(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154445
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】太陽電池パネル及び太陽電池パネルの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 31/0236 20060101AFI20221005BHJP
H01L 31/0463 20140101ALI20221005BHJP
【FI】
H01L31/04 280
H01L31/04 532A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057486
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】藤原 雅宏
【テーマコード(参考)】
5F151
【Fターム(参考)】
5F151AA02
5F151AA03
5F151AA05
5F151BA14
5F151CA02
5F151CA03
5F151CA04
5F151CA15
5F151CB15
5F151CB27
5F151DA07
5F151DA10
5F151EA09
5F151EA16
5F151FA02
5F151FA04
5F151FA06
5F151GA04
5F151GA15
5F151HA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】従来に比べて発電効率が向上する太陽電池パネル、及び従来に比べて製造工程を簡略化できる太陽電池パネルの製造方法を提供する。
【解決手段】一方の主面を平面視したときに、光電変換基板2上に透明導電性酸化物層23が被覆した被覆部50と、光電変換基板2の第1テクスチャ構造の一部が透明導電性酸化物層23から露出した露出部51とを有し、被覆部50における第1テクスチャ構造の山部の頂点45と露出部における第1テクスチャ構造の山部の頂点45との角度の差が2度以内であり、透明導電性酸化物層23は、被覆部50と露出部51との境界部分において、被覆部50から露出部51に向かって厚みが薄くなっている構成とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の主面に第1テクスチャ構造を有する光電変換基板と、前記光電変換基板上に透明導電性酸化物層が積層された太陽電池パネルであって、
前記一方の主面を平面視したときに、前記光電変換基板上に前記透明導電性酸化物層が被覆した被覆部と、前記光電変換基板の前記第1テクスチャ構造の一部が前記透明導電性酸化物層から露出した露出部とを有し、
前記被覆部における第1テクスチャ構造の山部の頂点と前記露出部における第1テクスチャ構造の山部の頂点との角度の差が2度以内であり、
さらに、前記透明導電性酸化物層は、前記被覆部と前記露出部との境界部分において、前記被覆部から前記露出部に向かって厚みが薄くなっている、太陽電池パネル。
【請求項2】
前記透明導電性酸化物層は、平均膜厚が50μm以上200μm以下である、請求項1に記載の太陽電池パネル。
【請求項3】
前記山部は、頂点の角度が120度以下であって、先端部が尖っている、請求項1又は2に記載の太陽電池パネル。
【請求項4】
前記露出部は、溝状であって、幅が0.5mm以上1.5mm以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の太陽電池パネル。
【請求項5】
前記光電変換基板は、第2テクスチャ構造を有する半導体基板上に半導体層が形成され、前記半導体層が追随して前記第1テクスチャ構造を構成している、請求項1~4のいずれか1項に記載の太陽電池パネル。
【請求項6】
前記光電変換基板は、半導体基板の前記一方の主面側に第1導電型半導体層と第2導電型半導体層が隣接して形成されており、
前記露出部は、溝状であって、幅方向において前記第1導電型半導体層と前記第2導電型半導体層に跨って設けられている、請求項1~5のいずれか1項に記載の太陽電池パネル。
【請求項7】
第1テクスチャ構造を有する光電変換基板上に透明導電性酸化物層を形成する透明導電性酸化物層形成工程と、
前記透明導電性酸化物層を深紫外レーザーによって部分的に除去する除去工程を含み、
前記除去工程前の前記第1テクスチャ構造の山部の頂点と、前記除去工程後の除去部分における前記第1テクスチャ構造の山部の頂点との角度の差が2度以内である、太陽電池パネルの製造方法。
【請求項8】
前記深紫外レーザーは、トップハット型の断面強度分布を有したパルスレーザーである、請求項7に記載の太陽電池パネルの製造方法。
【請求項9】
前記深紫外レーザーは、YAGレーザー又はYVO4レーザーの第4高調波である、請求項7又は8に記載の太陽電池パネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池パネル及び太陽電池パネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、太陽電池は、光電変換基板に光を吸収させるために、光を透過する透明電極層としてITO等の透明導電性酸化物が使用されることが多い(例えば、特許文献1)。
透明導電性酸化物のパターニングの方法としては、紫外レーザー(以下、UVレーザーともいう)を使用したレーザースクライブ法がある。
特許文献1の太陽電池では、UVレーザーとしてYAGレーザーやYVO4レーザーを使用し、透明電極層の一部をストライプ状に除去して溝を形成し、パターニングしている。
【0003】
ところで、近年、光電変換基板の裏面側に第1電極層とその対極の第2電極層が形成されたバックコンタクト型の太陽電池が開発されている(例えば、特許文献2)。
特許文献2の太陽電池は、半導体基板の裏面側の第1領域に真性半導体層及びp型半導体層が順に積層され、半導体基板の裏面側の第2領域に真性半導体層及びn型半導体層が順に積層され、さらに半導体基板の受光面側に真性半導体層と光学調整層が順に積層された光電変換基板を有している。
そして、特許文献2の太陽電池は、光電変換基板のp型半導体層上に透明電極層と金属電極層で構成される第1電極層が積層され、n型半導体層上に透明電極層と金属電極層で構成される第2電極層が積層されている。
特許文献2の太陽電池は、光電変換基板の裏面側にのみ電極層が形成されているため、両面に電極層が形成される両面電極型の太陽電池に比べて受光率を大きくできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-33932号公報
【特許文献2】特開2020-155710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2の太陽電池は、第1電極層の透明電極層と、対極たる第2電極層の透明電極層がともに裏面側に設けられているため、短絡を防止するためには正確に第1電極層の透明電極層と、第2電極層の透明電極層を分離する必要がある。
特許文献2の太陽電池において、透明電極層のパターニングを特許文献1のようにUVレーザーで行うと、透明電極層だけではなく、透明電極層の下地にある半導体層の一部も融解又は損傷してしまう。そのため、特許文献2のようなバックコンタクト型の太陽電池では、UVレーザーによる透明電極層の剥離ができず、特許文献2のようにウェットエッチングにより透明電極層のパターニングを行っていた。
その結果、透明電極層をパターニングするために、透明電極層上にレジスト層を形成する工程や、透明電極層をレジスト液で溶解する工程、レジスト層を剥離する工程などの工程が必要となり、複雑で製造コストも嵩む問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、従来に比べて発電効率が向上する太陽電池パネル、及び従来に比べて製造工程を簡略化できる太陽電池パネルの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者が上記の課題を解決するべく、レーザースクライブ法に使用するレーザー光線に検討したところ、レーザー光線として、UVレーザーよりも波長が短い深紫外レーザーを使用することで透明電極層のみを除去でき、透明電極層の下地となる半導体層への影響を小さくできることを発見した。
【0008】
この発見のもと導き出された本発明の一つの様相は、少なくとも一方の主面に第1テクスチャ構造を有する光電変換基板と、前記光電変換基板上に透明導電性酸化物層が積層された太陽電池パネルであって、前記一方の主面を平面視したときに、前記光電変換基板上に前記透明導電性酸化物層が被覆した被覆部と、前記光電変換基板の前記第1テクスチャ構造の一部が前記透明導電性酸化物層から露出した露出部とを有し、前記被覆部における第1テクスチャ構造の山部の頂点と前記露出部における第1テクスチャ構造の山部の頂点との角度の差が2度以内であり、さらに、前記透明導電性酸化物層は、前記被覆部と前記露出部との境界部分において、前記被覆部から前記露出部に向かって厚みが薄くなっている、太陽電池パネルである。
【0009】
本様相によれば、被覆部に属する第1テクスチャ構造の山部の頂点と、露出部に属する第1テクスチャ構造の山部の頂点との間での角度の差が小さい。そのため、露出部においても反射損失を低減でき、従来に比べて発電効率を向上できる。
本様相によれば、透明導電性酸化物層は、被覆部と露出部との境界部分において、被覆部から露出部に向かって厚みが薄くなっているので、光を光電変換基板内に導きやすい。
【0010】
好ましい様相は、前記透明導電性酸化物層は、平均膜厚が50μm以上200μm以下であることである。
【0011】
好ましい様相は、前記山部は、頂点の角度が120度以下であって、先端部が尖っていることである。
【0012】
好ましい様相は、前記露出部は、溝状であって、幅が0.5mm以上1.5mm以下であることである。
【0013】
好ましい様相は、前記光電変換基板は、第2テクスチャ構造を有する半導体基板上に半導体層が形成され、前記半導体層が追随して前記第1テクスチャ構造を構成していることである。
【0014】
好ましい様相は、前記光電変換基板は、半導体基板の前記一方の主面側に第1導電型半導体層と第2導電型半導体層が隣接して形成されており、前記露出部は、溝状であって、幅方向において前記第1導電型半導体層と前記第2導電型半導体層に跨って設けられていることである。
【0015】
本発明の一つの様相は、第1テクスチャ構造を有する光電変換基板上に透明導電性酸化物層を形成する透明導電性酸化物層形成工程と、前記透明導電性酸化物層を深紫外レーザーによって部分的に除去する除去工程を含み、前記除去工程前の前記第1テクスチャ構造の山部の頂点と、前記除去工程後の除去部分における前記第1テクスチャ構造の山部の頂点との角度の差が2度以内である、太陽電池パネルの製造方法。
である。
【0016】
本様相によれば、深紫外レーザーによって透明導電性酸化物層の一部を除去しているため、光電変換基板へのレーザーによる損傷を抑制でき、従来に比べて発電効率を向上できる。
【0017】
好ましい様相は、前記深紫外レーザーは、トップハット型の断面強度分布を有したパルスレーザーであることである。
【0018】
好ましい様相は、前記深紫外レーザーは、YAGレーザー又はYVO4レーザーの第4高調波であることである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の太陽電池パネルによれば、被覆部と露出部とで山部の頂点の角度の差が小さいため、第1テクスチャ構造による光の封じ込め効果が高く、従来に比べて発電効率を向上できる。
本発明の太陽電池パネルの製造方法によれば、深紫外レーザーによって透明導電性酸化物層の一部を除去しているため、従来に比べて製造工程を簡略化できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1実施形態の太陽電池パネルを模式的に示した斜視図である。
【
図2】
図1の太陽電池パネルの説明図であり、(a)は太陽電池パネルの断面図であり、(b)は(a)のA領域の拡大図である。なお、理解を容易にするために光電変換基板のハッチングを省略している。
【
図3】
図1の太陽電池パネルの山部の頂点の角度の説明図であり、(a)は山部が三角錐の場合の斜視図であり、(b)は山部が円錐の場合の斜視図である。
【
図4】
図1の太陽電池パネルの製造工程の説明図であり、(a)は光電変換基板上に透明電極層を形成する透明電極層形成工程を示す断面図であり、(b)はレーザーにより透明電極層の一部を除去するレーザースクライブ工程を示す断面図であり、(c)は透明電極層上に金属電極層を形成する金属電極層形成工程を示す断面図であり、理解を容易にするために光電変換基板のハッチングを省略している。
【
図5】本発明の実施例1~3の露出部の走査型電子顕微鏡写真であり、(a)は実施例1の露出部と被覆部の境界部分の走査型電子顕微鏡像であり、(b)は実施例2の露出部と被覆部の境界部分の走査型電子顕微鏡像であり、(c)は実施例3の露出部と被覆部の境界部分の走査型電子顕微鏡像である。
【
図6】本発明の比較例1~3の露出部の走査型電子顕微鏡写真であり、(a)は比較例1の露出部内の走査型電子顕微鏡像であり、(b)は比較例2の露出部内の走査型電子顕微鏡像であり、(c)は比較例3の露出部内の走査型電子顕微鏡像である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0022】
本発明の第1実施形態の太陽電池パネル1は、
図1のように、光電変換基板2の裏側主面40(一方の主面)側に第1電極層3と第2電極層5が形成されたバックコンタクト型の太陽電池パネルである。
太陽電池パネル1は、幅方向Xに第1電極層3と第2電極層5が隣接して設けられており、第1電極層3と第2電極層5との境界部分に長さ方向Yに延びた短絡防止溝7,8を備えている。
【0023】
光電変換基板2は、PN接合を有し、光エネルギーを電気エネルギーに変換する光電変換部である。
光電変換基板2は、
図1,
図2のように、半導体基板10の第1主面30側に半導体層16,20,17,21を備え、半導体基板10の第2主面31側に受光側半導体層11と反射防止層12を備えた多層基板である。
すなわち、光電変換基板2は、
図1のように、半導体基板10の第1主面30上に第1真性半導体層16と第1導電型半導体層17がこの順に積層された断面構造を有する第1領域35と、半導体基板10の第1主面30上に第2真性半導体層20と第2導電型半導体層21がこの順に積層された断面構造を有する第2領域36を備えている。
また、光電変換基板2は、第2主面31上に受光側半導体層11と反射防止層12をこの順に備えており、反射防止層12が太陽電池パネル1の受光面を構成している。
【0024】
光電変換基板2は、
図2のように、表面に凹凸が形成された第1テクスチャ構造が形成されている。すなわち、第1テクスチャ構造は、裏側主面40に先端部が尖った複数の山部45を備えている。
【0025】
半導体基板10は、n型又はp型の半導体基板であり、具体的には、n型又はp型の結晶シリコン基板である。半導体基板10としては、単結晶シリコン基板や多結晶シリコン基板を使用できる。
半導体基板10は、
図2のように、表面に凹凸が形成された第2テクスチャ構造が形成されている。すなわち、第2テクスチャ構造は、第1主面30側に先端部が尖った複数の第2山部46を備えている。
【0026】
第1真性半導体層16は、ドーパントを実質的に含まないシリコン薄膜であり、ドーパント濃度が第1導電型半導体層17のドーパント濃度の1/100以下であることが好ましい。
【0027】
第1導電型半導体層17は、ドーパントを含んだn型又はp型のシリコン系薄膜層であり、本実施形態ではp型のシリコン層である。
【0028】
第2真性半導体層20は、ドーパントを実質的に含まないシリコン薄膜であり、ドーパント濃度が第2導電型半導体層21のドーパント濃度の1/100以下であることが好ましい。
【0029】
第2導電型半導体層21は、ドーパントを含み、第1導電型半導体層17の導電型とは逆の導電型を有するシリコン層である。
すなわち、第1導電型半導体層17の導電型がn型の場合は、第2導電型半導体層21の導電型はp型であり、第1導電型半導体層17の導電型がp型の場合は、第2導電型半導体層21の導電型はn型である。
上記したように本実施形態では、第1導電型半導体層17は、p型のシリコン層であるから、第2導電型半導体層21は、n型の半導体層で形成されている。
【0030】
受光側半導体層11は、ドーパントを実質的に含まない真性シリコン薄膜である。
【0031】
反射防止層12は、透光性をもち、且つ光の反射を抑制する低反射層である。
反射防止層12は、例えば、酸化シリコン、酸化亜鉛、酸化チタンなどの金属酸化物や窒化シリコン等の金属窒化物などで形成できる。
反射防止層12は、入射光の光閉じ込め効果の観点から窒化シリコンで形成されていることが好ましい。
【0032】
第1電極層3は、第2電極層5と対をなし、第2電極層5とともに光電変換基板2で光電変換された電気エネルギーを取り出す電極である。
第1電極層3は、
図1,
図2のように、第1領域35において第1導電型半導体層17上に形成されており、第2電極層5は、第2領域36において第2導電型半導体層21上に形成されている。
【0033】
電極層3,5は、
図2のように、それぞれ透明電極層23と、金属電極層25で構成されている。
透明電極層23は、透明性と導電性を有する透明導電層であり、具体的には、酸化インジウム錫(ITO)やタングステンドープ酸化インジウム(IWO)などの透明導電性酸化物で構成された透明導電性酸化物層である。
透明電極層23は、平均膜厚が50μm以上200μm以下であることが好ましい。
この範囲であれば、透明電極層23での抵抗損失を抑制しつつ、厚みが厚くなりすぎない。
【0034】
金属電極層25は、例えば、金、銀、銅、白金、アルミニウム、ニッケル、パラジウム等の金属又はこれらの金属を含む合金で形成できる。
【0035】
短絡防止溝7,8は、
図2のように、第1電極層3と第2電極層5が接触することによる短絡を防止する溝である。
短絡防止溝7,8は、
図2のように第1導電型半導体層17と第2導電型半導体層21の境界部分に跨って設けられ、第1導電型半導体層17と第2導電型半導体層21を底部とする溝である。短絡防止溝7,8は、
図1のように第1真性半導体層16と第2導電型半導体層21の境界部分に沿って延びている。
【0036】
続いて、太陽電池パネル1の各部位の位置関係について説明する。
【0037】
太陽電池パネル1は、
図2のように、幅方向Xにおいて、光電変換基板2上に透明電極層23が被覆した被覆部50と、光電変換基板2上に透明電極層23から露出した露出部51を備えている。
透明電極層23は、幅方向Xの側面55が傾斜面となっており、被覆部50と露出部51との境界部分において被覆部50から露出部51に向かって厚みが薄くなっている。
露出部51では、光電変換基板2の裏側主面40が露出し、第1導電型半導体層17と、第2導電型半導体層21の境界部分が露出している。
露出部51は、短絡防止溝7,8で構成されており、溝状であって、幅が0.5mm以上1.5mm以下であることが好ましい。すなわち、短絡防止溝7,8の溝幅は、0.5mm以上1.5mm以下であることが好ましい。
この範囲であれば、隣接する透明電極層23間の接触を十分に防止できるとともに、露出部51からの光漏れを抑制することができる。
【0038】
被覆部50における山部45の頂点T1の角度θ1は、95°以上120°以下であることが好ましい。
被覆部50における山部45の頂点T1の角度θ1は、露出部51における山部45の頂点T2の角度θ2の1.0倍以上1.9倍以下であることが好ましい。
頂点T1の角度θ1と頂点T2の角度θ2との差は、0°以上90°以下であることが好ましい。
頂点T1の角度θ1は、95°以上120°以下であることが好ましい。
頂点T2の角度θ2は、頂点T1の角度θ1よりも小さく、95°以上120°以下であることが好ましい。
ここで、「頂点T1の角度θ1」とは、山部45の頂点T1の角度であり、例えば、
図3(a)のように、山部45がn角錐の場合(
図3(a)では三角錐)には、頂点T1と底面を結ぶ辺と、底面の重心とを通る断面における頂点T1の角度である。また、
図3(b)のように、山部45が円錐の場合には、頂点T1と底面を結ぶ任意の母線と、底面の重心を通る断面における頂点T1の角度である。
ここで、「頂点T2の角度θ2」とは、山部45の頂点T2の角度であり、例えば、山部45がn角錐の場合には、頂点T2と底面を結ぶ辺と、底面の重心とを通る断面における頂点T2の角度である。また、山部45が円錐の場合には、頂点T2と底面を結ぶ任意の母線と、底面の重心を通る断面における頂点T2の角度である。
【0039】
第1テクスチャ構造は、半導体基板10上に半導体層16,17,20,21が形成されており、半導体基板10の第2テクスチャ構造に対して半導体層16,17,20,21が追随して構成している。すなわち、山部45は、半導体基板10の第2山部46と対応する位置に設けられている。
【0040】
続いて、本実施形態の太陽電池パネル1の製造方法について説明する。なお、光電変換基板2の製造工程は、従来と同様であるため、説明を省略する。
【0041】
まず、
図4(a)のように、スパッタ装置等によって光電変換基板2上に透明電極層23を形成する(透明電極層形成工程、透明導電性酸化物層形成工程)。
【0042】
このとき、透明電極層23は、光電変換基板2の裏側主面40の全面に形成され、第1導電型半導体層17と第2導電型半導体層21とに跨って形成される。
【0043】
続いて、
図4(b)のように、レーザー光線によって透明電極層23を部分的に除去し、短絡防止溝7,8を形成する(除去工程)。
【0044】
このときに使用されるレーザー光線は、トップハット型の断面強度分布を有したパルスレーザーであり、100nm以上280nm以下の波長をもつ深紫外レーザーである。
本実施形態のレーザー光線は、YAGレーザー又はYVO4レーザーの第4高調波であり、具体的には波長が266nmのレーザーである。
パルス幅は、60fs以上10ps以下であることが好ましい。
フォーカス位置は、0.5mm以上2mm以下であることが好ましく、0.9mm以上1.5mm以下であることがより好ましい。
このとき、透明電極層23は、短絡防止溝7,8によって分離され、幅方向Xの側面55に短絡防止溝7,8の深さ方向に下り傾斜したレーザー痕が形成される。
また、除去工程前の山部45の頂点の角度は、除去工程後の露出部51(除去部分)における山部45の頂点の角度との角度の差が2度以内となっている。
【0045】
続いて、スクリーン印刷法等によって透明電極層23上に金属電極層25を形成する(金属電極層形成工程)。
【0046】
このとき、金属電極層25は、透明電極層23上にのみ形成され、露出部51に跨っていないことが好ましい。
【0047】
そして、必要に応じてインターコネクタ等の配線部材を電極層3,5に取り付けて太陽電池パネル1が完成する。
【0048】
本実施形態の太陽電池パネル1によれば、第1電極層3と第2電極層5との境界部分に露出部51が形成されているため、電極層3,5間で接触することによる短絡を防止できる。
【0049】
本実施形態の太陽電池パネル1によれば、被覆部50と露出部51で第1テクスチャ構造の山部45の頂点T1と山部45の頂点T2との間で角度差が小さい。そのため、露出部51においても反射損失を低減でき、従来に比べて発電効率を向上できる。
本実施形態の太陽電池パネル1によれば、透明電極層23が被覆部50と露出部51との境界部分において被覆部50から露出部51に向かって厚みが薄くなっているので、光を光電変換基板2内に導きやすい。
【0050】
本実施形態の太陽電池パネル1の製造方法によれば、透明電極層23の一部をレーザー光線によって除去して短絡防止溝7,8を形成するので、レジスト材料を使用せずとも短絡防止溝7,8を形成することができる。
【0051】
本実施形態の太陽電池パネル1の製造方法によれば、透明電極層23の一部を除去するレーザー光線として100nm以上280nm以下の波長をもつ深紫外レーザーを使用するため、透明電極層23のみを集中的に除去でき、光電変換基板2が損傷することを抑制できる。
【0052】
上記した実施形態では、レーザー光線は、トップハット型の断面強度分布を有していたが、本発明はこれに限定されるものではない。レーザー光線は、ガウシアン型の断面強度分布を有していてもよい。
【0053】
上記した実施形態では、光電変換基板2は、半導体基板10と導電型半導体層17,21の間に真性半導体層16,20が介在していたが、本発明はこれに限定されるものではない。光電変換基板2は、半導体基板10上に直接導電型半導体層17,21が積層されていてもよい。
【0054】
上記した実施形態では、金属電極層25は、透明電極層23上にのみ形成されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。わずかに下地の透明電極層23をはみ出し、当該透明電極層23の下地になる半導体層17又は半導体層21上に跨っていてもよい。すなわち、第1導電型半導体層17上に透明電極層23を下地とする金属電極層25は、第2導電型半導体層21に接触していなければ、露出部51の第1導電型半導体層17にはみ出してもよい。同様に第2導電型半導体層21上に透明電極層23を下地とする金属電極層25は、第1導電型半導体層17に接触していなければ、露出部51の第2導電型半導体層21にはみ出してもよい。
【0055】
上記した実施形態は、本発明の技術的範囲に含まれる限り、各実施形態間で各構成部材を自由に置換や付加できる。
【実施例0056】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施できる。
【0057】
(実施例1)
入射面の面方位が(100)で厚みが200μmの6インチのn型単結晶シリコン基板を、アセトン中で洗浄した後、2重量%のフッ化水素(HF)水溶液に3分間浸漬して表面の酸化シリコン膜を除去し、超純水によるリンスを行った。
洗浄後の結晶シリコン基板を、70℃の5/15重量%の水酸化カリウム(KOH)/イソプロピルアルコール水溶液に15分間浸漬した後、超純水によるリンスを行い、(111)面が露出したピラミッド型のテクスチャが形成された結晶シリコン基板を得た。
結晶シリコン基板をプラズマCVD装置に導入し、基板温度150℃、圧力120Pa、H2/SiH4流量比10/3、パワー密度11mW/cm2の条件で、厚みが8nmとなるように真性シリコン層を形成した。
続いて、真性シリコン薄膜上に、基板温度150℃、圧力60Pa、B2H6含有H2/SiH4の流量比が3/1、パワー密度11mW/cm2の条件で、厚みが2nmとなるようにp型シリコン層を形成した。なお、B2H6含有H2としては、H2によりB2H6濃度を5000ppmに希釈した混合ガスを用いた。
続いて、p型シリコン層上にテクスチャ構造の山部(頂部)における膜厚80nmの透明導電性酸化物層を製膜した。具体的には、酸化錫の含有量が10重量%のITO焼結ターゲットを用いて、基板温度150℃、アルゴン/酸素流量:50sccm/1sccm、圧力0.2Pa、パワー密度0.5W/cm2の条件で、スパッタ法により製膜した。
【0058】
透明導電性酸化物層を形成した後、レーザースクライブ装置を用いて、波長266nm、パルス幅60fs、フォーカス位置1.0mmのDUVパルスレーザーで150mm/secでレーザースクライブを行い、透明導電性酸化物層をパターニングし、透明導電性酸化物層から露出した露出部を形成した。これを実施例1とした。
【0059】
(実施例2)
実施例1において、透明導電性酸化物層を形成した後、レーザースクライブ装置を用いて、波長266nm、パルス幅fs、フォーカス位置1.0mmのDUVパルスレーザーで150mm/secでレーザースクライブを3回行い、透明導電性酸化物層をパターニングし、透明導電性酸化物層から露出した露出部を形成した。これを実施例2とした。
【0060】
(実施例3)
実施例2において、透明導電性酸化物層を形成した後、レーザースクライブ装置を用いて、波長266nm、パルス幅60fs、フォーカス位置1.0mmのDUVパルスレーザーで75mm/secでレーザースクライブを3回行い、透明導電性酸化物層をパターニングし、透明導電性酸化物層から露出した露出部を形成した。これを実施例3とした。
【0061】
(比較例1)
実施例1において、透明導電性酸化物層を形成した後、レーザースクライブ装置を用いて、波長355nm、パルス幅60fs、フォーカス位置0.85mmのUVパルスレーザーで300mm/secでレーザースクライブを行い、透明導電性酸化物層をパターニングし、透明導電性酸化物層から露出した露出部を形成した。これを比較例1とした。
【0062】
(比較例2)
実施例2において、透明導電性酸化物層を形成した後、レーザースクライブ装置を用いて、波長355nm、パルス幅60fs、フォーカス位置0.85mmのUVパルスレーザーで200mm/secでレーザースクライブを行い、透明導電性酸化物層をパターニングし、透明導電性酸化物層から露出した露出部を形成した。これを比較例2とした。
【0063】
(比較例3)
実施例2において、透明導電性酸化物層を形成した後、レーザースクライブ装置を用いて、波長355nm、パルス幅60fs、フォーカス位置0.85mmのUVパルスレーザーで100mm/secでレーザースクライブを行い、透明導電性酸化物層をパターニングし、透明導電性酸化物層から露出した露出部を形成した。これを比較例3とした。
【0064】
(表面構造観察)
実施例1~3及び比較例1~3において、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JSM-7610F)を用いてレーザー溝たる露出部の観察を行った。
【0065】
実施例1~3のSEM像を
図5に示し、比較例1~3のSEM像を
図6に示す。
【0066】
図6に示される比較例1~3の露出部では、いずれにおいても露出部の全体において透明導電性酸化物層の下地を構成するテクスチャ構造の山部の先端部が溶けて丸まっており、テクスチャ構造が維持されていなかった。すなわち、比較例1~3では、透明導電性酸化物層のみを除去できず、透明導電性酸化物層の除去に伴い、テクスチャ構造の一部が溶解されて潰れていた。
【0067】
一方、
図5に示される実施例1~3の露出部では、少なくとも露出部と被覆部の境界部分では概ねテクスチャ構造を維持しており、特に実施例1の露出部では、露出部全体において下地のテクスチャ構造がそのまま維持されていた。すなわち、実施例1~3では、概ね透明導電性酸化物層のみを除去することができ、透明導電性酸化物層の除去に伴い、テクスチャ構造がほとんど溶解されずに維持していた。
【0068】
以上のことから、実施例1~3において、露出部と被覆部の境界部分において下地のテクスチャ構造が維持されることがわかった。
特に、実施例1では、透明導電性酸化物層のみを除去できて、露出部内のテクスチャ構造が被覆部内のテクスチャ構造と相違なく、テクスチャ構造の山部を維持できることがわかった。