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特開2022-154473光信号選択装置、および光信号選択方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154473
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】光信号選択装置、および光信号選択方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/31 20060101AFI20221005BHJP
【FI】
G02F1/31
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057533
(22)【出願日】2021-03-30
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、総務省「新たな社会インフラを担う革新的光ネットワーク技術の研究開発」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】516059813
【氏名又は名称】エピフォトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹沢 永訓
(72)【発明者】
【氏名】井出 昌史
【テーマコード(参考)】
2K102
【Fターム(参考)】
2K102AA21
2K102BA05
2K102BA08
2K102BB01
2K102BB04
2K102BC04
2K102BD02
2K102CA00
2K102DB08
2K102DD02
2K102EA21
2K102EB08
2K102EB10
2K102EB11
2K102EB12
2K102EB16
(57)【要約】
【課題】光変調器を制御することで損失を抑制すること。
【解決手段】光信号選択装置は、複数の光ファイバが所定の方向に沿って配列され、光信号の入出力を行う光ファイバアレイと、複数の光ファイバのうち、第1光ファイバから入力された光信号を所定の角度で回折させて、第1光ファイバと前記第1光ファイバとは異なる第2光ファイバとの経路を結合する光変調器と、光変調器を制御する制御装置と、を備える。光変調器は、パターン画像を表示する第1光変調部と、第2光変調部との少なくとも一方を有し、制御装置は、第1光変調部と、第2光変調部との少なくとも一方に表示させるパターン画像を制御することで、光信号に対する減衰量の制御を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光ファイバが所定の方向に沿って配列され、光信号の入出力を行う光ファイバアレイと、
前記複数の光ファイバのうち、第1光ファイバから入力された光信号を所定の角度で回折させて、前記第1光ファイバと前記第1光ファイバとは異なる第2光ファイバとの経路を結合する光変調器と、
前記光変調器を制御する制御装置と、を備え、
前記光変調器は、パターン画像を表示する第1光変調部と、第2光変調部との少なくとも一方を有し、
前記制御装置は、前記第1光変調部と、前記第2光変調部との少なくとも一方に表示させる前記パターン画像を制御することで、前記光信号に対する減衰量の制御を行う、
光信号選択装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記第1光変調部に第1パターン画像を表示させ、前記第2光変調部に前記第1パターン画像とは異なる第2パターン画像を表示させることで、前記光信号に対する減衰量の制御を行う、
請求項1に記載の光信号選択装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記第1パターン画像および前記第2パターン画像を表示させる位置に関する第1描画パラメータに基づいて、前記光信号に対する減衰量の制御を行う、
請求項2に記載の光信号選択装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記第1パターン画像および前記第2パターン画像を表示させる位置と、位相変調量とに関する第2描画パラメータに基づいて、前記光信号に対する減衰量の制御を行う、
請求項2または3に記載の光信号選択装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記第1光変調部の前記第1描画パラメータと、前記第2光変調部の前記第1描画パラメータとに異なる値を設定して、前記光信号に対する減衰量の制御を行う、
請求項3に記載の光信号選択装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記第1光変調部の前記第2描画パラメータと、前記第2光変調部の前記第2描画パラメータとに異なる値を設定して、前記光信号に対する減衰量の制御を行う、
請求項4に記載の光信号選択装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記第1パターン画像および前記第2パターン画像の描画領域を狭めることで、前記光信号に対する減衰量の制御を行う、
請求項2から6のいずれか1項に記載の光信号選択装置。
【請求項8】
複数の光ファイバのうち、第1光ファイバから入力された光信号を、光変調器を制御して所定の角度で回折させて、前記第1光ファイバと前記第1光ファイバとは異なる第2光ファイバとの経路を結合させるステップと、
前記光変調器の第1光変調部と、第2光変調部との少なくとも一方にパターン画像を表示させるステップと、
前記第1光変調部と、前記第2光変調部との少なくとも一方に表示させる前記パターン画像を制御することで、前記光信号に対する減衰量の制御を行うステップと、
を含む、光信号選択方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光信号選択装置、および光信号選択方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光波長分割多重方式(WDM:Wavelength Division Multiplexing)を用いた、高速で大容量の情報通信技術が知られている。
【0003】
特許文献1には、経路の組み合わせ数に比べて、制御パラメータ数が増大することを抑制することのできる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-122152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
位相変調型の光変調器においては、受けた光信号を所定の角度で回折する際に損失が発生する。光変調器のみを制御することで、光信号の減衰量を制御することの技術が望まれている。
【0006】
本開示は、光変調器を制御することで光信号の減衰量を制御することのできる光信号選択装置、および光信号選択方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る光信号選択装置は、複数の光ファイバが所定の方向に沿って配列され、光信号の入出力を行う光ファイバアレイと、前記複数の光ファイバのうち、第1光ファイバから入力された光信号を所定の角度で回折させて、前記第1光ファイバと前記第1光ファイバとは異なる第2光ファイバとの経路を結合する光変調器と、前記光変調器を制御する制御装置と、を備え、前記光変調器は、パターン画像を表示する第1光変調部と、第2光変調部との少なくとも一方を有し、前記制御装置は、前記第1光変調部と、前記第2光変調部との少なくとも一方に表示させる前記パターン画像を制御することで、前記光信号に対する減衰量の制御を行う。
【0008】
本開示に係る光信号選択方法は、複数の光ファイバのうち、第1光ファイバから入力された光信号を、光変調器を制御して所定の角度で回折させて、前記第1光ファイバと前記第1光ファイバとは異なる第2光ファイバとの経路を結合させるステップと、前記光変調器の第1光変調部と、第2光変調部との少なくとも一方にパターン画像を表示させるステップと、前記第1光変調部と、前記第2光変調部との少なくとも一方に表示させる前記パターン画像を制御することで、前記光信号に対する減衰量の制御を行うステップと、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、光変調器を制御することで光信号の減衰量を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態に係る光信号選択装置の構成例を示す図である。
図2図2は、実施形態に係る光変調器のパターン画像の一例を説明するための図である。
図3図3は、光信号の測定スペクトルの一例例を示す図である。
図4図4は、実施形態に係る制御装置の構成例を示すブロック図である。
図5図5は、実施形態に係る描画パターンを変化させる方法を説明するための図である。
図6図6は、実施形態に係る描画パターンを変化させる方法を説明するための図である。
図7図7は、実施形態に係る描画パターンを変化させる方法を説明するための図である。
図8図8は、出力ポートと、第1描画パラメータとの対応関係を示す図である。
図9図9は、出力ポートと、位相変化シミュレーションの対応関係を示す図である。
図10図10は、実施形態に係る第1光変調部の測定スペクトルの一例を示す図である。
図11図11は、実施形態に係る第2光変調部の測定スペクトルの一例を示す図である。
図12図12は、実施形態に係る光変調部の測定スペクトルの一例を示す図である。
図13図13は、測定スペクトルのピークを減衰する方法を説明するための図である。
図14図14は、第1光変調部および第2光変調部の測定スペクトルをシフトさせる方向を説明するための図である。
図15図15は、第1光変調部および第2光変調部の測定スペクトルをシフトさせる方向を説明するための図である。
図16図16は、第1光変調部および第2光変調部の測定スペクトルをシフトさせる方向を説明するための図である。
図17図17は、第1光変調部および第2光変調部の測定スペクトルをシフトさせる方向を説明するための図である。
図18図18は、第1描画パラメータと、減衰量との関係を示すグラフである。
図19図19は、第2描画パラメータと、減衰量との関係を示すグラフである。
図20図20は、第1光変調部の第2描画パラメータと、第2光変調部の第2描画パラメータとの組み合わせを示す表である。
図21図21は、1光変調部の第2描画パラメータと、第2光変調部の第2描画パラメータとの組み合わせと、減衰量との関係を示すグラフである。
図22図22は、本発明の実施形態に係る光学系の作用を説明するための補足図である。
図23A図23Aは、光変調器のパターン画像の描画領域を狭める方法を説明するための図である。
図23B図23Bは、光変調器のパターン画像の描画領域を狭める方法を説明するための図である。
図24A図24Aは、光変調器のパターン画像の描画領域を狭める方法を説明するための図である。
図24B図24Bは、光変調器のパターン画像の描画領域を狭める方法を説明するための図である。
図25A図25Aは、光変調器のパターン画像の縦方向の描画領域と、挿入損失との関係を説明するための図である。
図25B図25Bは、光変調器のパターン画像の縦方向の描画領域と、挿入損失との関係を説明するための図である。
図25C図25Cは、光変調器のパターン画像の縦方向の描画領域と、挿入損失との関係を説明するための図である。
図26図26は、実施形態に係る光変調器のパターン画像の縦方向の描画領域と、減衰量との関係を示すグラフである。
図27図27は、実施形態に係る制御装置の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本開示に係る実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、以下の実施形態において、同一の部位には同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部の位置関係について説明する。水平面内のX軸と平行な方向をX軸方向とし、X軸と直交する水平面内のY軸と平行な方向をY軸方向とし、水平面と直交するZ軸と平行な方向をZ軸方向とする。
【0012】
[実施形態]
図1を用いて、実施形態に係る光信号選択装置の構成例について説明する。図1は、実施形態に係る光信号選択装置の構成例を示す図である。
【0013】
本開示に係る光信号選択装置1は、WSS(Wavelength Selective Switch)の一種である。光信号選択装置1は、ROADM(Reconfigurable Optical Add/drop multiplexer)の構成部品の1つである。光信号選択装置1は、光通信ネットワークにおいて、回折格子などの波長分離機能と、ミラーや光変調器などの経路切り替え機能といった物理的機能を有する。光信号選択装置1は、信号同士のレベルを同じにするための減衰機能、経路切り替え時の迷光を防ぐヒットレス機能を含む。
【0014】
図1に示すように、光信号選択装置1は、光ファイバアレイ12と、光分散素子14と、レンズ16と、光変調器18と、偏波操作素子20と、制御装置22とを備える。光信号選択装置1において、固定基板10上に、各構成要素は、光ファイバアレイ12、光分散素子14、レンズ16、偏波操作素子20、および光変調器18の順に配置されている。制御装置22は、光変調器18を制御するように構成されている。
【0015】
光ファイバアレイ12は、Y軸方向に沿って、光ファイバ30、光ファイバ30、・・・、および光ファイバ30(nは任意の整数)を備える。光ファイバ30から光ファイバ30は、それぞれ、コリメータレンズ32からコリメータレンズ32を有する。光ファイバ30から光ファイバ30は、それぞれ、光信号選択装置1の入出力ポートである。
【0016】
光分散素子14は、例えば、回折格子で構成されている。光分散素子14は、光ファイバアレイ12から受けた光信号をZ軸方向に分光するように構成されている。
【0017】
レンズ16は、光分散素子14と、光変調器18との間に配置されている。レンズ16の前側の焦点位置は、光分散素子14の位置である。レンズ16の後側の焦点位置は、光変調器18の位置である。レンズ16は、光分散素子14から受けた光信号を、光変調器18の表面に照射する。レンズ16は、例えば、単一のレンズであってよい。光変調器18は、例えば、複数の球面レンズおよびシリンドリカルレンズなどを組み合わせた集光光学系として構成されてもよい。
【0018】
光変調器18は、複数の光変調素子を備える。光変調器18は、例えば、屈折率を変化させることのできる2次元配列された複数の位相変調素子を備える。光変調器18は、例えば、位相変調素子として液晶素子を用いた反射型のLCOS(Liquid Crystal On Silicon)で構成することができる。本実施形態では、光変調器18は、第1光変調部18-1と、第2光変調部18-2と、を含む。
【0019】
図2を用いて、実施形態に係る光変調器のパターン画像の一例について説明する。図2は、実施形態に係る光変調器のパターン画像の一例を説明するための図である。
【0020】
第1光変調部18-1は、レンズ16で上側に偏波された上偏波側の光信号を回折させて反射するように構成されている。第2光変調部18-2は、レンズ16で下側に偏波された下偏波側の光信号を回折させて反射するように構成されている。図2では、位相変化の違いを濃淡分けして示している。図2では、位相変化量の大きい領域ほど濃い色で示し、位相変化量の小さい領域ほど薄い色で示している。パターン画像は、例えば、ブレ-ズド回析格子の格子パターンを示す画像である。図2に示すように、パターン画像は、位相変化の違いによって濃淡が異なるグラデーション画像となる。パターン画像のグラデーションの方向は、光ファイバアレイ12の光ファイバ30から光ファイバ30の配列方向と同じである。
【0021】
図2に示すように、光変調器18に表示されるパターン画像は、縦帯画像181を有する。図3は、図2に示すパターン画像に対応する光信号の測定スペクトルの一例を示す図である。図3は、横軸は光信号の波長を示す、縦軸は挿入損失を示す。図3に示すように、図2に示すパターン画像では、所定の波長帯域にピークを有する、スペクトル波形W1が観測される。スペクトル波形W1は、縦帯画像181の表示位置に対応する位置にピークを有する。すなわち、縦帯画像181の表示位置を変化させることで、観測されるスペクトル波形のピークの位置を変化させることができる。光変調器18に表示される画像は、制御装置22により制御される。
【0022】
偏波操作素子20は、レンズ16と、光変調器18との間に配置されている。偏波操作素子20は、レンズ16から入光した光信号の偏波状態を操作する光操作装置である。偏波操作素子20は、図示しない偏波分離素子と偏波回転素子とを含む。偏波分離素子は、レンズ16から入光した光信号を互いに直交する2つの直線偏波に分離する。偏波回転素子は、光変調器18側の面において、Y方向に並んで配置される。偏波回転素子は、互いに直交する2つの直線偏波の一方を、他方の直線偏波と偏波方向を同一にして、光変調器18に出力する。
【0023】
図4を用いて、実施形態に係る制御装置の構成例について説明する。図4は、実施形態に係る制御装置の構成例を示すブロック図である。
【0024】
図4に示すように、制御装置22は、通信部40と、記憶部42と、制御部44と、を有する。制御装置22は、例えば、光変調器18を構成する複数の位相変調素子のそれぞれに電圧を印加するように構成されている。制御装置22は、例えば、光ファイバ30から光ファイバ30の間における、光信号の切り換えるように構成されている。
【0025】
通信部40は、制御装置22と、外部の装置との間の通信を行う。通信部40は、例えば、制御装置22に対する各種の操作を受け付ける入力装置の間で、各種の情報の送受信を行う。
【0026】
記憶部42は、制御部44の演算内容やプログラムなどの各種情報を記憶するメモリであり、例えば、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)のような主記憶装置と、オンボードフラッシュメモリ(On-Board Flash Memory)などの補助記憶装置または、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)などの外部記憶装置とのうち、少なくとも1つ含む。
【0027】
記憶部42は、各種の情報を記憶する。記憶部42は、制御部44の処理内容を記憶する。記憶部42は、例えば、光変調器18に表示されるパターン画像に関する描画パラメータに関する情報を記憶する。
【0028】
制御部44は、光信号選択装置1の各部の動作を制御する。制御部44は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)、またはGPU(Graphics Processing Unit)等によって、記憶部42に記憶されたプログラムがRAM等を作業領域として実行されることにより実現される。制御部44は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現されてもよい。制御部44は、ハードウェアと、ソフトウェアとの組み合わせで実現されてもよい。
【0029】
制御部44は、取得部50と、算出部52と、駆動部54と、を有する。
【0030】
取得部50は、各種情報を取得する。取得部50は、例えば、制御装置22に入力された操作に関する操作情報を取得する。取得部50の具体的な動作は、後述する。
【0031】
算出部52は、各種情報を算出する。算出部52は、例えば、取得部50が取得した情報に基づいて、光変調器18に表示させるパターン画像に関する描画パラメータを算出する。算出部52の具体的な動作は、後述する。
【0032】
駆動部54は、光変調器18を駆動させる。駆動部54は、光変調器18を駆動させて、パターン画像を表示させる。駆動部54は、例えば、算出部52の算出結果に従って、光変調器18を制御して、パターン画像を表示させる。駆動部54の具体的な動作は、後述する。
【0033】
[描画パターン]
図5と、図6と、図7を用いて、実施形態に係る描画パターンを変化させる方法について説明する。図5から図7は、実施形態に係る描画パターンを変化させる方法を説明するための図である。
【0034】
図5は、第1光変調部18-1の測定スペクトルの一例を示す図である。図5には、スペクトル波形W10が示されている。図6は、図5に対応する第1光変調部18-1のパターン画像の描画パターンを示す図である。図6に示すように、第1光変調部18-1は、所定の縦位置において、フレネルレンズのレンズ中心に相当する位相変化領域182を有する。図7は、図6に示す描画パターンの任意の縦方向の位相変化プロファイルを示す位相変化シミュレーション結果を示す。
【0035】
本実施形態では、レンズ中心に相当する位相変化領域182の位置を変更することにより、出力ポートを変更することができる。具体的には、本実施形態では、第1描画パラメータを変更することにより、位相変化領域182の位置を変更することができる。すなわち、本実施形態は、第1描画パラメータを変更することにより、出力ポートを変更することができる。第1描画パラメータは、位相変化領域182を描画する位置を決定するパラメータである。
【0036】
図8は、出力ポートと、第1描画パラメータとの対応関係の一例を示す図である。入力ポートをP8とすると、図8に示すように、第1描画パラメータを300ピクセルに設定すると、出力ポートは出力ポートP1になる。第1描画パラメータを289ピクセルに設定すると、出力ポートは出力ポートP2になる。第1描画パラメータを274ピクセルに設定すると、出力ポートは出力ポートP3になる。第1描画パラメータを264ピクセルに設定すると、出力ポートは出力ポートP4になる。第1描画パラメータを239ピクセルに設定すると、出力ポートは出力ポートP5になる。第1描画パラメータを221ピクセルに設定すると、出力ポートは出力ポートP6になる。第1描画パラメータを203ピクセルに設定すると、出力ポートは出力ポートP7になる。図8に示すように、第1描画パラメータを10~20ピクセル程度変更することで、出力ポートが変化する。すなわち、本実施形態では、第1描画パラメータを変更するのみで、出力ポートを変更することができる。
【0037】
図9は、入力ポートP8時の出力ポートと、位相変化シミュレーションの対応関係を示す図である。図9に示すように、出力ポートP1、出力ポートP2、出力ポートP3、出力ポートP4、出力ポートP5、出力ポートP6、および出力ポートP7の順に、位相変化領域182の位置が上方向にシフトする。すなわち、第1描画パラメータを変更させることで、ピーク波長の位置を変更することができる。
【0038】
[減衰機能]
次に、実施形態に係る光変調器18による測定スペクトルの例を説明する。図10は、実施形態に係る第1光変調部の測定スペクトルの一例を示す図である。図11は、実施形態に係る第2光変調部の測定スペクトルの一例を示す図である。図12は、実施形態に係る光変調部の測定スペクトルの一例を示す図である。図10から図12は、入力ポートがポートP7で、出力ポートがポートP8の測定スペクトルの一例を示している。
【0039】
図10に示すように、第1光変調部18-1の測定スペクトルとして、所定の波長λnにピーク値PV1を有する、スペクトル波形W20が得られる。図11に示すように、第2光変調部18-2の測定スペクトルとして、所定の波長λnにピーク値PV2を有する、スペクトル波形W21が得られる。
【0040】
図12に示すように、光変調器18の測定スペクトルとして、スペクトル波形W22が得られる。スペクトル波形W22は、スペクトル波形W20と、スペクトル波形W21との重ね合わせてして得られるスペクトル波形となる。
【0041】
PV1,PV2,PV3はdB(デシベル)で表され、図10,11,12の縦軸の下部になるほど挿入損失は大きくなる。図12に示すように、スペクトル波形W22は、スペクトル波形W20と、スペクトル波形W21との重ね合わせであるため、波長λnで、ピーク値PV3を有し、挿入損失は小さくなっている。
【0042】
[第1の方法]
第1描画パラメータを変更することで、あるポートと次のポートの中間に出力するように操作することにより、所定ポートの結合係数を低下させ、所定ポートにおける出力の減衰量を得る。
【0043】
図13を用いて、測定スペクトルのピークを減衰させる方法を説明する。図13は、測定スペクトルのピークを減衰する方法を説明するための図である。
【0044】
図13に示すように、初期状態においては、光変調器18のポートPnのスペクトル波形W30が得られる(ステップS10)。本実施形態では、第1描画パラメータを変化させることで測定スペクトルのピークの位置をシフトさせることができる。例えば、第1描画パラメータを初期状態よりも大きく設定することで、スペクトル波形W30全体を左側にシフトさせることができる(ステップS12)。ステップS12に示すように、スペクトル波形W30が左方向にシフトして、ポートPnの次のポートである、ポートPn+1からスペクトル波形W31が測定される。更に、第1描画パラメータを大きく設定することで、スペクトル波形W30とスペクトル波形W31とは、左方向にシフトして、スペクトル波形W31のみが観測される。
【0045】
上述したように、本実施形態では、光変調器18の測定スペクトルは、第1光変調部18-1の測定スペクトルと、第2光変調部18-2の測定スペクトルとの和となる。したがって、第1光変調部18-1の測定スペクトルと、第2光変調部18-2の測定スペクトルとを左右にシフトさせることで、光変調器18の測定スペクトルの波長λnにおける減衰量を制御することができる。
【0046】
次に、光変調器18の測定スペクトルの減衰量を制御するための、第1の方法について説明する。
【0047】
図14と、図15と、図16と、図17とを用いて、第1光変調部および第2光変調部の測定スペクトルをシフトさせる方向について説明する。図14から図17は、第1光変調部および第2光変調部の測定スペクトルをシフトさせる方向を説明するための図である。
【0048】
図14は、第1光変調部18-1のスペクトル波形W40と、第2光変調部18-2のスペクトル波形W41の両方を右方向にシフトさせる例を示している。スペクトル波形W40の波長がλnのときの初期状態の挿入損失を、IL1[dB]であるものとする。スペクトル波形W41の波長がλnのときの初期状態の挿入損失を、IL2[dB]であるものとする。
【0049】
駆動部54は、第1光変調部18-1を駆動させて、スペクトル波形W40が右方向にシフトするように、パターン画像を描画させる。これにより、スペクトル波形W40の波長がλnの時の挿入損失は、IL1よりも大きいIL3[dB]となる。すなわち、駆動部54は、波長がλnのときの挿入損失が初期状態に比べて大きくなるようにスペクトル波形W40が右方向にシフトするパターン画像を第1光変調部18-1に描画させる。この場合、算出部52が、スペクトル波形W40と、初期状態の挿入損失IL1に基づいて、スペクトル波形W40を右方向にシフトするシフト量を算出する。
【0050】
駆動部54は、第2光変調部18-2を駆動させて、スペクトル波形W41が右方向にシフトするように、パターン画像を描画させる。これにより、スペクトル波形W41の波長がλnの時の挿入損失は、IL2よりも大きいIL4[dB]となる。すなわち、駆動部54は、波長がλnのときの挿入損失が初期状態に比べて大きくなるようにスペクトル波形W41が右方向にシフトするパターン画像を第2光変調部18-2に描画させる。この場合、算出部52が、スペクトル波形W41と、初期状態の挿入損失IL2に基づいて、スペクトル波形W42を右方向にシフトするシフト量を算出する。
【0051】
図14に示す例では、スペクトル波形W40とスペクトル波形W41とを右方向にシフトさせることで、波長がλnのときの挿入損失を大きくする。これにより、スペクトル波形W40とスペクトル波形W41との重ね合わせで得られる、光変調器18の測定スペクトルの挿入損失を大きくすることができる。
【0052】
図15は、第1光変調部18-1のスペクトル波形W40と、第2光変調部18-2のスペクトル波形W41の両方を左方向にシフトさせる例を示している。
【0053】
駆動部54は、第1光変調部18-1を駆動させて、スペクトル波形W40が左方向にシフトするように、パターン画像を描画させる。これにより、スペクトル波形W40の波長がλnの時の挿入損失は、IL1よりも大きいIL5[dB]となる。すなわち、駆動部54は、波長がλnのときの挿入損失が初期状態に比べて大きくなるようにスペクトル波形W40が左方向にシフトするパターン画像を第1光変調部18-1に描画させる。この場合、算出部52が、スペクトル波形W40と、初期状態の挿入損失IL1に基づいて、スペクトル波形W40を左方向にシフトするシフト量を算出する。
【0054】
駆動部54は、第2光変調部18-2を駆動させて、スペクトル波形W41が左方向にシフトするように、パターン画像を描画させる。これにより、スペクトル波形W41の波長がλnの時の挿入損失は、IL2よりも大きいIL6[dB]となる。すなわち、駆動部54は、波長がλnのときの挿入損失が初期状態に比べて大きくなるようにスペクトル波形W41が左方向にシフトするパターン画像を第2光変調部18-2に描画させる。この場合、算出部52が、スペクトル波形W41と、初期状態の挿入損失IL2に基づいて、スペクトル波形W42を左方向にシフトするシフト量を算出する。
【0055】
図15に示す例では、スペクトル波形W40とスペクトル波形W41とを左方向にシフトさせることで、波長がλnのときの挿入損失を大きくする。これにより、スペクトル波形W40とスペクトル波形W41との重ね合わせで得られる、光変調器18の測定スペクトルの挿入損失を大きくすることができる。
【0056】
図16は、第1光変調部18-1のスペクトル波形W40を右方向にシフトさせ、第2光変調部18-2のスペクトル波形W41を左方向にシフトさせる例を示している。
【0057】
駆動部54は、第1光変調部18-1を駆動させて、スペクトル波形W40が右方向にシフトするように、パターン画像を描画させる。これにより、スペクトル波形W40の波長がλnの時の挿入損失は、IL1よりも大きいIL7[dB]となる。すなわち、駆動部54は、波長がλnのときの挿入損失が初期状態に比べて大きくなるようにスペクトル波形W40が右方向にシフトするパターン画像を第1光変調部18-1に描画させる。この場合、算出部52が、スペクトル波形W40と、初期状態の挿入損失IL1に基づいて、スペクトル波形W40を右方向にシフトするシフト量を算出する。
【0058】
駆動部54は、第2光変調部18-2を駆動させて、スペクトル波形W41が左方向にシフトするように、パターン画像を描画させる。これにより、スペクトル波形W41の波長がλnの時の挿入損失は、IL2よりも大きいIL8[dB]となる。すなわち、駆動部54は、波長がλnのときの挿入損失が初期状態に比べて大きくなるようにスペクトル波形W41が左方向にシフトするパターン画像を第2光変調部18-2に描画させる。この場合、算出部52が、スペクトル波形W41と、初期状態の挿入損失IL2に基づいて、スペクトル波形W42を左方向にシフトするシフト量を算出する。
【0059】
図16に示す例では、スペクトル波形W40を右方向にシフトさせ、スペクトル波形W41を左方向にシフトさせることで、波長がλnのときの挿入損失を大きくする。これにより、スペクトル波形W40とスペクトル波形W41との重ね合わせで得られる、光変調器18の測定スペクトルの挿入損失を大きくすることができる。
【0060】
図17は、第1光変調部18-1のスペクトル波形W40を左方向にシフトさせ、第2光変調部18-2のスペクトル波形W41を右方向にシフトさせる例を示している。
【0061】
駆動部54は、第1光変調部18-1を駆動させて、スペクトル波形W40が左方向にシフトするように、パターン画像を描画させる。これにより、スペクトル波形W40の波長がλnの時の挿入損失は、IL1よりも大きいIL9[dB]となる。すなわち、駆動部54は、波長がλnのときの挿入損失が初期状態に比べて大きくなるようにスペクトル波形W40が左方向にシフトするパターン画像を第1光変調部18-1に描画させる。この場合、算出部52が、スペクトル波形W40と、初期状態の挿入損失IL1に基づいて、スペクトル波形W40を左方向にシフトするシフト量を算出する。
【0062】
駆動部54は、第2光変調部18-2を駆動させて、スペクトル波形W41が右方向にシフトするように、パターン画像を描画させる。これにより、スペクトル波形W41の波長がλnの時の挿入損失は、IL2よりも大きいIL10[dB]となる。すなわち、駆動部54は、波長がλnのときの挿入損失が初期状態に比べて大きくなるようにスペクトル波形W41が右方向にシフトするパターン画像を第2光変調部18-2に描画させる。この場合、算出部52が、スペクトル波形W41と、初期状態の挿入損失IL2に基づいて、スペクトル波形W42を右方向にシフトするシフト量を算出する。
【0063】
図17に示す例では、スペクトル波形W40を左方向にシフトさせ、スペクトル波形W41を右方向にシフトさせることで、波長がλnのときの挿入損失を大きくする。これにより、スペクトル波形W40とスペクトル波形W41との重ね合わせで得られる、光変調器18の測定スペクトルの挿入損失を大きくすることができる。
【0064】
図18を用いて、第1描画パラメータと、減衰量との関係について説明する。図18は、第1描画パラメータと、減衰量との関係を示すグラフである。
【0065】
図18には、第1描画パラメータを変更したことによる、減衰量の変化を検証した結果を示すグラフG1が示されている。図18は、横軸が第1描画パラメータ[ピクセル]を示し、縦軸が減衰量[dB]を示す。具体的には、グラフG1は、第1光変調部18-1および第2光変調部18-2の第1描画パラメータを同じ方向にシフトさせた場合の、減衰量を示す。グラフG1に示すように、第1光変調部18-1および第2光変調部18-2の第1描画パラメータが255[ピクセル]で減衰量を0[dB]としている。グラフG1に示すように、第1光変調部18-1および第2光変調部18-2の第1描画パラメータを255[ピクセル]よりも小さくしたり、大きくしたりすることにより、大きな減衰特性を得ることができる。なお、本実施形態では、駆動部54は、第1描画パラメータを変更することで、第1光変調部18-1および第2光変調部18-2に描画させるパターン画像を変更する。なお、第1光変調部18-1が表示するパターン画像は第1パターン画像と呼ばれ、第2光変調部18-2に表示されるパターン画像は第2パターン画像と呼ばれることもある。本実施形態において、第1パターン画像と、第2パターン画像とは異なるものとして説明するが、第1パターン画像と、第2パターン画像は、それぞれ独立しており、パターン画像の操作により単独に減衰量を制御できる。例えば、どちらか一方のみのパターン画像を第1光変調部18-1と第2光変調部18-2にわたって表示する画像であってもよい。本実施形態では、第1光変調部18-1と、第2光変調部18-2との2つ領域にパターン画像を表示することにより、減衰量を大きくすることができる。
【0066】
図19を用いて、第2描画パラメータと、減衰量との関係について説明する。図19は、第2描画パラメータと、減衰量との関係を示すグラフである。第2描画パラメータは、単位画素[ピクセル]ごとの位相変化量[ラジアン]である。第2描画パラメータでは、図9に示した出力ポート切り替えと同じことを行える。
【0067】
図19には、第2描画パラメータを変更したことによる、減衰量の変化を検証した結果を示すグラフG2が示されている。図19は、横軸が第2描画パラメータ[ラジアン/ピクセル]を示し、縦軸が減衰量を示す。具体的には、グラフG2は、第1光変調部18-1および第2光変調部18-2の第2描画パラメータが-0.38[ラジアン/ピクセル]で減衰量を0[dB]としている。グラフG2に示すように、第1光変調部18-1および第2光変調部18-2の第2描画パラメータを-0.38[ラジアン/ピクセル]よりも大きくしたり、小さくしたりすることで、大きな減衰特性を得ることができる。なお、本実施形態では、駆動部54は、第2描画パラメータを変更することで、第1光変調部18-1および第2光変調部18-2に描画させるパターン画像を変更する。
【0068】
図20と、図21とを用いて、第1光変調部18-1および第2光変調部18-2の第2描画パラメータをそれぞれ交互に少しずつ変化させた場合の、減衰量の変化について説明する。図20は、第1光変調部18-1の第2描画パラメータと、第2光変調部18-2の第2描画パラメータとの組み合わせを示す表である。図21は、図20のデータに基づいた、第1光変調部18-1の第2描画パラメータと、第2光変調部18-2の第2描画パラメータとの組み合わせパターンと、減衰量との関係を示すグラフである。
【0069】
図20に示すように、本実施形態では、第1光変調部18-1の第2描画パラメータと、第2光変調部18-2の第2描画パラメータとを35パターンの組み合わせで減衰量の変化を検証した。例えば、組み合わせパターン1では、第1光変調部18-1の第2描画パラメータは-0.600[ラジアン/ピクセル]であり、第2光変調部18-2の第2描画パラメータは-0.610[ラジアン/ピクセル]である。例えば、組み合わせパターン35では、第1光変調部18-1の第2描画パラメータは、-0.645[ラジアン/ピクセル]であり、第2光変調部18-2の第2描画パラメータは、-0.655[ラジアン/ピクセル]である。すなわち、本実施形態では、第1光変調部18-1の第2描画パラメータを-0.600[ラジアン/ピクセル]から-0.645[ラジアン/ピクセル]まで変化させる。また、本実施形態では、第2光変調部18-2の第2描画パラメータを-0.610[ラジアン/ピクセル]から-0.655[ラジアン/ピクセル]まで変化させる。
【0070】
図21は、第1光変調部18-1の第2描画パラメータと、第2光変調部18-2の第2描画パラメータとの組み合わせと、減衰量との関係を示すグラフである。図21は、横軸は組み合わせパターンを示し、縦軸は減衰量[dB]を示す。グラフG3に示すように、組み合わせパターン1で、減衰量は0[dB]である。グラフG3に示すように、組み合わせパターン1と比べて、第1光変調部18-1の第2描画パラメータおよび第2光変調部18-2の第2描画パラメータの少なくとも一方を小さくすることで、減衰量は大きくなる。また、第1光変調部18-1の第2描画パラメータおよび第2光変調部18-2の第2描画パラメータが小さいほど、減衰量は大きくなる。
【0071】
上述のとおり、第1の方法では、第1光変調部18-1および第2光変調部18-2の第1描画パラメータまたは第2描画パラメータを変更することにより、減衰量を制御することができる。言い換えれば、本実施形態は、第1光変調部18-1および第2光変調部18-2に減衰機能を持たせることができる。
【0072】
[第2の方法]
次に、光変調器18の描画パターンを変調し光信号選択装置1の入出力ポート間の結合係数を低下させて減衰特性を得るための、第2の方法について説明する。第2実施形態では、光軸中心に相当する光変調器18の画素位置を中心に、パターン画像の描画領域を狭めることで、減衰機能を持たせる。
【0073】
図22は、本発明の実施形態に係る光学系の作用を説明するための補足図である。図22において図1では反射型構成で示した光学系を光分散素子14から光変調器18までの間を展開し透過型の等価光学回路としてあらわした。図22に示す、透過光学回路は、光分散素子14a、レンズ16a、光変調器18、レンズ16b、および光分散素子14bが、順に並んでいる。光分散素子14aと、レンズ16aとの間の光学距離はfであるとする。レンズ16aと、光変調器18との間の光学距離は、fであるとする。光変調器18と、レンズ16bとの間の光学距離は、fであるとする。レンズ16bと、光分散素子14bとの間の光学距離は、fであるとする。図1示す例では、光分散素子14は、レンズ16の前側焦点面に配置され、光変調器18の変調面または反射面は、レンズ16の後側焦点面に配置される。図1に示す例では、光変調器18を反射した光は、おおよそ同じ経路を逆方向に進み再度光分散素子14に結合する。そのため、図1に示す光信号選択装置1構成する図22で示した光学系は、4fの光学系で光分散素子14aの出射面から出力される光信号S21において分散素子14a出射面での複素振幅分布を入力像とすると、光変調器18の変調面である入出力面はレンズ16aの作用によりフーリエ面となる。さらに、光変調器18の位相変調を受けたフーリエ面である出力面の複素振幅分布像は、レンズ16bの作用で逆フーリエ変換され、光分散素子14bにフーリエ面の逆フーリエ変換出力像を再結合させるフーリエ光学系を構成する。
【0074】
図23Aと、図23Bと、図24Aと、図24Bとを用いて、光変調器18のパターン画像の描画領域を狭める方法について説明する。図23Aと、図23Bと、図24Aと、図24Bとは、光変調器18のパターン画像の描画領域を狭める方法を説明するための図である。以下では、光変調器18の縦方向の描画領域は、通常では、250ピクセルであるものとする。
【0075】
なお前述のようにここでパターン画像の描画領域を狭める操作対象である光変調器18の面は光分散素子14からの入射光の複素振幅分布に対するフーリエ面であり、描画領域を狭める操作は、フーリエ面のパワースペクトル分布を面積階調することと等価であり得る。光変調器18で位相変調を受け光分散素子14に再入射する反射光の複素振幅分布の光強度は、言い換えれば、パーセバルの定理によりフーリエ面でのパワースペクトル分布に相関する光強度変調を受ける。したがって、フーリエ面の回折光操作により光ファイバアレイ12に再結合する出射光の減衰特性を制御することができる。
【0076】
図23Aは、光変調器18のパターン画像の縦方向の描画領域を120ピクセルに狭めたパターン画像18aを示している。図23Aに示すように、パターン画像18aは、ポート切り替え領域100と、ポート切り替え領域110と、迷光除去領域120と、を有する。
【0077】
ポート切り替え領域100と、ポート切り替え領域110とは、出力ポートの切り替えに直接関与する領域である。迷光除去領域120は、出力ポートを切り替える対象以外の光信号を除去する領域である。
【0078】
図23Bに示すように、パターン画像18bは、ポート切り替え領域100と、ポート切り替え領域110と、黒領域130と、を有する。パターン画像18bは、図23Aに示すパターン画像18aにおいて、迷光除去領域120の代わりに黒領域130を表示させたパターン画像である。ポート切り替え領域100およびポート切り替え領域110以外の領域を黒くすることで、出力ポートの切り替えに直接関与する領域が鮮明になる。
【0079】
図24Aは、光変調器18のパターン画像の縦方向の描画領域を60ピクセルに狭めたパターン画像18c示している。図24Aに示すように、パターン画像18cは、ポート切り替え領域100Aと、ポート切り替え領域110Aと、迷光除去領域120Aと、を有する。パターン画像18cにおいて、ポート切り替え領域100Aと、ポート切り替え領域110Aとの縦方向の長さは、それぞれ、図23Aに示すパターン画像18aのポート切り替え領域100と、ポート切り替え領域110との半分になる。
【0080】
図24Aに示すように、パターン画像18dは、ポート切り替え領域100Aと、ポート切り替え領域110Aと、黒領域130Aと、を有する。パターン画像18bは、図24Aに示すパターン画像18cにおいて、迷光除去領域120Aの代わりに黒領域130Aを表示させたパターン画像である。
【0081】
図25Aと、図25Bと、図25Cとを用いて、光変調器のパターン画像の縦方向の描画領域と、挿入損失との関係について説明する。図25Aと、図25Bと、図25Cとは、光変調器のパターン画像の縦方向の描画領域と、挿入損失との関係を説明するための図である。
【0082】
図25Aと、図25Bと、図25Cとは、横軸が波長[nm]を示し、縦軸が挿入損失[dB]を示す。
【0083】
図25Aは、スペクトル波形W50を示す。スペクトル波形W50は、光変調器18のパターン画像の縦方向の描画領域を制限していない状態のスペクトル波形を示す。スペクトル波形W50のピーク値PV10は、7.5[dB]程度となる。
【0084】
図25Bは、スペクトル波形W51を示す。スペクトル波形W51は、光変調器18のパターン画像の縦方向の描画領域を120ピクセルに制限した状態のスペクトル波形を示す。スペクトル波形W51のピーク値PV11は、11[dB]程度となる。
【0085】
図25Cは、スペクトル波形W52を示す。スペクトル波形W52は、光変調器18のパターン画像の縦方向の描画領域を60ピクセルに制限した状態のスペクトル波形を示す。スペクトル波形W52のピーク値PV12は、17[dB]程度となる。
【0086】
図25Aと、図25Bと、図25Cとに示すように、光変調器18のパターン画像の縦方向の描画領域を制限することで、スペクトルのピーク値が低くなる。言い換えれば、光変調器18のパターン画像の縦方向の描画領域を制限することで、挿入損失を制御し出力ポートに結合する光強度を減衰することができる。図22で説明したように、パターン画像表示位置はフーリエ面となっており、パーセバルの定理からフーリエ変換像位置での開口制限で、パワースペクトルを制御できるため、出力像の逆フーリエ変換像のパワーを制御できると言い換えることも可能である。
【0087】
図26を用いて、実施形態に係る光変調器のパターン画像の縦方向の描画領域と、減衰量との関係について説明する。図26は、実施形態に係る光変調器のパターン画像の縦方向の描画領域と、減衰量との関係を示すグラフである。
【0088】
図26は、横軸は縦方向の縦画素領域[ピクセル]を示し、縦軸は減衰量[dB]を示す。図26には、減衰量の実測値と、シミュレーション結果と、近似曲線とのグラフが示される。図26に示すように、縦画素領域を狭くするに連れて、減衰量は大きくなる。また、本実施形態では、減衰量の実測値の近似曲線は、所定の指数関数に精度よく近似することができる。これにより、本実施形態は、所望の減衰量に設定するための、縦画素領域の値を容易に把握することができる。言い換えれば、本実施形態は、所望の減衰特性を持つ光信号選択装置1を得ることができる。
【0089】
上述のとおり、第2の方法では、光変調器18の縦方向の画素領域を狭くすることにより、減衰量を大きくすることができる。これにより、本実施形態は、第1光変調部18-1および第2光変調部18-2に減衰機能を持たせることができる。
【0090】
[処理内容]
図27を用いて、実施形態に係る制御装置の処理内容について説明する。図27は、実施形態に係る制御装置の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0091】
駆動部54は、第1光変調部18-1に所定のパターン画像を表示させる(ステップS100)。駆動部54は、第2光変調部18-2に所定のパターン画像を表示させる(ステップS102)。
【0092】
制御部44は、光変調器18のパターン画像のスペクトルの挿入損失を抑制するか否かを判定する(ステップS104)。具体的には、制御部44は、例えば、挿入損失が所定の値以上である場合に、挿入損失を抑制すると判定する。制御部44は、例えば、挿入損失を抑制する旨の指示情報を取得した場合に、挿入損失を抑制すると判定する。挿入損失を抑制すると判定された場合(ステップS104;Yes)、ステップS106に進む。挿入損失を抑制しないと判定された場合(ステップS104;No)、ステップS110に進む。
【0093】
ステップS104でYesと判定された場合、駆動部54は、第1光変調部18-1の測定スペクトルのピークの挿入損失が抑制される方向に、測定スペクトルをシフトさせる(ステップS106)。具体的には、駆動部54は、第1光変調部18-1の測定スペクトルのピークの挿入損失が抑制される方向に測定スペクトルがシフトするように、第1光変調部18-1に表示させるパターン画像を変更する。そして、ステップS108に進む。
【0094】
駆動部54は、第2光変調部18-2の測定スペクトルのピークの挿入損失が抑制される方向に、測定スペクトルをシフトさせる(ステップS108)。具体的には、駆動部54は、第2光変調部18-2の測定スペクトルのピークの挿入損失が抑制さえる方向に測定スペクトルがシフトするように、第2光変調部18-2に表示させるパターン画像を変更する。そして、ステップS110に進む。
【0095】
ステップS104でNoと判定された場合、またはステップS108の後、制御部44は、処理を終了するか否かを判定する(ステップS110)。具他艇的には、制御部44は、処理を終了する旨の操作情報を取得した場合などに、図27の処理を終了すると判定する。処理を終了すると判定された場合(ステップS110;Yes)、図27の処理を終了する。処理を終了すると判定されなかった場合(ステップS110;No)、ステップS100に進む。
【0096】
以上、本開示の実施形態を説明したが、これら実施形態の内容により本開示が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0097】
1 光信号選択装置
10 固定基板
12 光ファイバアレイ
14 光分散素子
16 レンズ
18 光変調器
18-1 第1光変調部
18-2 第2光変調部
20 偏波操作素子
22 制御装置
30 光ファイバ
32 コリメータレンズ
40 通信部
42 記憶部
44 制御部
50 取得部
52 算出部
54 駆動部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23A
図23B
図24A
図24B
図25A
図25B
図25C
図26
図27