に冷媒供給口CSP
10及び冷媒排出口CDP
10が設けられている。なお、電気コネクタCN、空気流通口AP
10、各供給口及び各排出口は
図2では図示を省略している。
【0028】
図2に示す通り、第2部分12は、天板12a、底板12b、前壁12c、後壁12d、左壁12e、及び右壁12fを有する。第2部分12が第1部分11に取り付けられた状態においては、第2部分12の底板12bが第1部分11の天板11aの右端近傍に当接する。
【0029】
<予熱流路20>
予熱流路20は、筐体10のインク供給口ISP10を介してヘッドシステム100に供給されたインクを、昇温させながらサブタンク30へと送る。
【0030】
図2に示す通り、予熱流路20は、筐体10の第1部分11の底部11bの近傍に、前後方向に並んで2つ配置されている。2つの予熱流路20の各々は長尺形状を有しており、長手方向がヘッドシステム100の幅方向に一致するように配置されている。また、予熱流路20は、インクの流れ方向においては、インク供給口ISP
10の下流側、且つサブタンク30の上流側に位置している。なお、
図2の予熱流路20は、その奥に位置する構造の目視を妨げないように、点線で描いている。
【0031】
図4(a)~
図4(d)に示す通り、2つの予熱流路20の各々は、流路ブロック21と、流路ブロック21に熱的に接続されたヒータモジュール22と、流路ブロック21に貼り付けられた輻射シート23とを有する。
【0032】
流路ブロック21は、内部に画定された流路に沿ってインクを流しながら、当該インクにヒータモジュール22からの熱を与える。流路ブロック21は、熱伝達率の高い材料で形成することが好ましく、一例としてアルミニウム等の金属により形成し得る。
【0033】
流路ブロック21は、本体部211と、本体部211と一体に形成されたヒータ支持片212、213とを有する。
【0034】
本体部211は角棒状であり、ヘッドシステム100の幅方向に沿って延びている。本体部211は、ヘッドシステム100の前後方向と直交する面に沿って広がる前面211c及び後面211dを有する。
【0035】
図4(b)、
図4(c)に示す通り、本体部211の内部には、インク流路IC
20が画定されている。インク流路IC
20は、左右方向及び前後方向を含む面内を本体部211の長手方向(即ち左右方向)に延びる直線状の第1部分A1と、第1部分A1の上方に位置し且つ第1部分A1と平行に延びる直線状の第2部分A2と、第1部分A1の右端A1fと第2部分A2の右端A2fとを繋ぐU字状の折返し部分A3とを含む。
【0036】
第1部分A1の左端A1eがインク流路IC20の上流端ICa20である。第1部分A1の右端A1fは折返し部分A3の下端A3bに接続している。第2部分A2の左端A2eがインク流路IC20の下流端ICb20である。第2部分A2の右端A2fは折返し部分A3の上端A3aに接続している。
【0037】
図4(b)に示す通り、インク流路IC
20の断面形状は長円形である。長円形の長軸が上下方向に一致しており、短軸が前後方向に一致している。インク流路IC
20の断面形状を長円形とすれば、断面形状が真円である場合と比較して、インク流路IC
20を流れるインクと本体部211との接触面積を大きくしやすい。したがって、ヒータモジュール22からの熱を効率よくインクに与えることができ、インクを温めるために必要なヒータモジュール22の発熱量を小さくすることが出来る。これにより、ヒータモジュール22の過度の温度上昇を抑制でき、ひいては筐体10内の過度の温度上昇を抑制できる。
【0038】
インク流路IC20の流路長、即ち上流端ICa20と下流端ICb20との間の流路長は、一例として600mm~900mm程度である。また、インク流路IC20の断面積(流路が延びる方向と直交する面による断面の面積)は一例として5mm2~15mm2程度である。この流路長及び断面積は、流路ブロック21内に画定される流路の流路長及び断面積であり、ヒータモジュール22によるインクの加温が行われる領域の流路長及び断面積である。
【0039】
インク流路IC20の流路長は、サブタンク30の第1貯留部R1~第4貯留部R4(後述)の左右方向の寸法よりも大きい。また、インク流路IC20の断面積は、サブタンク30の第1貯留部R1~第4貯留部R4の各々の左右方向と直交する面による断面の面積よりも小さい。
【0040】
ヒータ支持片212は、本体部211の前面211cの上縁から前方に突出し下方に屈曲するアングル状の部分であり、前面211cに対向する面212sを有する(
図4(b))。ヒータ支持片213は、本体部211の前面211cの下縁から前方に突出し上方に屈曲するアングル状の部分であり、前面211cに対向する面213sを有する。
【0041】
前面211cと、ヒータ支持片212、213とにより、ヒータモジュール22を収容するスリットSL21が画定される。
【0042】
ヒータモジュール22は、流路ブロック21に与えるための熱を発生させる。ヒータモジュール22は、ヒータ221と、放熱シート222と、金属板223とを有する。
【0043】
ヒータ221は、長尺の面状(帯状)ヒータである。ヒータ221は、長尺の発熱面221mと、発熱面221mとは反対側の反対面221nとを有する。
【0044】
放熱シート222は、ヒータ221で発生した余剰の熱を予熱流路20の外部に逃がす。放熱シート222は、高い熱伝導率を有する弾性材料、一例としてシリコーン等によって形成された長尺の面状(帯状)部材とし得る。
【0045】
放熱シート222は、その長手方向をヒータ221の長手方向に一致させて、ヒータ221に接合されている。具体的には、放熱シート222の一面がヒータ22の反対面221nに接合している。
【0046】
金属板223は、ヒータ221から放熱シート222に伝わった余剰の熱を予熱流路20の外部に逃がす。金属板223は高い熱伝導率を有する材料、一例としてアルミニウムにより形成された長尺の平板とし得る。
【0047】
金属板223は、その長手方向を放熱シート222の長手方向に一致させて、放熱シート222に接合されている。具体的には、金属板223の一面が放熱シート222のヒータ221に接合した面とは反対側の面の全域に接合している。
【0048】
ヒータモジュール22は、スリットSL21に挿入されて、スリットSL21内に配置されている。この状態において、放熱シート222は厚さ方向に圧縮されて、ヒータ221及び金属板223を後方及び前方にそれぞれ押圧する。これにより、ヒータ221の発熱面221mが本体部211の前面211cに密着し、金属板223がヒータ支持片212、213の面212s、213sに密着する。
【0049】
輻射シート23は、流路ブロック21の熱を効率よく外部に輻射するために設けられる。
図4(d)に示す通り、輻射シート23は、流路ブロック21の本体部211の後面211dの下縁近傍、及び長手方向の両端部近傍を除く領域において後面211dに貼り付けられている。輻射シート23は、流路ブロック21よりも輻射率の高い材料で形成されたシート、例えばカーボンシート、熱放射シリコーン等とし得る。
【0050】
後面211dの左下端の近傍、即ちインク流路IC20の上流端ICa20の近傍に、温度測定器TM20が貼り付けられている。温度測定器TM20は一例としてサーミスタである。温度測定器TM20はインク流路IC20に流入するインクの温度を測定する。温度測定器TM20により測定されたインクの温度は、中継基板70(後述)を介して制御部600に送られる。
【0051】
<サブタンク30>
サブタンク30は、予熱流路20で昇温されたインクを受け取って、貯留する。サブタンク30はまた、貯留するインクの昇温も行う。サブタンク30に貯留されたインクは、複数のヘッド機構40の各々に分配される。
【0052】
図2に示す通り、サブタンク30は、2つの予熱流路20の上方に配置されている。サブタンク30は長尺形状を有しており、長手方向がヘッドシステム100の幅方向に一致するように配置されている。また、サブタンク30は、インクの流れ方向においては、予熱流路20の下流側、且つ複数のヘッド機構40の上流側に位置している。
【0053】
図5、
図6に示す通り、サブタンク30は、本体部31と、天板32と、底板33とにより構成されている。底板33の下面にはサブタンクヒータ34(
図6)が貼り付けられている。
【0054】
本体部31は、一例としてPOM等の樹脂により形成されている。これらの樹脂の熱伝導率は0.1~0.5W/m・K程度である。
【0055】
本体部31は、ヘッドシステム100の前後方向と直交する面に沿って延びる前壁31c、後壁31dと、ヘッドシステム100の幅方向と直交する面に沿って延びる左壁31e、右壁31fを有する。
【0056】
左壁31e、右壁31fは、前後方向の中央部に段部ST31を有しており、段部ST31の前側に位置する前側部分31ec、31fcが段部ST31の後側に位置する後側部分31ed、31fdよりも左方に位置している。
【0057】
前側部分31ecには、下縁近傍の前方にインク供給口ISP30が設けられており、その後方にインク排出口IDP30が設けられている。また、上縁近傍に2つの空気流通口AP30が前後に並んで設けられている。後側部分31edには、下縁近傍の後方にインク供給口ISP30が設けられており、その前方にインク排出口IDP30が設けられている。また、上縁近傍に2つの空気流通口AP30が前後に並んで設けられている。
【0058】
本体部31は更に、前壁31c及び後壁31dと平行であり、且つ左壁31eと右壁31fとの間に渡って延びる第1分離壁31w1、第2分離壁31w2、第3分離壁31w3を有する。
【0059】
第1分離壁31w1は、前後方向において、左壁31e、右壁31fの段部ST31と同一の位置に設けられている。第2分離壁31w2は、前後方向において、左壁31eの前側部分31ecのインク供給口ISP30とインク排出口IDP30の間、且つ2つの空気流通口AP30の間に設けられている。第3分離壁31w3は、前後方向において、左壁31eの後側部分31edのインク供給口ISP30とインク排出口IDP30の間、且つ2つの空気流通口AP30の間に設けられている。
【0060】
天板32は、一例として金属により形成された平板である。天板32の平面視形状は、上方から見た本体部31の輪郭の形状と同一である。天板32は、不図示のシールゴムを挟んで本体部31の上端部に固定されている。
【0061】
底板33は、金属(一例としてアルミニウム、銅、ステンレス等)により形成された平板である。これらの金属の熱伝導率は約20~400W/m・K程度であり、本体部31を形成する樹脂の熱伝導率よりも大きい。底板33の平面視形状は、上方から見た本体部31の輪郭の形状と同一である。
【0062】
図6に示す通り、底板33の下面には、10個のインク流通口セットSが設けられている。インク流通口セットSの各々は、第1インク供給口SP1、第2インク供給口SP2、第1インク排出口DP1、及び第2インク排出口DP2を含む。
【0063】
10個のインク流通口セットSはヘッドシステム100の幅方向に沿って千鳥状(ジグザグ状)に配置されている。また、各インク流通口セットSにおいては、第1インク供給口SP1、第2インク供給口SP2、第1インク排出口DP1、及び第2インク排出口DP2が幅方向に沿って千鳥状(ジグザグ状)に配置されている。
【0064】
底板33は、不図示のシールゴムを挟んで本体部31の下端部に固定されている。
【0065】
図5に示すように、サブタンク30の内部には、本体部31、天板32、及び底板33により、前側から順番に、第1貯留部R1、第2貯留部R2、第3貯留部R3、第4貯留部R4が画定されている。
【0066】
第1貯留部R1~第4貯留部R4の各々の長手方向の寸法、即ち左壁31eと右壁31fとの間の寸法は、一例として300mm~500mm程度である。また、第1貯留部R1~第4貯留部R4の各々の断面積(ヘッドシステム100の前後方向及び上下方向を含む面による断面の面積)は一例として1000mm2~1500mm2程度 である。
【0067】
図7は、第1貯留部R1、第2貯留部R2、第3貯留部R3、第4貯留部R4がインク流通口セットSとどのように接続されるかを示す。
図7は上面図であり
図6は底面図であるため、両図における10個のインク流通口セットSの配置、及び各供給口、各排出口の配置は紙面の上下に反転している。
【0068】
図7に示すように第1貯留部R1が各インク流通口セットSの第1インク供給口SP1(各セット内の右前方に位置する供給口)と連通する。第2貯留部R2が各インク流通口セットSの第1インク排出口DP1(各セット内の左前方に位置する排出口)と連通する。第3貯留部R3が各インク流通口セットSの第2インク排出口DP2(各セット内の右後方に位置する排出口)と連通する。第4貯留部R4が各インク流通口セットSの第2インク供給口SP2(各セット内の左後方に位置する供給口)と連通する。
【0069】
この構成は、例えば本体部31の下端部の近傍に、
図8に示す分配流路DCを設けることにより実現される。分配流路DCは、本体部31の各壁と一体に形成された立体構造により画定されており、第1貯留部R1と第1インク供給口SP1とを繋ぐトンネル状の流路DC1、第2貯留部R2と第1インク排出口DP1とを繋ぐトンネル状の流路DC2、第3貯留部R3と第2インク排出口DP2とを繋ぐトンネル状の流路DC3、及び第4貯留部R4と第2インク供給口SP2とを繋ぐトンネル状の流路DC4を含む。なお
図8は、本体部31の左壁31eの近傍のみを示している。
【0070】
流路DC1~流路DC4の配置は
図8に示す配置に限られず、第1貯留部R1~第4貯留部R4の各々の底部から対応する供給口又は排出口に向かう流路が互いに干渉しないように設けられた任意の態様とし得る。また、分配流路DCを本体部31とは別体の流路部材の内部に形成してもよい。
【0071】
サブタンクヒータ34は、第1貯留部R1~第4貯留部R4に貯留されたインクに熱を与える。サブタンクヒータ34は、予熱流路20のヒータ221と同様の面状ヒータであり、底板33の下面に設けられている(
図6)。
【0072】
本実施形態では、サブタンクヒータ34は、ヘッドシステム100の前後方向及び幅方向においてインク流通口セットSの間に位置するように、底板33の下面に貼り付けられている。サブタンクヒータ34において発生した熱は、金属板である底板33を介して分配流路DC、及び第1貯留部R1~第4貯留部R4のインクに与えられる。
【0073】
第1貯留部R1~第4貯留部R4の底部において温められたインクは、温度上昇により第1貯留部R1~第4貯留部R4の上部へと移動する。これにより第1貯留部R1~第4貯留部R4の各々の内部にインクの対流が生じるため、第1貯留部R1~第4貯留部R4の内部のインクは効率よく加熱される。
【0074】
左壁31eの4つの空気流通口AP30は、筐体10の4つの空気流通口AP10とそれぞれ不図示の管路により接続される。第1貯留部R1~第4貯留部R4の各々の内部は、インクが貯留された液相と、その上方の、空気が存在する気相とに分かれている。空気流通口AP10、AP30を介して第1貯留部R1、第4貯留部R4の気相の圧力を第2貯留部R2、第3貯留部R3の気相の圧力よりも大きくすることにより、第1貯留部R1、第4貯留部R4からヘッド機構40を経て第2貯留部R2、第3貯留部R3へと至るインク流れを生じさせる。
【0075】
図6に示す通り、ヘッドシステム100の前後方向の後ろ側に並ぶ5つのインク流通口セットSのうち、左から1つ目、3つ目、5つ目のインク流通口セットSの近傍に、温度測定器TM
30が1つずつ設けられている。温度測定器TM
30は一例としてサーミスタである。
【0076】
温度測定器TM30はサブタンク30から流出するインクの温度を測定する。温度測定器TM30により測定されたインクの温度は、中継基板70(後述)を介して制御部600に送られる。
【0077】
<ヘッド機構40>
ヘッド機構40は、サブタンク30から供給されたインクを媒体PMに向けて吐出する。ヘッド機構40はまた、内部を流れるインクの昇温も行う。
【0078】
図9に示す通り、10個のヘッド機構40の各々は、上から順番に、接続プレート41、一対の流路ブロック42、アライメントフレーム43、冷却フレーム44、フロントエンドフレーム45、ヘッド46を有する。
図11、
図14に示す通り、フロントエンドフレーム45の内部に、ヘッドヒータ機構47及び吐出制御部48が設けられている。ヘッド機構40は更に、
図14に示す通り、接続プレート41の上方とフロントエンドフレーム45との間に渡って上下方向に延びる配線接続部WCを有する。
【0079】
図9に示す通り、接続プレート41は、ヘッド機構40とヘッド機構40に接続される各管路とを接続するための板状部材である。接続プレート41には、接続プレート41を厚さ方向に貫通する6つの孔Hが設けられている。
【0080】
接続プレート41の6つの孔Hにはそれぞれ、第1インク供給管接続部ISC1、第2インク供給管接続部ISC2、第1インク排出管接続部IDC1、第2インク排出管接続部IDC2、冷媒供給管接続部CSC、及び冷媒排出管接続部CDCが挿入されている。
【0081】
各接続部ISC1、ISC2、IDC1、IDC2、CSC、CDCは、円筒状の部材である。各接続部の下端部には該下端部を囲むOリング(不図示)が設けられている。各接続部は、当該Oリングが孔H内に位置するように孔Hに挿入されて、接続プレート41の上面側に突出する。この状態において、各接続部は接続プレート41と直交して上下方向に延びる。
【0082】
各接続部の上端部はワンタッチ継手(管状部材を継手に挿入するだけで管状部材と継手との接続及び固定が完了するよう構成された継手)が接続されるように構成されている。即ち各接続部は、ワンタッチ継手が接続されるワンタッチ継手用の管状部材である。
【0083】
一対の流路ブロック42は、接続プレート41の下側において、サブタンク30から供給されたインクをヘッド46に供給する流路、及びヘッド46において吐出されなかったインクをサブタンク30に排出する流路を画定する。
【0084】
一対の流路ブロック42の各々は、一例としてPOM等の樹脂で形成されており、
図10に示す通り、矩形板状の主部MPと、主部MPから突出する第1台部BP1、第2台部BP2とを有する。
【0085】
主部MPの上面MPuには、流通口P1、P2が、主部MPの長辺方向に並んで形成されている。台部BP1の下面には流通口P3、P4が、主部MPの厚さ方向に並んで形成されており、台部BP2の下面には流通口P5、P6が、主部MPの厚さ方向に並んで形成されている。
【0086】
主部MPの面MPiには、第1凹溝G1と、第2凹溝G2とが形成されている。第1凹溝G1は、頂部G1tpから第1台部BP1に向けて斜め下方へ延びて下端部G1bt1に至る第1部分G11と、頂部G1tpから第2台部BP2に向けて斜め下方へ延びて下端部G1bt2に至る第2部分G12とを含む。第2凹溝G2は、頂部G2tpから第1台部BP1に向けて斜め下方に延びて下端部G2bt1に至る第1部分G21と、頂部G2tpから第2台部BP2に向けて斜め下方に延びて下端部G2bt2に至る第2部分G22とを含む。
【0087】
主部MPの内部には、流通口P1と第1凹溝G1とを繋ぐ流路C1、流通口P2と第2凹溝G2とを繋ぐ流路C2、流通口P3と第1凹溝G1とを繋ぐ流路C3、流通口P4と第2凹溝G2とを繋ぐ流路C4、流通口P5と第1凹溝G1とを繋ぐ流路C5、流通口P6と第2凹溝G2とを繋ぐ流路C6が設けられている。
【0088】
一対の流路ブロック42は、面MPi同士が対向するように、弾性シート(不図示)を挟んで接合されている。一対の流路ブロック42の接合体は不図示のシールゴムを介して接続プレート41の下面に固定されている。この状態において、
図9の紙面奥側の流路ブロック42の流通口P1、P2が接続プレート41の孔Hを介して第2インク供給管接続部ISC2、第2インク排出管接続部IDC2にそれぞれ連通し、
図9の紙面手前側に位置する流路ブロック42の流通口P1、P2が接続プレート41の孔Hを介して第1インク供給管接続部ISC1、第1インク排出管接続部IDC1にそれぞれ連通する。
【0089】
アライメントフレーム43は、一例としてSUS製の平板部材である。アライメントフレーム43は、中央部を上下に貫通する平面視矩形の中央貫通孔TH43と、中央貫通孔TH43の周囲に設けられた平面視円形の8個のインク流路IC43とを有する。
【0090】
アライメントフレーム43は、一対の流路ブロック42の下面に固定されている。この状態において、一対の流路ブロック42の下面の流通口P3~流通口P6がアライメントフレーム43のインク流路IC43に連通する。
【0091】
冷却フレーム44は、
図11に示す通り、平面視矩形の、厚手の板状部材である 。冷却フレーム44は、一例として、アルミニウム等の熱伝導率の高い材質で形成されてもよい。
【0092】
冷却フレーム44の内部には、平面視略U字形の冷媒流路CCが形成されている。冷媒流路CCは、冷却フレーム44の上面の冷媒供給口CSP44と冷媒排出口CDP44との間で、平面視略U字状に延びている。冷媒流路CCの周囲には、平面視円形の8個のインク流路IC44と、中央貫通孔TH44とが設けられている。
【0093】
冷却フレーム44は、アライメントフレーム43の下面に固定されている。この状態において、アライメントフレーム43の8つのインク流路IC43の各々が冷却フレーム44の8つのインク流路IC44の各々に連通する。
【0094】
図9に示す通り、接続プレート41と冷却フレーム44との間に、冷媒供給管CST及び冷媒排出管CDTが設けられている。冷媒供給管CSTの上端にはOリング(不図示)が設けられている。冷媒供給管CSTは、その上端を、当該Oリングとともに、接続プレート41の冷媒供給管接続部CSCが接続された孔Hに下側から挿入することにより、接続プレート41に接続される。また、冷媒供給管CSTの下端部は、アライメントフレーム43の中央貫通孔TH
43を介して冷却フレーム44の冷媒供給口CSP
44に接続している。
【0095】
冷媒排出管CDTの上端にはOリング(不図示)が設けられている。冷媒排出管CDTは、その上端を、当該Oリングとともに、接続プレート41の冷媒排出管接続部CDCが接続された孔Hに下側から挿入することにより、接続プレート41に接続される。また、冷媒排出管CDTの下端部は、アライメントフレーム43の中央貫通孔TH43を介して冷却フレーム44の冷媒排出口CDP44に接続している。
【0096】
フロントエンドフレーム45は、一例としてSUS製の平板部材である。フロントエンドフレーム45は、中央部を上下に貫通する平面視矩形の中央貫通孔TH45と、中央貫通孔TH45の周囲に設けられた平面視略矩形の8個のインク流路IC45とを有する。
【0097】
フロントエンドフレーム45は、冷却フレーム44の下面に固定されている。この状態において、8個のインク流路IC45の各々が、冷却フレーム44の8個のインク流路IC44の各々と連通する。
【0098】
ヘッド46は、流路ユニット461と、圧電アクチュエータ462とを備える(
図11、
図12)。
【0099】
図13に示す通り、流路ユニット461は、インク封止膜461A、プレート461B~461E、及びノズルプレート461Fが、上からこの順に積層された積層構造体である。
図12に示す通り、流路ユニット461の内部には、流路CHが形成されている。
【0100】
流路CHは、8個のインク流通口IP46と、4本のマニホールド流路M1、M2、M3、M4と、48個の個別流路iCHとを含む。4本のマニホールド流路M1~M4の各々は、直線状の流路であり、両端部においてインク流通口IP46に連通している。4本のマニホールド流路M1~M4の各々には12個の個別流路iCHが接続している。
【0101】
個別流路iCHの各々は、
図13に示す通り、圧力室1、ディセンダ流路2、ノズル3を含む。圧力室1の上面はインク封止膜461Aにより形成されている。ディセンダ流路2は圧力室1からノズル3に向けて、上下方向に延びている。ノズル3は、インクを媒体PMに向けて吐出する微小開口であり、ノズルプレート461Fに形成されている。ノズルプレート461Fの下面がヘッド機構40の下面であり、ノズル面40nである。ノズル面40nには、マニホールド流路M1~M4が延びる方向に沿ってノズル列L
3(
図12)が形成される。
【0102】
圧電アクチュエータ462は、
図13に示す通り、流路ユニット461の上面に設けられた第1圧電層L1と、第1圧電層L1の上方の第2圧電層L2と、第1圧電層L1、第2圧電層L2に挟まれた共通電極cETと、第2圧電層L2の上面に設けられた複数の個別電極iETにより構成されている。複数の個別電極iETは、複数の個別流路iCHの圧力室1の上方にそれぞれが位置するように、第2圧電層L2の上面に設けられている。第2圧電層L2のうち、共通電極cETと複数の個別電極iETの各々とに挟まれた部分は、厚み方向に分極した活性部ACとなる。
【0103】
ヘッドヒータ機構47は、ヘッド46に熱を与えて、ヘッド46内を流れるインクを加熱する。
図11に示す通り、ヘッドヒータ機構47は、伝熱部材471と、フィルムヒータ472と、板ばね473とを有する。
【0104】
伝熱部材471は、熱伝導率の高い金属、一例としてアルミニウムにより形成されている。伝熱部材471は、
図11(
図11の囲み図は伝熱部材471の下面斜視図を示す)、
図14に示す通り、平面視略正方形の板部471Aと、板部471Aの上面の両端部から上方に突出する一対の壁部471Bと、板部471Aの下面の外縁から下方に突出する枠状の凸部471Cとを有する。
【0105】
伝熱部材471は、枠状の凸部471Cの下端部が圧電アクチュエータ462の周囲(外側)において流路ユニット461に当接するように、ヘッド46の上面に取り付けられている。なお、枠状の凸部471Cと流路ユニット461との間には、一部において吐出制御部48のフレキシブルプリント基板481が挟まれる(後述)。
【0106】
フィルムヒータ472は、平面視略正方形である。フィルムヒータ472は、その発熱面が伝熱部材471の板部471Aの上面に当接するように、伝熱部材471の上に配置されている。フィルムヒータ472で発生した熱は、伝熱部材471を介して流路ユニット461に与えられる。
【0107】
板ばね473は、フィルムヒータ472の上面に配置されている。
【0108】
吐出制御部48は、
図11、
図14に示す通り、FPC(Flexible Printed Circuits、フレキシブルプリント回路基板)481とドライバICが実装された制御基板482とを備える。FPC481は
図11では図示を省略している。
【0109】
FPC481は帯状であり、長手方向の中央部481Aに、複数の接点(不図示)が形成されている。
【0110】
制御基板482は、ヘッドヒータ機構47の板ばね473の上方に、伝熱部材471の板部471Aと平行に配置されている。制御基板482は板ばね473によりフィルムヒータ472から離間されるとともに、冷却フレーム44に当接される。またフィルムヒータ472の輻射熱が板ばね473により遮られ、制御基板482の加熱が抑制される。
【0111】
図14に示すように、FPC481は、中央部481Aの複数の接点の各々が、圧電アクチュエータ462の複数の個別電極iETの各々と電気的に接続するように、圧電アクチュエータ462の上面に配置される。FPC481の中央部481Aの外側の部分は、ヘッドヒータ機構47の伝熱部材471とヘッド46との間を通り、伝熱部材471の側面に沿って上方に延びて、制御基板482に接続している。これにより、圧電アクチュエータ462の複数の個別電極iETの各々が、FPC481を介して制御基板482に接続される。
【0112】
ヘッド46は、フロントエンドフレーム45に固定されている。この状態において、8個のインク流通口IP46の各々が、フロントエンドフレーム45の8個のインク流路IC45の各々と連通する。圧電アクチュエータ462、ヘッドヒータ機構47、吐出制御部48は、フロントエンドフレーム45の中央貫通孔TH45の内部に配置される。
【0113】
図14に示す通り、流路ユニット461の上面の、伝熱部材471と接触する領域の近傍に、温度測定器TM
40が設けられている。温度測定器TM
40は一例としてサーミスタである。なお、温度測定器TM
40は、
図11では図示を省略している。
【0114】
温度測定器TM40は流路ユニット461内の流路CHを流れるインクの温度を測定する。温度測定器TM40により測定されたインクの温度は、中継基板70(後述)を介して制御部600に送られる。
【0115】
配線接続部WCは基板状であり、
図14に示すように上下に延びる。配線接続部WCの上端部は、接続プレート41の上方且つ接続プレート41に隣接する位置に配置される。配線接続部WCの下端部は、フロントエンドフレーム45の中央貫通孔TH
45の内部に位置する。配線接続部WCは、アライメントフレーム43の中央貫通孔TH
43、冷却フレーム44の中央貫通孔TH
44を上下方向に貫通している。
【0116】
配線接続部WCの上端には中継基板70から延びるフレキシブル基板71が接続される(後述)。配線接続部WCの下端にはヘッドヒータ機構47のフィルムヒータ472と、温度測定器TM40と、吐出制御部48の制御基板482が接続される。
【0117】
ヘッド機構40の各々は、アライメントフレーム43を介して、筐体10の第1部分11の底部11bに固定されている。この状態において、各ヘッド機構40のノズル面40nが筐体10の下方に向けて露出する。また、ノズル面40nのノズル列L3はヘッドシステム100の幅方向に沿って延びる。
【0118】
図15に示す通り、筐体10の第1部分11の底部11bには、10個のヘッド機構40が幅方向に沿って千鳥状(ジグザグ状)に配置されている。10個のヘッド機構40の各々は、冷媒供給管接続部CSC及び冷媒排出管接続部CDCが前側に位置し、配線接続部WCが後側に位置するように設けられている。
【0119】
底部11bの前側に、5個のヘッド機構40が、ヘッドシステム100の幅方向に沿って等間隔で配置されている。底部11bの前側のヘッド機構40の列を、適宜前列FLと呼ぶ。前列FLの後ろ側に、残る5個のヘッド機構40が、ヘッドシステム100の幅方向に沿って等間隔で配置されている。前列FLの後ろ側のヘッド機構40の列を、適宜後列RLと呼ぶ。
【0120】
冷媒供給管接続部CSC、第1インク排出管接続部IDC1、冷媒排出管接続部CDC、及び第1インク供給管接続部ISC1は、ヘッドシステム100の幅方向に沿って、左から右にこの順番で、千鳥状(ジグザグ状)に並ぶ。
【0121】
第2インク供給管接続部ISC2、第1インク排出管接続部IDC1、第2インク排出管接続部IDC2、及び第1インク供給管接続部ISC1は、ヘッドシステム100の幅方向に沿って、左から右にこの順番で、千鳥状(ジグザグ状)に並ぶ。
【0122】
第2インク供給管接続部ISC2、冷媒供給管接続部CSC、第2インク排出管接続部IDC2、及び冷媒排出管接続部CDCは、ヘッドシステム100の幅方向に沿って、左から右にこの順番で、千鳥状(ジグザグ状)に並ぶ。
【0123】
ここで、底部11bにおける10個のヘッド機構40の配置(
図15)は、サブタンク30の底板33における10個のインク流通口セットSの配置(
図6、
図7)に対応している。即ち、即ち、10個のヘッド機構40はそれぞれ、10個のインク流通口セットSの真下に位置する。
【0124】
10個のインク流通口セットSの1つと、その真下に位置するヘッド機構40との間では、平面視において、第1インク供給口SP1と第1インク供給管接続部ISC1とが同位置にあり、第2インク供給口SP2と第2インク供給管接続部ISC2とが同位置にあり、第1インク排出口DP1と第1インク排出管接続部IDC1とが同位置にあり、第2インク排出口DP2と第2インク排出接続部IDC2とが同位置にある。即ち、平面視において、各供給口又は各排出口の中心と各接続部内に画定された流路の中心とが一致している。
【0125】
<サブタンク30とヘッド機構40との間のインク流路>
図2に示す通り、ヘッド機構40の各々は、インク管セットITSによってサブタンク30に接続されている。インク管セットITSは、
図2においては1本の線により図示されているが、4つの管路、即ち第1インク供給管IST1、第2インク供給管IST2、第1インク排出管IDT1、及び第2インク排出管IDT2を含む(
図19)。
【0126】
図16に示す通り、第1インク供給管IST1、第2インク供給管IST2、第1インク排出管IDT1、第2インク排出管IDT2は互いに同一の形状を有し、それぞれ上下方向に直線状に延びる主部MTと、主部MTの下端部に設けられた継手部JTとを有する。
【0127】
主部MTは、樹脂又は金属で形成された円管である。継手部JTは、本実施形態ではワンタッチ継手である。継手部JTの外径は、主部MTの外径よりも大きい。継手部JTを大径部、主部MTを小径部と呼んでもよい。
【0128】
ヘッド機構40の各々と、その真上に位置するサブタンク30のインク流通口セットSとの間において、第1インク供給管IST1の上端が第1インク供給口SP1に接続されており、第1インク供給管IST1の継手JTが第1インク供給管接続部ISC1に接続されている。第2インク供給管IST2の上端が第1インク供給口SP2に接続されており、第2インク供給管IST2の継手JTが第2インク供給管接続部ISC2に接続されている。第1インク排出管IDT1の上端が第1インク排出口DP1に接続されており、第1インク排出管IDT1の継手JTが第1インク排出管接続部IDC1に接続されている。第2インク排出管IDT2の上端が第2インク排出口DP2に接続されており、第2インク排出管IDT2の継手JTが第2インク排出管接続部IDC2に接続されている。
【0129】
これにより、第1インク供給管IST1、第2インク供給管IST2、第1インク排出管IDT1、第2インク排出管IDT2は、サブタンク30の下方、且つ複数のヘッド機構40の上方において、サブタンク30とヘッド機構40との間の全域において上下方向に直線状に延びて、サブタンク30と複数のヘッド機構40の各々とを接続する。
【0130】
図18及び
図19に示す通り、インク管セットITSの近傍には、予熱流路20の流路ブロック21が、インク管セットITSの近傍に配置されている。したがって、流路ブロック21に貼り付けられた輻射シート23から輻射された熱によりインク管セットITSが温められ、インク管セットITSの内部を流れるインクが加温され、又は内部を流れるインクの温度が維持される。
【0131】
図18に示す通り、各ヘッド機構40に関して、その真上の予熱流路20は、流路ブロック21に貼り付けられた輻射シート23が該ヘッド機構40に接続された第1インク供給管IST1及び第1インク排出管IDT1の外周面に対向するように、第1インク供給管IST1及び第1インク排出管IDT1の前方に配置されている。具体的には、予熱流路20は、流路ブロック21の下端部が第1インク供給管IST1及び第1インク排出管IDT1の継手部JTの上端よりも上方に位置するように、即ち、上下方向における流路ブロック21の全域が第1インク供給管IST1及び第1インク排出管IDT1の主部MTと対向するように配置されている。主部MTよりも外径が大きい継手部JTの位置と流路ブロック21の位置とを上下方向において異ならせることで、輻射シート23と第1インク供給管IST1及び第1インク排出管IDT1の主部MTとの間の隙間を小さくすることができる。したがって、予熱流路20とインク管セットITSとを前後方向においてコンパクトに配置することができ、且つ予熱流路20の輻射シート23から輻射される熱をインク管セットITSを流れるインクに効率よく与えることができる。
【0132】
<冷媒流通機構50、冷却機構60>
冷媒流通機構50は、10個のヘッド機構40への冷媒(一例として水)の供給、及び10個のヘッド機構40からの冷媒の排出を行う。
【0133】
図2に示す通り、冷媒流通機構50は、筐体10の第1部分11の内部において、サブタンク30の下方、且つ複数のヘッド機構40の上方に配置されている。
【0134】
図17に示す通り、冷媒流通機構50は、2本の冷媒供給マニホールド51、及びこれに接続された10本の冷媒供給管52と、2本の冷媒排出マニホールド53、及びこれに接続された10本の冷媒排出管54を主に備える。
【0135】
2本の冷媒供給マニホールド51はそれぞれ、ヘッドシステム100の幅方向に延びる直線状の円管であり、内部に冷媒流路が画定されている。冷媒供給マニホールド51は、一例としてステンレスにより形成され得る。
【0136】
2本の冷媒供給マニホールド51の上流端51aはそれぞれ、不図示の管路により筐体10の第1部分11の冷媒供給口CSP10に接続されている。冷媒供給マニホールド51の下流端51bは閉塞されている。
【0137】
2本の冷媒供給マニホールド51の一方は、10個のヘッド機構40の内、前列FLに含まれる5個のヘッド機構40の上方に位置している。より具体的には、
図18に示す通り、前列FLに含まれるヘッド機構40に接続されたインク管セットITSの後方、且つ前列FLに含まれるヘッド機構40の配線接続部WCの真上に位置している。
【0138】
2本の冷媒供給マニホールド51の他方は、10個のヘッド機構40の内、後列RLに含まれるヘッド機構40の上方に位置している。より具体的には、
図18に示す通り、後列RLに含まれるヘッド機構40に接続されたインク管セットITSの後方、且つ後列RLに含まれる5個のヘッド機構40の配線接続部WCの真上に位置している。
【0139】
冷媒供給管52は、冷媒供給マニホールド51とヘッド機構40の冷媒供給管接続部CSCとを接続する管路である。冷媒供給管52は、2本の冷媒供給マニホールド51の各々に対して5本ずつ、等間隔で接続されている。
【0140】
図19に示す通り、冷媒供給管52の各々は、冷媒供給マニホールド51から真下に延びる直線部52Aと、直線部52Aと冷媒供給管接続部CSCとを繋ぐ屈曲継手部52Bとを含む。屈曲継手部52Bは、直線部52Aの下端から、上下方向と直交する面内を右前方へと延びて冷媒供給管接続部CSCに至る。
【0141】
2本の冷媒排出マニホールド53はそれぞれ、ヘッドシステム100の幅方向に延びる直線状の円管であり、内部に冷媒流路が画定されている。冷媒排出マニホールド53の管径は冷媒供給マニホールド51の管径より大きくてもよく、冷媒排出マニホールド53内に画定される冷媒流路の径は冷媒供給マニホールド51内に画定される冷媒流路の径より大きくてもよい。冷媒排出マニホールド53は、一例としてステンレスにより形成され得る。
【0142】
2本の冷媒排出マニホールド53の上流端53aは閉塞されている。2本の冷媒排出マニホールド53の下流端53bそれぞれ、不図示の管路により筐体10の第1部分11の冷媒排出口CDP10に接続されている。
【0143】
図18に示す通り、2本の冷媒排出マニホールド53の一方は、前列FLに含まれるヘッド機構40に接続された冷媒供給マニホールド51の真上に位置して、当該冷媒供給マニホールド51と平行に延びている。2本の冷媒排出マニホールド53の他方は、後列RLに含まれるヘッド機構40に接続された冷媒供給マニホールド51の真上に位置して、当該冷媒供給マニホールド51と平行に延びている。
【0144】
冷媒排出管54は、冷媒排出マニホールド53とヘッド機構40の冷媒排出管接続部CDCとを接続する管路である。冷媒排出管54は、2本の冷媒排出マニホールド53の各々に対して5本ずつ、等間隔で接続されている。
【0145】
図19に示す通り、冷媒排出管54の各々は、冷媒排出マニホールド53から前方且つ下方に延びる直線部54Aと、直線部54Aと冷媒排出管接続部CDCとを繋ぐ屈曲継手部54Bとを含む。
【0146】
屈曲継手部54Bは、直線部54Aの下端から、上下方向と直交する面内を左方へと延びて冷媒排出管接続部CDCに至る。
【0147】
冷媒流通機構50と、ヘッド機構40の冷却フレーム44、冷媒供給管CST、及び冷媒排出管CDTとにより、吐出制御部48の制御基板482を冷却する冷却機構60が構成される。冷却機構60は、制御基板482が当接する冷却フレーム44を冷媒により冷却することで、制御基板482の冷却を行う。
【0148】
<中継基板70>
中継基板70は、制御基板部80とヘッド機構40の吐出制御部48との中継を主に行う。中継基板70はまた、筐体10の電気コネクタCNから供給された電力を、制御基板部80、吐出制御部48、筐体10内の各ヒータに分配する。
【0149】
図2、
図18に示すように、中継基板70は、天板11aの右端側の下面に、天板11aと平行に取り付けられている。即ち、中継基板70の実装面は、天板11aの上下面と平行であり、幅方向及び前後方向を含む面と平行である。
【0150】
天板11aの中継基板70の上方に位置する領域には、ヘッドシステム100の幅方向に長い矩形の開口OPが設けられている。
【0151】
図18に示すように、中継基板70は、10個のヘッド機構40の各々と、フレキシブル基板71により接続されている。フレキシブル基板71には、制御基板部80と吐出制御部48とを繋ぐ配線、制御基板部80と温度計測器TM
40とを繋ぐ配線、ヘッドヒータ機構47及び吐出制御部48に電力を供給する配線等が設けられている。
【0152】
フレキシブル基板71は、10個のヘッド機構40の各々について1つずつ設けられている。フレキシブル基板71の一端はヘッド機構40の配線接続部WCに接続されており、他端は中継基板70に接続されている。
【0153】
中継基板70は、不図示の配線により、第1部分11の左壁11eの電気コネクタCN、予熱流路20のヒータモジュール22、サブタンク30のヒータ34に接続されている。
【0154】
中継基板70は、不図示の配線により、予熱流路20の温度測定器TM20と接続されている。中継基板70はまた、不図示の配線によりサブタンク30の温度測定器TM30と接続されている。
【0155】
<制御基板部80>
制御基板部80は、プリンタ1000の制御部600から印刷データ信号を受け取り、中継基板70を介して各ヘッド機構40の吐出制御部48に送る。また、中継基板70から受け取った温度測定器TM
20、TM
30、TM
40からの情報等を制御部600に送る。制御基板部80は、筐体10の第2部分12の内部に設けられている(
図2)。
【0156】
第2部分12の底板12bに設けられた開口(不図示)を介して、制御基板部80の端子(不図示)が下方に突出している。第1部分11の天板11aに設けられた開口OPを介して当該端子を中継基板70のコネクタ(不図示)に着脱することにより、第2部分12の第1部分11に対する着脱が行われる。
【0157】
<インクの流れ>
ここで、
図20、
図21を参照して、ヘッドシステム100におけるインクの流れを整理する。ヘッドシステム100には最大で2種類のインクを同時に流すことが出来る。
【0158】
図20に示す通り、リザーバ500より、筐体10の2つのインク供給口ISP
10のうち前側のインク供給口ISP
10に供給された第1インクは、管路を介して前側の予熱流路20のインク流路IC
20の上流端ICa
20に流入し、インク流路IC
20で昇温された後、インク流路IC
20の下流端ICb
20から流出する。第1インクは、予熱流路20の内部で、ヒータモジュール22のヒータ221により昇温される。
【0159】
インク流路IC20の下流端ICb20から流出した第1インクは、管路を介してサブタンク30のインク供給口ISP30から第1貯留部R1に流入する。第1インクは、第1貯留部R1の内部で、サブタンクヒータ34により昇温される。
【0160】
第1貯留部R1の内部の第1インクは、サブタンク30の下部の分配流路DCにより、底部33の10個のインク流通口セットSの各々の第1インク供給口SP1に供給され、第1インク供給管IST1を通って、10個のヘッド機構40の各々の第1インク供給管接続部ISC1からヘッド機構40に流入する。この時、第1インク供給管IST1を流れる第1インクは、予熱流路20の輻射シート23から輻射される熱により保温又は昇温される。
【0161】
ヘッド機構40に流入した第1インクは、ヘッド機構40の内部で第1、第2マニホールドM1、M2を流れ、これらに接続された個別流路iCHのノズル3から媒体PMに吐出される。マニホールドM1、M2を流れる第1インクはヘッドヒータ機構47により昇温される。
【0162】
ノズル3から吐出されなかった第1インクは、ヘッド機構40の第1インク排出管接続部IDC1から、第1インク排出管IDT1を介して、インク流通口セットSの第1インク排出口DP1に流入し、分配流路DCを介して第2貯留部R2に至る。その後、第1インクは、サブタンク30の前側のインク排出口IDP30から流出し、管路を介して筐体10のインク排出口IDP10に至り、リザーバ500に戻される。
【0163】
ここで、筐体10の前側のインク供給口ISP10の下流側且つサブタンク30のインク供給口ISP30の上流側の流路を前側供給流路ICS1とする。前側供給流路ICS1は、筐体10の前側のインク供給口ISP10から前側の予熱流路20内のインク流路IC20を経てサブタンク30のインク供給口ISP30に至る流路である。
【0164】
図21に示す通り、リザーバ500から、筐体10の2つのインク供給口ISP
10のうち後ろ側のインク供給口ISP
10に供給された第2インク(第1インクと異なる種類であり得る)は、管路を介して後ろ側の予熱流路20のインク流路IC
20の上流端ICa
20に流入し、インク流路IC
20で昇温された後、インク流路IC
20の下流端ICb
20から流出する。第2インクは、予熱流路20の内部で、ヒータモジュール22のヒータ221により昇温される。
【0165】
インク流路IC20の下流端ICb20から流出した第2インクは、管路を介してサブタンク30のインク供給口ISP30から第4貯留部R4に流入する。第2インクは、第4貯留部R4の内部で、サブタンクヒータ34により昇温される。
【0166】
第4貯留部R4の内部の第2インクは、サブタンク30の下部の分配流路DCにより、底部33の10個のインク流通口セットSの各々の第2インク供給口SP2に供給され、第2インク供給管IST2を通って、10個のヘッド機構40の各々の第2インク供給管接続部ISC2からヘッド機構40に流入する。この時、第2インク供給管IST2を流れる第2インクは、予熱流路20の輻射シート23から輻射される熱により保温又は昇温される。
【0167】
ヘッド機構40に流入した第2インクは、ヘッド機構40の内部で第3、第4マニホールドM3、M4を流れ、これらに接続された個別流路iCHのノズル3から媒体PMに吐出される。マニホールドM3、M4を流れる第2インクはヘッドヒータ機構47により昇温される。
【0168】
ノズル3から吐出されなかった第2インクは、ヘッド機構40の第2インク排出管接続部IDC2から、第2インク排出管IDT2を介して、インク流通口セットSの第2インク排出口DP2に流入し、分配流路DCを介して第3貯留部R3に至る。その後、第2インクは、サブタンク30のインク排出口IDP30から流出し、管路を介して筐体10のインク排出口IDP10に至り、リザーバ500に戻される。
【0169】
ここで、筐体10の後ろ側のインク供給口ISP10の下流側且つサブタンク30のインク供給口ISP30の上流側の流路を後ろ側供給流路ICS2とする。後ろ側供給流路ICS2は、筐体10の後ろ側のインク供給口ISP10から後ろ側の予熱流路20内のインク流路IC20を経てサブタンク30のインク供給口ISP30に至る流路である。
【0170】
<温度制御>
次に、本実施形態の液体吐出装置900において制御部600が実行する、ヘッドシステム100内を流れるインクの温度制御について、インクがUVインクである場合を例として説明する。
【0171】
UVインクの最適吐出温度(ヘッド機構40のノズル3からの吐出に最も適した温度)は約39℃~41℃である。したがって制御部600は、ヘッド機構40のノズル3から吐出されるインクの温度が約40℃となるように、ヘッドシステム100内を流れるインクの温度を制御する。
【0172】
ここでは、
図20に示す前側の流路を流れるインクの温度制御について説明するが、
図21に示す後ろ側の流路を流れるインクの温度制御も前側の流路を流れるインクの温度制御と実質的に同一である。
【0173】
制御部600は、予熱流路20のヒータモジュール22、サブタンク30のサブタンクヒータ34、及びヘッド機構40のヘッドヒータ機構47の出力を制御することによりインクの温度制御を行う。なお、ここでは制御部600は、ヘッドシステム100の流れるインクの流量(流速)の能動的な制御(変更)を行うことなくインクの温度制御を行うものとする。ただし、制御部600にインクの流量の能動的な制御を行わせてもよい。
【0174】
(1)ヒータモジュール22の制御
制御部600は、インク供給口ISP10を介してヘッドシステム100に流入したT0[℃]のインクを、前側供給流路ICS1内においてT1[℃]まで昇温するように、ヒータモジュール22を制御する。即ち、制御部600は、前側供給流路ICS1内におけるインク温度制御の目標温度をT1[℃]としてヒータモジュール22の出力を制御する。
【0175】
以下、温度T0[℃]を、適宜「初期温度T0」と記載し、温度T1[℃]を、適宜「供給流路目標温度T1」と記載する。また、供給流路目標温度T1から初期温度T0を引いた差分をΔT1とし、以下、適宜「供給流路目標昇温幅ΔT1」と記載する。
【0176】
制御部600は、インク流路IC20の上流端ICa20の近傍に設けられた温度測定器TM20の出力に基づいて、前側供給流路ICS1を流れるインクの温度を取得する。インク流路IC20の上流端ICa20の上流側ではインクの加熱は行われないため、温度測定器TM20の出力に基づいて取得されるインクの温度は、初期温度T0にほぼ等しい。
【0177】
制御部600は、温度測定器TM20を介して取得した初期温度T0に基づいて、ヒータモジュール22の出力を制御する。ヒータモジュール22の出力に応じてインクに与えられる熱の量は、前側供給流路ICS1の構造(流路長、流路断面積、各構造の熱伝導率等)とインクの流量に基づいて既知である。そのため制御部600は、初期温度T0に基づいて、供給流路目標温度T1を達成するために必要なヒータモジュール22の出力量を知ることが出来る。
【0178】
初期温度T0は常温(室温)であり、通常は20℃~25℃程度である。供給流路目標温度T1は、本実施形態では、約34℃~36℃程度である。供給流路目標昇温幅ΔT1は、本実施形態では約9℃~16℃程度である。
【0179】
(2)サブタンクヒータ34の制御
制御部600は、インク供給口ISP30を介してサブタンク30の第1貯留部R1に流入したインクを、サブタンク30内においてT2[℃]まで昇温するように、サブタンクヒータ34を制御する。即ち、制御部600は、サブタンク30内におけるインク温度制御の目標温度をT2[℃]としてサブタンクヒータ34の出力を制御する。
【0180】
以下、温度T2[℃]を、適宜「サブタンク目標温度T2」と記載する。また、サブタンク目標温度T2から供給流路目標温度T1を引いた差分をΔT2とし、以下、適宜「サブタンク目標昇温幅ΔT2」と記載する。
【0181】
制御部600は、サブタンク30の底板33に設けられた温度測定器TM30の出力に基づいてサブタンク30から第1インク供給管IST1へと流出するインクの温度を取得する。そして、当該温度がサブタンク目標温度T2に一致するように、サブタンクヒータ34の出力を制御する。
【0182】
サブタンク目標温度T2は、本実施形態では、約36℃~37℃程度である。サブタンク目標昇温幅ΔT2は、本実施形態では約1℃~3℃程度である。
【0183】
(3)ヘッドヒータ機構47の制御
制御部600は、第1インク供給管IST1を介してヘッド機構40に流入したインクを、ヘッド機構40内においてT3[℃]まで昇温するように、ヘッドヒータ機構47を制御する。即ち、制御部600は、ヘッド機構40内におけるインク温度制御の目標温度をT3[℃]としてヘッドヒータ機構47の出力を制御する。
【0184】
以下、温度T3[℃]を、適宜「目標吐出温度T3」と記載する。また、目標吐出温度T3からサブタンク目標温度T2を引いた差分をΔT3とし、以下、適宜「ヘッド目標昇温幅ΔT3」と記載する。
【0185】
制御部600は、流路ユニット451の上面に設けられた温度測定器TM40の出力に基づいてマニホールドM1、M2内を流れるインクの温度を取得する。そして、当該温度が目標吐出温度T3に一致するように、ヘッドヒータ機構47の出力を制御する。
【0186】
目標吐出温度T3は、本実施形態では、UVインクの最適吐出温度である約39℃~41℃である。ヘッド目標昇温幅ΔT3は、本実施形態では約2℃~5℃程度である。
【0187】
なお、前述の通り、インク供給管IST1を流れるインクには、予熱流路20の輻射シート23から輻射熱が与えられ、輻射熱によりインクが昇温する場合もある。この場合は、ヘッド目標昇温幅ΔT3の一部は、予熱流路20からの輻射熱により達成される。
【0188】
このように、制御部600は、ヘッドシステム100に供給されたインクの温度がヘッド機構40において最適吐出温度となるよう、予熱流路20、サブタンク30、ヘッド機構40を介して徐々に温める。サブタンク目標温度T2は供給流路目標温度T1よりも高く、目標吐出温度T3はサブタンク目標温度T2よりも高い。即ち、T1<T2<T3の関係が成り立つ。
【0189】
また、供給流路目標昇温幅ΔT1は、サブタンク目標昇温幅ΔT2、及びヘッド目標昇温幅ΔT3よりも大きい。
【0190】
ここで、本実施形態のヘッドシステム100において、予熱流路20を設けることの意義、及び予熱流路20、サブタンク30、ヘッド機構40の各々においてインクの加温を行うことの意義を説明する。
【0191】
ヘッドシステム(ヘッドバーシステム)はコンパクトであることが望まれるため、ヘッドシステムが通常備えるサブタンクにおいてインクの加温を行うことが考えられる。しかしながら本発明の発明者は、サブタンクにおいて加温を行うと形成される画像品質に劣化が生じ得るとの知見を得て、鋭意研究の末、その理由がサブタンクでのインク加温に起因する、複数のヘッド間でのインク温度のバラツキであることを見出した。本発明の発明者の知見に従って具体的に説明すると、次の通りである。
【0192】
サブタンクはインクを複数のヘッドに分配するためのタンクであり、1つの流入口から流入したインクを、複数の流出口から流出させるよう構成されている。ここで、複数の流出口は、複数のヘッドの各々に対応して1つずつ設けられており、その位置は互いに異なる。したがって、サブタンク内に画定される、インクの流入口から複数の流出口の各々に至る流路の流路長は互いに異なる。例えば、本実施形態においては、サブタンク30の左壁31eに設けられたインク供給口ISP30から、左右方向に沿って配置された複数の第1インク供給口SP1の各々までの流路長は互いに異なっている。最も左側に位置する第1インク供給口SP1は、複数の第1インク供給口SP1の中で最もインク供給口ISP30に近いため、インク供給口ISP30から最も左側に位置する第1インク供給口SP1に至る流路の流路長が最も短い。これに対し、最も右側に位置する第1インク供給口SP1は、複数の第1インク供給口SP1の中で最もインク供給口ISP30から遠くに位置するため、インク供給口ISP30から最も右側に位置する第1インク供給口SP1に至る流路の流路長が最も長い。
【0193】
したがって、サブタンクに設けたヒータによりインクの加温を行う場合は、サブタンクへの流入口の近傍に配置された流出口から流出するインクについては、加温される領域の流路長が短くなり、昇温量は小さくなる。反対に、サブタンクへの流入口から遠い位置に設けられた流出口から流出するインクについては、加温される領域の流路長が長くなり、昇温量が大きくなる。
【0194】
具体的には例えば、本実施形態のサブタンク30のインク供給口ISP30から第1貯留部R1に20℃のUVインクを供給した場合、左右方向の最も左側に位置するインク供給口SP1から流出するインクは26℃程度となり、最も右側に位置するインク供給口SP1から流出するインクは36℃程度となることが観察された。この場合、ヘッドシステム100の幅方向の最も左側に位置するヘッド機構40と最も右側に位置するヘッド機構40との間で、内部に流れるインクの温度に10℃程度の差が生じる。
【0195】
このように、サブタンクにより常温又は室温(即ち、初期温度T0)からのインクの昇温を行う場合は、サブタンクヒータが延びる方向に沿って複数の第1インク供給口SP1が並んでいるため、複数の流出口から流出するインクの温度を均一とすることが難しく、ひいては複数のヘッドの各々を流れるインクの温度を均一とすることが難しい。したがって、ヘッドごとのインクの温度及び粘度が異なってしまい、インクの吐出により媒体に形成される画像品質に劣化が生じ得る。
【0196】
これに対し、本実施形態のように、サブタンク30の上流側に予熱流路20を設け、サブタンク30に流入するインクの温度を予め予熱流路20で温めることで、サブタンク30で行う加温により実現すべき昇温量を小さくすることができる。そのため、サブタンク30で行う加温により生じ得るヘッド間のインク温度のバラツキの幅を小さくすることが出来る。
【0197】
具体的には例えば、本実施形態のヘッドシステム100を用いて、供給流路目標温度T1を34.7℃、サブタンク目標温度T2を36.5℃、目標吐出温度T3を40℃として温度制御を行った場合、10個のヘッド機構40の各々を流れるUVインクの温度のバラツキが0.6℃以下となることが観察された。
【0198】
また、予熱流路20を、ヘッドシステム100内に設け、サブタンク30の上流側に直接接続することで、予熱流路20により加温されたインクを、ほぼ温度低下を被ることなくサブタンク30に流入させることができる。したがって、最適吐出温度に向けたインクの加温を効率よく行うことが出来る。
【0199】
なお、予熱流路20がサブタンク30の上流側に直接接続するとは、予熱流路20とサブタンク30との間に、タンク、ポンプ、弁が設けられていないことを意味する。また、本実施形態においては、予熱流路20の下流端ICb20とサブタンク30のインク供給口ISP30との間の流路長は、インク流路IC20の流路長よりも小さい。
【0200】
また、ヘッドシステム100内に予熱流路20を設けることで、ヘッドシステム100内における加温能力が高まる。そのため、ヘッドシステム100内を流れるインクの流量を低下させることなく、最適吐出温度までインクを加温することができる。
【0201】
ヘッドシステム100はインク流路内のインクを冷却する機構を有さない(冷却機構60はインクの冷却は行わない)ため、ヘッドシステム100内で能動的にインクの温度を低下させることはできない。そのため、サブタンク目標温度T2を目標吐出温度T3よりも高くしたり、供給流路目標温度T1を目標吐出温度T3よりも高くすると、ヘッド機構40内のインクが目標吐出温度T3(即ち、最適吐出温度)を超えてしまい、形成される画像の品質が劣化する恐れがある。供給流路目標温度T1及びサブタンク目標温度T2を目標吐出温度T3よりも低くすることにより、このような画像品質の劣化を抑制できる。
【0202】
本実施形態のヘッドシステム100の効果を以下にまとめる。
【0203】
本実施形態のヘッドシステム100は、筐体10の内部且つサブタンク30の上流側に配置された予熱流路20を有する。したがってヘッド機構40に供給するインクの温度調整を好適に行うことができる。
【0204】
具体的には例えば、予熱流路20により加温を行うことで、複数のヘッド機構40に流れるインクの温度のバラツキを抑制し得る。また、ヘッドシステム100を流れるインクの流量が大きい場合も、インクの加温を十分に行うことが出来る。
【0205】
また、予熱流路20をサブタンク30の上流側に直接接続しているため、予熱流路20により加温されたインクを、ほぼ温度低下を被ることなくサブタンク30に流入させることができる
【0206】
ヘッドシステム100と制御部600とを備える本実施形態の液体吐出装置900の効果を以下にまとめる。
【0207】
本実施形態の液体吐出装置900においては、制御部600は、供給流路目標昇温幅ΔT1がサブタンク目標昇温幅ΔT2よりも大きくなるように、ヘッドシステム100を制御する。これにより、サブタンク30における昇温幅を小さくすることができ、ヘッド機構40間のインク温度のバラツキを抑制できる。
【0208】
本実施形態の液体吐出装置900においては、制御部600は、サブタンク目標温度T2を供給流路目標温度T1よりも高く設定し、目標吐出温度T3をサブタンク目標温度T2よりも高く設定している。このように、温度制御の目標温度を上流側から下流側に向けて次第に高くすることで、流路上でインクを冷却する必要がなくなり、効率よく加温を行うことが出来る。
【0209】
本実施形態の液体吐出装置900においては、制御部600は、供給流路目標昇温幅ΔT1がヘッド目標昇温幅ΔT3よりも大きくなるように、ヘッドシステム100を制御する。即ち制御部600は、供給流路ICS1、ICS2により加温の大部分を行ったうえで、サブタンク30、ヘッド機構40によりインク温度をわずかに上昇させて、微調整しながら最適吐出温度に近づけている。このような段階的な温度調整により、インク温度の制御をより精密に行うことが出来る。
【0210】
[変形例]
上記実施形態のヘッドシステム100において、次の変形態様を用いることもできる。
【0211】
上記実施形態のヘッドシステム100においては、筐体10は第1部分11と、第1部分11に対して着脱可能な第2部分とを含むがこれには限られない。筐体10は任意の構成であってよく、第1部分11と第2部分12とが分離不可能に一体に形成されていてもよい。
【0212】
上記実施形態のヘッドシステム100においては、予熱流路20は、様々な態様であってよい。
【0213】
上記実施形態の予熱流路20の流路ブロック21に画定されたインク流路IC20においては、第1部分A1及び第2部分A2は左右方向及び前後方向を含む面内、即ち水平面内に延びているがこれには限られない。インク流路IC20を、上流端ICa20から下流端ICb20に向かって次第に上昇するように設けてもよい。具体的には例えば、第1部分A1を左端A1eから右端A1fに向かって次第に上昇するように設け、第2部分A2を右端A2fから左端A2eに向かって次第に上昇するように設けてもよい。
【0214】
インク流路IC20を、上流端ICa20から下流端ICb20に向かって次第に上昇するように設けることで、インク流路IC20に混入した気泡を、良好にサブタンク30まで流すことが出来る。これにより、インク流路IC20内でのホットスポット(気泡の昇温による局所的な高温部)の発生を抑制できる。
【0215】
また、流路ブロック21に画定されるインク流路IC20は、必ずしも流路ブロック21を長手方向に一往復する態様でなくてもよい。インク流路IC20は、具体的には、流路ブロック21の長手方向の一端と他端との間を直線状に通り抜ける流路であってよく、或いは流路ブロック21を長手方向に2往復以上する流路であってもよい。インク流路IC20を長くすることで、流路ブロック21の熱をより効率よくインクに与えることができる。
【0216】
インク流路IC20の断面形状は必ずしも長円形でなくてもよい。インク流路IC20の断面形状を、楕円形や矩形等の任意の長手形状とすることで、インク流路IC20を流れるインクと流路ブロック21との接触面を大きくしやすくなり、インクに効率よく熱を与えることができる。なお、本発明において流路の断面形状に関する「長手形状」との文言は、2次元の形状であり、ある方向の寸法が当該方向に直交する直交方向の寸法よりも大きい形状を意味する。
【0217】
上記実施形態の予熱流路20においては、流路ブロック21の長手方向の略全域にヒータモジュール22のヒータ221が当接しているが、これには限られない。具体的には例えば、
図22に示すように、流路ブロック21の長手方向の中央部を除く領域に一対のヒータ221’が設けられていてもよい。
【0218】
ヒータ221から流路ブロック21に与えられた熱は、流路ブロック21の長手方向の中央部に集まる傾向があるため、ヒータ221の発熱により、流路ブロック21の長手方向中央部が過度に加熱され得る。流路ブロック21の長手方向の中央部にヒータを設けない構成を用いることで、このような中央部の過度の温度上昇を抑制し得る。
【0219】
流路ブロック21の長手方向の中央部のヒータが設けられていない領域の面積を、その両側のヒータが設けられた領域の面積の1/14~1/16程度としてもよい。
【0220】
なお、本発明において、「ヒータが設けられた領域」とは、ヒータの発熱面(発熱体)が直接、又は熱的に無視できる薄い層を介して当接している領域を意味する。したがって例えば、電熱線により構成された面状の発熱体を一対の保護層で挟んだラミネート構造を有するヒータを用いる場合、保護層を介して発熱体が当接している領域は「ヒータが設けられた領域」に当たる。一方で、発熱体が存在せず保護層のみが当接している領域は、ヒータの一部が設けられた領域ではあるが、本発明における「ヒータが設けられた領域」には当たらない。
【0221】
予熱流路20は、流路ブロック21を有さなくてもよい。具体的には例えば、管状の流路に直接面状ヒータを貼り付けてもよい。この場合は、管状流路の内の面状ヒータが貼り付けられた領域が、「ヒータにより加熱される部分」に相当する。また、上記実施形態で使用される各ヒータは、線状ヒータであってもよい。
【0222】
上記実施形態の液体吐出装置900において、供給流路目標温度T1、サブタンク目標温度T2、目標吐出温度T3、供給流路目標昇温幅ΔT1、サブタンク目標昇温幅ΔT2、及びヘッド目標昇温幅ΔT3は適宜設定し得る。
【0223】
複数のヘッド機構40間のインク温度のバラツキ防止という観点からは、供給流路目標昇温幅ΔT1をなるべく大きくすることが望ましい。ΔT1は例えば、目標吐出温度T3から初期温度T0を引いた差分をΔT(以下、適宜「ヘッドシステム目標昇温幅ΔT」と記載する)として、ΔT/2以上であってもよく、ΔT/1.5以上であってもよい。
【0224】
あるいは、サブタンク目標昇温幅ΔT2、及びヘッド目標昇温幅ΔT3の各々を、供給流路目標昇温幅ΔT1の1/3以下としてもよく、供給流路目標昇温幅ΔT1の1/4以下としてもよい。
【0225】
上記実施形態の液体吐出装置900において、制御部600は、インクの温度が低い場合に、インクの温度を短時間で上昇させるための制御を行ってもよい。
【0226】
具体的には例えば、制御部600は、サブタンク30の温度測定器TM30の出力に基づいて取得するサブタンク30から流出するインクの温度が、サブタンク目標温度T2よりも低い場合には、予熱流路20のヒータモジュール22のヒータ221の温度をサブタンク目標温度T2よりも高い温度とする。これにより予熱流路20内のインクは短時間で加熱される。その後、制御部600は、サブタンク30の温度測定器TM30の出力に基づいて取得するサブタンク30から流出するインクの温度が、サブタンク目標温度T2に至った後に、ヒータ221の温度をサブタンク目標温度T2以下に下げてもよい。制御部600は、所定の計算式に基づいてヒータ221の温度を推定し得る。あるいは、ヒータ221にサーミスタを設けてヒータ221の温度を実測してもよい。
【0227】
上記実施形態のヘッドシステム100において、サブタンク30はヒータ34を備えなくてもよく、ヘッド機構40はヘッドヒータ機構47を備えなくてもよい。この場合は、予熱流路20において、インクを、初期温度T0から目標吐出温度T3まで昇温させてもよい。
【0228】
上記実施形態のヘッドシステム100は、幅方向に沿って千鳥状に配置された10個のヘッド機構40を備えるが、これには限られない。ヘッドシステム100が備えるヘッド機構40の数は任意である。ヘッドシステム100を少なくとも3つ有する態様において、ヘッドシステム100を千鳥状に配置し得る。
【0229】
上記実施形態のヘッドシステム100では、第1、第2インク供給管IST1、IST2、及び第1、第2インク排出管IDT1、IDT2の各々は、主部MTと、主部MTよりも外径が大きい継手部JTとを有しているがこれには限られない。
【0230】
具体的には例えば、第1、第2インク供給管IST1、IST2、及び第1、第2インク排出管IDT1、IDT2の各々は主部MTのみを有してもよい。この場合は、主部MTの下端部に第1インク供給管接続部ISC1等の接続部を挿入することで、各インク管とヘッド機構40との接続をなし得る。この場合は、インク管に接続部(接続管)を挿入することでインク管の外径が大きくなった部分や、インク管に接続部(接続管)を挿入した部分を締め付け部材等で囲むことにより外径が大きくなった部分が大径部に対応する。
【0231】
また、上記した各インク管とヘッド機構40との接続態様を、各インク管とサブタンク30との接続に適用してもよい。この場合は、各インク管は、サブタンク30に接続される上端部にも大径部を有する。
【0232】
上記実施形態のヘッドシステム100は2種類のインクを同時に流通できるように構成されているが、これには限られない。ヘッドシステム100は、1種類のインクのみを流通するように構成されていてもよい。
【0233】
具体的には例えば、サブタンク30を2つの貯留部のみを有する構成として、インク流通口セットSから第2インク供給口SP2、第2インク排出口DP2を省略し、分配流路DCは、2つの貯留部の一方と第1インク供給口SP1が連通し、2つの貯留部の他方と第1インク排出口DP1が連通する構成とする。更に、インク管セットITSから第2インク供給管IST2、第2インク排出管IDT2を省略し、ヘッド機構40から第2インク供給管接続部ISC2、第2インク排出管接続部IDC2と、これらに関連する流路構造を省略する。
【0234】
上記実施形態のヘッドシステム100は、ヘッド機構40において吐出されなかったインクをヘッドシステム100の外部に排出するための構造を備える循環型のヘッドシステムであるが、これには限られない。上記実施形態のヘッドシステム100から、インクの排出に関する各構成を省略してもよい。
【0235】
以上、ヘッドシステム100からインクを吐出して媒体PMに画像形成する場合を例として実施形態及び変形例を説明した。ヘッドシステム100は、画像成形のために任意の液体を吐出する液体吐出システムであってよく、画像を形成される媒体PMは、例えば用紙、布、樹脂等であってもよい。また、ヘッドシステム100を、シリアルヘッド型のプリンタのヘッドシステムとして用いても良い。
【0236】
本明細書に記載の実施形態は、全ての点で例示であって、限定的なものではないと考えられるべきである。例えば、プリンタ1000におけるヘッドシステム100の数、構成等は変更し得る。印刷装置1000が同時に印刷可能な色の数も限定はされず、単色印刷のみが可能な構成であってもよい。また、個別流路iCHの数、配置等も適宜変更し得る。また、各実施形態及び変形例にて記載されている技術的特徴は互いに組み合わせることができる。
【0237】
本発明の特徴を維持する限り、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0238】
10 筐体
20 予熱流路
30 サブタンク
40 ヘッド機構
50 冷媒流通機構
51 冷媒供給マニホールド
53 冷媒排出マニホールド
60 冷却機構
70 中継基板
80 制御基板部
600 制御部
900 液体吐出装置
1000 プリンタ
ITS インク管セット