IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新電元メカトロニクス株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-電磁弁 図1
  • 特開-電磁弁 図2
  • 特開-電磁弁 図3
  • 特開-電磁弁 図4
  • 特開-電磁弁 図5
  • 特開-電磁弁 図6
  • 特開-電磁弁 図7
  • 特開-電磁弁 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022154478
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】電磁弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/06 20060101AFI20221005BHJP
【FI】
F16K31/06 305L
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021057539
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】302038741
【氏名又は名称】新電元メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111899
【弁理士】
【氏名又は名称】永山 陽二
(72)【発明者】
【氏名】松竹 大希
【テーマコード(参考)】
3H106
【Fターム(参考)】
3H106DA07
3H106DA13
3H106DA23
3H106DB02
3H106DB12
3H106DB23
3H106DB32
3H106DC02
3H106DC17
3H106DD03
3H106DD05
3H106EE35
3H106GA23
3H106GB08
3H106GC23
3H106JJ04
3H106JJ08
3H106KK03
3H106KK31
(57)【要約】
【課題】 ポペット弁としての構成を有する電磁弁において、ポペットの製造コストの低減を図ることが可能な電磁弁を提供すること。
【解決手段】 電磁弁10は、ポペット20を径大部21と径小部22とからなるものとし、さらに、中心軸に沿って径大部21と径小部22とを貫通する下流側流路24に加えて、上流側開口部23aが径大部21と径小部22との段差面26に開口している上流側流路23を形成しているので、段差面26に開口している上流側開口部23aを実質的に横孔として機能させることができる。したがって、高い精度を要する横穴を形成する工程が不要となり、ポペット20の製造コストを削減し、ひいては電磁弁10の製造コストの低減を図ることもできる。また、ポペット20を径の異なる2つの部分で構成することが可能であれば弁の用途を問わない利点もある。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルと、
前記コイルの近傍に設けられたベースと、
摺動可能に、かつ、略円柱形状に形成されると共に、前記コイルに通電したときに、前記ベースに吸引されるように設けられたプランジャと、
前記プランジャの前記ベースとは反対側の端部に設けられた弁体と、
前記プランジャの前記ベース側となる位置に、弾発力によって前記プランジャを前記ベースと反対方向に押圧するスプリングと、
前記プランジャの前記ベースとは反対側となる位置に、前記弁体に対して接離可能に設けられたポペットを有する電磁弁であって、
前記ポペットは、前記プランジャ側に、略円柱形状に、かつ、相対的に径が大きくなるように形成された径大部と、前記プランジャとは反対側に、略円柱形状に、かつ、相対的に径が小さくなるように形成された径小部と、前記ポペットの前記中心軸に沿って延在するように形成されると共に、上流側開口部が前記径大部と前記径小部との段差面に開口し、前記上流側開口部とは反対側のプランジャ側開口部が前記径大部の前記端面に開口している上流側流路と、前記ポペットの中心軸に沿って延在するように形成されると共に、前記弁体が前記径大部の端面に接しているときに前記弁体によって閉止されるように形成された弁体対向開口部が前記径大部の前記端面に開口し、前記弁体対向側開口部とは反対側の下流側開口部が前記径小部の端面に開口した下流側流路を備え、
前記コイルに通電していないときには、前記スプリングの前記弾発力によって、前記弁体が前記ポペットの前記下流側流路の前記弁体対向開口部に当接して前記弁体対向開口部を閉止し、前記上流側流路と前記下流側流路とが連通しない状態となり、
前記コイルに通電したときには、前記プランジャが前記ベースに吸引されて摺動することによって、前記弁体が前記ポペットの前記下流側流路の前記プランジ前記弁体対向開口部から離隔し、前記上流側流路の前記上流側開口部から、前記プランジャ側開口部及び前記弁体対向開口部を経て、前記下流側流路の前記下流側開口部まで連通するようになされていることを特徴とする電磁弁。
【請求項2】
前記ポペットは、前記径小部の端面の縁辺にシート面が形成され、
さらに、略円筒形状に形成されると共に、中空部に前記ポペットを摺動可能な状態で収納するポペット収納部と、略円筒形状に、かつ、前記ポペット収納部の前記プランジャとは反対側に形成されると共に、中空部が外部の下流側流路、及び、前記ポペット収納部の前記中空部に連通した流路構成部と、前記流路構成部の前記中空部の前記ポペット収納部に近い端部に形成されると共に、前記ポペット収納部側に前記ポペットの前記シート面に接離可能な当接部が形成された環状突出部と、前記ポペット収納部に前記環状突出部との間に、かつ、略円筒形状に形成されると共に、外部の上流側流路に連通する上流側連絡口が形成された中間部を備えたプラグ部材を有し、
前記ポペットの前記シート面と前記プラグ部材の前記環状突出部の前記当接部とが接しているときには、前記ポペット収納部の前記中空部と前記流路構成部の前記中空部とが分離され、前記ポペットの前記シート面と前記プラグ部材の前記環状突出部の前記当接部とが離隔しているときには、前記ポペット収納部の前記中空部と前記流路構成部の前記中空部とが連通していることを特徴とする請求項1に記載の電磁弁。
【請求項3】
前記プラグ部材は、前記ポペット収納部の前記中空部の内周面の前記プランジャに近い部位に環状溝が形成され、
さらに、前記プラグ部材の前記ポペット収納部の前記環状溝に配置されると共に、前記プランジャ及び前記ポペットの摺動を規制する止め輪を有することを特徴とする請求項2に記載の電磁弁。
【請求項4】
さらに、略円筒形状に形成されると共に、中空部に前記コイル及び前記ベースが収納されたケースと、
略円筒形状に形成され、中空部に前記プラグ部材の前記ポペット収納部の一部又は全部が配置されると共に、前記ポペット収納部を固定している円筒部と、前記円筒部の前記プランジャ側に、略円板形状に、かつ、前記円筒部の前記中空部と同じ径の貫通孔が形成されたフランジ部と、略円筒形に、かつ、前記円筒部の前記中空部と同じ径の貫通孔が形成されると共に、前記ケースの前記中空部に挿入された状態で前記ケースに固定された挿入部を備えたジョイント部材を有することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の電磁弁。
【請求項5】
前記ジョイント部材は、前記挿入部が前記ケースにブレージングによって固定されていることを特徴とする請求項4に記載の電磁弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁弁に関し、特に、ポペット弁としての構成を有する電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
ポペット弁としての構成を有する弁は、極めて広く普及しているタイプの弁であり、電磁弁に限らず様々な用途の弁に採用されている。また、ポペット弁としての構成を有する弁においては、ポペットの中心軸に沿って貫通孔を形成し、この貫通孔を作動油やガスなどの流路として利用しているものが多数存在する。図8は、従来技術に係る電磁弁の断面図である。図8において、80は逆止弁、81はポペット、82は横孔、83は充填路、84はシート面、85は逆止弁座、86は逆止弁口である。
【0003】
図8は、特開2016-205573公報で開示されているもので、水素ガスが貯留されたガスタンクの逆止弁としてポペット弁を利用しているものである。図8に示すように、逆止弁80は、弁座としての逆止弁座85と、逆止弁座85に接離可能に設けられたポペット81とを備えている。また、そして、横孔82は、水素通過孔である。ポペット81は、先端が逆止弁口86内に挿入されて逆止弁座85に設けられたテーパ状のシート面84に着座することにより逆止弁口86を閉弁し、逆止弁座85から離間することにより逆止弁口86を開弁するようになっている。つまり、ポペット81が逆止弁座85に対して接離することで、充填路83が開閉される。
【0004】
ところで、略円筒形状又は円柱形状に形成されたポペットの周側面に対して横穴を形成する工程は、高い精度を要する工程であり、コスト的にも大きなウェイトを示すものとなる。すなわち、ポペットの中心軸に沿って形成する孔は、高い精度で形成することが相対的に容易であるが、横穴を形成する工程は格段に困難性が高く、バラツキを生じやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2016-205573公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するために、ポペット弁としての構成を有する電磁弁において、ポペットの製造コストの低減を図ることが可能な電磁弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、コイルと、前記コイルの近傍に設けられたベースと、摺動可能に、かつ、略円柱形状に形成されると共に、前記コイルに通電したときに、前記ベースに吸引されるように設けられたプランジャと、前記プランジャの前記ベースとは反対側の端部に設けられた弁体と、前記プランジャの前記ベース側となる位置に、弾発力によって前記プランジャを前記ベースと反対方向に押圧するスプリングと、前記プランジャの前記ベースとは反対側となる位置に、前記弁体に対して接離可能に設けられたポペットを有する電磁弁であって、前記ポペットは、前記プランジャ側に、略円柱形状に、かつ、相対的に径が大きくなるように形成された径大部と、前記プランジャとは反対側に、略円柱形状に、かつ、相対的に径が小さくなるように形成された径小部と、前記ポペットの前記中心軸に沿って延在するように形成されると共に、上流側開口部が前記径大部と前記径小部との段差面に開口し、前記上流側開口部とは反対側のプランジャ側開口部が前記径大部の前記端面に開口している上流側流路と、前記ポペットの中心軸に沿って延在するように形成されると共に、前記弁体が前記径大部の端面に接しているときに前記弁体によって閉止されるように形成された弁体対向開口部が前記径大部の前記端面に開口し、前記弁体対向側開口部とは反対側の下流側開口部が前記径小部の端面に開口した下流側流路を備え、前記コイルに通電していないときには、前記スプリングの前記弾発力によって、前記弁体が前記ポペットの前記下流側流路の前記弁体対向開口部に当接して前記弁体対向開口部を閉止し、前記上流側流路と前記下流側流路とが連通しない状態となり、前記コイルに通電したときには、前記プランジャが前記ベースに吸引されて摺動することによって、前記弁体が前記ポペットの前記下流側流路の前記プランジ前記弁体対向開口部から離隔し、前記上流側流路の前記上流側開口部から、前記プランジャ側開口部及び前記弁体対向開口部を経て、前記下流側流路の前記下流側開口部まで連通するようになされていることを特徴とする電磁弁である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記ポペットは、前記径小部の端面の縁辺にシート面が形成され、さらに、略円筒形状に形成されると共に、中空部に前記ポペットを摺動可能な状態で収納するポペット収納部と、略円筒形状に、かつ、前記ポペット収納部の前記プランジャとは反対側に形成されると共に、中空部が外部の下流側流路、及び、前記ポペット収納部の前記中空部に連通した流路構成部と、前記流路構成部の前記中空部の前記ポペット収納部に近い端部に形成されると共に、前記ポペット収納部側に前記ポペットの前記シート面に接離可能な当接部が形成された環状突出部と、前記ポペット収納部に前記環状突出部との間に、かつ、略円筒形状に形成されると共に、外部の上流側流路に連通する上流側連絡口が形成された中間部を備えたプラグ部材を有し、前記ポペットの前記シート面と前記プラグ部材の前記環状突出部の前記当接部とが接しているときには、前記ポペット収納部の前記中空部と前記流路構成部の前記中空部とが分離され、前記ポペットの前記シート面と前記プラグ部材の前記環状突出部の前記当接部とが離隔しているときには、前記ポペット収納部の前記中空部と前記流路構成部の前記中空部とが連通していることを特徴とする電磁弁である。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記プラグ部材は、前記ポペット収納部の前記中空部の内周面の前記プランジャに近い部位に環状溝が形成され、さらに、前記プラグ部材の前記ポペット収納部の前記環状溝に配置されると共に、前記プランジャ及び前記ポペットの摺動を規制する止め輪を有することを特徴とする電磁弁である。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は請求項3に記載の発明において、さらに、略円筒形状に形成されると共に、中空部に前記コイル及び前記ベースが収納されたケースと、 略円筒形状に形成され、中空部に前記プラグ部材の前記ポペット収納部の一部又は全部が配置されると共に、前記ポペット収納部を固定している円筒部と、前記円筒部の前記プランジャ側に、略円板形状に、かつ、前記円筒部の前記中空部と同じ径の貫通孔が形成されたフランジ部と、略円筒形に、かつ、前記円筒部の前記中空部と同じ径の貫通孔が形成されると共に、前記ケースの中空部に挿入された状態で前記ケースに固定された挿入部を備えたジョイント部材を有することを特徴とする電磁弁である。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記ジョイント部材は、前記挿入部が前記ケースにブレージングによって固定されていることを特徴とする電磁弁である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、ポペットを径大部と径小部とからなるものとし、さらに、中心軸に沿って径大部と径小部とを貫通する下流側流路に加えて、上流側開口部が径大部と径小部との段差面に開口している上流側流路を形成しているので、段差面に開口している上流側開口部を実質的に横孔として機能させることができる。したがって、高い精度を要する横穴を形成する工程が不要となり、ポペットの製造コストを削減し、ひいては電磁弁の製造コストの低減を図ることもできる。また、ポペットを径の異なる2つの部分で構成することが可能であれば弁の用途を問わない利点もある。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、特段の加工なしに、ポペットの径小部を弁体として機能させることと、上流側開口部を径大部と径小部との段差面に開口させることが両立できるので、ポペットの製造コストの削減がより容易になる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、ポペットとプランジャの吸い付きを止め輪によって防止できる。また、ポペット収納部の中空部に環状溝を形成することによって止め輪を固定できるので、ポペットの製造コストの増大がほとんどない。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、ジョイント部材にケース、プラグ部材が固定される構成にしているので、ポペットとプランジャとの中心軸を精確に一致させることができる。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、ジョイント部材とケースとがブレージングによって固定されるようにしているので、固定に関わる部分の磁気特性に影響を与えない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態に係る電磁弁の通電状態における断面図である。
図2】本発明の実施の形態に係る電磁弁の非通電状態における断面図である。
図3】本発明の実施の形態に係る電磁弁の外観を示し、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は左側面図である。
図4】本発明の実施の形態に係る電磁弁のポペットの断面図である。
図5】本発明の実施の形態に係る電磁弁のプラグ部材の断面を示し、(a)は断面図、(b)はA部分拡大図、(c)はB部分拡大図である。
図6】本発明の実施の形態に係る電磁弁のプラグ部材の外観及び断面を示し、(a)は正面図、(b)は左側面図、(c)は右側面図、(d)はC-C線断面図である。
図7】本発明の実施の形態に係る電磁弁のジョイント部材の断面図である。
図8】従来技術に係る電磁弁の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施の形態に係る電磁弁について説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る電磁弁の回路図である。図1において、10は電磁弁、20はポペット、21は径大部、22は径小部、23は上流側流路、24は下流側流路、28はシート面、30はプラグ部材、31はポペット収納部、35は環状突出部、35bは当接部、36a及び36dは上流側連絡口、37は流路構成部、37aは下流側中空部、37aは段差面、40はプランジャ、41は突出部、42は凹陥部、43はシートベース、44は突出部、44aは凹部、45はボール弁体、46は止め輪、46aは開口部、47はスリーブ、48aは第1の環状突出部、48bは第2の環状突出部、49はOリング、50はベース、51は凹陥部、52はスプリング収納孔、53はスプリング、54はケース、54aは中空部、55aは第1の端部、55bは第2の端部、56はジョイント部材、57は円筒部、58はフランジ部、60はコイルボビン、61は巻胴部、62はジョイント部材側フランジ部、63はキャップ側フランジ部、64はコイル、65はキャップ、66aはグロメット、67aはリード線、68はブレージング部分、69は溶接部分である。また、図2は、本発明の実施の形態に係る電磁弁の非通電状態における断面図である。図2において用いた符号は、すべて図1と同じものを示す。くわえて、図3は、本発明の実施の形態に係る電磁弁の外観を示し、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は左側面図である。図3において、66bはグロメット、67bはリード線であり、その他の符号は図1と同じものを示す。なお、以下の明細書の記載、及び、特許請求の範囲の記載において、「中心軸」と称した場合は、部品を特定する記載がない限りプランジャの中心軸を示すものとするが、プランジャの中心軸と、ポペット、ベース、プラグ部材、ジョイント部材、スリーブ及びケースの中心軸は一致しており、「中心軸」との記載はこれらの全ての中心軸を示すものとなる。
【0019】
まず、本発明の実施の形態に係る電磁弁10の概要について説明する。なお、以下の電磁弁10に関する説明においては、油圧回路において使用することを前提に説明するが、本発明は水圧などの液圧回路、さらに空圧回路などに各種用途に適用できるものであり、特に用途が限定されるものではない。電磁弁10は、ポペット弁としての構成を有する電磁弁である。すなわち、図1に示すように、プランジャ40がベース50に吸着されているときには、ポペット20はプランジャ40側に摺動してポペット20のシート面28とプラグ部材30の当接部35bとが離隔した状態になるので、図示していないが、電磁弁10を油圧回路の構成要素の1つとし、電磁弁10の外部(周辺)に設けられている油圧回路の(以下の記載では「外部にある」又は「外部の」と簡略に記載する)下流側流路に連通している下流側中空部37aと、図示していない外部の油圧回路の上流側流路に連通している上流側中空部31aとが互いに連通した状態となる。
【0020】
電磁弁10は、コイル64への通電を停止したときには、図2に示すように、プランジャ40がスプリング53の弾発力によってベース50から離隔し、ポペット20側に摺動する。このとき、ポペット20も上流側中空部31a側に摺動するので、シート面28と当接部35bとが当接した状態になり、図示していない外部の油圧回路の下流側流路に連通している下流側中空部37aと、図示していない外部の油圧回路の上流側流路に連通している上流側中空部31aとは互いに遮断された状態となる。また、ポペット20には、後述するように、弁体としての役割と共に、下流側中空部37a及び上流側中空部31aとプランジャ40の周囲の空間などとの差圧を調整するために、下流側流路24及び上流側流路23などが形成されている。
【0021】
さらに、電磁弁10について詳細に説明する。図4は、本発明の実施の形態に係る電磁弁のポペットの断面図である。図4において、23aは上流側開口部、23bはプランジャ側開口部、24aは弁体対向開口部、24bは下流側開口部、25はプランジャ側端面、26は段差面、27は下流側端面、29は周側面であり、その他の符号は図1と同じものを示す。また、図5は、本発明の実施の形態に係る電磁弁のプラグ部材の断面を示し、(a)は断面図、(b)はA部分拡大図、(c)はB部分拡大図である。図5において、31aは上流側中空部、31bはプランジャ側開口部、32は環状溝、33は中間部、33aは中間中空部、34はフランジ部、35aは環状突出中空部、36bは上流側連絡口、36c、36e及び36fは上流側連絡口、37bは下流側開口部、38bは段差面、39は貫通孔であり、その他の符号は図1と同じものを示す。さらに、図6は、本発明の実施の形態に係る電磁弁のプラグ部材の外観及び断面を示し、(a)は正面図、(b)は左側面図、(c)は右側面図、(d)はC-C線断面図である。図6において用いた符号は、すべて図1及び図5と同じものを示す。図7は、本発明の実施の形態に係る電磁弁のジョイント部材の断面図である。図7において、56aは中空部、57aは曲げ加工部、58aは段差面、59は挿入部であり、その他の符号は図1と同じものを示す。
【0022】
ポペット20は、非磁性材からなり、プランジャ40側、つまり、プランジャ40に近い部分を、略円筒形状で、かつ、相対的に径が大きい径大部21として形成し、プランジャ40とは反対側、つまり、図示していない外部の油圧回路の下流側流路に連通している下流側中空部37a、及び、図示していない外部の油圧回路の上流側流路に連通している上流側中空部31a側の部分を、略円筒形状で、かつ、相対的に径が小さい径小部22として形成している。したがって、ポペット20のプランジャ側端面25は径大部21の端面となり、プランジャ40とは反対側の端面27は径小部22の端面となる。また、ポペット20の中心軸方向における中間点付近には、径大部21と径小部22との段差面26が形成されている。また、ポペット20は、図1及び図2に示すように、径大部21の周側面29がプラグ部材30のポペット収納部31に支持された状態で中心軸方向に摺動する。径小部22とポペット収納部31との間には間隙ができるが、この間隙は作動油の流路の一部を構成する。
【0023】
また、ポペット20は、下流側端面27の縁辺領域をテーパ面に形成し、プラグ部材30の当接部35bと接離可能なシート面28としている。さらに、中心軸に沿って延びるように上流側流路23と下流側流路24とが形成されている。上流側流路23及び下流側流路24は、前述のように、外部の油路に連通しており、電磁弁10の内部における作動油の流路を構成する下流側中空部37a及び上流側中空部31aと、プランジャ40の周辺とプランジャ40の周囲の空間などとの差圧を調整し、正常で確実な動作を得るために形成されているものである。下流側流路24は、径大部21と径小部22とを貫通しており、径大部21のプランジャ側端面25の中央に弁体対向開口部24aが開口し、径小部22の下流側端面27の中央に下流側開口部24bが開口している。
【0024】
上流側流路23は、径大部21のプランジャ側端面25の縁辺に近い部位にプランジャ側開口部23bが開口し、径大部21と径小部22との段差面26に上流側開口部23aが開口している。また、上流側流路23は、差圧の調整のために下流側流路24よりも径が僅かに小さくなるように形成されているが、これらの流路の径は、電磁弁10のる仕様に応じて適宜設定される。段差面26は、作動油の流路の一部を構成している径小部22とポペット収納部31との間隙に面しているので、上流側開口部23aも作動油の流路に面していることになる。つまり、上流側流路23は、中心軸に沿って延びる流路を形成するだけで、ポペットの周側面29側にある流路に連通することになる。したがって、特開平2016-205573公報に記載されたポペットのように、その中心軸に沿って延びる貫通孔と、その中心軸に直交又は斜行する横孔とを組み合わせて形成する必要がなく、流路の形成が非常に容易になると言える。
【0025】
プラグ部材30は、非磁性材からなり、ポペット20を摺動可能に支持すると共に、図示していない外部の油圧回路の下流側流路と、図示していない外部の油圧回路の上流側流路とに連通した流路を構成し、かつ、ポペット20と共に作動油の流れを止めるための機能も併せ持つものである。すなわち、プラグ部材30のポペット収納部31は、略円筒形状に形成され、上流側中空部31aにポペット20を収納するものである。また、ポペット収納部31には、プランジャ40のポペット20側の一部がプランジャ側開口部31bから進入した状態で配置されている。さらに、上流側中空部31aは、ポペット20の径大部21を摺動可能に支持しているが、径小部22との間には間隙があり、この間隙が作動油の流路として機能する。くわえて、ポペット収納部31は、上流側中空部31aの内周面のプランジャ40に近い部位に環状溝32が形成されている。環状溝32は、上流側中空部31aの内周面を一周するように形成されており、止め輪46を挿入して固定するための手段である。
【0026】
また、プラグ部材30は、ポペット収納部31のプランジャ40とは反対側となる位置に流路構成部37が形成されている。流路構成部37は、略円筒形状に形成されており、下流側中空部37aの下流側開口部37bが図示していない外部の下流側流路に直接連通するように設けられる。さらに、下流側中空部37aのポペット収納部31側には、環状突出部35が形成されている。環状突出部35は、環状突出中空部35aの径が下流側中空部37aの径よりも僅かに小さくなる程度に突出している。また、図2に示すように、ポペット20は、最もベース50から遠いところまで摺動したときには、下流側端面27が中間部33と環状突出部35との段差面38aよりも下流側開口部37b側に位置する。このとき、下流側中空部37aのポペット収納部31側の縁辺である当接部35bは、ポペット20のシート面28と当接する。電磁弁10では、当接部35bとシート面28とが当接することによって、下流側中空部37aと上流側中空部31aとを互いに遮断する機能を持つ。よって、当接部35bは、ポペット弁としての機能を直接に担う部分と言える。
【0027】
さらに、プラグ部材30は、 ポペット収納部31と環状突出部と35との間に中間部33が形成されている。中間部33は、図6に示すように、略円筒形状に形成されると共に、外部の上流側流路に連通する上流側連絡口36a、36b、36c、36d、36e及び36fが形成されている。したがって、中間部33の中間中空部33aに連通している空間は、図5に示すように、上流側連絡口36a、36b、36c、36d、36e及び36fを介して外部の上流側流路に連通していることになる。また、プラグ部材30の中空部である下流側中空部37a、環状突出中空部35a、中間中空部33a及び上流側中空部31aは、それぞれ径が異なっているが、全体としてプラグ部材30を中心軸に沿って延びる1つの貫通孔39を構成している。フランジ部34は、後述するように、ジョイント部材に固定する際に利用されるものである。
【0028】
ジョイント部材56は、磁性材からなり、製品の信頼性を高めるために、プラグ部材30、ケース54及びスリーブ47を高精度で所定位置に設ける役割を持つ。すなわち、ジョイント部材56は、図7に示すように、円筒部57の中空部であり、かつ、フランジ部58及び挿入部59を同一径で貫通している貫通孔でもある中空部56aが形成されている。また、円筒部57の先端側には、曲げ加工部57aが設けられている。なお、図7には、曲げ加工後の形状で表されているが、曲げ加工前においては中心軸に沿って延びている。そして、図1に示すように、中空部56aにプラグ部材30のポペット収納部31及び中間部33を配置した状態において、フランジ部34を覆うように曲げ加工部57aを曲げ加工することによって、プラグ部材30をジョイント部材56に固定している。また、ジョイント部材56は、ケース54の第1の端部55aが挿入部59とフランジ部58との段差面58aに当接するところまで挿入部59を挿入した上で、ブレージング部分68に示している段差面58aと第1の端部55aとをブレージングによって接続している。このブレージングによる接続は、ジョイント部材56及びケース54の磁性に影響が及ばないようにする、つまり溶接によって磁気特性が変化することを避けることを目的としている。
【0029】
続けて、図1に戻って説明する。プランジャ40は、コイル64に通電することによってベース50に吸引されてベース50側、つまり、ポペット20から離隔するように摺動する。コイル64への通電を停止すると、スプリング53の弾発力によってポペット20に向かって摺動する。また、プランジャ40は、ベース50に対向する側に突出部41が形成され、ベースに吸着される直前における推力の急増を抑えるようにしている。一方、プランジャ40のポペット20に対向する側には、凹陥部42が形成されている。凹陥部42は、シートベース43を圧入して固定するために形成されている。シートベース43は、非磁性材からなり、突出部44の先端にボール弁体45を固定するための凹部44aが形成されている。ボール弁体45は、ベアリングボールを利用したものであり、コイルへの通電していないときには、スプリング53の弾発力によってポペット20の下流側流路24の弁体対向開口部24aに強く当接し、弁体対向開口部24aを閉止している。また、ボール弁体45は、凹部44a上に配置し、かしめることによって突出部44に固定されている。なお、電磁弁10の用途によっては、ボール弁体45に代えて円錐状の弁体など他の形状の弁体を採用してもよい。また、弁体の固定方法も、かしめ以外の方法を用いてもよい。
【0030】
止め輪46は、電磁弁10の使用中にボール弁体45が弁体対向開口部24aに吸着され、プランジャ40とポペット20とが離隔しなくなることを防止するために設けられている。すなわち、止め輪46は、Cリングを利用したものであり、プラグ部材30のポペット収納部31に形成された環状溝32に挿入された状態で設けられている。そして、コイル64への通電によって、プランジャ40がベース50に吸着されたときに、ポペット20がプランジャ40一体的に摺動し始めても、途中で止め輪46によって、ポペット20の摺動が規制され、ボール弁体45が弁体対向開口部24aから離隔するようになされている。なお、止め輪46は、ポペット20の摺動を規制可能なものであれば、Cリング以外のものであってもよい。
【0031】
スリーブ47は、プランジャ40の摺動を案内するものであり、外周面に第1の環状突出部48a及び第2の環状突出部48bを形成した部分、つまり、ポペット20側の部分がジョイント部材56の挿入部59に挿入された状態で設けられている。したがって、スリーブ47の中心軸とポペット20の中心軸がずれにくいという利点がある。第1の環状突出部48aと第2の環状突出部48bとの間には、コイルボビン60側への作動油の浸入を防ぐためのOリング49が設けられている。また、スリーブ47のキャップ65側はベース50が挿入されており、さらに、キャップ65側の端部は、溶接部分69に示すように、ベース50の周側面に溶接されている。よって、スリーブ47は、ベース50に対して固定されている。ベース50は、コイル64への通電時に、ケース54、ジョイント部材56及びプランジャ40と主に磁気回路を生成する。また、プランジャ40に対向する側に凹陥部51が形成され、ベースに吸着される直前における推力の急増を抑えるようにしている。さらに、凹陥部51の中央には、スプリング収納孔52が形成されている。スプリング収納孔52は、スプリング53を伸縮可能な状態で保持している。
【0032】
コイル64は、コイルボビン60の巻胴部61のジョイント部材側フランジ部62とキャップ側フランジ部63との間にコイルワイヤを巻回することによって形成されている。また、コイル64は、図1及び図3に示すように、両端部がリード線67aとリード線67bとにそれぞれ接続されており、グロメット66aとグロメット66bとを介してキャップ65の外部へ導出されている。ケース54は、ポペット20側の第1の端部55aにジョイント部材56の挿入部59が挿入され、第2の端部55bにはキャップ65が圧入されている。ケース54の中空部54aには、スリーブ47、ベース50、スプリング53、コイルボビン60及びコイル64などが収納されている。
【0033】
続けて、本発明の実施の形態に係る電磁弁10の動作について説明する。コイル64に通電すると、コイルの励磁によってベース50、ケース54、ジョイント部材56及びプランジャ40を流れる磁気回路が生成される。プランジャ40は、ベース50に吸引されてベース50側に摺動する。そうすると、図示していない油圧回路からの圧力によってポペット20もプランジャ40側に摺動するが、プランジャ側端面25が止め輪46に当接したところで、ポペット20の摺動が規制される。また、ポペット20のプランジャ40側への摺動によって、シート面28とプラグ部材30の当接部35bとが離隔し、下流側中空部37aと中間中空部33aとが連通するので、外部の油圧回路の上流側流路から上流側連絡口36a、36b、36c、36d、36e及び36fへ流入し、中間中空部33を経由して下流側開口部37bから外部の油圧回路の下流側流路へ流出する流れが生成される。
【0034】
同時に、ボール弁体45もベース50側に移動するので、ボール弁体45は弁体対向開口部24aから離隔する。したがって、中間中空部33a、上流側流路23、上流側中空部31a、下流側流路24及び下流側中空部37aが連通した状態になる。よって、上流側中空部31aやプランジャ40の周囲と外部の流路との差圧が各流路の径等に応じて適宜調整される。
【0035】
以上のように、本発明の実施の形態に係る電磁弁10は、ポペット20を径大部21と径小部22とからなるものとし、さらに、中心軸に沿って径大部21と径小部22とを貫通する下流側流路24に加えて、上流側開口部23aが径大部21と径小部22との段差面26に開口している上流側流路23を形成しているので、段差面26に開口している上流側開口部23aを実質的に横孔として機能させることができる。したがって、高い精度を要する横穴を形成する工程が不要となり、ポペット20の製造コストを削減し、ひいては電磁弁10の製造コストの低減を図ることもできる。また、ポペット20を径の異なる2つの部分で構成することが可能であれば弁の用途を問わない利点もある。また、特段の加工なしに、ポペット20の径小部22を弁体として機能させることと、上流側開口部23aを径大部21と径小部22との段差面26に開口させることが両立できるので、ポペットの製造コストの削減がより容易になる。さらに、ポペット20とプランジャ40の吸い付きを止め輪46によって防止できる。また、ポペット収納部31の上流側中空部31aに環状溝32を形成することによって止め輪46を固定できるので、ポペット20の製造コストの増大がほとんどない。くわえて、ジョイント部材56にケース54、プラグ部材30が固定される構成にしているので、ポペット20とプランジャ40との中心軸を精確に一致させることができる。さらに、ジョイント部材56とケース54とがブレージングによって固定されるようにしているので、固定に関わる部分の磁気特性に影響を与えない。
【0036】
本発明は以上に説明した内容に限定されるものではなく、例えば、本発明の実施の形態に係る電磁弁の構成において、ケース54とジョイント部材56とを鍛造によって一体に形成する、あるいは、スプリング53の位置を変更するなど、請求項に記載した範囲を逸脱しない限りにおいて種々の構成にすることが可能である。
【符号の説明】
【0037】
10 電磁弁
20 ポペット
21 径大部
22 径小部
23 上流側流路
23a 上流側開口部
23b プランジャ側開口部
24 下流側流路
24a 弁体対向開口部
24b 下流側開口部
25 プランジャ側端面
26 段差面
27 下流側端面
28 シート面
29 周側面
30 プラグ部材
31 ポペット収納部
31a 上流側中空部
31b プランジャ側開口部
32 環状溝
33 中間部
33a 中間中空部
34 フランジ部
35 環状突出部
35a 環状突出中空部
35b 当接部
36a 上流側連絡口
36b 上流側連絡口
36c 上流側連絡口
36d 上流側連絡口
36e 上流側連絡口
36f 上流側連絡口
37 流路構成部
37a 下流側中空部
37b 下流側開口部
38a 段差面
38b 段差面
39 貫通孔
40 プランジャ
41 突出部
42 凹陥部
43 シートベース
44 突出部
44a 凹部
45 ボール弁体
46 止め輪
46a 開口部
47 スリーブ
48a 第1の環状突出部
48b 第2の環状突出部
49 Oリング
50 ベース
51 凹陥部
52 スプリング収納孔
53 スプリング
54 ケース
54a 中空部
55a 第1の端部
55b 第2の端部
56 ジョイント部材
56a 中空部
57 円筒部
57a 曲げ加工部
58 フランジ部
58a 段差面
59 挿入部
60 コイルボビン
61 巻胴部
62 ジョイント部材側フランジ部
63 キャップ側フランジ部
64 コイル
65 キャップ
66a グロメット
66b グロメット
67a リード線
67b リード線
68 ブレージング部分
69 溶接部分
80 逆止弁( ポペット)
81 ポペット
82 横孔
83 内腔
84 シート面
85 逆止弁座
86 連通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8