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特開2022-154474光信号選択装置、および光信号選択方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154474
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】光信号選択装置、および光信号選択方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/31 20060101AFI20221005BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
G02F1/31
G02F1/13 505
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057534
(22)【出願日】2021-03-30
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、総務省「新たな社会インフラを担う革新的光ネットワーク技術の研究開発」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】516059813
【氏名又は名称】エピフォトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井出 昌史
(72)【発明者】
【氏名】竹沢 永訓
【テーマコード(参考)】
2H088
2K102
【Fターム(参考)】
2H088EA47
2H088HA06
2H088HA18
2H088HA24
2H088HA30
2K102AA21
2K102BA08
2K102BB04
2K102BC04
2K102BD01
2K102CA13
2K102DB08
2K102DD02
2K102EA02
2K102EA18
2K102EB08
2K102EB10
2K102EB16
(57)【要約】
【課題】光変調器のスイッチング時の過渡応答に起因するクロストークを抑制すること。
【解決手段】光信号選択装置は、複数の光ファイバが所定の方向に沿って配列され、光信号の入出力を行う光ファイバアレイと、複数の光ファイバのうち、第1光ファイバから入力された光信号を所定の角度で反射させて、第1光ファイバと第1光ファイバとは異なる第2光ファイバとの経路を結合する光変調器と、光変調器を制御する制御装置と、を備える。制御装置は、光変調器に表示された第1パターン画像から第1パターン画像とは異なる第2パターン画像に表示を切り替える際に、第1パターン画像と第2パターン画像との間に、第1パターン画像および第2パターン画像とは異なる少なくとも1つの消光パターン画像を表示させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光ファイバが所定の方向に沿って配列され、光信号の入出力を行う光ファイバアレイと、
前記複数の光ファイバのうち、第1光ファイバから入力された光信号を所定の角度で反射させて、前記第1光ファイバと前記第1光ファイバとは異なる第2光ファイバとの経路を結合する光変調器と、
前記光変調器を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記光変調器に表示された第1パターン画像から前記第1パターン画像とは異なる第2パターン画像に表示を切り替える際に、前記第1パターン画像と前記第2パターン画像との間に、前記第1パターン画像および前記第2パターン画像とは異なる少なくとも1つの消光パターン画像を表示させる、
光信号選択装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記第1パターン画像および前記第2パターン画像の位相変化量に基づいて前記消光パターン画像を決定する、
請求項1に記載の光信号選択装置。
【請求項3】
前記光変調器は、液晶で構成された位相変調素子を含み、
前記制御装置は、前記位相変調素子の電圧に対する変位量が、飽和領域となる近傍の電圧または飽和領域電圧より大きい電圧を印加した最大位相変調領域を含む、前記消光パターン画像を表示する、
請求項1または2に記載の光信号選択装置。
【請求項4】
複数の光ファイバのうち、第1光ファイバから入力された光信号を、光変調器を制御して所定の角度で反射させて、前記第1光ファイバと前記第1光ファイバとは異なる第2光ファイバとの経路を結合させるステップと、
前記光変調器の第1光変調部に第1パターン画像を表示させるステップと、
前記光変調器の第2光変調部に前記第1パターン画像とは異なる第2パターン画像を表示させるステップと、
前記光変調器に表示された第1パターン画像から前記第1パターン画像とは異なる第2パターン画像に表示を切り替える際に、前記第1パターン画像と前記第2パターン画像との間に、前記第1パターン画像および前記第2パターン画像とは異なる少なくとも1つの消光パターン画像を表示させるステップと、
を含む、光信号選択方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光信号選択装置、および光信号選択方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光波長分割多重方式(WDM:Wavelength Division Multiplexing)を用いた、高速で大容量の情報通信技術が知られている。
【0003】
特許文献1には、経路の組み合わせ数に比べて、制御パラメータ数が増大することを抑制することのできる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-122152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
位相変調素子として液晶を使う場合、液晶のスイッチング時の過渡応答に起因するクロストークが発生することがある。信号を高品質化するために、クロストークを抑制することのできる技術が求められている。
【0006】
本開示は、光変調器のスイッチング時の過渡応答に起因するクロストークを抑制することのできる光信号選択装置、および光信号選択方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る光信号選択装置は、複数の光ファイバが所定の方向に沿って配列され、光信号の入出力を行う光ファイバアレイと、前記複数の光ファイバのうち、第1光ファイバから入力された光信号を所定の角度で反射させて、前記第1光ファイバと前記第1光ファイバとは異なる第2光ファイバとの経路を結合する光変調器と、前記光変調器を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記光変調器に表示された第1パターン画像から前記第1パターン画像とは異なる第2パターン画像に表示を切り替える際に、前記第1パターン画像と前記第2パターン画像との間に、前記第1パターン画像および前記第2パターン画像とは異なる少なくとも1つの消光パターン画像を表示させる。
【0008】
本開示に係る光信号選択方法は、複数の光ファイバのうち、第1光ファイバから入力された光信号を、光変調器を制御して所定の角度で反射させて、前記第1光ファイバと前記第1光ファイバとは異なる第2光ファイバとの経路を結合させるステップと、前記光変調器の第1光変調部に第1パターン画像を表示させるステップと、前記光変調器の第2光変調部に前記第1パターン画像とは異なる第2パターン画像を表示させるステップと、前記光変調器に表示された第1パターン画像から前記第1パターン画像とは異なる第2パターン画像に表示を切り替える際に、前記第1パターン画像と前記第2パターン画像との間に、前記第1パターン画像および前記第2パターン画像とは異なる少なくとも1つの消光パターン画像を表示させるステップと、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、光変調器のスイッチング時の過渡応答に起因するクロストークを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態に係る光信号選択装置の構成例を示す図である。
図2図2は、実施形態に係る制御装置の構成例を示すブロック図である。
図3図3は、実施形態に係る光信号の光路を説明するための図である。
図4図4は、光変調器をスイッチする際に発生するクロストークを説明するための図である。
図5図5は、実施形態に係る光学系の作用を説明するための補足図である。
図6図6は、実施形態に係る光変調器に描画するパターン画像を説明するための図である。
図7図7は、図5に示すパターン画像の位相変化量を示すグラフである。
図8図8は、図5に示す光変調器に印加する電圧と位相変化量との関係を示すグラフである。
図9図9は、光変調器におけるチャネルを切り替える方法を説明するための図である。
図10図10は、格子パターンを第1状態から第2状態に変化させる際の格子パターンの様子を説明するための図である。
図11図11は、ブレ-ズド回析格子の格子パターンを切り替える際に中間調が発生する理由を説明するための図である。
図12図12は、実施形態に係るクロストーク抑制処理を説明するための図である。
図13図13は、光変調器を駆動させる方法を説明するための図である。
図14図14は、実施形態に係る図11とは異なる状態に対してクロストーク抑制処理を説明するための図である。
図15図15は、実施形態に係る制御装置の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本開示に係る実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、以下の実施形態において、同一の部位には同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0012】
以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部の位置関係について説明する。水平面内のX軸と平行な方向をX軸方向とし、X軸と直交する水平面内のY軸と平行な方向をY軸方向とし、水平面と直交するZ軸と平行な方向をZ軸方向とする。
【0013】
[実施形態]
図1を用いて、実施形態に係る光信号選択装置の構成例について説明する。図1は、実施形態に係る光信号選択装置の構成例を示す図である。
【0014】
本開示係る光信号選択装置1は、WSS(Wavelength Selective Switch)の一種である。光信号選択装置1は、ROADM(Reconfigurable Optical Add/Drop Multiplexer)の構成部品の1つである。光信号選択装置1は、光通信ネットワークにおいて、回折格子などの波長分離機能と、ミラーや光変調器などの経路切り替え機能といった物理的機能を有する。光信号選択装置1は、信号同士のレベルを同じにするための減衰機能、経路切り替え時の迷光を防ぐヒットレス機能を含む。
【0015】
図1に示すように、光信号選択装置1は、光ファイバアレイ12と、光分散素子14と、レンズ16と、光変調器18と、制御装置20とを備える。光信号選択装置1において、固定基板10上に、各構成要素は、光ファイバアレイ12、光分散素子14、レンズ16、および光変調器18の順に配置されている。制御装置20は、光変調器18を制御するように構成されている。
【0016】
光ファイバアレイ12は、Y軸方向に沿って、光ファイバ30、光ファイバ30、・・・、および光ファイバ30(nは任意の整数)を備える。光ファイバ30から光ファイバ30は、それぞれ、コリメータレンズ32からコリメータレンズ32を有する。光ファイバ30から光ファイバ30は、それぞれ、光信号選択装置1の入出力ポートである。
【0017】
光分散素子14は、例えば、回折格子で構成されている。光分散素子14は、光ファイバアレイ12から受けた光信号をY軸方向に分光するように構成されている。光分散素子14は、光ファイバアレイ12から受けた光信号を、互いに平行な平面状に分光するように構成されている。
【0018】
レンズ16は、光分散素子14と、光変調器18との間に配置されている。レンズ16の前側の焦点位置は、光分散素子14の位置である。レンズ16の後側の焦点位置は、光変調器18の位置である。レンズ16は、光分散素子14から受けた光信号を、光変調器18の表面に照射する。レンズ16は、例えば、単一のレンズであってよい。光変調器18は、例えば、複数の球面レンズおよびシリンドリカルレンズなどを組み合わせた集光光学系として構成されてもよい。
【0019】
光変調器18は、複数の光変素子を備える。光変調器18は、例えば、屈折率を変化させることのできる2次元配列された複数の位相変調素子を備える。光変調器18は、例えば、位相変調素子として液晶素子を用いた反射型のLCOS(Liquid Crystal On Silicon)で構成することができる。
【0020】
なお、図示しないが光信号選択装置1の入射偏光の偏光が揃っておらずかつ位相変調素子として液晶素子を用いる場合は、液晶のダイレクター方向で決まる液晶素子の屈折率変調軸に平行な方向に液晶素子への入射および出射光の偏光を変調軸に平行な直線偏光に変換するための偏光制御素子を光ファイバアレイ12と光変調器18の間の光路に挿入設置することが望ましい。
【0021】
図2を用いて、実施形態に係る制御装置の構成例について説明する。図2は、実施形態に係る制御装置の構成例を示すブロック図である。
【0022】
図2に示すように、制御装置20は、通信部40と、記憶部42と、制御部44と、を有する。制御装置20は、例えば、光変調器18を構成する複数の位相変調素子のそれぞれに電圧を印加するように構成されている。制御装置20は、例えば、光ファイバ30から光ファイバ30の間における、光信号の切り換えるように構成されている。
【0023】
通信部40は、制御装置20と、外部の装置との間の通信を行う。通信部40は、例えば、制御装置20に対する各種の操作を受け付ける入力装置の間で、各種の情報の送受信を行う。
【0024】
記憶部42は、制御部44の演算内容やプログラムなどの各種情報を記憶するメモリであり、例えば、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)のような主記憶装置と、オンボードフラッシュメモリー(On-Board Flash Memory)などの補助記憶装置または、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)などの外部記憶装置とのうち、少なくとも1つ含む。
【0025】
記憶部42は、各種の情報を記憶する。記憶部42は、制御部44の処理内容を記憶する。記憶部42は、例えば、光変調器18に表示されるパターン画像に関する描画パラメータに関する情報を記憶する。
【0026】
制御部44は、光信号選択装置1の各部の動作を制御する。制御部44は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)、またはGPU(Graphics Processing Unit)等によって、記憶部42に記憶されたプログラムがRAM等を作業領域として実行されることにより実現される。制御部44は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現されてもよい。制御部44は、ハードウェアと、ソフトウェアとの組み合わせで実現されてもよい。
【0027】
制御部44は、取得部50と、算出部52と、駆動部54と、を有する。
【0028】
取得部50は、各種情報を取得する。取得部50は、例えば、制御装置20に入力された操作に関する操作情報を取得する。取得部50の具体的な動作は、後述する。
【0029】
算出部52は、各種情報を算出する。算出部52は、例えば、パターン画像を高速に切り替えるための消光パターンを算出する。算出部52の具体的な動作は、後述する。
【0030】
駆動部54は、光変調器18を駆動させる。駆動部54は、光変調器18を駆動させて、パターン画像を表示させる。駆動部54は、例えば、算出部52の算出結果に従って、光変調器18を制御して、パターン画像を表示させる。駆動部54の具体的な動作は、後述する。
【0031】
図3を用いて、実施形態に係る光信号の光路について説明する。図3は、実施形態に係る光信号の光路を説明するための図である。
【0032】
図3は、光信号選択装置1を上面から見た模式図を示す。図3に示す、光ファイバ30およびコリメータレンズ32は、同じ列に配列されているため、上から見ると重なって見える。例えば、光ファイバ30からの波長多重された光信号S1は、光分散素子14により波長に応じた所定の角度にX-Z面内で回折され角度変換される。図3に示す例では、光分散素子14に入射した光信号S1は、X-Z面において、例えば、光分散素子14の回折効果とレンズ16のX-Z平面での角度―位置変換作用により光信号S2と、光信号S3と、光信号S4とに分離され光変調器18のY-Z面のZ軸に平行な直線上の異なる画素位置群に到達する。ここで、光信号S2,S3,S4はX-Y面については、光分散素子14は回折効果がないため角度変調を受けない。したがって、分離した光信号S2,S3,S4はX-Y面では光ファイバ30で決まる高さで平行にレンズ16に入射するが、レンズ16の作用でX-Y面で位置-角度変換を受け、光変調器18のY-Z面のZ軸に平行な所定の直線上に配列する。光変調器18は、変調面に所定の位相変調パターンを形成することで、異なる画素位置群に入射した光信号S2,S3,S4をX-Y面内で角度変換し、X-Z面では角度変換を行わず反射後、レンズ16のX-Z面での位置―角度変換作用で光分散素子14のX-Y面での出射点位置と同じY軸上でX軸に平行な所定位置に入射する。加えてレンズ16のX-Y面における角度-位置変換作用により光ファイバ30から光ファイバ30のへの所定の経路に結合する。
【0033】
図4を用いて、光変調器をスイッチする際に発生するクロストークについて説明する。図4は、光変調器をスイッチする際に発生するクロストークを説明するための図である。
【0034】
図4は、光信号選択装置1を側面から見た模式図である。図4では、光ファイバ30からの光信号S11を光ファイバ30に光信号S14を反射するものとする。この場合、光変調器18をスイッチングする際に、過渡応答により光ファイバ30と光ファイバ30との経路にクロストークが生じる。本実施形態では、図4に示したような、光ファイバ30と光ファイバ30とに発生し得るクロストークを抑制するように光変調器18を制御する。
【0035】
図5は、本発明の実施形態に係る光学系の作用を説明するための補足図である。図5において図4では反射型構成で示した光学系を光分散素子14から光変調器18までの間を展開し透過型の等価光学回路としてあらわした。図5に示す、透過光学回路は、光分散素子14a、レンズ16a、光変調器18、レンズ16b、および光分散素子14bが、順に並んでいる。光分散素子14aと、レンズ16aとの間の光学距離はfであるとする。レンズ16aと、光変調器18との間の光学距離は、fであるとする。光変調器18と、レンズ16bとの間の光学距離は、fであるとする。レンズ16bと、光分散素子14bとの間の光学距離は、fであるとする。図4に示す例では、光分散素子14は、レンズ16の前側焦点面に配置され、光変調器18の変調面または反射面は、レンズ16の後側焦点面に配置される。図4に示す例では、光変調器18を反射した光は、おおよそ同じ経路を逆方向に進み再度光分散素子14に結合する。そのため、図4に示す光信号選択装置1構成する図5で示した光学系は、4fの光学系で光分散素子14aの出射面から出力される光信号S21において分散素子14a出射面での複素振幅分布を入力像とすると、光変調器18の変調面である入出力面はレンズ16aの作用によりフーリエ面となる。さらに、光変調器18の位相変調を受けたフーリエ面である出力面の複素振幅分布像は、レンズ16bの作用で逆フーリエ変換され、光分散素子14bにフーリエ面の逆フーリエ変換出力像を再結合させるフーリエ光学系を構成する。
【0036】
図6と、図7図8とを用いて、実施形態に係る光変調器に描画するパターン画像について説明する。ここでパターン画像というのは図5に示したフーリエ面に位置する位相変調パターンのことである。図6は、実施形態に係る光変調器に描画するパターン画像を説明するための図である。図7は、図6に示すパターン画像の位相変化量を示すグラフである。図8は、図6に示す光変調器18に印加する電圧と位相変化量との関係を示すグラフである。
【0037】
図6は、光変調器18に描画させるパターン画像18aを示す。図6および図7に示すように、図4に示す光変調器18は、例えば、ブレ-ズド回析格子パターンを描画する。具体的には、図2の駆動部54は、光変調器18を駆動させて、ブレ-ズド回析格子パターンを描画させる。
【0038】
図7は、横軸がパターン画像18aの横方向の位置[μm]を示し、縦軸が相対的な位相変化量[ラジアン]を示す。図6に示すように、パターン画像18aは、位置に応じて相対的な位相変化量が0になる位置とπになる位置とが互い違いに表示されている。
【0039】
図8は、横軸が印加する電圧[V]の大きさ示し、縦軸が位相変化量[ラジアン]を示す。図8に示す例では、おおよそ印加電圧が1.5[V]から3.0[V]の範囲では、印加電圧と位相変化量とは比例関係を有している。印加電圧が1.5[V]以下の範囲、および3.0[V]以上の範囲では、印加電圧と位相変化量とは比例関係を有していない。図8に示す例では、1.0[V]から1.5[V]の範囲内でしきい値特性を有する。図8に示す例では、4.0[V]以上の範囲で飽和特性を有する。駆動部54は、例えば、図7に示す位相分布の形状を有するブレ-ズド回析格子の位相分布を実現するために、光変調器18への印加電圧と制御に用いる数値データとの関係をLUT(Look Up Table:ルックアップテーブル)などを用いてリニア補正することが好ましい。
【0040】
図9を用いて、光変調器18におけるチャネルを切り替える方法について説明する。図9は、光変調器18におけるチャネルを切り替える方法を説明するための図である。
【0041】
図9において、グラフG3は、第1状態の格子パターンの周期を概念的に示すグラフであり、グラフG4は、第2状態の格子パターンの周期を概念的に示すグラフである。図9は、横軸は位置[ピクセル]を示し、縦軸は位相変化量[ラジアン]を示す。図9に示すように、光変調器18でチャネルを切り替える場合には、光変調器18で反射される角度を切り替えればよい。図9に示すように、駆動部54は、光変調器18に描画するブレ-ズド回析格子の格子パターンの周期を変えるようにすればよい。例えば、駆動部54は、位相変化量が0からπに変化する周期がTである第1状態から、Tよりも短い周期の第2状態に切り替えることで、光変調器18で反射される角度を切り替えることができる。駆動部54は、格子パターンの周期を切り替えることで、光信号を所望の方向に反射することができる。言い換えれば、駆動部54は、描画するブレ-ズド回析格子の格子パターンの周期の画素数を変えることで、光信号が光変調器18で反射される角度を切り替える。
【0042】
図10を用いて、図9に示す格子パターンを第1状態から第2状態に変化させる際の格子パターンの変化の様子について説明する。図10は、格子パターンを第1状態から第2状態に変化させる際の格子パターンの様子を説明するための図である。
【0043】
図10には、光変調器18のブレ-ズド回析格子の第1状態の格子パターンの周期を示すグラフG3と、光変調器18のブレ-ズド回析格子の第2状態の格子パターンの周期を示すグラフG4とが重ねて示される。図10は、横軸は位置[ピクセル]を示し、縦軸は位相変化量[ラジアン]を示す。駆動部54は、領域R1では位相変化量の変化の方向をプラスになるように変化させ、領域R2では位相変化量の方向をマイナスになるように変化させ、領域R3では位相変化量の方向をプラスになるように変化させる。
【0044】
図10に示すように、チャネルを切り替えるために格子パターンを第1状態から第2状態に切り替えるとき、同一の画素位置で比較するとグラフG3からグラフG4に示すように、領域に依存し変化の方向に違いはあるが中間調から中間調への変化が、光変調器18の全体で起きることになる。
【0045】
図11を用いて、ブレ-ズド回析格子の格子パターンを切り替える際に中間調が発生する理由を説明する。図11は、ブレ-ズド回析格子の格子パターンを切り替える際に中間調が発生する理由を説明するための図である。図11は、横軸は位置[ピクセル]を示し、縦軸は位相変化量[ラジアン]を示す。
【0046】
図11に示すように、グラフG5は、第1状態の格子パターンの画素位置と、位相変化量との関係を示し、グラフG6は、第2状態の格子パターンの画素位置と、位相変化量との関係を示す。光変調器18でチャネルを切り替える際、ほとんど全ての画素が中間調から中間調への切り替えになる。そのため、図11に示すような、第1状態と第2状態との間の位相の傾きが生じる。その結果、例えば、光ファイバ30から光ファイバ30にチャネルを切り替える際に、中間調から中間調への変化の速度は遅いため、途中の光ファイバ30および光ファイバ30のチャネルに光信号が結合するクロストークが発生する。
【0047】
[クロストーク抑制処理]
図12を用いて、実施形態に係るクロストーク抑制処理について説明する。図12は、実施形態に係るクロストーク抑制処理を説明するための図である。
【0048】
図12に示すように、本実施形態では、駆動部54は、光変調器18のブレ-ズド回析格子の格子パターンを第1状態から第2状態に切り替える際に、第1状態と第2状態の間に消光パターンを表示させる。消光パターンの一例を示すグラフG10は、波長をλとすると、隣接領域との位相差がπ/2(波長表記ではλ/4)となる格子パターンを示すグラフとなる。すなわち、グラフG10の例では最小値は3/4πであり、最大値は、5/4πの格子パターンとなる。図12に示す例では、消光パターンは、第1状態との位相差、および第2状態との位相差がπ/2となるような格子パターンである。隣接領域でπ/2の位相差の消光パターンは、隣接する位相最小値部と位相最大値部のそれぞれの位置の反射光は往復で相対的な位相差πとなり逆位相となるので、レンズ16の作用による回折合波後打ち消し合う。
【0049】
また、本実施形態では、光変調器18を構成する液晶素子の最大変調量と、そこからπ/2となる動作点を用いて変調を行う。図13は、光変調器18を駆動させる方法を説明するための図である。図13に示す例では、領域R10がπ/2の可変調領域となり、領域R11が光変調器18を構成する液晶素子の最大変調領域となる。領域R11では、光変調器18を構成する液晶素子の液晶バルクの変形量が大きい。このため、過渡ネマティック効果のようにバルク歪みが界面の配向規制力と同様な効果を過渡的に与える。具体的には、液晶素子に大きな電圧を印加してバルクの歪みが蓄積された状態で、電圧を下げることで、界面の液晶分子の配向規制力と、バルクから生じる弾性エネルギーを利用して、過渡的に高速応答を実現する。これにより、光変調器18に印加する電圧を小さくしたときに、高速応答が得られる。
【0050】
具体的には、駆動部54は、図12に示す第1状態から消光パターンへのスイッチングにおいて、ほとんどの領域で最大駆動電圧を印加する。そのため、第1状態から消光パターンに変化する応答速度を速くすることができる。ここで、液晶の最大駆動電圧は、図13に示した5Vより十分大きな電圧を印加する過電圧駆動法(Over Driving Scheme)を用いればさらに高速化が可能である。また、第1状態から消光パターンに切り替えることにより、クロストークを抑制することができる。
【0051】
駆動部54が消光パターンから第2状態へのスイッチングを行うと、中間調から中間調になる遅い領域ではバイナリパターンの形状を保持しながら遷移する。これにより、高電圧領域は過渡ネマティック効果、低電圧領域は電圧が0に近いので、第2状態に高速に収束する。ここで、消光パターンであるバイナリパターン印加後に所定の期間液晶に0Vに近い過低電圧または0Vを印加する期間を設ける過低電圧駆動法(undershoot driving scheme)を用いれば、さらに高速化することが可能である。そのため、駆動部54は、中間的な傾斜を持つクロストークの原因となる位相パターンを出現させずに高速にスイッチングすることができる。
【0052】
図14を用いて、他の実施形態に係るクロストーク抑制処理について説明する。図14は、実施形態に係る図12とは異なる状態に対してクロストーク抑制処理を説明するための図である。
【0053】
図14では、本実施形態を2次曲面の位相パターンのセンターシフトによるスイッチングに適用する例について説明する。図14の例においては、光変調器18に表示されるパターン画像は、フレネル回析格子のパターン画像となる。なお、図14では、上に凸となるフレネル回折格子の位相補償例で説明したが、光学系により下に凸となるフレネル回折格子パターン画像での位相補償を行う場合もある。
【0054】
図14に示すように、駆動部54は、第1ビーム偏向状態からビーム偏向消光パターンへのスイッチングでは、光変調器18に対して最大駆動電圧に近い電圧を今考えている可変調領域全体に印加する。これにより、駆動部54は、第1ビーム偏向状態からビーム偏向消光パターンに変更する応答速度を速くすることができる。ここで、液晶の最大駆動電圧は、図13に示した5Vより十分大きな電圧を印加する過電圧駆動法(Over Driving Scheme)を用いればさらに高速化が可能である。また、第1ビーム偏向状態からビーム偏向消光パターンに切り替えることによる、クロストークを抑制することができる。
【0055】
駆動部54がビーム偏向消光パターンから第2ビーム偏向状態へのスイッチングを行うと、中間調から中間調になる遅い領域では消光バイナリパターンの形状を保持しながら遷移する。これにより、高電圧領域は過渡ネマティック効果、低電圧領域は電圧が0に近いので、過渡的なフレネルレンズパターンを経由せずに第2ビーム偏向状態に高速に収束する。ここで、消光パターンであるバイナリパターン印加後に所定の期間液晶に0Vに近い過低電圧または0Vを印加する期間を設ける過低電圧駆動法(undershoot driving scheme)を用いれば、さらに高速化することが可能である。そのため、駆動部54は、中間的な傾斜を持つクロストークの原因となる位相パターンを出現させずに高速にスイッチングすることができる。
【0056】
[処理内容]
図15を用いて、実施形態に係る制御装置の処理内容について説明する。図15は、実施形態に係る制御装置の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0057】
駆動部54は、光変調器18を駆動して、第1状態のパターン画像を表示させる(ステップS100)。そして、ステップS102に進む。
【0058】
制御部44は、光変調器18に表示させるパターン画像を第2状態のパターン画像に切り替える旨の指示があったか否かを判定する(ステップS102)。具体的には、取得部50は、パターン画像を第2状態のパターン画像に切り替える旨の指示情報を取得した場合に、第2状態のパターン画像に切り替える旨の指示があったと判定する。第2状態のパターン画像に切り替える旨の指示があったと判定された場合(ステップS102;Yes)、ステップS104に進む。第2状態のパターン画像に切り替える旨の指示があったと判定されない場合(ステップS102;No)、ステップS110に進む。
【0059】
算出部52は、第2状態のパターン画像に応じた、消光パターンの消光パターン画像を算出する(ステップS104)。具体的には、算出部52は、第2状態のパターン画像の位相変調量に基づいて、第2状態のパターン画像との各画素位置近傍での隣接する位相変調量の差がπ/2となる消光パターン画像を算出する。算出部52は、消光パターン画像を1つのみ算出してもよいし、複数算出してもよい。そして、ステップS106に進む。
【0060】
駆動部54は、光変調器18を駆動して、ステップS104で算出した、消光パターン画像を表示させる(ステップS106)。すなわち、駆動部54は、光変調器18に第2状態のパターン画像を表示させる前に、消光パターン画像を表示させる。そして、ステップS108に進む。
【0061】
駆動部54は、光変調器18を駆動して、第2状態のパターン画像を表示させる(ステップS108)。そして、ステップS110に進む。
【0062】
ステップS102でNoと判定された場合、またはステップS108の後、制御部44は、処理を終了するか否かを判定する(ステップS110)。具他艇的には、制御部44は、処理を終了する旨の操作情報を取得した場合などに、図15の処理を終了すると判定する。処理を終了すると判定された場合(ステップS110;Yes)、図15の処理を終了する。処理を終了すると判定されなかった場合(ステップS110;No)、ステップS100に進む。
【0063】
以上、本開示の実施形態を説明したが、これら実施形態の内容により本開示が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0064】
1 光信号選択装置
10 固定基板
12 光ファイバアレイ
14 光分散素子
16 レンズ
18 光変調器
20 制御装置
30 光ファイバ
32 コリメータレンズ
40 通信部
42 記憶部
44 制御部
50 取得部
52 算出部
54 駆動部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15