(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154466
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】無電解めっき用プライマー組成物、それを用いた積層体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 18/20 20060101AFI20221005BHJP
【FI】
C23C18/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057521
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504137554
【氏名又は名称】株式会社イオックス
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小山 太一
(72)【発明者】
【氏名】中辻 達也
【テーマコード(参考)】
4K022
【Fターム(参考)】
4K022AA13
4K022AA15
4K022AA17
4K022AA19
4K022AA31
4K022AA41
4K022BA08
4K022CA17
4K022CA22
4K022DA01
(57)【要約】
【課題】エッチングを行わなくても、絶縁性基材に対して良好な接着強度と接着信頼性を有する無電解めっき用プライマー組成物を提供する。
【解決手段】本発明の無電解めっき用プライマー組成物は、(メタ)アクリル樹脂(A)と、エポキシ樹脂(B)と、重付加型エポキシ樹脂硬化剤(C)とを含む。(メタ)アクリル樹脂(A)は、重付加型エポキシ樹脂硬化剤(C)と反応する反応性基を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル樹脂(A)と、
エポキシ樹脂(B)と、
重付加型エポキシ樹脂硬化剤(C)と
を含み、
前記(メタ)アクリル樹脂(A)は、前記重付加型エポキシ樹脂硬化剤(C)と反応する反応性基を有する、
無電解めっき用プライマー組成物。
【請求項2】
前記反応性基は、エポキシ基である、
請求項1に記載の無電解めっき用プライマー組成物。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル樹脂(A)は、エポキシ基含有不飽和モノマー(a1)に由来する構造単位と、ホモポリマーのTgが90℃以上である不飽和モノマー(a2)に由来する構造単位とを含む、
請求項2に記載の無電解めっき用プライマー組成物。
【請求項4】
前記ホモポリマーのTgが90℃以上の不飽和モノマー(a2)は、アクリロニトリルまたはメタクリル酸メチルである、
請求項3に記載の無電解めっき用プライマー組成物。
【請求項5】
前記(メタ)アクリル樹脂(A)は、エラストマーである、
請求項3または4に記載の無電解めっき用プライマー組成物。
【請求項6】
前記エポキシ樹脂(B)は、1分子内に3個以上のエポキシ基を有する芳香族エポキシ樹脂を含む、
請求項1~5のいずれか一項に記載の無電解めっき用プライマー組成物。
【請求項7】
前記(メタ)アクリル樹脂(A)の含有量MAと前記エポキシ樹脂(B)の含有量MBの質量比MA/MBは、100/5~100/50である、
請求項1~6のいずれか一項に記載の無電解めっき用プライマー組成物。
【請求項8】
前記重付加型エポキシ樹脂硬化剤(C)は、フェノール系硬化剤または酸無水物系硬化剤である、
請求項1~7のいずれか一項に記載の無電解めっき用プライマー組成物。
【請求項9】
前記(メタ)アクリル樹脂(A)、前記エポキシ樹脂(B)および前記重付加型エポキシ樹脂硬化剤(C)の合計に対して、
前記(メタ)アクリル樹脂(A)を50~80質量%と、
前記エポキシ樹脂(B)を3~25質量%と、
前記重付加型エポキシ樹脂硬化剤(C)を5~35質量%と、
を含む、
請求項1~8のいずれか一項に記載の無電解めっき用プライマー組成物。
【請求項10】
パラジウム触媒をさらに含む、
請求項1~9のいずれか一項に記載の無電解めっき用プライマー組成物。
【請求項11】
絶縁性基材と、
前記絶縁性基材上に配置された、請求項1~10のいずれか一項に記載の無電解めっき用プライマー組成物の硬化物を含むプライマー層と、
前記プライマー層上に配置された金属めっき層と
を含む、
積層体。
【請求項12】
前記絶縁性基材は、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、環状ポリオレフィン、ポリフェニレンスルファイド、液晶性ポリマー、フッ素樹脂からなる群より選ばれる低誘電率の樹脂を含む、
請求項11に記載の積層体。
【請求項13】
前記プライマー層の厚みは、0.05~0.5μmである、
請求項11または12に記載の積層体。
【請求項14】
絶縁性基材の表面に、請求項1~10のいずれか一項に記載の無電解めっき用プライマー組成物を付与した後、乾燥および硬化させてプライマー層を形成する工程と、
前記プライマー層上に、無電解めっきにより金属めっき層を形成する工程と
を含む、
積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無電解めっき用プライマー組成物、それを用いた積層体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂基材などの絶縁性基材に対して金属めっきを形成する技術は、電磁波シールなどの導電性フィルムや、意匠性を付与することを目的とした装飾めっき、集積回路、抵抗器などの電子部品を作製する際に利用されている。特に、電子機器などに使用されるプリント配線板を作製する場合、絶縁性基材上に導電性配線パターンを形成する際に、めっきを形成する技術が利用される。
【0003】
その際、絶縁性基材とめっき層との間の密着性を高めるために、絶縁性基材の表面に微細な凹凸を形成するエッチング(粗化)を行うことにより、アンカー効果を付与することが検討されている。しかしながら、このエッチングは、工程を煩雑にするだけでなく、5G向けなどの高周波対応デバイスにおいては、表皮効果により伝送損失が低下しやすいという問題がある。
【0004】
これに対し、エッチングを行わずに、絶縁性基材とめっきとを密着させる方法が検討されている。例えば、絶縁性基材の表面に、無電解めっき触媒を含む下地層を形成した後、めっきを形成する方法が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、5G向けなどの高周波対応デバイスでは、絶縁性基材として、低誘電性基材が用いられる。低誘電性基材は、めっきとの密着性がさらに得られにくいため、これまで以上にめっきの接着強度を高めることが求められている。
【0007】
また、プリント配線板の製造プロセスでは、様々な熱履歴がかかるだけでなく、作製されたプリント配線板の動作環境下(高温下)で長期間使用しても、絶縁性基材と配線層との接着性を良好に維持できること(接着信頼性)が求められる。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、エッチングを行わなくても、絶縁性基材に対して良好な接着強度と接着信頼性を有する無電解めっき用プライマー組成物およびそれを用いた積層体およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の無電解めっき用プライマー組成物は、(メタ)アクリル樹脂(A)と、エポキシ樹脂(B)と、重付加型エポキシ樹脂硬化剤(C)とを含み、前記(メタ)アクリル樹脂(A)は、前記重付加型エポキシ樹脂硬化剤(C)と反応する反応性基を有する。
【0010】
本発明の積層体は、絶縁性基材と、前記絶縁性基材上に配置された、本発明の無電解めっき用プライマー組成物の硬化物を含むプライマー層と、前記プライマー層上に配置された金属めっき層とを含む。
【0011】
本発明の積層体の製造方法は、絶縁性基材の表面に、本発明の無電解めっき用プライマー組成物を付与した後、乾燥および硬化させてプライマー層を形成する工程と、前記プライマー層上に、無電解めっきにより金属めっき層を形成する工程とを含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、エッチングを行わなくても、絶縁性基材に対して良好な接着強度と接着信頼性を有する無電解めっき用プライマー組成物およびそれを用いた積層体およびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明者らは、エポキシ樹脂(B)と重付加型エポキシ樹脂硬化剤(C)とを含み、かつベース樹脂として上記硬化剤(C)と反応する(メタ)アクリル樹脂(A)をさらに含むプライマー組成物の硬化物は、めっき皮膜との接着強度に優れるだけでなく、高温下で一定時間使用しても、接着強度を良好に維持できること(接着信頼性に優れること)を見出した。
【0014】
その理由は明らかではないが、以下のように推測される。(メタ)アクリル樹脂(A)(好ましくはエラストマー)は適度な柔軟性を有するだけでなく、重付加型エポキシ樹脂硬化剤(C)を介してエポキシ樹脂(B)と反応して、架橋構造を形成しうる。具体的には、重付加型エポキシ樹脂硬化剤(C)の構造を取り込みつつ、(メタ)アクリル樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)が適度な架橋構造を形成しうる。その結果、得られる硬化物は、付加重合反応により生成するOH基を有し、適度な極性を示すため、基材との接着強度が得られやすいだけでなく、適度な柔軟性と耐熱性とを併せ持つため、初期の接着強度に優れるだけでなく、高温下で一定期間曝されても接着強度を良好に維持できると考えられる。以下、本発明について詳細に説明する。
【0015】
1.プライマー組成物
本発明のプライマー組成物は、(メタ)アクリル樹脂(A)と、エポキシ樹脂(B)と、重付加型エポキシ樹脂硬化剤(C)とを含む。
【0016】
1-1.(メタ)アクリル樹脂(A)
(メタ)アクリル樹脂(A)は、重付加型エポキシ樹脂硬化剤(C)と反応する基(反応性基)、好ましくはエポキシ基を有する。そのような反応性基を有する(メタ)アクリル樹脂(A)は、重付加型エポキシ樹脂硬化剤(C)を介してエポキシ樹脂(B)と反応しうるため、適度な架橋構造が形成されやすく、柔軟性と耐熱性のバランスの良好な硬化物が得られやすい。
【0017】
エポキシ基を有する(メタ)アクリル樹脂(A)は、エポキシ基含有不飽和モノマー(a1)に由来する構造単位を含む重合体である。エポキシ基含有不飽和モノマー(a1)は、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルであることが好ましい。なお、本発明において、(メタ)アクリル(酸)は、アクリル(酸)またはメタクリル(酸)を意味する。エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルの例には、グリシジルメタクリレートが含まれる。
【0018】
エポキシ基含有不飽和モノマー(a1)に由来する構造単位の含有量は、特に制限されないが、(メタ)アクリル樹脂(A)を構成する全構造単位に対して0.5~5質量%であることが好ましい。エポキシ基含有不飽和モノマー(a1)に由来する構造単位の含有量が0.5質量%以上であると、エポキシ樹脂(B)との間で十分な架橋構造を形成して、得られる硬化物の耐熱性を高めやすく、5質量%以下であると、柔軟性が損なわれにくい。同様の観点から、エポキシ基含有不飽和モノマー(a1)に由来する構造単位の含有量は、(メタ)アクリル樹脂(A)を構成する全構造単位に対して1~3質量%であることがより好ましい。
【0019】
エポキシ基を有する(メタ)アクリル樹脂(A)は、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が90℃以上の不飽和モノマー(a2)に由来の構造単位をさらに含むことが好ましい。ホモポリマーのTgが90℃以上の不飽和モノマー(a2)は、(メタ)アクリル樹脂(A)に適度な耐熱性を付与し、接着信頼性を高めうる。
【0020】
ホモポリマーのTgが90℃以上の不飽和モノマー(a2)は、ホモポリマーのTgが100~110℃の不飽和モノマーであることが好ましい。ホモポリマーのTgが90℃以上の不飽和モノマー(a2)の例には、メタクリル酸メチル(Tg 105℃)、メタクリル酸t-ブチル(Tg 107℃)などのメタクリル酸アルキルエステル類;アクリロニトリル(Tg 105℃)、メタクリロニトリル(Tg 115℃)などの不飽和ニトリル類;スチレン(Tg 100℃)、メタクリル酸フェニル(Tg 105℃)などの芳香族モノマー類、イソボルニルアクリレート(97℃)などが含まれ、好ましくはアクリロニトリルまたはメタクリル酸メチルである。なお、括弧内は、ホモポリマーのTgを示す。
【0021】
当該不飽和モノマー(a2)のホモポリマーのTgは、例えばモノマーの構造(種類)をNMR分析などで特定した後、そのホモポリマーを調製してDSCなどで測定されるTgとするか、または、特定したモノマーのホモポリマーのTgの文献値(例えばpolymerdatabase.com)とすることができる。
【0022】
ホモポリマーのTgが90℃以上の不飽和モノマー(a2)に由来する構造単位の含有量は、(メタ)アクリル樹脂(A)を構成する全構造単位に対して9.5~30質量%であることが好ましい。当該不飽和モノマー(a2)に由来する構造単位の含有量が9.5質量%以上であると、得られる(メタ)アクリル樹脂(A)の耐熱性を高めやすく、プライマー組成物の硬化物の接着信頼性を高めやすく、30質量%以下であると、柔軟性が損なわれにくく、初期の接着性が損なわれにくい。同様の観点から、ホモポリマーのTgが90℃以上の不飽和モノマー(a2)に由来する構造単位の含有量は、(メタ)アクリル樹脂(A)を構成する全構造単位に対して14~25質量%であることがより好ましい。
【0023】
また、エポキシ基を有する(メタ)アクリル樹脂(A)は、他のモノマーに由来する構造単位をさらに含みうる。他のモノマーの例には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシルなどの炭素原子数1~10のアクリル酸エステル類;メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシルなどの、上記以外の炭素原子数2~10のメタクリル酸エステル類;酢酸ビニルなどのビニルエステル類;(メタ)アクリル酸、クロトン酸などの不飽和カルボン酸類;(メタ)アクリルアミド、メチル(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミド、プロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド(DMAA)などの(メタ)アクリルアミド類なども含まれる。中でも、適度な柔軟性を示し、接着強度をさらに高めやすくする観点では、(メタ)アクリル樹脂(A)は、炭素原子数1~10、好ましくは1~7のアクリル酸エステル類(a3)に由来する構造単位をさらに含むことが好ましい。
【0024】
炭素原子数1~10のアクリル酸エステル類(a3)に由来する構造単位の含有量は、(メタ)アクリル樹脂(A)を構成する全構造単位に対して65~90質量%であることが好ましい。当該アクリル酸エステル類(a3)に由来する構造単位の含有量が上記範囲内であると、(メタ)アクリル樹脂(A)の柔軟性が高いため、得られる硬化物の接着強度および接着信頼性をさらに高めうる。同様の観点から、炭素原子数1~10のアクリル酸エステル類(a3)に由来する構造単位の含有量は、(メタ)アクリル樹脂(A)を構成する全構造単位に対して70~85質量%であることがより好ましい。
【0025】
(メタ)アクリル樹脂(A)の市販品の例には、「SG-80H」、「SG-80H-3」、「SG-P3」(エポキシ基含有アクリル酸エステル共重合体)が含まれる。
【0026】
(メタ)アクリル樹脂(A)は、接着強度を高める観点では、適度に柔軟性を有することが好ましく、エラストマーであることがより好ましい。具体的には、(メタ)アクリル樹脂(A)のTgは、25℃以下であることが好ましく、0~15℃であることがより好ましい。
【0027】
(メタ)アクリル樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、熱機械的分析(TMA)により測定することができる。具体的には、(メタ)アクリル樹脂(A)の試料について、熱機械的分析(TMA)装置を用いて、窒素雰囲気下、引張りモード(49mN)、昇温速度5℃/分の条件で測定を行ってTMA曲線を求め、ガラス転移に起因するTMA曲線の変曲点に対し、その前後の曲線を外挿することにより、(メタ)アクリル樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)の値を求めることができる。
【0028】
(メタ)アクリル樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、特に制限されないが、例えば10万~50万でありうる。(メタ)アクリル樹脂のMwが上記範囲にあると、プライマー組成物の塗工性を損なうことなく、得られる硬化物の膜強度を高めうる。(メタ)アクリル樹脂(A)のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0029】
(メタ)アクリル樹脂(A)のエポキシ当量は、特に制限されないが、例えば1800~18000g/eqでありうる。(メタ)アクリル樹脂(A)のエポキシ当量が上記範囲内であると、エポキシ樹脂(B)との架橋点を適度に多くしうるため、得られる硬化物の耐熱性をさらに高めうる。それにより、接着強度および接着信頼性をさらに高めうる。エポキシ当量は、JIS K7236に準拠して測定することができる。
【0030】
(メタ)アクリル樹脂(A)の含有量は、(メタ)アクリル樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)および重付加型エポキシ樹脂硬化剤(C)の合計に対して50~80質量%としうる。(メタ)アクリル樹脂(A)の含有量が50質量%以上であると、プライマー組成物の硬化物の接着信頼性を高めやすく、80質量%以下であると、接着強度が損なわれにくい。同様の観点から、(メタ)アクリル樹脂(A)の含有量は、(メタ)アクリル樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)および重付加型エポキシ樹脂硬化剤(C)の合計に対して55~77質量%であることがより好ましい。
【0031】
1-2.エポキシ樹脂(B)
エポキシ樹脂(B)の種類は、特に制限されないが、耐熱性が高く、接着信頼性の高い硬化物を得る観点では、芳香族構造を有するエポキシ樹脂(芳香族エポキシ樹脂)であることが好ましい。
【0032】
芳香族エポキシ樹脂の例には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、芳香族構造を有するグリシジルアミン型エポキシ樹脂、芳香族構造を有するグリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、芳香族構造を有する線状脂肪族エポキシ樹脂、芳香族構造を有するブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、芳香族構造を有する脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、芳香族構造を有するスピロ環含有エポキシ樹脂、芳香族構造を有するシクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、芳香族構造を有するトリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂などが含まれる。これらは、20℃で液状のエポキシ樹脂(液状エポキシ樹脂)であってもよいし、20℃で固体状のエポキシ樹脂(固体状エポキシ樹脂)であってもよい。また、エポキシ樹脂(B)は、1種類単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
また、芳香族エポキシ樹脂は、耐熱性が高く、接着信頼性の高い硬化物を得る観点では、1分子内に2個以上のエポキシ基を有する芳香族エポキシ樹脂を含むことが好ましく、1分子内に3個以上のエポキシ基を有する芳香族エポキシ樹脂を含むことがより好ましい。
【0034】
1分子内に3個以上のエポキシ基を有する芳香族エポキシ樹脂の例には、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂などが含まれる。市販品の例には、「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)、「157S70」(ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂)などが含まれる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
エポキシ樹脂(B)のエポキシ当量は、特に制限されないが、例えば140~300g/eqであることが好ましい。エポキシ当量が上記範囲内にあれば、プライマー組成物の塗工性を損なうことなく、十分な硬化が可能となる。エポキシ当量は、前述と同様の方法で測定することができる。
【0036】
エポキシ樹脂(B)の重量平均分子量(Mw)は、特に制限されないが、1000以下であることが好ましい。エポキシ樹脂(B)のMwは、前述と同様に、GPCにより測定される標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0037】
エポキシ樹脂(B)の含有量は、(メタ)アクリル樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)および重付加型エポキシ樹脂硬化剤(C)の合計に対して3~25質量%としうる。エポキシ樹脂(B)の含有量が3質量%以上であると、プライマー組成物の硬化物の初期の接着強度を高めやすく25質量%以下であると、接着信頼性が損なわれにくい。同様の観点から、エポキシ樹脂(B)の含有量は、(メタ)アクリル樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)および重付加型エポキシ樹脂硬化剤(C)の合計に対して5~24質量%であることがより好ましい。
【0038】
本発明のプライマー組成物において、(メタ)アクリル樹脂(A)の含有量MAとエポキシ樹脂(B)の含有量MBとの質量比MA/MBは、特に制限されないが、初期の接着強度と接着信頼性のバランスの観点から、100/5~100/50であることが好ましく、100/7~100/40であることがより好ましい。質量比MA/MBが一定以上であると、接着信頼性をさらに高めやすく、一定以下であると、初期の接着性が損なわれにくい。
【0039】
1-3.重付加型エポキシ樹脂硬化剤(C)
重付加型エポキシ樹脂硬化剤(C)は、(メタ)アクリル樹脂(A)の反応性基と、エポキシ樹脂(B)のエポキシ基と付加反応する基を有するものであればよいが、接着信頼性の良好なプライマー組成物を得る観点では、フェノール系硬化剤または酸無水物系硬化剤であることが好ましい。
【0040】
フェノール系硬化剤は、ノボラック型フェノール系硬化剤であってもよいし、レゾール型フェノール系硬化剤であってもよい。ノボラック型フェノール系硬化剤の例には、2,6-ビス[(2-ヒドロキシフェニル)メチル]-フェノールなどのフェノールノボラック類、o-クレゾールノボラック、m-クレゾールノボラック、p-クレゾールノボラックなどのクレゾールノボラック類が含まれる。レゾール型フェノール系硬化剤の例には、ストレートタイプ、アルキルフェノールタイプなどが含まれる。
【0041】
酸無水物系硬化剤の例には、ジデセニル無水コハク酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビストリメリテート、グリセロールトリストリメリテートなどが含まれる。市販品の例には、リカシッドTBN-100(新日本理化社製)などが含まれる。
【0042】
中でも、プライマー組成物の硬化物の耐熱性をさらに高める観点では、フェノール系硬化剤が好ましく、レゾール型フェノール系硬化剤がより好ましい。重付加型エポキシ樹脂硬化剤(C)は、1種単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
【0043】
重付加型エポキシ樹脂硬化剤(C)の含有量は、(メタ)アクリル樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)および重付加型エポキシ樹脂硬化剤(C)の合計に対して5~35質量%としうる。重付加型エポキシ樹脂硬化剤(C)の含有量が5質量%以上であると、(メタ)アクリル樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)との反応、またはエポキシ樹脂(B)同士の反応を十分に生じさせうるため、硬化物の接着信頼性を高めやすく、35質量%以下であると、塗工性が損なわれにくい。同様の観点から、重付加型エポキシ樹脂硬化剤(C)の含有量は、(メタ)アクリル樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)および重付加型エポキシ樹脂硬化剤(C)の合計に対して7~30質量%であることがより好ましい。
【0044】
また、重付加型エポキシ樹脂硬化剤(C)の含有量は、エポキシ樹脂(B)の当量にもよるが、例えばエポキシ樹脂(B)に対して50~328質量%としうる。
【0045】
1-4.その他の成分
本発明のプライマー組成物は、必要に応じて上記以外の他の成分をさらに含んでもよい。他の成分の例には、硬化触媒、パラジウム触媒、溶媒などが含まれる。
【0046】
(硬化触媒)
硬化触媒の種類は、特に限定されず、エポキシ基を有する(メタ)アクリル樹脂(A)やエポキシ樹脂(B)の種類に応じて適宜選択される。硬化触媒の例には、イミダゾール化合物やアミン化合物などが含まれる。
【0047】
イミダゾール化合物の例には、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾールなどが含まれる。アミン化合物の例には、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどのトリアルキルアミンや、トリスジメチルアミノメチルフェノールなどが含まれる。
【0048】
硬化触媒の含有量は、(メタ)アクリル樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)および重付加型エポキシ樹脂硬化剤(C)の合計に対して0.7~1.1質量%としうる。硬化触媒の含有量が0.7質量%以上であると、(メタ)アクリル樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)との反応、またはエポキシ樹脂(B)同士の反応を十分に生じさせうるため、硬化物の接着信頼性を高めやすく、1.1質量%以下であると、塗工性が損なわれにくい。
【0049】
(パラジウム触媒)
パラジウム触媒は、好ましくはパラジウム粒子は、無電解めっきの核剤として機能しうる。パラジウム粒子は、分散剤などで分散されていてもよい。
【0050】
パラジウム粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、例えば2~10nmでありうる。パラジウム粒子の平均粒子径は、任意の10個の粒子径を透過型電子顕微鏡で測定し、それらの個数平均をとることにより(個数基準平均径として)算出することができる。
【0051】
パラジウム触媒の含有量は、(メタ)アクリル樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)および重付加型エポキシ樹脂硬化剤(C)の合計に対して1~15質量%としうる。パラジウム触媒の含有量が1質量%以上であると、得られるプライマー層の無電解めっき皮膜との密着性を十分に高めやすく、15質量%以下であると、塗工性や分散安定性が損なわれにくい。
【0052】
(溶媒)
本発明のプライマー組成物は、必要に応じて溶媒(分散媒)をさらに含有してもよい。そのような溶媒としては、パラジウム触媒やその分散体を分散可能なものが好ましく、例えば水や非プロトン性極性溶媒などでありうる。
【0053】
非プロトン性極性溶媒としては、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトンなどが含まれる。
【0054】
その他、メタノール、エタノールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル類;安息香酸メチル、安息香酸エチル、サリチル酸メチルなどの芳香族カルボン酸エステル類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、メチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテートなどのグリコールエーテルエステル類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのアルカノールエステル類などを含有してもよい。
【0055】
1-5.製造方法
本発明のプライマー組成物は、任意の方法で調製することができ、例えば上記各成分を混合して得ることができる。
【0056】
パラジウム触媒は、粒子状のまま添加してもよいし、分散剤などで分散させた状態(分散体として)添加してもよい。
【0057】
2.積層体
本発明の積層体は、絶縁性基材と、本発明のプライマー組成物の硬化物を含むプライマー層と、金属めっき層とを含む。
【0058】
(絶縁性基材)
絶縁性基材の種類は、樹脂基材、または、セラミックスやガラスなどの無機基材でありうる。樹脂基材を構成する材料の例には、ポリエステル、(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド(MPIなど)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、環状ポリオレフィン(COC)、ポリオレフィン、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリスルホン、フェノール樹脂、液晶性ポリマー(LCP)、フッ素樹脂などが含まれる。無機基材を構成するセラミックスの例には、アルミナなどが含まれる。
【0059】
中でも、積層体がプリント配線板、特に5Gなどの高周波対応のデバイスなどに使用されるプリント配線板などである場合、絶縁性基材は、低誘電率の絶縁性基材(低誘電性基材)であることがより好ましい。低誘電性基材の材料の例には、ポリイミド(MPIなど)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、環状ポリオレフィン(COC)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、液晶性ポリマー(LCP)、フッ素樹脂などの低誘電率の樹脂やガラスが含まれ、好ましくはポリフェニレンスルファイド(PPS)でありうる。
【0060】
絶縁性基材の厚みは、特に制限されないが、例えば12.5~50μmでありうる。
【0061】
(プライマー層)
プライマー層は、本発明のプライマー組成物の硬化物を含む。
【0062】
プライマー層の厚みは、金属めっき層と絶縁性基材との接着強度を確保できる程度であればよく、特に制限されないが、金属めっき層の厚みよりも薄いことが好ましい。特に、本発明のプライマー組成物の硬化物は、良好な接着強度を示すため、プライマー層の厚みを十分に薄くすることができる。具体的には、プライマー層の厚みは、例えば0.05~0.5μmでありうる。
【0063】
(金属めっき層)
金属めっき層は、プライマー層の表面を無電解めっき液と接触させて得られる層であり、例えば銅、白金、金、銀、ニッケル、クロム、コバルト、スズなどの金属を含む。金属めっき層は、銅、白金、金、銀、ニッケルからなる群より選ばれる金属を含むことが好ましく、銅またはその合金を含むことがより好ましい。
【0064】
金属めっき層の厚みは、用途に応じて適宜設定されうるが、例えばプリント配線板に用いられる場合は、例えば0.01~50μm、好ましくは0.1~10μm、より好ましくは0.1~2μmでありうる。
【0065】
金属めっき層は、所定の形状にパターニングされていてもよい。パターン状に形成された金属めっき層は、例えばプリント配線板などの配線パターンとして機能させることができる。
【0066】
3.積層体の製造方法
本発明の積層体は、1)絶縁性基材の表面に、本発明のプライマー組成物を付与した後、乾燥および硬化させてプライマー層を形成する工程と、2)プライマー層の表面に無電解めっきを施して、金属めっき層を形成する工程とを経て得ることができる。
【0067】
1)の工程について
絶縁性基材の表面に、本発明のプライマー組成物を付与する。
【0068】
プライマー組成物を付与する方法は、特に限定されず、例えばグラビア印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット法、ディッピング法、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法、リバースコート法、スクリーン印刷法などにより行うことができる。
【0069】
次いで、付与したプライマー組成物を乾燥および硬化させて、プライマー層を得る。
【0070】
乾燥および硬化温度は、プライマー組成物中の(メタ)アクリル樹脂(A)やエポキシ樹脂(B)を硬化させうる程度であればよく、例えば60~400℃、好ましくは80~150℃程度としうる。乾燥時間は、乾燥温度にもよるが、例えば0.1~60分程度、好ましくは10~30分程度としうる。
【0071】
2)の工程について
次いで、絶縁性基材上のプライマー層の表面を無電解めっき液と接触させて、無電解めっき皮膜(金属めっき層)を形成する。プライマー層には、パラジウム触媒が含まれるため、無電解めっきを効率的に行うことができる。
【0072】
無電解めっき液は、前述の金属と、還元剤と、水および/または水溶性有機溶剤とを含みうる。無電解めっきの条件は、無電解めっき液の組成に応じて設定されうる。例えば、無電解銅めっき浴の温度は、通常、25~45℃程度としうる。処理時間は、用途にもよるが、0.3~0.4μm程度の厚みの金属めっき層を形成する場合は、例えば10~20分程度としうる。
【0073】
金属めっき層は、プライマー層の表面全体に形成してもよいし、パターン状に形成してもよい。
【0074】
例えば、本工程において、金属めっき層をパターン状に形成する場合、プライマー層の表面に所望のパターンに対応しためっきレジストを形成し、めっきレジストが形成されていない部分を無電解めっきして、金属めっき層を形成する。その後、めっきレジストを薬液などで溶解除去することによって、パターン状に形成された金属めっき層(所望の導電パターン)を得ることができる(フルアディティブ法)。
【0075】
あるいは、本工程において、金属めっき層を均一に形成する場合、後述する3)の工程)において、当該金属めっき層上に、さらに第2の金属めっき層をパターン状に形成してもよい(セミアディティブ法)。
【0076】
3)の工程について
上記の通り、プライマー層の表面全体に無電解めっきにより形成された金属めっき層(シード層)の表面に、所望のパターンに対応しためっきレジストを形成し、めっきレジストが形成されていない部分を電解めっきして第2の金属めっき層をさらに形成してもよい。その後、めっきレジストを薬液などで溶解除去して、パターン状に形成された金属めっき層(所望の導電パターン)を得ることができる。
【0077】
このように、積層体としてのプリント配線板は、セミアディティブ法またはフルアディティブ法により製造することができる。それにより、ファインピッチの配線パターンを形成することができる。本発明のプライマー組成物は、これらの方法を利用した積層体の製造方法において、特に有効である。
【0078】
本発明の積層体は、電子回路、集積回路などに使用される回路形成用基板、有機EL素子、有機トランジスタ、フレキシブルプリント基板、RFID、タッチパネルなどで用いられる透明電極、電磁波シールド材などに用いることができる。中でも、高温下での耐久性が求められる用途に好適に用いることができ、例えばフレキシブルプリント基板(FPC)、テープ自動ボンディング(TAB)、チップオンフィルム(COF)、プリント配線板(PWB)などの一般に銅張積層板(CCL:Copper Clad Laminate)といわれる用途に用いることが可能である。
【0079】
特に、本発明の積層体は、本発明のプライマー組成物の硬化物を含むプライマー層を有するため、絶縁性基材の表面をエッチングしなくても、金属めっき層の接着強度および接着信頼性を高めうる。また、エッチングが不要となるため、プライマー層の表面の平滑性も高く、表皮効果を生じにくい。したがって、本発明の積層体は、5Gなどの高周波数向けのデバイスに使用されるようなプリント配線板(PWB)に好適に用いることができる。
【実施例0080】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。しかしながら、本発明の範囲はこれによって何ら制限を受けない。
【0081】
1.無電解めっき用プライマー組成物の調製
<材料>
(1)ベース樹脂
テイサレジン SG-80H(ナガセケムテックス社製、アクリル酸エステル・グリシジルメタクリレート・アクリロニトリル共重合体、エポキシ当量9100g/eq、Mw:35万、Tg:11℃)
ウレタン変性ポリエステル共重合体(東洋紡社製、バイロンUR-3200)
jER4275(三菱ケミカル社製、フェノキシ樹脂、Tg68℃、エポキシ当量8400~9200g/eq)
【0082】
(2)エポキシ樹脂
jER1031S(三菱ケミカル社製、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、エポキシ当量200g/eq、Mw:800)
【0083】
(3)硬化剤
フェノライトTD-2131(DIC社製、ノボラック型フェノール系硬化剤(フェノールノボラック)、水酸基当量104g/eq、Tg78~82℃)
フェノライトTD-2620(DIC社製、レゾール型フェノール系硬化剤(アルキルフェノール)
リカシッドTBN-100(新日本理化社製、酸無水物系硬化剤)
アミキュアPN-23(味の素ファインテクノ社製、アミンアダクト系硬化剤)
【0084】
(4)硬化触媒
2E4MZ(2-エチル-4-メチルイミダゾール)
【0085】
(5)パラジウム触媒
Pdナノパウダー(イオックス社製ML-001N、平均粒子径5nm)
【0086】
<プライマー組成物1~26の調製>
表1または2に示されるように各成分を混合して、プライマー組成物1~26を調製した。
【0087】
2.積層体の作製および評価
[実施例1~6、比較例1~20]
(プライマー層の形成)
絶縁性基材として、厚み50μmのポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルムを準備した。このフィルムの片面に、表1または2のプライマー組成物を、バーコーターを用いて塗布し、乾燥用オーブン内で120℃、5分間乾燥させた後、さらに150℃、30分間加熱して硬化させて、厚み0.5μmのプライマー層を形成した。
【0088】
(無電解めっき)
上記プライマー層を形成したフィルムを、無電解めっき浴に浸漬させて、無電解めっきを行った。無電解銅めっき浴は、上村工業社製スルカップPSY(Cu濃度2~3g/L、35℃10分間)を用い、めっきの厚みが0.2μmとなるように行った。
【0089】
(評価)
得られた積層体のめっきの接着強度および接着信頼性を、以下の方法で評価した。
【0090】
(接着強度)
得られた積層体のめっき皮膜の密着性を、90°剥離試験にて測定した。具体的には、室温下で、剥離速度25mm/分の条件で測定した。そして、以下の基準で接着強度を評価した。
〇:接着強度が5N/cm以上
△:接着強度が2N/cm以上5N/cm未満
×:接着強度が2N/cm未満
△以上であれば良好と判断した。
【0091】
(接着信頼性)
得られた積層体を、大気オーブンにて150℃で168時間保管した。その後、上記と同様の方法および基準で、めっき皮膜の接着強度を評価した。
【0092】
実施例1~6および比較例1~8の評価結果を表1に示し、比較例9~20の評価結果を表2に示す。表中のパラジウム触媒の含有量(質量%)は、プライマー組成物全体に対する量を示す。
【0093】
【0094】
【0095】
表1に示されるように、実施例1~6の積層体は、いずれもエッチングを行わなくても、良好な接着強度と接着信頼性を有することがわかる。
【0096】
これに対し、ポリアミン系硬化剤(触媒型硬化剤)を含むプライマー組成物を用いた比較例1および2の積層体は、少なくとも接着信頼性が劣ることがわかる。ポリアミン系硬化剤による成長反応は、逐次重合反応であるため、付加重合反応とは異なりOH基を生成しない。そのため、得られる架橋物はOH基を有さず極性が低いため、基材との接着強度が得られにくく、また耐熱性を有する構造も有しないため、接着信頼性も得られなかったと考えられる。また、ベース樹脂を含まないプライマー組成物を用いた比較例3~8の積層体は、初期の接着強度および接着信頼性のいずれも低いことがわかる。
【0097】
また、表2に示されるように、ベース樹脂としてポリエステルウレタンやフェノキシ樹脂を用いたプライマー組成物を用いた比較例9~20の積層体は、いずれも接着信頼性が低いことがわかる。得られる架橋物のOH基が少なく(極性の程度)、エポキシ樹脂硬化剤(C)との反応性が低く、十分な架橋密度の架橋物が得られにくいことなどにより、基材との十分な接着性が得られなかったためと考えられる。
本発明によれば、絶縁性基材に対して良好な接着強度と接着信頼性を有する無電解めっき用プライマー組成物を提供することができる。そのため、プリント配線板、特に5Gなどの高周波対応のデバイスなどに使用されるプリント配線板を得るための積層体に好適である。